説明

印刷装置の切断機構、およびこれを備えた印刷装置

【課題】刃の強度を保ちつつ、固定刃の刃面および可動刃の刃面に付着した粘着剤を取り除くことができる印刷装置の切断機構、およびこれを備えた印刷装置を提供する。
【解決手段】テープ印刷装置では、印刷後のロールシート30を切断するためのカッタユニットを備える。カッタユニットは、固定刃80と可動刃90とを備える。固定刃80と可動刃90とには、固定刃80と可動刃90とが摺動して重なり合う重合部分に、それぞれ複数の固定刃貫通孔および可動刃貫通孔92が設けられている。よって、固定刃80または可動刃90の刃面に、付着した粘着剤は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、可動刃貫通孔92または固定刃貫通孔に落し込まれる。そのため、固定刃80の刃面、および可動刃90の刃面に付着した粘着剤を取り除くことができ、ロールシート30の切断不良が解消される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤層を含む印刷媒体を切断可能な印刷装置の切断機構、およびこれを備えた印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体内に長尺状のロールシートが巻回されたロールシートホルダを着脱可能に収納するテープ印刷装置が種々提案されている。この種のテープ印刷装置では、ロールシートホルダに巻回されたロールシートは、プラテンローラの駆動により引き出されて搬送され、プラテンローラに圧接されたサーマルヘッドによって文字、図形等が印刷される。印刷されたロールシートは、切断機構によって所望の長さに切断され、シート排出口から外部に排出される。
【0003】
ところで、切断機構には、ロールシートの一面側の幅方向全幅に渡って設けられた固定刃と、当該固定刃に対して摺動しつつロールシートの厚さ方向に移動する可動刃とを備えた所謂「ギロチンカッタ」が知られている。そして、ギロチンカッタで切断されるロールシートは、例えば、シートの裏面に粘着剤を介して剥離紙が剥離可能に接着されたものである。このようなロールシートを切断すると、粘着剤が可動刃に付着してしまうことがある。この場合、可動刃に付着した粘着剤によって、切断後のシートが引き付けられてしまい、次のシートを切断する際に、前回切断したシートの一部を切断する等の不具合を生じていた。
【0004】
そこで、例えば、固定刃および可動刃に、それぞれ刃先とほぼ平行、かつ幅方向いっぱいに糊溜まり用の溝が形成されたカッタユニットが知られている(例えば、特許文献1参照)。このカッタユニットによれば、固定刃と可動刃とが摺動する際に、固定刃および可動刃に付着した粘着剤は、固定刃および可動刃に形成された溝に落とし込まれる。よって、刃に粘着剤が付着することによる切断不良が解消できる。
【特許文献1】特許第3833784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のカッタユニットでは、溝が粘着剤でいっぱいになってしまうと、粘着剤は、それ以上は溝には落とし込まれない。この場合、刃に付着した粘着剤を取り除くことができなくなり、切断不良が生じてしまうという問題点があった。また、溝に落とし込み可能な粘着剤の量を増やすために、刃に形成する溝を深くすると、刃の強度が落ちてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、刃の強度を保ちつつ、固定刃の刃面および可動刃の刃面に付着した粘着剤を取り除くことができる印刷装置の切断機構、およびこれを備えた印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の印刷装置の切断機構は、粘着剤層を有する印刷媒体を、固定刃と、前記固定刃に対し進退自在に設けられた可動刃とにより切断する印刷装置の切断機構において、前記固定刃および前記可動刃には、前記印刷媒体の切断時に前記固定刃と前記可動刃が摺動して重なり合う重合部分に、それぞれ複数の前記貫通孔が設けられ、前記固定刃に設けられた前記貫通孔である固定刃貫通孔と、前記可動刃に設けられた前記貫通孔である可動刃貫通孔とは、前記固定刃と前記可動刃とが重合した状態において、前記固定刃および前記可動刃の幅方向にずれていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1に記載の発明の構成に加え、前記固定刃と前記可動刃とが重合した状態において、最も近接する前記固定刃貫通孔と前記可動刃貫通孔との間には、前記幅方向における隙間がないことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1又は2に記載の発明の構成に加え、前記固定刃貫通孔および前記可動刃貫通孔は、同一径を有する円形に形成されるとともに、前記固定刃および前記可動刃に、それぞれ前記幅方向に前記貫通孔の直径の2倍の中心間距離で配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記貫通孔は、前記固定刃と前記可動刃とが摺動する摺動面から当該摺動面とは反対面に向かって径が大きくなるテーパ状の内周面を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至3の何れかに記載の発明の構成に加え、前記貫通孔は、前記固定刃と前記可動刃とが摺動する摺動面から当該摺動面とは反対面に向かって径が小さくなるテーパ状の内周面を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の構成に加え、前記固定刃は、前記印刷媒体の一面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先が直線状であって、前記可動刃は、前記印刷媒体の他面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先がV字型であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に係る発明の印刷装置では、請求項1乃至6のいずれかに記載の印刷装置の切断機構を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の印刷装置の切断機構では、固定刃および可動刃には、印刷媒体の切断時に固定刃と可動刃とが摺動して重なり合う重合部分に、それぞれ複数の貫通孔が設けられている。よって、固定刃の刃面に、印刷媒体の粘着剤が付着しても、固定刃と可動刃とが摺動する際に、固定刃の刃面に付着した粘着剤は、向かい合う可動刃に設けられた可動刃貫通孔に落とし込まれる。また、可動刃の刃面に付着した粘着剤は、向かい合う固定刃に設けられた固定刃貫通孔に落とし込まれる。そのため、固定刃の刃面および可動刃の刃面に付着した粘着剤を取り除くことができる。従って、粘着剤付着の影響による印刷媒体の切断不良が解消される。また、貫通孔に落とし込まれた粘着剤は、貫通孔内にたまると、摺動面とは反対側の面から排出される。これにより、粘着剤を取り除くといったメンテナンス不要の、使用性の良い切断機構を提供できる。また、固定刃貫通孔および可動刃貫通孔をそれぞれ複数設けたため、1つの貫通孔を幅方向にわたって設けた場合と比較して、刃の強度を保つことができる。
【0015】
さらに、固定刃貫通孔と可動刃貫通孔とは、固定刃と可動刃とが重合した状態において、固定刃および可動刃の幅方向にずれている。そのため、可動刃貫通孔の摺動面側の開口部に設けられたエッジと、固定刃の刃面との接触面積を広くすることができる。また、固定刃貫通孔の摺動面側の開口部に設けられたエッジと、可動刃の刃面との接触面積をそれぞれ広くすることができる。固定刃と可動刃との刃面に付着した粘着剤は、固定刃と可動刃とが摺動する際に互いの貫通孔に落とし込まれるが、刃面と貫通孔との接触面積が大きいため、刃面に付着した粘着剤を確実に除去することができる。このように、固定刃および可動刃の刃面には、粘着剤が残りにくくなるため、粘着剤付着の影響による印刷媒体の切断不良が解消される。
【0016】
また、請求項2に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1に記載の発明の効果に加え、固定刃と可動刃とが重合した状態において、互いに最も近接する固定刃貫通孔と可動刃貫通孔との間には、幅方向における隙間がない。そのため、刃面に付着した粘着剤は、固定刃と可動刃とが摺動する際に、いずれかの貫通孔に落とし込まれる。これにより、粘着剤付着の影響による印刷媒体の切断不良を確実に解消することができる。
【0017】
また、請求項3に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1又は2に記載の発明の効果に加え、固定刃貫通孔および可動刃貫通孔は、同一径を有する円形に形成される。そのため、貫通孔を円形以外の形状とした場合と比較して、簡単かつ安価に固定刃および可動刃の製造が可能である。また、貫通孔を円形以外の形状とした場合と比較して、貫通孔内の特定部分に粘着剤がこびりつくことがない。そのため、貫通孔内にたまった粘着剤は、摺動面とは反対側の面から、スムーズに排出される。よって、メンテナンス不要の使用性の良い切断機構を提供できる。
【0018】
また、印刷媒体の切断時には、固定刃及び可動刃に外力が加えられ、固定刃及び可動刃の内部に応力が発生する。ここで、貫通孔を円形以外の形状とした場合、応力が、特定部分に集中してしまうことがある。この場合、応力が集中する部分で疲労が生じ、破損する恐れがあった。本発明では、貫通孔を円形としたことにより、刃の内部での応力が分散される。これにより、特定部分が疲労することを防止できる。従って、固定刃及び可動刃の耐久性を向上させることができる。また、貫通孔を円形以外の形状とした場合、特定部分の強度が弱くなってしまう。この場合、印刷動作時に、強度の弱い部分で刃のひずみが生じ、印刷媒体の切断不良を生じる恐れがあった。本発明では、貫通孔を円形としたことにより、刃のひずみを防止して、印刷媒体の切断不良を防止することができる。
【0019】
また、固定刃貫通孔および可動刃貫通孔は、固定刃および可動刃に、それぞれ幅方向に貫通孔の直径の2倍の中心間距離で配置されている。これにより、互いに最も近接する固定刃貫通孔と可動刃貫通孔との間には、幅方向における隙間がない。そのため、刃面に付着した粘着剤は、いずれかの貫通孔に落とし込まれる。これにより、粘着剤付着の影響による印刷媒体の切断不良を確実に解消することができる。また、固定刃貫通孔と可動刃貫通孔とでは、重なり合う部分がない。そのため、固定刃および可動刃において、貫通孔の形成される割合を少なくすることができ、固定刃および可動刃の強度を保つことができる。
【0020】
また、請求項4に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、固定刃貫通孔および可動刃貫通孔は、固定刃と可動刃とが摺動する摺動面から摺動面とは反対面に向かって径が大きくなるテーパ状の内周面を備えている。すなわち、固定刃貫通孔と可動刃貫通孔との摺動面側には、摺動面に対して、鋭角に傾斜するエッジが形成されている。そのため、固定刃と可動刃とが摺動する際に、固定刃貫通孔の摺動面における鋭角のエッジが、可動刃の刃面に付着した粘着剤と、可動刃の刃面との間に入り込み、可動刃から粘着剤を削ぎ落とす。また、可動刃貫通孔の摺動面における鋭角のエッジが、固定刃の刃面に付着した粘着剤と、固定刃の刃面との間に入り込み、固定刃から粘着剤を削ぎ落とす。これにより、粘着剤付着の影響による印刷媒体の切断不良を解消することができる。また、粘着剤を取り込む摺動面の貫通孔径よりも、摺動面とは反対面の貫通孔径のほうが大きいため、貫通孔内に取り込まれた粘着剤をスムーズに排出できる。従って、粘着剤を取り除くといったメンテナンス不要の使用性の良い切断機構を提供できる。
【0021】
また、請求項5に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の効果に加え、固定刃貫通孔および可動刃貫通孔は、固定刃と可動刃とが摺動する摺動面から摺動面とは反対面に向かって径が小さくなるテーパ状の内周面を備えている。これにより、貫通孔の摺動面側の開口部の径を、摺動面とは反対面側の開口部の径よりも大きくすることができる。摺動面側の開口部の径を大きくすることにより、貫通孔の摺動面側の開口部に設けられたエッジと、刃面との接触面積を増加させることができ、刃面からより多くの粘着剤を取り除くことができる。また、貫通孔において、摺動面側の開口部の径よりも、摺動面とは反対面側の開口部の径を小さくすることで、貫通孔の摺動面側の開口部の径を維持したまま、刃に対する貫通孔の割合を減少させることができる。これにより、固定刃及び可動刃の強度を維持しつつ、多くの粘着剤を取り除くことができる。
【0022】
また、請求項6に係る発明の印刷装置の切断機構では、請求項1乃至5の何れかに記載の発明の効果に加え、切断時には、印刷媒体の一面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先が直線状である固定刃と、印刷媒体の他面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先がV字型である可動刃とが、幅方向両側から接触する。よって、印刷媒体は、その幅方向両側から中央に向かって切断され、幅方向のいずれか一方に撓むことがない。これにより、印刷媒体を良好に切断できる。また、切断動作時には、固定刃と可動刃とが、幅方向両側から接触するため、刃面に付着した粘着剤は、幅方向両側から中央に向かって力を受ける。これにより、刃面に付着した粘着剤は、切断動作ごとに移動し、固定刃あるいは可動刃に形成されたいずれかの貫通孔に落とし込まれる。これにより、刃面から効率的に粘着剤を取り除くことができる。
【0023】
また、請求項7に係る発明の印刷装置では、請求項1乃至6のいずれかに記載の印刷装置の切断機構を備えている。そのため、刃の強度を保ちつつ、固定刃の刃面および可動刃の刃面に付着した粘着剤を取り除くことができる印刷装置の切断機構を備えた印刷装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の第一実施形態であるテープ印刷装置1およびカッタユニット8について、図面を参照して説明する。本実施形態のテープ印刷装置1は、ロール状の印刷媒体であるロールシート30を収納すると共に、文字や、図形等を印刷して所望の長さにカットして排出するものである。また、カッタユニット8は、テープ印刷装置1に取り付けられて、ロールシート30を切断するものである。なお、本実施形態におけるテープ印刷装置1が、本発明の印刷装置に相当し、本実施形態におけるカッタユニット8が、本発明の切断機構に相当する。
【0025】
はじめに、テープ印刷装置1の概略構成について、図1および図2を参照して説明する。図1は、テープ印刷装置1の前側から見た斜視図である。図2は、ロールシートホルダ3が装着された状態のテープ印刷装置1の斜視図である。なお、図1において、右側をテープ印刷装置1の右側とし、左側をテープ印刷装置1の左側とし、紙面手前側をテープ印刷装置1の前側とし、紙面奥行き側をテープ印刷装置1の後ろ側とする。
【0026】
図1に示すように、テープ印刷装置1は、樹脂製の本体筐体2を備えている。その本体筐体2の後方内部には、図2に示すように、側面視凹状に湾曲したロールシートホルダ収納部4が設けられている。このロールシートホルダ収納部4には、所定幅のロールシート30が巻回保持されたロールシートホルダ3が装着される。さらに、本体筐体2の後側の上端縁部には、そのロールシートホルダ収納部4を覆うようにして、側面視略半円形状の透明樹脂製の上カバー5が開閉自在に取り付けられている。
【0027】
また、上カバー5の前側には、本体筐体2の前側を覆うための樹脂製のフロントカバー6が設けられている。このフロントカバー6の中央には、正面視略長方形状の開口部14が設けられている。その開口部14の中央奥側には、印刷されたロールシート30を外部に排出するためのシート排出口601が略水平に設けられている。そして、開口部14の上縁部には、シート排出口601に向かって下方に延出された内壁17が設けられている。その内壁17の外側に対向する前面には、シート排出口601から排出されるロールシート30を上側から押さえるための一対の側面視三角形状の板状の押さえリブ101,102が前方に突出して設けられている。さらに、シート排出口601の前方には、複数のリブを上面に備えた樹脂板である平面視略長方形状のステージ12が前方に向かって延設されている。これにより、シート排出口601から排出されたロールシート30は、押さえリブ101,102によって上側から押さえられて略水平な状態を保ちながら、ステージ12上に押し出される。
【0028】
開口部14の上側には、電源ボタン701と、シート排出口601の内側に設けられた後述するカッタユニット8(図3参照)を駆動させてロールシート30を切断するカットボタン702と、ロールシート30を搬送方向に排出するフィードボタン703とが略水平に並んで配置されている。
【0029】
また、フロントカバー6の前側であって、本体筐体2の正面下側には、正面視長方形状の樹脂製のトレー部材9が開閉自在に設けられ、その下部が本体筐体2の正面下部に軸支されている。このトレー部材9の上端縁部には凹み部901が形成されている。その凹み部901に指を掛けて前側に回動させることによってトレー部材9が前方に開くので、シート排出口601から排出されたロールシート30をトレー部材9上に貯めることができる。
【0030】
次に、本体筐体2の内部機構について、図3および図4を参照して説明する。図3は、テープ印刷装置1の縦断面図である。図4は、図3に示すサーマルヘッド32の周辺の部分拡大図である。
【0031】
図3に示すように、ロールシートホルダ収納部4の前側には、ロールシートホルダ収納部4の前側上端縁部から前方に向かって略水平に延出された載置部29が設けられている。その載置部29の前端部の上側には、ロールシート30を挿入するための挿入口26が設けられている。図4に示すように、挿入口26からシート排出口601に向かって、ロールシート30が搬送されるシート搬送経路が設けられている。このシート搬送経路の上側には、搬送手段としてのプラテンローラ35が回転自在に設けられている。一方、シート搬送経路の下側であって、プラテンローラ35に対向する位置には、サーマルヘッド32がプラテンローラ35に対して接離可能に支持されている。具体的には、サーマルヘッド32の下面に金属製の放熱板37が固定され、その放熱板37が揺動可能に支持されている。このようにして、サーマルヘッド32がプラテンローラ35に対して接離可能になっている。
【0032】
サーマルヘッド32のロールシート30の搬送方向下流側には、カッタユニット8が設けられている。カッタユニット8は、シート搬送経路の上側に配置された固定刃80と、シート搬送経路の下側に配置された可動刃90と、可動刃90を移動させる駆動機構105とを備えている。カットボタン702が押下された場合には、駆動機構105の備える駆動モータ19(図6参照)の駆動によって可動刃90が上下方向に往復移動され、固定刃80と可動刃90との間でロールシート30が切断される。切断されたロールシート30は、シート排出口601から排出される。なお、カッタユニット8の詳細な構造については後述する。
【0033】
また、図3に示すように、ロールシートホルダ収納部4の下側には、仕切壁39を介して、制御基板40が設けられている。制御基板40には、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令によってサーマルヘッド32等の各機構部を駆動制御する制御回路等が形成されている。また、サーマルヘッド32及びプラテンローラ35等からなる印刷機構の下方には、仕切壁39を介して、電源基板41が設けられている。電源基板41には、電源回路が形成されている。サーマルヘッド32は、図示外のフレキシブルフラットケーブル(FFC)によって、制御基板40の底面側に設けられたコネクタ(図示外)に接続されている。制御基板40及び電源基板41は、底面部にネジ止めされた薄い鋼板製の底面カバー45によって覆われている。
【0034】
ここで、ロールシート30について、図5を参照して説明する。図5は、ロールシート30の一部を破断した斜視図である。ロールシート30は、ロールシートホルダ3に巻回保持されて使用に供される無定長ロールシートである。ロールシート30は、例えば、感熱シート131と、粘着剤層132と、剥離紙133との3層からなる。粘着剤層132は、感熱シート131の一面に塗布形成される。剥離紙133は、粘着剤層132を介して、感熱シート131の一面に剥離可能に接着される。なお、ロールシート30としては、無定長ロールシートの他、剥離紙133上にダイカットラベルが剥離可能に接着されたダイカットラベルシートでも適用可能である。
【0035】
次に、カッタユニット8の構造について、図6乃至図8を参照して説明する。図6は、カッタユニット8の裏側から見た斜視図である。図7は、カッタユニット8の表側から見た斜視図である。図8は、図6に示すカッタユニット8から本体フレーム60を省いたカッタユニット中間体89の斜視図である。
【0036】
図6乃至図8に示すように、カッタユニット8は、縦断面L字型の本体フレーム60と、本体フレーム60に組み付けられた逆断面L字型の保護フレーム70と、本体フレーム60内面の上部に固定された固定刃80と、固定刃80に対して下側から昇降可能に支持された可動刃90と、可動刃90を移動させるための駆動機構105と、駆動機構105を保護するための保護フィルム95とを備えている。
【0037】
まず、本体フレーム60について説明する。図6に示すように、金属製の本体フレーム60は、正面視長方形状の本体片61を備えている。本体片61の左右両端部の各上部には、前側に向かって直角に延設された右側壁片62及び左側壁片63が各々設けられている。右側壁片62及び左側壁片63の各先端部には、係合凹部602,603が各々設けられている。本体片61の左右両端部の各下部には、外方に向かって略水平に延設された取付片64,65が各々設けられている。これら取付片64,65には、取付穴604,605が各々設けられている。取付片64,65は、テープ印刷装置1の本体筐体2の内側に固定するためのものである。さらに、本体片61の下端部の中央には、前側に向かって直角に延設された長方形状の取付片67が設けられている。この取付片67には取付穴607が設けられている。さらに、本体片61の上側には、ロールシート30を挿通させ、固定刃80と可動刃90とで切断するための正面視略長方形状の挿通穴68が設けられている。
【0038】
また、本体片61の上部には、固定刃80を固定するための一対の固定穴(図示外)が設けられている。さらに、その外面には正面視横長四角形状に形成された樹脂製のペーパーガイド69が固定されている。ペーパーガイド69の下面はテーパ状になっており、上向きに搬送されてペーパーガイド69の下面に突き当たったロールシート30を下方向に押し返して正しい経路にガイドする働きを有する。ペーパーガイド69の中央部には、横長の穴が設けられており、組み付けられた際に、その中にプラテンローラ35の一部を逃がすようになっている。このペーパーガイド69には、本体片61の一対の固定穴に対向する位置に、固定穴609,609が各々設けられている。本体片61の略中央には、正面視円形状のガイド穴66が設けられている。このガイド穴66は、可動刃90を上下方向に移動させるための移動軸106を本体フレーム60の内側から突出させるための穴である。
【0039】
次に、保護フレーム70について説明する。図7に示すように、金属製の保護フレーム70は、略矩形状の本体片71を備えている。その下部左隅には、矩形状の切り欠き部71aが設けられている。さらに、本体片71の上端部には、本体フレーム60の本体片61に向かって延設された平面視横長の長方形状の支持片72が設けられている。一方、本体片71の左右両端部の各上部には、外方に向かって略水平に延設された長方形状の右係止片73及び左係止片74が各々設けられている。右係止片73は、本体フレーム60の右側壁片62の係合凹部602に差し込まれて圧入されている。左係止片74は、本体フレーム60の左側壁片63の係合凹部603に差し込まれて圧入されている。
【0040】
また、右係止片73及び左係止片74の各下方には、保護フレーム70の内側に向かって延設された支持片75,76が各々設けられている。これら支持片75,76の外面は、本体フレーム60の右側壁片62及び左側壁片63の各内面に当接して各々固定されている。また、本体片71の下端部の中央には、下方に向かって延設された下係止片78が設けられている。この下係止片78は、本体フレーム60の取付片67の取付穴607に差し込まれている。これにより、本体フレーム60に対して保護フレーム70が組み付けられている。なお、矩形状の切り欠き部71aの垂直方向の縁部には、保護フレーム70の内側に向かって直角に折り返して延設された支持片77が設けられている。支持片77は、駆動モータ19の端部に当接し、駆動モータ19を支持している。
【0041】
ところで、このような保護フレーム70において、支持片72の上面には、断面L字型のリブ支持部材79がネジ99で固定されている。このリブ支持部材79の上端部には、上方に突出する複数のリブ709が所定間隔を空けて設けられている。リブ支持部材79の上端部は、待機時における固定刃80の刃先と可動刃90の刃先とに挟まれる間に位置されている。これにより、サーマルヘッド32から搬送されたロールシート30は、リブ支持部材79の上端部に設けられた複数のリブ709上を摺動し、固定刃80と可動刃90との間にガイドされる。
【0042】
次に、駆動機構105、および駆動機構105を保護するための保護フィルム95について説明する。図8に示すように、保護フレーム70の内側には、後述する可動刃90を移動させるための駆動機構105が設けられている。駆動機構105は、駆動モータ19と、駆動モータ19の駆動によって、可動刃90を上下方向に往復移動させるための移動軸106を備えている。
【0043】
駆動機構105と可動刃90との間には、断面L字型の樹脂製の保護フィルム95が配置されている。この保護フィルム95は、略長方形状のフィルムの上端側の所定幅を略水平に折り返した形状である。そして、その略水平に折り返した上端側の上面は、保護フレーム70の支持片72の裏面に当接した状態で、複数のネジ(図示外)で固定されている。なお、この固定には両面テープを用いてもよい。さらに、保護フィルム95の中央には、正面視円形状のガイド穴905が設けられている。このガイド穴905は、駆動機構105の移動軸106を本体フレーム60の内側から突出させるための穴である。この保護フィルム95が、可動刃90側に対して、駆動機構105を覆うことによって、ロールシート30の切りくずや異物等が駆動機構105に侵入するのを防止できる。
【0044】
次に、本発明の特徴である固定刃80および可動刃90について説明する。図6,図7に示すように、固定刃80は、本体フレーム60の内面の上部に固定されている。また、図8に示すように、可動刃90は、固定刃80に対して下側から昇降可能に支持されている。可動刃90は、固定刃80よりも、ロールシート30の搬送方向下流側に配置されている。可動刃90が、固定刃80の下方から上方に向かって移動すると、固定刃80の刃面と、可動刃90の刃面とが摺動する。可動刃90が、最下方に位置する切断待機時には、固定刃80の先端と可動刃90の先端との間には、切断隙間100が形成されている。この切断隙間100に、ロールシート30が搬送される。
【0045】
以下、固定刃80および可動刃90の形状について、図9および図10を参照して説明する。図9は、固定刃80の正面図である。図10は、可動刃90の正面図である。
【0046】
はじめに、固定刃80について説明する。固定刃80は、図9に示すように、正面視横長長方形の板状に形成され、刃先が下方に向けられている。刃先には、テーパ面84が設けられている。固定刃80は、その刃先のテーパ面84を、ロールシート30の搬送方向上流側(図9:紙面奥行側)に向けて配置されている(図12参照)。また、固定刃80の長手方向(幅方向)両側の各上部には、一対の固定穴81,81が設けられている。このような固定刃80を本体フレーム60(図6、図7参照)の内面上部に合わせ、一対の固定穴81,81にネジ98,98を各々締め付けることによって固定刃80が固定される。このとき、固定刃80の先端部が、本体フレーム60の挿通穴68の上側に位置決めされる。
【0047】
固定刃80には、固定刃80の幅方向(長手方向)に沿って、一定間隔で複数の固定刃貫通孔82が形成されている。複数の固定刃貫通孔82は、開口部が円形であり、固定刃80と後述の可動刃90とが摺動する摺動面181(ロールシート30の搬送方向下流側の面)から、摺動面181とは反対側の面である反対面182に向かって拡径している。これにより、固定刃貫通孔82の摺動面181側の開口部には、摺動面181に対して鋭角に傾斜するエッジが形成されている。
【0048】
これら複数の固定刃貫通孔82は、いずれも、切断動作時において固定刃80と可動刃90とが重なり合う重合部分に形成されている。なお、固定刃貫通孔82の全てが重合部分に形成されなくてもよく、摺動面181における開口部の一部が重合部分に重なるように形成されていればよい。また、隣り合う固定刃貫通孔82、82の、固定刃80の幅方向における中心間距離P1は、摺動面181における固定刃貫通孔82の開口部の直径D1の2倍(P1=2×D1)である。
【0049】
次に、可動刃90について説明する。可動刃90は、図10に示すように、正面視Y字型に形成され、正面視V字型の切断部97と、該切断部97の下部の略中央から下方に延設された正面視略矩形状の支持部96とからなる。可動刃90のV字型の刃先は、上方に向けられ、刃先には、テーパ面94が設けられている。可動刃90は、その刃先のテーパ面94を、ロールシート30の搬送方向下流側(図9:紙面手前側)に向けて配置されている(図12参照)。
【0050】
可動刃90には、可動刃90の幅方向に沿って、一定間隔で複数の可動刃貫通孔92が形成されている。複数の可動刃貫通孔92は、開口部が円形であり、固定刃80と後述の可動刃90とが摺動する摺動面191(ロールシート30の搬送方向上流側の面)から、摺動面191とは反対側の面である反対面192に向かって拡径している。これにより、可動刃貫通孔92は、摺動面191側の開口部に鋭角のエッジを備えている。
【0051】
これら複数の可動刃貫通孔92は、いずれも、切断動作時において固定刃80と可動刃90とが重なり合う重合部分に形成されている。なお、可動刃貫通孔92の全てが重合部分に形成されなくてもよく、摺動面191における開口部の一部が重合部分に重なるように形成されていればよい。また、隣り合う可動刃貫通孔92、92の可動刃90の幅方向における中心間距離P2は、摺動面191における可動刃貫通孔92の開口部の直径D2の2倍(P2=2×D2)である。また、可動刃貫通孔92の摺動面191における開口部の直径D2は、固定刃貫通孔82の摺動面181における開口部の直径D1と同じ長さ(D1=D2)である。
【0052】
切断部97の幅方向両側には、上方に突出する突出片93,93が各々設けられている。これら突出片93,93は、可動刃90が最下方に位置している場合にも、固定刃80の表面に接触する。これにより、可動刃90を安定して支持すると共に、固定刃80との相互の位置関係を保持できる。
【0053】
なお、支持部96の下側には、略水平に長いガイド穴91が設けられている。このガイド穴91には、可動刃90を上下方向に移動させるための移動軸106(図8参照)が挿入されている。この移動軸106は、可動刃90の厚み方向に延設され、回動可能である。駆動モータ19が駆動すると、移動軸106が回動する。すると、移動軸106が可動刃90のガイド穴91の内側を左右に移動しながら、可動刃90全体を上下方向に移動させる。
【0054】
次に、上記構成からなるカッタユニット8の切断動作について、図11乃至図16を参照して説明する。図11は、待機時の固定刃80と可動刃90の位置関係を正面から見た図である。図12は、図11に示すI−I線矢視方向断面図である。図13は、切断時の固定刃80と可動刃90の位置関係を正面から見た図である。図14は、図12に示す可動刃90が上昇した図である。図15は、図13に示すII−II線矢視方向断面図である。図16は、図13に示すIII−III線矢視方向断面図である。
【0055】
図11に示すように、待機時においては、可動刃90は最下方に位置している。印刷動作時には、図12に示すように、印刷済みのロールシート30が、プラテンローラ35(図3参照)の回転によって、カッタユニット8の切断隙間100に搬送される。そして、印刷済みのロールシート30の所望の切断位置が、切断隙間100まで搬送されると、駆動機構105によって、図13乃至図16に示すように、可動刃90が上方に向かって移動する。このとき、刃先がV字型に形成された可動刃90と、刃先が直線状に形成された固定刃80とは、各刃面の幅方向両側から中央に向かって徐々に接触する。よって、ロールシート30は、その幅方向両側から中央に向かって切断される。
【0056】
ロールシート30が切断される際、切断されたロールシート30の粘着剤層132(図5参照)からはみ出た粘着剤135が、固定刃80および可動刃90の刃面に付着する場合がある。図14、図15に示すように、可動刃90の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、固定刃貫通孔82の摺動面181側の鋭角のエッジに接触する。すると、固定刃貫通孔82のエッジが、可動刃90の刃面と、粘着剤135との間に入り込み、可動刃90の刃面から粘着剤135を削ぎ落とす。削ぎ落とされた粘着剤135は、固定刃貫通孔82に落とし込まれる。
【0057】
また、図16に示すように、固定刃80の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、可動刃貫通孔92の摺動面191側のエッジに接触し、可動刃貫通孔92に落とし込まれる。そのため、固定刃80および可動刃90の刃面には、粘着剤135が残りにくくなるので、粘着剤135の付着の影響によるロールシート30の切断不良が解消される。
【0058】
また、可動刃90の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、その摩擦力により、刃面から一旦剥がれて、刃面上を移動する場合がある。可動刃90の刃面上を、固定刃貫通孔82と対面する位置まで移動した粘着剤135は、固定刃80の刃面と接触しなくなることにより摩擦力を受けなくなり、固定刃貫通孔82に落とし込まれる(図14、図15参照)。
【0059】
また、固定刃80の刃面上を、可動刃貫通孔92と対面する位置まで移動した粘着剤135は、可動刃90の刃面と接触しなくなることにより摩擦力を受けなくなり、可動刃貫通孔92に落とし込まれる(図16参照)。このように、刃面から剥がれた粘着剤135は、再び刃面に付着することなく、固定刃貫通孔82、可動刃貫通孔92(以下、貫通孔82、92という)に落とし込まれるため、固定刃80および可動刃90の刃面には、粘着剤135が残りにくくなる。従って、粘着剤135の付着の影響によるロールシート30の切断不良が解消される。
【0060】
また、摺動面181,191側から、固定刃貫通孔82および可動刃貫通孔92に落とし込まれた粘着剤135は、反対面182,192側から排出される。貫通孔82、92では、粘着剤135を取り込む摺動面181,191側の径よりも、粘着剤135を排出する反対面182,192側の径のほうが大きいため、貫通孔82,92の内部に取り込まれた粘着剤135をスムーズに排出できる。従って、粘着剤135を取り除くといったメンテナンス不要の使用性の良いカッタユニット8を提供できる。
【0061】
また、貫通孔82、92は、固定刃80と可動刃90とが重合した状態において、固定刃80および可動刃90の幅方向にずれている(図13参照)。そのため、摺動時における、可動刃貫通孔92の摺動面191側の開口部のエッジと、固定刃80の刃面との接触面積、および、固定刃貫通孔82の摺動面181側の開口部のエッジと、可動刃90の刃面との接触面積を増加させることができる。固定刃80と可動刃90との刃面に付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、互いの貫通孔92、82のエッジに接触して、貫通孔92、82に落とし込まれる。本実施形態では、刃面と貫通孔82、92のエッジとの接触面積を大きくしたため、刃面に付着した粘着剤135をより多く除去することができる。これにより、ロールシート30の切断不良を解消することができる。
【0062】
また、固定刃貫通孔82および可動刃貫通孔92は、同一径を有する円形に形成される。そのため、貫通孔82、92の抜き型を、同一径を有する円筒形状とすればよく、貫通孔82,92の形状を円形以外の形状とした場合と比較して、簡単に貫通孔82、92を形成できる。また、貫通孔82、92を円形以外の形状とした場合と比較して、貫通孔82,92内の一部分に粘着剤135がこびりつくことがない。そのため、貫通孔82,92内にたまった粘着剤135は、反対面182、192から、スムーズに排出される。よって、粘着剤135を取り除くといったメンテナンス不要の使用性の良いカッタユニット8を提供できる。
【0063】
ところで、ロールシート30の切断時には、固定刃80及び可動刃90に外力が加えられる。具体的には、例えば、固定刃80と可動刃90とが接触する時、固定刃80、可動刃90の刃先がロールシート30に接触する時、さらに、可動刃90が駆動モータ19の駆動によって上昇する時に、固定刃80および可動刃90に加えられる力が、これに相当する。固定刃80および可動刃90に外力が加えられると、固定刃80及び可動刃90の内部には応力が発生する。ここで、貫通孔82、92を円形以外の形状とした場合、特定部分に応力が集中してしまうことがある。この場合、応力が集中する部分で疲労が生じ、破損する恐れがあった。また、応力が集中する部分で刃のひずみが生じ、印刷媒体の切断不良を生じる恐れがあった。本実施形態では、貫通孔82、92を円形としたことにより、刃の内部での応力が分散される。これにより、特定部分の疲労を防止して、固定刃80及び可動刃90の耐久性を向上させることができる。
【0064】
また、ここで、貫通孔82、92を円形以外の形状とした場合、特定部分の強度が弱くなり、ロールシート30の切断時に、強度の弱い部分でひずみが生じてしまうことがある。本実施形態では、固定刃80及び可動刃90のひずみを防止して、ロールシート30の切断不良を防止することができる。
【0065】
また、固定刃貫通孔82および可動刃貫通孔92は、固定刃80および可動刃90に、それぞれ貫通孔82、92の直径D1、D2の2倍の中心間距離P1、P2で配置されている(図9、図10参照)。これにより、最も近接する固定刃貫通孔82と可動刃貫通孔92との間には、刃の幅方向における隙間がなくなり、固定刃80、可動刃90刃面に付着した粘着剤135は、いずれかの貫通孔82、92に落とし込まれる。これにより、粘着剤135付着の影響によるロールシート30の切断不良を確実に解消することができる。また、中心間距離P1、P2を、直径D1、D2の2倍の距離としたことにより、固定刃貫通孔82の開口部と可動刃貫通孔92の開口部とでは、重なり合う部分がない。そのため、固定刃80および可動刃90における、貫通孔82、92の形成される割合を少なくして、固定刃80および可動刃90の強度を保つことができる。
【0066】
また、固定刃貫通孔82および可動刃貫通孔92をそれぞれ複数設けたため、例えば一つの貫通孔を刃先の長さ方向にわたって設けた場合と比較して、固定刃80および可動刃90の強度を保つことができる。また、一つの貫通孔を刃先の長さ方向にわたって設けた場合と比較して、刃先が撓むことを防止して、刃先が撓むことによるロールシート30の切断不良を防止することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施形態のテープ印刷装置1では、印刷後のロールシート30を切断するためのカッタユニット8を備えている。カッタユニット8は、平板状の固定刃80と、該固定刃80に摺動しながら移動するY字状の可動刃90とを備えている。固定刃80および可動刃90には、固定刃80と可動刃90とが摺動して重なり合う重合部分に、それぞれ複数の固定刃貫通孔82および可動刃貫通孔92が設けられている。よって、固定刃80の刃面に、ロールシート30の粘着剤135が付着しても、付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、可動刃貫通孔92のエッジに接触して、可動刃貫通孔92に落とし込まれる。また、可動刃90の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃80と可動刃90とが摺動する際に、固定刃貫通孔82のエッジに接触し、固定刃貫通孔82に落とし込まれる。そのため、固定刃80の刃面、および可動刃90の刃面に付着した粘着剤135を取り除くことができる。従って、粘着剤135付着の影響によるロールシート30の切断不良が解消される。
【0068】
次に、本発明の第二実施形態のカッタユニットについて説明する。第二実施形態のカッタユニットでは、固定刃800および可動刃900に設けられる固定刃貫通孔802および可動刃貫通孔902の形状が、第一実施形態とは異なる。以下、第一実施形態とは異なる固定刃800および可動刃900の形状について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については、説明を省略する。
【0069】
固定刃800および、可動刃900の配置、および支持方法は、第一実施形態と同様である。固定刃800は、第一実施形態の固定刃80と同様に、本体フレーム60の内面の上部に固定されている(図7参照)。また、可動刃900は、第一実施形態の可動刃90と同様に、固定刃800に対して下側から昇降可能に支持されている。可動刃900は、固定刃800よりも、ロールシート30の搬送方向下流側に配置されている。可動刃900が、固定刃800の下方から上方に向かって移動すると、固定刃800の刃面と、可動刃900の刃面とが摺動する。可動刃900が、最下方に位置する切断待機時には、固定刃800の先端と可動刃900の先端との間には、切断隙間100が形成されている。この切断隙間100に、ロールシート30が搬送される。
【0070】
以下、固定刃800および可動刃900の形状について、図17および図18を参照して説明する。図17は、固定刃800の正面図である。図18は、可動刃900の正面図である。
【0071】
はじめに、固定刃800の形状について説明する。図17に示すように、固定刃800は、正面視横長長方形の板状に形成され、刃先が下方に向けられており、その刃先には、テーパ面84が設けられている。固定刃800は、第一実施形態の固定刃80と同様に、刃先のテーパ面84を、ロールシート30の搬送方向上流側に向けて配置されている(図20参照)。また、固定刃800の長手方向(幅方向)両側の各上部には、一対の固定穴81,81が設けられている。
【0072】
固定刃800には、固定刃800の幅方向に沿って、一定間隔で複数の固定刃貫通孔802が形成されている。複数の固定刃貫通孔802は、開口部が円形であり、固定刃800と可動刃900とが摺動する摺動面181(ロールシート30の搬送方向下流側の面)から、摺動面181とは反対側の面である反対面182に向かって縮径している。
【0073】
これら複数の固定刃貫通孔802は、いずれも、切断動作時において固定刃800と可動刃900とが重なり合う重合部分に形成されている。なお、固定刃貫通孔802の全てが重合部分に形成されなくてもよく、摺動面181における開口部の一部が重合部分に重なるように形成されていればよい。また、隣り合う固定刃貫通孔802、802の、固定刃800の幅方向における中心間距離P10は、摺動面181における固定刃貫通孔802の開口部の直径D10の2倍(P10=2×D10)である。
【0074】
次に、可動刃900について説明する。図18に示すように、可動刃900は、正面視Y字型に形成され、正面視V字型の切断部97と、該切断部97の下部の略中央から下方に延設された正面視略矩形状の支持部96とからなる。可動刃900のV字型の刃先は、上方に向けられ、その刃先には、テーパ面94が設けられている。可動刃900は、刃先のテーパ面94を、ロールシート30の搬送方向下流側に向けて配置されている(図20参照)。
【0075】
可動刃900には、可動刃900の幅方向に沿って、一定間隔で複数の可動刃貫通孔902が形成されている。複数の可動刃貫通孔902は、開口部が円形であり、固定刃800と可動刃900とが摺動する摺動面191(ロールシート30の搬送方向上流側の面)から、摺動面191とは反対側の面である反対面192に向かって縮径している。
【0076】
これら複数の可動刃貫通孔902は、いずれも、切断動作時において固定刃800と可動刃900とが重なり合う重合部分に形成されている。なお、可動刃貫通孔902の全てが重合部分に形成されなくてもよく、摺動面191における開口部の一部が重合部分に重なるように形成されていればよい。また、隣り合う可動刃貫通孔902、902の、可動刃900の幅方向における中心間距離P20は、摺動面191における可動刃貫通孔902の開口部の直径D2の2倍(P20=2×D20)である。また、可動刃貫通孔902の摺動面191における開口部の直径D20は、固定刃貫通孔802の摺動面182における開口部の直径D10と同じ長さ(D10=D20)である。
【0077】
切断部97の幅方向両側には、第一実施形態と同様に、上方に突出する突出片93,93が各々設けられている。これら突出片93,93は、可動刃900が最下方に位置している場合にも、固定刃800の表面に接触する。これにより、可動刃900を安定して支持すると共に、固定刃800との相互の位置関係を保持できる。
【0078】
次に、固定刃800および可動刃900を有するカッタユニットの切断動作について、図19乃至図22を参照して説明する。図19は、待機時の固定刃800と可動刃900の位置関係を正面から見た図である。図20は、図19に示すIV−IV線矢視方向断面図である。図21は、切断時の固定刃800と可動刃900の位置関係を正面から見た図である。図22は、図21に示すV−V線矢視方向断面図である。図23は、図21に示すVI−VI線矢視方向断面図である。
【0079】
図19に示すように、待機時においては、可動刃900は最下方に位置している。印刷動作時には、図20に示すように、印刷済みのロールシート30が、プラテンローラ35(図3参照)の回転によって、カッタユニットの切断隙間100に搬送される。そして、印刷済みのロールシート30の所望の切断位置が、切断隙間100まで搬送されると、図21乃至図23に示すように、駆動機構105によって、可動刃900が上方に向かって移動する。このとき、刃先がV字型に形成された可動刃900と、刃先が直線状に形成された固定刃800とは、各刃面の幅方向両側から中央に向かって徐々に接触する。よって、ロールシート30は、その幅方向両側から中央に向かって切断される。
【0080】
ロールシート30が切断される際、切断されたロールシート30の粘着剤層132(図5参照)からはみ出た粘着剤135が、固定刃800および可動刃900の刃面に付着する場合がある。可動刃900の刃面に付着した粘着剤135は、図22に示すように、固定刃800と可動刃900とが摺動する際に、固定刃貫通孔802の内周面に接触する。すると、固定刃貫通孔802の内周面が、可動刃900の刃面に付着した粘着剤135を押し、押された粘着剤135は固定刃貫通孔82に落とし込まれる。
【0081】
また、固定刃800の刃面に付着した粘着剤135は、図23に示すように、固定刃800と可動刃900とが摺動する際に、可動刃貫通孔902の内周面に接触する。すると、可動刃貫通孔902の内周面が、固定刃800の刃面に付着した粘着剤135を押し、押された粘着剤135は可動刃貫通孔902に落とし込まれる。
【0082】
また、可動刃900の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃800と可動刃900とが摺動する際に、固定刃800の刃面と接触し、その摩擦力により、可動刃800の刃面から一旦剥がれて刃面上を移動する場合がある。可動刃900の刃面上を、固定刃貫通孔802の開口部と対面する位置まで移動した粘着剤135は、固定刃800の刃面と接触しなくなることにより摩擦力を受けなくなり、固定刃貫通孔802に落とし込まれる(図22参照)。
【0083】
また、固定刃800の刃面に付着した粘着剤135は、固定刃800と可動刃900とが摺動する際に、可動刃900の刃面と接触し、その摩擦力により、固定刃800の刃面から一旦剥がれて、刃面上を移動する場合がある。固定刃800の刃面上を、可動刃貫通孔902の開口部と対面する位置まで移動した粘着剤135は、可動刃900の刃面と接触しなくなることにより摩擦力を受けなくなり、可動刃貫通孔902に落とし込まれる(図23参照)。
【0084】
このように、固定刃800および可動刃900の刃面には、粘着剤135が残りにくくなる。従って、粘着剤135の付着の影響によるロールシート30の切断不良が解消される。
【0085】
以上説明したように、第二実施形態のカッタユニットによれば、第一実施形態のカッタユニット8と同様に、固定刃800の刃面、および可動刃900の刃面に付着した粘着剤135を取り除くことができる。従って、粘着剤135付着の影響によるロールシート30の切断不良が解消される。
【0086】
また、第二実施形態における固定刃貫通孔802および可動刃貫通孔902(以下、貫通孔802、902という)は、摺動面181,191側から反対面182,192側に向かって縮径するテーパ状の内周面を有する。これにより、貫通孔802、902の摺動面181,191側における開口部の面積を、反対面182,192側の開口部の面積よりも広くすることができる。これにより、より多くの粘着剤135を貫通孔802、902に落とし込むことができる。また、貫通孔802、902の摺動面181,191側における開口部の面積を広く保ったまま、反対面182,192側の開口部の面積を狭くしているので、固定刃800および可動刃900の体積に対する貫通孔802、902の割合を小さくすることができる。これにより、固定刃800、および可動刃900の強度を保つことができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば、第一および第二実施形態では、貫通孔82、92、802、902は、テーパ状の内周面を備えているが、テーパ状の内周面を備えたものに限定されず、任意の形状が可能である。たとえば貫通孔を円筒型とした場合には、貫通孔を一層簡単に形成することができる。
【0088】
また、上記第一、第二実施形態では、固定刃貫通孔82、802および可動刃貫通孔92、902は、固定刃80、800および可動刃90、900に、それぞれ貫通孔82、92、802、902の直径の2倍の中心間距離で配置されているが、貫通孔の直径と中心間距離との関係は、任意に設定可能である。
【0089】
また、上記第一、第二実施形態では、固定刃80、800および可動刃90、900に設けられる複数の貫通孔は、それぞれ同一形状、同一体積、同一開口面積であったが、同一のものに限定されない。たとえば、粘着剤135は、刃の幅方向における中心部に最も移動しやすいため、刃の幅方向における中心部に形成する貫通孔の開口面積および体積を、ほかの個所に位置する貫通孔よりも大きくしてもよい。これにより、粘着剤135付着の影響によるロールシート30の切断不良を一層確実に解消することができる。
【0090】
また、上記第一、第二実施形態では、固定刃貫通孔82、802および可動刃貫通孔92、902は、最も近接する固定刃貫通孔82、802と可動刃貫通孔92、902との間に、刃の幅方向における隙間がないように配置されているが、配置方法はこれに限定されない。たとえば、上述のように、粘着剤135は、刃の幅方向における中央部に最も移動しやすいため、刃の幅方向における中央部にのみ、複数の貫通孔を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る印刷装置は、長尺状の印刷媒体に印刷可能な印刷装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】テープ印刷装置1の前側から見た斜視図である。
【図2】ロールシートホルダ3が装着された状態のテープ印刷装置1の斜視図である。
【図3】テープ印刷装置1の縦断面図である。
【図4】図3に示すサーマルヘッド32の周辺の拡大図である。
【図5】ロールシート30の一部を破断した斜視図である。
【図6】カッタユニット8の裏側から見た斜視図である。
【図7】カッタユニット8の表側から見た斜視図である。
【図8】図6に示すカッタユニット8から本体フレーム60を省いたカッタユニット中間体89の斜視図である。
【図9】固定刃80の正面図である。
【図10】可動刃90の正面図である。
【図11】待機時の固定刃80と可動刃90の位置関係を正面から見た図である。
【図12】図11に示すI−I線矢視方向断面図である。
【図13】切断時の固定刃80と可動刃90の位置関係を正面から見た図である。
【図14】図12に示す可動刃90が上昇した図である。
【図15】図13に示すII−II線矢視方向断面図である。
【図16】図13に示すIII−III線矢視方向断面図である。
【図17】固定刃800の正面図である。
【図18】可動刃900の正面図である。
【図19】待機時の固定刃800と可動刃900の位置関係を正面から見た図である。
【図20】図19に示すIV−IV線矢視方向断面図である。
【図21】切断時の固定刃800と可動刃900の位置関係を正面から見た図である。
【図22】図21に示すV−V線矢視方向断面図である。
【図23】図21に示すVI−VI線矢視方向断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1 テープ印刷装置
8 カッタユニット
30 ロールシート
80 固定刃
82 固定刃貫通孔
90 可動刃
92 可動刃貫通孔
132 粘着剤層
135 粘着剤
800 固定刃
802 固定刃貫通孔
900 可動刃
902 可動刃貫通孔
D1 直径
D2 直径
D10 直径
D20 直径
P1 中心間距離
P2 中心間距離
P10 中心間距離
P20 中心間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する印刷媒体を、固定刃と、前記固定刃に対し進退自在に設けられた可動刃とにより切断する印刷装置の切断機構において、
前記固定刃および前記可動刃には、前記印刷媒体の切断時に前記固定刃と前記可動刃が摺動して重なり合う重合部分に、それぞれ複数の前記貫通孔が設けられ、
前記固定刃に設けられた前記貫通孔である固定刃貫通孔と、前記可動刃に設けられた前記貫通孔である可動刃貫通孔とは、前記固定刃と前記可動刃とが重合した状態において、前記固定刃および前記可動刃の幅方向にずれていることを特徴とする印刷装置の切断機構。
【請求項2】
前記固定刃と前記可動刃とが重合した状態において、最も近接する前記固定刃貫通孔と前記可動刃貫通孔との間には、前記幅方向における隙間がないことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項3】
前記固定刃貫通孔および前記可動刃貫通孔は、同一径を有する円形に形成されるとともに、前記固定刃および前記可動刃に、それぞれ前記幅方向に前記貫通孔の直径の2倍の中心間距離で配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置の切断機構。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記固定刃と前記可動刃とが摺動する摺動面から当該摺動面とは反対面に向かって径が大きくなるテーパ状の内周面を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷装置の切断機構。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記固定刃と前記可動刃とが摺動する摺動面から当該摺動面とは反対面に向かって径が小さくなるテーパ状の内周面を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷装置の切断機構。
【請求項6】
前記固定刃は、前記印刷媒体の一面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先が直線状であって、前記可動刃は、前記印刷媒体の他面側の幅方向に渡って設けられるとともに刃先がV字型であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷装置の切断機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の印刷装置の切断機構を備えたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−89215(P2010−89215A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262235(P2008−262235)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】