説明

印刷装置

【課題】両面印刷の中断後にユーザの意向に応じた印刷を実行することが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの用紙が存在した場合に、継続印刷または再印刷の実行指示の入力を受け付ける。継続印刷の実行指示が入力された場合には、MPトレイにセットされた用紙に対し未印刷の第2面のみの印刷を実行し、再印刷の実行指示が入力された場合には、印刷済みの第1面及び未印刷の第2面の印刷を実行する。これにより、ユーザは、片面のみ印刷済みの用紙を取り出した上で、その用紙を使用しての継続印刷を行うかあるいは別の用紙を使用しての再印刷を行うかを判断し、その意向に応じた印刷を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に両面印刷機能を備えた印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より印刷装置として、印刷中にジャム等の異常が発生して印刷動作を中断した際に、ユーザがカバー等を開けて搬送路上に残った用紙を除去した後に、新しい用紙に対して再度印刷を行うものが知られている。また、両面印刷中に異常が発生し印刷動作を中断した際に、搬送路上に片面のみが印刷された用紙が存在した場合に、(その用紙を搬送路から除去させることなく)異常回復後にその用紙を搬送してもう一方の面に印刷を行うものも知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−287425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
後者の印刷装置では、片面のみ印刷済みの用紙を再利用することができる。しかしながら、例えば印刷中断時に用紙にしわが付いた場合など、片面のみ印刷済みの用紙を再利用するのが望ましくない場合もあり、従来の印刷装置では、そうしたユーザの意向に応じた印刷を行うことが困難であった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、両面印刷の中断後にユーザの意向に応じた印刷を実行することが可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、第1の発明に係る印刷装置は、被記録媒体がセットされる供給部と、前記供給部から供給され、搬送路に沿って搬送される被記録媒体の第1面に印刷した後、前記被記録媒体の第2面に印刷する両面印刷が可能な形成手段と、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、継続印刷及び再印刷のうち少なくとも一方の実行指示の入力を受け付け可能な受付手段と、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記形成手段により前記供給部の被記録媒体に対し前記印刷済みの第1面に対応する未印刷の第2面のみの印刷を行い、再印刷の実行指示が入力された場合に、前記供給部の被記録媒体に対し前記印刷済みの第1面及び前記未印刷の第2面の印刷を行う選択印刷処理を実行する制御手段と、を備える。
【0007】
第1の発明によれば、両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、継続印刷または再印刷の実行指示の入力を受け付ける。継続印刷の実行指示が入力された場合には、供給部にセットされた被記録媒体に対し未印刷の第2面のみの印刷を実行し、再印刷の実行指示が入力された場合には、印刷済みの第1面及び未印刷の第2面の印刷を実行する。
【0008】
この選択印刷処理により、ジャムの発生等のために両面印刷を中断した際には、ユーザが搬送路上に残った片面のみ印刷済みの被記録媒体を取り出し、その被記録媒体を供給部にセットして継続印刷の実行指示を入力することで、もう一方の面への印刷を行うことができる。また、例えば取り出した被記録媒体にしわが付いていた場合など、ユーザがその被記録媒体を再利用しての印刷が望ましくないと判断した場合には、再印刷の実行指示を入力することで、供給部の(取り出した被記録媒体とは別の)被記録媒体に対し印刷を実行することができる。即ち、ユーザは、片面のみ印刷済みの被記録媒体を取り出した上で、その被記録媒体を使用しての継続印刷を行うかあるいは別の被記録媒体を使用しての再印刷を行うかを判断し、その意向に応じた印刷を行うことができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記選択印刷処理の実行可否を設定可能な設定手段を備え、前記制御手段は、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合において、前記設定手段により選択印刷処理の実行可が設定されている場合には、前記選択印刷処理を実行し、選択印刷処理の実行否が設定されている場合には、前記受付手段への実行指示の入力がない状態で前記供給部の被記録媒体に対し前記再印刷を行う非選択印刷処理を実行する。
【0010】
第2の発明によれば、選択印刷処理の実行可否を設定可能であり、実行否が設定された場合には、受付手段への実行指示の入力がない状態で、供給部の被記録媒体に対し再印刷を行う非選択印刷処理を実行する。ユーザが選択印刷処理の実行を望まない場合には、選択印刷処理の実行否を設定しておくことにより、ユーザによる実行指示の入力を待たずに再印刷を行うことができるため、処理を迅速に行うことができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記供給部は、複数設けられており、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、前記複数の供給部のうちから前記搬送路から取り出した被記録媒体をセットすべき供給部を通知する第1通知手段を備え、前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第1通知手段により通知された供給部の被記録媒体に対して継続印刷を実行する。
【0012】
第3の発明によれば、供給部が複数設けられており、両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、複数の供給部のうちから搬送路から取り出した被記録媒体をセットすべき供給部を通知する。これにより、ユーザが搬送路から取り出した被記録媒体を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0013】
第4の発明は、第1から第3のいずれか一つの発明において、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、前記供給部に対して被記録媒体をセットする向きを通知する第2通知手段を備え、前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第2通知手段により通知された向きに基づいて、前記供給部の被記録媒体に対して未印刷の第2面を印刷済みの第1面と対応する向きに印刷する。
【0014】
第4の発明によれば、両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、供給部に対して被記録媒体をセットする向き(上下左右や表裏など)を通知する。これにより、ユーザが搬送路から取り出した被記録媒体を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0015】
第5の発明は、第1から第4のいずれか一つの発明において、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が複数存在した場合に、前記搬送路から取り出した複数の被記録媒体を前記供給部上に重ねる順序を通知する第3通知手段を備え、前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第3通知手段により通知された順序に基づいて、供給部の複数の被記録媒体に対して印刷済みの第1面と対応する未印刷の第2面の印刷を行う。
【0016】
第5の発明によれば、両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が複数存在した場合に、搬送路から取り出した複数の被記録媒体を供給部上に重ねる順序を通知する。これにより、ユーザが搬送路から取り出した複数の被記録媒体を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0017】
第6の発明は、第1から第5のいずれか一つの発明において、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面または第2面の印刷途中の被記録媒体が存在した場合に、前記印刷途中の被記録媒体の存在を第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合とは区別して通知する第4通知手段を備える。
【0018】
第6の発明によれば、印刷途中の被記録媒体は、継続印刷に不適である可能性が高いため、第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合とは区別して通知することで、ユーザが、例えば取り出した被記録媒体を破棄するなど、適切な対応をとることができる。
【0019】
第7の発明は、第1から第6のいずれか一つの発明において、前記制御手段は、複数の被記録媒体に対する一連の両面印刷を中断した際、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、先に継続印刷を実行した後に残りの印刷を行う。
【0020】
第7の発明によれば、複数の被記録媒体に対する一連の両面印刷を中断した際、受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、先に継続印刷を実行した後に残りの印刷を行う。これにより、複数の被記録媒体に対する印刷の順序が印刷の中断のために変わることを防止できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、両面印刷を中断した際、搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、継続印刷または再印刷の実行指示の入力を受け付ける。継続印刷の実行指示が入力された場合には、供給部にセットされた被記録媒体に対し未印刷の第2面のみの印刷を実行し、再印刷の実行指示が入力された場合には、印刷済みの第1面及び未印刷の第2面の印刷を実行する。
【0022】
この選択印刷処理により、ジャムの発生等のために両面印刷を中断した際には、ユーザが搬送路上に残った片面のみ印刷済みの被記録媒体を取り出し、その被記録媒体を供給部にセットして継続印刷の実行指示を入力することで、もう一方の面への印刷を行うことができる。また、例えば取り出した被記録媒体にしわが付いていた場合など、ユーザがその被記録媒体を再利用しての印刷が望ましくないと判断した場合には、再印刷の実行指示を入力することで、供給部の(取り出した被記録媒体とは別の)被記録媒体に対し印刷を実行することができる。即ち、ユーザは、片面のみ印刷済みの被記録媒体を取り出した上で、その被記録媒体を使用しての継続印刷を行うかあるいは別の被記録媒体を使用しての再印刷を行うかを判断し、その意向に応じた印刷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1における印刷装置の内部構成を示す概略図
【図2】印刷装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】両面印刷処理を示すフローチャート
【図4】表示部に表示される表示画面の一例を示す図
【図5】実施形態2における表示部に表示される表示画面の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
<実施形態1>
次に本発明の実施形態1について図1から図4を参照して説明する。
【0025】
(印刷装置の内部構成)
図1は、本実施形態の印刷装置1の内部構成を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1の左側を前方とする。
【0026】
印刷装置1は、図1に示すように、装置本体2の底部に複数の用紙3(被記録媒体の一例)を積載可能な供給トレイ4(供給部の一例)を備えている。供給トレイ4に積載された用紙3は、給紙ローラ5により搬送路6に送り出され、レジストローラ7により画像形成部10に搬送される。また、装置本体2の前面には、複数の用紙3を積載可能なMP(Multi Purpose)トレイ8(供給部の一例)が設けられ、MPトレイ8から送り出された用紙3も同様にレジストローラ7により画像形成部10に搬送されるように構成されている。
【0027】
画像形成部10(形成手段の一例)は、公知の電子写真方式により画像形成を行うものであり、プロセス部11及び定着部12を有している。プロセス部11は、露光部、感光体、現像部、転写部(いずれも図示せず)等を備えている。印刷時には、露光部が感光体の表面を露光して静電潜像を形成し、現像部がその静電潜像を現像してトナー像を形成し、さらに転写部がそのトナー像を用紙3上に転写して、定着部12がそのトナー像を定着させる。
【0028】
定着部12の下流側には、正逆回転可能な反転ローラ13が設けられている。片面印刷の際には、画像形成部10において片面に画像が形成された状態の用紙3が反転ローラ13により装置後部の排出路6Aに送られ、排出路6Aから装置本体2の上面に設けられた排出トレイ16上に排出される。また、両面印刷の際には、画像形成部10により片面に画像が形成された用紙3が、排出路6Aに搬送された後、反転ローラ13の逆回転によって再搬送路6Bに送られる。そして、その用紙3は、再搬送路6Bからレジストローラ7によって表裏が反転した状態で画像形成部10に再度搬送され、そこでもう片方の面に画像が形成される。こうして、両面に印刷が行われた用紙3は、排出路6Aを介して排出トレイ16上に排出される。なお、以下の説明において、両面印刷時に搬送される用紙3の先に印刷される面を第1面、後に印刷される面を第2面ともいう。
【0029】
また、装置本体2の外面には、前面カバー、後面カバー、上面カバー(いずれも図示せず)など、開閉可能な複数のカバーが設けられており、ジャム処理の際には、いずれかのカバーを開放して搬送路6内に残された用紙3を取り出すことができるように構成されている。
【0030】
(印刷装置の電気的構成)
図2は、印刷装置1の電気的構成を概略的に示すブロック図である。
印刷装置1は、同図に示すように、CPU40、ROM41、RAM42、NVRAM(不揮発性メモリ)43、ネットワークインターフェイス44を備えている。
【0031】
ROM41には、後述する両面印刷処理など、印刷装置1の各種動作を実行するためのプログラムが記憶されており、CPU40(制御手段の一例)は、ROM41から読み出したプログラムに従って、その処理結果をRAM42またはNVRAM43に記憶させながら各部の制御を行う。ネットワークインターフェイス44は、通信回線を介して外部のコンピュータ(図示せず)等に接続され、これにより相互のデータ通信が可能となっている。
【0032】
また、印刷装置1は、表示部45、操作部46を備えている。表示部45(第1通知手段、第2通知手段、第3通知手段、第4通知手段の一例)は、タッチパネルやランプ等を備え、各種の設定画面や装置の動作状態等を表示することが可能である。操作部46(受付手段の一例)は、前述のタッチパネルや複数のボタンを備え、ユーザによる各種の指示の入力を受け付けることが可能である。さらに印刷装置1は、各カバーの開閉状態を検知する複数のカバーセンサ47、搬送路6上の各所に配置され用紙3の有無を検知する複数の用紙センサ48などを備えている。
【0033】
(両面印刷処理)
図3は、両面印刷処理を示すフローチャートであり、図4は、表示部45に表示される表示画面M1の一例を示している。
この両面印刷処理は、外部のコンピュータ等から送信された両面印刷の印刷要求をネットワークインターフェイス44を介して受信したときに実行される。
【0034】
CPU40は、図3に示す両面印刷処理において、まず供給トレイ4から一枚の用紙3を送り出し、印刷を開始する(S101)。なお、本実施形態の両面印刷処理では、複数枚の用紙3に印刷を行う場合、1枚の用紙3を供給トレイ4から送り出し、その用紙3の両面への印刷が完了し、用紙3を排出した後に次の用紙3を送り出す。CPU40は、印刷動作中に定期的にジャムの発生を監視する(S102)。
【0035】
例えば、いずれかの用紙センサ48により所定の期間内に搬送中の用紙3が検知されないときには、紙詰まりによるジャムが発生したと判断する。また、印刷動作中にカバーセンサ47によりいずれかのカバーが開放されたことが検知された場合や、その他の異常が発生した場合にもジャムが発生したと判断する。ジャムが発生せず(S102:No)に、印刷要求に基づく全ての印刷が終了した場合(S103:Yes)には、この両面印刷処理を終了する。
【0036】
また、CPU40は、印刷動作中にジャムが発生した場合(S102:Yes)には、印刷動作及び用紙3の搬送を停止する(S104)。続いて、搬送路6上に反転途中の用紙3、即ち、第1面の印刷が完了し(定着部12を通過し)、反転されて画像形成部10に再度到達する前の用紙3が存在するかを判断する(S105)。反転途中の用紙3が存在しない場合(S105:No)には、第1面若しくは第2面の印刷途中の用紙3、即ち、画像形成部10に到達してから定着部12を通過する前の状態の用紙3が存在するかを判断する(S106)。
【0037】
印刷途中の用紙3が存在しない場合(S106:No)、即ち、搬送路6上に供給トレイ4から送り出されて画像形成部10に到達する前の用紙3、若しくは両面に印刷され定着部12を通過した後の用紙3が存在する場合には、ジャムが発生した旨、及び搬送路6上の用紙3を取り除くべき旨をユーザに通知する(S107)。ここでは、例えば、表示部45に「ジャム発生:前面カバーを開けて紙を取り出して下さい。」のように、搬送路6上の用紙3の位置や、用紙3を取り出すためのカバーの位置など、ユーザがジャムを解除するために有用な情報を示すメッセージを表示させる。
【0038】
また、搬送路6上に印刷途中の用紙3が存在した場合(S106:Yes)には、ジャムが発生した旨、装置内の用紙3を取り除くべき旨と、取り除いた用紙3が未定着状態である旨とをユーザに通知する(S108)。ここでは、取り出した印刷途中の用紙3は、未定着状態のトナーが付着している可能性が高いため、後述する継続印刷に適していない旨、若しくは再利用することなく破棄すべき旨のメッセージを表示部45に表示しても良い。
【0039】
CPU40は、S107またはS108にて、用紙3を取り除くべき旨等を通知した後、ジャム状態が解除されるのを待機する(S109)。ここでは、例えば、カバーが開放された後、閉鎖されたことをカバーセンサ47により検知した場合や、あるいは搬送路6上の用紙3が除去されたことを用紙センサ48により検知した場合に、ジャムが解除されたと判断する。また、ユーザが操作部46によりジャムの解除が完了した旨を入力したことに基づいてジャムが解除されたと判断しても良い。
【0040】
ジャム状態が解除されると(S109:Yes)、CPU40は、供給トレイ4から用紙3を送り出して再印刷を開始し(S110)、S102に戻る。この再印刷では、最初に、搬送路6上から取り除かれた用紙3に印刷されたページの画像、若しくは印刷されるはずであったページの画像を、供給トレイ4から送り出された用紙3の各面に印刷する。その後、残りの印刷ページが存在する場合には、続けて供給トレイ4から送り出された用紙3に対して印刷を行う。
【0041】
また、CPU40は、S105にて、搬送路6上に反転途中の用紙3、即ち第1面のみ印刷済みの用紙3が存在した場合(S105:Yes)には、選択印刷を実行可能な設定になっているかを判断する(S111)。ここで選択印刷とは、後述するように、ユーザの選択により継続印刷と再印刷とのいずれかの印刷を実行する処理である。なお、継続印刷とは、ジャム発生時に装置から取り出した片面のみ印刷済みの用紙3を使用して、もう一方の面に印刷を行うための処理である。CPU40は、事前にユーザの指示に従って設定プログラムを実行することができ、その設定プログラムにより操作部46からの入力に基づいて選択印刷の実行可否を示す設定値をNVRAM43に記憶させる。
【0042】
CPU40は、S111において、NVRAM43に記憶された設定値を調べ、選択印刷の実行否が設定されている場合(S111:No)には、S107に進んで、用紙3を除去すべき旨等の通知を行う。この場合は、既述のようにジャム状態が解除された後(S109:Yes)に、再印刷が行われる(110)。即ち、供給トレイ4から供給される(新しい)用紙3に対して、取り出した用紙3の第1面に印刷済みのページの画像と、第2面に印刷するはずであったページの画像とが印刷される。従って、この場合には、ユーザが再印刷の指示を行うことなく再印刷が実行される。
【0043】
また、選択印刷の実行可が設定されている場合(S111:Yes)には、例えば表示部45に図4に示すような表示画面M1を表示させる(S112)。この表示画面M1では、ジャムが発生した旨、搬送路6上の用紙3を取り除くべき旨、及び用紙3を取り出すためのカバーの位置を示すメッセージが表示される。
【0044】
また、表示画面M1では、継続印刷を実行する場合において、取り出した用紙3をトレイにセットする方法とが、メッセージと指示図50とによって示されている。指示図50では、取り出した(片面のみ印刷済みの)用紙3を(供給トレイ4でなく)MPトレイ8にセットすること、用紙3の印刷済みの面を下向きにしてセットすること、用紙3をMPトレイ8の引き込み方向に対して縦向きにセットすることが示されている。
【0045】
さらに、表示画面M1には、ユーザが継続印刷を実行するか、再印刷を実行するかを選択し、その実行指示を入力するための選択肢51,52が設けられている。
【0046】
続いて、CPU40は、ジャム状態が解除されたか(搬送路6上の用紙3が取り除かれたか)を判断し(S113)、ジャム状態が解除され(S113:Yes)、操作部46から継続印刷の実行指示が入力された場合(S114:Yes)には、MPトレイ8にセットされた用紙3を送り出し、継続印刷の実行を開始し(S115)、S102に戻る。この継続印刷では、取り出した用紙3の第2面に印刷されるはずであったページの画像が、MPトレイ8から送り出された用紙3に印刷される。
【0047】
即ち、ユーザが搬送路6から第1面のみ印刷済みの用紙3を取り出した後、その用紙3をMPトレイ8にセットして、継続印刷の実行指示を入力すると、その用紙3の第2面に継続して印刷が行われる。ここで、ユーザが表示画面M1の指示に従って、取り出した用紙3をMPトレイ8にセットすることで、用紙3の正しい面に正しい向きで第2面の画像が印刷される。
CPU40は、MPトレイ8の用紙3に印刷を行った後、残りの印刷ページが存在する場合には、続けて供給トレイ4から送り出された用紙3に対して印刷を行う。
【0048】
また、ユーザが表示画面M1において再印刷の実行指示を入力した場合(S114:Yes)には、S110に進み、供給トレイ4から送り出した(新しい)用紙3に対して再印刷を行う。即ち、ユーザが搬送路6から用紙3を取り出したときに、用紙3にしわがよっている等の事情で、継続印刷が望ましくないと判断した場合には、継続印刷を行わずに再印刷を実行させることができる。
【0049】
(本実施形態の効果)
以上のように本実施形態によれば、両面印刷を中断した際、搬送路6上に第1面のみ印刷済みの用紙3が存在した場合に、継続印刷または再印刷の実行指示の入力を受け付ける。継続印刷の実行指示が入力された場合には、MPトレイ8にセットされた用紙3に対し未印刷の第2面のみの印刷を実行し、再印刷の実行指示が入力された場合には、印刷済みの第1面及び未印刷の第2面の印刷を実行する。
【0050】
この選択印刷処理によって、ジャムの発生等のために両面印刷を中断した際には、ユーザが搬送路6上に残った片面のみ印刷済みの用紙3を取り出し、その用紙3をMPトレイ8にセットして継続印刷の実行指示を入力することで、もう一方の面への印刷を行うことができる。また、例えば取り出した用紙3にしわが付いていた場合など、ユーザがその用紙3を再利用しての印刷が望ましくないと判断した場合には、再印刷の実行指示を入力することで、供給トレイ4の(取り出した用紙3とは別の)用紙3に対し印刷を実行することができる。即ち、ユーザは、片面のみ印刷済みの用紙3を取り出した上で、その用紙3を使用しての継続印刷を行うかあるいは別の用紙3を使用しての再印刷を行うかを判断し、その意向に応じた印刷を行うことができる。
【0051】
また、選択印刷処理の実行可否を設定可能であり、実行否が設定された場合には、操作部46への実行指示の入力がない状態で、供給トレイ4の用紙3に対し再印刷を行う非選択印刷処理を実行する。ユーザが選択印刷処理の実行を望まない場合には、選択印刷処理の実行否を設定しておくことにより、ユーザによる実行指示の入力を待たずに再印刷を行うことができるため、処理を迅速に行うことができる。
【0052】
また、画像形成部10に用紙3を供給する供給部(4,8)が複数設けられており、両面印刷を中断した際、搬送路6上に第1面のみ印刷済みの用紙3が存在した場合に、複数の供給部(4,8)のうちから搬送路6より取り出した用紙3をセットすべき供給部(4,8)を通知する。これにより、ユーザが搬送路6から取り出した用紙3を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0053】
また、両面印刷を中断した際、搬送路6上に第1面のみ印刷済みの用紙3が存在した場合に、MPトレイ8に対して用紙3をセットする向き(上下左右や表裏など)を通知する。これにより、ユーザが搬送路6から取り出した用紙3を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0054】
また、印刷途中の用紙3は、継続印刷に不適である可能性が高いため、第1面のみ印刷済みの用紙3が存在した場合とは区別して通知することで、ユーザが、例えば取り出した用紙3を破棄するなど、適切な対応をとることができる。
【0055】
また、複数の用紙3に対する一連の両面印刷を中断した際、操作部46において継続印刷の実行指示が入力された場合に、先に継続印刷を実行した後に残りの印刷を行う。これにより、複数の用紙3に対する印刷の順序が印刷の中断のために変わることを防止できる。
【0056】
<実施形態2>
次に本発明の実施形態2について図5を参照して説明する。図5は、表示部45に表示される表示画面M2の一例を示している。
【0057】
上記実施形態では、両面印刷中のジャム発生時に、搬送路6上に用紙3が1枚のみ残されるものを示したが、本実施形態では、搬送路6上に複数枚の用紙3が残される可能性がある場合の動作例を示す。なお、本実施形態の印刷装置1の概略構成は、実施形態1と同様とする。
【0058】
CPU40は、両面印刷処理中にジャムが発生した場合に、搬送路6上の各用紙3の状態(位置)を調べ、各用紙3についてその状態に応じて、用紙3の位置や、未定着状態である旨などの通知を行う。図5には、片面のみ印刷済みの用紙3(反転途中の用紙3)が2枚存在した場合の表示画面M2の例を示す。
【0059】
この表示画面M2では、2枚の用紙3を取り除くべき旨や、2枚の用紙3を取り出すためのカバーの位置などを示すメッセージが示されている。さらに、表示画面M2には、継続印刷を実行する場合において、取り出した用紙3をトレイ上に重ねる順序が、メッセージと指示図55とによって示されている。また、表示画面M2には、ユーザが継続印刷を実行するか、再印刷を実行するかを選択し、その実行指示を入力するための選択肢56,57が設けられている。
【0060】
そして、CPU40は、表示画面M2において、継続印刷の実行指示が操作部46から入力された場合には、MPトレイ8から2枚の用紙3を1枚ずつ送り出し、各用紙3の第2面に印刷を行う。ここで、ユーザが2枚の用紙3を表示画面M2で指示された順序でMPトレイ8上に重ねてセットすることで、2枚の用紙3の第2面には、それぞれ第1面に印刷済みのページの画像に対応するページの画像が印刷される。
【0061】
このように本実施形態によれば、両面印刷を中断した際、搬送路6上に第1面のみ印刷済みの用紙3が複数存在した場合に、搬送路6から取り出した複数の用紙3をMPトレイ8上に重ねる順序を通知する。これにより、ユーザが搬送路6から取り出した複数の用紙3を用いての継続印刷を円滑に行うことができる。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、本発明を直接転写方式の印刷装置に適用した例を示したが、これに限らず、本発明は、例えば中間転写方式や、4サイクル方式、若しくはインクジェット方式など他の方式の印刷装置にも適用することができる。
【0063】
(2)上記実施形態では、継続印刷または再印刷のいずれかを実行させる指示をユーザが操作部から入力するものを示したが、本発明によれば、操作部から所定時間入力がないことをもって、継続印刷または再印刷の実行指示が入力されたとみなし、その印刷を実行しても良い。また、例えば、MPトレイの用紙の有無を検知するトレイセンサを設け、トレイセンサにより用紙が検知されたことをもって、継続印刷の実行指示の入力とみなして継続印刷を実行し、また用紙が所定時間検知されないことをもって、再印刷の実行指示とみなして再印刷を実行するようにしても良い。
【0064】
(3)ユーザに継続印刷及び再印刷の実行を選択させる際に、ユーザのキャンセル指示の入力により印刷処理を終了するにしても良い。
(4)継続印刷の際に、再印刷時と同一の供給部から供給される用紙に印刷を行っても良い。また、継続印刷の際に、第1面のみ印刷済みの用紙を再利用せず、供給部から供給される新しい用紙に対し未印刷の第2面のみを印刷するようにしても良い。
【0065】
(5)ユーザに対し各種の情報を通知する形態は、適宜変更することができる。例えば、ディスプレイに文字や図形等を表示することにより情報を通知しても良く、あるいは所定のランプを点灯することによって通知しても良い。さらに、音声によって情報を通知しても良く、ネットワークインターフェイス44を介してコンピュータ等にそのような情報を通知するための信号を送信しても良い。
【0066】
(6)上記実施形態では、供給部を2つ備えるものを示したが、本発明によれば、供給部は1つのみでも良く、3つ以上でも良い。
【符号の説明】
【0067】
1…印刷装置
3…用紙(被記録媒体)
4…供給トレイ(供給部)
6…搬送路
8…MPトレイ(供給部)
10…画像形成部(形成手段)
40…CPU(制御手段)
45…表示部(第1通知手段、第2通知手段、第3通知手段、第4通知手段)
46…操作部(受付手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体がセットされる供給部と、
前記供給部から供給され、搬送路に沿って搬送される被記録媒体の第1面に印刷した後、前記被記録媒体の第2面に印刷する両面印刷が可能な形成手段と、
両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、継続印刷及び再印刷のうち少なくとも一方の実行指示の入力を受け付け可能な受付手段と、
前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記形成手段により前記供給部の被記録媒体に対し前記印刷済みの第1面に対応する未印刷の第2面のみの印刷を行い、再印刷の実行指示が入力された場合に、前記供給部の被記録媒体に対し前記印刷済みの第1面及び前記未印刷の第2面の印刷を行う選択印刷処理を実行する制御手段と、
を備える印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記選択印刷処理の実行可否を設定可能な設定手段を備え、
前記制御手段は、両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合において、前記設定手段により選択印刷処理の実行可が設定されている場合には、前記選択印刷処理を実行し、選択印刷処理の実行否が設定されている場合には、前記受付手段への実行指示の入力がない状態で前記供給部の被記録媒体に対し前記再印刷を行う非選択印刷処理を実行する。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、
前記供給部は、複数設けられており、
両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、前記複数の供給部のうちから前記搬送路から取り出した被記録媒体をセットすべき供給部を通知する第1通知手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第1通知手段により通知された供給部の被記録媒体に対して継続印刷を実行する。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置において、
両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合に、前記供給部に対して被記録媒体をセットする向きを通知する第2通知手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第2通知手段により通知された向きに基づいて、前記供給部の被記録媒体に対して未印刷の第2面を印刷済みの第1面と対応する向きに印刷する。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面のみ印刷済みの被記録媒体が複数存在した場合に、前記搬送路から取り出した複数の被記録媒体を前記供給部上に重ねる順序を通知する第3通知手段を備え、
前記制御手段は、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、前記第3通知手段により通知された順序に基づいて、供給部の複数の被記録媒体に対して印刷済みの第1面と対応する未印刷の第2面の印刷を行う。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置において、
両面印刷を中断した際、前記搬送路上に第1面または第2面の印刷途中の被記録媒体が存在した場合に、前記印刷途中の被記録媒体の存在を第1面のみ印刷済みの被記録媒体が存在した場合とは区別して通知する第4通知手段を備える。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記制御手段は、複数の被記録媒体に対する一連の両面印刷を中断した際、前記受付手段において継続印刷の実行指示が入力された場合に、先に継続印刷を実行した後に残りの印刷を行う。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−260199(P2010−260199A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110924(P2009−110924)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】