説明

半導体集積回路およびその動作方法

【課題】応答性に問題のあるPLL回路を使用せず、受信ミキサに供給するローカル信号を生成する。
【解決手段】集積回路は受信ミキサ2と信号生成器3を具備し、多段遅延回路32はRF受信キャリア信号に応答して複数のクロックパルスtap0、1〜8を生成する。位相検出部33は特定クロックパルスtap8とそれ以前に生成される所定数のクロックパルスtap0、1〜7の電圧レベルの相違を検出して、特定クロックパルスの所定の位相180°を検出する。クロック生成部34の選択器34は複数のクロックパルス信号から複数の位相0°、45°、90°、135°を有する複数の選択クロックパルス信号tap0、2、4、6を出力する。第1信号合成論理回路342、343は複数の選択クロックパルスの論理演算EX−ORを実行して、受信ミキサ2に供給されるローカル信号LO_I、Qを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体集積回路およびその動作方法に関するもので、特に応答性に問題のあるPLL回路を使用することなく、受信ミキサに供給するローカル信号を生成するのに有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
カード内に半導体集積回路およびアンテナを搭載したいわゆるICカードは、リーダ・ライタ装置と半導体集積回路との間で情報の交換を行い、ICカードが保持しているデータの送信、リーダ・ライタ装置から送信されたデータの保持など様々な機能を実現する。
【0003】
国際規格ISO/IEC14443によれば、非接触インターフェースを有するICカードはPICCと呼ばれ、PCDと呼ばれるリーダー/ライター装置とRF通信を行うものである。尚、ISOはInternational Organization for Standardizationの略であり、IECはInternational Electrical Commissionの略である。また、PICCはProximity Cardの略であり、PCDはProximity Coupling Deviceの略である。
【0004】
例えば、国際規格ISO/IEC14443のタイプAでは、PCDからPICCへの通信は、ASK100%の変調度の変調方式で変形ミラー方式による符号化方式とされている。しかし、国際規格ISO/IEC14443のタイプBではPCDからPICCへの通信はASK10%の変調率の変調方式でNRZ−L方式による符号化方式とされている。尚、NRZ−Lは、Non Return to Zero-Levelの略であり、ASKは、デジタル変調方式の1つである振幅偏移変調(Amplitude Shift Keying)である。
【0005】
近年、短距離無線通信技術(NFC)と呼ばれ、家電製品、デジタルメディア、消費者向けの無線通信接続、コンテンツ、ビジネス上の取引を簡略化して、かつ拡大させる通信技術が普及している。このNFC技術は既存の種々の通信方式と互換性を持ち、13.56MHzのRF周波数を使用して、10cm程度で最大通信レート847Kbpsの短距離通信を可能とする。特に、電子決済機能を有するICカードマイコン(セキュアチップ)を内蔵する携帯電話端末にNFC技術が搭載されて、非接触による店舗での商品購入の支払い、駅での交通費の支払い等の種々の非接触電子決済への活用によりエンドユーザの利便性を向上させることを狙っている。尚、NFCは、Near Field Communicationの略である。
【0006】
このNFC技術を採用する非接触ICカードとリーダ・ライタ装置との間のASK変調を使用する通信は、リーダ・ライタ装置の比較的大きなループアンテナと非接触ICカードの比較的小さなループアンテナとの電磁結合を利用するものである。
【0007】
一方、下記非特許文献1には、非接触ICカードとリーダ・ライタ装置のループアンテナの角度や距離等によってコミュニケーションホールが発生することが記載されている。この現象は、リーダ・ライタ装置の動作磁界範囲内に非接触ICカードが存在してリーダ・ライタ装置から非接触ICカードに十分なRF電力が供給されているはずにもかかわらず、負荷変調のASK変調振幅がほとんど得られないと言うものである。
【0008】
コミュニケーションホールが発生する原因は、リーダ・ライタ装置の大きなループアンテナの周辺部分に非接触ICカードのループアンテナが略平行に配置された場合には、非接触ICカードのループアンテナの内部でリーダ・ライタ装置のループアンテナの内部と外部とから生成される2本の磁界線の方向が反対方向となってRF受信信号が相殺されてしまうためである。更に、下記非特許文献1には、コミュニケーションホールの解決策として、実数の振幅だけでなく虚数軸方向の振幅と位相とを含む合成ベクトルとする提案も記載されている。
【0009】
また更に下記非特許文献2には、RFIDシステム用リーダ・ライタ(RW)装置にホモダイン検波を適用した場合に、受信信号とローカル信号(LO)波との位相関係によって検波信号が得られないと言うヌル点を回避するヌル点回避回路が記載されている。このヌル点回避回路は、異なった位相のLO波によって受信信号を検波して検波レベルの大きいチャンネルを選択受信するものである。更に、ヌル点回避回路では、RF受信信号は2個の受信ミキサの一方の入力端子に供給され、LO信号とπ/2(90°)分だけ位相シフトされた位相シフトLO信号とは一方の受信ミキサの他方の入力端子と他方の受信ミキサの他方の入力端子とにそれぞれ供給される。一方の受信ミキサの出力からのIチャンネルベースバンド信号と他方の受信ミキサの出力からのQチャンネルベースバンド信号とはそれぞれIチャンネルベースバンド増幅器とQチャンネルベースバンド増幅器とを介して選択器の一方の入力端子と他方の入力端子とに供給される。選択器によってIチャンネルとQチャンネルのいずれか一方の大きな検波レベルのベースバンド信号が受信データとして選択され、制御部に供給される。尚、ヌル点は、上述したコミュニケーションホールと略同様な現象と思われる。
【0010】
また下記特許文献1には、上記非特許文献2に記載されたホモダイン受信機と原理的に同一の受信動作を実行するダイレクトコンバージョン受信機が記載され、電圧制御発振器(VCO)を含んだフェーズロツクドループ(PLL)から2個の受信ミキサに供給されるローカル信号と90°の分位相の異なる位相シフトローカル信号とが生成される。伝統的なスーパーへテロダイン受信機は周波数変換に伴うイメージ周波数の妨害波除去のためのイメージ除去フィルタが必要であるのに対して、下記特許文献1に記載のダイレクトコンバージョン受信機においては外部部品のイメージ除去フィルタが不必要であると言う利点を有している。
【0011】
更に、下記非特許文献3には、デジタルコードレスホンに使用されるダイレクトコンバージョン受信機が記載され、ダイレクトコンバージョン受信機の受信ミキサにはギルバート型ミキサとも呼ばれるダブルバランス型クロスカップルドクアッドミキサが一般的に使用されることも記載されている。この受信ミキサでは、電源電圧と接地電位との間に負荷抵抗と2個の差動対トランジスタと定電流源とが直列接続されたアナログ回路構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−211098号 公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】苅部 浩 「非接触ICカード設計入門」、 日刊工業新聞社 PP.46−50.2005年10月31日 発行
【非特許文献2】高山 直久 他 「UHF帯RFIDリーダライタ装置のヌル点回避回路の効果」、 2005年電子通信学会通信ソサイエティ大会、 講演番号B−5−166、 ページ566.
【非特許文献3】Christopher Dennis Hull, et al, “A Direct−Conversion Receiver for 900MHz(ISM Band) Spread−Spectrum Digital Cordress Telephone”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.31, NO.12, DCEMBER 1996. PP.1955−1963.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者等は本発明に先立って、13.56MHzのRF周波数を使用するNFC技術搭載のICカードマイコンの半導体集積回路のRF受信部の開発に従事した。
【0015】
本発明者等は本発明に先立って、半導体集積回路のコストと外部部品数を削減するためにRF受信周波数からベースバンド信号周波数へのダウンコンバートに外部部品であるイメージ除去フィルタが不必要なダイレクトコンバージョン受信機の採用を決定した。
【0016】
そこで本発明者等は本発明に先立って、上記特許文献1に記載されたダイレクトコンバージョン受信機の受信ミキサに供給されるローカル信号を生成するフェーズロツクドループ(PLL)回路に関して検討を行った。一般的にPLL回路は、温度変化等に対して安定な基準周波数を生成するための水晶発振器と、基準分周器と、位相周波数比較器(PFD)と、チャージポンプ回路と、RF電圧制御発振器(RFVCO)と、VCO分周器とによって構成される。基準周波数と2個の分周器の分周数によって、正確な周波数を有するローカル信号がPLL回路から生成されることが可能となる。
【0017】
しかし、本発明者等が更に検討したところ、基準周波数の生成ための水晶発振器は、非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の通信開始時の起動速度が遅いと言う問題が明らかとされた。この問題を解消するために、基準周波数生成用水晶発振器を使用しない代わりに、NFC技術で使用される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号を使用する他の方式も本発明に先立って本発明者等によって検討された。しかし、国際規格ISO/IEC14443のタイプAの通信ではASK100%の変調度の変調方式が採用されているので、100%の変調度のタイミングでは、位相周波数比較器(PFD)に供給される基準周波数信号としての13.56MHzのRF周波数のキャリア信号の振幅値がゼロとなる。従って、キャリア信号の振幅値がゼロの期間にPLL回路がアンロック状態となるので、キャリア信号の振幅値がゼロから所定値に回復した後にPLL回路が再びロック状態となるまでの回復時間が長いと言う他の問題も本発明者等による検討により明らかとされた。
【0018】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等による検討の結果、なされたものである。
【0019】
従って、本発明の目的とするところは、応答性に問題のあるPLL回路を使用することなく、受信ミキサに供給するローカル信号を生成することにある。
【0020】
更に本発明の他の目的とするところは、ASK100%の変調度のRF周波数のキャリア信号からローカル信号を生成する際の応答性を改善することにある。
【0021】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0023】
すなわち、本発明の代表的な実施の形態は、受信ミキサ(2)と、前記受信ミキサに供給されるローカル信号(LO_I、LO_Q)を生成する信号生成器(3)とを具備する半導体集積回路である。
【0024】
前記受信ミキサにRF受信信号と前記ローカル信号とが供給され、前記受信ミキサは受信ミキサ出力信号を生成する。
【0025】
前記信号生成器(3)は、多段遅延回路(32)と、位相検出部(33)と、クロック生成部(34)とを有する。
【0026】
前記多段遅延回路(32)は、前記RF受信信号に含まれるキャリア信号(Cr)に応答して所定の遅延時間(τ)の分、相互に位相タイミングが相違した複数のクロックパルス信号(tap0、1、2〜8)を含むパルス列を生成する。
【0027】
前記位相検出部(33)は前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で生成される特定クロックパルス信号(tap8)の電圧レベル(“L”)と前記特定クロックパルス信号よりも以前に生成される所定数のクロックパルス信号(tap0、1、2〜7)の電圧レベル(“H”)とが相違することを検出して、前記特定クロックパルス信号が所定の位相(180°)を有することを検出して検出出力信号を生成する。
【0028】
前記クロック生成部(34)は、選択器(341)と第1信号合成論理回路(342、343)とを含む。
【0029】
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記多段遅延回路から生成される前記複数のクロックパルス信号から複数の事前に選択された位相(0°、45°、90°、135°)を有する複数の選択クロックパルス信号(tap0、2、4、6)を出力する。
【0030】
前記第1信号合成論理回路は前記選択器から出力される前記複数の選択クロックパルス信号の論理演算(EX−OR)を実行することによって、前記第1信号合成論理回路は前記受信ミキサに供給される前記ローカル信号を生成することを特徴とする(図2、図3、図4参照)。
【発明の効果】
【0031】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0032】
すなわち、本発明によれば、応答性に問題のあるPLL回路を使用することなく、受信ミキサに供給するローカル信号を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1による半導体集積回路および非接触型ICカードの基本的な構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5の回路構成を示す図である。
【図3】図3は、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のクロック発生器3の多段遅延回路32の回路動作を示す波形図である。
【図4】図4は、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のクロック発生器3のクロック生成部34の2個の排他的論理和回路342、排他的論理和回路343の回路動作を示す波形図である。
【図5】図5は、図2に示した本発明の実施の形態1によるクロック発生器3の多段遅延回路32の具体的な回路の構成を示す図である。
【図6】図6は、図5に示した本発明の実施の形態1によるクロック発生器3の多段遅延回路32に含まれたNAND回路NAND1とインバータInv1の具体的な回路の構成を示す図である。
【図7】図7は、図6に示した本発明の実施の形態1による多段遅延回路32に含まれたNAND回路NAND1とインバータInv1の具体的な半導体周期回路の部分デバイスレイアウトの構成を示す図である。
【図8】図8は、図2に示す本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5の第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの回路動作を示す波形図である。
【図9】図9は、図2に示す本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のA/D変換器72に使用される非線型A/D変換器の入出力特性を示す図である。
【図10】図10は、図9に示すA/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態1によるフラッシュ非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【図11】図11は、A/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態2による逐次比較型非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【図12】図12は、図11に示す本発明の実施の形態2による逐次比較型非線型A/D変換器72の非線型バイナリーサーチのアルゴリズムを説明するための図であり、逐次比較型非線型A/D変換器72の入出力特性を示す図である。
【図13】図13は、A/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態3によるパイプライン非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【図14】図14は、図13に示した本発明の実施の形態3によるパイプライン型非線型A/D変換器72のA/D変換動作と入出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.実施の形態の概要
まず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号は、それが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0035】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、受信ミキサ(2)と、前記受信ミキサに供給されるローカル信号(LO_I、LO_Q)を生成する信号生成器(3)とを具備する半導体集積回路である。
【0036】
前記受信ミキサにRF受信信号と前記ローカル信号とが供給されることによって、前記受信ミキサは受信ミキサ出力信号を生成するものである。
【0037】
前記信号生成器(3)は、多段遅延回路(32)と、位相検出部(33)と、クロック生成部(34)とを有するものである。
【0038】
前記多段遅延回路(32)は、前記RF受信信号に含まれるキャリア信号(Cr)に応答して所定の遅延時間(τ)の分、相互に位相タイミングが相違した複数のクロックパルス信号(tap0、tap1、tap2〜tap8)を含むパルス列を生成するものである。
【0039】
前記位相検出部(33)は前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で生成される特定クロックパルス信号(tap8)の電圧レベル(“L”)と前記特定クロックパルス信号よりも以前に生成される所定数のクロックパルス信号(tap0、tap1、tap2〜tap7)の電圧レベル(“H”)とが相違することを検出することによって、前記特定クロックパルス信号が所定の位相(180°)を有することを検出して検出出力信号を生成するものである。
【0040】
前記クロック生成部(34)は、選択器(341)と第1信号合成論理回路(342、343)とを含む。
【0041】
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記多段遅延回路から生成される前記複数のクロックパルス信号から複数の事前に選択された位相(0°、45°、90°、135°)を有する複数の選択クロックパルス信号(tap0、tap2、tap4、tap6)を出力する。
【0042】
前記第1信号合成論理回路は前記選択器から出力される前記複数の選択クロックパルス信号の論理演算(EX−OR)を実行することによって、前記第1信号合成論理回路は前記受信ミキサに供給される前記ローカル信号を生成することを特徴とするものである(図2、図3、図4参照)。
【0043】
前記実施の形態によれば、応答性に問題のあるPLL回路を使用することなく、受信ミキサに供給するローカル信号を生成することができる。
【0044】
好適な実施の形態では、前記多段遅延回路(32)は、直列接続された複数の遅延回路(320、321、322〜327)を含むものである。
【0045】
前記位相検出部は、複数のフリップフロップ(330、331、332〜337)と位相検出回路(33P)とを含むものである。
【0046】
前記多段遅延回路の前記複数の遅延回路は前記パルス列の前記複数のクロックパルス信号を生成して、前記選択器と前記位相検出部の前記複数のフリップフロップとに供給するものである。
【0047】
前記複数のフリップフロップの複数の出力信号は前記位相検出回路に供給され、前記位相検出回路は前記検出出力信号を生成して前記選択器に供給することを特徴とするものである(図2参照)。
【0048】
他の好適な実施の形態では、前記複数のフリップフロップの複数のトリガ入力端子に、前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で最初に生成される開始クロックパルス信号(tap0)が共通に供給されることを特徴とするものである(図2参照)。
【0049】
更に他の好適な実施の形態では、前記受信ミキサは、第1受信ミキサ(2I)と第2受信ミキサ(2Q)とを含むものである。
【0050】
前記位相検出部(33)は、前記特定クロックパルス信号が略180°である前記所定の位相を有することを検出して、前記検出出力信号を生成するものである。
【0051】
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記複数のクロックパルス信号から略0°の位相を有する第1選択クロックパルス信号(tap0)と略45°の位相を有する第2選択クロックパルス信号(tap2)と略90°の位相を有する第3選択クロックパルス信号(tap4)と略135°の位相を有する第4選択クロックパルス信号(tap6)とを出力するものである。
【0052】
前記第1信号合成論理回路の第1論理回路(342)は、前記第1選択クロックパルス信号と前記第3選択クロックパルス信号の第1論理演算(EX−OR)を実行することによって、前記第1受信ミキサに供給される第1RFローカル信号(LO_I)を生成するものである。
【0053】
前記第1信号合成論理回路の第2論理回路(343)は、前記第2選択クロックパルス信号と前記第4選択クロックパルス信号の第2論理演算(EX−OR)を実行することによって、前記第2受信ミキサに供給される第2RFローカル信号(LO_Q)を生成するものである。
【0054】
より好適な実施の形態では、前記クロック生成部(34)は、前記第1RFローカル信号と前記第2RFローカル信号とに応答して、第1非反転デジタルクロック信号(S0_I)と第1反転デジタルクロック信号(S1_I)と第2非反転デジタルクロック信号(S0_Q)と第2反転デジタルクロック信号(S1_Q)を生成する第2信号合成論理回路(344)を更に含む。
【0055】
前記第1受信ミキサは、前記第1RFローカル信号と前記第1非反転デジタルクロック信号と前記第1反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第1ダイレクトサンプリングミキサによって構成される。
【0056】
前記第2受信ミキサは、前記第2RFローカル信号と前記第2非反転デジタルクロック信号と前記第2反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第2ダイレクトサンプリングミキサによって構成されたことを特徴とすることを特徴とするものである(図2参照)。
【0057】
他のより好適な実施の形態による半導体集積回路は、キャリア検出器(9)と第1リセットスイッチトランジスタ(Q6)と第2リセットスイッチトランジスタ(Q6)とを更に具備する。
【0058】
前記第1リセットスイッチトランジスタは前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続され、前記第2リセットスイッチトランジスタは前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続されたものである。
【0059】
前記キャリア検出器(9)は前記RF受信信号に含まれる前記キャリア信号(Cr)の振幅レベルを検出して、前記キャリア信号の前記振幅レベルが所定の振幅レベル以下に低下すると前記キャリア検出器は前記第1リセットスイッチトランジスタと前記第2リセットスイッチトランジスタとを非導通状態から導通状態に制御することを特徴とするものである(図2参照)。
【0060】
更に他のより好適な実施の形態による半導体集積回路は、前記第1ダイレクトサンプリングミキサの入力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの入力端子とに接続されたローノイズ増幅器(1)を更に具備する。
【0061】
前記ローノイズ増幅器は、前記RF受信信号の電圧を電流に変換するローノイズトランスコンダクタンス増幅器により構成され、前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器と前記第1ダイレクトサンプリングミキサと前記第2ダイレクトサンプリングミキサとはダイレクトコンバージョン受信機を構成して、前記第1ダイレクトサンプリングミキサから第1受信ベースバンド信号が生成され、前記第2ダイレクトサンプリングミキサから第2受信ベースバンド信号が生成されることを特徴とするものである(図2参照)。
【0062】
別のより好適な実施の形態では、前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器は、短距離無線通信技術(NFC)に準拠した前記RF受信信号を増幅可能とされたことを特徴とするものである(図2参照)。
【0063】
更に別のより好適な実施の形態による半導体集積回路は、第1ハイパスフィルタ(5I)と第2ハイパスフィルタ(5Q)と第1ベースバンド増幅器(6I)と第2ベースバンド増幅器(6Q)とA/D変換部(7)とを更に具備する。
【0064】
前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子にそれぞれ第1ハイパスフィルタの入力端子と前記第2ハイパスフィルタの入力端子が接続され、前記第1ハイパスフィルタの出力端子と前記第2ハイパスフィルタの出力端子にそれぞれ第1ベースバンド増幅器の入力端子と前記第2ベースバンド増幅器の入力端子が接続され、第1ベースバンド増幅器の出力端子と前記第2ベースバンド増幅器の出力端子に前記A/D変換部の入力端子が接続されたものである。
【0065】
前記A/D変換部は、前記短距離無線通信技術に準拠した前記RF受信信号の小振幅から大振幅への振幅変動による前記第1ハイパスフィルタの前記出力端子と前記第2ハイパスフィルタの前記出力端子との過渡応答による電圧変動に対応するための非線型の入出力特性を有した非線型A/D変換器(72)によって構成されたことを特徴とするものである。
【0066】
具体的な実施の形態では、前記非線型A/D変換器は、フラッシュ型非線型A/D変換器と逐次比較型非線型A/D変換器とパイプライン型非線型A/D変換器とのいずれかによって構成されたことを特徴とするものである(図10、図11、図13参照)。
【0067】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、受信ミキサ(2)と、前記受信ミキサに供給されるローカル信号(LO_I、LO_Q)を生成する信号生成器(3)とを具備する半導体集積回路の動作方法である。
【0068】
前記受信ミキサにRF受信信号と前記ローカル信号とが供給されることによって、前記受信ミキサは受信ミキサ出力信号を生成するものである。
【0069】
前記信号生成器(3)は、多段遅延回路(32)と、位相検出部(33)と、クロック生成部(34)とを有するものである。
【0070】
前記多段遅延回路(32)は、前記RF受信信号に含まれるキャリア信号(Cr)に応答して所定の遅延時間(τ)の分、相互に位相タイミングが相違した複数のクロックパルス信号(tap0、tap1、tap2〜tap8)を含むパルス列を生成するものである。
【0071】
前記位相検出部(33)は前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で生成される特定クロックパルス信号(tap8)の電圧レベル(“L”)と前記特定クロックパルス信号よりも以前に生成される所定数のクロックパルス信号(tap0、tap1、tap2〜tap7)の電圧レベル(“H”)とが相違することを検出することによって、前記特定クロックパルス信号が所定の位相(180°)を有することを検出して検出出力信号を生成するものである。
【0072】
前記クロック生成部(34)は、選択器(341)と第1信号合成論理回路(342、343)とを含む。
【0073】
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記多段遅延回路から生成される前記複数のクロックパルス信号から複数の事前に選択された位相(0°、45°、90°、135°)を有する複数の選択クロックパルス信号(tap0、tap2、tap4、tap6)を出力する。
【0074】
前記第1信号合成論理回路は前記選択器から出力される前記複数の選択クロックパルス信号の論理演算(EX−OR)を実行することによって、前記第1信号合成論理回路は前記受信ミキサに供給される前記ローカル信号を生成することを特徴とするものである(図2、図3、図4参照)。
【0075】
前記実施の形態によれば、応答性に問題のあるPLL回路を使用することなく、受信ミキサに供給するローカル信号を生成することができる。
【0076】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0077】
[実施の形態1]
《半導体集積回路および非接触型ICカード》
図1は、本発明の実施の形態1による半導体集積回路および非接触型ICカードの基本的な構成を示す図である。
【0078】
図1に示すように非接触型ICカードB1は、ループコイル・アンテナL1と容量C0と半導体集積回路B2とを含んでいる。また半導体集積回路B2は、電源回路B3、内部回路B4およびアンテナL1を接続するためのアンテナ端子LA、LBを有している。
【0079】
リーダ・ライタ装置からの電磁波としての13.56MHzのRF周波数を受けたアンテナL1は、アンテナ端子LA、LBに高周波の交流信号を出力する。ICカードB1からリーダ・ライタ装置への通信時には、アンテナ端子LA、LBの交流信号は送信情報信号(データ)によって変調される。
【0080】
《電源回路》
電源回路B3は、整流回路と平滑容量とから構成される。整流回路は、ICカードに搭載されたアンテナL1が受信した交流信号を整流および平滑して、出力電源電圧VDDを得るものである。また、出力電源電圧VDDが所定の電圧以上にならないように、電圧レギュレータが電源回路B3に内蔵されることも可能である。電源回路B3から出力される電源電圧VDDが、内部回路B4の動作電源電圧として供給される。
【0081】
《内部回路》
内部回路B4は、受信回路B5、送信回路B6、信号処理回路B7、メモリB8から構成される。
【0082】
《受信回路》
受信回路B5は、ICカードに内蔵されたアンテナL1の受信交流信号に重畳した情報信号を復調して、デジタル受信情報信号SRとして信号処理回路B7に供給する。
【0083】
《送信回路》
送信回路B6は信号処理回路B7から出力されるデジタル送信情報信号STを受信して、アンテナL1が受信している交流信号をこの送信情報信号STによって変調する。従ってリーダ・ライタ装置は、アンテナL1からの電磁波の反射がこの変調によって変化するのに応答して、信号処理回路B7からの送信情報信号を受信する。
【0084】
《受信回路の回路構成》
図2は、図1に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5の回路構成を示す図である。
【0085】
図2に示したように、受信回路B5は、ローノイズトランスコンダクタンス増幅器(LNAT)1と、ダイレクトサンプリングミキサ2と、クロック発生器3と、第1フィルタ4Iおよび第2フィルタ4Qと、第1ハイパスフィルタ5Iおよび第2ハイパスフィルタ5Qと、第1ベースバンド増幅器6Iおよび第2ベースバンド増幅器6Qと、A/D変換部7と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8と、キャリア検出器9とを含むダイレクトコンバージョン受信機によって構成されている。
【0086】
《ローノイズトランスコンダクタンス増幅器》
ローノイズトランスコンダクタンス増幅器1は、ループコイル・アンテナL1であるアンテナANTでのRF受信電圧信号を電流に変換するトランスコンダクタンス増幅器によって構成されたローノイズ増幅器である。例えば、ローノイズトランスコンダクタンス増幅器1は、ゲートにRF受信電圧信号が供給されて、ソースが接地電位に接続され、ドレインからRF変換電流が生成されるNチャンネルMOSトランジスタによって構成される。
【0087】
《ダイレクトサンプリングミキサ》
ダイレクトサンプリングミキサ2は、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qと2個のリセットスイッチQ6、Q6とを含んでいる。
【0088】
第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iはローノイズトランスコンダクタンス増幅器1のRF変換電流とクロック発生器3から生成される第1RFローカル信号LO_Iと第1非反転デジタルクロック信号S0_Iと第1反転デジタルクロック信号S1_Iが供給されることによって、同相成分(I)の受信ベースバンド信号を生成する周波数ダウンコンバータとして動作する。
【0089】
第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qはローノイズトランスコンダクタンス増幅器1のRF変換電流とクロック発生器3から生成される第2RFローカル信号LO_Qと第2非反転デジタルクロック信号S0_Qと第2反転デジタルクロック信号S1_Qが供給されることによって、直交成分(Q)の受信ベースバンド信号を生成する周波数ダウンコンバータとして動作する。
【0090】
このダイレクトサンプリングミキサは、下記2件の文献に記載されたものである。
【0091】
文献1:Khurram Muhammad et al, “DIRECT RF SAMPLING MIXER WITH RECURSIVE FILTERING IN CHARGE DOMEIN”, 2004 IEEE International Symposium CIRUITS AND SYSTEMS,PP.I−577−I−580.
文献2:Robert Bogdan Staszewski et al, “All−Digital TX Frequency Synthesizer and Discrete−Time Receiver for Bluetooth Radio in 130−nm CMOS”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.39, NO.12. DECEMBER 2004, PP.2278−2291.
【0092】
図2に示したように、ダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの各ミキサは、5個のNチャンネルMOSトランジスタQ1〜Q5と、3個の容量CH、CR、CRとを含んでいる。トランジスタQ1のソースドレイン経路はローノイズトランスコンダクタンス増幅器1の出力と容量CHの一端の間に接続され、容量CHの他端は接地電位に接続されている。トランジスタQ1のソースドレイン経路には、ローノイズトランスコンダクタンス増幅器1の出力からのRF変換電流が供給される。
【0093】
容量CHの一端はトランジスタQ2のソースドレイン経路を介して容量CRの一端に接続され、容量CRの他端は接地電位に接続されて、容量CHの一端はトランジスタQ3のソースドレイン経路を介して容量CRの一端に接続され、容量CRの他端は接地電位に接続されている。
【0094】
容量CRの一端はトランジスタQ4のソースドレイン経路を介してミキサ2の出力端子に接続され、容量CRの一端はトランジスタQ5のソースドレイン経路を介してミキサ2の出力端子に接続されている。
【0095】
トランジスタQ1のゲートにはクロック発生器3から生成されるRFローカル信号LOが供給され、トランジスタQ2のゲートとトランジスタQ5のゲートとにはクロック発生器3から生成される非反転デジタルクロック信号S0が供給され、トランジスタQ3のゲートとトランジスタQ4のゲートとにはクロック発生器3から生成される反転デジタルクロック信号S1が供給される。
【0096】
RFローカル信号LOと非反転デジタルクロック信号S0が同時にハイレベルとなるタイミングでは容量CHと上側の容量CRとで電荷が共有され、RFローカル信号LOと反転デジタルクロック信号S1とが同時にハイレベルとなるタイミングでは容量CHと下側の容量CRで電荷が共有されるので、無限インパルス応答(IIR:Infinite Impulse Response)フィルタの特性が得られる。
【0097】
また非反転デジタルクロック信号S0と反転デジタルクロック信号S1のハイレベル期間をRFローカル信号LOの周期のN倍に設定すると、Nサンプル分で平均化されるので、デシメーション比Nの有限インパルス応答(FIR:Finite Impulse Response)フィルタの特性が得られる。
【0098】
図2に示すダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子に接続された第1フィルタ4Iおよび第2フィルタ4Qとは、上述した有限インパルス応答フィルタの特性と無限インパルス応答フィルタの特性とを模式的に示したものである。
【0099】
従来からRF受信部の受信ミキサは、上記非特許文献1にも記載されているように、ギルバート型ミキサとも呼ばれるダブルバランス型クロスカップルドクアッドミキサが伝統的に使用されていた。しかし、この型の受信ミキサでは、電源電圧と接地電位との間に負荷抵抗と2個の差動対トランジスタと定電流源とが直列接続されたアナログ回路構成を採用しているので、低電源電圧の動作が困難であり、消費電力も大きいと言う問題を有していた。
【0100】
それに対して、図2に示したダイレクトサンプリングミキサ2は、デジタルRFアーキテクチャーが採用されているので、低電源電圧の動作が可能となり、消費電力の削減も可能となる。更に、このデジタルRFアーキテクチャーは、微細化CMOS半導体製造プロセスが適用可能であるので、微細化CMOSによって更なる消費電力の削減も可能となる。
【0101】
《クロック発生器》
クロック発生器3は、一般的なPLL回路で構成されるのではなく、本発明の実施の形態1では特に多段遅延回路32を使用したものである。
【0102】
図2に示すように、クロック発生器3は、リミッタ増幅器30と、分周器31と、多段遅延回路32と、位相検出部33と、クロック生成部34とを含んでいる。
【0103】
リミッタ増幅器30の入力端子にローノイズトランスコンダクタンス増幅器1の出力端子から生成されるRF増幅信号が供給ことによって、リミッタ増幅器30が大きな増幅率でRF増幅信号を増幅してリミッタ増幅器30の出力端子から生成されるRF増幅出力信号をそれぞれ所定の最大リミット値と所定の最小リミット値とに振幅制限動作するものである。
【0104】
リミッタ増幅器30のRF増幅出力信号にハイレベル期間とローレベル期間との不一致(デューティーの不一致)が存在する可能性を考慮して、分周器31は1/2分周を実行する。例えば、リミッタ増幅器30のRF増幅出力信号のローレベルからハイレベルへの波形変化にのみ応答して分周器31が出力信号レベルをローレベルからハイレベルへまたはハイレベルからローレベルへ変化させ、分周器31は1/2分周を実行する。
【0105】
多段遅延回路32は、複数の直列接続された遅延回路320、321、322〜32Nによって構成されている。複数の遅延回路320、321、322〜32Nは、略同一の伝播遅延時間τを有している。
【0106】
分周器31の出力信号によって駆動される初段の遅延回路320の入力端子tap0は、クロック生成部34の選択器341の第1入力端子に接続される。初段遅延回路320の出力信号によって駆動される2段目遅延回路321の入力端子tap1は、クロック生成部34の選択器341の第2入力端子に接続される。2段目遅延回路321の出力信号によって駆動される3段目の遅延回路322の入力端子tap2は、クロック生成部34の選択器341の第3入力端子に接続される。以下同様にして、N−1段目遅延回路の出力信号によって駆動されるN段目の遅延回路32Nの入力端子tapN−1はクロック生成部34の選択器341の第N入力端子に接続され、N段目の遅延回路32Nの出力端子tapNはクロック生成部34の選択器341の第N+1入力端子に接続される。
【0107】
位相検出部33は、複数のフリップフロップ330、331、332〜33Nと位相検出回路33Pによって構成されている。丸い記号と三角'記号で示された複数のフリップフロップ330、331、332〜33Nのトリガ入力端子は、分周器31からの分周出力信号が供給される初段の遅延回路320の入力端子tap0に共通に接続される。1個目のフリップフロップ330のデータ入力端子Dとデータ出力端子Qとは、2段目遅延回路321の入力端子tap1と位相検出回路33Pの第1入力端子とに接続される。2個目のフリップフロップ331のデータ入力端子Dとデータ出力端子Qとは、3段目遅延回路322の入力端子tap2と位相検出回路33Pの第2入力端子とに接続される。以下同様にして、N−1個目のフリップフロップ33N−1のデータ入力端子Dとデータ出力端子Qとは、N+1段目遅延回路32Nの入力端子tapN−1と位相検出回路33Pの第N入力端子とに接続される。最後に、N個目のフリップフロップ33Nのデータ入力端子Dとデータ出力端子Qとは、N+1段目遅延回路32Nの出力端子tapNと位相検出回路33Pの第N+1入力端子とに接続される。
【0108】
クロック生成部34は、選択器341と2個の排他的論理和(EX−OR)回路342、343とロジック回路344とによって構成されている。選択器341の第1入力端子と第2入力端子と第3入力端子と第N端子と第N+1入力端子は、それぞれ多段遅延回路32の初段の遅延回路320の入力端子tap0と2段目遅延回路321の入力端子tap1と3段目の遅延回路322の入力端子tap2とN段目の遅延回路32Nの入力端子tapN−1とN段目の遅延回路32Nの出力端子tapNに接続される。また更に選択器341の制御入力端子には、位相検出回路33Pから生成される位相検出出力信号が供給される。
【0109】
位相検出回路33Pから供給される位相検出出力信号に応答して、選択器341は第1入力端子と第2入力端子と第3入力端子と第N端子と第N+1入力端子の合計N+1個の入力信号から位相0°の入力信号と位相45°の入力信号と位相90°の入力信号と位相135°の入力信号の合計4個の入力信号を選択して2個の排他的論理和(EX−OR)回路342、343の入力端子に供給する。すなわち、排他的論理和回路342の2個の入力端子には位相0°の入力信号と位相90°の入力信号とが供給され、排他的論理和回路343の2個の入力端子には位相45°の入力信号と位相135°の入力信号とが供給される。その結果、排他的論理和回路342の出力端子から第1RFローカル信号LO_Iが生成され、排他的論理和回路343の出力端子から第2RFローカル信号LO_Qが生成される。最後に、第1RFローカル信号LO_Iと第2RFローカル信号LO_Qとがロジック回路344に供給されることによって、ロジック回路344の出力端子から第1非反転デジタルクロック信号S0_Iと第1反転デジタルクロック信号S1_Iと第2非反転デジタルクロック信号S0_Qと第2反転デジタルクロック信号S1_Qとが生成される。
【0110】
図3は、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のクロック発生器3の多段遅延回路32の回路動作を示す波形図である。
【0111】
図3には、最初にループコイル・アンテナL1のアンテナANTによって受信される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号Crの波形が示されている。しかし、図3に実際に示されたキャリア信号Crの波形は、リミッタ増幅器30によって振幅制限されたRF増幅出力信号である。
【0112】
更に図3には、多段遅延回路32の初段の遅延回路320の入力端子tap0の信号波形と、2段目遅延回路321の入力端子tap1の信号波形と、3段目遅延回路322の入力端子tap2の信号波形と、4段目遅延回路323(図示せず)の入力端子tap3の信号波形と、5段目遅延回路324(図示せず)の入力端子tap4の信号波形と、6段目遅延回路325(図示せず)の入力端子tap5の信号波形と、7段目遅延回路326(図示せず)の入力端子tap6の信号波形と、8段目遅延回路327(図示せず)の入力端子tap7の信号波形と、9段目遅延回路328(図示せず)の入力端子tap8の信号波形とが示されている。
【0113】
図3に示したように、リミッタ増幅器30のRF増幅出力信号のRF周波数のキャリア信号Crのローレベルからハイレベルへの波形変化にのみ応答して分周器31が出力信号レベルをローレベルからハイレベルへまたはハイレベルからローレベルへ変化するので、分周器31が出力信号により駆動される初段の遅延回路320の入力端子tap0の信号はRF周波数のキャリア信号Crの1/2分周信号となる。
【0114】
多段遅延回路32の複数の遅延回路320、321、322〜32Nは略同一の伝播遅延時間τを有しているので、初段の遅延回路320の入力端子tap0の信号波形の変化よりも伝播遅延時間τの分遅延して、2段目遅延回路321の入力端子tap1の信号波形が変化するものとなる。以下同様にして、8段目遅延回路327(図示せず)の入力端子tap7の信号波形の変化よりも伝播遅延時間τの分遅延して、9段目遅延回路328(図示せず)の入力端子tap8の信号波形が変化するものとなる。
【0115】
図3に示した例では、初段の遅延回路320の入力端子tap0の信号はRF周波数のキャリア信号Crがローレベルからハイレベルに変化したタイミングで、入力端子tap0の信号波形はハイレベルからローレベルに変化して、入力端子tap1の信号波形はハイレベル“H”であり、入力端子tap2の信号波形もハイレベル“H”であり、入力端子tap3の信号波形もハイレベル“H”であり、入力端子tap4の信号波形もハイレベル“H”であり、入力端子tap5の信号波形もハイレベル“H”であり、入力端子tap6の信号波形もハイレベル“H”であり、入力端子tap7の信号波形もハイレベル“H”であり、次の入力端子tap8の信号波形から始めてローレベル“L”となっている。
【0116】
すなわち、このタイミングでは、フリップフロップ330、331、332、333、334、335、336、337のデータ入力端子Dにそれぞれ供給されているハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ローレベル“L”が、フリップフロップ330、331、332〜337のトリガ入力端子に供給される入力端子tap0の信号波形のハイからローの変化をトリガとして、フリップフロップ330、331、332〜337の内部にラッチされる。その結果、このタイミングでは、フリップフロップ330、331、332、333、334、335、336、337、338のデータ出力端子Dからは、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ハイレベル“H”、ローレベル“Lのデータが生成される。
【0117】
すなわち、RF周波数のキャリア信号Crがローレベルからハイレベルに変化したタイミングにおいて、入力端子tap0の信号波形はハイレベルからローレベルに変化したのに対して、入力端子tap8の信号波形がローレベルからハイレベルに変化する直前の状態である。従って、図3の例では、入力端子tap0の信号波形の位相と比較して、入力端子tap8の信号波形の位相は略180°(π)の分遅延している。
【0118】
従って、この180°(π)の分の位相遅延の発生は、このタイミングで位相検出回路33Pに供給されるフリップフロップ330、331、332、333、334、335、336、337の8ビットのデータ出力信号“HHHHHHHL”を位相検出回路33Pが検出することで判断可能となる。位相検出回路33Pによって入力端子tap0と入力端子tap8の信号波形の180°(π)の分の位相遅延の発生が検出されると、位相検出回路33Pからの位相検出出力信号が選択器341の制御入力端子に供給される。
【0119】
選択器341は、位相検出回路33Pから供給される位相検出出力信号に応答して、入力端子tap0の位相0°の入力信号と入力端子tap4の位相90°の入力信号とを選択して排他的論理和回路342の2個の入力端子に供給して、入力端子tap2の位相45°の入力信号と入力端子tap6の位相135°の入力信号とを選択して排他的論理和回路343の2個の入力端子に供給する。
【0120】
図4は、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のクロック発生器3のクロック生成部34の2個の排他的論理和回路342、排他的論理和回路343の回路動作を示す波形図である。
【0121】
図4に示すように、排他的論理和回路342は入力端子tap0の位相0°の入力信号と入力端子tap4の位相90°の入力信号の排他的論理和(EX−OR)の演算を実行することによって第1RFローカル信号LO_Iを生成する一方、排他的論理和回路343は入力端子tap2の位相45°の入力信号と入力端子tap6の位相135°との入力信号の排他的論理和(EX−OR)の演算を実行することによって第2RFローカル信号LO_Qを生成するものである。
【0122】
更に図3に示したクロック生成部34のロジック回路344に第1RFローカル信号LO_Iと第2RFローカル信号LO_Qとが供給され、ロジック回路344の出力端子からRFローカル信号の周波数よりも低い周波数を有する第1非反転デジタルクロック信号S0_Iと第1反転デジタルクロック信号S1_Iと第2非反転デジタルクロック信号S0_Qと第2反転デジタルクロック信号S1_Qとが生成される。
【0123】
従って、クロック発生器3のクロック生成部34から生成される第1RFローカル信号LO_Iと第2RFローカル信号LO_Qと第1非反転デジタルクロック信号S0_Iと第1反転デジタルクロック信号S1_Iと第2非反転デジタルクロック信号S0_Qと第2反転デジタルクロック信号S1_Qが、ダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qに供給されるものとなる。その結果、ダイレクトサンプリングミキサ2では、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iの出力からは同相成分(I)の受信ベースバンド信号が生成されて、第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力からは直交成分(Q)の受信ベースバンド信号が生成されるものである。
【0124】
その結果、図1から図4を使用して説明した本発明の実施の形態1のクロック発生器3によれば、ループコイル・アンテナL1のアンテナANTによって受信される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号Crの振幅値がゼロから所定値に回復した後に、RF周波数のキャリア信号Crの位相および周波数と同期する第1RFローカル信号LO_Iと第2RFローカル信号LO_Qと第1非反転デジタルクロック信号S0_Iと第1反転デジタルクロック信号S1_Iと第2非反転デジタルクロック信号S0_Qと第2反転デジタルクロック信号S1_Qとを早期に生成して、ダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qとに早期に供給することが可能となる。
【0125】
従って、図1から図4を使用して説明した本発明の実施の形態1のクロック発生器3によれば、ダイレクトコンバージョン受信機の受信ミキサに供給されるローカル信号をPLL回路から生成する場合に、NFC技術で使用される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号の振幅値がゼロとなりPLL回路がアンロック状態となった後に振幅値が所定値に回復してからPLL回路が再びロック状態となるまでの回復時間が長いと言う問題を解消することが可能となる。
【0126】
《キャリア検出器》
キャリア検出器9は、NFC技術で使用される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号の振幅値が100%の変調度によって略ゼロとなることを検出する。
【0127】
一方、RF周波数のキャリア信号の振幅値が略ゼロとなると、クロック発生器3の動作は停止されるので、この動作停止期間ではRFローカル信号LO_I、LO_Qとデジタルクロック信号S0_I、S1_I、S0_Q、S1_Qとがクロック発生器3から生成されなくなる。従って、ダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの受信ミキサの動作も、停止される。
【0128】
本発明の実施の形態1によるキャリア検出器9と2個のリセットスイッチQ6、Q6とが受信回路B5に配置されていない場合には、RF周波数のキャリア信号の振幅値が略ゼロとなり、ダイレクトサンプリングミキサ2の第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの受信ミキサの動作が停止しても第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iの出力端子の容量電荷と第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子の容量電荷とが放電されずに維持されてしまう。従って、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iの出力端子の出力電圧と第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子の出力電圧とが低下しないので、ASK復調出力が正確な包落線を示さなくなるので、非接触ICカードとリーダ・ライタ装置との間の正確なデータ通信が不可能となる。
【0129】
それに対して、本発明の実施の形態1によれば、特にキャリア検出器9と2個のリセットスイッチQ6、Q6が受信回路B5に配置されているので、RF周波数のキャリア信号の振幅値が略ゼロとなるとキャリア検出器9はNFC技術で使用される13.56MHzのRF周波数のキャリア信号の振幅値が100%の変調度によって所定値以下の略ゼロとなることを検出する。従って、この場合には、キャリア検出器9のハイレベルの検出出力信号により2個のリセットスイッチQ6、Q6のNチャンネルMOSトランジスタがオン状態に制御されるので、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iの出力端子の容量電荷と第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子の容量電荷とが接地電位に放電され、非接触ICカードとリーダ・ライタ装置との間の正確なデータ通信が可能となるものとなる。
【0130】
《多段遅延回路》
図5は、図2に示した本発明の実施の形態1によるクロック発生器3の多段遅延回路32の具体的な回路の構成を示す図である。
【0131】
図5に示すように、初段のバッファ回路32XはNAND回路NAND1とインバータInv1とを含み、NAND回路NAND1の一方の入力端子と他方の入力端子とにはそれぞれ電源電圧VDDと分周器31の出力信号DIV−Crが供給される。インバータInv1の入力端子にNAND回路NAND1の出力信号が供給され、初段のバッファ回路32Xの出力端子としてのインバータInv1の出力端子からは位相0°の信号波形tap0が生成される。
【0132】
初段の遅延回路320は、所定の伝播遅延時間τを生成するために直列接続された2個のインバータInv2、Inv3とNAND回路NAND1とインバータInv1を含んでいる。インバータInv2の入力端子に分周器31の出力信号DIV−Crが供給され、インバータInv2の出力信号がインバータInv3の入力端子に供給され、NAND回路NAND1の一方の入力端子と他方の入力端子とにはそれぞれ電源電圧VDDとインバータInv3の出力信号が供給される。インバータInv1の入力端子にはNAND回路NAND1の出力信号が供給され、初段の遅延回路320の出力端子としてのインバータInv1の出力端子からは位相22.5°の信号波形tap1が生成される。
【0133】
2段目遅延回路321も、初段の遅延回路320と同一の回路構成によって構成され、2段目遅延回路321の出力端子としてのインバータInv1の出力端子からは位相45°の信号波形tap2が生成される。
【0134】
以下同様にして、N段目の遅延回路32Nも、初段の遅延回路320と同一の回路構成によって構成され、N段目の遅延回路32Nの出力端子としてのインバータInv1の出力端子からは所定の位相値の信号波形tapNが生成される。
【0135】
図6は、図5に示した本発明の実施の形態1によるクロック発生器3の多段遅延回路32に含まれたNAND回路NAND1とインバータInv1の具体的な回路の構成を示す図である。
【0136】
図6に示すように、NAND回路NAND1は接地電位VSSと出力端子outとの間にソース・ドレイン電流経路が直列接続された2個のNチャンネルMOSトランジスタQn1、Qn2と電源電圧VDDと出力端子outとの間にソース・ドレイン電流経路が並列接続された2個のPチャンネルMOSトランジスタQp1、Qp2とを含んでいる。第1入力端子in1はトランジスタQn1のゲート電極とトランジスタQp1のゲート電極に接続され、第2入力端子in2はトランジスタQn2のゲート電極とトランジスタQp2のゲート電極に接続されている。インバータInv1は、接地電位VSSと出力端子outの間にソース・ドレイン電流経路が接続されたNチャンネルMOSトランジスタQn3と電源電圧VDDと出力端子outの間にソース・ドレイン電流経路が接続されたPチャンネルMOSトランジスタQp3とを含んでいる。入力端子inはトランジスタQn3のゲート電極とトランジスタQp3のゲート電極に接続されている。他のインバータInv2、Inv3も、インバータInv1と全く同様に、トランジスタQn3、Qp3によって構成されている。
【0137】
図7は、図6に示した本発明の実施の形態1による多段遅延回路32に含まれたNAND回路NAND1とインバータInv1の具体的な半導体周期回路の部分デバイスレイアウトの構成を示す図である。
【0138】
図7に示すように、図の横方向に電源電圧VDDと接地電位VSSとの電源・接地配線が形成され、電源電圧VDDの電源配線に沿ってN型ウェル領域N−Wellが形成されて、接地電位VSSの接地配線に沿ってP型ウェル領域P−Wellが形成されて、N型ウェル領域N−Wellには電源電圧VDDが給電されて、P型ウェル領域P−Wellには接地電位VSSが給電される。
【0139】
更にN型ウェル領域N−Wellの内部には、電源電圧VDDの電源配線に沿ってNAND回路NAND1を構成する2個のPチャンネルMOSトランジスタQp1、Qp2とインバータInv1、Inv2を構成する2個のPチャンネルMOSトランジスタQp3、Qp4が形成されている。またP型ウェル領域P−Wellの内部には、接地電位VSSの接地配線に沿ってNAND回路NAND1を構成する2個のNチャンネルMOSトランジスタQn1、Qn2とインバータInv1、Inv2を構成する2個のNチャンネルMOSトランジスタQn3、Qn4が形成されている。図7に示されてはいないが、図5に示すクロック発生器3の多段遅延回路32の初段のバッファ回路32Xと初段の遅延回路320と2段目遅延回路321と以下同様にしてN段目の遅延回路32Nの全てを構成するCMOS論理回路の全てのPチャンネルMOSトランジスタと全てのNチャンネルMOSトランジスタが、略平行に配置された電源電圧VDDの電源配線と接地電位VSSの接地配線との間のN型ウェル領域N−Wellの内部とP型ウェル領域P−Wellの内部にそれぞれ形成されている。
【0140】
《ハイパスフィルタ》
図2に示したように、ダイレクトサンプリングミキサ2では、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iの出力と第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力とからそれぞれ生成される同相成分(I)の受信ベースバンド信号と直交成分(Q)の受信ベースバンド信号とは、第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qとを介して第1ハイパスフィルタ5Iの入力端子と第2ハイパスフィルタ5Qの入力端子とに供給される。
【0141】
更に、第1ハイパスフィルタ5Iの出力端子と第2ハイパスフィルタ5Qの出力端子とは、それぞれ第1ベースバンド増幅器6Iの入力端子と第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子とに接続される。第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子の直流バイアス電圧レベルは、第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子および第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qの出力端子の直流電圧レベルが不一致の場合が多い。従って、この直流バイアス電圧レベルと直流電圧レベルと電圧差を吸収するために、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qとが第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qの出力端子と第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子との間に接続されている。
【0142】
第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの各ハイパスフィルタは、一端が第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qの出力端子に接続され他端が第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子に接続された容量Cと、一端が容量Cの他端と接続され他端が接地電位に接続された抵抗Rとによって基本的に構成されている。具体的な第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの各ハイパスフィルタは、容量Cと抵抗Rと演算増幅器とによって構成され、演算増幅器の反転入力端子に容量Cを介して受信ベースバンド信号が供給され、演算増幅器の反転入力端子と出力端子の間に抵抗Rが接続され、演算増幅器の非反転入力端子に基準電圧が供給される。
【0143】
《ベースバンド増幅器》
図2に示したように、第1ハイパスフィルタ5Iの出力端子と第2ハイパスフィルタ5Qの出力端子からそれぞれ生成される同相成分(I)の受信ベースバンド信号と直交成分(Q)の受信ベースバンド信号とは、それぞれ第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qとによって増幅される。第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの各ベースバンド増幅器は、直列接続された2段の多段増幅回路によって構成されている。
【0144】
《A/D変換部とDSP》
図2に示すように、A/D変換部7は、一方の入力端子と他方の入力端子と出力端子とを有する切り換えスイッチ71と、A/D変換器72とを含んでいる。切り換えスイッチ71の一方の入力端子と他方の入力端子とに第1ハイパスフィルタ5Iの出力端子の同相成分(I)の受信ベースバンド信号と第2ハイパスフィルタ5Qの出力端子の直交成分(Q)の受信ベースバンド信号とがそれぞれ供給され、切り換えスイッチ71の出力端子に両方の受信ベースバンド信号から選択された受信ベースバンド信号が生成されることが可能とされている。切り換えスイッチ71の出力端子に生成される選択受信ベースバンド信号はA/D変換器72のアナログ入力端子に供給され、A/D変換器72のデジタル出力端子から生成される受信デジタルベースバンド信号はデジタルシグナルプロセッサ(DSP)8の入力端子に供給される。
【0145】
切り換えスイッチ71によって交互に選択される同相成分(I)の受信ベースバンド信号と直交成分(Q)の受信ベースバンド信号とをA/D変換器72が交互にA/D変換するので、デジタルシグナルプロセッサ8には同相成分(I)の受信デジタルベースバンド信号と直交成分(Q)の受信デジタルベースバンド信号が交互に供給される。デジタルシグナルプロセッサ8は両者の受信デジタルベースバンド信号から信号レベルの大きい信号を選択してASK復調処理を実行するので、コミュニケーションホールまたはヌル点の問題を解消することが可能となる。
【0146】
《非線型A/D変換器》
一方、図2に示すように、第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子の直流バイアス電圧レベルと第1ダイレクトサンプリングミキサ2Iと第2ダイレクトサンプリングミキサ2Qの出力端子および第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qの出力端子の直流電圧レベルの電圧差を吸収するために、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qが第1フィルタ4Iと第2フィルタ4Qの出力端子と第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qの入力端子との間に接続されている。
【0147】
しかし、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの採用によって、下記の問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。
【0148】
すなわち、NFC技術の13.56MHzのRF周波数信号の振幅値が100%の変調度によって略ゼロの状態から大振幅のRF周波数信号が図2のアンテナANTにより受信されたとする。このような場合には、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの出力端子に大振幅入力信号に応答する過渡応答による大きな出力電圧変動が発生するものである。
【0149】
図8は、図2に示す本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5の第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの回路動作を示す波形図である。
【0150】
図8に示すように、NFC技術の13.56MHzのRF受信周波数入力信号の電圧振幅値Vinが略ゼロの状態から大振幅に変化することによって、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの出力電圧Voutには過渡応答によって大きな出力電圧変動が発生する。これは、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの各ハイパスフィルタが容量Cと抵抗Rと演算増幅器とによって構成される場合には、演算増幅器の電圧増幅機能によって更に大きな出力電圧変動が第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの出力に発生する。また更に、第1ハイパスフィルタ5Iと第2ハイパスフィルタ5Qの出力の大きな出力電圧変動は、第1ベースバンド増幅器6Iと第2ベースバンド増幅器6Qとによってまた更に大きな出力電圧変動に増幅されることになる。
【0151】
このような大きな出力電圧変動が切換スイッチ71を介してA/D変換器72のアナログ入力端子に供給されると、大きな出力電圧変動のアナログ入力電圧がA/D変換器72のアナログ入力ダイナミックレンジを超過する可能性がある。大きな出力電圧変動のアナログ入力電圧がA/D変換器72のアナログ入力ダイナミックレンジを超過すると、大振幅期間のアナログ入力電圧に正確に比例するデジタル出力信号がA/D変換器72の出力端子から生成されないので、非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の正確なデータ通信が不可能となる。
【0152】
一方、この問題を解消するために、A/D変換器72のアナログ入力ダイナミックレンジを極めて大きなレンジに拡大すると、図2のアンテナANTによって受信されるNFC技術の13.56MHzのRF受信周波数入力信号の電圧振幅値Vinが微小振幅となった際にA/D変換器72の入力感度が不足して、正確なデジタル出力信号がA/D変換器72の出力端子から生成されずに非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の正確なデータ通信が不可能となる。
【0153】
従って、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5では、この相互に相反する問題を解消するために、特にA/D変換器72に非線型A/D変換器が使用されたものである。
【0154】
図9は、図2に示す本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5のA/D変換器72に使用される非線型A/D変換器の入出力特性を示す図である。
【0155】
図9に示すように、A/D変換器72のアナログ入力端子に供給されるアナログ入力電圧がアナログ入力ダイナミックレンジの略中央の部分では、デジタル出力信号がワンステップ分変化するのに必要なアナログ入力電圧の変化が小さく設定されている。それに対して、アナログ入力電圧が図9の横軸の右側のアナログ入力ダイナミックレンジの最大値付近または図9の横軸の左側のアナログ入力ダイナミックレンジの最小値付近の部分では、デジタル出力信号がワンステップ分変化するのに必要なアナログ入力電圧の変化が大きく設定されている。
【0156】
従って、図9に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性によれば、アナログ入力電圧が微小振幅でありアナログ入力ダイナミックレンジの略中央の部分で変化する場合には、A/D変換器72が高い入力感度で動作するのでアナログ入力電圧が微小振幅でも正確なデジタル出力信号がA/D変換器72から生成され非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の正確なデータ通信が可能となる。一方、アナログ入力電圧が大振幅となってアナログ入力ダイナミックレンジの最大値付近または最小値付近の部分で変化する場合には、A/D変換器72が低い入力感度で動作する。その結果、アナログ入力電圧がアナログ入力ダイナミックレンジを容易に超過することが解消されて、アナログ入力電圧が大振幅でも正確なデジタル出力信号がA/D変換器72から生成され非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の正確なデータ通信が可能となる。
【0157】
《フラッシュ型非線型A/D変換器》
図10は、図9に示すA/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態1によるフラッシュ非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【0158】
図10に示したように、フラッシュ非線型A/D変換器72は、抵抗ラダー部721と、コンパレータ部722と、エンコーダ723によって構成されている。抵抗ラダー部721は基準電圧Vrefと接地電位の間に直列接続された複数の抵抗を含み、コンパレータ部722は非反転入力端子と反転入力端子と出力端子とを有する複数のコンパレータCP0、CP1、CP2〜CP9を含んでいる。コンパレータ部722の複数のコンパレータCP0、CP1、CP2〜CP9の非反転入力端子にアナログ入力電圧Vinが共通に供給され、複数のコンパレータCP0、CP1、CP2〜CP9の反転入力端子に抵抗ラダー部721の複数の抵抗の接続ノードの複数の比較基準電圧が供給される。
【0159】
図10に示す非線型A/D変換器72では、入力ダイナミックレンジの略中央の部分で高入力感度とするために抵抗ラダー部721の中央部分の5個の抵抗器はR−ΔRの低抵抗に設定される一方、入力ダイナミックレンジの最大値付近と最小値付近の部分で低入力感度とするために抵抗ラダー部721の上部の2個と下部の2個の抵抗器はRの高抵抗に設定されたものである。
【0160】
コンパレータ部722の複数のコンパレータCP0、CP1、CP2〜CP9の出力から生成される温度計コードのコンパレータ出力信号は、エンコーダ723によってバイナリーコードのA/D変換のデジタル出力信号D0〜DN-1に変換されて、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8に供給される。
【0161】
デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8は、A/D変換器72から供給されるデジタル出力信号D0〜DN-1を使用してASK復調する以前に、図9に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性と反対の特性のデジタル入力信号対デジタル出力信号の非線型特性のデジタル補正処理を実行する。このデジタル補正処理のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)8による実行によって、図9に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性が補償されることが可能となる。
【0162】
[実施の形態2]
《逐次比較型非線型A/D変換器》
図11は、A/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態2による逐次比較型非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【0163】
図11に示したように、逐次比較非線型A/D変換器72は、コンパレータ724と、逐次変換レジスタ725と、局部D/A変換器726によって構成されている。コンパレータ724は非反転入力端子に供給されるアナログ入力電圧Vinと局部D/A変換器726から反転入力端子に供給されるフィードバックアナログ出力電圧のアナログ電圧比較を実行する。逐次変換レジスタ725は比較初期値を保持する一方、コンパレータ724の電圧比較出力信号のハイレベルとローレベルの比較結果に応答して所定のアルゴリズムに従って保持値を更新する。更に、コンパレータ724の比較出力信号はA/D変換のデジタル出力信号D0〜DN-1として逐次比較非線型A/D変換器72から出力される一方、局部D/A変換器726の入力端子に供給される。従って、局部D/A変換器726は、逐次変換レジスタ725に保持されたデジタル更新保持値に対応するフィードバックアナログ出力電圧を生成してコンパレータ724の反転入力端子に供給する。
【0164】
従来の一般的な逐次比較型A/D変換器では、バイナリーサーチと呼ばれる所定のアルゴリズムに従って逐次変換レジスタの保持値を更新することで、逐次比較型のA/D変換を実行するものである。すなわち、逐次変換レジスタの比較初期値はアナログ入力ダイナミックレンジの略中央の電圧レベルに対応するものとされる。この中央の電圧レベルに設定されたフィードバックアナログ出力電圧とアナログ入力電圧とがコンパレータによって比較されて、前者よりも後者が高レベルの場合には更新保持値はダイナミックレンジの略3/4の電圧レベルに対応するように更新され、前者よりも後者が低レベルの場合には更新保持値はダイナミックレンジの略1/4の電圧レベルに対応するように更新される。上述のようなバイナリーサーチアルゴリズムに従って電圧比較と逐次変換レジスタの保持値の更新を逐次に実行することによって、アナログ入力電圧に対応する最終更新保持値が逐次変換レジスタに格納され、逐次変換レジスタの出力からA/D変換のデジタル出力信号が生成されるものである。
【0165】
図11に示した本発明の実施の形態2による逐次比較非線型A/D変換器72では、非線型バイナリーサーチのアルゴリズムに従って逐次変換レジスタの保持値を更新することで、図9に示したA/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するものである。
【0166】
図12は、図11に示す本発明の実施の形態2による逐次比較型非線型A/D変換器72の非線型バイナリーサーチのアルゴリズムを説明するための図であり、逐次比較型非線型A/D変換器72の入出力特性を示す図である。
【0167】
図12に示すように、図11に示す本発明の実施の形態2による非線型バイナリーサーチのアルゴリズムによれば、逐次変換レジスタ725の比較初期値P1は、従来の一般的なアナログ入力ダイナミックレンジの略中央の電圧レベルに設定されるのではなく、アナログ入力ダイナミックレンジの最大値Max(A)の略1/4の電圧レベルの付近に設定されている。この略1/4の電圧レベルの付近に設定された初期値フィードバックアナログ出力電圧(比較初期値P1)とアナログ入力電圧Vinとがコンパレータ724によって比較されて、前者よりも後者が高レベルの場合には次の更新保持値P2はダイナミックレンジの略2/3の電圧レベルに対応するように更新され、前者より後者が低レベルの場合には次の更新保持値P3はダイナミックレンジの略1/5の電圧レベルに対応するように更新される。
【0168】
比較初期値P1を使用した第1回目の電圧比較の結果、次の更新保持値P2に更新された場合には、第2回目の電圧比較ではダイナミックレンジの略2/3の電圧レベルに設定されたフィードバックアナログ出力電圧(更新保持値P2)とアナログ入力電圧Vinがコンパレータ724によって比較されて、前者よりも後者が高レベルの場合には次の更新保持値は更新保持値P2と最大値Max(A)に対応する更新保持値P5の略中間に対応するように更新され、前者よりも後者が低レベルの場合には次の更新保持値は更新保持値P2とゲイン切り換え線CLに対応する更新保持値P4の略中間に対応するように更新される。
【0169】
比較初期値P1を使用した第1回目の電圧比較の結果、次の更新保持値P3に更新された場合には、第2回目の電圧比較ではダイナミックレンジの略1/5の電圧レベルに設定されたフィードバックアナログ出力電圧(更新保持値P3)とアナログ入力電圧Vinがコンパレータ724によって比較されて、前者よりも後者が低レベルの場合には次の更新保持値は更新保持値P3と最小値Mini(A)に対応する更新保持値P8の略中間P7に対応するように更新され、前者よりも後者が高レベルの場合には次の更新保持値は更新保持値P3と比較初期値P1の略中間P6に対応するように更新される。
【0170】
すなわち、図11に示す本発明の実施の形態2による逐次比較非線型A/D変換器72は、コンパレータ724の出力から逐次生成される電圧比較結果に応答して、図12に示した非線型入出力特性に従った更新保持値P2、P3…P8を生成するように構成されている。すなわち、逐次変換レジスタ725はその内部にコンパレータ724の出力から逐次生成される電圧比較結果に応答するステートマシンを含み、逐次生成される電圧比較結果に応答して、図12に示した非線型入出力特性に従った更新保持値P2、P3…P8を生成するものである。
【0171】
逐次変換レジスタ725から生成されるA/D変換のデジタル出力信号D0〜DN-1は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8に供給される。デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8は、A/D変換器72から供給されるデジタル出力信号D0〜DN-1を使用してASK復調する以前に、図12に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性と反対の特性のデジタル入力信号対デジタル出力信号の非線型特性のデジタル補正処理を実行する。このデジタル補正処理のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)8による実行によって、図12に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性が補償されることが可能となる。
【0172】
[実施の形態3]
《パイプライン型非線型A/D変換器》
図13は、A/D変換器のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性を実現するための本発明の実施の形態3によるパイプライン非線型A/D変換器72の構成を示す図である。
【0173】
図13に示したように、パイプライン非線型A/D変換器72は、パイプライン処理ステージ部727と、遅延処理・デジタル補正部728によって構成されている。パイプライン処理ステージ部727は、複数のパイプラインステージPS0、PS1、PS2…PSN−1により構成され、複数のパイプラインステージPS0、PS1、PS2…PSN−1の各ステージはサンプルホールド回路10とサブA/D変換器11とサブD/A変換器12と減算器13と増幅器14とを基本要素として含んでいる。更に初段のパイプラインステージPS0には、電圧レベル補正回路15が追加されている。また更に2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1までの各ステージには、基準電圧スイッチ回路16が追加されている。
【0174】
初段のパイプラインステージPS0のサンプルホールド回路10の入力端子にパイプライン非線型A/D変換器72のアナログ入力端子のアナログ入力電圧Vinが供給され、サンプルホールド回路10の出力端子はサブA/D変換器11の入力端子と減算器13の一方の入力端子に接続されている。初段のパイプラインステージPS0の電圧レベル補正回路15の入力端子にA/D変換動作のための基準電圧Vrefが供給され、電圧レベル補正回路15の出力端子から基準電圧Vrefよりも所定の電圧分低下された補正基準電圧が生成されサブA/D変換器11の入力端子に供給される。
【0175】
初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11からの最上位ビット(MSB)のデジタル出力信号dは、遅延処理・デジタル補正部728の第1入力端子とサブD/A変換器12の入力端子とに供給される。更に、この最上位ビット(MSB)のデジタル出力信号dは、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1までの各ステージ中に含まれた基準電圧スイッチ回路16と初段のパイプラインステージPS0から最終段のパイプラインステージPSN−1までの各ステージ中に含まれた増幅器14に供給されている。
【0176】
更に、初段のパイプラインステージPS0のサブD/A変換器12は、この最上位ビットのデジタル出力信号dに対応するサブD/Aアナログ電圧信号を生成して減算器13の他方の入力端子に供給する。その結果、減算器13はアナログ入力電圧VinとサブD/Aアナログ電圧信号の差電圧の量子化誤差を生成して、この差電圧の量子化誤差は増幅器14の入力端子に供給される。
【0177】
初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11から生成される最上位ビットのデジタル出力信号dがローレベル“0”の場合には、ローレベルのデジタル出力信号dによって増幅器14の増幅率は2に設定され、プラス側の基準電圧+Vrefが増幅器14によって選択されて、Vout=2Vin+Vrefの関係で示される残差信号が増幅器14の出力から生成されて2段目のパイプラインステージPS1の入力端子に供給される。このように、最上位ビットのデジタル出力信号dがローレベル“0”の場合には、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1までの各ステージ中に含まれた基準電圧スイッチ回路16と増幅器14とはそれぞれ基準電圧Vrefの選択状態と増幅率が2の増幅状態とにそれぞれ設定されている。その結果、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1の各パイプラインステージでは、前段のパイプラインステージから供給される残差信号をVin´とすると、Vout=2Vin´+Vrefの関係で示される残差信号を生成して次段パイプラインステージの入力に供給する。
【0178】
初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11から生成される最上位ビットのデジタル出力信号dがハイレベル“1”の場合には、ローレベルのデジタル出力信号dによって増幅器14の増幅率は1に設定され、マイナス側の基準電圧−Vrefが増幅器14によって選択されて、Vout=Vin−Vref/2の関係で示される残差信号が増幅器14の出力から生成されて2段目のパイプラインステージPS1の入力端子に供給される。このように最上位ビットのデジタル出力信号dがハイレベル“1”の場合には、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1の各ステージ中に含まれた基準電圧スイッチ回路16と増幅器14とはそれぞれ半分の基準電圧Vref/2の選択状態と増幅率が1の増幅状態とにそれぞれ設定されている。従って、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1の各パイプラインステージでは、前段パイプラインステージから供給される残差信号をVin´とするとVout=Vin´−Vref/2の関係で示される残差信号を生成して次段のパイプラインステージの入力に供給する。
【0179】
図14は、図13に示した本発明の実施の形態3によるパイプライン型非線型A/D変換器72のA/D変換動作と入出力特性を示す図である。
【0180】
図14に示したゲイン切り換え線CLのアナログ入力電圧は、初段のパイプラインステージPS0の電圧レベル補正回路15の出力端子から生成される補正基準電圧である。この補正基準電圧は、電圧レベル補正回路15によって基準電圧Vrefよりも所定の電圧分低下されたものである。その結果、初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11は基準電圧Vrefより低レベルである補正基準電圧(CL)とパイプライン非線型A/D変換器72のアナログ入力端子のアナログ入力電圧Vinとを比較して、その比較結果を最上位ビット(MSB)のデジタル出力信号dとして出力する。
【0181】
補正基準電圧(CL)よりもアナログ入力電圧Vinが低レベルの場合には、初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11からローレベル“0”の最上位ビットのデジタル出力信号dが生成される。従って、初段のパイプラインステージPS0はVout=2Vin+Vrefの関係で示される残差信号を生成する一方、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1の各ステージはVout=2Vin´+Vrefの関係にて示される残差信号を生成する。従って、この場合には、図13に示した本発明の実施の形態3によるパイプライン型非線型A/D変換器72は、図14に示したゲイン切り換え線CLの動作点P1とその左側に位置する動作点P4〜P8にて動作するものとなる。その結果、このようにアナログ入力電圧Vinが微小振幅であってアナログ入力ダイナミックレンジの最大値Max(A)に到底到達しない部分で変化する場合には、A/D変換器72が高い入力感度で動作するのでアナログ入力電圧が微小振幅でも正確なデジタル出力信号がA/D変換器72から生成され非接触ICカードとリーダ・ライタ装置の間の正確なデータ通信が可能となる。
【0182】
一方、補正基準電圧(CL)よりもアナログ入力電圧Vinが高レベルの場合には、初段のパイプラインステージPS0のサブA/D変換器11からはハイレベル“1”の最上位ビットのデジタル出力信号dが生成される。従って、初段のパイプラインステージPS0はVout=Vin−Vref/2の関係で示される残差信号を生成する一方、2段目のパイプラインステージPS1から最終段のパイプラインステージPSN−1の各ステージはVout=Vin´−Vref/2の関係で示される残差信号を生成する。従って、この場合には図13に示した本発明の実施の形態3によるパイプライン型非線型A/D変換器72は、図14に示したゲイン切り換え線CLの動作点P1とその右側に位置する動作点P2、P3で動作するものとなる。その結果、アナログ入力電圧が大振幅となってアナログ入力ダイナミックレンジの最大値Max(A)に到達する直前の部分で変化する場合には、A/D変換器72が低い入力感度で動作するので、アナログ入力電圧がアナログ入力ダイナミックレンジを容易に超過することが解消されてアナログ入力電圧が大振幅でも正確なデジタル出力信号がA/D変換器72から生成され非接触ICカードとリーダ・ライタ装置との間の正確なデータ通信が可能となる。
【0183】
遅延処理・デジタル補正部728は、パイプライン処理ステージ部727の内部の初段のパイプラインステージPS0から最終段のパイプラインステージPSN−1より生成される複数のデジタル出力信号d、d1、d2…dN-1の遅延時間の相違を補償した後に、生成タイミングが整列されたA/D変換のデジタル出力信号D0〜DN-1を出力して、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8に供給する。
【0184】
デジタルシグナルプロセッサ(DSP)8はパイプライン型非線型A/D変換器72の遅延処理・デジタル補正部728から供給されるデジタル出力信号D0〜DN-1を使用してASK復調する以前に、図14に示す非線型A/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性と反対の特性のデジタル入力信号対デジタル出力信号の非線型特性のデジタル補正処理を実行する。その結果、このデジタル補正処理のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)8による実行によって、図14に示したA/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性が補償されることが可能となる。他の実施の形態として、図14に示した非線型A/D変換器72のアナログ入力電圧対デジタル出力信号の非線型特性と反対の特性のデジタル入力信号対デジタル出力信号の非線型特性のデジタル補正処理は、デジタルシグナルプロセッサ8ではなく、パイプライン型非線型A/D変換器72の遅延処理・デジタル補正部728で実行することも可能である。
【0185】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0186】
例えば、図2に示した本発明の実施の形態1による半導体集積回路B2の受信回路B5は、NFC技術で使用される13.56MHzのRF周波数信号を使用する非接触ICカードにのみ限定されるものではなく、例えばバッテリー動作の携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistant、Personal Data Assistance)、携帯電話や無線LAN(Local Area Network)等の受信回路として使用することも可能である。
【符号の説明】
【0187】
L1…ループコイル・アンテナ1
C0…容量
LA、LB…アンテナ端子
B1…非接触型ICカード
B2…半導体集積回路
B3…電源回路
B4…内部回路
B5…受信回路
B6…送信回路
B7…信号処理回路
B8…メモリ
1…ローノイズトランスコンダクタンス増幅器
2…ダイレクトサンプリングミキサ
2I…第1ダイレクトサンプリングミキサ
2Q…第2ダイレクトサンプリングミキサ
3…クロック発生器
30…リミッタ増幅器
31…分周器
32…多段遅延回路
33…位相検出部
34…クロック生成部
320、321、322〜32N…遅延回路
330、331、332〜33N…フリップフロップ
33P…位相検出回路
341…選択器
342、343…排他的論理和(EX−OR)回路
344…ロジック回路4…有限インパルス応答フィルタ/無限インパルス応答フィルタ
5…ハイパスフィルタ
6…ベースバンド増幅器
7…A/D変換部
71…切り換えスイッチ
72…非線型A/D変換器
8…デジタルシグナルプロセッサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信ミキサと、前記受信ミキサに供給されるローカル信号を生成する信号生成器とを具備する半導体集積回路であって、
前記受信ミキサにRF受信信号と前記ローカル信号とが供給されることによって、前記受信ミキサは受信ミキサ出力信号を生成するものであり、
前記信号生成器は、多段遅延回路と、位相検出部と、クロック生成部とを有するものであり、
前記多段遅延回路は、前記RF受信信号に含まれるキャリア信号に応答して所定の遅延時間の分、相互に位相タイミングが相違した複数のクロックパルス信号を含むパルス列を生成するものであり、
前記位相検出部は前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で生成される特定クロックパルス信号の電圧レベルと前記特定クロックパルス信号よりも以前に生成される所定数のクロックパルス信号の電圧レベルとが相違することを検出することによって、前記特定クロックパルス信号が所定の位相を有することを検出して検出出力信号を生成するものであり、
前記クロック生成部は、選択器と第1信号合成論理回路とを含み、
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記多段遅延回路から生成される前記複数のクロックパルス信号から複数の事前に選択された位相を有する複数の選択クロックパルス信号を出力して、
前記第1信号合成論理回路は前記選択器から出力される前記複数の選択クロックパルス信号の論理演算を実行することによって、前記第1信号合成論理回路は前記受信ミキサに供給される前記ローカル信号を生成することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記多段遅延回路は、直列接続された複数の遅延回路を含むものであり、
前記位相検出部は、複数のフリップフロップと位相検出回路とを含むものであり、
前記多段遅延回路の前記複数の遅延回路は前記パルス列の前記複数のクロックパルス信号を生成して、前記選択器と前記位相検出部の前記複数のフリップフロップとに供給するものであり、
前記複数のフリップフロップの複数の出力信号は前記位相検出回路に供給され、前記位相検出回路は前記検出出力信号を生成して前記選択器に供給することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2において、
前記複数のフリップフロップの複数のトリガ入力端子に、前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で最初に生成される開始クロックパルス信号が共通に供給されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項1において、
前記受信ミキサは、第1受信ミキサと第2受信ミキサとを含むものであり、
前記位相検出部は、前記特定クロックパルス信号が略180°である前記所定の位相を有することを検出して、前記検出出力信号を生成するものであり、
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記複数のクロックパルス信号から略0°の位相を有する第1選択クロックパルス信号と略45°の位相を有する第2選択クロックパルス信号と略90°の位相を有する第3選択クロックパルス信号と略135°の位相を有する第4選択クロックパルス信号とを出力するものであり、
前記第1信号合成論理回路の第1論理回路は、前記第1選択クロックパルス信号と前記第3選択クロックパルス信号の第1論理演算を実行することによって、前記第1受信ミキサに供給される第1RFローカル信号を生成するものであり、
前記第1信号合成論理回路の第2論理回路は、前記第2選択クロックパルス信号と前記第4選択クロックパルス信号の第2論理演算を実行することによって、前記第2受信ミキサに供給される第2RFローカル信号を生成する半導体集積回路。
【請求項5】
請求項4において、
前記クロック生成部は、前記第1RFローカル信号と前記第2RFローカル信号とに応答して、第1非反転デジタルクロック信号と第1反転デジタルクロック信号と第2非反転デジタルクロック信号と第2反転デジタルクロック信号を生成する第2信号合成論理回路を更に含み、
前記第1受信ミキサは、前記第1RFローカル信号と前記第1非反転デジタルクロック信号と前記第1反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第1ダイレクトサンプリングミキサによって構成され、
前記第2受信ミキサは、前記第2RFローカル信号と前記第2非反転デジタルクロック信号と前記第2反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第2ダイレクトサンプリングミキサによって構成されたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項6】
請求項5において、
前記半導体集積回路は、キャリア検出器と第1リセットスイッチトランジスタと第2リセットスイッチトランジスタとを更に具備して、
前記第1リセットスイッチトランジスタは前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続され、前記第2リセットスイッチトランジスタは前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続されたものであり、
前記キャリア検出器は前記RF受信信号に含まれる前記キャリア信号の振幅レベルを検出して、前記キャリア信号の前記振幅レベルが所定の振幅レベル以下に低下すると前記キャリア検出器は前記第1リセットスイッチトランジスタと前記第2リセットスイッチトランジスタとを非導通状態から導通状態に制御することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項7】
請求項6において、
前記半導体集積回路は、前記第1ダイレクトサンプリングミキサの入力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの入力端子とに接続されたローノイズ増幅器を更に具備して、
前記ローノイズ増幅器は、前記RF受信信号の電圧を電流に変換するローノイズトランスコンダクタンス増幅器により構成され、前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器と前記第1ダイレクトサンプリングミキサと前記第2ダイレクトサンプリングミキサとはダイレクトコンバージョン受信機を構成して、前記第1ダイレクトサンプリングミキサから第1受信ベースバンド信号が生成され、前記第2ダイレクトサンプリングミキサから第2受信ベースバンド信号が生成されることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項8】
請求項7において、
前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器は、短距離無線通信技術に準拠した前記RF受信信号を増幅可能とされたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項9】
請求項8において、
前記半導体集積回路は、第1ハイパスフィルタと第2ハイパスフィルタと第1ベースバンド増幅器と第2ベースバンド増幅器とA/D変換部とを更に具備して、
前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子にそれぞれ第1ハイパスフィルタの入力端子と前記第2ハイパスフィルタの入力端子が接続され、前記第1ハイパスフィルタの出力端子と前記第2ハイパスフィルタの出力端子にそれぞれ第1ベースバンド増幅器の入力端子と前記第2ベースバンド増幅器の入力端子が接続され、第1ベースバンド増幅器の出力端子と前記第2ベースバンド増幅器の出力端子に前記A/D変換部の入力端子が接続されたものであり、
前記A/D変換部は、前記短距離無線通信技術に準拠した前記RF受信信号の小振幅から大振幅への振幅変動による前記第1ハイパスフィルタの前記出力端子と前記第2ハイパスフィルタの前記出力端子との過渡応答による電圧変動に対応するための非線型の入出力特性を有した非線型A/D変換器によって構成されたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項10】
請求項9において、
前記非線型A/D変換器は、フラッシュ型非線型A/D変換器と逐次比較型非線型A/D変換器とパイプライン型非線型A/D変換器とのいずれかによって構成されたことを特徴とする半導体集積回路。
【請求項11】
受信ミキサと、前記受信ミキサに供給されるローカル信号を生成する信号生成器とを具備する半導体集積回路の動作方法であって、
前記受信ミキサにRF受信信号と前記ローカル信号とが供給されることによって、前記受信ミキサは受信ミキサ出力信号を生成するものであり、
前記信号生成器は、多段遅延回路と、位相検出部と、クロック生成部とを有するものであり、
前記多段遅延回路は、前記RF受信信号に含まれるキャリア信号に応答して所定の遅延時間の分、相互に位相タイミングが相違した複数のクロックパルス信号を含むパルス列を生成するものであり、
前記位相検出部は前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で生成される特定クロックパルス信号の電圧レベルと前記特定クロックパルス信号よりも以前に生成される所定数のクロックパルス信号の電圧レベルとが相違することを検出することによって、前記特定クロックパルス信号が所定の位相を有することを検出して検出出力信号を生成するものであり、
前記クロック生成部は、選択器と第1信号合成論理回路とを含み、
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記多段遅延回路から生成される前記複数のクロックパルス信号から複数の事前に選択された位相を有する複数の選択クロックパルス信号を出力して、
前記第1信号合成論理回路は前記選択器から出力される前記複数の選択クロックパルス信号の論理演算を実行することによって、前記第1信号合成論理回路は前記受信ミキサに供給される前記ローカル信号を生成することを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記多段遅延回路は、直列接続された複数の遅延回路を含むものであり、
前記位相検出部は、複数のフリップフロップと位相検出回路とを含むものであり、
前記多段遅延回路の前記複数の遅延回路は前記パルス列の前記複数のクロックパルス信号を生成して、前記選択器と前記位相検出部の前記複数のフリップフロップとに供給するものであり、
前記複数のフリップフロップの複数の出力信号は前記位相検出回路に供給され、前記位相検出回路は前記検出出力信号を生成して前記選択器に供給することを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記複数のフリップフロップの複数のトリガ入力端子に、前記多段遅延回路から生成される前記パルス列で最初に生成される開始クロックパルス信号が共通に供給されることを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項14】
請求項10において、
前記受信ミキサは、第1受信ミキサと第2受信ミキサとを含むものであり、
前記位相検出部は、前記特定クロックパルス信号が略180°である前記所定の位相を有することを検出して、前記検出出力信号を生成するものであり、
前記選択器は前記位相検出部から生成される前記検出出力信号に応答して前記複数のクロックパルス信号から略0°の位相を有する第1選択クロックパルス信号と略45°の位相を有する第2選択クロックパルス信号と略90°の位相を有する第3選択クロックパルス信号と略135°の位相を有する第4選択クロックパルス信号とを出力するものであり、
前記第1信号合成論理回路の第1論理回路は、前記第1選択クロックパルス信号と前記第3選択クロックパルス信号の第1論理演算を実行することによって、前記第1受信ミキサに供給される第1RFローカル信号を生成するものであり、
前記第1信号合成論理回路の第2論理回路は、前記第2選択クロックパルス信号と前記第4選択クロックパルス信号の第2論理演算を実行することによって、前記第2受信ミキサに供給される第2RFローカル信号を生成する半導体集積回路の動作方法。
【請求項15】
請求項14において、
前記クロック生成部は、前記第1RFローカル信号と前記第2RFローカル信号とに応答して、第1非反転デジタルクロック信号と第1反転デジタルクロック信号と第2非反転デジタルクロック信号と第2反転デジタルクロック信号を生成する第2信号合成論理回路を更に含み、
前記第1受信ミキサは、前記第1RFローカル信号と前記第1非反転デジタルクロック信号と前記第1反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第1ダイレクトサンプリングミキサによって構成され、
前記第2受信ミキサは、前記第2RFローカル信号と前記第2非反転デジタルクロック信号と前記第2反転デジタルクロック信号とに応答して動作する第2ダイレクトサンプリングミキサによって構成されたことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項16】
請求項15において、
前記半導体集積回路は、キャリア検出器と第1リセットスイッチトランジスタと第2リセットスイッチトランジスタとを更に具備して、
前記第1リセットスイッチトランジスタは前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続され、前記第2リセットスイッチトランジスタは前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と接地電位の間に接続されたものであり、
前記キャリア検出器は前記RF受信信号に含まれる前記キャリア信号の振幅レベルを検出して、前記キャリア信号の前記振幅レベルが所定の振幅レベル以下に低下すると前記キャリア検出器は前記第1リセットスイッチトランジスタと前記第2リセットスイッチトランジスタとを非導通状態から導通状態に制御することを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項17】
請求項16において、
前記半導体集積回路は、前記第1ダイレクトサンプリングミキサの入力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの入力端子とに接続されたローノイズ増幅器を更に具備して、
前記ローノイズ増幅器は、前記RF受信信号の電圧を電流に変換するローノイズトランスコンダクタンス増幅器により構成され、前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器と前記第1ダイレクトサンプリングミキサと前記第2ダイレクトサンプリングミキサとはダイレクトコンバージョン受信機を構成して、前記第1ダイレクトサンプリングミキサから第1受信ベースバンド信号が生成され、前記第2ダイレクトサンプリングミキサから第2受信ベースバンド信号が生成されることを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記ローノイズトランスコンダクタンス増幅器は、短距離無線通信技術に準拠した前記RF受信信号を増幅可能とされたことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項19】
請求項18において、
前記半導体集積回路は、第1ハイパスフィルタと第2ハイパスフィルタと第1ベースバンド増幅器と第2ベースバンド増幅器とA/D変換部とを更に具備して、
前記第1ダイレクトサンプリングミキサの出力端子と前記第2ダイレクトサンプリングミキサの出力端子にそれぞれ第1ハイパスフィルタの入力端子と前記第2ハイパスフィルタの入力端子が接続され、前記第1ハイパスフィルタの出力端子と前記第2ハイパスフィルタの出力端子にそれぞれ第1ベースバンド増幅器の入力端子と前記第2ベースバンド増幅器の入力端子が接続され、第1ベースバンド増幅器の出力端子と前記第2ベースバンド増幅器の出力端子に前記A/D変換部の入力端子が接続されたものであり、
前記A/D変換部は、前記短距離無線通信技術に準拠した前記RF受信信号の小振幅から大振幅への振幅変動による前記第1ハイパスフィルタの前記出力端子と前記第2ハイパスフィルタの前記出力端子との過渡応答による電圧変動に対応するための非線型の入出力特性を有した非線型A/D変換器によって構成されたことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。
【請求項20】
請求項18において、
前記非線型A/D変換器は、フラッシュ型非線型A/D変換器と逐次比較型非線型A/D変換器とパイプライン型非線型A/D変換器とのいずれかによって構成されたことを特徴とする半導体集積回路の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−109647(P2012−109647A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254631(P2010−254631)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】