説明

半導体装置および半導体製造装置

【課題】半導体ウエハと半導体製造装置のホルダとをシリコン酸化膜を介して接触させた場合に、半導体ウエハとホルダとの貼り付きが抑制された半導体装置およびこの半導体装置を製造可能とする半導体製造装置を提供すること。
【解決手段】
この半導体製造装置は、反応容器となるチャンバー120と、半導体ウエハにDCSガスを提供するシャワーヘッド130と、半導体ウエハに熱を加えるヒーター150と、載置面13に半導体ウエハ200が接触して支持される載置部11と、この載置部11を囲む周縁部12と、載置面13に部分的に設けられ、シリコン樹脂を主成分とする支持部材14と、を有するウエハホルダ110を少なくとも備える。この支持部材14は、SiとOとを主成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は,半導体ウエハ及び半導体ウエハの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高温に加熱されたシリコン基板上に水素キャリアにより、SIC1 、SiHCl,SiHCl またはSiH等のSi原料ガスを供給し、基板上でH−Si−Cl系の反応を通じてシリコン単結晶を堆積、成長させるCVD法(Chemical vapor deposition)がシリコンエピタキシャル成長方法として最も広く研究、応用されている。
エピタキシャル成長方法を利用した従来のエピタキシャル成長装置としては、チャンバー内で一対のリング状の半導体ウエハをそれらの成長対象表面を互いに対向させて配置することにより一対の半導体ウエハの間に独立した反応空間を形成する一対のウエハホルダと、この前記成長対象表面を含む反応空間内部に材料ガスを供給する材料ガス供給用のシャワーヘッドと、反応空間内部を所定の成長温度まで加熱するヒーターとを少なくとも備えている。また、このエピタキシャル成長装置では、反応空間内部を加熱しながら半導体ウエハを回転テーブルによってウエハホルダごと回転させる回転部材も備えている。このような装置を用いることで、材料ガスは半導体ウエハの成長対象表面に供給され、その表面上にエピタキシャル成長層が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−349405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来より、厚膜形成を目的とするエピタキシャル成長装置ではエピタキシャル成長時にウエハホルダに載置した半導体ウエハがホルダに貼り付いてしまい、ウエハに微小な欠けである所謂チッピングの発生が問題となっていた。チッピングが発生すると、エピタキシャル成長装置内や後の工程でウエハが破損してしまう懸念があり、生産性に大きな影響を与えかねない。
【0005】
この点、ウエハの裏面をシリコン酸化膜(SiO2)で覆うことでウエハホルダとウエハとの接触面でのエピタキシャル成長を抑え、両者の貼り付きを防ぐ対策が考えられる。しかしながら、裏面全面をシリコン酸化膜とした場合、ガスの回り込みにより、裏面に多結晶のシリコン粒が堆積し、ウエハ搬送用ハンドでの真空吸着エラーを引き起こす等、製造装置を汚染する原因となる。
【0006】
そこで、エピタキシャル成長時における、ウエハホルダに対する半導体ウエハの貼り付きを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、この半導体製造装置は、反応容器であるチャンバーと、半導体ウエハにSiを主成分とするSi原料ガスを提供するシャワーヘッドと、前記半導体ウエハに熱を加えるヒーターと、載置面に半導体ウエハの外周部が接触して支持される載置部と、この載置部を囲む周縁部と、SiとOとを主成分とする支持部材が前記載置面に部分的に設けられたウエハホルダと、を備える。
【0008】
また、実施形態によれば、この半導体装置は、基板の主表面上に形成された気相成長層と、前記基板の裏面に形成されたシリコン酸化膜と、前記基板の外周部に部分的に形成され、シリコン樹脂を主成分とする支持部材と、前記シリコン酸化膜を被覆するように形成されたポリシリコン膜と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態にかかる半導体装置の構成の一例を示す概念図である。
【図2】実施形態にかかるウエハホルダを示す図であり、(a)は実施形態にかかるウエハホルダの上面図、(b)はウエハホルダのA部を3次元に切り抜いた立体断面図である。
【図3】実施形態にかかる半導体ウエハを示す図であり、(a)は実施形態にかかる半導体ウエハの上面図、(b)は半導体ウエハのB部を切り抜いた断面図である。
【図4】実施形態にかかる半導体ウエハの製造プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら発明の実施の形態を説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態にかかる半導体製造装置の構成の一例を示す概念図である。この半導体製造装置1は、気相成長装置の一例であり、半導体ウエハを支持するウエハホルダ100と、反応容器となるチャンバー120と、半導体ウエハに四塩化ケイ素(SiCl)、三塩化ケイ素(SiHCl)、ジクロルシラン(SiHCl)またはモノシラン(SiH)等を主成分とするSi原料ガスを提供するシャワーヘッド130、ウエハホルダ100を回転させる回転部材140、半導体ウエハに熱を加えるヒーター150、を有している。
【0012】
一例として、シリコン(Si)からなる半導体ウエハ200を半導体装置1を用いてエピタキシャル成長させる場合について説明する。まず、ウエハホルダ100の回転により半導体ウエハ200を所定の回転数で回転させる。そして、回転させながら、シャワーヘッド130からSi原料ガスをチャンバー120内に供給する。そして、ヒーター150により加熱された半導体ウエハ200の表面で原料ガスの熱分解或いは水素還元を行なう。これにより、半導体ウエハ200の表面にシリコンエピタキシャル膜が成長させられることとなる。
【0013】
チャンバー120には、ガスを供給する流路122とガスを排気する流路123が接続されており、流路122はシャワーヘッド130に接続されている。このような接続状態で、チャンバー120の室内は常圧あるいは所定の真空雰囲気に保持される。
【0014】
ウエハホルダ100は、内側に基板の一例となる半導体ウエハ200と接触する載置部11とその外側に載置部11に接続する周縁部12を有している。
【0015】
載置部11は、所定の内径の貫通する開口部が形成され、炭化シリコン(SiC)を主な材料としている。上面側から垂直あるいは所定の角度で所定の深さに掘り込まれた載置面13で半導体ウエハ200と接触して半導体ウエハ200を支持する。
【0016】
周縁部12は、外周が円形に形成されており、炭素(C)を主な材料として構成されている。この周縁部12は、回転機構(図示せず)により半導体ウエハ200と直行する半導体ウエハ200面の中心線を軸に回転させられる回転部材140上に配置される。そして、ウエハホルダ100は、回転部材140と共に回転することで、半導体ウエハ200を回転させることが可能となる。
【0017】
図2は、第1の実施形態にかかるウエハホルダ100を示す図であり、(a)はウエハホルダ100の上面図、(b)はウエハホルダ100のA部を3次元に切り抜いた立体断面図である。図2に示されるように、このウエハホルダ100は、載置される半導体ウエハ200よりも大きい外形を有する略円板状に形成されており、半導体ウエハ200が載置される載置面13を有する載置部11と、周縁部12とを備えている。
【0018】
この載置部11には、中心が載置部11の中心と一致する半導体ウエハ200が載置され、半導体ウエハ200の外周部において載置面13と接触し、支持される。
【0019】
周縁部12には、載置部11の周縁を囲む状態に起立する内周面15と、内周面15の上端から載置部11の載置面13に沿って外側に延出形成される上面16とが一体的に形成された略リング板状の周縁部が設けられている。
【0020】
ここで、載置部11に形成された載置面13には、支持部材14が部分的に形成されている。支持部材14は、シリコン(Si)と酸素(O)とを主成分としており、たとえば、CVD法、スパッタ法、あるいは塗布法(例えば、ポリシラザン法やゾルゲル法)により形成されるシリカガラスであってよい。支持部材14は、円板状に形成された載置面13上に、たとえば60度の間隔で形成されることが好ましい。また、支持部材14は、半導体ウエハ200の底面と側面に接触する部材に其々別々に分けても良く、底面(側面)の支持部材で貼り付きが無いのであれば、側面(底面)の支持部材のみでも良い。この支持部材14を介して、半導体ウエハ200が載置部11に形成された載置面13に接触させ、その後、エピタキシャル成長をさせる。
【0021】
なお、支持部材14は、SiO等の石英を主成分とする硬質の部材であってもよい。支持部材14として硬質の部材を用いる場合、載置面13に埋め込み孔(図示せず)を形成し、この埋め込み孔に支持部材14としての石英ガラスをはめ込む。あるいは、支持部材14としての石英ガラスをピン状に形成し、載置面13を挟み込むようにネジ(とナット)で支持部材14を固定してもよい。これにより、支持部材14の脱着が可能となり、定期的に交換することも可能となる。この際、載置面13の部材、たとえばSiCとの熱膨張係数差を考慮し、支持部材14のはめ込み部の径よりも埋め込み孔径を大きくしておく。
【0022】
このように、載置部11に部分的に形成された支持部材14を介してウエハホルダ100に半導体ウエハ200を載置させ、エピタキシャル成長をさせることで、ウエハホルダ100に対する半導体ウエハ200の貼り付きを抑制させることが可能となる。
【0023】
これが可能となる一因として、以下が考えられる。すなわち、シリコン樹脂を主成分とする支持部材14をエピタキシャル反応させた場合、SICl 、SiHCl,SiHCl またはSiH等のSi原料ガスと化学反応を起こし、支持部材14の部分で塩化水素(HCL)を自発的に発生させられる。この塩化水素によるエッチング効果により、ウエハホルダ100と半導体ウエハ200の界面でのシリコン核の発生を抑制させることができる。
【0024】
なお、ウエハホルダ100の全体に支持部材14を形成した場合、温度分布・熱伝導率などに影響を与えることとなり好ましくない。また、支持部材14の表面積結晶が大きいほど、結晶粒が発生し易くなり半導体製造装置1の汚染が深刻となる。
【0025】
本実施形態では、本ウエハホルダ100に支持部材14を塗布、あるいは石英製の部品を取り付けたうえで、半導体ウエハ200を載置することで、貼り付きの抑制と、一方で結晶粒の発生を抑制することが可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態にかかる半導体ウエハ200を示す図であり、(a)は半導体ウエハ200の上面図、(b)は半導体ウエハ200のB部を切り抜いた断面図である。
【0027】
第2の実施形態では、半導体ウエハ200の側に支持部材26を形成し、ウエハホルダ100との貼り付きを抑制する。具体的には、図3(a)、(b)に示されるように、半導体ウエハ200は、オリエンテーションフラット部(以下、オリフラ部)20と、シリコン基板21の主表面上に形成されたシリコンエピタキシャル層22と、裏面23に形成されたシリコン酸化膜24と、半導体ウエハ200の外周部25に形成された支持部材26と、シリコン酸化膜24の上面に形成されたポリシリコン膜27と、を有する。
【0028】
ここで、支持部材26は、シリコン(Si)と酸素(O)を主成分としており、たとえば、部分的な塗布法によるシリカ膜、あるいは、CVD酸化膜やシリコン熱酸化膜(SiO)により形成されるものであってよい。あるいは、外周部25に全面塗布されていてもよい。以降、一例として、支持部材26がシリコン熱酸化膜である場合を説明する。
【0029】
図4は本実施形態にかかる半導体ウエハ200の製造プロセスを示す図であり、支持部材26が形成された図3(a)のB部について特に示す。以下、図4を参照しながら本実施形態にかかる半導体ウエハ200の製造プロセスについて説明する。
【0030】
まず、製造されたシリコン単結晶インゴットに対して、面取り工程、スライス工程、ラッピング工程及びエッチング工程を順に行いシリコン基板21を生成する(図示せず)。
【0031】
次に、図4(a)に示す通り、CVD法などによりシリコン基板21の表面全域にシリコン酸化膜25を形成する。具体的には、シリコン基板21を350〜450℃に加熱しつつ、原料ガスをキャリアガスとともに吹き付ける。あるいは、シリコン基板21を600〜1100℃に加熱しつつ、酸素を含むガスの雰囲気で、熱酸化膜成長させる。これにより、シリコン酸化膜24はシリコン基板21の表面に形成される。
【0032】
次に、図4(b)に示す通り、ポリシリコン膜27をシリコン基板の表面全域に形成させる。
【0033】
次に、図4(c)に示す通り、ケミカルドライエッチング法などにより、シリコン基板21の裏面23にのみポリシリコン膜26を残す。具体的には、CFなどのガスを導入し、10〜100Pa程度の圧力に調整された雰囲気で、2.45MHzのマイクロ波によるガスプラズマによりエッチング種を生成させる。この活性種は、シリコン基板21の外周部のうち主表面に回り込み、ポリシリコン膜2627の表面側をエッチングするものの、裏面23には回り込まない。そのため、シリコン基板の裏面にはポリシリコン膜27が残り、半導体ウエハ200の表面部と外周部25にシリコン酸化膜24が露出した状態となる。その後、レジスト塗布、リソグラフィー、反応性イオンエッチング、レジスト除去の各工程を経ることで、半導体ウエハ200の外周部25に支持部材26を形成する。
【0034】
このように、部分的に形成された支持部材26を介して半導体ウエハ200をエピタキシャル成長させることで、ウエハホルダに対する半導体ウエハ200の貼り付きを抑制させることが可能となる。
【0035】
また、裏面23をポリシリコン膜27とすることで、裏面に回りこんだSi原料ガスによる、シリコン酸化膜24の表面に多結晶シリコンの結晶粒の生成を抑制することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 半導体製造装置、11 載置部、12 周縁部、13 載置面、14 支持部材、15 内周面、16 上面、20 オリフラ、21 シリコン基板、22 シリコンエピ層、23 裏面、24 シリコン酸化膜、25 外周部、26 支持部材、27 ポリシリコン膜、100 ウエハホルダ、120 チャンバー、130 シャワーヘッド、140 回転部材、150 ヒーター、200 半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器であるチャンバーと、
半導体ウエハにSiを主成分とするSi原料ガスを提供するシャワーヘッドと、
前記半導体ウエハに熱を加えるヒーターと、
載置面に半導体ウエハの外周部が接触して支持される載置部と、この載置部を囲む周縁部と、
SiとOとを主成分とする支持部材が前記載置面に部分的に設けられたウエハホルダと、
を備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
前記支持部材は、CVD法、スパッタ法、塗布法のうちいずれか1つの方法により設けられることを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記支持部材は、ピン状に形成されており、前記載置面に脱着可能なように設けられていていることを特徴とする請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
基板の主表面上に形成された気相成長層と、
前記基板の裏面に形成されたシリコン酸化膜と、
前記基板の外周部に部分的に形成され、シリコン樹脂を主成分とする支持部材と、
前記シリコン酸化膜を被覆するように形成されたポリシリコン膜と、
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
前記支持部材は、SiとOとを主成分とする溶液であることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−77655(P2013−77655A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215725(P2011−215725)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】