説明

印刷方法、および電子デバイスの製造方法

【課題】マスクを取り外す際に、マスクの貫通窓部に充填されたハンダペーストのうち、貫通窓部に接するハンダペーストが、貫通窓部に密着し貫通窓部に残ってしまい、基板上に形成される転写部が、貫通窓部に充填されたハンダペーストの量よりも少なくなることを防ぎ、貫通窓部の形状に形成できる。
【解決手段】超音波伝達工程(S105)において、マスク5と、貫通窓部6に充填されたペースト4とに超音波振動を伝えて、貫通窓部6に充填されたペースト4と、貫通窓部6との間の密着性を弱くさせるので、マスク取外し工程(S106)において、貫通窓部6からペースト4が離れ易くなり、貫通窓部6にペースト4が残ることを抑制し、基板3上にペースト4からなる転写部2を形成することができる。特に、転写部2を微細に厚く、つまり転写部2の厚さHと幅Wとのアスペクト比(H/W)を大きくして、基板3上に形成するためにはより効果的に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷方法、および電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から貫通窓部(開口部)を備えたマスクを、基板上に取り付け、スキージによりマスク上に供給されたハンダペーストを掃くことにより、貫通窓部にハンダペーストを充填し、その後マスクを取り外して、基板上にハンダペーストからなる転写部を形成する印刷方法が、様々な電子デバイスの製造方法として用いられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−68843号公報(4頁、図5〜図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスクを取り外す際に、マスクの貫通窓部に充填されたハンダペーストのうち、貫通窓部に接するハンダペーストが、貫通窓部に密着し貫通窓部に残ってしまうことで、基板上に形成される転写部が、貫通窓部に充填されたハンダペーストの量よりも少なくなり、貫通窓部の形状に形成することができないという課題がある。特に、転写部を微細に厚く基板上に形成するためには、ハンダペーストとマスクの貫通窓部との密着性が、ハンダペーストと基板との密着性に比べて大きくなるため困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる印刷方法は、基板上にマスクを取り付けるマスク取付工程と、前記マスクの貫通窓部にペーストを充填させるペースト充填工程と、前記基板上に、前記ペーストからなる転写部を形成する転写工程とを備え、前記転写工程は、前記マスクに超音波振動を伝える超音波伝達工程と、前記マスクを前記基板から取り外すマスク取外し工程とを備えることを要旨とする。
【0007】
これによれば、超音波伝達工程において、マスクとマスクの貫通窓部に充填されたペーストとに超音波振動を伝えて、マスクの貫通窓部に充填されたペーストと、貫通窓部との間の密着性を弱くさせるので、マスク取外し工程において、貫通窓部からペーストが離れ易くなり、貫通窓部にペーストが残ることを抑制し、基板上にペーストからなる転写部を形成することができる。特に、転写部を微細に厚く基板上に形成するためには、ハンダペーストとマスクの貫通窓部との密着性が、ハンダペーストと基板との密着性に比べて小さくできるため、より効果的に作用する。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる印刷方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に実施することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【0009】
[適用例3]上記適用例にかかる印刷方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に開始することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【0010】
[適用例4]上記適用例にかかる印刷方法において、前記超音波伝達工程を実施した後に、前記マスク取外し工程を実施することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【0011】
[適用例5]本適用例にかかる電子デバイスの製造方法は、基板上にマスクを取り付けるマスク取付工程と、前記マスクの貫通窓部にペーストを充填させるペースト充填工程と、前記基板上に、前記ペーストからなる転写部を形成する転写工程とを備え、前記転写工程は、前記マスクに超音波振動を伝える超音波伝達工程と、前記マスクを前記基板から取り外すマスク取外し工程とを備えることを要旨とする。
【0012】
これによれば、超音波伝達工程において、マスクとマスクの貫通窓部に充填されたペーストとに超音波振動を伝えて、マスクの貫通窓部に充填されたペーストと、貫通窓部との間の密着性を弱くさせるので、マスク取外し工程において、貫通窓部からペーストが離れ易くなり、貫通窓部にペーストが残ることを抑制し、基板上にペーストからなる転写部を形成した電子デバイスを得ることができる。特に、転写部を微細に厚く基板上に形成するためには、ハンダペーストとマスクの貫通窓部との密着性が、ハンダペーストと基板との密着性に比べて小さくできるため、より効果的に作用する。
【0013】
[適用例6]上記適用例にかかる電子デバイスの製造方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に実施することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【0014】
[適用例7]上記適用例にかかる電子デバイスの製造方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に開始することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【0015】
[適用例8]上記適用例にかかる電子デバイスの製造方法において、前記超音波伝達工程を実施した後に、前記マスク取外し工程を実施することが好ましい。
これによれば、より効率的に上述の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の半導体装置を示す概略構成図。
【図2】本実施形態の印刷方法および半導体装置の製造方法のフローチャート。
【図3】本実施形態の印刷方法および半導体装置の製造方法を示す概略工程図。
【図4】本実施形態の印刷方法および半導体装置の製造方法を示す概略工程図。
【図5】本実施形態の印刷方法および半導体装置の製造方法を示す概略工程図。
【図6】本実施形態の転写工程を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の実施形態では、印刷方法、および電子デバイスとして半導体装置の製造方法を一例に挙げて説明する。
【0018】
(本実施形態)
以下、本実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、電子デバイスとしての半導体装置1は、基板3と、配線として転写部2とを備えている。基板3上に、転写部2が、厚さH、幅Wで形成されている。基板3は、たとえばガラスエポキシ基板、アルミナ基板、またはガラス基板などである。転写部2は、ペースト4に硬化処理または自然乾燥処理などを施すことにより形成される(図4および図5参照)。ペースト4は、たとえばハンダペースト、導電性ペースト、絶縁性材料、封止材、接着剤、レジスト材などである。転写部2の厚さHと幅Wとの比(H/W)をアスペクト比と称す。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の印刷方法、および半導体装置の製造方法は、基板配置工程(S101)、マスク取付工程(S102)、ペースト充填工程(S103)、および転写工程(S104)を備えている。そして、転写工程(S104)は、超音波伝達工程(S105)およびマスク取外し工程(S106)を備えている。
【0021】
図3(a)に示すように、本実施形態の印刷方法、および半導体装置の製造方法を用いる印刷装置10は、基板配置部11、マスクセット部12、保持部13、超音波部14、およびスキージ15(図4参照)を備え、以下に示す機能を有している。そして、マスク5は貫通窓部6を備えている。
【0022】
基板配置部11上には、被印刷物である基板3が配置される。マスクセット部12に配置されたマスク5を、保持部13によりマスクセット部12に固定させる。たとえば、保持部13により、マスク5の外縁部の2箇所以上を点または面で固定させる。超音波部14は、保持部13に配置され、超音波を発生するとともに、保持部13とマスク5とに超音波を伝達させる構成となっている。
【0023】
基板配置部11とマスクセット部12とは、それぞれの相対的位置を近づけたり遠ざけたりする構成となっている。本実施形態では、基板配置部11をマスクセット部12に近づけたり遠ざけたりする構成を用いて説明する(図3および図5参照)。
【0024】
図3(a)に示すように、基板配置工程(S101)を実施する。基板3を基板配置部11上に配置する。
【0025】
次に、マスク取付工程(S102)を実施する。基板配置部11を、図3(a)において矢印で示した方向に移動させて、マスクセット部12およびマスク5に近づける。これにより、図3(b)に示すように、マスク5を基板3上に取り付ける。
【0026】
図4に示すように、ペースト充填工程(S103)を実施する。
図4(c)に示すように、充填剤であるペースト4を、マスク5上に供給する。そして、図4(c)に実線で示したスキージ15を、矢印で示した方向に移動させて、破線で示したスキージ15まで移動させる。これにより、図4(d)に示すように、マスク5の貫通窓部6に、ペースト4を充填させる。
【0027】
図5に示すように、転写工程(S104)を実施する。
図5(e)に示すように、超音波部14を駆動させて、超音波振動をマスク5に伝える超音波伝達工程(S105)と、矢印で示した方向に基板配置部11を移動させて、遠ざけるマスク取外し工程(S106)とを実施し、図5(f)に示すように、マスクセット部12およびマスク5から、基板3および基板3上のペースト4を遠ざける。
これにより、図5(f)に示すように、マスク5を基板3から取り外し、基板3上のペースト4に硬化処理または自然乾燥処理などを施すことにより、基板3上にペースト4からなる転写部2を形成する。
【0028】
ここで、ペースト充填工程(S103)を実施した後の転写工程(S104)、詳しくはマスク取外し工程(S106)および超音波伝達工程(S105)の実施タイミングについて図6を参照して説明する。図6で示す矢印の方向は時間tである。
この実施タイミングは、3パターンあり、それぞれ図6(a)、(b)、および(c)にタイミングチャートを示す。そして、3パターンのいずれかの実施タイミングで、マスク取外し工程(S106)および超音波伝達工程(S105)を実施する。
【0029】
1パターン目は、図6(a)に示すように、ペースト充填工程(S103)を実施した後、マスク取外し工程(S106)および超音波伝達工程(S105)を同時に開始して実施する。そして、先に超音波伝達工程(S105)を終了し、その後マスク取外し工程(S106)を終了する。ここで、マスク取外し工程(S106)および超音波伝達工程(S105)を同時に開始して実施するとしたが、同時に限定するものではなく、マスク取外し工程(S106)を開始後、超音波伝達工程(S105)を開始するとしてもよい。この場合も、超音波伝達工程(S105)およびマスク取外し工程(S106)の順に終了する。
【0030】
2パターン目は、図6(b)に示すように、ペースト充填工程(S103)を実施した後、まず超音波伝達工程(S105)を開始することで、マスク取外し工程(S106)および超音波伝達工程(S105)を同時に実施する。その後マスク取外し工程(S106)を開始する。そして、超音波伝達工程(S105)を終了した後、マスク取外し工程(S106)を終了する。
【0031】
3パターン目は、ペースト充填工程(S103)を実施した後、超音波伝達工程(S105)を開始し、終了した後に、マスク取外し工程(S106)を開始し、終了する。
【0032】
その後、基板3上のペースト4に硬化処理または自然乾燥処理などを施す。このようにして、基板3上に転写部2が形成された半導体装置1を得る(図1参照)。
【0033】
したがって、本実施形態によれば、超音波伝達工程(S105)において、マスク5と、マスク5の貫通窓部6に充填されたペースト4とに超音波振動を伝えて、マスク5の貫通窓部6に充填されたペースト4と、貫通窓部6との間の密着性を弱くさせる。これにより、マスク取外し工程(S106)において、貫通窓部6からペースト4が離れ易くなり、貫通窓部6にペースト4が残ることを抑制し、基板3上にペースト4からなる転写部2を形成した半導体装置1を得ることができる。特に、転写部2を微細に厚く、つまり転写部2の厚さHと幅Wとの比であるアスペクト比(H/W)を大きくして、基板3上に、形成するためには、ハンダペーストとマスクの貫通窓部との密着性が、ハンダペーストと基板との密着性に比べて小さくできるため、より効果的に作用する。
【0034】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0035】
たとえば、基板配置部11を移動させるとして説明したが、これに限るものではなく、マスクセット部12が移動可能な構成であってもよい。
【0036】
そして、電子デバイスとして半導体装置の製造方法を例に挙げて説明したが、これに限るものではなく、たとえば液晶表示装置など電気泳動表示装置の封止材を形成する製造方法として用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1…半導体装置、2…転写部、3…基板、4…ペースト、5…マスク、6…貫通窓部、10…印刷装置、11…基板配置部、12…マスクセット部、13…保持部、14…超音波部、15…スキージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマスクを取り付けるマスク取付工程と、
前記マスクの貫通窓部にペーストを充填させるペースト充填工程と、
前記基板上に、前記ペーストからなる転写部を形成する転写工程とを備え、
前記転写工程は、前記マスクに超音波振動を伝える超音波伝達工程と、
前記マスクを前記基板から取り外すマスク取外し工程とを備えること特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に実施することを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に開始することを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1に記載の印刷方法において、前記超音波伝達工程を実施した後に、前記マスク取外し工程を実施することを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
基板上にマスクを取り付けるマスク取付工程と、
前記マスクの貫通窓部にペーストを充填させるペースト充填工程と、
前記基板上に、前記ペーストからなる転写部を形成する転写工程とを備え、
前記転写工程は、前記マスクに超音波振動を伝える超音波伝達工程と、
前記マスクを前記基板から取り外すマスク取外し工程とを備えること特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電子デバイスの製造方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に実施することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電子デバイスの製造方法において、前記マスク取外し工程と前記超音波伝達工程とを同時に開始することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項5に記載の電子デバイスの製造方法において、前記超音波伝達工程を実施した後に、前記マスク取外し工程を実施することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−96959(P2011−96959A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251750(P2009−251750)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】