説明

厚み計測器及び研削装置

【課題】板状物に傷を付けずにその厚みを正確に計測する。
【解決手段】保持テーブルに保持された板状物2の上面2aに向けて流体を流出させて流体膜3を形成すると共に、筒体12の内部に流体柱4を形成し、送波部17から超音波を送信してからその反射波が到達までの時刻から板状物2の厚みを求める。筒体12は板状物2の接触しないため、板状物に傷を付けることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物の厚みを計測する厚み計測器及びこれを搭載した研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状物を加工して所望の厚みに形成しようとする際には、加工中においてその板状物の厚みを正確に計測する必要がある。例えば、表面に複数の回路が形成された半導体ウェーハを所望の厚みに形成しようとするときは、その厚みを計測しながら裏面を研削し、計測結果が所望の厚みになったときに研削を終了させることとしている(例えば特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−1261号公報
【特許文献2】特開2001−9716号公報
【特許文献3】特開平8−210833号公報
【特許文献4】特開平9−189542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記いずれの文献に記載された発明も、厚み計測用のゲージ等が計測対象物に接触する構成となっているため、計測対象物に傷がつくという問題がある。特に、厚みの計測対象物が半導体ウェーハのように薄く形成されているものである場合は、抗折強度を低下させる原因となる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、厚みの計測対象物に傷を付けることなくその厚みを正確に計測し、計測対象物の抗折強度を低下させないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状物の厚みを計測する厚み計測器であって、板状物を保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された板状物の上面に向けて流体を流出させて流体膜を形成し、流体膜を介して板状物の上面に間接的に接触すると共に、内部に流体により構成される流体柱を形成する筒体と、筒体に流体を供給する流体供給部と、超音波を発振する超音波発振部と、超音波発振部において発振した超音波を、流体柱及び流体膜を介して板状物に対して送波する送波部と、板状物に対して送波された超音波の反射波をとらえる受波部と、受波部がとらえた反射波を受信する反射波受信部と、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間を求めて板状物の厚みを算出する厚み算出部とから構成されることを特徴とする。
【0007】
厚み計測部は、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の上面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間と、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間との差を求めて板状物の厚みを算出することが好ましい。超音波発振部においては、パルス超音波を発振することが望ましい。
【0008】
厚み計測部においては、板状物の厚みをWとし、板状物中における音速をVとし、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の上面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間をT1とし、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間をT2とし、板状物の厚さWをW=V×(T2−T1)÷2の計算式によって求める方法が一例として挙げられる。
【0009】
流体供給部が筒体に供給する流体としては、例えば純水がある。
【0010】
また本発明に係る研削装置は、板状物の面を研削する研削手段を備え、上記の厚み計測器が搭載され、保持テーブルに保持された板状物の厚みを計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る厚み計測装置によれば、筒体を板状物に接触させることなく流体を介して板状物に対して超音波を送信し、その反射波を受信して板状物の厚みを計測することができるため、板状物に傷を付けることがない。また、流体によって超音波の伝播が良好となり計測の精度が向上する。更に、触針式のように板状物の上面と板状物を保持するテーブルの上面との2箇所の高さを計測する必要もないため、計測誤差が生じなくなる。
【0012】
また、本発明に係る研削装置には上記厚み計測器が搭載されており、研磨中において板状物に接触することなく正確にその板状物の厚みを計測することができるため、板状物を所望の厚みに仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す厚み計測装置1においては、厚み計測の対象となる板状物2が保持テーブル11において保持される。保持テーブル11の上方には、筒体12が、保持テーブル11に対面する第一の開口部12aが開口した状態で配設されている。筒体12のもう一方の開口部である第二の開口部12bにはバルブ13を介して流体供給部14が連結されている。
【0014】
第二の開口部12b側には超音波を発振する超音波発振部15を備えており、筒体12の内部を通る伝播部16aを介して送波部17と接続されている。送波部17は、筒体12の内部において保持テーブル11に対面する位置に配設されており、送波部17においては、保持テーブル11に保持された板状物2に対し、超音波発振部15から伝播部16aを介して伝播された超音波を送波する。超音波発振部15から送信される超音波としては、例えばパルス超音波がある。
【0015】
送波部17に隣接して、送波部17から送波された超音波の板状物2における反射波を受波する受波部18が配設されている。受波部18は、送波部17と等しい高さに位置している。受波部18は、筒体12の内部を通る伝播部16bを介して第二の開口部12b側に備えた反射波受信部19に接続されており、受波部18において受波した反射波は、伝播部16bを介して反射波受信部19に伝播される。なお、超音波発振部15が反射波受信部19を兼ねる場合がある。また、送波部17が受波部18を兼ねる場合もある。更には、超音波発振部15と送波部17、受波部18と反射波受信部19が一体に構成されていてもよい。
【0016】
超音波発振部15及び反射波受信部19には厚み算出部20が接続されている。厚み算出部20においては、超音波発振部15において発振されて板状物2において反射した反射波が反射波受信部19に到達するまでの時間に基づいて板状物2の厚みを算出する。
【0017】
保持テーブル11に保持された板状物2の厚みを計測する際は、筒体12の第一の開口部12a側が板状物2の上面に接触していない状態で、バルブ13を開いて流体供給部14から筒体12の内部に流体、例えば純水を供給し、第一の開口部12aからその流体を流出させる。そうすると、図2に示すように、板状物2の上面2aと第一の開口部12aとの間に流体膜3が形成される。更に、筒体12の内部においては、流体膜3と連なった状態で、流出した流体により構成される流体柱4が形成される。
【0018】
このようにして流体膜3及び流体柱4が形成された状態で、図3に示すように、図1に示した超音波発振部15において発振した超音波100(例えば周波数は30MHz程度)を送波部17から板状物2に対して発射する。そうすると、板状物2の表面2aにおいて反射する反射波200と板状物2の裏面2bにおいて反射波201とが受波部18において受波され、反射波200と反射波201とが図1に示した伝播部16bを介して反射波受信部19に伝達される。
【0019】
厚み算出部20では、2つの反射波が反射波受信部19に到達する時刻を認識し、その時間差に基づいて、板状物2の厚みを算出することができる。すなわち、超音波発振部15から超音波が送信されてから板状物2の上面2aにおける反射波を反射波受信部19において受信するまでの時間と、超音波発振部15から超音波が送信されてから板状物2の下面2bにおける反射波を反射波受信部19において受信するまでの時間との差を求めることにより、板状物2の厚みを算出することができる。
【0020】
超音波発振部15から送信された超音波100が板状物2の上面2aにおいて反射してその反射波200が反射波受信部19に到達するまでの時間をT1とし、超音波100が板状物2の下面2bにおいて反射してその反射波201が反射波受信部19に到達するまでの時間をT2とし、板状物2の内部における音速をVとすると、板状物2の厚みWは、
W=V×(T1―T2)÷2
の計算式によって求めることができる。(T1―T2)の値は、2つの反射波の到達時刻の差に等しい。
【0021】
また、いわゆる共振法を用いて板状物2の厚みを求めることもできる。この場合は、超音波発振部15における周波数を可変とする。そして、板状物2への超音波の送信を続けながら周波数fを連続的に変え、言い換えれば波長λを連続的に変えると、半波長の整数倍(n倍)と板状物2の厚みWとが等しくなったとき、つまり、
W=n×λ÷2
となったときに、板状物2の内部で超音波が共振する。したがって、連続した共振周波数の間隔(fn+1―f)を計測することにより、
W=V÷{2×(fn+1―f)}
の計算式によって、板状物2の厚みWの値を求めることができる。共振法を用いる場合も、流体膜3及び流体柱4を介して超音波及びその反射波を伝播させることができる。
【0022】
このように、板状物2の厚みを計測する際に筒体12が板状物2に接触することがないため、板状物2が傷付くことがない。また、送波部17及び受波部18と板状物2との間には、流体膜3及び流体柱4によって常に流体が満たされており、超音波が空気中を伝わることはない。超音波は空気中よりも流体中の方が減衰が少なく伝播性が良いため、計測をより正確に行うことができる。流体として純水を用いると、より伝播性が良くなる。
【0023】
図1〜図3に示した厚み計測器1は、例えば図4に示す研削装置5に搭載される。この研削装置5は、板状物の面を研削して所望の厚みに仕上げる装置であり、厚み計測器1を構成する保持テーブル11が移動基台50に対して回転可能に配設されている。移動基台50からは筒体12が突出し、第一の開口部12aが保持テーブル11に向けられている。図4においては図示していないが、移動基台50の下方には、図1に示した流体供給源14、バルブ13、超音波発振部15、反射波受信部19及び厚み算出部20を備えている。
【0024】
研削装置5においては、保持テーブル11に保持された被研削物に研削加工を施す研削手段51と研削手段51を駆動する研削手段駆動部52とを備えている。
【0025】
研削手段駆動部52は、壁部520に垂直方向に配設された一対のガイドレール521と、ガイドレール521と平行に配設されたボールネジ522と、ボールネジ522の一端に連結されたパルスモータ523と、ガイドレール521に摺動可能に係合すると共に内部のナットがボールネジ522に螺合した支持部524とから構成されており、パルスモータ523に駆動されてボールネジ522が回動するのに伴い、支持部524がガイドレール521にガイドされて昇降し、支持部524に支持された研削手段51も昇降する構成となっている。
【0026】
研削手段51は、垂直方向の軸心を有するスピンドル510と、スピンドル510を回転駆動する駆動源511と、スピンドル510の下端においてホイールマウント512を介して固定された研削ホイール513と、研削ホイール513の下面に固着された研削砥石514とから構成され、駆動源511によって駆動されてスピンドル510が回転するのに伴い、研削砥石514が回転する構成となっている。
【0027】
保持テーブル11において板状物2の下面2b側が保持されて上面2aが露出した状態となると、移動基台50が水平方向に移動して研削手段51の直下に位置付けられる。そして、保持テーブル11が回転すると共に、研削砥石514が回転しながら研削手段51が下降して板状物2の上面2aに接触して当該上面2aが研削される。
【0028】
研削中は、研削砥石514のみでなく、板状物2を保持する保持テーブル11も回転するため、研削砥石514が板状物2の上面2aの全面に接触する必要はなく、上面2aには研削砥石514が接触しない部分が常に存在する。したがって、研削中は、その部分において常時厚み計測器1を用いた厚みの計測を行うことができる。そして、厚み計測器1による計測が常に行われ、厚み算出部20(図1参照)において算出した値が所望の値となったときに研削を終了することにより、板状物2が所望の厚みに形成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】厚み計測装置の一例を示す説明図である。
【図2】流体膜及び流体柱を示す略示的断面図である。
【図3】超音波が板状物において反射する様子を示す略示的断面図である。
【図4】研削装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1:厚み計測装置
11:保持テーブル
12:筒体
12a:第一の開口部 12b:第二の開口部
13:バルブ 14:流体供給源
15:超音波発振部 16a、16b:伝播部
17:送波部 18:受波部 19:反射波受信部 20:厚み算出部
2:板状物 3:流体膜 4:流体柱
5:研削装置
50:移動基台
51:研削手段
510:スピンドル 511:駆動源 512:ホイールマウント
513:研削ホイール 514:研削砥石
52:研削手段駆動部
520:壁部 521:ガイドレール 522:ボールネジ
523:パルスモータ 524:支持部
100:超音波 200、201:反射波
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物の厚みを計測する厚み計測器及びこれを搭載した研削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状物を加工して所望の厚みに形成しようとする際には、加工中においてその板状物の厚みを正確に計測する必要がある。例えば、表面に複数の回路が形成された半導体ウェーハを所望の厚みに形成しようとするときは、その厚みを計測しながら裏面を研削し、計測結果が所望の厚みになったときに研削を終了させることとしている(例えば特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−1261号公報
【特許文献2】特開2001−9716号公報
【特許文献3】特開平8−210833号公報
【特許文献4】特開平9−189542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記いずれの文献に記載された発明も、厚み計測用のゲージ等が計測対象物に接触する構成となっているため、計測対象物に傷がつくという問題がある。特に、厚みの計測対象物が半導体ウェーハのように薄く形成されているものである場合は、抗折強度を低下させる原因となる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、厚みの計測対象物に傷を付けることなくその厚みを正確に計測し、計測対象物の抗折強度を低下させないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、板状物の厚みを計測する厚み計測器であって、板状物を保持する保持テーブルと、保持テーブルに保持された板状物の上面に向けて流体を流出させて流体膜を形成し、流体膜を介して板状物の上面に間接的に接触すると共に、内部に流体により構成される流体柱を形成する筒体と、筒体に流体を供給する流体供給部と、超音波を発振する超音波発振部と、超音波発振部において発振した超音波を、流体柱及び流体膜を介して板状物に対して送波する送波部と、板状物に対して送波された超音波の反射波をとらえる受波部と、受波部がとらえた反射波を受信する反射波受信部と、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間を求めて板状物の厚みを算出する厚み算出部とから構成されることを特徴とする。
【0007】
厚み算出部は、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の上面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間と、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間との差を求めて板状物の厚みを算出することが好ましい。超音波発振部においては、パルス超音波を発振することが望ましい。
【0008】
厚み算出部においては、板状物の厚みをWとし、板状物中における音速をVとし、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の上面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間をT1とし、超音波発振部から超音波が送信されてから板状物の下面における反射波を反射波受信部において受信するまでの時間をT2とし、板状物の厚さWをW=V×(T2−T1)÷2の計算式によって求める方法が一例として挙げられる。
【0009】
流体供給部が筒体に供給する流体としては、例えば純水がある。
【0010】
また本発明に係る研削装置は、板状物の面を研削する研削手段を備え、上記の厚み計測器が搭載され、保持テーブルに保持された板状物の厚みを計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る厚み計測装置によれば、筒体を板状物に接触させることなく流体を介して板状物に対して超音波を送信し、その反射波を受信して板状物の厚みを計測することができるため、板状物に傷を付けることがない。また、流体によって超音波の伝播が良好となり計測の精度が向上する。更に、触針式のように板状物の上面と板状物を保持するテーブルの上面との2箇所の高さを計測する必要もないため、計測誤差が生じなくなる。
【0012】
また、本発明に係る研削装置には上記厚み計測器が搭載されており、研磨中において板状物に接触することなく正確にその板状物の厚みを計測することができるため、板状物を所望の厚みに仕上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に示す厚み計測装置1においては、厚み計測の対象となる板状物2が保持テーブル11において保持される。保持テーブル11の上方には、筒体12が、保持テーブル11に対面する第一の開口部12aが開口した状態で配設されている。筒体12のもう一方の開口部である第二の開口部12bにはバルブ13を介して流体供給部14が連結されている。
【0014】
第二の開口部12b側には超音波を発振する超音波発振部15を備えており、筒体12の内部を通る伝播部16aを介して送波部17と接続されている。送波部17は、筒体12の内部において保持テーブル11に対面する位置に配設されており、送波部17においては、保持テーブル11に保持された板状物2に対し、超音波発振部15から伝播部16aを介して伝播された超音波を送波する。超音波発振部15から送信される超音波としては、例えばパルス超音波がある。
【0015】
送波部17に隣接して、送波部17から送波された超音波の板状物2における反射波を受波する受波部18が配設されている。受波部18は、送波部17と等しい高さに位置している。受波部18は、筒体12の内部を通る伝播部16bを介して第二の開口部12b側に備えた反射波受信部19に接続されており、受波部18において受波した反射波は、伝播部16bを介して反射波受信部19に伝播される。なお、超音波発振部15が反射波受信部19を兼ねる場合がある。また、送波部17が受波部18を兼ねる場合もある。更には、超音波発振部15と送波部17、受波部18と反射波受信部19が一体に構成されていてもよい。
【0016】
超音波発振部15及び反射波受信部19には厚み算出部20が接続されている。厚み算出部20においては、超音波発振部15において発振されて板状物2において反射した反射波が反射波受信部19に到達するまでの時間に基づいて板状物2の厚みを算出する。
【0017】
保持テーブル11に保持された板状物2の厚みを計測する際は、筒体12の第一の開口部12a側が板状物2の上面に接触していない状態で、バルブ13を開いて流体供給部14から筒体12の内部に流体、例えば純水を供給し、第一の開口部12aからその流体を流出させる。そうすると、図2に示すように、板状物2の上面2aと第一の開口部12aとの間に流体膜3が形成される。更に、筒体12の内部においては、流体膜3と連なった状態で、流出した流体により構成される流体柱4が形成される。
【0018】
このようにして流体膜3及び流体柱4が形成された状態で、図3に示すように、図1に示した超音波発振部15において発振した超音波100(例えば周波数は30MHz程度)を送波部17から板状物2に対して発射する。そうすると、板状物2の表面2aにおいて反射する反射波200と板状物2の裏面2bにおいて反射波201とが受波部18において受波され、反射波200と反射波201とが図1に示した伝播部16bを介して反射波受信部19に伝達される。
【0019】
厚み算出部20では、2つの反射波が反射波受信部19に到達する時刻を認識し、その時間差に基づいて、板状物2の厚みを算出することができる。すなわち、超音波発振部15から超音波が送信されてから板状物2の上面2aにおける反射波を反射波受信部19において受信するまでの時間と、超音波発振部15から超音波が送信されてから板状物2の下面2bにおける反射波を反射波受信部19において受信するまでの時間との差を求めることにより、板状物2の厚みを算出することができる。
【0020】
超音波発振部15から送信された超音波100が板状物2の上面2aにおいて反射してその反射波200が反射波受信部19に到達するまでの時間をT1とし、超音波100が板状物2の下面2bにおいて反射してその反射波201が反射波受信部19に到達するまでの時間をT2とし、板状物2の内部における音速をVとすると、板状物2の厚みWは、
W=V×(T1―T2)÷2
の計算式によって求めることができる。(T1―T2)の値は、2つの反射波の到達時刻の差に等しい。
【0021】
また、いわゆる共振法を用いて板状物2の厚みを求めることもできる。この場合は、超音波発振部15における周波数を可変とする。そして、板状物2への超音波の送信を続けながら周波数fを連続的に変え、言い換えれば波長λを連続的に変えると、半波長の整数倍(n倍)と板状物2の厚みWとが等しくなったとき、つまり、
W=n×λ÷2
となったときに、板状物2の内部で超音波が共振する。したがって、連続した共振周波数の間隔(fn+1―f)を計測することにより、
W=V÷{2×(fn+1―f)}
の計算式によって、板状物2の厚みWの値を求めることができる。共振法を用いる場合も、流体膜3及び流体柱4を介して超音波及びその反射波を伝播させることができる。
【0022】
このように、板状物2の厚みを計測する際に筒体12が板状物2に接触することがないため、板状物2が傷付くことがない。また、送波部17及び受波部18と板状物2との間には、流体膜3及び流体柱4によって常に流体が満たされており、超音波が空気中を伝わることはない。超音波は空気中よりも流体中の方が減衰が少なく伝播性が良いため、計測をより正確に行うことができる。流体として純水を用いると、より伝播性が良くなる。
【0023】
図1〜図3に示した厚み計測器1は、例えば図4に示す研削装置5に搭載される。この研削装置5は、板状物の面を研削して所望の厚みに仕上げる装置であり、厚み計測器1を構成する保持テーブル11が移動基台50に対して回転可能に配設されている。移動基台50からは筒体12が突出し、第一の開口部12aが保持テーブル11に向けられている。図4においては図示していないが、移動基台50の下方には、図1に示した流体供給源14、バルブ13、超音波発振部15、反射波受信部19及び厚み算出部20を備えている。
【0024】
研削装置5においては、保持テーブル11に保持された被研削物に研削加工を施す研削手段51と研削手段51を駆動する研削手段駆動部52とを備えている。
【0025】
研削手段駆動部52は、壁部520に垂直方向に配設された一対のガイドレール521と、ガイドレール521と平行に配設されたボールネジ522と、ボールネジ522の一端に連結されたパルスモータ523と、ガイドレール521に摺動可能に係合すると共に内部のナットがボールネジ522に螺合した支持部524とから構成されており、パルスモータ523に駆動されてボールネジ522が回動するのに伴い、支持部524がガイドレール521にガイドされて昇降し、支持部524に支持された研削手段51も昇降する構成となっている。
【0026】
研削手段51は、垂直方向の軸心を有するスピンドル510と、スピンドル510を回転駆動する駆動源511と、スピンドル510の下端においてホイールマウント512を介して固定された研削ホイール513と、研削ホイール513の下面に固着された研削砥石514とから構成され、駆動源511によって駆動されてスピンドル510が回転するのに伴い、研削砥石514が回転する構成となっている。
【0027】
保持テーブル11において板状物2の下面2b側が保持されて上面2aが露出した状態となると、移動基台50が水平方向に移動して研削手段51の直下に位置付けられる。そして、保持テーブル11が回転すると共に、研削砥石514が回転しながら研削手段51が下降して板状物2の上面2aに接触して当該上面2aが研削される。
【0028】
研削中は、研削砥石514のみでなく、板状物2を保持する保持テーブル11も回転するため、研削砥石514が板状物2の上面2aの全面に接触する必要はなく、上面2aには研削砥石514が接触しない部分が常に存在する。したがって、研削中は、その部分において常時厚み計測器1を用いた厚みの計測を行うことができる。そして、厚み計測器1による計測が常に行われ、厚み算出部20(図1参照)において算出した値が所望の値となったときに研削を終了することにより、板状物2が所望の厚みに形成される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】厚み計測装置の一例を示す説明図である。
【図2】流体膜及び流体柱を示す略示的断面図である。
【図3】超音波が板状物において反射する様子を示す略示的断面図である。
【図4】研削装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1:厚み計測装置
11:保持テーブル
12:筒体
12a:第一の開口部 12b:第二の開口部
13:バルブ 14:流体供給源
15:超音波発振部 16a、16b:伝播部
17:送波部 18:受波部 19:反射波受信部 20:厚み算出部
2:板状物 3:流体膜 4:流体柱
5:研削装置
50:移動基台
51:研削手段
510:スピンドル 511:駆動源 512:ホイールマウント
513:研削ホイール 514:研削砥石
52:研削手段駆動部
520:壁部 521:ガイドレール 522:ボールネジ
523:パルスモータ 524:支持部
100:超音波 200、201:反射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物の厚みを計測する厚み計測器であって、
板状物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された板状物の上面に向けて流体を流出させて流体膜を形成し、該流体膜を介して該板状物の上面に間接的に接触すると共に、内部に該流体により構成される流体柱を形成する筒体と、
該筒体に流体を供給する流体供給部と、
超音波を発振する超音波発振部と、
該超音波発振部において発振した超音波を、該流体柱及び該流体膜を介して該板状物に対して送波する送波部と、
該板状物に対して送波された超音波の反射波をとらえる受波部と、
該受波部がとらえた反射波を受信する反射波受信部と、
該超音波発振部から超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間を求めて該板状物の厚みを算出する厚み算出部と
から構成される厚み計測器。
【請求項2】
前記厚み計測部は、
前記超音波発振部から超音波が送信されてから前記板状物の上面における反射波を前記反射波受信部において受信するまでの時間と、該超音波発振部から該超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間との差を求めて該板状物の厚みを算出する
請求項1に記載の厚み計測器。
【請求項3】
超音波発振部においてはパルス超音波を発振する
請求項1または2に記載の厚み計測器。
【請求項4】
厚み計測部においては、板状物の厚みをWとし、該板状物中における音速をVとし、前記超音波発振部から超音波が送信されてから該板状物の上面における反射波を前記反射波受信部において受信するまでの時間をT1とし、該超音波発振部から該超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間をT2とし、該板状物の厚さWを
W=V×(T2−T1)÷2
の計算式によって求める
請求項2または3に記載の厚み計測器。
【請求項5】
前記流体供給部が前記筒体に供給する流体は純水である
請求項1、2、3または4に記載の厚み計測器。
【請求項6】
板状物の面を研削する研削手段を備えた研削装置であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の厚み計測器が搭載され、前記保持テーブルに保持された板状物の厚みを計測する
研削装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物の厚みを計測する厚み計測器であって、
板状物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルに保持された板状物の上面に向けて流体を流出させて流体膜を形成し、該流体膜を介して該板状物の上面に間接的に接触すると共に、内部に該流体により構成される流体柱を形成する筒体と、
該筒体に流体を供給する流体供給部と、
超音波を発振する超音波発振部と、
該超音波発振部において発振した超音波を、該流体柱及び該流体膜を介して該板状物に対して送波する送波部と、
該板状物に対して送波された超音波の反射波をとらえる受波部と、
該受波部がとらえた反射波を受信する反射波受信部と、
該超音波発振部から超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間を求めて該板状物の厚みを算出する厚み算出部と
から構成される厚み計測器。
【請求項2】
前記厚み算出部は、
前記超音波発振部から超音波が送信されてから前記板状物の上面における反射波を前記反射波受信部において受信するまでの時間と、該超音波発振部から該超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間との差を求めて該板状物の厚みを算出する
請求項1に記載の厚み計測器。
【請求項3】
超音波発振部においてはパルス超音波を発振する
請求項1または2に記載の厚み計測器。
【請求項4】
前記厚み算出部においては、板状物の厚みをWとし、該板状物中における音速をVとし、前記超音波発振部から超音波が送信されてから該板状物の上面における反射波を前記反射波受信部において受信するまでの時間をT1とし、該超音波発振部から該超音波が送信されてから該板状物の下面における反射波を該反射波受信部において受信するまでの時間をT2とし、該板状物の厚さWを
W=V×(T2−T1)÷2
の計算式によって求める
請求項2または3に記載の厚み計測器。
【請求項5】
前記流体供給部が前記筒体に供給する流体は純水である
請求項1、2、3または4に記載の厚み計測器。
【請求項6】
板状物の面を研削する研削手段を備えた研削装置であって、
請求項1乃至5のいずれかに記載の厚み計測器が搭載され、前記保持テーブルに保持された板状物の厚みを計測する
研削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−38744(P2006−38744A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221615(P2004−221615)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】