説明

加熱調理器

【課題】パッキンに係る異常の判断等を行うことで、報知、対策等を行うことができる加熱調理器を得る。
【解決手段】被加熱物を加熱調理する調理庫60と、調理庫60に設けられたグリル扉61と、グリル扉61と調理庫60の間に設けられたパッキン61Aと、調理庫60内の温度を検知する庫内温度検知手段60Bと、一定時間分の庫内温度検知手段60Bの検知に係る温度のデータを記憶する記憶手段12と、記憶手段12による温度のデータと、庫内温度検知手段60Bにより得られる調理庫60内の温度のデータを比較し、所定値以上差異が生じたかどうかを判断する制御手段11と、制御手段11の判断に基づいてパッキンの異常を報知する上面表示部5Aとを備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱調理器に関するものである。特に扉と調理庫との間に設けるパッキンが異常であるかどうかの判断等を行うものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、魚等の被加熱物を加熱するための加熱調理器において、被加熱物を出し入れするための開口部を有する調理庫と調理庫と外部とを開放、遮断するための扉との間に、閉止時において調理庫と扉との衝撃を緩衝させ、また、例えば、調理庫と扉とを気密させて扉側からの空気を流入出させないようにするためのパッキンを設けている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−83037号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなパッキンは、通常の加熱調理器の使用では、基本的に他の部品と比較しても長い耐久性等を有している。ただ、衝撃を受けやすい部品であるため、例えば変形、破損、経年劣化等、何らかの原因により、パッキンの縮み、気密が保たれない又は意図せぬ隙間により所定の加熱を行えない等のパッキンの異常が生じる可能性がある。パッキンに異常が生じると、例えば扉と調理庫との距離が近くなり必要以上に扉が高温になる、調理庫内の空気の流れに影響を与えることで被加熱物に対して意図した加熱を行うことができなくなる等の弊害が生じる可能性がある。しかしながら、パッキンの異常に関しては判断等がなされていないのが現状である。
【0005】
そこで、本発明は上記のような問題を解決するために、パッキンについて、異常であるかどうかの判断等を行い、報知、対策等を行うことができる加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を加熱調理する調理庫と、調理庫に設けられた扉と、扉と調理庫の間に設けられたパッキンと、調理庫内の温度を検知する庫内温度検知手段と、一定時間分の庫内温度検知手段の検知に係る温度のデータを記憶する記憶手段と、記憶手段による温度のデータと、庫内温度検知手段により得られる調理庫内の温度のデータを比較し、所定値以上差異が生じたかどうかを判断する制御手段と、制御手段の判断に基づいてパッキンの異常を報知する報知手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、調理庫と扉との間にパッキンを有する加熱調理器において、調理庫内の温度に基づいてパッキンの異常を報知するようにしたので、パッキンの異常に対して、早期に点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の参考例1に係る加熱調理器の一例を表す図である。
【図2】加熱調理器のグリル部6の構造の概略を表す図である。
【図3】グリル部6の内部構造を側面側からみた場合の概略を表す図である。
【図4】グリル扉61近辺の詳細な構成を示す図である。
【図5】グリル部6を中心とする制御関係の構成を示すブロック図である。
【図6】パッキン61Aの異常に係る判断処理のフローチャートを表す図である。
【図7】参考例2に係る加熱調理器の断面を表す図である。
【図8】参考例3に係る加熱調理器の断面を表す図である。
【図9】実施の形態1に係る加熱調理器の断面を表す図である。
【図10】参考例4,5,6に係る加熱調理器の断面を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
参考例1.
図1はこの発明の参考例1に係る加熱調理器の外観を表す図である。本参考例では、加熱調理器となるグリル装置を備えたIHクッキングヒータとして説明する。図1において、IHクッキングヒータ上面には、天板(トッププレート)1、例えば左電磁誘導コイル及び右電磁誘導コイルを有する誘導加熱部2、中央ヒータを有するヒータ部3、上面操作部4A、上面表示部5A、通気口7A及び7Bを設けている。また、IHクッキングヒータ本体内にはグリル装置であるグリル部6を設けている。そして、前面には、グリル部6に被加熱物を出し入れするための、取っ手62を有するグリル扉61、また、前面操作部4B及び前面表示部5Bを設けている。
【0010】
天板1の手前側(使用者側)に設けられた上面操作部4Aには、誘導加熱部2、ヒータ部3及びグリル部6の入/切や火力調節等の操作ボタンを配設している。また、グリル部6の右側に設けた前面操作部4Bには、例えば、加熱調理器全体をオン/オフするメイン操作ボタンと、火力(出力)の設定を行う回転式操作ボタンを配設している。
【0011】
また、上面表示部5Aは、誘導加熱部2、ヒータ部3、グリル部6の火力、使用状況等の表示を行う。ここでは、後述するように、特にグリル部6に設けたパッキン61Aの異常に係る点検、交換等を促す表示を行う報知手段として用いる。また、前面表示部5Bは、例えば誘導加熱部2、ヒータ部3の動作状態を文字を光らせて教示(報知)する動作ランプ(図示せず)、グリル扉61が高温状態であることを教示(報知)する扉注意ランプ(図示せず)等を設けている。
【0012】
図2は加熱調理器1のグリル部6の構造を表す図である。例えば両面焼きが可能なグリル部6は、被加熱物を加熱する調理庫60を有している。図2に示すように、調理庫60内と連通する排気通路(ダクト)63における排気口となる通気口7Aを本体の上面の奥側に設けている。通気口7Aにはフィルタを設け、本体内に埃、異物等が進入するのを防止している。また、通気口7Bは、例えばIHクッキングヒータ本体内の電気回路等を冷却するための外気を取り入れる吸気口となる。
【0013】
調理庫60は、前面に開口部41、後面に排気通路63に連通する連通口46を設けている。また、外側の側面には、レール可動部48をスライド移動させるためのレール固定部47を設けている。そして、レール可動部48をレール固定部47にならわせて前後にスライド移動させることにより、耐熱ガラス製の調理庫窓を有するグリル扉61で調理庫60の開口部41を開閉することができる。
【0014】
図3はグリル部6の内部構造を側面側からみた場合の概略を表す図である。図3は図2におけるA−A’で切断したグリル部6をみている。グリル扉61には、閉じた際の開口部41の密閉、緩衝材として衝撃を和らげる等をはかるために、パッキン61Aを、開口部41の周縁を覆うように、グリル扉61に設けている。そして、このグリル扉61を、レール可動部48と一体となった扉固定部49が固定している。また、グリル扉61のほかに、レール可動部48のスライド移動により焼き網31を載置する受皿(トレー)30もレール可動部48の移動と共に移動する。
【0015】
誘導加熱部2の加熱コイルの下方に、グリル部6の調理庫60を配設している。調理庫60内に、温度を上昇させ、また被加熱物100を加熱するための加熱手段となる上ヒータ42及び下ヒータ43(以下、特に区別しない場合には加熱ヒータという)を備えている。また、前述した受皿30、焼き網31等が配されている。
【0016】
そして、連通口46により調理庫60と連通する排気通路63には、連通口46から通気口7Aの方向に向かって触媒用加熱ヒータ64、脱臭・脱煙装置65、排気促進用ファン66の順に配設する。触媒用加熱ヒータ64は、脱臭・脱煙装置65が有する触媒による触媒作用の活性化を促進させるために加熱を行う手段である。脱臭・脱煙装置65は被加熱物を加熱した際に発生する臭気、油煙等の成分を脱臭、脱煙することにより、空気の浄化を行う手段である。ここで、脱臭・脱煙装置65は、触媒作用により臭気、油煙等の成分を分解する触媒により脱臭、脱煙を行う。また、排気促進用ファン66は、連通口46から通気口7Aの方向への気流を形成し、脱臭・脱煙装置65を通過した空気を強制的に通気口7Aより排出させる。この排気促進用ファン66をファン駆動手段である駆動モータ67が回転させる。
【0017】
図4はグリル扉61近辺の詳細な構成を示す図である。グリル扉61においては、例えば上下部分に突起部61B、61Cを設けている。そして、突起部61B、61Cの先端部分には、温度を検知することでグリル扉61と調理庫60との距離を検知するための距離検知手段となる温度検知手段70A、70Bをそれぞれ配置している。温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度は、例えばグリル扉61周辺の温度とみなすことができる。例えばパッキン61Aが経年劣化等により収縮し、加熱ヒータにより加熱している調理庫60に近づくほど検知に係る温度が高くなる。また、排気促進用ファン66を回転させないで調理動作をする場合、パッキン61Aによる気密が完全ではなければ、調理庫60内から加熱された空気が漏ることによっても検知に係る温度が高くなる。そこで本参考例では、パッキン61Aの異常を判断するために温度検知手段70A、70Bに温度を検知させる。ここで、本参考例においては、グリル扉61の上下部分に温度検知手段70A、70Bを有する突起部61B、61Cを設けるようにしているが、この位置に限定するものではなく、パッキン61A周縁であればよい。また、温度検知手段70A、70Bを設ける数も限定するものではない。
【0018】
図5はグリル部6を中心とする制御関係の構成を示すブロック図である。例えば、マイクロコンピュータ等で構成される制御手段11は、上面操作部4A、前面操作部4Bから送信される指示に係る信号、各種検知手段から送信される検知に係る物理量の信号に基づいて判断等の処理を行い、加熱調理器内の各手段の動作を制御する。ここで制御手段11はカウンタ(図示せず)を有しているものとする。本参考例では、特に温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度のデータに基づいて、所定温度以上となったかどうか(パッキン61Aに異常が生じているかどうか)を判断する。そして、判断結果に基づいて上面表示部5Aに表示信号を送信して表示を行わせる処理を行う。その他、ヒータ駆動手段44に指示を含む信号を送信し、ヒータ駆動手段44を介して上ヒータ42、下ヒータ43への通電(電力供給)を制御することにより、調理庫60内に置かれた被加熱物を加熱させる。さらに駆動モータ67に指示を含む信号を送信し、駆動モータ67を介して排気促進用ファン66を制御して、調理庫60内の空気を強制的に排出させる。ここで、本参考例では制御手段11を1つの手段で構成しているが、例えば、加熱調理器全体に関して制御を行う制御手段と、グリル部6に関する制御を行う制御手段との2段構成等にしてもよい。
【0019】
また、送信される信号に係るデータ、処理手順等、制御手段11が処理を行うために必要なデータを一時的、長期的に記憶する記憶手段12を有しているものとする。例えば、制御手段11は、記憶手段12に記憶されたプログラムに基づく手順により、加熱調理器に関する処理を実行するものとする。さらに、調理時間等を計測するための調理タイマ13も有している。
【0020】
図6は制御手段11が行うパッキン61Aの異常に係る判断処理のフローチャートを表す図である。図6に基づいて、本参考例におけるパッキン61Aに係る処理について説明する。ここで、あらかじめ実験等を行うことにより、パッキン61Aが異常と判断するための温度の閾値を決定し、温度の閾値Tref のデータを記憶手段12に記憶しておく。例えば、正常動作時の平均的な外気温度を計測により求めておく。パッキン61Aの異常時は正常時に比べてグリル扉61と調理庫60との距離が近くなるため、平均温度より例えば10℃高い値を閾値に決定する。
【0021】
例えば、上面操作部4Aから入力された指示に基づいて、グリル部6における被加熱物の加熱を開始する。制御手段11は、温度検知手段70A、70Bの検知からの信号に基づく温度T1 、T2 を判断する(S1)。そして、温度T1 と温度の閾値Tref とを比較する(S2)。また、温度T2 と温度の閾値Tref とを比較する(S3)。
【0022】
温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度T1 、T2 のどちらか一方が温度の閾値Tref よりも大きい(T1 >Tref 又はT2 >Tref )と判断すると、パッキン61Aが異常であるものとして、上面表示部5Aに、パッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行わせ、教示(報知)する(S4)。一方、どちらも閾値Tref 以下であれば、S1に戻って、パッキン61Aの異常に係る判断を続ける。
【0023】
ここで、制御手段11は、温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度T1 、T2 のどちらか一方が、閾値Tref よりも大きいと判断すると、すぐに上面表示部5Aに点検、交換等を促す表示を行わせるようにしてもよいが、例えば、閾値Tref よりも大きいことを所定の回数判断したときに、表示を行わせるようにしてもよい。
【0024】
以上のように、参考例1の加熱調理器によれば、グリル扉61の突起部61B、61Cの先端部分に温度検知手段70A、70Bを設け、制御手段11は、温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度T1 、T2 と温度の閾値Tref との比較に基づいて、パッキン61Aが異常であるものと判断すると、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。ここで、経年劣化によるパッキン61Aの収縮だけでなく、パッキン61Aの破損等による調理庫60からの加熱された空気漏れ等によっても、グリル扉61周辺の温度が上昇するため、温度検知手段70A、70Bの検知に係る温度に基づいてパッキン61Aの異常を判断することで、様々なパッキンの異常原因に対処することができる。
【0025】
参考例2.
図7は本発明の参考例2に係るグリル扉61を中心とする加熱調理器の断面を表す図である。図7において、調理庫60側に設けたコイル60Aは、電流供給手段(図示せず)からの電流供給により磁界を発生させ、磁界の変化に基づいてグリル扉61と調理庫60との距離を検知するための距離検知手段となる。
【0026】
上述の参考例1では、グリル扉61の突起部61Aの先端部分に設けた温度検知手段70の検知に係る温度に基づいて、パッキン61Aの異常を判断するようにした。本参考例では、パッキン61Aの収縮によりグリル扉61が近づいたときのコイル60Aにおける磁界の変化に基づいて、グリル扉61と調理庫60との距離を検知することでパッキン61Aの異常を判断するものである。そのため、本参考例では、磁界の変化を検知するため、グリル扉61を金属製にする、グリル扉61のコイル60Aに対向する位置に、磁界を変化させるための金属を材料とする手段を設ける等を行うものとする。
【0027】
例えば、金属製であるグリル扉61がコイル60Aに近づいてくると、磁界内に金属が入り込むことで、磁界に歪みが生じる等の影響を受け、コイル60Aにおいて流れる電流の値が徐々に変化する(増加する傾向にある)。そこで、あらかじめ実験等により、電流の閾値を定めておき、その閾値をデータとして記憶手段12に記憶しておく。例えば、正常動作時の平均的な電流の値を計測により求めておく。パッキン61Aの異常時は正常時に比べてグリル扉61と調理庫60との距離が近くなるため、平均電流値より例えば10%大きい値を閾値に決定する。そして、制御手段11は、直接的に又は電流検知手段(図示せず)を介してコイル60Aを流れる電流を判断し、閾値よりも大きくなったものと判断すると、参考例1と同様に、パッキン61Aが異常であるものとして、上面表示部5Aに、パッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行わせ、教示する。ここでも閾値よりも所定の回数大きいと判断したときに、表示を行わせるようにしてもよい。それ以外の制御手段11のパッキン61Aの異常判断に係る処理は、上述の参考例で説明したことと同様である。
【0028】
以上のように、参考例2の加熱調理器によれば、磁界を発生させるためのコイル60Aを調理庫60に設け、グリル扉61が近づいて、グリル扉61が有する金属が磁界を変化させることで、コイル60Aに生じる電流の変化に基づいて、パッキン61Aが異常であるものと判断すると、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。
【0029】
参考例3.
図8は本発明の参考例3に係るグリル扉61を中心とする加熱調理器の断面を表す図である。図8において、振動検知手段80は、加熱調理器に発生した振動を検知するための、例えば加速度センサ等の手段である。ここで、本参考例で検知しようとする振動は、グリル扉61を閉じたときに、グリル扉61と調理庫60とがパッキン61Aを介して接触することで生じる衝撃によるものである。そのため、その衝撃による振動にあわせた周波数(振動数)等を検知できる振動検知手段80を用いるようにする。
【0030】
例えばパッキン61Aが経年劣化により硬化することで、パッキン61Aが緩衝材として機能しなくなってグリル扉61を閉じたときの衝撃が大きくなる、硬化することにより振動する周波数が高くなる等、振動に係る振幅、周波数等が変化する。特に限定するものではないが、本参考例では、振動検知手段80は振幅に関する信号を送信するようにし、制御手段11は、振動に係る振幅に基づいて、あらかじめ定めた振幅の閾値より大きい振幅が発生したかどうかを判断し、パッキン61Aが異常であるかどうかを判断する。
【0031】
また、例えば、パッキン61Aに異常が発生すると、振動の減衰率が正常な状態から変化する場合がある。例えば、パッキン61Aが硬化することで振動の減衰率が大きくなる。また、樹脂等を材料とするパッキン61Aが変形等をすると、グリル扉61から浮きが発生することで、グリル扉61の閉止による振動の減衰率が小さくなる。そこで、制御手段11は、振動に係る減衰率の変化量に基づいて、あらかじめ定めた閾値以上となったかどうかを判断し、パッキン61Aが異常であるかどうかを判断することもできる。
【0032】
さらに、本参考例では、より正確にグリル扉61と調理庫60とがパッキン61Aを介して接触することによる振動に基づいて判断するため、少なくとも一対の接近検知手段81をそれぞれグリル扉61と調理庫60とに設ける。そして、制御手段11は、接近検知手段81からの信号に基づいて、グリル扉61と調理庫60とが接近したかどうか(グリル扉61が閉じられたかどうか)を判断する。グリル扉61が閉じられたものと判断すると、振動検知手段80からの信号に基づいてパッキン61Aが異常であるかどうかを判断するようにする。このような判断を行うことにより、グリル扉61が閉じられたことによる振動だけを、パッキン61Aに係る判断に利用することができる。それ以外の制御手段11のパッキン61Aの異常判断に係る処理は、上述の参考例で説明したことと同様である。
【0033】
以上のように、参考例3の加熱調理器によれば、振動検知手段80を設け、グリル扉61を閉じたときに発生する振動に基づいて、パッキン61Aが異常であるものと判断すると、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。さらに、接近検知手段81を設け、グリル扉61が閉じたものと判断したときにパッキン61Aが異常であるかどうかを判断するようにしたので、他の振動に基づいてパッキン61Aの異常を誤判断してしまうことなく、グリル扉61が閉じられたことによる振動だけを、パッキン61Aに係る判断に利用することができる。
【0034】
実施の形態1.
図9は本発明の実施の形態1に係るグリル扉61を中心とした加熱調理器の断面を表す図である。図9において、庫内温度検知手段60Bは、調理庫60内の温度を検知して制御手段11に温度に係る信号を送信するために設けている。
【0035】
例えば、パッキン61Aが破損等すると、グリル扉61と調理庫60との間の気密が保てない、また、一定の開口を行って通気を行っている場合でも、想定外の隙間が生じることになる。隙間が生じることで開口面積が大きくなるため、外部から調理庫60に流入する空気の量が多くなる。外部の空気は、調理庫60内の空気よりも温度が低く、空気の流れも速くなるため、流入する空気の量が多くなると、調理庫60内における温度上昇が鈍化する。
【0036】
そのため、例えば被加熱物の調理においてコース等が設定できる場合に、調理庫60内を所定の時間に所定の温度になるように制御する必要があっても、所定の温度上昇がはかれなくなる。そこで、制御手段11は、調理タイマ13により調理開始からの時間を計測しておく。そして、庫内温度検知手段60Bからの信号に基づいて、例えば、本来、所定温度に到達すべき時間が経過しても、所定温度に達しない等、通常とは異なる温度上昇傾向を示しているものと判断すると、パッキン61Aが異常であるものとして、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させる。ここで、庫内温度検知手段60Bの検知に係る温度のデータを時系列で記憶手段12に記憶させ、制御手段11は、温度差を算出する等、演算を行って傾向を求めた上で、パッキン61Aの異常判断を行うようにしてもよい。それ以外の制御手段11のパッキン61Aの異常判断に係る処理は、上述の参考例で説明したことと同様である。
【0037】
以上のように、実施の形態1の加熱調理器によれば、庫内温度検知手段60Bの検知に係る温度に基づいて、パッキン61Aが異常であるものと判断すると、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。
【0038】
参考例4.
図10は本発明の参考例4に係る加熱調理器の断面を表す図である。図10において、風速検知手段63Aは、排気通路63における風速を検知するための手段である。また、回転数検知手段66Aは、排気促進用ファン66の回転数を検知するための手段である。回転数検知手段66Aは接触式でもよいが、本参考例では、例えば赤外線を発し、赤外線の反射により回転数を検知する非接触式の回転数検知手段で構成する。そのため、本参考例における排気促進用ファン66は、例えば金属製の羽根を用いているものとする。本参考例は、風速検知手段63Aと回転数検知手段66Aとを設け、排気風路63における風速と排気促進用ファン66の回転数との関係に基づいて、パッキン61Aの異常を判断するものである。
【0039】
上述したように、パッキン61Aが破損等すると、グリル扉61と調理庫60との間に隙間が生じることで開口面積が大きくなり、外部から調理庫60に流入する空気の量が多く、空気が流れやすくなる。そのため、通常と同じ動作を行っている場合には、単位時間において排気通路63を流れる空気の量(風量)も多くなり、風速が増す。
【0040】
そこで、あらかじめ実験等により、排気促進用ファン66の回転数と風速との関係を導き出しておく。そして、例えば排気促進用ファン66の所定の回転数における風速の閾値を定めておき、その閾値をデータとして記憶手段12に記憶しておく。そして、制御手段11は、回転数検知手段66Aからの信号に基づいて、例えば排気促進用ファン66の回転数が所定の回転数になったときの、風速検知手段63Aの検知に係る風速に基づいて、排気通路63における風速が閾値よりも大きいかどうかを判断する。風速が閾値よりも大きい(排気促進用ファン66の回転数に対して風速が大きい)と判断すると、パッキン61Aが異常であるものとして、上面表示部5Aに、パッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行わせ、教示する。ここで、本参考例のように、排気通路63の風速に基づいて、パッキン61Aの異常を判断する方法は、例えば、排気促進用ファン66の回転数が固定されている場合においても適用することができる。この場合には、特に回転数検知手段66Aを設けなくてもよい。
【0041】
また、本参考例では、さらに駆動モータ67への入力電圧を減少させて排気促進用ファン66の回転数を下げ、パッキン61Aの異常前の風速(風量)に調整するようにする。そのため、パッキン61Aが異常であったとしても、風量を調整しながら調理を継続することができる。さらに、調整した後の排気促進用ファン66の回転数と風速との関係から、新たな閾値を決定し、記憶手段12にその閾値をデータとして記憶しておくようにしてもよい。それ以外の制御手段11のパッキン61Aの異常判断に係る処理は、上述の参考例等で説明したことと同様である。
【0042】
以上のように、参考例4の加熱調理器によれば、回転数検知手段66A及び風速検知手段63Aを設け、制御手段11が、回転数検知手段66A、風速検知手段63Aからの信号に基づいて、排気促進用ファン66の回転数に対して、排気通路63における風速(風量)が所定の速度よりも大きくなり、パッキン61Aが異常であるものと判断すると、異常に係る表示、例えば点検、交換等を促す旨を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。また、上面表示部5Aに表示を行うとともに、排気促進用ファン66の回転数を下げ、パッキンの異常により増加した風量を減少させて調整するようにしたので、調理の継続をはかることができる。
【0043】
参考例5.
上述の参考例4では、パッキン61Aに異常が生じた場合と、生じていない場合の風速の違いに基づいて、パッキン61Aが異常であるかどうかを判断した。例えば、調理において、排気促進用ファン66の回転数を調整し、加熱庫60における風量を一定にするような制御を行う場合に、風速(風量)に対する排気促進用ファン66の回転数に基づいて、制御手段11は、パッキン61Aが異常であるかどうかを判断するようにしてもよい。パッキン61Aが異常となった場合には、排気促進用ファン66の回転数が減少傾向となる。そこで、制御手段11は、回転数検知手段66Aの検知に係る回転数に基づいて、あらかじめ定めた閾値よりも回転数が少ないと判断すると、パッキン61Aが異常であるものとして、上面表示部5Aに、パッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行わせ、教示する。
【0044】
以上のように、参考例5の加熱調理器においても、回転数検知手段66Aからの信号に基づいて、風速(風量)に対して、排気促進用ファン66の回転数が少ないと判断することにより、参考例4の加熱調理器と同様に、パッキン61Aの異常判断をおこなうことができる。
【0045】
参考例6.
上述の参考例4及び5では、回転数検知手段66Aを設け、排気促進用ファン66の回転数を直接的に検知するようにしたが、例えば、排気促進用ファン66を回転させる駆動モータ67に駆動電流検知手段67Aを設け、駆動モータ67に流れる電流に基づいてパッキン61Aが異常であるかどうかを判断するようにしてもよい。駆動モータ67に流れる電流が少なくなると、排気促進用ファン66の回転数が減少することになる。そこで、制御手段11は、駆動電流検知手段66Bの検知に基づく電流が所定値よりも少なくなったかどうかを判断することにより、間接的に回転数の減少を判断することで、パッキン61Aの異常を判断する。それ以外の制御手段11のパッキン61Aの異常判断に係る処理は、上述の参考例等で説明したことと同様である。
【0046】
以上のように参考例6の加熱調理器によれば、参考例4及び5の回転数検知手段66Aに代わって電流検知手段67Aを設け、電流検知手段67Aからの信号に基づいて、制御手段11が駆動モータ67に流れる電流量に基づいて、パッキン61Aが異常であるものと判断し、異常に係る表示を上面表示部5Aに表示させるようにしたので、早期にパッキン61Aの異常を教示し、点検、交換等による対応を促すことができる。また、早期に対応できるようにすることで、事故等を未然に防止等することができる。
【0047】
参考例7.
上述の参考例等では、パッキン61Aが異常であると判断すると、上面表示部5Aにパッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行うようにしたが、本発明はこれだけに限定するものではない。例えば、制御手段11は、被加熱物の加熱調理動作を停止させる又は開始させないようにするように処理してもよい。この場合、1度の判断で加熱調理動作を行わないようにするのではなく、パッキン61Aの異常を判断し、上面表示部5Aに異常に係る表示を行った後で、加熱調理動作を停止させる又は開始させないようにするようにしてもよい。
【0048】
また、上述の参考例等では、上面表示部5Aにパッキン61Aの点検、交換等を促す表示を行わせるようにしたが、例えば音声等を発する報知手段により教示(報知)するようにしてもよい。
【0049】
参考例8.
上述の参考例等では、IHクッキングヒータのグリル部6におけるパッキン61Aの異常の判断に係る説明を行ったが、適用する加熱調理器をIHクッキングヒータのグリル部に限定するものではない。例えば、グリル単体の加熱調理器においても適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 天板、2A 左誘導加熱部、2B 右誘導加熱部、3 ヒータ部、4A 上面操作部、4B 前面操作部、5A 上面表示部、5B 前面表示部、6 グリル部、11 制御手段、12 記憶手段、13 調理タイマ、30 受皿、31 焼き網、41 開口部、42 上ヒータ、43 下ヒータ、44 ヒータ駆動手段、46 連通口、47 レール固定部、48 レール可動部、60 調理庫、60A コイル、60B 庫内温度検知手段、61 グリル扉、61A パッキン、61B,61C 突起部、62 取っ手、63 排気風路、63A 風速検知手段、64 触媒用加熱ヒータ、65 脱臭・脱煙装置、66 排気促進用ファン、66A 回転数検知手段、67 駆動モータ、70A,70B 温度検知手段、80 振動検知手段、81 接近検知手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を加熱調理する調理庫と、
該調理庫に設けられた扉と、
該扉と前記調理庫の間に設けられたパッキンと、
前記調理庫内の温度を検知する庫内温度検知手段と、
一定時間分の前記庫内温度検知手段の検知に係る温度のデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段による温度のデータと、前記庫内温度検知手段により得られる前記調理庫内の温度のデータを比較し、所定値以上差異が生じたかどうかを判断する制御手段と、
該制御手段の判断に基づいて前記パッキンの異常を報知する報知手段と
を備えることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記パッキンに異常を検知したときに、被加熱物の調理動作を停止させる又は開始させないようにすることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−88048(P2012−88048A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532(P2012−532)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【分割の表示】特願2009−46534(P2009−46534)の分割
【原出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】