説明

半導体装置

【課題】第1、第2素子形成領域間でノイズが伝播することを抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1、第2素子形成領域20、30に形成された半導体素子のうち、第1素子形成領域20に形成された半導体素子を外部機器と接続し、第1素子形成領域20と第2素子形成領域30との間に、第1導電型層60と、当該第1導電型層60に挟まれる第2導電型層61とを配置し、第1、第2導電型層60、61の間に、オフ時に半導体層12の表面から埋込絶縁膜11に達し、第1、第2素子形成領域20、30との間を仕切る空乏層63、64を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1、第2素子形成領域を有し、第1、第2素子形成領域が絶縁分離トレンチにより絶縁分離された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体基板に形成された絶縁分離トレンチにより、第1、第2素子形成領域が互いに絶縁分離された半導体装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような半導体装置は、例えば、支持基板と、支持基板の表面に配置された絶縁膜と、当該絶縁膜を挟んで支持基板と反対側に配置された半導体層とを有するSOI(Silicon on Insulator)基板を用いて構成される。そして、半導体層には、第1、第2素子形成領域を取り囲むトレンチが形成されると共にトレンチ内が絶縁体で埋め込まれることにより、第1、第2素子形成領域が互いに絶縁分離される絶縁分離トレンチが構成されている。また、第1、第2素子形成領域には、ダイオードやトランジスタ等の半導体素子が形成されている。
【0004】
このような半導体装置は、例えば、第1、第2素子形成領域に形成された半導体素子のうち、第1素子形成領域に形成された半導体素子が外部機器と接続されることにより、外部機器との信号の送受信が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−130243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような半導体装置では、第1素子形成領域に形成された半導体素子から所定の信号を外部機器に出力する場合であったり、外部機器に電位変動が発生したりした場合等に、第1素子形成領域に形成された半導体素子に対して、ノイズが印加されることがある。そして、当該ノイズは、第1、第2素子形成領域間が絶縁分離トレンチを介して容量結合してしまうため、第2素子形成領域に形成された半導体素子に伝播してしまうという問題がある。
【0007】
このため、例えば、絶縁分離トレンチの幅を大きくする、言い換えるとトレンチに埋め込まれる絶縁体の厚さを厚くした半導体装置とすることにより、第1、第2素子形成領域間の容量を低減してノイズの伝播を抑制することが考えられる。しかしながら、このような半導体装置では、絶縁体の厚さを厚くすることにより、絶縁体から第1素子形成領域や第2素子形成領域に印加される応力が大きくなり、第1、第2素子形成領域に形成された半導体素子の特性が悪化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、トレンチに埋め込まれる絶縁体の厚さを厚くすることなく、第1、第2素子形成領域間でノイズが伝播することを抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1、第2素子形成領域(20、30)に形成された半導体素子のうち、第1素子形成領域(20)に形成された半導体素子は外部機器と接続されており、第1素子形成領域(20)と第2素子形成領域(30)との間には、第1導電型層(60)と、第1導電型層(60)に挟まれる第2導電型層(61)とが配置されており、第1、第2導電型層(60、61)の間に、オフ時に半導体層(12)の表面から埋込絶縁膜(11)に達し、第1、第2素子形成領域(20、30)との間を仕切る空乏層(63、64)が構成されていることを特徴とする。
【0010】
このような半導体装置では、例えば、第1導電型層(60)をP型層とすると共に第2導電型層(61)をN型層とした場合には、第1、第2素子形成領域(20、30)の間にPNP接合が構成されることになる。
【0011】
このため、第1素子形成領域(20)に正電圧のノイズが印加された場合には、第2素子形成領域(30)側の第1導電型層(60)と第2導電型層(61)との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、当該第1、第2導電型層(60、61)の間に構成される空乏層(63)が広がることになる。このため、第1、第2素子形成領域(20、30)の間の容量が低減され、当該ノイズが第2素子形成領域(30)に伝播することが抑制される。
【0012】
また、第1素子形成領域(20)に負電圧のノイズが印加された場合には、第1素子形成領域(20)側の第1導電型層(60)と第2導電型層(61)との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、当該第1、第2導電型層(60、61)の間に構成される空乏層(64)が広がることになる。このため、第1、第2素子形成領域(20、30)の間の容量が低減され、当該ノイズが第2素子形成領域(30)に伝播することが抑制される。
【0013】
例えば、請求項2に記載の発明のように、半導体層(12)に、絶縁分離トレンチ(40)をそれぞれ取り囲むと共に、半導体層(12)の表面から埋込絶縁膜(11)に達し、互いに離間した状態とされている第1導電型層(60)を形成し、これら第1導電型層(60)の間に第2導電型層(61)を配置することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のように、 第1、第2素子形成領域(20、30)の間に、第1導電型層(60)を配置すると共に、第1導電型層(60)にトレンチ(70)を形成し、トレンチ(70)内に第2導電型層(61)を埋め込むことができる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の発明において、トレンチ(70)の側壁に絶縁膜を配置すると共に、当該絶縁膜を介して第2導電型層(61)を埋め込むことができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項3および4に記載の発明において、第1、2素子形成領域(20、30)のうち少なくともいずれか一方に、トレンチゲート構造を有する半導体素子を形成することができる。
【0017】
このような半導体装置では、トレンチゲート構造を構成するトレンチを形成する際に、第1、第2素子形成領域(20、30)の間に形成されるトレンチ(70)を同時に形成することができ、第1、第2素子形成領域(20、30)に形成されるトレンチ(70)のみを形成する工程を無くすことができる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【図2】(a)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図であり、(b)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図である。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【図4】(a)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図であり、(b)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図である。
【図5】(a)は本発明の第3実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【図6】(a)は本発明の第4実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す支持基板のうち埋込絶縁膜側と反対側の裏面図である。
【図7】(a)は本発明の第5実施形態における半導体装置の断面構成を示す図であり、(b)は(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【図8】本発明の第6実施形態における半導体装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1(a)は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図、図1(b)は、図1(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の半導体装置は、一面を有するP型の支持基板10と、支持基板10の一面に配置される埋込絶縁膜11と、埋込絶縁膜11を挟んで支持基板10と反対側に配置されるN型の半導体層12と、を有するSOI基板13を用いて構成されている。
【0022】
そして、半導体層12には、半導体層12における第1、第2素子形成領域20、30をそれぞれ取り囲むと共に、第1、第2素子形成領域20、30を互いに絶縁分離する絶縁分離トレンチ40が形成されている。本実施形態では、絶縁分離トレンチ40は、半導体層12の表面から埋込絶縁膜11に達するトレンチ41内に酸化物や窒化物等の絶縁体42が埋め込まれることにより構成されている。
【0023】
また、半導体層12における第1、第2素子形成領域20、30には、それぞれ所定の半導体素子が形成されている。本実施形態では、第1素子形成領域20には、ダイオードが形成されている。具体的には、このダイオードは、半導体層12の表層部に選択的に形成されたP型層21およびN型層22と、半導体層12の表面に配置されている絶縁膜50のコンタクトホール51を介して、P型層21と電気的に接続されるアノード電極23と、N型層22と電気的に接続されるカソード電極24とを備えた構成とされており、外部機器と電気的に接続されている。
【0024】
第2素子形成領域30には、NPNトランジスタが形成されている。具体的には、このNPNトランジスタは、半導体層12の表層部に形成されたP型ベース領域31と、当該ベース領域31の表層部に形成されたN型のエミッタ領域32と、ベース領域31と離間した位置に形成されたN型のコレクタ領域33と、半導体層12の表面に配置されている絶縁膜50のコンタクトホール51を介して、ベース領域31と電気的に接続されるベース電極34と、エミッタ領域32と電気的に接続されるエミッタ電極35と、コレクタ領域33と電気的に接続されるコレクタ電極36とを備えた構成とされている。
【0025】
また、半導体層12のうち第1素子形成領域20と第2素子形成領域30との間には、P型層60と、P型層60に挟まれるN型層61とが配置されており、PNP接合が構成されている。そして、P型層60とN型層61との間には、それぞれオフ時に半導体層12の表面から埋込絶縁膜11に達し、第1、第2素子形成領域20、30を仕切る空乏層が構成されている。なお、本実施形態では、P型層60が本発明の第1導電型層に相当し、N型層61が本発明の第2導電型層に相当している。
【0026】
本実施形態では、P型層60は、第1、第2素子形成領域20、30、言い換えると絶縁分離トレンチ40をそれぞれ取り囲むと共に、半導体層12の表面から埋込絶縁膜11に達する状態で形成されている。そして、各P型層60は、それぞれ離間した状態とされており、各P型層60の間にN型層61を構成する半導体層12が位置する構成とされることにより、PNP接合が構成されている。
【0027】
さらに、本実施形態では、第1、第2素子形成領域20、30の間には、半導体層12の表面に配置されている絶縁膜50のコンタクトホール51を介して、N型層61と電気的に接続される電極62が備えられている。この電極62は、第1素子形成領域20にノイズが印加された際に、当該ノイズを外部に放出するためのものである。
【0028】
次に、このような半導体装置にノイズが印加されたときの作動について説明する。上記半導体装置では、第1素子形成領域20に形成されているダイオードが外部機器に接続されており、当該ダイオードには、ダイオードから外部機器に所定の信号を出力したり、接続されている外部機器に電位変動が発生したりした場合等に、ノイズが印加されることになる。この場合、当該ノイズは以下のようにして第2素子形成領域30に伝播することが抑制される。図2(a)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図であり、図2(b)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図である。なお、図2中では、NPNトランジスタ側のP型層60とN型層61との間に構成される空乏層を空乏層63として破線で示しており、ダイオード側のP型層60とN型層61との間に構成される空乏層を空乏層64として破線で示している。
【0029】
また、NPNトランジスタに対して、ダイオードに正電圧のノイズが印加されるとは、第2素子形成領域30を取り囲む絶縁分離トレンチ40の電位に対して、第1素子形成領域20を取り囲む絶縁分離トレンチ40の電位が高くなるノイズが印加されることである。同様に、NPNトランジスタに対して、ダイオードに負電圧のノイズが印加されるとは、第2素子形成領域30を取り囲む絶縁分離トレンチ40の電位に対して、第1素子形成領域20を取り囲む絶縁分離トレンチ40の電位が低くなるノイズが印加されることである。
【0030】
図2(a)に示されるように、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたとすると、ダイオードに印加されたノイズは、絶縁分離トレンチ40を介してNPNトランジスタに伝播しようとする。このとき、NPNトランジスタ側のP型層60とN型層61との間には逆バイアス電圧が印加されることになり、当該P型層60とN型層61との間に構成される空乏層64が広がることになる。このため、第1、第2素子形成領域20、30の間の容量が低減され、ノイズがダイオードからNPNトランジスタに伝播することが抑制される。すなわち、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することが抑制される。そして、N型層61に残留するノイズが電極62を介して放出される。
【0031】
同様に、図2(b)に示されるように、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたとすると、ダイオード側のP型層60とN型層61との間には逆バイアス電圧が印加されることになり、当該P型層60とN型層61との間に構成される空乏層64が広がることになる。このため、第1、第2素子形成領域20、30の間の容量が低減され、ノイズがダイオードからNPNトランジスタに伝播することが抑制される。すなわち、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することが抑制される。そして、N型層61に残留するノイズが電極62を介して放出される。
【0032】
このような半導体装置は、例えば、次のように製造される。すなわち、まず、SOI基板13を用意し、第1、第2素子形成領域20、30に上記のようなダイオードやNPNトランジスタを形成する。その後、第1、第2素子形成領域20、30を取り囲むトレンチ41をそれぞれエッチング等により形成する。続いて、気相拡散法やイオン注入等により、トレンチ41を取り囲むP型層60を形成する。その後、トレンチ41内に絶縁体42を埋め込むことにより絶縁分離トレンチ40を構成し、絶縁膜50や電極23、24、34〜36、62を所定の半導体製造プロセスにて形成することにより、上記半導体装置が製造される。なお、もちろん、絶縁分離トレンチ40を形成した後、第1、第2素子形成領域20、30にダイオードやNPNトランジスタを形成することもできる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態の半導体装置では、半導体層12に、第1、第2素子形成領域20、30をそれぞれ取り囲むと共に、半導体層12の表面から埋込絶縁膜11に達するP型層60が形成されている。そして、各P型層60の間にN型層61が位置する構成とされ、第1、第2素子形成領域20、30の間にPNP接合が構成されている。
【0034】
このため、ダイオードに正電圧のノイズが印加された場合には、NPNトランジスタ側のP型層60とN型層61との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、P型層60とN型層61との間に構成される空乏層63が広がることになる。したがって、第1、第2素子形成領域20、30の間の容量が低減され、ノイズがNPNトランジスタに伝播することが抑制される。また、ダイオードに負電圧のノイズが印加された場合には、ダイオード側のP型層60とN型層61との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、P型層60とN型層61との間に構成される空乏層64が広がることになる。したがって、第1、第2素子形成領域20、30の間の容量が低減され、ノイズがNPNトランジスタに伝播することが抑制される。以上より、本実施形態の半導体装置では、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することを抑制することができる。
【0035】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して、第1、第2素子形成領域20、30の間にトレンチを形成し、当該トレンチに側壁絶縁膜を配置すると共にトレンチ内にP型層を埋め込んだものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図3(a)は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図、図3(b)は図3(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【0036】
図3に示されるように、本実施形態の半導体装置は、第1、第2素子形成領域20、30の間に、N型層60が配置されていると共に、N型層60にトレンチ70が形成されている。本実施形態では、このトレンチ70は、第1素子形成領域20を取り囲むように形成されており、埋込絶縁膜11に達しない、つまり、N型層60内にトレンチ70の底面が位置する構成とされている。そして、トレンチ70には、側壁に図示しない側壁絶縁膜が配置されていると共に、内部に側壁絶縁膜を介してP型層61が埋め込まれている。
【0037】
すなわち、第1、第2素子形成領域20、30の間では、トレンチ70が形成されている部分において、NIPIN接合が構成されている。そして、半導体装置のオフ時において、PIN接合の間に構成される空乏層が埋込絶縁膜11に達する構成とされている。また、半導体層12の表面には、絶縁膜50のコンタクトホール51を介して、P型層61と電気的に接続される電極62が備えられている。
【0038】
なお、P型層61の深さ、つまりトレンチ70の深さは、PIN接合の間に構成される空乏層が埋込絶縁膜11に達するものであればよく、P型層61およびN型層61の不純物濃度等との関係において適宜変更可能である。また、本実施形態では、N型層60が本発明の第1導電型層に相当し、P型層61が本発明の第2導電型層に相当している。
【0039】
このような半導体装置としても、ダイオードにノイズが印加されたときに、当該ノイズがNPNトランジスタに伝播することを抑制することができる。図4(a)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図であり、図4(b)は、NPNトランジスタに対して、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたときの半導体装置の状態を示す図である。
【0040】
図4(a)に示されるように、ダイオードに正電圧のノイズが印加されたとすると、ダイオードに印加されたノイズは、NPNトランジスタ側のN型層61とP型層60との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、空乏層63が広がることになる。このため、ダイオードからNPNトランジスタにノイズが伝播することが抑制される。すなわち、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することが抑制される。そして、P型層61に残留するノイズは、電極62を介して放出される。
【0041】
同様に、図4(b)に示されるように、ダイオードに負電圧のノイズが印加されたとすると、ダイオード側のN型層61とP型層60との間に逆バイアス電圧が印加されることになり、空乏層64が広がることになる。このため、ダイオードからNPNトランジスタにノイズが伝播することが抑制される。すなわち、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することが抑制される。そして、P型層61に残留するノイズが電極62を介して放出される。
【0042】
このような半導体装置としても、第1、第2素子形成領域20、30の間にNIPIN接合が構成されるので、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
さらに、本実施形態では、トレンチ70を埋込絶縁膜11に達しない半導体装置とすることにより、トレンチを埋込絶縁膜まで達するものとした半導体装置と比較して、次の効果がある。すなわち、埋込絶縁膜まで達するトレンチを形成した場合には、トレンチにより埋込絶縁膜に応力が印加されることになるため埋込絶縁膜の寿命が低下することになる。しかしながら、本実施形態では、トレンチ70を埋込絶縁膜11に達しない構造とし、PIN接合の間に構成される空乏層のみを埋込絶縁膜11に達するようにしているので、埋込絶縁膜11の寿命が低下することを抑制しつつ、第1、第2素子形成領域20、30の間でノイズが伝播することを抑制することができる。
【0044】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第2実施形態に対して、第2素子形成領域30にトレンチゲート構造を有する半導体素子を形成したものであり、その他に関しては第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図5(a)は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図、図5(b)は図5(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【0045】
図5に示されるように、本実施形態の半導体装置は、第1素子形成領域20を挟んでダイオードが形成されている第2素子形成領域30と反対側の第2素子形成領域30にトレンチゲート構造を有する半導体素子を形成したものである。本実施形態では、この半導体素子は、次のように構成されている。
【0046】
すなわち、半導体層12には、表層部にP型のチャネル形成領域81が形成されており、チャネル形成領域81内の表層部にN型ソース領域82と、当該N型ソース領域82と隣接して形成されるP型コンタクト領域83が形成されている。また、半導体層12の表層部には、チャネル形成領域81とは離間した位置にN型ドレイン領域84が形成されている。さらに、半導体層12には、N型ソース領域82と、N型ドレイン領域84との間に位置するチャネル形成領域81を貫通するトレンチ85が形成されており、トレンチの側壁に図示しないゲート絶縁膜が配置されていると共に、ゲート絶縁膜を介してゲート電極86が形成されている。
【0047】
半導体層12の表面には、絶縁膜50に形成されたコンタクトホール51を介して、N型ソース領域82と電気的に接続される図示しないソース電極、P型コンタクト領域83と電気的に接続される電極87、N型ドレイン領域84と電気的に接続されるドレイン電極88が備えられている。また、半導体層12の表面には、図示しないゲート絶縁膜を介して、ゲート電極86と接続されているプレーナゲート電極89が備えられている。そして、チャネル形成領域81とN型ドレイン領域84との間にはLOCOS酸化膜90が形成されている。
【0048】
このような半導体素子は、ゲート電極86、89に正電圧を印加したとき、P型のチャネル形成領域81におけるゲート電極86に対向する部位およびプレーナゲート電極89に対向する部位に反転層が形成され、当該反転層を介してN型ドレイン領域84とN型ソース領域82との間に電流が流れる。
【0049】
このような半導体装置では、トレンチゲート構造を構成するトレンチ86を形成する際に、第1、第2素子形成領域20、30の間に形成されるトレンチ70を同時に形成することができ、トレンチ70のみを形成する工程を無くすことができつつ、上記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0050】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して、支持基板10にPNP接合を形成したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図6(a)は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図、図6(b)は図6(a)に示す支持基板10のうち埋込絶縁膜11側と反対側の裏面模式図である。なお、図6(b)は断面ではないが、理解をし易くするために、P型層10aにハッチングを施してある。
【0051】
図6に示されるように、本実施形態の半導体装置は、支持基板10にPNP接合が構成されている。具体的には、支持基板10には、裏面から埋込絶縁膜11に達するP型層10aと、裏面から埋込絶縁膜11に達するN型層10bとが交互に配置されている。そして、P型層10aおよびN型層10bの平面パターンはそれぞれ正方形状とされており、P型層10aおよびN型層10bにより市松模様が構成されている。また、P型層10aおよびN型層10bの一辺は、第1、第2素子形成領域20、30をそれぞれ取り囲む絶縁分離トレンチ40の間の間隔以下とされている。すなわち、支持基板10のうち第1、第2素子形成領域20、30の間の部分と対向する位置にPNP接合が構成されるようになっている。
【0052】
このような半導体装置では、例えば、ダイオードに正電圧のノイズが印加されると、当該ノイズが埋込絶縁膜11を介して支持基板10に伝播することがあるが、支持基板10に伝播したノイズは、N型層10bとP型層10aとの間に構成される空乏層によりN型層10bからP型層10aに伝播することが抑制される。同様に、ダイオードに負電圧のノイズが印加されると、支持基板10に伝播したノイズは、P型層10aとN型層10bとの間に構成される空乏層によりP型層10aからN型層10bに伝播することが抑制される。したがって、このような半導体装置では、ダイオードにノイズが印加されたとき、当該ノイズが支持基板10を介してNPNトランジスタに伝播すること、言い換えると、ノイズが第1素子形成領域20から支持基板10を介して第2素子形成領域30に伝播することを抑制しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
なお、このような半導体装置の支持基板10は、例えば、支持基板10にイオン注入によりN型層10bを形成したり、支持基板10にトレンチを形成すると共に当該トレンチ内にN型層10bを埋め込むこと等により製造される。
【0054】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して、パッドを第1素子形成領域20に隣接する位置に備えたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図7(a)は、本実施形態における半導体装置の断面構成を示す図、図7(b)は図7(a)に示す半導体装置の概略平面図である。
【0055】
図7に示されるように、本実施形態の半導体装置は、第1素子形成領域20に隣接する位置にパッド100が備えられている。そして、第1素子形成領域20とパッド100との間には、PNP接合が存在しない構成とされている。具体的には、P型層60は、絶縁分離トレンチ40のうちパッド100側に位置する部分の外側に形成されていない構成とされている。本実施形態の半導体装置のように、第1素子形成領域20に隣接する位置にパッド100が配置される場合には、第1素子形成領域20とパッド100との間にPNP接合を構成しないこともできる。
【0056】
(第6実施形態)
本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して、複数の第1素子形成領域20が隣接して備えられていると共に複数の第2素子形成領域30が隣接して備えられているものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。図8は、本実施形態における半導体装置の概略平面図である。
【0057】
図8に示されるように、本実施形態の半導体装置は、複数の第1素子形成領域20が隣接して備えられていると共に、複数の第2素子形成領域30が隣接して備えられている。そして、半導体層12には、複数の第1素子形成領域20の全体を囲むP型層60が形成されていると共に、複数の第2素子形成領域30の全体を囲むP型層60が形成されており、これらP型層60の間にN型層61が配置されている。
【0058】
このような半導体装置としても、第1素子形成領域20と第2素子形成領域30との間にPNP接合が構成されるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、第1素子形成領域20にダイオードが形成されていると共に第2素子形成領域30にNPNトランジスタが形成されている例について説明したが、もちろん第1、第2素子形成領域20、30に形成される素子はこれに限定されるものではなく、例えば、第1、第2素子形成領域20、30にLDMOSや抵抗、キャパシタ等の素子を形成することもできる。
【0060】
また、上記第1、4〜6実施形態では、第1導電型層をP型層60とすると共に第2導電型層をN型層61として説明したが、もちろん第1導電型をN型層(N型層)とする共に第2導電型をP型層とすることもできる。同様に、上記第2、第3実施形態では、第1導電型層をN型層60とすると共に第2導電型層をP型層61として説明したが、もちろん第1導電型層をP型層とする共に第2導電型層をN型層(N型層)とすることもできる。
【0061】
さらに、上記各実施形態では、第1、第2素子形成領域20、30の間に電極62が備えられている例について説明したが、もちろん電極62が備えられていない構成とすることもできる。
【0062】
また、上記第2実施形態では、第1素子形成領域20を取り囲むトレンチ70が形成されている例について説明したが、例えば、第2素子形成領域20を取り囲むトレンチ70が形成されていてもよい。このような半導体装置としても、第1、第2素子形成領域20、30の間にNIPIN接合が構成されるため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
さらに、上記第2実施形態において、トレンチ70の側壁に側壁絶縁膜を配置せず、直接トレンチ70の内部にP型層61を埋め込むこともできる。このような半導体装置としても、第1、第2素子形成領域20、30の間にNPN接合が構成されるため、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
また、上記第3実施形態では、第2素子形成領域30にトレンチゲート構造を有する半導体素子を形成した例について説明したが、もちろん第1素子形成領域20にトレンチゲート構造を有する半導体素子を形成することもできる。
【0065】
さらに、上記第5実施形態では、第1素子形成領域20に隣接して配置されるものとしてパッド100を例に挙げて説明したが、例えば、半導体層12の表面にポリキャパシタ等を備えた場合についても、第1素子形成領域20とポリキャパシタとの間の部分にPNP接合を構成しないこともできる。すなわち、半導体層12の表面にパッド100や素子等が配置される場合には、第1素子形成領域20のうちパッド100や素子等が配置される側の部分にPNP接合が構成されていないものとすることができる。
【0066】
そして、上記各実施形態を組み合わせた半導体装置とすることもできる。例えば、第2実施形態を第4〜第6実施形態に組み合わせて、第1、第2素子形成領域20、30の間にトレンチ70を形成すると共に、トレンチ70の側壁に側壁絶縁膜を配置し、当該側壁絶縁膜を介してP型層60を埋め込むことができる。また、第3実施形態を第4〜6実施形態に組み合わせて、半導体層12にトレンチゲート構造を有する半導体素子を形成することができる。さらに、第4実施形態を第2、3、5、6実施形態に組み合わせて支持基板10にPNP接合を形成することができる。そして、第5実施形態を第2〜4、6実施形態に組み合わせて、パッド100が第1素子形成領域20と隣接して配置されている場合には、第1素子形成領域20とパッド100との間にPNP接合を構成しないこともできる。また、第6実施形態を第2、3実施形態に組み合わせて、複数の第1素子形成領域20が隣接して配置されていると共に、複数の第2素子形成領域30が隣接して配置されている場合には、複数の第1素子形成領域20を取り囲むトレンチ70を形成すると共に、当該トレンチ70の側壁に側壁絶縁膜を配置し、当該側壁絶縁膜を介してP型層60を埋め込むことができる。同様に、第6実施形態を第4、5実施形態に組み合わせて、複数の第1素子形成領域20が隣接して配置されていると共に、複数の第2素子形成領域30が隣接して配置されている場合には、複数の第1素子形成領域20を取り囲むP型層60を形成すると共に、複数の第2素子形成領域30を取り囲むP型層60を形成することもできる。
【0067】
また、上記各実施形態では、第1、第2素子形成領域20、30の間にPNP接合を構成するものを説明したが、例えば、第1素子形成領域20同士の間にPNP接合を構成してもよいし、第2素子形成領域30同士の間にPNP接合を構成してもよい。すなわち、隣接する二つの素子形成領域の間にPNP接合を構成することもできる。
【符号の説明】
【0068】
13 SOI基板
20 第1素子形成領域
30 第2素子形成領域
40 絶縁分離トレンチ
60 P型層
61 N型層
63、64 空乏層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面を有する支持基板(10)と、前記支持基板(10)の前記一面に配置される埋込絶縁膜(11)と、前記埋込絶縁膜(11)を挟んで前記支持基板(10)と反対側に配置される半導体層(12)と、を有する半導体基板(13)のうち、前記半導体層(12)には、前記半導体層(12)における第1、第2素子形成領域(20、30)をそれぞれ取り囲むと共に、前記第1、第2素子形成領域(20、30)を互いに絶縁分離する絶縁分離トレンチ(40)が形成され、前記第1、第2素子形成領域(20、30)にそれぞれ半導体素子が形成された半導体装置において、
前記第1、第2素子形成領域(20、30)に形成された半導体素子のうち、前記第1素子形成領域(20)に形成された半導体素子は外部機器と接続されており、
前記第1素子形成領域(20)と第2素子形成領域(30)との間には、第1導電型層(60)と、前記第1導電型層(60)に挟まれる第2導電型層(61)とが配置されており、前記第1、第2導電型層(60、61)の間に、オフ時に前記半導体層(12)の表面から前記埋込絶縁膜(11)に達し、前記第1、第2素子形成領域(20、30)との間を仕切る空乏層(63、64)が構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層(12)には、前記絶縁分離トレンチ(40)をそれぞれ取り囲むと共に、前記半導体層(12)の表面から前記埋込絶縁膜(11)に達し、互いに離間した状態とされている前記第1導電型層(60)が形成されており、前記第1導電型層(60)の間に前記第2導電型層(61)が配置されている請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1、第2素子形成領域(20、30)の間には、前記第1導電型層(60)が配置されていると共に、前記第1導電型層(60)にトレンチ(70)が形成されており、前記トレンチ(70)内に前記第2導電型層(61)が埋め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記トレンチ(70)には、側壁に絶縁膜が配置されていると共に、当該絶縁膜を介して前記第2導電型層(61)が埋め込まれていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1、2素子形成領域(20、30)のうち少なくともいずれか一方には、トレンチゲート構造を有する半導体素子が形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−243654(P2011−243654A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−112419(P2010−112419)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】