説明

単相電圧型交直変換装置及び系統連系システム

【課題】直流電圧の変動に対応できると共に、無効電力を自由に制御でき、且つ自律並行運転が可能な単相電圧型交直変換装置、及びこの単相電圧型交直変換装置を利用した系統連系システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、直流端子の直流電圧検出値と直流電圧指令値との差分から第2軸電圧指令を生成し、この第2軸電圧指令で有効電力を増減して直流電圧を制御する。例えば、直流端子の直流電圧検出値が直流電圧指令より低い場合、有効電力を低下させることで直流端子の電圧を上昇させ、逆に直流端子の直流電圧検出値が直流電圧指令より高い場合、有効電力を増加させることで直流端子の直流電圧検出値を下降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統の電源となる系統連系装置や無停電電源装置に適用可能な単相電圧型交直変換装置及びこれを備える系統連系システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続され、自動的に電圧、周波数及び位相を調整して直流を交流に変換した電力を電力系統に供給できる単相電圧型交直変換装置が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−219263号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】電気学会産業応用部門論文誌 第118巻12号 1998年12月号「誤差追従式PWMと電気二重層コンデンサによる系統連系型逐電装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の単相電圧型交直変換装置は、直流側から注入された電力を交流に変換し、有効電力として系統に出力し、交流側から注入された電力を直流に変換し、有効電力として直流側へ出力するように動作する。このとき、特許文献1の単相電圧型交直変換装置へは一定の直流電圧の入力が求められた。このため、近年普及してきた太陽光発電のように出力される直流電圧が変動する直流機器を特許文献1の単相電圧型交直変換装置に直接接続すると、所定以上に直流電圧が下がってしまった場合、交流出力(電圧、周波数及び位相)の制御が困難になる。
【0006】
一方、変動する直流電圧を制御して直流を交流に変換ができるインバータが知られている(例えば、非特許文献1を参照。)。図1は非特許文献1に記載されるインバータを説明する図である。図2は図1の自動電圧調整器(dc−AVR)の詳細を説明する図である。図1のインバータには直流端子電圧の目標値である直流電圧指令値Vが設定されている。自動電圧調整器は、直流電圧指令値Vと直流端子の直流電圧検出値Vとの差信号をローパス特性を持つ増幅器に入力する。自動電圧調整器は、増幅器の出力に直流端子における直流電流値を加算する(フィードフォワード)。そして、自動電圧調整器は、フィードフォワードで得られた信号に系統同期した基準正弦波信号(PCC電圧)を乗算してPWM指令j(t)を得ている。自動電圧調整器は、PWM指令j(t)に基づいてゲート信号を生成する。
【0007】
しかし、非特許文献1のインバータは、検出した直流電圧と指定値との差分をPWM指令としてフィードフォワードしているため自律並行運転することができない。
【0008】
このように、特許文献1の単相電圧型交直変換装置は変動する直流電圧の入力に課題があり、非特許文献1のインバータは自律並行運転ができないという課題があった。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、直流電圧の変動に対応できると共に、無効電力を自由に制御でき、且つ自律並行運転が可能な単相電圧型交直変換装置、及びこの単相電圧型交直変換装置を利用した系統連系システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、測定した無効電力値と設定された無効電力指令値との差分から第1軸指令を生成し、検出した直流電圧と設定された直流電圧指令との差分から第2軸電圧指令を生成し、有効電力を増減させて直流電圧制御することとした。
【0011】
具体的には、本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、交流端子から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流端子に接続された直流電圧源からの電力を単相交流電力に変換して前記交流端子から出力し、あるいは前記交流端子に接続された単相交流源からの単相交流電力を直流電力に変換して前記直流端子から出力する単相電圧型交直変換回路と、前記交流端子の単相交流出力電圧の位相を遅延させ、遅延単相交流を発生させる位相遅れ単相交流生成器を有し、前記遅延単相交流に基づいて前記交流端子の単相交流出力電圧と前記単相電圧型交直変換回路の内部起電圧との位相差に相応する位相差電圧を生成する位相差生成回路と、前記交流端子の単相交流出力電圧の振幅についての第1軸電圧指令及び前記交流端子の単相交流周波数についての第2軸電圧指令が入力され、前記第1軸電圧指令、前記第2軸電圧指令、前記位相差生成回路からの位相差電圧並びに前記交流端子の単相交流出力電圧に基づいて、前記交流端子の単相交流出力電圧の振幅が前記第1軸電圧指令に近づくように生成した電圧指令信号、及び前記交流端子の単相交流周波数が前記第2軸電圧指令に近づくように生成した周波数指令信号を出力する上位電圧制御回路と、前記交流端子の単相交流出力周波数の規準周波数、前記上位電圧制御回路からの周波数指令信号及び前記位相差生成回路からの出力信号に基づいて前記単相電圧型交直変換回路の前記内部起電圧の電気角を決定し、生成電気角を生成する周波数制御回路と、前記交流端子の単相交流出力電圧、前記周波数制御回路の生成電気角並びに前記上位電圧制御回路からの電圧指令信号に基づいて、前記単相交流出力電圧の振幅、周波数及び位相が前記交流端子の単相交流出力電圧の規準電圧、前記電圧指令信号及び前記生成電気角の合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路と、前記直流端子の電圧を指定する直流電圧指令値が設定され、前記直流端子の電圧である直流電圧検出値を検出し、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分を演算して前記第2軸電圧指令とする指令値演算回路と、
を備える。
【0012】
本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、直流端子の直流電圧検出値と直流電圧指令値との差分から第2軸電圧指令を生成し、この第2軸電圧指令で有効電力を増減して直流電圧を制御する。例えば、直流端子の直流電圧検出値が直流電圧指令より低い場合、有効電力を低下させることで直流端子の電圧を上昇させ、逆に直流端子の直流電圧検出値が直流電圧指令より高い場合、有効電力を増加させることで直流端子の直流電圧検出値を下降させる。
【0013】
単相電圧型交直変換装置には、第1軸電圧指令Vと第2軸電圧指令Vの2つの指令値がある。特許文献1の有効電力無効電力制御(PQ制御)の場合には、有効電力制御(P制御)の出力信号を第2軸電圧指令、無効電力制御(Q制御)の出力信号を第1軸電圧指令としている。
【0014】
本発明の単相電圧型交直変換装置は、図3のように直流電圧制御の出力信号を第2軸電圧指令V、無効電力制御(Q制御)の出力信号を第1軸電圧指令Vとし、直流電圧と無効電力とを同時制御する。
【0015】
従って、本発明は、直流電圧の変動に対応できると共に、無効電力を自由に制御でき、且つ自律並行運転が可能な単相電圧型交直変換装置を提供することができる。
【0016】
本発明に係る単相電圧型交直変換装置の前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分をローパス特性回路で演算することを特徴とする。
【0017】
前記指令値演算回路の前記ローパス特性回路は、数1の特性を持つことを特徴とする。
【数1】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数であり、^はラプラス変換を示す。
本単相電圧型交直変換装置の指令値演算回路は、直流電圧検出値と直流電圧指令との差分の高周波成分をローパス特性回路でカットし、増幅して単相電圧型交直変換回路の第2軸電圧指令とする。なお、ローパス特性回路で一次遅れ時定数TKdc=0として高周波成分をカットしない場合でも、指令値演算回路は第2軸電圧指令を生成することができる。本指令値演算回路は、後述する積分回路を用いた指令値演算回路より過渡応答がよい。
【0018】
本発明に係る単相電圧型交直変換装置の前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分を積分回路で演算することを特徴とする。
【0019】
前記指令値演算回路の前記積分回路は、数2の特性を持つことを特徴とする。
【数2】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
本単相電圧型交直変換装置の指令値演算回路は、直流電圧検出値と直流電圧指令との差分を積分して単相電圧型交直変換回路の第2軸電圧指令とする。本指令値演算回路は、前述のローパス特性回路を用いた指令値演算回路より定常状態での直流電圧偏差が小さい。
【0020】
本発明に係る単相電圧型交直変換装置の前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分をローパス特性回路と積分回路とを並列させた並列回路で演算することを特徴とする。
【0021】
前記指令値演算回路の前記並列回路は、数3の特性を持つことを特徴とする。
【数3】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
本指令値演算回路は、ローパス特性回路と積分回路を並列させたため、過渡応答と定常偏差との両立を図ることができる。
【0022】
本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、前記直流端子の直流電流値を検出する直流電流検出回路をさらに備え、前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分の演算時に前記直流電流検出回路が検出した前記直流電流値を加算することを特徴とする。本発明に係る単相電圧型交直変換装置は、直流電流値をフィードフォワードすることで直流端子の電圧を直流電圧指令値へ迅速に収束させることができる。
【0023】
また、本発明に係る系統連系システムは、前記単相電圧型交直変換装置と、前記単相電圧型交直変換装置の前記直流端子とDC/DCコンバータを介して接続し、前記直流端子との間で直流電力を授受するn台(nは任意の自然数)の直流機器と、を備える。
【0024】
前記単相電圧型交直変換装置は、自律並行運転が可能であり、直流電圧を所望値に制御することができる。このため、本系統連系システムは、交流端子を電力系統に接続し、直流端子にDC/DCコンバータを介して出力電圧が変化する直流エネルギー源や負荷を接続することができる。
【0025】
従って、本発明は、前記単相電圧型交直変換装置を利用した系統連系システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、直流電圧の変動に対応できると共に、無効電力を自由に制御でき、且つ自律並行運転が可能な単相電圧型交直変換装置、及びこの単相電圧型交直変換装置を利用した系統連系システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来のインバータを説明する図である。
【図2】自動電圧調整器(dc−AVR)の詳細を説明する図である。
【図3】本発明に係る単相電圧型交直変換装置における直流電圧と無効電力との同時制御を説明する図である。
【図4】本発明に係る単相電圧型交直変換装置の概略構成図である。
【図5】本発明に係る単相電圧型交直変換装置の概略構成図である。
【図6】本発明に係る単相電圧型交直変換装置の概略構成図である。
【図7】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える単相電圧型交直変換回路の概略構成図である。
【図8】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える単相電圧型交直変換回路の概略構成図である。
【図9】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える交流電力測定器の概略構成図である。
【図10】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える交流電力測定器の概略構成図である。
【図11】本発明に係る単相電圧型交直変換装置における制御ブロックの接続関係を示した図である。
【図12】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える位相差生成回路の概略構成図である。
【図13】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図14】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図15】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図16】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図17】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図18】本発明に係る単相電圧型交直変換装置が備える指令値演算回路を説明する図である。
【図19】本発明に係る系統連系システムの構成を説明する図である。
【図20】本発明に係る単相電圧型交直変換装置でのシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0029】
[単相電圧型交直変換装置]
図11は、単相電圧型交直変換装置における制御ブロックの接続関係を例示した図である。上位指令ベクトルB1、最上位制御ブロックB2、ac−AVRブロックB3、ETM−PWMブロックB4及び主スイッチB5が含まれる。ac−AVRブロックB3については、特許文献2に記載される内部等価インピーダンスをインダクタンス主体とする単相ac−AVRを適用することで、インバータの出力回路に接続される変圧器に偏磁の恐れがなくなる。さらに、内部等価インピーダンスを抵抗成分とインダクタンス成分の並列回路とできるために設計上の自由度が増加する。
【0030】
図4及び図5に、本実施形態に係る単相電圧型交直変換装置の概略構成図を示し、図11で示した各ブロックについてより詳細に説明する。
【0031】
図4に示す単相電圧型交直変換装置11は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源(不図示)からの電力を直流端子21で受けて単相交流電力に変換して交流端子22から出力する単相電圧型交直変換回路40と、交流端子22の単相交流出力電圧に対して位相を遅延させた遅延単相交流を発生させる位相遅れ単相交流生成器を有し、前記遅延単相交流に基づいて交流端子22の単相交流出力電圧と単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧との位相差に相応する位相差電圧を生成する位相差生成回路30と、
直流端子21の電圧を指定する直流電圧指令値及び交流端子22の単相出力電力の無効電力値に対する無効電力指令値、並びに直流端子21の電圧を検出した直流電圧検出値及び交流端子22の単相出力電力の無効電力計測値に基づいて、直流端子21の直流電圧が直流電圧指令値に近づくように、並びに交流端子22の単相出力電力の無効電力値が無効電力指令値に近づくように、交流端子22の単相出力電圧の振幅を制御する第1軸電圧指令値120−1及び交流端子22の単相出力電圧の周波数を制御する第2軸電圧指令値120−2を出力する電力制御回路150と、
電力制御回路150からの第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2、位相差生成回路30からの位相差電圧並びに交流端子22の単相交流出力に基づいて、交流端子22の単相交流出力電圧の振幅及び周波数が第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2に近づくように生成した電圧指令信号及び周波数指令信号を出力する上位電圧制御回路70と、
交流端子22における単相交流出力周波数の規準周波数、上位電圧制御回路70からの周波数指令信号及び位相差生成回路30からの位相差電圧に基づいて生成電気角を生成し、生成電気角に単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧の電気角を同期させる周波数制御回路50と、
交流端子22の単相交流出力電圧、周波数制御回路50からの生成値並びに上位電圧制御回路70からの電圧指令信号に基づいて、単相出力電圧の振幅、周波数及び位相が交流端子22における単相交流出力電圧の規準電圧、前記電圧指令信号及び前記生成値の合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路60と、を備える。
【0032】
第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2が図11の上位指令ベクトルB1に相当する。上位電圧制御回路70が図11の最上位制御ブロックB2に相当する。下位電圧制御回路60及び周波数制御回路50が図11のac−AVRブロックB3に相当する。ゲート信号発生器41が図11のETM−PWMブロックB4に相当する。単相電圧型交直変換回路40に含まれる単相電圧型交直変換部が図11の主スイッチB5に相当する。
【0033】
単相電圧型交直変換回路40は、PWM指令に基づいてゲート信号発生器41により発生させたゲート信号のパルス幅に応じて不図示の直流電圧源からの電力を単相交流電力に変換する。直流電圧源は、バッテリ等の単独で直流電圧を出力する電圧源、風力発電等の発電方法で発電し整流して直流電圧を出力する電圧源、又は直流コンデンサの電圧を制御して直流電圧を出力する電圧源を例示することができる。この場合また、出力電圧検出回路31の接続点と交流端子22との間にさらにブロッキングインダクタを備え、単相交流出力電圧のそれぞれをブロッキングインダクタを介して交流端子22から出力することとしてもよい。単相電圧型交直変換回路40でのPWM成分の交流端子22への流出を防止することができる。
【0034】
図7及び図8に単相電圧型交直変換回路の概略構成図を示す。
【0035】
図7に示す単相電圧型交直変換回路40−1は、交流端子22から見て内部等価インピーダンスを持ちゲート信号のパルス幅に応じて直流電圧源からの電力を直流端子21で受けて単相交流電力に変換して出力する単相電圧型交直変換部42と、単相電圧型交直変換部42の単相交流出力電流を検出し単相交流出力電流の大きさに応じて生成した信号を出力する電流検出回路43と、PWM指令と電流検出回路43からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させて出力するゲート信号発生器41と、単相電圧型交直変換部42の単相交流出力電圧から単相電圧型交直変換部42でのゲート信号に起因する高周波成分を除去して出力する単相交流フィルタ回路45と、を備える。
【0036】
また、図8に示す単相電圧型交直変換回路40−2は、図7の電流検出回路43に代えて、単相電圧型交直変換部42の単相交流出力電圧を検出し単相交流出力電圧の大きさに応じて生成した信号を出力する電圧検出回路44を備える。この場合、ゲート信号発生器41は、PWM指令と電圧検出回路44からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させて出力する。
【0037】
図7及び図8に示す単相電圧型交直変換部42の持つ内部等価インピーダンスは、図4の単相電圧型交直変換装置11内の制御変数により持たせることもできるし、図7及び図8の単相電圧型交直変換回路40−1,40−2の出力に抵抗、リアクトル若しくは単相変圧器又はこれらの組み合わせを接続して持たせることもできる。例えば、単相電圧型交直変換回路40−1,40−2の単相出力にそれぞれ抵抗又はリアクトルを直列に接続してもよいし、さらに抵抗を接続した場合には抵抗の後段にリアクトルをそれぞれ直列に接続してもよい。また、単相電圧型交直変換回路40−1,40−2の単相出力に単相変圧器を接続してもよい。また、単相電圧型交直変換回路40−1,40−2の単相出力にそれぞれリアクトルを接続した場合には、リアクトルの後段に単相変圧器を接続してもよい。さらに、単相電圧型交直変換回路40−1,40−2の単相出力にそれぞれ抵抗を接続し、抵抗の後段にリアクトルをそれぞれ直列に接続した場合には、当該リアクトルの後段に単相変圧器を接続してもよい。このように、単相電圧型交直変換回路40が内部等価インピーダンスを持つことにより、図4の単相電圧型交直変換装置11は、電圧源として電力系統に接続して運転することが可能となる。
【0038】
図4の単相電圧型交直変換回路40を図7又は図8に示す構成とすることにより、単相電圧型交直変換装置11は、単相交流フィルタ回路45(図7及び図8)を備えることから、単相電圧型交直変換部42からの出力から単相電圧型交直変換部42でのゲート信号に起因する高周波成分を除去することができる。また、電流検出回路43又は電圧検出回路44において単相電圧型交直変換部42からの電流又は電圧を検出し、ゲート信号発生器41においてPWM指令と電流検出回路43又は電圧検出回路44からの出力との差分がゼロに近づくようにゲート信号を発生させることで電流誤差が許容範囲内に収まるように制御すること、或いは出力電圧をPWM指令に追従させることができる。
【0039】
図4の出力電圧検出回路31は、交流端子22の単相交流出力電圧を検出し、位相差生成回路30、下位電圧制御回路60及び上位電圧制御回路70にそれぞれ出力する。また、出力電圧検出回路31の前段にローパスフィルタを備え、出力電圧検出回路31への単相交流出力電圧をローパスフィルタを介して検出することとしてもよい。単相交流出力電圧からPWM成分を除去して単相電圧型交直変換装置11の制御を安定化させることができる。また、出力電圧検出回路31の後段にローパスフィルタを備え、出力電圧検出回路31からの出力電圧をローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。出力電圧検出回路31からの出力電圧からPWM成分を除去して単相電圧型交直変換装置11の制御を安定化させることができる。
【0040】
図4の出力電流検出回路34は、変流器38を介して交流端子22の単相交流出力電流を検出し、交流電力測定器140に出力する。
【0041】
図4の位相差生成回路30は、交流端子22の単相交流出力電圧VFIL(t)と単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧との位相差に相応する位相差電圧を生成する。図12は、位相差生成回路30の概略構成図の一例である。位相差生成回路30は、端子33−1から入力される単相交流電圧から所定の位相を遅らせた遅延単相交流を生成する位相遅れ単相交流生成器35と、端子33−1から入力される単相交流電圧、位相遅れ単相交流生成器35からの遅延単相交流の電圧及び端子33−3から入力される値から位相差電圧を生成する位相差電圧生成器36と、位相差電圧を出力する端子33−2を有する。図12では、位相遅れ単相交流生成器35が遅延単相交流の位相をほぼ90°遅らせているが、遅らせる位相は0°及び180°でなければ、何れの角度でもかまわない。
【0042】
端子33−1には出力電圧検出回路31が検出した単相交流出力電圧VFIL(t)が入力される。端子33−3には、後述する周波数制御回路50が生成する生成電気角57が入力される。交流端子22の単相交流出力電圧VFIL(t)は、数5で表せる。
【数5】

ここで、ω:角周波数[rad/s]、θ:位相角[rad]、E:実効値[V]である。なお、位相角の基準を内部起電圧におく。
【0043】
交流端子22の単相交流出力電圧の角周波数ωと単相電圧型交直変換回路40の規準角周波数ωcoとが等しい場合は、単相交流出力電圧VFIL(t)と位相遅れ単相交流電圧V”FIL(t)との位相差が90°となり、位相遅れ単相交流生成器35が生成する位相遅れ単相交流電圧V”FIL(t)は数6で表せる。
【数6】

【0044】
位相差電圧生成器36は、単相交流出力電圧VFIL(t)、位相遅れ単相交流電圧V”FIL(t)及び周波数制御回路50が生成する生成値から位相差電圧V(t)を出力する。位相差電圧V(t)は数7で表される。
【数7】

θの角速度がωに等しくなれば、数式3は定数となる。θは内部等価インピーダンス両端電圧の位相差であるので一般的に小さい。そこで、V(t)は数8のように近似できる。
【数8】

【0045】
位相差生成回路30は、生成した位相差電圧を周波数制御回路50及び上位電圧制御回路70にそれぞれ出力する。なお、ここではωがωcoと等しい場合のみを示したが、等しくない場合にも同様の近似解を得ることができ、実用上の問題はない。
【0046】
周波数制御回路50は、交流端子22における単相交流出力周波数の規準周波数、上位電圧制御回路70からの周波数指令信号及び位相差生成回路30からの出力信号に基づいて単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧の電気角を決定する。具体的には、図5に示すように、第二加算器56が上位電圧制御回路70からの周波数指令信号と位相差生成回路30からの位相差電圧とを加算する。第二加算器56が出力する信号の周波数成分にループフィルタ53が単相交流出力電圧の周波数差に関わる成分である低域成分を濾過する。ループフィルタ53において付加する低域濾過要素は、例えば、一次遅れ要素等の遅れ要素である。これにより、フィードバックループを安定化させることができる。
【0047】
また、第三加算器58は、規準周波数設定器51から出力される規準周波数とループフィルタ53の出力値とを加算する。時間積分器55は、第三加算器58からの出力を時間積分する。時間積分器55が第三加算器58からの出力を時間積分することで固有角度θとなる生成電気角57が得られる。
【0048】
生成電気角57は、下位電圧制御回路60の第二乗算器65によって単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧の電気角になる。これにより、当該回転角度を電力系統の周波数に追従させることができる。
【0049】
ここで、位相差生成回路30では、前述したように交流端子22の単相交流出力電圧と単相電圧型交直変換回路40の内部起電圧との位相差に相応する位相差電圧を出力する。そのため、位相差生成回路30での信号処理は、単相交流出力電圧と周波数制御回路50からの生成電気角57との位相を比較する位相比較処理に相当すると考えられる。また、規準周波数設定器51からの規準周波数とループフィルタ53からの出力値とを加算して積分する信号処理は、ループフィルタ53からの出力電圧に応じて生成電気角57の値を可変するVCO(Voltage Controlled Oscillator)の信号処理に相当すると考えられる。そのため、位相差生成回路30及び周波数制御回路50は、全体として、生成電気角57が交流端子22の単相交流出力電圧の周波数に同期するPLLとしての動作を行っていると考えられる。
【0050】
図4の上位電圧制御回路70には、後述する電力制御回路150からの第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2が入力され、周波数制御回路50からの生成電気角57、位相差生成回路30からの位相差電圧並びに交流端子22の単相交流出力電圧が入力される。上位電圧制御回路70は、これらの入力に基づいて、交流端子22の単相交流出力電圧の振幅及び周波数が第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2に近づくように生成した電圧指令信号及び周波数指令信号を出力する。上位電圧制御回路70には、第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2を直接入力するのではなく、第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2の上限と下限を定めるリミッタ121を介して入力してもよい。具体的には、図5に示すように、第一乗算器73が周波数制御回路50からの生成電気角57の正弦値に√2を乗算した値と第1軸電圧指令値120−1とを乗算する。第一減算器71aが第一乗算器73からの信号から交流端子22の交流出力電圧を減算する。第一上位制御増幅器72aが、交流端子22の単相交流出力電圧が第1軸電圧指令値120−1に近づくように第一減算器71aからの信号を増幅して電圧指令信号として出力する。また、第二減算器71bが第2軸電圧指令値120−2に√2を乗算した値から位相差生成回路30からの位相差電圧を減算する。第二上位制御増幅器72bが、交流端子22の単相交流出力電圧の周波数が第2軸電圧指令値120−2に近づくように第二減算器71bからの信号を増幅して周波数指令信号として出力する。
【0051】
これにより、電力系統の振幅及び周波数が変化しても、当該振幅及び周波数に対する単相電圧型交直変換装置11の単相出力電力の振幅及び周波数のそれぞれの誤差分を検出できる。ここで、第一上位制御増幅器72a及び第二上位制御増幅器72bでは、第一減算器71a及び第二減算器71bからの出力に低域濾過要素を付加することとしてもよい。これにより、フィードバックループを安定化させることができる。また、第一上位制御増幅器72a及び第二上位制御増幅器72bの後段にさらにリミッタを備え、第一上位制御増幅器72a及び第二上位制御増幅器72bからの出力をリミッタを介して出力することとしてもよい。過出力を防止して制御を安定化させることができる。
【0052】
図4の下位電圧制御回路60は、交流端子22の単相交流出力電圧、周波数制御回路50の生成電気角57を含む電気角指令信号並びに上位電圧制御回路70からの電圧指令信号に基づいて、前記単相交流出力電圧の振幅、周波数及び位相が交流端子22における単相交流出力電圧の規準電圧、前記電圧指令信号及び前記電気角指令信号の合成値に近づくように生成した信号をPWM指令として出力する。また、規準電圧は、規準電圧設定器61により予め設定する。この規準電圧は交流端子22の単相交流出力電圧の振幅の規準となる。
【0053】
具体的には、図5に示すように、規準電圧設定器61が規準電圧を設定して出力する。第二乗算器65が、周波数制御回路50からの生成電気角57の正弦値に√2を乗算した値と規準電圧設定器61からの規準電圧とを乗算する。第一加算器62が、上位電圧制御回路70からの電圧指令信号と第二乗算器65が出力する信号とを加算して出力する。第三減算器63が、第一加算器62が出力する信号から出力電圧検出回路31からの信号を減算する。電圧制御器64が、交流端子22の単相交流出力電圧が前記規準電圧、前記電圧指令信号及び前記電気角指令信号の前記合成値に近づくように第三減算器63が出力する信号を制御し、PWM指令として出力する。
【0054】
これにより、上位電圧制御回路70で検出した誤差分を補償すると共に、単相電圧型交直変換装置11の単相交流出力電圧の振幅及び位相を電力系統の振幅及び位相に一致させるように単相電圧型交直変換装置11の振幅及び位相を制御することができる。電圧制御器64は、例えば増幅器を適用することができる。ここで、第三減算器63と電圧制御器64との間にさらにローパスフィルタを備え、第三減算器63からの出力をローパスフィルタを介して出力することとしてもよい。電圧制御器64での制御を安定化させることができる。また、第三減算器63と電圧制御器64との間(この位置にローパスフィルタを備えた場合は、ローパスフィルタと電圧制御器64との間)にさらに電圧リミッタを備え、第三減算器63からの出力を電圧リミッタを介して出力することとしてもよい。単相電圧型交直変換装置11の起動時の出力電圧の過渡変動を抑制することができる。
【0055】
図4の交流電力測定器140は、出力電圧検出回路31が検出した交流端子22の単相交流出力電圧の値及び出力電流検出回路34が検出した交流端子22の単相交流出力電流の値が入力され、交流端子22における単相出力電力の有効電力値と無効電力値を算出する。
【0056】
具体的には、交流電力測定器140は、図9に示すように、電圧検出回路31と電流検出回路34とがそれぞれ測定した電力測定点の電圧と電流とを乗算器147−1で乗算した積をローパスフィルタ149−1に通して有効電力値測定回路145で有効電力値を測定する。また、電力測定点の電流位相を電流位相遅延回路143で90度ずらした関数を生成し、この関数と電力測定点の電圧とを乗算器147−2で乗算した積をローパスフィルタ149−2に通して無効電力値測定回路146で無効電力値を測定する。
【0057】
また、交流電力測定器140は、図10に示すような構成であってもよい。交流電力測定器140は、規準周波数を生成する規準周波数回路141と、規準周波数回路141からの規準周波数に基づいて、電力測定点の交流電圧である測定交流電圧の位相を遅らせて遅延交流電圧を生成する電圧位相遅延回路142と、規準周波数回路141からの規準周波数に基づいて、電力測定点の交流電流である測定交流電流の位相を遅らせて遅延交流電流を生成する電流位相遅延回路143と、電力演算回路144と、を備える。電力演算回路144では、測定交流電圧と測定交流電流とを乗算器147−1で乗算した乗算値に電圧位相遅延回路142からの遅延交流電圧と電流位相遅延回路143からの遅延交流電流とを乗算器147−2で乗算した乗算値を加算器148−1で加算した加算値をローパスフィルタ149−1に通し、有効電力値として有効電力値測定回路145で測定する。また、測定交流電流と電圧位相遅延回路142からの遅延交流電圧とを乗算器147−4で乗算した乗算値から測定交流電圧と電流位相遅延回路143からの遅延交流電流とを乗算器147−3で乗算した乗算値を減算器148−2で減算した減算値をローパスフィルタ149−2に通し、無効電力値として無効電力値測定回路146で測定する。測定交流電圧と測定交流電流との乗算値に遅延交流電圧と遅延交流電流との乗算値を加算することで、有効電力値に含まれる2倍周波数成分を低減することができる。また、測定交流電流と遅延交流電圧との乗算値から測定交流電圧と遅延交流電流との乗算値を減算することで、無効電力値に含まれる2倍周波数成分を低減することができる。このため、有効電力値と無効電力値の測定精度を向上させ、有効電力値と無効電力値を精度よく制御することができる。
【0058】
図4の電力制御回路150には、直流端子21の直流電圧に対する直流電圧指令値及び交流端子22の単相出力電力の無効電力値に対する無効電力指令値と、直流電圧検出回路161が検出した直流端子22の直流電圧検出値と、交流電力測定器140が算出した交流端子22の単相出力電力の無効電力値が入力される。電力制御回路150は、直流端子21の直流電圧が直流電圧指令値に近づくように、且つ交流端子22の単相出力電力の無効電力値が無効電力指令値に近づくように、交流端子22の単相出力電圧の振幅に対する第1軸電圧指令値120−1及び周波数に対する第2軸電圧指令値120−2を生成して出力する。
【0059】
図3は、電力制御回路150の制御内容を説明するブロック図である。電力制御回路150は、加算回路153で無効電力指令値と無効電力値との差分を計算し、指令値演算回路151で演算して第1軸電圧指令値を出力する。また、電力制御回路150は、加算回路154で直流電圧指令値と直流電圧検出値との差分を計算し、指令値演算回路152で演算して第2軸電圧指令値を出力する。
【0060】
図13〜図15は、指令値演算回路152の演算について説明する図である。図13の指令値演算回路152は、直流電圧指令値と直流電圧検出値との差分をローパス特性回路152aで演算する。ローパス特性回路152aは、数1の特性を持つ。
【数1】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【0061】
図14の指令値演算回路152は、直流電圧指令値と直流電圧検出値との差分を積分回路152bで演算する。積分回路152bは、数2の特性を持つ。
【数2】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【0062】
図15の指令値演算回路152は、直流電圧指令値と直流電圧検出値との差分をローパス特性回路152aと積分回路152bとを並列させた並列回路152cで演算する。並列回路152cは、数3の特性を持つ。
【数3】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【0063】
一方、図3の指令値演算回路151は、指令値演算回路152同様にローパスフィルタ特性回路及び積分回路を組み合わせた回路で無効電力指令値と無効電力値との差分を演算して第1軸電圧指令値を生成する。
【0064】
例えば、指令値演算回路151と指令値演算回路152がローパスフィルタ特性回路及び積分回路を並列させた回路で構成していれば、第1軸電圧指令値及び第2軸電圧指令値は次式で計算できる。
【数4】

ここで、V:第1軸電圧指令[V]
:第2軸電圧指令[V]
:無効電力指令[var]
Q:無効電力値[var]
D:直流電圧指令値[V]
D:直流電圧検出値[V]
:Q制御の一次遅れゲイン
KQ:Q制御の一次遅れ時定数[s]
:Q制御の積分時定数[c]
dc:直流電圧制御の一次遅れゲイン
Kdc:直流電圧制御の一次遅れ時定数[s]
dc:直流電圧制御の積分時定数[s]
^はラプラス変換を示す。
【0065】
単相電圧型交直変換装置11は次のように動作する。直流端子21側から直流電力が入力されると、直流電圧検出値VDが上昇する。直流電圧検出値と直流電圧指令値VDとの誤差が負となるので、指令値演算回路152は第2軸電圧指令Vを増加させるように動作する。また、直流電圧指令値VDを増加させると、直流電圧検出値との誤差が正となるので、指令値演算回路152は第2軸電圧指令Vを減少させるように動作する。第2軸電圧指令V側の指令値演算回路152は、入力に対する出力の極性が反転となる。一方、第1軸電圧指令Vと無効電力値との関係はPQ制御の場合と同一であり、第1軸電圧指令V側の指令値演算回路151は、入力と出力の極性の反転がない。
【0066】
単相電圧型交直変換装置11は直流端子21の直流電流値を検出する直流電流検出回路162をさらに備える。電力制御回路150の指令値演算回路152は、直流電圧指令値と直流電圧検出値との差分をローパス特性回路152a、積分回路152b又は並列回路152cで演算した後に直流電流検出回路162が検出した直流電流値を加算する。図16〜図18は、直流電流値を加算する場合の指令値演算回路152の演算について説明する図である。
【0067】
図6に、他の形態に係る単相電圧型交直変換装置の概略構成図を示す。
【0068】
図6の単相電圧型交直変換装置11は、図5に示す単相電圧型交直変換装置11の電圧制御器64からの出力にさらにフィルタ電流補償器66、PWM電流偏差補償器67及びフィードフォワード増幅器68からの出力を第四加算器69において加算した形態である。この場合、単相電圧型交直変換回路40は、図7又は図8で説明したいずれかの単相電圧型交直変換回路40−1,40−2を適用することができる。そのため、図6では、図7又は図8のいずれかの単相電圧型交直変換回路40−1,40−2が適用されているものとする。
【0069】
フィルタ電流補償器66は、単相電圧型交直変換回路40内の単相交流フィルタ回路45(図7又は図8)における電流損失分を補償するように規定された電流補償値を出力する。これにより、単相電圧型交直変換装置11では、図7又は図8の単相交流フィルタ回路45における電流損失分を予めフィルタ電流補償器66において設定し、電圧制御器64からの出力ベクトルに加算することで当該電流損失分を補償することができる。また、PWM電流偏差補償器67は、単相電圧型交直変換回路40からの単相交流出力電流の電流偏差分を補償するように規定された電流偏差補償値を出力する。これにより、単相電圧型交直変換装置11では、PWM指令をゼロ指令としたときの単相電圧型交直変換回路40における電流偏差分を予めPWM電流偏差補償器67において設定し、電圧制御器64からの出力ベクトルに加算することで当該電流偏差分を補償することができる。また、フィードフォワード増幅器68は、出力電流検出回路34が検出した単相交流出力電流の値が入力され、交流端子22の負荷に対する電流を補償するように所定のフィードフォワードゲインで増幅して出力する。これにより、単相電圧型交直変換装置11では、出力電流検出回路34において交流端子22の単相交流出力電流を検出し、値をフィードフォワード増幅器68をとおして、電圧制御器64からの出力値に加算することで負荷電流が変化しても安定した出力電圧を発生することができる。
【0070】
リミッタ121は、第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2の上限と下限を定め、過大な第1軸電圧指令値120−1及び第2軸電圧指令値120−2が上位電圧制御回路70に入力されることを防止する。
【0071】
以上説明したように、図4から図6の単相電圧型交直変換装置11は、内部等価インピーダンスを持つことから、電圧源として電力系統に接続して運転することができると共に、周波数制御回路50、上位電圧制御回路70及び下位電圧制御回路60を備えるため、電力系統に対する電力偏差を自律して補償する自律並行運転が可能である。そのため、装置の信頼性が高まると共に分散配置が可能となる。さらに、複数台並列運転させる場合には、台数制限がなく運転させることができる。
【0072】
また、電力制御回路150が指令値演算回路152を持ち、直流電圧検出値に応じて第2軸電圧指令を生成するため、単相電圧型交直変換装置11は直流端子21の直流電圧を一定に保つことができる。このため、単相電圧型交直変換装置11は出力又は要求する直流電力が変動する直流機器を直流端子21に接続でき、且つ自律並行運転も可能な単相電圧型交直変換装置とすることができる。
【0073】
[系統連系システム]
次に、図4から図6で説明した単相電圧型交直変換装置11を備える系統連系システム301を説明する。図19は、系統連系システム301の構成を説明する図である。系統連系システム301は、単相電圧型交直変換装置11と、単相電圧型交直変換装置11の直流端子21とDC/DCコンバータ202を介して接続し、直流端子21との間で直流電力を授受するn台(nは任意の自然数)の直流機器203と、を備える。
【0074】
DC/DCコンバータ202は、電流出力型の直流コンバータである。例えば、直流機器203が太陽電池である場合、DC/DCコンバータ202は、太陽電池から最大電力を取り出せるように電圧及び電流を調整する。
【0075】
直流機器203は、直流エネルギー源又は直流負荷である。直流エネルギー源とは、例えば、太陽電池、二次電池、燃料電池などである。また、直流負荷とは、例えば、充電器である。系統連系システム301は、単相電圧型交直変換装置11が直流端子21の直流電圧を一定に維持することができるため、DC/DCコンバータ202を介して直流機器203を直接直流端子21に接続可能である。
【0076】
なお、系統連系システム301は、直流機器203と電力系統との電力の授受だけでなく、直流エネルギー源である直流機器203から直流負荷である直流機器203へ直流電力を直接供給することも可能である。直流エネルギー源からの直流電圧が変動したとしても単相電圧型交直変換装置11が直流端子21の直流電圧を一定値に保つように動作するため、直流負荷は一定の電圧の電力を受けることができる。
【0077】
(実施例)
図20は、200V、50Hz、1kVAの単相電圧型交直変換装置でのシミュレーション結果を示す。この単相電圧型交直変換装置は、電力制御回路の中の指令値演算回路として図4の回路をもつ。そして、電力制御回路に入力する直流電圧指令値を330Vとしている。制御パラメータをKdc=0.6、Tdc=2ms、TKdc=0.25secに設定した。当初には直流側が無負荷の状態で連系運転を行っており、時刻160msで1kWの直流負荷をステップ状に投入した。負荷投入後、直流端子21の直流電圧は30Vほど低下するが、すぐに交流端子22側から単相電圧型交直変換回路40を通して電力が流入し、時刻200msにはほぼ直流電圧指令値に戻っている。また、電力系統からの受電電流波形は力率1の正弦波となっている。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の単相電圧型交直変換装置は、太陽光発電用インバータ、燃料電池用インバータ、蓄電システム用インバータ、DCリンク付風力発電用インバータ等の分散電源用インバータ、整流器、並びにSVC(無効電力補償装置)などに適用することができる。
【符号の説明】
【0079】
11:単相電圧型交直変換装置
21:直流端子
22:交流端子
30:位相差生成回路
31:出力電圧検出回路
33−1〜33−3:端子
34:出力電流検出回路
35:位相遅れ単相交流生成器
36:位相差電圧生成器
38:変流器
40:単相電圧型交直変換回路
40−1,40−2:単相電圧型交直変換回路
41:ゲート信号発生器
42:単相電圧型交直変換部
43:電流検出回路
44:電圧検出回路
45:単相交流フィルタ回路
50:周波数制御回路
51:規準周波数設定器
53:ループフィルタ
55:時間積分器
56:第二加算器
57:生成電気角
58:第三加算器
60:下位電圧制御回路
61:規準電圧設定器
62:第一加算器
63:第三減算器
64:電圧制御器
65:第二乗算器
66
:フィルタ電流補償器
67:PWM電流偏差補償器
68:フィードフォワード増幅器
69:第四加算器
70:上位電圧制御回路
71a:第一減算器
71b:第二減算器
72a:第一上位制御増幅器
72b:第二上位制御増幅器
73:第一乗算器
120−1:第1軸電圧指令値
120−2:第2軸電圧指令値
121:リミッタ
140:交流電力測定器
141:規準周波数回路
142:電圧位相遅延回路
143:電流位相遅延回路
144:電力演算回路
145:有効電力値測定回路
146:無効電力値測定回路
147−1、147−2、147−3、147−4:乗算器
148−1:加算器
148−2:減算器
149−1、149−2:ローパスフィルタ
150:電力制御回路
161:直流電圧検出回路
162:直流電流検出器
B1:上位指令ベクトル
B2:最上位制御ブロック
B3:ac−AVRブロック
B4:ETM−PWMブロック
B5:主スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流端子から見て内部等価インピーダンスを持ち、PWM指令に基づいて発生させたゲート信号のパルス幅に応じて直流端子に接続された直流電圧源からの電力を単相交流電力に変換して前記交流端子から出力し、あるいは前記交流端子に接続された単相交流源からの単相交流電力を直流電力に変換して前記直流端子から出力する単相電圧型交直変換回路と、
前記交流端子の単相交流出力電圧の位相を遅延させ、遅延単相交流を発生させる位相遅れ単相交流生成器を有し、前記遅延単相交流に基づいて前記交流端子の単相交流出力電圧と前記単相電圧型交直変換回路の内部起電圧との位相差に相応する位相差電圧を生成する位相差生成回路と、
前記交流端子の単相交流出力電圧の振幅についての第1軸電圧指令及び前記交流端子の単相交流周波数についての第2軸電圧指令が入力され、前記第1軸電圧指令、前記第2軸電圧指令、前記位相差生成回路からの位相差電圧並びに前記交流端子の単相交流出力電圧に基づいて、前記交流端子の単相交流出力電圧の振幅が前記第1軸電圧指令に近づくように生成した電圧指令信号、及び前記交流端子の単相交流周波数が前記第2軸電圧指令に近づくように生成した周波数指令信号を出力する上位電圧制御回路と、
前記交流端子における単相交流出力周波数の規準周波数、前記上位電圧制御回路からの周波数指令信号及び前記位相差生成回路からの出力信号に基づいて前記単相電圧型交直変換回路の前記内部起電圧の電気角を決定し、生成電気角を生成する周波数制御回路と、
前記交流端子の単相交流出力電圧、前記周波数制御回路の生成電気角並びに前記上位電圧制御回路からの電圧指令信号に基づいて、前記単相交流出力電圧の振幅、周波数及び位相が前記交流端子における単相交流出力電圧の規準電圧、前記電圧指令信号及び前記生成電気角の合成値に近づくように生成した信号を前記PWM指令として出力する下位電圧制御回路と、
前記直流端子の電圧を指定する直流電圧指令値が設定され、前記直流端子の電圧である直流電圧検出値を検出し、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分を演算して前記第2軸電圧指令とする指令値演算回路と、
を備える単相電圧型交直変換装置。
【請求項2】
前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分をローパス特性回路で演算することを特徴とする請求項1に記載の単相電圧型交直変換装置。
【請求項3】
前記指令値演算回路の前記ローパス特性回路は、数1の特性を持つことを特徴とする請求項2に記載の単相電圧型交直変換装置。
【数1】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【請求項4】
前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分を積分回路で演算することを特徴とする請求項1に記載の単相電圧型交直変換装置。
【請求項5】
前記指令値演算回路の前記積分回路は、数2の特性を持つことを特徴とする請求項4に記載の単相電圧型交直変換装置。
【数2】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【請求項6】
前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分をローパス特性回路と積分回路とを並列させた並列回路で演算することを特徴とする請求項1に記載の単相電圧型交直変換装置。
【請求項7】
前記指令値演算回路の前記並列回路は、数3の特性を持つことを特徴とする請求項4に記載の単相電圧型交直変換装置。
【数3】

ここで、Vは第2軸電圧指令、Vは直流電圧指令値、Vは直流電圧検出値、sはラプラス変換の変数、Kdcは比例ゲイン、TKdcは一次遅れ時定数、Tdcは積分時定数であり、^はラプラス変換を示す。
【請求項8】
前記直流端子の直流電流値を検出する直流電流検出回路をさらに備え、
前記指令値演算回路は、前記直流電圧指令値と前記直流電圧検出値との差分の演算時に前記直流電流検出回路が検出した前記直流電流値を加算することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の単相電圧型交直変換装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の単相電圧型交直変換装置と、
前記単相電圧型交直変換装置の前記直流端子とDC/DCコンバータを介して接続し、前記直流端子との間で直流電力を授受するn台(nは任意の自然数)の直流機器と、
を備える系統連系システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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