説明

励起光出力装置および励起光出力制御方法

【課題】ファイバの状態や周辺温度などの外的要因により、偏波の状態が変化しても、合波器を含めた励起光源として、光アンプに対して、安定な励起光出力を確保する。
【解決手段】 偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源11、12と、複数の励起光源の励起光出力を制御する駆動手段21,22と、複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段15と、偏波合成手段から放出される光の一部であって、複数の励起光源が放出する複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる偏光通過手段17と、偏光通過手段を通過した偏光を受光する受光手段18と、を有し、 駆動手段は受光手段の出力により、複数の励起光源の励起光出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は励起光出力装置および励起光出力制御方法に係わり、特に、偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置および励起光出力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は背景技術となる構成を示す励起光出力装置を示す図である。図3に示す励起光出力装置の励起光出力制御は、励起LD11,12の後方光出力をモニタして、LD駆動回路21、22により、それぞれの励起LDに内蔵したPDの電流を一定にすることにより、光出力ではなく、間接的なフィードバックにより励起光出力を一定制御する。
【0003】
特許文献1の図2には、半導体レーザ光源14,15からの光を光分岐器19,20で光分岐し、受光器19,20で受光して光源14、15の駆動回路21、22にフィードバックすること、残りの光を偏波合成器18で合成することの記載がある。
【0004】
特許文献2には、偏波合成を行う複屈折結晶120cのテーパ面にカプラ膜121が形成され、カプラ膜121により反射した光をPD150で受光し、その電気信号を励起光制御装置に送ることの記載がある(図8等)。また、偏波合成を行う複屈折結晶120dの入射面にカプラ膜121が形成され、カプラ膜121により反射した光を受光PD150,160で受光し、その電気信号を励起光制御装置に送ることの記載がある(図9等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−44557号公報(図2、段落0035−0037)
【特許文献2】特開平11−258453号公報(図8、図9、段落0092、0104、0110−0112等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3の構成において、励起LD11,12は、それぞれ偏波保持ファイバに出力され、偏波合成器15を経て、光アンプ16に入力される。その間、ファイバ内の偏波は、偏波面保存ファイバにより、基本的に保持される。しかし、ファイバの状態や周辺温度などの外的要因により、偏波の状態が変化し、その結果として、励起光出力変動が生じる場合がある。
【0007】
図3の構成では、光出力ではなく、間接的なフィードバックにより励起光出力を一定制御しているため、ファイバの状態や周辺温度などの外的要因により、ファイバ内の偏波の状態が変化しても、その変化を検出することができず、LD単体としては、光出力一定ではあるが、光アンプに対しては、安定な励起光出力を確保することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる励起光出力装置は、偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源の励起光出力を制御する駆動手段と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる偏光通過手段と、該偏光通過手段を通過した偏光を受光する受光手段と、を有し、
前記駆動手段は前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力装置である。
【0009】
本発明に係わる励起光出力制御方法は、偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、偏光子を回転させて偏光方向を切り換えることで順次該偏光子を通過させ、
前記偏光子を通過した偏光を受光手段により受光し、
前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法である。
【0010】
また本発明に係わる励起光出力制御方法は、偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、複数の偏光子によりそれぞれ通過させ、該複数の偏光子を通過した複数の偏光をそれぞれ複数の受光素子で受光し、該複数の受光素子の出力により前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ファイバの状態や周辺温度などの外的要因により、偏波の状態が変化しても、合波器を含めた励起光源として、光アンプに対して、安定な励起光出力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係わる励起光出力装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係わる励起光出力装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】背景技術となる構成を示す励起光出力装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の典型的な実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係わる励起光出力装置を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係わる励起光出力装置は、偏光状態の異なる励起光を放出する励起レーザーダイオード(LD)11,12、励起LD11,12を駆動するLD駆動回路21,22、励起LD11,12から出力される励起光13、14を偏波合成する偏波合成器15、偏波合成された励起光13,14を増幅する光アンプ16、偏波合成された励起光13,14の特定の励起光を通過させる、偏光通過手段としての偏光子17、偏光子17を通過した特定の励起光を検出し、光出力変動している励起LDを判別し、その励起光を調整するようにLD駆動回路21、22にフィードバックをかける受光素子としての受光回路18を備えている。
【0015】
以下、図2を用いて図1の励起光出力装置の動作について説明する。
【0016】
図2において、励起LD11、12はそれぞれLD駆動回路21、22により制御され、それぞれ励起光13、14を出力する(ステップS11)。励起光13、14は偏波合成器15に入力され、偏波合成される(ステップS12)。ここで、励起光13と14の偏光状態は異なる。偏波合成器15により、偏波合成された励起光13,14は光アンプ16に入力され、光アンプとして機能する。一方の偏波合成された励起光13,14は偏光子17により、特定の励起光を通過させ、受光回路18にて、特定された励起光を検出する(ステップS13)。励起光の変動に応じて、LD駆動回路21、22にフィードバックをかけ、励起光出力変動を抑え(ステップS14)、安定な励起光出力を確保することができる。
【0017】
励起LD11,12は、それぞれ偏波保持ファイバに出力され、偏波合成器15を経て、光アンプ16に入力される。その間、ファイバ内の偏波は、偏波面保存ファイバにより、基本的に保持される。しかし、ファイバの状態や周辺温度などの外的要因により、偏波の状態が変化し、その結果として、励起光出力変動が生じる。そこで、本実施形態では、偏波合成器15のもう一方の出力ポートに偏光子17を設けて、受光回路18にて、特定の偏波のみを検出する。励起LD11,12の偏光状態はLD固有であり、ファイバ内ではそれが維持されているため、その偏光状態と偏光子の相関をとれば、出力変動しているLDを特定することができる。その状態をLD駆動回路21、22にフィードバックをかけ、励起光出力変動を抑え、安定な励起光出力を確保することができる。
【0018】
上記実施形態において、偏光状態の異なる励起LD11、12の光出力を制御するには、偏光子17を可変タイプにし、定期的に、交互に、双方の励起光状態をモニタし、安定な励起光出力を確保する。例えば、偏光子でx偏光のみを通過させ受光素子で光出力を検出してx偏光の励起LDの出力を制御する。次に、偏光子を回転させて偏光方向を変え、偏光子でy偏光のみを通過させ受光回路で光出力を検出してy偏光の励起LDの出力を制御する。自動制御のためには、コントローラを設けて、モータで偏光子を回転し、x偏光、y偏光の通過を切り換える。そして、コントローラが偏光方向の切換に対応させて受光回路の出力先(駆動回路)を切り換える制御を行う。
【0019】
また上記実施形態において、偏波合波器15と偏光子17の間に反射防止のため、光アイソレータをいれても、同様の効果を得ることができる。
【0020】
また上記実施形態において、偏波合波器15と偏光子17の間に光分岐器を設けて、励起光を二つに分波して、それぞれに偏光子および受光回路を設けて、個別にLD駆動回路にフィードバックをかけることができる。すなわち、励起LD11、12がX偏光、y偏光の光を放出する場合に、光分岐器、2つの偏光子(X偏光、y偏光)、2つの受光回路を設けて、それぞれx偏光、y偏光の励起光を検出して、それぞれのLD駆動回路21、22に検出信号を出力する。
【0021】
本実施形態では、励起光合波時に偏波合成器などを用いることにより、励起LDとそれぞれ固有の偏光状態の相関関係を利用して、合波光のトータルパワーではなく、偏光子などを用いて、特定の偏光をモニタすることにより、光出力変動しているLDを判別し、その励起光を調整するように励起LD駆動回路を動作させ、安定な励起光出力を確保することができる。
【0022】
本実施形態の構成により、光アンプに用いる励起光出力制御において、励起光の偏光状態をモニタすることにより、温度やファイバ状態の変化などに起因した偏波消光比変動による励起光出力変動を抑圧するようにフィードバックし、安定な励起光出力を確保することができる。
【0023】
なお、ここで、特許文献1,2と本実施形態の構成との違いについて説明する。
【0024】
特許文献1の図2では偏波合成器の前で光を受光器で検出している。特許文献2の図9及び段落0112では偏光合成器中でカプラ膜121で反射し受光PD150、160で検出しており、偏波合成を行う複屈折結晶の入射面で反射させている。また特許文献2の図8及び段落0101では合成後の光を複屈折結晶の出力面で反射させてモニタしている。
【0025】
一方、本実施形態では偏波合成後の励起光を偏光子を用いて検出するようにすることで、光アンプに入力する励起光を極力減衰させないようにしている。
【0026】
また、光源からの励起光は偏波保持ファイバに出力され、偏波合成器を経て光アンプに入力されるが、ファイバの状態や周辺温度等が外的要因により偏波の状態が変化する。本実施形態では、偏波合成後の励起光を検出するようにすることで、偏波保持ファイバ、偏波合成器による偏波の状態変化を考慮した励起光出力変動を制御することができる。
【0027】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の構成には限られない。
【0028】
(付記1)
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源の励起光出力を制御する駆動手段と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる偏光通過手段と、該偏光通過手段を通過した偏光を受光する受光手段と、を有し、
前記駆動手段は前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力装置。
【0029】
(付記2)
付記1に記載の励起光出力装置において、前記偏波合成手段と前記偏光通過手段との間に光アイソレータが配置される励起光出力装置。
【0030】
(付記3)
付記1又は2に記載の励起光出力装置において、前記偏光通過手段は特定の偏光を通過させる偏光子であり、該偏光子を回転させて偏光方向を切り換えることで、前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる励起光出力装置。
【0031】
(付記4)
付記1又は2に記載の励起光出力装置において、前記偏光通過手段は前記複数の励起光源が放出する、前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光をそれぞれ通過させる複数の偏光子を含み、前記受光手段は該複数の偏光子を通過した複数の偏光をそれぞれ受光する複数の受光素子を含む励起光出力装置。
【0032】
(付記5)
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、偏光子を回転させて偏光方向を切り換えることで順次該偏光子を通過させ、
前記偏光子を通過した偏光を受光手段により受光し、
前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法。
【0033】
(付記6)
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、複数の偏光子によりそれぞれ通過させ、該複数の偏光子を通過した複数の偏光をそれぞれ複数の受光素子で受光し、該複数の受光素子の出力により前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は例えば、光ファイバ通信システムに用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
11,12 励起LD
13,14 励起光
15 偏波合成器
16 光アンプ
17 偏光子
18 受光回路
21,22 LD駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源の励起光出力を制御する駆動手段と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる偏光通過手段と、該偏光通過手段を通過した偏光を受光する受光手段と、を有し、
前記駆動手段は前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の励起光出力装置において、前記偏波合成手段と前記偏光通過手段との間に光アイソレータが配置される励起光出力装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の励起光出力装置において、前記偏光通過手段は特定の偏光を通過させる偏光子であり、該偏光子を回転させて偏光方向を切り換えることで、前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を通過させる励起光出力装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の励起光出力装置において、前記偏光通過手段は前記複数の励起光源が放出する、前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光をそれぞれ通過させる複数の偏光子を含み、前記受光手段は該複数の偏光子を通過した複数の偏光をそれぞれ受光する複数の受光素子を含む励起光出力装置。
【請求項5】
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、偏光子を回転させて偏光方向を切り換えることで順次該偏光子を通過させ、
前記偏光子を通過した偏光を受光手段により受光し、
前記受光手段の出力により、前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法。
【請求項6】
偏光状態の異なる励起光を放出する複数の励起光源と、該複数の励起光源から出力される複数の励起光を偏波合成する偏波合成手段と、を備えた励起光出力装置の励起光出力制御方法において、
該偏波合成手段から放出される光の一部であって、前記複数の励起光源が放出する前記複数の励起光の偏光状態と同じ偏光を、複数の偏光子によりそれぞれ通過させ、該複数の偏光子を通過した複数の偏光をそれぞれ複数の受光素子で受光し、該複数の受光素子の出力により前記複数の励起光源の励起光出力を制御する励起光出力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4667(P2013−4667A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133271(P2011−133271)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】