説明

卵殻質改善用混合飼料

【課題】鳥類の卵の卵殻質の劣化を抑制する混合飼料を提供する。併せて、シェルモトリングの低減をも図る。
【解決手段】飼料中に含まれるカルシウムとマグネシウムの含有比率を重量比で7〜12対1の範囲になるように調整した飼料を産卵鳥に給与して、卵殻強度が著しく改善される。又、マグネシウム源物質として酸化マグネシウムを用い、これにキレート作用を有する有機酸を存在せしめることによって、一層卵殻強度が改善される。更に、これにバチルス・サブチリスの培養物を添加・存在させることによって、卵殻強度が改善されると共に、通常飼料を給与したときしばしば表れる卵殻表面のシェルモトリングの発生も顕著に抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、採卵鳥の卵の卵殻質改善用混合飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥類、特に鶏の卵の卵殻質は、鳥の加齢に伴って低下する。卵殻質が悪い卵が増加すると、農場、グレーディング・アンド・パッキングセンター(GPセンター)及び輸送過程において破卵率が増加し、養鶏業者、流通業者に経済的な損害を与え、大きな問題となっている。
そのため、卵殻質の劣化を抑制、乃至卵殻を強化する方法として、卵殻の主成分であるカルシウムに着目し、飼料中に各種の形のカルシウムを強化・使用する試みが各種提案されている。例えば、貝殻から得られたカルシウムを酢酸とクエン酸の溶液中に溶解させて飼料に添加する方法(特開2003-325112)、豆類の胚芽から得たイソフラボンアグリコンを含有する物を与える方法(特開2002−330707)、バチルス・ズブチリスの生菌体を有効成分として含有する飼料を給与する方法(特開平10-108628号公報)、蟹殻とキトサンを含有させた飼料を給与する方法(特開平9−47232号公報)、植物性飼料を用い、マグネシウム含量を0.21〜0.28%に強化する方法(特許第3377768号)などである。しかしながら、何れも未だ養鶏業者、流通業界の危惧を充分に解消することは出来ていない。
【特許文献1】特開2003-325112
【特許文献2】特開2002−330707
【特許文献3】特開平10-108628号公報
【特許文献4】特開平9−47232号公報
【特許文献5】特許第3377768号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、鳥類の卵の卵殻質の劣化を抑制する混合飼料を提供することを課題とする。併せて、シェルモトリングの低減をも図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討の結果、飼料中に含まれるカルシウムとマグネシウムの含有比率を重量比で7〜12対1の範囲になるように調整した飼料を産卵鳥に給与したところ、卵殻強度が著しく改善されること、及びマグネシウム源物質として酸化マグネシウムを用い、これにキレート作用を有する有機酸を存在せしめることによって、一層卵殻強度が改善されること、又、酸化マグネシウムとバチルス・サブチリスの培養物を添加・存在させることによって、卵殻強度が改善されると共に、通常飼料を給与したときしばしば表れる殻表面の斑点、所謂シェルモトリングの発生も顕著に抑制されることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【発明の効果】
【0005】
本発明を実施することによって、従来充分に解決がなされなかった鳥類の卵の卵殻質の劣化が容易に抑制され、農場、GPセンター及び輸送過程における破卵率が大幅に減少し、養鶏業者、流通業者に与えていた経済的な損害を縮小できる。又、シェルモトリングの発生も顕著に抑制されるので、商品価値の高い卵を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
卵殻の形成に重要なカルシウムを産卵鳥に過剰に摂取させても、卵殻質の大幅な改善効果は認められない。通常飼料におけるカルシウムとマグネシウムの含有比率は20〜30対1程度であり、これ以上にカルシウム源物質を飼料に更に上乗せする方法、カルシウムの溶解性を高める手法などがしばしば行われて来たのである。しかしながら、効果は未だ充分とは云えない状態である。
本発明に於いては、飼料中のマグネシウム量を単に増量するのではなく、カルシウムとマグネシウムの含有比率を重量で7〜12対1の範囲に調整する。即ち、用いる飼料原料中のカルシウム量を把握し、その量に応じてマグネシウム源物質を上記範囲に調整添加する。
【0007】
用いられるマグネシウム源物質には特別制限は無く、通常入手が可能なものがそのまま使用される。例えば、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、バーミキュライト、ドロマイト、その他マグネシウムを含有する有機物、例えば米糠などの形であっても良い。
特に酸化マグネシウムを使用するときは、同時にキレート作用を有する有機酸を酸化マグネシウムと凡そ同重量併用することによって、一層卵殻質の強化・改善の効果が確実乃至高くなる。有機酸の使用量としては凡そ酸化マグネシウムと等重量程度が好ましいが、プラス、マイナス10〜20%程度の幅で増減して用いるのが良い。即ち、酸化マグネシウムに対して80〜120重量%の有機酸を存在させるのが良い。
用いられるキレート作用を有する有機酸の例としては、クエン酸、乳酸、りんご酸などが上げられる。
【0008】
この酸化マグネシウムと同時にバチルス・ズブチリスの培養物を添加・存在させることによっても、卵殻質の強化の効果が挙げられ、更にこの場合シェルモトリングの発生が顕著に抑制される。
用いられるバチルス・ズブチリスの培養物としては、バチルス・ズブチリス菌の培養物でよく、バチルス・ズブチリの栄養培養による培養液そのものであってもよく、生菌体、培養液、菌体処理物であっても良い。飼料添加用として一般に市販されているバチルス・ズブチリス生菌体が便利である。その使用量としては、飼料1グラム当り、生菌体、又は培養液の場合、菌数として1×10〜1×10個程度である。
【0009】
バチルス・ズブチリスの培養物を使用する際、有機酸を存在させることによって、有機酸単独使用で卵殻強度の改善効果が現れたにも拘わらず、これにバチルス・ズブチリスの培養物を存在させることによって、両者の相乗作用によって顕著に卵殻強度が改善され、シェルモトリングの発生がさらに抑制される。
【実施例】
【0010】
実施例1
406日齢の白色レグホーン種ハイライン・ローラ鶏を、ウインドウレス鶏舎内の単飼ケージで、各区30羽飼育した。
供試飼料は、表1に示したカルシウム含量が異なる3種類の飼料を調製し(CP16.5%、ME2850kcal/kg、Mg0.16%)、それぞれの飼料に表2に示すように酸化マグネシウムを上乗せ添加した。
【0011】
各区の鶏を4週間給与して採卵を行い、卵殻強度を卵殻強度測定器(ロボットメーション株式会社製MODEL−II)を用いて測定した。試験開始時を100としたときの4週後の卵殻強度を表3に示した。試料中のカルシウムとマグネシウムの含有比率が7〜12のところで、卵殻質の劣化が改善されていることが明瞭である。
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【0015】
実施例2
414日齢の白色レグホーン種マリア鶏をウインドウレス鶏舎内の群飼ケージで、各区30羽飼育した。
CP16.5%、ME2850kcal/kgの基礎飼料に表4に示すように酸化マグネシウム又は酸化マグネシウムとクエン酸を上乗せ添加した。
各区30羽の鶏に各飼料を4週間給与して採卵を行い、卵殻強度を測定した。試験開始時を100としたときの4週後の卵殻強度を表4に示した。
【0016】
【表4】

【0017】
実施例3
320日齢の白色レグホーン種マリア鶏をウインドウレス鶏舎内の群飼ケージで、各区30羽飼育した。
CP16.5%、ME2850kcal/kgの基礎飼料に、表5に示すように酸化マグネシウム、クエン酸、枯草菌資材(カルスポリン5C、カルピス株式会社製)を上乗せ添加した。この飼料中の菌数は、4×10個/飼料1gであった。
各区40羽の鶏に各飼料を6週間給与して採卵を行い、卵殻強度、卵殻重量比及びシェルモトリング発生率を測定した。試験開始時を100としたときの6週後の卵殻強度を表5に示した。
【0018】
【表5】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
飼料中のカルシウムとマグネシウムの含有比率を重量比7〜12対1の範囲になるように採卵鶏用通常飼料にマグネシウム源物質を添加した卵殻質改善用混合飼料。
【請求項2】
マグネシウム源物質が酸化マグネシウムであり、且つ酸化マグネシウムに対して80〜120重量%の有機酸を存在させた請求項1に記載の卵殻質改善用混合飼料。
【請求項3】
酸化マグネシウムと、枯草菌(バチルス・サブチリス、Bacillus subtilis)の培養物を添加した卵殻質改善用混合飼料。
【請求項4】
酸化マグネシウムの添加量が飼料に対して0.1〜1%であり、枯草菌数を飼料1グラム当たり1×10〜1×10個含有している請求項3に記載の卵殻質改善用混合飼料。

【公開番号】特開2006−217825(P2006−217825A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31990(P2005−31990)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000201641)全国農業協同組合連合会 (69)
【Fターム(参考)】