説明

半導体集積回路の故障解析装置及び故障解析方法

【課題】電源電圧や電源電流の変化が微小であり、通常のOBIRCH法では解析が困難な故障を解析する半導体集積回路の故障解析装置、方法を提供する。
【解決手段】半導体集積回路の出力端子の電圧を測定する電圧測定部と、半導体集積回路の内部回路であって出力端子に接続される内部回路の状態を設定するテストパターンを半導体集積回路に与えるテストパターン発生部と、レーザービームを内部回路の所定の領域に対して走査しながら照射し、照射された部分の抵抗値を変化させるレーザー走査部と、レーザー走査部及び電圧測定部と連動し、レーザービームを照射したときに、出力端子の電圧の変化したレーザービームの照射位置を検出して表示する故障位置表示部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路の故障解析装置及び故障解析方法に関する。特にOBIRCH法によりレーザービームを半導体集積回路に照射し、照射した箇所の抵抗値の変化により故障位置を解析する故障解析装置及び故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の故障解析方法として半導体集積回路の特定の箇所にレーザービームを照射し、特定の箇所を加熱することにより電源電流や電源電圧の変化を測定するOBIRCH法(Optical Beam Induced Resistance Change method)が知られている。OBIRCH法による半導体集積回路の故障解析については、特許文献1、特許文献2に記載されている。
【0003】
特許文献1には、赤外線ビームを半導体デバイスの被観測領域に照射し、この赤外線ビームの照射に伴ってこの半導体デバイスのグランド端子に現われる電流の変化を検出して故障箇所を特定する故障解析装置及び故障解析方法が記載されている。特許文献1には、照射するビームに可視光やイオンビームを用いずに赤外線レーザーを用いることにより、電子−正孔対が発生することや、照射箇所がスパッタにより破壊されることなく良好に観測できることが記載されている。
【0004】
特許文献2には、光励起電流を生じさせる波長の第1の光を照射してpn接合を含む回路配線に平衡電流を流し、第1の光が照射された領域内に光励起を生じさせない波長の第2の光ビームを照射し、その照射スポットにより局所的に加熱し、電源端子と接地端子間の電流を検出することにより照射スポット内の故障箇所を特定する半導体装置の検査方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−316266号公報
【特許文献2】特開2004−327858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。
【0007】
特許文献1や特許文献2に記載されている従来のOBIRCH法による故障解析方法は、いずれも故障箇所にレーザービームを照射して加熱し、故障箇所の抵抗値の変化に依存する電源電流又は、電源電圧の変化を検出することにより、故障箇所を特定する故障解析装置、故障解析方法である。
【0008】
従って、故障箇所の発熱による抵抗値の変化が電源電流、電源電圧の変化として現れれば、故障箇所が特定できるが、故障箇所の抵抗値が変化しても、その抵抗値の変化によって、電源電流又は電源電圧が微小にしか変化しない場合には、故障を解析することができない。従って、特許文献1や特許文献2に記載されている従来のOBIRCH法では、解析できる故障が限定される。抵抗値の変化が電源電流や電源電圧の変化となってはっきり現れない故障モードであっても、故障箇所を特定できるOBIRCH法による故障解析装置、故障解析方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点によれば、被測定半導体集積回路の出力端子の電圧を測定する電圧測定部と、前記被測定半導体集積回路の内部回路であって前記出力端子に接続される内部回路の状態を設定するテストパターンを前記被測定半導体集積回路に与えるテストパターン発生部と、レーザービームを前記内部回路の所定の領域に対して走査しながら照射し、照射された部分の抵抗値を変化させるレーザー走査部と、前記レーザー走査部及び前記電圧測定部と連動し、レーザービームを照射したときに、前記出力端子の電圧の変化したレーザービームの照射位置を検出して表示する故障位置表示部と、を備える半導体集積回路の故障解析装置が提供される。
【0010】
本発明の第2の視点によれば、内部回路の微小な内部信号を増幅して外部端子へ出力する第1のモードを備えた半導体集積回路の故障解析方法であって、前記半導体集積回路に対してテストパターンを与え、前記第1のモードに設定するステップと、前記第1のモードを維持したまま、照射された部分の抵抗値を変化させるレーザービームを前記内部回路の所定の領域を走査ながら照射するステップと、前記レーザービームの走査に連動して前記外部端子から出力される信号を測定し、前記レーザービームの照射位置と、前記外部端子の出力信号の変化から前記半導体集積回路の故障位置を特定するステップと、を備える半導体集積回路の故障解析方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の各視点によれば、半導体集積回路の故障について、従来のOBIRCH法によっては、故障箇所の抵抗値の変化が電源電流又は電源電圧の変化に現れにくい箇所の故障であっても故障個所の抵抗値の変化を外部端子から観測できるので、故障箇所を特定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による故障解析装置のブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態による故障解析方法の処理フローチャートである。
【図3】図1の変形例による故障解析装置のブロック図である。
【図4】LCDソースドライバの回路ブロック図である。
【図5】LCDソースドライバにおいて、階調配線間のショートが発生した状態を説明する図である。
【図6】一実施形態による故障解析装置により図5に示すLCDソースドライバの出力端子電圧をモニタしたときの出力電圧を示す。
【図7】一実施形態による故障解析装置から出力される故障解析画像のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態の概要について説明する。なお、概要の説明に付記した図面参照符号は専ら理解を助けるための例示であり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0014】
図1に示すように本発明の故障解析装置10は、テストパターン発生部2と電圧測定部1を備える。テストパターン発生部2は、測定対象とする半導体集積回路100に対してテストパターンを与え、半導体集積回路100の出力端子から内部回路の状態を観測可能な状態に設定する。電圧測定部1は、半導体集積回路100の出力端子の電圧を測定する。レーザー走査部3は、半導体集積回路100の特定の領域にレーザービームを走査しながら照射する。半導体集積回路の内部回路のうち、レーザービームを照射された部分の素子は加熱により抵抗値が変化する。電圧測定部1では、レーザー走査部3の走査に連動して出力端子の電圧変化を観測する。電圧測定部1がレーザー装置部3の走査に連動した電圧変化を観測した場合には、故障位置表示部5は、電圧変化を観測したレーザービームの照射位置を表示する。
【0015】
レーザービームの照射による抵抗値の変化によっては、電源電流や電源電圧に大きな変化が現れない故障モードであっても、レーザービームの照射位置と連動して出力端子の電圧が変化すれば、故障箇所を特定することが可能である。
【0016】
本発明において下記の形態が可能である。
[形態1]第1の視点のとおりである。
[形態2]レーザーを照射された領域の被測定半導体集積回路100の画像データを取得する画像取得部4、4aをさらに備え、故障位置表示部5は、出力端子(図4のSRq端子等)の電圧の変化したときのレーザービームの照射位置を画像取得部が取得した内部回路の画像に重ね合わせて表示することが好ましい。
[形態3](半導体集積回路100の)内部回路が、増幅回路(図4のARq等)を含み、電圧測定部1は、出力端子(図4のSRq等)に出力される増幅回路の出力電圧を測定することが好ましい。増幅回路を利用することにより、内部の微小な信号についてインピーダンス変換や電圧を増幅して外部から測定することができる。
[形態4]テストパターン発生部2は、増幅回路が(レーザービームが照射される)所定の領域に配置されている回路又は配線の信号を増幅して出力端子に出力するモードに設定するテストパターンを発生することが好ましい。
[形態5]レーザー走査部3が照射するレーザービームが赤外線レーザーであることが好ましい。赤外線レーザーであれば、レーザービームを照射してもOBIC(Optical Beam Induced Current)電流が流れないのでOBIRCH法による抵抗値の変化をより容易に測定することができる。
[形態6]画像データ取得部4、4aは、レーザービームの反射光、及び/又は、半導体集積回路のレイアウト設計データ、を画像データとして取得し、故障位置表示部4、4aは、出力端子の電圧の変化したときのレーザービームの照射位置を、レーザービームの反射光、及び/又は、半導体集積回路のレイアウト設計データ、に重ね合わせて表示することが好ましい。レーザービームの反射光、及び/又は、半導体集積回路の設計データを重ね合わせて表示することにより容易に半導体集積回路の故障位置を特定することができる。レーザービームの反射光、又は、設計データのどちらか一方のみを重ね合わせて表示してもよいと、両方と重ね合わせて表示できるようにしてもよい。
[形態7]第2の視点のとおりである。
[形態8]例えば図4に一例を示すように、半導体集積回路100aは、複数の内部信号(V1〜Vn)から選択した信号を増幅して出力する出力回路(WRq、ARq)を備え、テストモードに設定するステップは、テストパターンによって、複数の内部信号から特定の内部信号を増幅して出力するモードに設定することが好ましい。例えば、図4の例において、図5に示すような配線ショート故障が存在する場合、スイッチWRqがVn−5、またはVn−6を選択するようにテストパターンによって設定すれば、レーザービームを故障箇所に照射したときに、SRq端子から図6に示すような電圧変化が観測できる。
[形態9]例えば図4に一例を示すように、半導体集積回路100aは、第1の電圧供給端子VHと第2の電圧供給端子VLとの間に接続され、それぞれ異なる中間電圧(V1〜Vn)を取り出す複数のタップが設けられた抵抗ストリングと、複数のタップ(V1〜Vn)に接続され、入力データDRqにより選択されたタップの電圧を出力するスイッチWRqと、スイッチWRqの出力信号を増幅して外部端子SRqへ出力する増幅回路ARqと、を含むDAコンバータを備え、レーザービームを走査しながら照射する領域が、抵抗ストリングのタップとスイッチWRqとを接続する配線が配置されている領域を含むことが好ましい。例えば、V1〜Vnのいずれかの配線が抵抗ストリングのタップとスイッチWRqの間のいずれかの箇所で配線ショート故障が発生している場合には、当該配線領域についてレーザービームを走査し、外部端子SRqの電圧変化を測定することにより、故障箇所を特定することができる。
[形態10]例えば図4に一例を示すように、半導体集積回路100aは、それぞれスイッチ(WL1〜WLp、WR1〜WRq)と増幅回路(AL1〜ALp、AR1〜ARq)と外部端子(SL1〜SLp、SR1〜SRq)とを備え、各スイッチ(WL1〜WLp、WR1〜WRq)が共有する抵抗ストリングの複数のタップに並列に接続された複数のDAコンバータを備え、レーザービームを走査しながら照射する領域が、複数のDAコンバータのうちレーザー光の走査に連動して出力される信号を測定する外部端子を備えるDAコンバータのスイッチと、抵抗ストリングのタップと、を接続する配線が配置されている領域を含むことが好ましい。たとえば、SL1端子から出力される信号を測定する場合には、抵抗ストリングとスイッチWL1とを接続する配線の配線ショート故障が検出可能である。その場合、レーザービームを走査しながら照射する領域には、信号を測定する外部端子SL1を備えるDAコンバータのスイッチであるWL1と、抵抗ストリングのタップと、を接続する配線が配置されている領域を含むことが好ましい。
【0017】
以上で概要の説明を終了し、以下に具体的な実施の形態について、図面を参照してより詳細に説明する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態による故障解析装置10のブロック図である。図1において、半導体集積回路100は故障解析装置10の解析対象となる試料であり、故障解析装置10には、含まれないが、故障解析装置10の実際の使用状態の理解を容易にするため、図1に記載している。図1において、レーザー光源6は、試料(半導体集積回路100)にレーザーを照射するための光源である。レーザー光源6は、近赤外線レーザーを発生する。レーザー走査部3は、試料(半導体集積回路100)の特定の領域に対して、レーザー光源が発生したレーザーをレーザービーム31として照射する。また、レーザー走査部3には、レーザービームを半導体集積回路100の1箇所に集光して照射し、集光したレーザービームをさらに半導体集積回路の特定の領域の内部で照射位置を移動して走査するための光学系が備わっている。
【0019】
画像取得部4は、レーザー走査部3がレーザーを照射する領域の半導体集積回路100の画像を取得する。画像の取得は、レーザー走査部3が半導体集積回路100に照射したレーザービームの反射光から半導体集積回路100の画像を取得する。
【0020】
故障解析装置10は、試料台9を備えており、試料である半導体集積回路100は試料台9の上に固定される。半導体集積回路100がパッケージに封止された半導体集積回路100である場合は、半導体集積回路100の半導体基板の上に形成された内部回路に対してレーザービームが容易に照射できるように開封された状態で試料台の上に固定される。レーザービームは、必要に応じて、回路が形成された半導体基板の表面から照射することも半導体基板の裏面から照射することもできる。試料台9は、フェイスアップでもフェイスダウンのどちらでも半導体集積回路100が固定できるようになっている。半導体集積回路100は、レーザービームを半導体基板の表面から照射する場合には、フェイスアップで試料台に固定され、レーザービームを半導体基板の裏面から照射する場合には、
フェイスダウンで試料台9に固定される。
【0021】
さらに、半導体集積回路100の外部接続端子は、試料台9を介して、電圧測定部1、テストパターン発生部2、電源7へと接続される。電源7は、試料台9を介して半導体集積回路100の電源端子に電源を供給するとともに、テストパターン発生部2に電源を供給する。テストパターン発生部2は、試料である半導体集積回路100のクロック端子や入力端子に与えるテストパターンを発生する。テストパターン発生部2で発生されたテストパターンは、試料台9を介して半導体集積回路100のクロック端子や入力端子に供給される。電圧測定部1は、試料台9を介して半導体集積回路100の外部端子に接続され、半導体集積回路100の外部端子から出力される信号の電圧変化を測定する。
【0022】
故障位置表示部5は、レーザー走査部3のレーザービームの走査に連動して電圧測定部1が測定した電圧変化をモニタする。電圧測定部1が測定した電圧変化がレーザービームの走査に連動し、レーザービームが特定の箇所へ照射されたときに電圧変化が観測された場合には、レーザービームの照射に同期して電圧変化が観測されたレーザービーム照射箇所を故障位置として認識する。さらに、故障位置表示部5は、その故障位置を画像取得部4が取得した半導体集積回路100の画像に重ね合わせて表示する。
【0023】
表示装置8は、画像取得部4が取得した半導体集積回路100の画像データ及び故障位置表示部5が故障位置を特定した画像データを表示する。
【0024】
図3に第1の実施形態の変形例による故障解析装置10aのブロック図を示す。図3の故障解析装置10aでは、画像取得部4aは、半導体集積回路100に照射したレーザービームの反射光に加えて、半導体集積回路100のレイアウト設計データ41から半導体集積回路100の画像データを取得する。半導体集積回路100に照射したレーザービームの反射光のみ画像データを取得する場合には、半導体集積回路100の下層構造の認識が困難であるが、半導体集積回路100の下層構造も含めて表示する必要がある場合には、設計データを重ね合わせて表示することにより下層構造を表示させることができる。また、レーザビームの走査位置と、画像として表示するレイアウト設計データの位置合わせができていれば、試料からの反射光による画像データを表示させずに、レイアウト設計データのみの上にレーザービームの照射位置を表示することもできる。以上説明した図3の故障解析装置10aは、設計データ41が表示できることを除いて図1に示す故障解析装置10の構成、機能と同一である。
【0025】
次に故障解析装置10を用いて半導体集積回路100の故障解析を行う場合の手順について説明する。ここで、故障解析の手順を説明するのに先立って、故障解析装置10を用いた解析が有効である半導体集積回路とその故障モードについて説明する。
【0026】
図4に故障解析装置10による故障解析の対象となる半導体集積回路の一例を示す。図4の半導体集積回路は、LCDソースドライバ100aである。図4のLCDソースドライバ100aの回路構成について説明する。LCDソースドライバ100aは、256〜1024階調程度の出力電圧信号を表示データに合わせてSL1〜SLp、SR1〜SRq端子から出力する。p、qの値はそれぞれ多い場合には、500程度である。すなわち、表示データに合わせて、256〜1024階調程度の出力電圧信号をSL1〜SLp端子、SR1〜SRq端子の多い場合には合計約1000個程度の端子から出力するLCDソースドライバである。SL1〜SLp端子、SR1〜SRq端子は、LCD表示パネル(図示せず)の各ソース線(データ線)に接続される。
【0027】
図4において、SRDL1、SRDL2は、DATA端子からシリアルに入力される表示データをクロック信号CLKに同期して取り込むシフトレジスタ・データラッチである。シフトレジスタ・データラッチSRDL1、SRDL2に取り込まれた表示データは、各出力端子(SL1〜SLp、SR1〜SRq)毎に設けられたスイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqへ選択信号として出力される。
【0028】
高電圧供給端子VHと低電圧供給端子VLとの間には、n+1個の直列抵抗からなる抵抗ストリングが設けられている。高電圧供給端子VHは、相対的に高い電圧が供給される端子であり、低電圧供給端子VLは高電圧供給端子VHより低い電圧が供給される端子である。また、nの値は、階調表示の数に等しい。すなわち、n+1個の抵抗が、高電圧供給端子VHと低電圧供給端子VLとの間にそれぞれタップを挟んで直列に接続され、n個のタップから高電圧供給端子VHの電圧と低電圧供給端子VLの電圧の中間の電圧であるV1〜Vnのn通りの中間電圧が階調電圧として出力される。すなわち、高電圧供給端子VHと低電圧供給端子VLとの間に接続される抵抗ストリングは、各タップから中間電圧を出力する分圧回路として機能する。タップ数nは、このLCDドライバ100aが、256階調表示である場合には、n=256である。
【0029】
LCDソースドライバ100aの出力端子であるSL1〜SLp、SR1〜SRq端子には、それぞれ端子毎にスイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqと、ボルテージフォロア接続された増幅回路AL1〜ALp、AR1〜ARqが設けられている。図4に示す例では、抵抗ストリング(分圧回路)を中央に配置し、その左側にスイッチWL1〜WLpのp個のスイッチが配置され、右側にスイッチWR1〜WRqのq個のスイッチが配置されている。抵抗ストリングのn個のタップからそれぞれV1〜Vnのn本の階調配線が各スイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqへ配線されている。
【0030】
スイッチWL1〜WLp、スイッチWR1〜WRqは、それぞれシフトレジスタ・データラッチSRDL1、SRDL2から出力される選択信号DL1〜DLp、DR1〜DRqのデータに基づいて、V1〜Vnのn通りの階調電圧から一つの階調電圧を選択して対応する増幅回路AL1〜ALp、AR1〜ARqへ出力する。階調数すなわち、nの数が256である場合には、選択信号DL1〜DLp、DR1〜DRqは、それぞれ8ビットの信号である。なお、各スイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqには、それぞれ選択信号DL1〜DLp、DR1〜DRqをデコードしてそのデコード結果に基づいて、n通りの階調電圧(階調配線)V1〜Vnから1つの階調電圧(階調配線)を選択するデコーダが内蔵されている。
【0031】
増幅回路AL1〜ALp、AR1〜ARqは、それぞれスイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqの選択した階調電圧をインピーダンス変換してそれぞれ対応する出力端子SL1〜SLp、SR1〜SRqから出力する。増幅回路AL1〜ALp、AR1〜ARqは、高インピーダンスである入力信号V1〜Vnを低インピーダンスである信号に変換し、LCDパネル(図示せず)のソース線(データ線)を駆動する。
【0032】
なお、図4において、高電圧供給端子VHと低電圧供給端子VLとの間に接続された抵抗ストリングと各スイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqと各増幅回路AL1〜ALp、AR1〜ARqは、それぞれ、選択信号DL1〜DLp、DR1〜DRqのデータに基づいた電圧を出力する2*(p+q)個のDAコンバータと考えることもできる。なお、2*(p+q)個のDAコンバータで一つの抵抗ストリング(分圧回路)を共有している。図4の例では、抵抗ストリングを中央に配置し、左右にスイッチと増幅回路を配置しているが、抵抗ストリングを端に配置し、スイッチと増幅回路をその片側のみに配置しても良い。すなわち、抵抗ストリングの左側に配置するスイッチと増幅回路の数pと抵抗ストリングの右側に配置するスイッチと増幅回路の数qは、一方が0であってもかまわない。
【0033】
図5は、図4のLCDソースドライバ100aにおいて、階調配線間のショートが発生した故障モードを説明する図である。図5では、階調配線Vn−5とVn−6とが、スイッチWR2とWR3との間で配線ショートを起こしている。
【0034】
図5に示す様な配線ショート故障の場合、正常品における階調配線Vn−5と階調配線Vn−6の電位差はわずかである。例えば約20mV以下である。従って、配線ショートが発生しても配線ショートによって流れる電源電流はごくわずかである。従って、従来のOBIRCH法では、配線ショート箇所にレーザービームを照射して配線ショート箇所の抵抗値を変化させても、電源電流の変化、電源電圧の変化の検出は極めて困難である。
【0035】
この図4に示すLCDソースドライバ100aにおいて、図5に示す配線ショート不良が発生している場合を想定して故障解析装置10を用いて故障解析を行う手順を説明する。図2は、第1の実施形態による故障解析方法の処理フローチャートである。
【0036】
まず、故障解析装置10による故障解析を行う前にLSIテスターによる機能テスト等により抵抗ストリングより右側に配置されている出力端子SR1〜SRqの出力電圧が異常であり、さらに、異常である階調電圧及び階調電圧が異常になる出力端子から階調配線の接続が正常でないらしいこと、及びある程度の故障が発生している領域については、予測がついているものの、正確な故障箇所が特定できていないとする。このケースでは、高電圧供給端子VHと低電圧供給端子VLとの間に接続された抵抗ストリングからスイッチWRqまでの間のいずれかの領域で配線ショートが発生し、ショートしている配線の疑わしい候補の一つとして階調配線Vn−5の配線ショートに疑いがあるとする。
【0037】
図2において、ステップS1では、LCDソースドライバ100aに対して電源電圧を供給するとともに、予め準備したテストパターンをLCDソースドライバ100aのクロック端子やデータ入力端子から与える。そのテストパターンにより、LCDソースドライバ100aの出力端子(例えば出力端子SRq)から内部回路の所望の信号を出力するようにLCDソーストライバ100aの内部回路を設定する。例えば階調電圧Vn−5を出力端子SRqから出力するようにシフトレジスタ・データラッチSRDL1、SRDL2にクロック信号とデータ信号を与え、スイッチWRqに階調電圧Vn−5を選択させるように選択信号DRqを設定する。
【0038】
次に、ステップS2では、故障が想定される箇所を含む領域にレーザービームを照射して走査する。ステップS3では、ステップS2のレーザービームの走査と連動して出力端子(この場合には、SRq端子)の電圧を測定する。この場合、配線ショートの故障がスイッチWR2とスイッチWR3との間の階調配線Vn−5とVn−6との間で発生しているので、故障箇所へのレーザービームの照射に同期してSRq端子から出力電圧の変化が観測される。故障個所へレーザービームを照射したときに故障個所の抵抗変化が出力端子(SRq端子)の電圧変化として観測され、故障個所以外にレーザービームを照射したとときには、出力端子の電圧変化が観測されないので、出力端子の電圧変化が観測されたときのレーザービーム照射位置から故障箇所を特定することができる。
【0039】
もし、レーザービームを走査しても出力端子の電圧変化が観測されなかった場合には、内部回路の状態設定に戻って、内部回路の状態設定を変えて故障解析をやり直すことができる。図4のLCDソースドライバであれば、スイッチの選択信号の設定を変えて、異なる階調配線の電圧を調べることができる。たとえば、階調配線Vn−5とVn−6との配線ショートを予想して階調配線Vn−5の電圧の電圧変化を調べても、階調配線Vn−5では、配線ショートが発生しておらず、実際は、階調配線Vn−6とVn−7との間のショートであった場合には、階調配線Vn−6、または、階調配線Vn−7の電圧の電圧変化を調べる必要がある。
【0040】
図6に、各スイッチWL1〜WLp、WR1〜WRqが階調電圧Vn−5とVn−6を選択した場合に、各出力端子SL1〜SLp、SR1〜SRqから観測される電圧を示す。図6では、加熱を行わない場合に観測される電圧値(図6では○で表記)と加熱を行ったときに観測される電圧値(×で表記)を示している。また、加熱を行わない場合と加熱を行った場合の理想的な電圧値を破線で示す。図6に示すとおり、実際に観測される電圧値には、ノイズが含まれるので、理想的な電圧値と一致しない。しかし、傾向を把握することはできる。図5に示す配線ショートの場合には、抵抗ストリングより右側(スイッチWR1〜WRq側)の階調配線で配線ショートが発生しているため、抵抗ストリングより左側(スイッチWL1〜WLp側)の階調配線の電圧に対する影響は小さい。従って、出力端子SL1〜SLpの電圧はほぼ正常である。
【0041】
一方、抵抗ストリングと配線ショート箇所との間に電流が流れるので、抵抗ストリングから離間し、配線ショート箇所に近づくごとに階調配線の電圧は、正常値から離れる。階調配線Vn−5の電圧は低下し、階調電圧Vn−6の電圧は上昇する。すなわち、このケースでは、スイッチWR1〜WRqが階調電圧Vn−5を選択するようなテストパターンを与えた場合は、出力端子SR1よりSR2、SR2よりSR3端子の出力電圧は低下することが観測される。また、スイッチWR1〜WRqが階調電圧Vn−6を選択するようなテストパターンを与えた場合は、出力端子SR1よりSR2、SR2よりSR3端子の出力電圧は上昇することが観測される。
【0042】
また、配線ショート箇所より抵抗ストリングから離れた位置では階調配線に電流は流れないので、配線ショート箇所と電圧は同一である。すなわち、このケースでは、配線ショート個所がスイッチWR2とWR3との間で発生しているので、出力端子SR3〜SRqの出力電圧はほぼ同一である。
【0043】
さらに、配線ショート箇所にレーザービームを照射し、加熱するとショート箇所の抵抗値が大きくなるので階調配線のショート箇所に流れる電流は減少し、電圧値も正常に近づく。階調配線Vn−5の電圧は加熱により上昇し、階調配線Vn−6の電圧は下降し、どちらも正常値に近づく。出力端子SR1〜SRqから加熱による階調配線Vn−5、Vn−6の電圧変化を観測することができる。
【0044】
なお、図6に示すとおり、階調数が256〜1024程度になると正常な場合でも1階調間の電位差は、20mV以下である。従って、ノイズによる測定誤差等を考慮するならば、各出力端子から出力される電圧の正確な測定は一般に困難である。しかし、たとえ、各出力端子から出力される電圧値の正確な測定は困難であったとしても、故障箇所にレーザービームを照射するとレーザービームの照射に同期して出力電圧の変化が観測できるので、レーザービームの照射による出力電圧の変化が比較的微小であっても故障位置を検出することができる。故障していない個所にレーザービームを照射しても出力電圧の変化が検出されないのに対して、故障個所にレーザービームを照射するとその抵抗値の変化が出力電圧の変化として観測できるからである。すなわち、図6に示すような加熱時に非加熱時との出力電圧の差異が観測されるのは、故障箇所にレーザービームを照射したときであり、故障個所以外にレーザービームを照射しても出力電圧の変化は観測されない。
【0045】
図7は、故障解析装置10から出力される故障解析画像のイメージ図である。図7では、設計データに故障位置を重ね合わせて表示している。図7において、レーザービームを走査して照射する走査範囲110を太い破線で示している。また、配線ショートが観測された位置(階調配線Vn−5とVn−6とが、スイッチWR2とWR3との間でショート)を黒点で示している。
【0046】
なお、本発明の故障解析装置及び故障解析方法が好適に適用できる半導体集積回路の例としてLCDソースドライバを例に説明した。しかし、本発明による故障解析装置及び故障解析方法は、LCDソーストライバに限られず、様々な半導体集積回路の故障解析に適用することができる。特に、OBIRCH法により故障箇所にレーザービームを照射しても故障箇所の加熱による抵抗値の変化が電源電流や電源電圧の変化となって現れにくい不良モードの解析に有効である。
【0047】
また、内部回路の微小な信号を電圧増幅やインピーダンス変換して出力する増幅回路を備えた半導体集積回路について、内部の微小な信号を増幅回路を介して外部端子に出力するモードに設定し、OBIRCH法による故障箇所への加熱により故障個所の抵抗値を変化させ、その抵抗値の変化が内部回路の微小な信号に与える影響を増幅回路によって、電圧増幅やインピーダンス変換を行って故障個所を特定することができる。
【0048】
また、本発明による故障解析方法において、レーザービームは、近赤外線レーザーを用いることが好ましい。近赤外線レーザーを用いることにより、レーザービームを照射してもOBIC(Optical Beam Induced Current)電流が流れないので、OBIC電流が、OBIRCH法による抵抗値の変化の検出を困難にすることを避けることができるからである。
【0049】
本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施例ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の特許請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
1:電圧測定部
2:テストパターン発生部
3:レーザー走査部
4、4a:画像取得部
5:故障位置表示部
6:レーザー光源
7:電源
8:表示装置
9:試料台
10、10a:故障解析装置
31:レーザービーム
41:設計データ
100:半導体集積回路
100a:LCDソースドライバ(半導体集積回路)
110:走査範囲
SRDL1、SRDL2:シフトレジスタ・データラッチ
WL1〜WLp、WR1〜WRq:スイッチ
AL1〜ALp、AR1〜ARq:増幅回路
SL1〜SLp、SR1〜SRq:出力端子(ソースドライブ端子)
VH、VL:電圧供給端子
V1〜Vn:階調電圧
DL1〜DLp、DR1〜DRq:デジタルデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定半導体集積回路の出力端子の電圧を測定する電圧測定部と、
前記被測定半導体集積回路の内部回路であって前記出力端子に接続される内部回路の状態を設定するテストパターンを前記被測定半導体集積回路に与えるテストパターン発生部と、
レーザービームを前記内部回路の所定の領域に対して走査しながら照射し、照射された部分の抵抗値を変化させるレーザー走査部と、
前記レーザー走査部及び前記電圧測定部と連動し、レーザービームを照射したときに、前記出力端子の電圧の変化したレーザービームの照射位置を検出して表示する故障位置表示部と、
を備えることを特徴とする半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項2】
前記レーザーを照射された領域の前記被測定半導体集積回路の画像データを取得する画像取得部をさらに備え、
前記故障位置表示部は、前記出力端子の電圧の変化したときのレーザービームの照射位置を前記画像取得部が取得した前記内部回路の画像に重ね合わせて表示することを特徴とする請求項1記載の半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項3】
前記内部回路が、増幅回路を含み、前記電圧測定部は、前記出力端子に出力される前記増幅回路の出力電圧を測定することを特徴とする請求項1又は2記載の半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項4】
前記テストパターン発生部は、前記増幅回路が前記所定の領域に配置されている回路又は配線の信号を増幅して前記出力端子に出力するモードに設定するテストパターンを発生することを特徴とする請求項3記載の半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項5】
前記レーザー走査部が照射するレーザービームが赤外線レーザーであることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載の半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項6】
前記画像データ取得部は、前記レーザービームの反射光、及び/又は、前記半導体集積回路のレイアウト設計データ、を前記画像データとして取得し、
前記故障位置表示部は、前記出力端子の電圧の変化したときのレーザービームの照射位置を、前記レーザービームの反射光、及び/又は、前記半導体集積回路のレイアウト設計データ、に重ね合わせて表示することを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項記載の半導体集積回路の故障解析装置。
【請求項7】
内部回路の微小な内部信号を増幅して外部端子へ出力する第1のモードを備えた半導体集積回路の故障解析方法であって、
前記半導体集積回路に対してテストパターンを与え、前記第1のモードに設定するステップと、
前記第1のモードを維持したまま、照射された部分の抵抗値を変化させるレーザービームを前記内部回路の所定の領域を走査ながら照射するステップと、
前記レーザービームの走査に連動して前記外部端子から出力される信号を測定し、前記レーザービームの照射位置と、前記外部端子の出力信号の変化から前記半導体集積回路の故障位置を特定するステップと、
を備えることを特徴とする半導体集積回路の故障解析方法。
【請求項8】
前記半導体集積回路は、複数の内部信号から選択した信号を増幅して出力する出力回路を備え、
前記テストモードに設定するステップは、前記テストパターンによって、前記複数の内部信号から特定の内部信号を増幅して出力するモードに設定することを特徴とする請求項7記載の半導体集積回路の故障解析方法。
【請求項9】
前記半導体集積回路は、
第1の電圧供給端子と第2の電圧供給端子との間に接続され、それぞれ異なる中間電圧を取り出す複数のタップが設けられた抵抗ストリングと、
前記複数のタップに接続され、入力データにより選択されたタップの電圧を出力するスイッチと、
前記スイッチの出力信号を増幅して前記外部端子へ出力する増幅回路と、
を含むDAコンバータを備え、
前記レーザービームを走査しながら照射する領域が、前記抵抗ストリングのタップと前記スイッチとを接続する配線が配置されている領域を含むことを特徴とする請求項7又は8記載の半導体集積回路の故障解析方法。
【請求項10】
前記半導体集積回路は、
それぞれ前記スイッチと前記増幅回路と前記外部端子とを備え、前記各スイッチが共有する前記抵抗ストリングの前記複数のタップに並列に接続された複数のDAコンバータを備え、
前記レーザービームを走査しながら照射する領域が、前記複数のDAコンバータのうち前記レーザービームの走査に連動して出力される信号を測定する外部端子を備えるDAコンバータの前記スイッチと、前記抵抗ストリングのタップと、を接続する配線が配置されている領域を含むことを特徴とする請求項9記載の半導体集積回路の故障解析方法。
【請求項11】
前記レーザービームが赤外線レーザーであることを特徴とする請求項7乃至10いずれか1項記載の半導体集積回路の故障解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−173103(P2012−173103A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34741(P2011−34741)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】