説明

印刷用塗工紙

【課題】不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感に優れる印刷用塗工紙を提供することにある。
【解決手段】基紙上の片面あるいは両面に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工してなる塗工層を少なくとも一層有する印刷用塗工紙において、基紙上に接する最下層が、顔料として二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムを定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子および接着剤としてポリビニルアルコールを含有し、平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下である塗工液から形成されることを特徴とする印刷用塗工紙によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感に優れる印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の印刷用塗工紙市場においては、印刷物のビジュアル化、カラー化、高級化志向により、塗工面の高光沢度や優れた色再現性、優れた印刷面感などが要求されるが、同時に出版物軽量化などを目的として薄物の使用頻度が高まり、その際、裏面の画像が透けて見えない特性、即ち不透明度に対する要望が高まっている。また近年の古紙パルプの品質低下の影響もあり、高白色度を発現できる技術確立への要望も同時に高まっている。
【0003】
不透明度を向上させる方法として、基紙を低密度にすることが有効である。基紙を低密度にするには、機械パルプの使用が有効であるが、機械パルプの配合により印刷用塗工紙表面の平滑性の悪化につながり、これが原因で、印刷面感が阻害されることが多い。なお本発明で言う優れた印刷面感とは、印刷用塗工紙が十分な平滑感を持ち、印刷面に基紙由来のボコツキが存在せず、塗工紙表面上において光沢ムラがない状態を指す。
【0004】
塗工層に高不透明度発現に優れる顔料であるカオリン系顔料を使用した場合、不透明度は向上するが、白色度が低下してしまう。不透明度と白色度をともに向上させるには、二酸化チタンやプラスチックピグメントなどが好適に用いられるが、二酸化チタンやプラスチックピグメントは基紙被覆性が悪く、またこれに起因して印刷面感が低下してしまう。また不透明度改良効果もこれらの顔料だけでは十分ではなく、経済的負担も大きくなる。
【0005】
通常の二酸化チタンよりも、さらに高不透明度を発現する顔料として、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウム粒子を定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を用いた印刷用塗工紙が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし単純にこの顔料を用いただけでは、十分な不透明度を得るためには使用量を多くしなければならず、加えて使用量を多くすると、塗工液の保水性が低下し基紙被覆性が非常に悪化する。またこれに起因して印刷面感が低下してしまう。
【0006】
印刷用塗工紙の基紙被覆性、印刷面感に関しては、一般的に塗工層の塗工量が多いほど良好になる。しかし、これは材料使用量増による経済的負担、また乾燥負荷の増大など不利な点が多く発生する。
【0007】
即ち、不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感に優れる印刷用塗工紙に関しては、いまだ十分な技術が確立されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−249590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来、印刷用塗工紙の塗工層を設ける方法として、塗工層の塗工液をカーテン塗工、ブレード塗工、フィルムトランスファー塗工、ロッド塗工またはエアナイフ塗工が知られている。特に、カーテン塗工は、カーテン状にした塗工液を基紙上に乗せるように塗工する方法であり、塗工液に大きな圧力が加わることがないために、他の塗工方式と比較して基紙へ塗工液中の顔料の落ち込みが少ない。カーテン塗工によって、塗工層の基紙被覆性に優れる印刷用塗工紙を得ることができる。しかしながら、塗工層の塗工液をカーテン塗工するだけでは基紙被覆性を向上させることができても、塗工液が塗工を施す面の表面形状に追随するために、優れた印刷面感を発現する印刷用塗工紙を得ることが難しい。
【0010】
本発明の目的は、不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感に優れる印刷用塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のような印刷用塗工紙を発明するに至った。即ち、基紙上の片面あるいは両面に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工してなる塗工層を少なくとも一層有する印刷用塗工紙において、基紙上に接する最下層が、顔料として二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムを定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子および接着剤としてポリビニルアルコールを含有し、平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下である塗工液から形成されることを特徴とする印刷用塗工紙によって達成される。
【0012】
さらに好ましくは、該最下層の二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子が最下層に含まれる全顔料固形分100質量部中30質量部以上且つ最下層のポリビニルアルコールが最下層に含まれる全顔料固形分100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、不透明度、白色度、基紙被覆性および印刷面感に優れる印刷用塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の印刷用塗工紙について詳細に説明する。
【0015】
本発明の印刷用塗工紙は、基紙上の片面あるいは両面に、顔料、接着剤を含む塗工液を塗工して形成される塗工層を少なくとも一層を有する。本発明においては、基紙上に接する位置に設けられる塗工層を最下層と呼び、最下層よりも基紙から遠い側に設けられる塗工層を全て上塗り層と呼ぶ。上塗り層は何層設けても構わないし、顔料または接着剤を含有しない塗工層が上塗り層として存在しても構わない。また本発明においては、基紙上に顔料および接着剤を含有する塗工層が一層であっても構わない。この場合、当該塗工層を最下層とする。
【0016】
<最下層>
本発明の印刷用塗工紙は、最下層に顔料として二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムを定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を含有する。最下層は、顔料として二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムを定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を含む塗工液を塗工して形成される。本発明において、二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムが「定着」している状態として好ましくは、二酸化チタン粒子と炭酸カルシウム粒子とが、ファンデアワールス力により互いに吸着している状態である。この二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は、炭酸カルシウム粒子がスペーサーの役割をして二酸化チタン粒子間距離を形成することにより、二酸化チタンが有する光散乱力を効果的に発揮する顔料である。
【0017】
二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は塗工層中に多く存在しないと光散乱効果を発揮できない。印刷用塗工紙は、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子が少なくとも塗工層の面方向に対し均一に分布し塗工層の厚み方向に対し局在化することにより光散乱効果を発現し優れた不透明度を得ることができる。しかしながら、特開2006−249590号公報に記載するが如き塗工液へ単に配合する方法では、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を面方向に均一であり厚み方向に局在化するよう塗工層を形成することができない。二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を多量に使用することによって塗工層の面方向に対し均一な分布を得ようとすると、塗工液の保水性が低下し基紙被覆性が悪化するために、むしろ塗工層の面方向に対し均一な分布が得られない。結果、不透明度が均一ではなく、印刷面感が低下する。後述する泡を含み、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を含有する最下層の塗工液を用いて形成される塗工層では、泡により、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の基紙内部へ落ち込みが抑制され、塗工層の厚み方向に対し局在化できる。また、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合量が多い塗工液の場合でも、泡による微粒子吸着分散作用によって基紙被覆性が飛躍的に向上し、不透明度および印刷面感をどちらも向上させることができる。
【0018】
本発明における二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は、用いられている二酸化チタン:炭酸カルシウムの質量比について何ら制限されるものではない。通常、二酸化チタン:炭酸カルシウムの質量比は1:99〜50:50程度である。
【0019】
本発明における二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は、用いられている二酸化チタンの結晶型に関しては何ら制限されるものではなく、アナターゼ型またはルチル型のものを用いることができる。また、炭酸カルシウムに関しても何ら制限されるものではなく、天然炭酸カルシウム及び合成炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)のいずれも用いることができるが、沈降性炭酸カルシウムを用いることが好ましい。好ましい理由は以下の通りである。特許文献1に記載するが如く、天然炭酸カルシウムは、機械的に粉砕・分級することにより生産するため、粒度分布が比較的広く、粒子形も不均一になりがちである。沈降性炭酸カルシウムは、粒度分布が狭く、粒子形が比較的均一である。沈降性炭酸カルシウムでは、粒度分布や粒子形状が整っているが故に粒子どうしが最密充填し難く、粒子間に空隙ができるために複合粒子自身の光散乱力が向上すると考えられる。
【0020】
本発明における二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は、用いられている二酸化チタンの体積基準の粒度分布から求められる体積平均粒径に関して何ら制限されるものではない。
【0021】
本発明における二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子は、用いられている炭酸カルシウムの体積基準の粒度分布から求められる体積平均粒径に関して何ら制限されるものではない。炭酸カルシウムの体積基準の粒度分布から求められる体積平均粒径の値が50〜400nmの範囲内にあることが好ましい。この範囲内であれば、炭酸カルシウムが二酸化チタン粒子表面に定着し易く、二酸化チタン粒子間の距離がより光散乱に適した範囲となり、炭酸カルシウムと相まってより優れた白色度および不透明度の印刷用塗工紙が与えられる。
【0022】
本発明における二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の体積基準の粒度分布から求められる体積平均粒径は何ら制限されるものではない。
【0023】
本発明において、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の最下層中の含有量には何ら制限はない。好ましくは、最下層に含まれる全顔料固形分100質量部に対して30質量部以上である。この範囲にすることによって、より優れた白色度および不透明度を有する印刷用塗工紙が与えられる。
【0024】
本発明の印刷用塗工紙における最下層には、顔料として二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子が含まれてさえいれば、他の顔料が併用されることは何ら制限されるものではない。例えば各種重質炭酸カルシウム、各種軽質炭酸カルシウム、平板状無機顔料(カオリンクレー、マイカ、タルク、板状硫酸バリウム、板状水酸化マグネシウムなど)を併用することもできるし、さらにこれら以外の顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、天然シリカ、乾式合成シリカ、湿式合成シリカ、有機顔料、またはこれらをカチオン変性したものを併用しても構わない。あるいは二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子とは異なる顔料複合粒子を併用しても構わない。
【0025】
本発明の印刷用塗工紙における最下層には、接着剤としてポリビニルアルコールが含まれることを特徴とする。ここで言うポリビニルアルコールには各種変性ポリビニルアルコールの類も含まれる。
【0026】
本発明の最下層を形成するための塗工液は、顔料として二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子および接着剤としてポリビニルアルコールを含み、さらに平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下であることを特徴とする。塗工液に接着剤としてポリビニルアルコールを用いることで、塗工液の起泡性が高くなり微細な泡が形成され易くなり、且つ生成した泡の安定性が良好であることから、泡が一定の大きさを保持した状態で塗工することができる。
【0027】
本発明において、最下層のポリビニルアルコールの含有量は何ら制限されるものではない。好ましくは、最下層に含まれる全顔料固形分100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲である。この範囲にすることによって起泡性および泡の安定性が向上し、平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下である最下層の塗工液がより安定して調製することができる。結果、不透明度や印刷面感により優れる印刷用塗工紙が与えられる。泡は、公知の発泡機によって形成することができる。
【0028】
本発明の印刷用塗工紙における最下層には、接着剤としてポリビニルアルコールが含まれてさえいれば、他の接着剤が併用されることは何ら制限されるものではない。例えば、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合ラテックスなどのメチルメタクリレート共重合ラテックス、アクリル酸−酢酸ビニル共重合ラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合ラテックス、ビニルエステル−酢酸ビニル共重合体ラテックス、スチレン共重合ラテックス、塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス等のラテックス類が挙げられる。さらには、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン等のホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリン等の水溶性合成物が挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の天然多糖類及びそのオリゴマー、さらにはその変性体が挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン等の天然タンパク質及びその変性体、ポリ乳酸、ペプチド等の合成高分子やオリゴマーが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用することができる。
【0029】
ここで、塗工液に含まれている泡の平均径の測定方法を述べる。塗工液の溶媒成分と親和性のない均一なフィルム状の基材に塗工液を載せ、凍結乾燥する。これを電子顕微鏡を用いて観察し、無作為に選定した100個の泡の径を測定し、その平均値を平均径値とする。
【0030】
本発明は、最下層を形成するための塗工液が、平均径10μm以上300μm以下の泡を含むことを特徴とする。平均径が300μmを超えるとまたは平均径が10μmより小さいと二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の基紙被覆性が低下する。理由は定かではないが、本発明の平均径の泡を含むことで塗工液の比表面積が増加と泡の粒子吸着・分散作用により二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子が含有するために起因する塗工液の保水性の低下を抑制できると考えられる。結果として最下層を形成するための塗工液が、平均径10μm以上300μm以下の泡を含むことで、不透明度、白色度、印刷面感に優れる印刷用塗工紙が与えられる。
【0031】
本発明は、最下層を形成するための塗工液が、みかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下であることを特徴とする。最下層を形成するための塗工液のみかけ密度が0.9g/cmより大きい場合、基紙内部への顔料粒子の落ち込みが発生し基紙被覆性が低下する。また、みかけ密度が0.3g/cm未満の場合、泡が最下層の塗工表面をかえって乱し印刷面感が悪化する。ここで言うみかけの密度とは、例えば泡を含んだ塗工液100ml当たりの質量が90gであれば0.9g/cmと言える。このように、みかけの密度は、例えば質量計に乗せたメスシリンダーに塗工液を入れることによって簡単に測定できる。
【0032】
本発明の印刷用塗工紙における最下層を形成する方法は何ら制限されるものではない。最下層を形成するための装置としては、例えば、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、エアナイフコーター、スプレーコーター、またはサイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーターなどが挙げられる。最下層を設ける方法としてはサイズプレス、ゲートロール、シムサイザーが好ましい。
【0033】
本発明の印刷用塗工紙における最下層の塗工量は何ら制限されるものではない。多過ぎたり少な過ぎたりした場合、本発明において得られる効果の程度に差が生じることがある。最下層の塗工量は、片面当たり固形分質量2.0g/m以上8.0g/m以下の範囲で設けられるのがより好ましい。
【0034】
本発明の印刷用塗工紙における最下層には、前記の顔料、接着剤に加えて、必要に応じて増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、耐水化剤、着色剤等の通常使用されている各種助剤を含むことができる。
【0035】
<上塗り層>
本発明における上塗り層は何層設けても構わないし、また設けなくても構わないが、上塗り層を設ける場合の方法は何ら制限されるものではない。上塗り層を設けるための装置としては、例えば、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、エアナイフコーター、スプレーコーター、またはサイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーターなどが挙げられる。
【0036】
本発明において、上塗り層を設ける場合、その塗工量は何ら制限されるものではない。
【0037】
本発明において、上塗り層を設ける場合、上塗り層には顔料として如何なるものを用いても構わないし、顔料を用いない塗工層を設けても構わない。上塗り層として顔料を用いた塗工層を設ける場合、用いられる顔料は、例えば各種重質炭酸カルシウム、各種軽質炭酸カルシウム、平板状無機顔料(カオリンクレー、マイカ、タルク、板状硫酸バリウム、板状水酸化マグネシウムなど)を単独または併用することもできるし、さらにこれら以外の顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、天然シリカ、乾式合成シリカ、湿式合成シリカ、有機顔料、またはこれらをカチオン変性したもの、あるいはこれら二種以上の複合体などを単独または併用しても構わない。勿論、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を用いても構わない。これらの配合量に関しても何ら制限されるものではない。
【0038】
本発明において、上塗り層を設ける場合、上塗り層には接着剤として如何なるものを用いても構わない。用いられる接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ラテックス、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合ラテックスなどのメチルメタクリレート共重合ラテックス、アクリル酸−酢酸ビニル共重合ラテックス、ポリ酢酸ビニルラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合ラテックス、ビニルエステル−酢酸ビニル共重合体ラテックス、スチレン共重合ラテックス、塩化ビニル系ラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス等のラテックス類が挙げられる。さらには、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン等のホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリン等の水溶性合成物が挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の天然多糖類及びそのオリゴマー、さらにはその変性体が挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン等の天然タンパク質及びその変性体、ポリ乳酸、ペプチド等の合成高分子やオリゴマーが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用することができる。これらの配合量に関しても何ら制限されるものではない。
【0039】
本発明において、上塗り層を設ける場合、上塗り層には必要に応じて増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、耐水化剤、着色剤等の通常使用されている各種助剤を含むことができる。
【0040】
<基紙>
本発明に用いられる基紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたものが使用される。ただし表面に顔料を主体とする塗工層を設けたものは含まれない。また、これらの繊維には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、有機顔料等の各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、柔軟剤、紙力増強剤等の各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に含有することができる。
【0041】
基紙の製法としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、円網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を用いた一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維等の各工程から一つ以上が適宜選ばれる。酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0042】
本発明における基紙には、表面サイズプレスを施しても構わない。表面サイズプレス液の成分としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、ポリアクリロニトリル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−オレフィン共重合体、アクリロニトリル−酢酸ビニル共重合体等のアクリル系表面サイズ剤、オレフィン−マレイン酸共重合体、ジイソブチレン−マレイン酸共重合体等のオレフィン系表面サイズ剤等が挙げられる。
【0043】
<仕上げ>
本発明における印刷用塗工紙は、仕上げ装置として、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー、シューカレンダー、メタルベルトカレンダー等、如何なるものも必要に応じて用いて製造することができる。
【0044】
<印刷方法>
本発明の印刷用塗工紙は、如何なる印刷方法にも適用しても、十分にその効果が発現される。例えば、オフセット印刷に代表される平版印刷、グラビア印刷に代表される凹版印刷、フレキソ印刷に代表される凸版印刷、スクリーン印刷に代表される孔版印刷などの有版方式印刷が挙げられる。また、電子写真、インクジェット等に代表される無版方式印刷にも適用できる。ただし、本発明の効果がより顕著に発現するという意味で、オフセット輪転印刷に適用するのがより好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0046】
各実施例および比較例における印刷用塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
【0047】
1)不透明度
本発明における不透明度とは、JIS P 8149に示される不透明度を指す。不透明度測定は、SPECTRO COLOR METER MODEL PF−10(日本電色工業社製)で測定し、以下の基準に従い、5段階で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:不透明度が88%以上
4点:不透明度が86%以上88%未満
3点:不透明度が84%以上86%未満
2点:不透明度が82%以上84%未満
1点:不透明度が82%未満
【0048】
2)白色度
本発明における白色度とは、JIS P 8148に示される白色度を指す。白色度測定は、SPECTRO COLOR METER MODEL PF−10(日本電色工業社製)で測定し、以下の基準に従い、5段階で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:白色度が84%以上
4点:白色度が82%以上84%未満
3点:白色度が80%以上82%未満
2点:白色度が78%以上80%未満
1点:白色度が78%未満
【0049】
3)基紙被覆性
得られた印刷用塗工紙をA4サイズに切り、脱イオン水/エタノール/塩化アンモニウム=50/45/5(質量比)の溶液に1時間浸した。その後、印刷用塗工紙を溶液から取り出し、濾紙で挟み余分な溶液を拭き取った。さらに150℃の乾燥機に3時間入れた後、取り出した。これによって、有機物で構成されている基紙部分が茶色く焦げ、塗工層に被覆されている部分は白いまま残る。白い部分が多いほど、基紙が良好に塗工層に被覆されていることになる。この程度を目視で判断し、以下の基準に従い5段階で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:茶色い部分はほとんどなく、ほぼ全てが白い部分である。
4点:茶色い部分は存在するが薄っすら見える程度で、白い部分の方が圧倒的に多い。
3点:茶色い部分は見えるが、白い部分の方が多い。
2点:茶色い部分と白い部分の比率が同程度。
1点:茶色い部分の方が多い。
【0050】
4)印刷面感
印刷面感は、RI印刷適性試験機を用いて、紅色ベタ印刷を施し、目視で判断し、以下の基準に従い5段階で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:印刷用塗工紙表面が十分な平滑感を持ち、基紙由来のボコツキが存在せず、
塗工紙表面上において光沢ムラがない。
4点:印刷用塗工紙表面に若干の光沢ムラはあるが、十分な平滑感を持ち、
基紙由来のボコツキが存在しない。
3点:印刷用塗工紙表面に光沢ムラが見られ、全体的には平滑感を持っているが、
基紙由来のボコツキは確認できる。
2点:印刷用塗工紙表面に光沢ムラが多く、印刷面も若干平滑感に劣り、
基紙由来のボコツキは確認できる。
1点:印刷用塗工紙表面に光沢ムラ、基紙由来のボコツキが多く見られる。
【0051】
<基紙>
以下のような配合で調製し、坪量89.0g/mの塗工用基紙を抄造した。
<基紙配合>
ECF漂白されたLBKP(濾水度440mlcsf) 85質量部
ECF漂白されたNBKP(濾水度490mlcsf) 15質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(原紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化澱粉 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.030質量部
市販柔軟剤(多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物) 0.3質量部
【0052】
<上塗り層>
上塗り層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製、平均粒子径0.4μm)100質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で0.10質量部添加して、分散機で固形分濃度70質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(体積平均粒子径105nm)を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で13質量部、市販ポリビニルアルコールのNM−11(日本合成化学工業社製)10質量%水溶液を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で2質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で0.7質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度48質量%にし、上塗り塗工層を設けるための塗工液を得た。このようにして調製した塗工液を、各種実施例および比較例の通りに設けた最下層の上に、ブレードコーターを用いて、操業速度800m/min、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mの条件で塗工し、乾燥して、上塗り層を設けた。
【0053】
<仕上げ処理>
各種実施例および比較例の通りに設けた最下層の上に前記のように上塗り層を設けた後、得られた塗工紙をソフトカレンダー処理(硬度Hs84度で表面粗さ0.3Sの60℃に加熱された金属ロールと硬度90ShDのエラグラス製弾性ロールからなるソフトカレンダーを用いて、加圧条件を80kN/m、加熱された金属ロール面に表裏各1回ずつ当たるように処理)により仕上げ処理し、印刷用塗工紙を製造した。
【0054】
(実施例1)
実施例1における、基紙に最下層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製)20質量部、市販重質炭酸カルシウムのFMT−90(ファイマテック社製)70質量部、市販二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子のValkofil−900(白石工業社製)10質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で0.2質量部添加して、分散機で固形分濃度37質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販ポリビニルアルコールのNM−11(日本合成化学工業社製)10質量%水溶液を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で2質量部、市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で10質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度32質量%にし、最下層を設けるための塗工液を得た。このようにして調製した塗工液を、連続発泡機TARBO-MIX(愛工舎製作所社製)を用いて、圧縮空気の送付量に加え、攪拌速度、送液速度、出口圧力を調整して、塗工液のみかけ密度が0.36g/cm、含まれる泡の平均径が12μmになるように発泡処理を行った。この発泡処理を行った塗工液を、基紙の上に直接、フィルムサイズプレスコーターの一種であるシムサイザーを用いて、操業速度1000m/min、片面当たりの塗工固形分質量5g/m、両面で10g/mの条件で塗工し、乾燥して、基紙上に最下層を設けた。この最下層の上に前記の方法で上塗り層を設け、さらに前記の方法で仕上げ処理を施し、印刷用塗工紙を得た。
【0055】
(実施例2)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を35質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0056】
(実施例3)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0057】
(実施例4)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を40質量部、高白1級カオリンを配合しない、という組成に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0058】
(実施例5)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を1質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を11質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0059】
(実施例6)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0060】
(実施例7)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を5質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を7質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0061】
(実施例8)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を10質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0062】
(実施例9)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を13質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0063】
(実施例10)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0064】
(実施例11)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を配合せず、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を40質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0065】
(実施例12)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を配合せず、重質炭酸カルシウムの配合部数を40質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を60質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0066】
(実施例13)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を配合せず、重質炭酸カルシウムの配合部数を20質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を80質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0067】
(実施例14)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンおよび重質炭酸カルシウムの配合部数を配合せず、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を100質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を3質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を9質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0068】
(実施例15)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を7質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0069】
(実施例16)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を10質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0070】
(実施例17)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更、また最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールの配合部数を13質量部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックスの配合部数を5質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0071】
(比較例1)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、高白1級カオリンの配合部数を40質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を配合しない、という組成に変更した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0072】
(比較例2)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、高白1級カオリンの配合部数を35質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を配合せず、代わりに市販アナターゼ型二酸化チタンのA−110(堺化学工業社製)を5質量部配合した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0073】
(比較例3)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の重質炭酸カルシウムの配合部数を70質量部、高白1級カオリンの配合部数を20質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を配合せず、代わりに市販アナターゼ型二酸化チタンのA−110(堺化学工業社製)を10質量部配合した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0074】
(比較例4)
実施例1において、最下層を設ける塗工液の重質炭酸カルシウムの配合部数を70質量部、高白1級カオリンの配合部数を20質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を配合せず、代わりに市販スチレンアクリル系中空構造プラスチックピグメントのローペイクHP91(ロームアンドハース社製)を10質量部配合した以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0075】
(比較例5)
実施例1において、最下層を設ける塗工液のポリビニルアルコールを配合せず、代わりに市販リン酸エステル化澱粉のMS4600(日本食品化工社製)を2質量部配合した。しかしながら、泡の安定性に劣り、平均径は12μmから塗工する際は500μm以上になっていた。泡の平均径に関する以外は全て実施例1と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0076】
実施例1〜17および比較例1〜5の条件、評価結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
(実施例18)
基紙に最下層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製)15質量部、市販重質炭酸カルシウムのFMT−90(ファイマテック社製)77質量部、市販二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子のValkofil−900(白石工業社製)8質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で0.2質量部添加して、分散機で固形分濃度37質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販ポリビニルアルコールのNM−11(日本合成化学工業社製)10質量%水溶液を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で2.5質量部、市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で12質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度32質量%にし、最下層を設けるための塗工液を得た。このようにして調製した塗工液を、連続発泡機TARBO−MIX(愛工舎製作所社製)を用いて、圧縮空気の送付量に加え、攪拌速度、送液速度、出口圧力を調整して、塗工液のみかけ密度が0.70g/cm、含まれる泡の平均径が30μmになるように発泡処理を行った。この発泡処理を行った塗工液を、基紙の上に直接、フィルムサイズプレスコーターの一種であるシムサイザーを用いて、操業速度1000m/min、片面当たりの塗工固形分質量4g/m、両面で8g/mの条件で塗工し、乾燥して、基紙上に最下層を設けた。この最下層の上に前記の方法で上塗り層を設け、さらに前記の方法で仕上げ処理を施し、印刷用塗工紙を得た。
【0079】
(実施例19)
実施例18において、発泡処理後の塗工液に含まれる泡の平均径が150μmになるよう発泡処理した以外は全て実施例18と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0080】
(実施例20)
実施例18において、発泡処理後の塗工液に含まれる泡の平均径が10μmになるよう発泡処理した以外は全て実施例18と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0081】
(実施例21)
実施例18において、発泡処理後の塗工液に含まれる泡の平均径が300μmになるよう発泡処理した以外は全て実施例18と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0082】
(比較例6)
実施例18において、発泡処理後の塗工液に含まれる泡の平均径が3μmになるよう発泡処理した以外は全て実施例18と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0083】
(比較例7)
実施例18において、発泡処理後の塗工液に含まれる泡の平均径が450μmになるよう発泡処理した以外は全て実施例18と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0084】
実施例18〜21および比較例6〜7の評価結果を表2に示す。
【0085】
【表2】

【0086】
(実施例22)
基紙に最下層を設けるための塗工液は以下のようにして調製した。市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製)25質量部、市販重質炭酸カルシウムのFMT−90(ファイマテック社製)71質量部、市販二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子のValkofil−900(白石工業社製)4質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で0.2質量部添加して、分散機で固形分濃度65質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販ポリビニルアルコールのNM−11(日本合成化学工業社製)10質量%水溶液を塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で1.8質量部、市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを塗工液中全顔料固形分100質量部に対し固形分で10質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度50質量%にし、最下層を設けるための塗工液を得た。このようにして調製した塗工液を、連続発泡機TARBO−MIX(愛工舎製作所社製)を用いて、圧縮空気の送付量に加え、攪拌速度、送液速度、出口圧力を調整して、塗工液のみかけ密度が0.60g/cm、含まれる泡の平均径が25μmになるように発泡処理を行った。この発泡処理を行った塗工液を、基紙の上に直接、フィルムサイズプレスコーターの一種であるシムサイザーを用いて、操業速度1000m/min、片面当たりの塗工固形分質量7.5g/m、両面で15g/mの条件で塗工し、乾燥して、基紙上に最下層を設けた。この最下層の上に前記の方法で上塗り層を設け、さらに前記の方法で仕上げ処理を施し、印刷用塗工紙を得た。
【0087】
(実施例23)
実施例22において、発泡処理後の塗工液のみかけ密度が0.30g/cmになるよう発泡処理した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0088】
(実施例24)
実施例22おいて、発泡処理後の塗工液のみかけ密度が0.90g/cmになるよう発泡処理した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0089】
(比較例8)
実施例22において、発泡処理後の塗工液のみかけ密度が0.10g/cmになるよう発泡処理した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0090】
(比較例9)
実施例22において、発泡処理後の塗工液のみかけ密度が1.10g/cmになるよう発泡処理した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0091】
(比較例10)
実施例22において、塗工液調製後、発泡処理を行わずそのまま使用した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0092】
(比較例11)
実施例22において、最下層を設ける塗工液の高白1級カオリンの配合部数を10質量部、重質炭酸カルシウムの配合部数を60質量部、二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子の配合部数を30質量部に変更し塗工液調製後、発泡処理を行わずそのまま使用した以外は全て実施例22と同様にして行い、印刷用塗工紙を得た。
【0093】
実施例22〜24および比較例8〜11の評価結果を表3に示す。
【0094】
【表3】

【0095】
表1、表2、表3の結果から明らかなように、本発明の印刷用塗工紙は、不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感に優れることが分かる。本発明に相当しない、即ち二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を含有しない、または平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下である塗工液によって形成される塗工層ではない比較例では、このような効果は得られていない。
【0096】
また、表1の結果から明らかなように、該最下層が、顔料として二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子を最下層に含まれる全顔料固形分100質量部中30質量部以上且つ接着剤としてポリビニルアルコールを最下層に含まれる全顔料固形分100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含む印刷用塗工紙は、さらに不透明度、白色度、基紙被覆性、印刷面感の全てについて、より優れることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上の片面あるいは両面に、顔料および接着剤を含有する塗工液を塗工してなる塗工層を少なくとも一層有する印刷用塗工紙において、基紙上に接する最下層が、顔料として二酸化チタン粒子表面に炭酸カルシウムを定着させた二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子および接着剤としてポリビニルアルコールを含有し、平均径10μm以上300μm以下の泡を含み且つみかけ密度0.3g/cm以上0.9g/cm以下である塗工液から形成されることを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
該最下層の二酸化チタン/炭酸カルシウム複合粒子が最下層に含まれる全顔料固形分100質量部中30質量部以上且つ最下層のポリビニルアルコールが最下層に含まれる全顔料固形分100質量部に対して3質量部以上10質量部以下の範囲で含む請求項1記載の印刷用塗工紙。

【公開番号】特開2013−104159(P2013−104159A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250431(P2011−250431)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】