説明

半導体ウエーハの電極加工装置

【課題】 バイト等の切削工具で半導体ウエーハ表面のバンプの先端を削り取って高さを揃えるにあたり、バイトの折損等による異常加工が起こる前に加工を停止して半導体ウエーハの損傷を未然に防止する。
【解決手段】 チャックテーブル17を支持するステージ14に、バンプ2の切削加工時の音響状態を検出するAEセンサ40を取り付け、制御手段によって、AEセンサ40の出力信号が所定の正常加工領域を示す信号であるか否かを判別し、その出力信号が正常加工領域を逸脱した場合に、切削ユニット20を退避位置まで上昇させてバイト26を半導体ウエーハWから離し、異常加工が起こらないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を削り取って高さを揃える電極加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICやLSI等の電子回路が表面に形成された半導体チップは、各種電気・電子機器を小型化する上で今や必須のものとなっている。半導体チップは、円盤状の半導体ウエーハの表面に、ストリートと呼ばれる切断ラインで格子状の矩形領域を区画し、これら矩形領域に電子回路を形成した後、半導体ウエーハをストリートに沿って分割するといった工程で製造される。
【0003】
ところで、近年では、電気・電子機器のさらなる小型化を可能とするために、半導体チップの表面に、電極として15〜100μm程度の高さの突起状のバンプを形成し、このバンプを、実装基板に形成された電極に直接接合するようにしたフリップチップと称する半導体チップが開発され、実用に供されている。また、インターポーザーと呼ばれている基板に複数の半導体チップを併設したり積層したりして小型化を図る技術も開発され、実用化されている。
【0004】
上記いずれの技術も、デバイスの表面に形成した複数のバンプを介して基板どうしを圧着させて接合するものであり、このため、全てのバンプどうしが突き合わせられて接触するには、その高さが均一でなければならない。
【0005】
そこで、バンプの高さを揃える加工が必要であり、その加工方法としては、半導体ウエーハに対して薬品を用いたCMP加工により電極の先端を除去したり、あるいは、研削工具でその先端を研削するといった方法が一般的であった。しかしながら、前者の方法では、加工時間が長いとともに作業性に劣るという欠点があり、後者の方法では、バンプが金等の比較的粘性の高い金属の場合には研削性に劣ることからバリが発生しやすく、そのバリが隣接するバンプに接触して短絡するといった欠点があった。
【0006】
また、バンプを形成する方法として、金等の溶融金属粒を半導体ウエーハの表面に形成した電極に付着させ、電極となる粒状部分から突出するネック部分を破断してバンプを得るスタッドバンプ法がある。ところが、これによって形成されたバンプは、上記のようにネックを破断した際に、針状あるいは糸状の痕跡が先端に残るので研磨がしにくく、このため、加熱した板をバンプの先端に押し当てて高さを揃えることが行われている(特許文献1参照)。
【0007】
ところが、このようにしてバンプの高さを揃えても、隣接するバンプどうしが短絡する不具合は発生した。そこで本出願人は、半導体ウエーハの表面から突出するバンプの先端をバイト等の切削工具で削り取って高さを揃える加工装置を提案した(特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開2001−53097号公報
【特許文献2】特開2004−319697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献2に記載されるように、バイトによって半導体ウエーハ表面のバンプを除去する方法では、短絡を生じさせることなく容易にその高さを揃えることができるといった利点がある。しかしながらこの方法では、バイトの刃先が折損したり、バイトの刃先と半導体ウエーハとの間に切削屑等の異物が噛み込んだりすることにより、半導体ウエーハに損傷を与えるといった不具合を招く場合があり、改良策が求められることとなった。
【0010】
よって本発明は、バイト等の切削工具で半導体ウエーハ表面のバンプの先端を削り取って高さを揃えるにあたり、バイトの折損等による異常加工が起こる前に加工を停止して半導体ウエーハの損傷を防止することのできる半導体ウエーハの電極加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を削り取って高さを揃える半導体ウエーハの電極加工装置であって、切削工具を備えた切削手段と、半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、このチャックテーブルを、切削手段によって半導体ウエーハを加工する加工位置と、チャックテーブルに対して半導体ウエーハを着脱させる着脱位置とに位置付けるチャックテーブル移動手段と、切削手段の切削工具を、加工位置に位置付けられたチャックテーブルに対して接近・離間させる加工送り手段と、チャックテーブル、チャックテーブル移動手段または切削手段の少なくとも一つに取り付けられた音響センサと、この音響センサの出力信号に基づいて切削手段をフィードバック制御する制御手段とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明では、チャックテーブルに保持した半導体ウエーハを、チャックテーブル移動手段で加工位置に移動させ、加工送り手段で切削手段の切削工具を半導体ウエーハに接近させることにより、切削工具が、半導体ウエーハ表面に形成された複数の電極の先端を削り取る。これによって複数の電極の高さを均一に揃えることができる。切削工具はバイト等が用いられ、加工位置で互いに対向する切削工具とチャックテーブルとを相対回転させるなどの方法により、半導体ウエーハの電極の先端を削り取る構成が挙げられる。
【0013】
このようにして電極の先端を削り取っている加工中には、音響センサによって加工中の音響の状態(主として音量)が検出され、音響センサの出力信号が制御手段に供給される。制御手段は、供給される音響センサの信号に基づいて切削手段を適宜に制御する。本発明の音響センサは、正常加工の状態から出力信号に変動があった場合、何らかの異常加工が起こる予兆とみなす異常加工検出手段として用いられる。
【0014】
例えば、正常な加工が行われている状態から音量が大きくなった旨の信号が供給されると、加工送り手段で切削工具を半導体ウエーハから離間させて加工を停止させるといったフィードバック制御を制御手段が行う。すなわち、音響センサの出力信号に変動が生じた場合には、制御手段が加工を停止させ、異常加工を未然に防止する。
【0015】
そのような制御は、制御手段が、音響センサの出力信号が所定の正常加工領域を示す信号であるか否かを判別し、該出力信号が正常加工領域を逸脱した場合には、加工送り手段を、切削工具がチャックテーブルから退避する位置まで離間するよう作動させることにより行うことができる。これによって、切削工具の折損や切削屑の噛み込み等によって生じる異常加工が未然に防止され、半導体ウエーハの損傷を防止することができる。
【0016】
上記制御において、切削工具を半導体ウエーハから離間させることに加えて、異常加工の発生を報知するような形態は、本発明の好ましい形態である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チャックテーブルと切削手段の少なくとも一方に取り付けられた音響センサによって加工状態を検出し、音響センサの出力信号に基づいて、異常加工が起こる前に加工を停止させる制御を行うことができる。これにより、半導体ウエーハの表面から突出する複数の電極の先端を削り取って高さを揃えるにあたり、異常加工を未然に防止することができ、半導体ウエーハの損傷を防止することができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]装置の構成
図1は、一実施形態に係る電極加工装置の全体を示しており、図2は、該装置で加工する円盤状の半導体ウエーハWを示している。
【0019】
半導体ウエーハWは、図2(a)に示すように、表面に複数の半導体チップ1が格子状に形成されたものである。各半導体チップ1には、図2(b)に示すように、複数のバンプ(電極)2が形成されている。バンプ2は半導体チップ1に形成された電子回路の電極に接合されており、かつ、半導体ウエーハWの表面から突出している。これらバンプ2は、例えば周知のスタッドバンプ形成法等によって形成されており、高さは不揃いの場合が多い。電極加工装置は、1枚の半導体ウエーハWの表面から突出する全てのバンプ2の先端を削り取って高さを揃える加工を半導体ウエーハWに対して施すものである。
【0020】
その電極加工装置は、図1に示すように、各種機構が搭載された基台10を備えている。この基台10は、横長の状態に設置されて基台10の主体をなす直方体状のテーブル11と、このテーブル11の長手方向一端部(図1の奥側の端部)から、テーブル11の幅方向かつ鉛直方向上方に延びる壁部12とを有している。図1では、基台10の長手方向、幅方向および鉛直方向を、それぞれY方向、X方向およびZ方向で示している。
【0021】
基台10のテーブル11上は、長手方向のほぼ中間部分から壁部12側が加工エリア11Aとされ、この反対側が、加工エリア11Aに加工前の半導体ウエーハWを供給し、かつ、加工後の半導体ウエーハWを回収する供給・回収エリア11Bとされている。
以下、本装置が備える各種機構を、加工エリア11Aに設けられるものと供給・回収エリア11Bに設けられものとに分けて説明する。
【0022】
(a)加工エリア11Aの機構
図1に示すように、加工エリア11Aには矩形状の凹所13が形成されており、この凹所13の底面には、矩形状のステージ(チャックテーブル移動手段)14が、Y方向に移動自在に設けられている。このテーブル11は、ステージ14内に配されたY方向に延びるガイドレールに摺動自在に取り付けられ、適宜な駆動機構(いずれも図示略)によって同方向を往復動させられる。
【0023】
ステージ14の移動方向両端部には、蛇腹15,16の一端が、それぞれ取り付けられており、これら蛇腹15,16の他端は、壁部12の内面と、壁部12に対向する凹所13の内壁面に、それぞれ取り付けられている。これら、蛇腹15,16は、ステージ14を上記ガイドレールに連結させるために凹所13の底面に形成された図示せぬスリットを覆って、ステージ14内に切削屑等が落下することを防ぐもので、ステージ14の移動に伴って伸縮し、その移動を妨げない。
【0024】
ステージ14上には、Z方向を回転中心とし、上面が水平とされた円盤状のチャックテーブル17が回転自在に設けられている。半導体ウエーハWは、バンプ2が形成された表面を上に向けて、このチャックテーブル17上に同心的、かつ水平に載置される。チャックテーブル17は、ステージ14内に設けられた図示せぬ回転駆動機構によって、一方向または両方向に回転させられる。なお、本実施形態の後述する切削ユニット20は、切削工具であるバイト26を回転させるタイプであるから、半導体ウエーハWを保持するチャックテーブル17は、あえて回転自在とせずに固定式としてもよい。
【0025】
チャックテーブル17のチャック方式は、この場合、周知のバキュームチャックである。すなわち、この場合のチャックテーブル17は、図3(a)に示すように、表面に複数の溝17aが同心的に、かつ等間隔をおいて形成されており、チャックテーブル17内には、図3(b)に示すように、各溝17aを連通し、かつ、裏面側に開口する空気吸引通路17bが形成されている。この空気吸引通路17bの裏面側への開口には、図示せぬバキューム装置の空気吸引口が接続され、バキューム装置を運転すると、半導体ウエーハWがチャックテーブル17上に吸着・保持されるようになっている。
【0026】
チャックテーブル17は、壁部12側に移動すると加工位置に位置付けられ、その加工位置の上方には、切削ユニット(切削手段)20が配されている。この切削ユニット20は、基台10の壁部12に、送り機構(加工送り手段)30を介してZ方向に昇降自在に支持されている。送り機構30は、鉛直面とされた壁部12の内面に固定された互いに平行でZ方向に延びる一対のガイドレール31と、これらガイドレール31に摺動自在に取り付けられたスライダ32と、このスライダ32をガイドレール31に沿って往復動させるスライダ駆動機構33とを備えている。
【0027】
スライダ駆動機構33は、スライダ32と壁部12との間の空間に、軸方向をZ方向と平行にして配され、上端部および下端部が、それぞれ壁部12に設けられた軸受34,35に回転自在に取り付けられた螺子ロッド36と、この螺子ロッド36を回転駆動するパルスモータ37とを備えている。螺子ロッド36は、スライダ32の背面に突出形成された図示せぬブラケットに螺合して貫通している。これにより、スライダ32は、パルスモータ37が正転して螺子ロッド36が一方向に回転した場合には下方(送り方向)に移動し、パルスモータ37が逆転して螺子ロッド36が逆方向に回転すると上方(退避方向)に移動する。
【0028】
上記切削ユニット20は、スライダ32のテーブル11側に面する前面に固定されたブロック21と、軸方向がZ方向に沿う状態にブロック21に通され、かつ、このブロック21に固定された円筒状のハウジング22と、このハウジング22内に同心的、かつ回転自在に支持された回転軸23と、この回転軸23を回転駆動するサーボモータ24と、ハウジング22から下方に突出する回転軸23の下端に同心的に固定された円盤状のホイールマウント25と、このホイールマウント25に着脱可能に取り付けられたバイト(切削工具)26とを備えている。この場合、回転軸23およびホイールマウント25は、サーボモータ24によって図1の矢印(ホイールマウント25の上面に記載)方向に回転させられる。
【0029】
バイト26は、図4に示すように、シャンク27の先端にダイヤモンド等からなる刃部28が固着されたものである。このバイト26は、刃部28を下に配し、かつ、刃部28の切削方向(図4(a)の矢印方向)をホイールマウント25の回転方向に向けた状態で、シャンク27がホイールマウント25に形成された取付孔25aに下から挿入されている。そして、その挿入状態が、ホイールマウント25の外周面から取付孔25aに向けてねじ込まれるボルト29によって固定されている。これによってバイト26はホイールマウント25の外周部から下に突出する状態に固定されている。
【0030】
図5に示すように、ホイールマウント25の外径は、半導体ウエーハWの直径の1.5倍程度とされるが、寸法はこれに限定されるものではない。しかしながら、ホイールマウント25への取付位置に基づくバイト26の回転軌跡は、半導体ウエーハWの表面全面を加工可能な大きさに設定される。また、チャックテーブル17と切削ユニット20とは、チャックテーブル17上に同心的に保持される半導体ウエーハWの回転中心と、ホイールマウント25の回転中心を結ぶ線が、Y方向に沿った状態となるように位置付けられている。
【0031】
ここで、切削ユニット20によってバンプ2を加工する動作を簡単に説明すると、サーボモータ24によってホイールマウント25およびバイト26を回転させて切削ユニット20を運転し、ステージ14を所定速度で切削ユニット20方向に移動させてチャックテーブル17上に保持させた半導体ウエーハWを切削ユニット20の下方である加工位置に送り込んでいく。この時、チャックテーブル17は回転させず固定状態としておく。
【0032】
すると、バイト26の刃部28によってバンプ2の先端は削り取られていき、図5に示すように、半導体ウエーハWがホイールマウント25で覆われるまで、すなわち、半導体ウエーハWの外周縁の一端から他端に至る直径にわたってバイト26の刃部28が半導体ウエーハWの表面に作用するようにチャックテーブル17を送り込むと、半導体ウエーハWに形成された全てのバンプ2の高さが均一に揃えられる。回転するバイト26に対して、チャックテーブル17が固定されていて回転しない半導体ウエーハWを送り込んで表面全面を加工することにより、バイト26の切削模様であるソーマークは、図5の右側に示す半導体ウエーハWのようになる。
【0033】
さて、バンプ2の切削加工中には、バイト26の刃部28がバンプ2に当たって削り取る音が放出される。そして、その音響の大きさを検出する音響センサとして、AE(Acoustic Emission)センサ40が、図1に示すようにステージ14の側面に取り付けられている。
【0034】
AEセンサ40は、上記のようなバイト26によるバンプ2の切削加工時に放出される弾性波を音響として検出するもので、その時の音響は、固体が破壊に至る前から、小さな変形や微小クラックの発生、進展に伴って発生することから、材料や構造物の欠陥や破壊を発見、予知することが可能とされている。
【0035】
図1に示すように、AEセンサ40が検出する音響の大きさは、電気信号に変換されて制御手段50に供給される。制御手段50は、AEセンサ40の出力信号が所定の正常加工領域を示す信号であるか否かを判別する判別部51を有している。そして、この判別部51で、AEセンサ40の出力信号が正常加工領域を逸脱したと判別されたら、その判別信号が異常信号発信部52に供給され、さらに、異常信号発信部52からは、回避部53および異常報知部54に異常信号が供給される。
【0036】
上記正常加工領域とは、バイト26によってバンプ2が正常に切削されている領域であり、加工時に異音が生じる直前において、正常加工領域を逸脱するように設定される。異音は、バイト26の刃部28が折損したり、バイト26の刃部28と半導体ウエーハWとの間に切削屑等の異物が噛み込んだりした場合に発生することが、経験的に判っている。AEセンサ40は、そのような異常加工が起こる直前の音響信号の変動を検出し、その時に、判別部51は正常加工領域を逸脱したと判別する。
【0037】
図6は、正常加工領域を例示しており、加工開始から終了までの間にAEセンサ40から出力された信号は、時間Aで出力が強くなっており、この区間で異常加工が起こったと判断される。したがって、正常加工領域は、出力信号においてC〜Dの範囲と設定される。なお、図6に示すように、加工の開始時と終了時においては出力信号の強度が瞬間的に高まる傾向にあり、これらのタイミングにおいては、出力信号をカットして判別するものとする。
【0038】
制御手段50の判別部51が、AEセンサ40の出力信号が正常加工領域の範囲内であると判別している場合には、バンプ2の切削加工は維持される。ここで、切削加工中に、判別部51でAEセンサ40の出力信号が正常加工領域を逸脱したと判別され、回避部53に異常信号が供給されると、回避部53から送り機構30のパルスモータ37に回避信号が供給され、パルスモータ37を所定ステップ逆転させる。これによって、切削ユニット20は上昇し、バイト26が半導体ウエーハWから所定距離上方に離れた退避位置で停止する。
【0039】
また、異常報知部54に異常信号が供給されると、異常報知部54から図示せぬブザー等の警報音発生装置に信号が発せられ、この警報音発生装置から警報が放音されて、異常加工が起ころうとしていた旨がオペレータに報知される。
【0040】
(b)供給・回収エリア11Bの機構
図1に示すように、基台10のテーブル11上に設定された上記供給・回収エリア11Bには、上記凹所13よりも狭く、かつ深い矩形状の凹所18が形成されており、この凹所18の底部には、昇降自在とされた2節リンク式の水平旋回アーム60aの先端にフォーク60bが装着された移送機構60が設置されている。
【0041】
そして、凹所18の周囲のテーブル11上には、上から見た状態で、反時計回りに、カセット61、位置合わせ台62、1節の水平旋回アーム63aの先端に吸着板63bが取り付けられた供給アーム63、供給アーム63と同じ構造で、水平旋回アーム64aおよび吸着板64bを有する回収アーム64、スピンナ式の洗浄装置65、カセット66が、それぞれ配置されている。
【0042】
カセット61、位置合わせ台62および供給アーム63は、半導体ウエーハWをチャックテーブル17に供給する手段であり、回収アーム64、洗浄装置65およびカセット66は、加工後の半導体ウエーハWをチャックテーブル17から回収する手段である。2つのカセット61,66は同一の構造であるが、ここでは用途別に、供給カセット61、回収カセット66と称する。これらカセット61,66は、複数の半導体ウエーハWを収容して持ち運びするためのもので、テーブル11の所定位置にセットされる。
【0043】
供給カセット61には、当該電極加工装置でバンプ2を加工すべき複数の半導体ウエーハWが、積層された状態で収容される。移送機構60は、アーム60aの昇降・旋回と、フォーク60bの把持動作によって、供給カセット61内から1枚の半導体ウエーハWを取り出し、さらにその半導体ウエーハWを、バンプ2が形成されている表面を上に向けた状態で、位置合わせ台62上に載置する機能を有する。
【0044】
位置合わせ台62上に載置された半導体ウエーハWは、一定の位置に決められた状態で載置される。供給アーム63は、位置合わせ台62上に載置された半導体ウエーハWを吸着板63bに吸着し、アーム63aを旋回させて、チャックテーブル17上に半導体ウエーハWを配し、この後、吸着動作を停止することにより、チャックテーブル17上に半導体ウエーハWを載置する機能を有する。位置合わせ台62で位置決めされた半導体ウエーハWを、供給・回収位置のチャックテーブル17上に載置することにより、半導体ウエーハWとチャックテーブル17とは同心状となる。
【0045】
回収アーム64は、上記切削ユニット20によってバンプ2が加工されたチャックテーブル17上の半導体ウエーハWを吸着板64bに吸着し、アーム64aを旋回させて、半導体ウエーハWを洗浄装置65内に移送する機能を有する。洗浄装置65は、半導体ウエーハWを水洗した後、半導体ウエーハWを回転させて水分を振り飛ばし除去する機能を有する。そして、洗浄装置65によって洗浄された半導体ウエーハWは、移送機構60によって回収カセット66内に移送、収容される。
【0046】
なお、供給アーム63と回収アーム64の間には、チャックテーブル17に高圧エアーを噴射してチャックテーブル17を洗浄するチャックテーブル洗浄ノズル67が配されている。上記のように、供給アーム63によってチャックテーブル17上に半導体ウエーハWを載置し、また、回収アーム64によってチャックテーブル17上の半導体ウエーハWを回収する際、すなわちチャックテーブル17に対して半導体ウエーハWを着脱させる際には、ステージ14を供給・回収エリア11B側に移動させて供給・回収位置で停止させる。その供給・回収位置は、各アーム63,64の吸着板63b,64bに吸着された半導体ウエーハWの中心と、チャックテーブル17の回転中心と結ぶ線が、Z方向に沿う位置である。
【0047】
切削ユニット20による半導体ウエーハWの加工位置は、供給・回収位置よりも壁部12側に所定距離移動した範囲とされ、チャックテーブル17上の半導体ウエーハWは、ステージ14の移動によって、これら加工位置と供給・回収位置との間を行き来させられる。チャックテーブル洗浄ノズル67によるチャックテーブル17の洗浄は、供給・回収位置において行われる。
【0048】
[2]装置の動作
続いて、以上の構成からなる一実施形態の電極加工装置の使用方法ならびに動作を、以下に説明する。
オペレータは、バンプ2を加工すべき複数の半導体ウエーハWを収容した供給カセット61と、空の回収カセット66を、供給・回収エリア11Bの所定位置にそれぞれセットして、加工の準備を行う。
【0049】
また、上記準備と平行して、半導体ウエーハWの加工に先立ち、バイト26の刃先とチャックテーブル17の上面との間隔を均一にするために、チャックテーブル17の上面を、切削ユニット20自身で切削するセルフカットを行う場合がある。
【0050】
セルフカットは、まず、バイト26がチャックテーブル17の表面を所定厚さ切削し得る高さまで、切削ユニット20を送り機構30によって下降させ、サーボモータ24によってホイールマウント25およびバイト26を回転させる。このように切削ユニット20を運転させた状態から、チャックテーブル17を、固定させたままの状態で、供給・回収位置から加工位置に向けて移動させ、チャックテーブル17の表面全面がバイト26によって切削されるまで、チャックテーブル17を壁部12方向に移動させる。図7はセルフカットの状態を模式的に示しており、矢印はバイト26の相対的な切削方向を示している。チャックテーブル17のセルフカットが終わったら、そのチャックテーブル17を供給・回収位置に戻す。
【0051】
チャックテーブル17のセルフカット時に発生する音響はAEセンサ40で検出され、その検出信号(出力信号)は、制御手段50の判別部51に供給される。判別部51が、AEセンサ40の出力信号が正常加工領域の範囲内であると判別している場合には、セルフカットを継続する。
【0052】
そして、セルフカット中に、判別部51でAEセンサ40の出力信号が正常加工領域を逸脱したと判別されたら、異常信号発信部52から回避部53および異常報知部54に異常信号が供給される。これにより、切削ユニット20は速やかに退避位置まで上昇するとともに、異常報知部54から警報音発生装置に信号が発せられ、この警報音発生装置から警報が放音されて、異常加工が起ころうとしていた旨がオペレータに報知される。
【0053】
セルフカット時の異常加工の現象としては、バイト26の刃部28が折損したり、あるいは切削屑がチャックテーブル17と刃部28との間に噛み込んだりして生じる異常振動などが挙げられ、異常振動による音響の変動が、AEセンサ40によって検出されるのである。
【0054】
このようにして異常加工の発生がAEセンサ40によって予知され、その時には切削ユニット20が半導体ウエーハWから離れて切削を停止するので、チャックテーブル17の表面が損傷することが防止される。異常報知部54によって異常加工が予知されたオペレータは、異常加工が起ころうとしていた原因を取り除き、この後、引き続きセルフカットを行わせる。
【0055】
次に、チャックテーブル17のセルフカットが終了したら、そのチャックテーブル17を供給・回収位置に戻す。続いて、移送機構60によって、供給カセット61内から1枚の半導体ウエーハWが取り出され、さらにその半導体ウエーハWは、移送機構60によってバンプ2が形成された表面を上に向けた状態で、位置合わせ台62上に載置される。
【0056】
次に、位置合わせ台62に載置された半導体ウエーハWは、供給アーム63により、予め供給・回収位置に停止しているチャックテーブル17上に、表面を上に向けて同心状に載置される。そして、半導体ウエーハWは、バキューム装置によってチャックテーブル17上に吸着、保持される。
【0057】
次に、切削ユニット20の高さを、バイト26がバンプ2を所定の高さに切削し得る高さになるよう送り機構30によって調製し、サーボモータ24によってホイールマウント25を回転させる。この状態から、ステージ14を切削ユニット20側に移動させて、固定させたままの状態のチャックテーブル17上に保持した半導体ウエーハWを、所定速度で切削ユニット20の下方である加工位置に送り込んでいく。
【0058】
これによって半導体ウエーハWの表面のバンプ2はバイト26の刃部28によって削り取られていく。図8はバンプ2の切削加工の状態を模式的に示しており、矢印はバイト26の相対的な切削方向を示している。図5に示すように、半導体ウエーハWがホイールマウント25で覆われるまでチャックテーブル17を移動させることにより、全てのバンプ2の高さが均一に揃えられる。ここで加工は終了し、切削ユニット20を上昇させてホイールマウント25の回転を停止させる。
【0059】
バイト26によってバンプ2の先端を切削している時に発生する音響は、AEセンサ40で検出され、その検出信号は、制御手段50の判別部51に供給される。判別部51が、AEセンサ40の出力信号が正常加工領域の範囲内であると判別している場合には、バンプ2の切削加工は継続される。
【0060】
そして、バンプ2の切削加工中に、判別部51でAEセンサ40の出力信号が正常加工領域を逸脱したと判別されたら、異常信号発信部52から回避部53および異常報知部54に異常信号が供給される。これにより、切削ユニット20は速やかに退避位置まで上昇するとともに、異常報知部54から図示せぬブザー等の警報音発生装置に信号が発せられ、この警報音発生装置から警報が放音されて、異常加工が起ころうとしていた旨がオペレータに報知される。
【0061】
バンプ2の切削加工時における異常加工は、バイト26の刃部28の折損したり、あるいは切削屑が半導体ウエーハWと刃部28との間に噛み込んだりすることによって起こる。このようなバンプ2の加工時における異常加工の発生がAEセンサ40によって予知され、その時には切削ユニット20が半導体ウエーハWから離れて切削を停止するので、半導体ウエーハWに対する異常加工は起こらない。異常報知部54によって異常加工が予知されたら、オペレータは異常加工が起ころうとしていた原因を取り除き、この後、バンプ2の切削加工を再開させる。
【0062】
なお、上記の加工動作の好適な条件例を挙げると、サーボモータ24によるバイト26の回転速度は2000RPM程度、ステージ14の移動による半導体ウエーハWの送り速度は0.66mm/秒である。
【0063】
続いて、バンプ6の高さが揃えられた加工後の半導体ウエーハWを回収する動作を説明すると、まず、ステージ14を供給・回収位置まで移動させるとともに、バキューム装置の動作を停止させ、チャックテーブル17上での半導体ウエーハWの保持状態を解除する。次に、その半導体ウエーハWは、回収アーム64によって洗浄装置65内に移送される。ここで半導体ウエーハWは水洗され、その後、回転させられて水分が除去される。
【0064】
次いで、半導体ウエーハWは、移送機構60によって回収カセット66内に移送、収容される。また、回収アーム64によってチャックテーブル17から半導体ウエーハWが取り去られた後は、チャックテーブル洗浄ノズル67から、供給・回収位置で停止しているステージ14上のチャックテーブル17に向けて高圧エアーが噴射され、チャックテーブル17が洗浄される。
【0065】
以上が1枚の半導体ウエーハWに対してバンプ2の先端を切削加工し、この後、洗浄して回収するサイクルである。このサイクルを繰り返して、供給カセット61内の半導体ウエーハWが全て加工処理され、回収カセット66内に収容されると、オペレータは回収カセット66を回収して、加工後の複数の半導体ウエーハWを次の製品化工程に運搬する。そして、バンプ2を加工すべき新たな複数の半導体ウエーハWを収容した供給カセット61と、空の回収カセット66を、供給・回収エリア11Bの所定位置にそれぞれセットし、引き続き上記サイクルで切削加工を行う。なお、回収カセット66としては、空になった供給カセット61を流用してもよい。
【0066】
[3]装置の効果
本実施形態の電極加工装置によれば、バンプ2の切削加工時の音響状態を検出するAEセンサ40と、このAEセンサ40の出力信号を受ける制御手段50によって、異常加工を予知するとともに切削加工を停止させるので、異常加工が未然に防止され、その結果として半導体ウエーハの損傷を防止することができる。このような異常加工の回避は、上記のようにチャックテーブル17のセルフカットの際にも行われ、チャックテーブル17の損傷も防止される。
【0067】
なお、チャックテーブル17のセルフカット時の正常加工領域と、バンプ2の切削加工時の正常加工領域は異なる場合がある。その場合には、それぞれの正常加工領域を判別部51に記憶させ、セルフカット時とバンプ2の切削加工時とにおいて、判別部51による判別が適確に行われるように制御すればよい。
【0068】
また、上記実施形態では、AEセンサ40をステージ14の側面に取り付けているが、このAEセンサ40は、切削ユニット20の例えばブロック21等に取り付けてもよく、また、可能であれば、チャックテーブル17やホイールマウント25に取り付けてもよい。本発明に係るAEセンサ40は、チャックテーブル17、チャックテーブル移動手段であるステージ14、切削ユニット20の少なくとも一つに取り付けられ、複数の場合には、それらAEセンサ40の出力信号が制御手段50の判別部51に供給されるように構成される。
【0069】
[4]切削ユニットの別形態
図9は、切削ユニットの別形態を示している。この場合の切削ユニット70は、上記送り機構30のスライダ32の前面に固定されたブロック71と、このブロック71に着脱自在に固定されるバイト26とを備えている。バイト26は、ブロック71の反スライダ側の先端部に形成された取付孔71aに、上記実施形態と同様に挿入されてボルト29によって固定されている。そして、ブロック71の上面に、制御手段50に接続されるAEセンサ40が取り付けられている。
【0070】
切削ユニット70を用いる場合には、チャックテーブル17とともに半導体ウエーハWを回転させながら、ステージ14を移動させて、半導体ウエーハWを加工位置に送り込み、固定状態のバイト26によってバンプ2の先端を切削加工する。この時の半導体ウエーハWの送りは、図10に示すように半導体ウエーハWの半径分、あるいは半径より僅かに長い距離をバイト26に対して移動させることにより、表面全面が加工される。そして、この時のバイト26の切削模様であるソーマークは、図10の右側に示す半導体ウエーハWのようになる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る電極加工装置の全体斜視図である。
【図2】(a)は図1に示した電極加工装置でバンプが加工される半導体ウエーハの全体斜視図、(b)は半導体ウエーハに形成された半導体チップの平面図である。
【図3】図1に示した電極加工装置が具備するチャックテーブルの(a)斜視図、(b)一部断面図である。
【図4】図1に示した電極加工装置が具備する切削ユニットのバイトの(a)側面図、(b)正面図である。
【図5】切削ユニットのホイールマウントとチャックテーブルに保持される半導体ウエーハとの位置関係、および半導体ウエーハのソーマークを示す平面図である。
【図6】AEセンサの出力信号に応じて設定される正常加工領域を説明するための線図である。
【図7】チャックテーブルのセルフカットの状態を模式的に示す側面図である。
【図8】バンプの切削加工状態を模式的に示す側面図である。
【図9】切削ユニットの別形態を示す斜視図である。
【図10】図7に示した切削ユニットとチャックテーブルに保持される半導体ウエーハとの位置関係、および半導体ウエーハのソーマークを示す平面図である。
【符号の説明】
【0072】
1…半導体チップ
2…バンプ(電極)
14…ステージ(チャックテーブル移動手段)
17…チャックテーブル
20,70…切削ユニット(切削手段)
26…バイト(切削工具)
30…送り機構(加工送り手段)
40…AEセンサ(音響センサ)
50…制御手段
W…半導体ウエーハ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエーハの表面に突出する複数の電極の先端を削り取って高さを揃える半導体ウエーハの電極加工装置であって、
切削工具を備えた切削手段と、
前記半導体ウエーハを保持するチャックテーブルと、
このチャックテーブルを、前記切削手段によって前記半導体ウエーハを加工する加工位置と、チャックテーブルに対して半導体ウエーハを着脱させる着脱位置とに位置付けるチャックテーブル移動手段と、
前記切削手段の前記切削工具を、前記加工位置に位置付けられたチャックテーブルに対して接近・離間させる加工送り手段と、
前記チャックテーブル、前記チャックテーブル移動手段または前記切削手段の少なくとも一つに取り付けられた音響センサと、
この音響センサの出力信号に基づいて前記切削手段をフィードバック制御する制御手段とを備えることを特徴とする半導体ウエーハの電極加工装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記音響センサの出力信号が所定の正常加工領域を示す信号であるか否かを判別し、該出力信号が正常加工領域を逸脱した場合には、前記加工送り手段を、前記切削工具が前記チャックテーブルから退避する位置まで離間するよう作動させるとともに、異常を報知することを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエーハの電極加工装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−245439(P2006−245439A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−61324(P2005−61324)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】