説明

双子葉植物の種子及び種子の製造方法

【課題】 焼き付けられた文字,図形等を外部から視認することができず、栽培する際においても、その種子を収容する容器の素材や該容器内に種子と共に充填する充填材の素材が限定されないとともに、種子単独でも贈答品の対象とすることができる新規な種子及びその種子の製造方法を提供する。
【解決手段】 双子葉植物の種子1であって、表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録されてなるとともに、表面は不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤6,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等の被覆材により被覆され、または、不透明又は半透明な水溶性の袋体7に収納されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子及び種子の製造方法に関し、特に、発芽することにより双葉を形成する双子葉植物の種子及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空豆,奈多豆,大豆等の双子葉植物の種子は、発芽した後に表皮内部の実が二枚の子葉(双葉)となるが、こうした双子葉植物の種子に、例えば、「おめでとう。」等の文字を焼き付け、木屑や肥料等と共に容器内に収納されてなるとともに蓋により密封された商品が贈答用として販売されている。こうした商品によれば、上記蓋を開け、容器内に水を与えすることにより、上記種子が発芽し双葉が形成された際には、上記文字を視認することができる。すなわち、送り主から送られた受け取り主が、上記蓋を開け、水を与えることにより双葉が露出した際、この双葉に焼き付けられた文字を受け取り主が視認することによって、上記「おめでとう。」の文字からなる送り主のメッセージが受け取り主に伝えられる商品が販売されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した商品では、内部に収納されている種子そのものを受け取り主が視認すれば、双葉が形成される前に、上記焼き付けられた文字を視認することが可能となってしまい、双葉が形成された時の意外性や感動はなくなり、商品価値そのものが半減されてしまう。したがって、上記商品では、素材として透明な樹脂やガラスを選択することはできず、また、栽培する際に種子と共に容器内に充填される充填材も、透明なガラスや樹脂の粒或いはジェル状の素材を使用することはできず、土,砂,木屑等のように、不透明な素材を使用せざるを得ない。また、上記商品では、通常では上記種子に焼き付けられた文字が視認できない状態とされていることに価値を有しているものであるから、種子単独では、贈答品としての価値を有しない。
【0004】
そこで、本発明は、上述した従来の種子又はこうした種子が収納された上記商品が有する課題を解決するために提案されたものであって、記録された文字,図形等を外部から視認することができず、栽培する際においても、その種子を収容する容器の素材や該容器内に種子と共に充填する充填材の素材が限定されないとともに、種子単独でも贈答品の対象とすることができる新規な種子及びその種子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、双子葉植物の種子であって、表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録されてなるとともに、表面は不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等の被覆材により被覆され、または、不透明又は半透明な水溶性の袋体に収納されてなることを特徴とするものである。
【0006】
上記第1の発明に係る種子は、双子葉植物の種子である必要があり、この双子葉植物の中でもマメ科に属する植物の種子であることが好ましい。また、こうしたマメ科の植物の種子の中でも、小豆のような小さな種子よりも、例えば空豆,奈多豆等のように比較的大きな種子であることが望ましい。また、こうした種子に焼き付けられるものは、文字,図形,記号或いはこれらの組合せであり、従来の種子のように、メッセージ性を有する文字等の他に、複数の種子を識別する目的で焼き付けられた記号や図形であっても良い。また、本発明に係る種子は、表面が被覆材により被覆されている必要がある。この被覆材は、例えば、不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等を挙げることができるが、こうした素材に限定されることはなく、少なくとも表面を被覆し、上記表皮(及び実)に記録された文字や図形等が外部から視認できなくなるものであれば良い。そして、上記種子に被覆材としてのコーティング剤を塗布する場合において、このコーティング剤は、水溶性であると非水溶性であるとを問わず、水溶性コーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC),メチルセルロース(MC),ヒドロキシエチルセルロース(HEC)等のセルロース系コーティング剤、デキストラン,プルラン,アルギン酸ナトリウム,寒天などの多糖類系コーティング剤,ポリビニルアルコール(PVA)などのポリビニル系コーティング剤,ゼラチンなどのペプチド系コーティング剤が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができ、顔料が添加されてなるものであっても良い。また、上記水溶性コーティング剤により種子を被覆する方法としては、例えば、該水溶性コーティング剤を直接塗布することにより薄い膜を形成させるフィルムコート法,種子にある程度の厚みのあるバインダーで覆い、全体を球状にした後に水溶性コーティング剤を塗布するエンクラステーション法,ミニペレット法,スタンダードペレット法等を採用することができる。また、非水溶性コーティング剤としては、油性塗料を用いることができる。
【0007】
また、上記被覆材は、上記水溶性又は非水溶性コーティング剤ばかりではなく、パウダー等の粉体や粒状体等の粉粒体が種子に付着又は接着されているものであっても良いし、さらには、寒天,ゼラチン又はペクチン等の凝固剤により固めたゼリー状凝固材を被覆材として使用しても良く、さらには、鉱物等の無機物や樹脂等の有機物からなる粘土等を被覆材として用いても良い。但し、これらの被覆材は、表皮の内部に形成された実が、発芽する際に悪影響を与えることのないように、その塗布厚又は膜圧を考慮したり、或いは、上述した粉粒体や粘土等を付着させたりする場合には、バインダーは水溶性の素材を使用することが望ましい。
【0008】
また、この第1の発明では、種子が水溶性の袋体に収納されているものであっても良い。この水溶性の袋体は、上記水溶性コーティング剤を素材とした袋体や澱粉を素材としたオブラートを袋状に成形したものを使用することができる。
【0009】
また、上記種子の表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合を記録する方法は、例えば、文字や記号等に対応した突条又は凸部を有する焼印を加熱し、種子の表面に押圧する方法や、非水溶性の塗料により記録する方法、或いは、レーザ光を種子の表面に照射する(焼き付ける)方法(請求項3記載の発明)を用いることができる。
【0010】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、土,砂,小石若しくは樹脂製又はガラス製粒体等の充填材と共に、容器内に収納されてなることを特徴とするものである。
【0011】
この第2の発明では、上記第1の発明を構成する種子が、充填材とともに容器内に収納されてなるものであり、この充填材とは、土,砂,小石若しくは樹脂製又はガラス製粒体或いはゲル状とされた寒天又は澱粉等のように、植物が生長する土壌として機能し得るものであれば良い。また、上記容器は、水密性を有するものであれば良く、その素材は、アルミニウム,スチール等の金属以外に、ガラス,陶器等のセラミック、或いは樹脂であっても良い。また、こうした容器は、蓋により密閉されたものであっても良い。また、こうした容器内には、上記充填材以外にも植物の成長を促進する肥料や病害虫から守る薬品が充填されているものであっても良い。
【0012】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、種子の製造方法に係るものであって、双子葉植物の種子の表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合を記録する工程と、上記文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録された種子の表面に、不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等の被覆材を被覆し、または該種子を水溶性の袋体に収納する工程と、を含んでなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明(請求項1記載の発明)や第4の発明(請求項4記載の発明)により製造された種子では、種子には、文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録されてなるとともに、表面は被覆材により被覆され、または、不透明又は半透明な水溶性の袋体に収納されてなることから、記録された文字,図形等を外部から視認することができない。したがって、こうした種子を栽培する際においても、その種子を収容する容器の素材や該容器内に種子と共に充填する充填材の素材が限定されず、透明な素材を用いることができる。さらに、この第1の発明によれば、種子単独でも贈答品の対象とすることができる。
【0014】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)によれば、上記第1の発明に係る種子以外に、上記充填材が容器に充填されていることから、栽培者は、単に水を与えるだけで種子から発芽させることができ、特別な容器や土壌等を別個に用意する必要がなく、極めて簡単に育てることができる。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)によれば、種子の表面に記録する文字や図形等に応じてその都度焼印などを作成する必要性はなく、任意の文字や図形等を焼き付けることができ、その大きさも変更することができることから、極めて簡単に少量多品種の種子を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る種子の製造方法及びこの製造方法により製造された種子について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
この実施の形態に係る種子の製造方法においては、先ず、図1に示すように、種子1にレーザマーキング装置2を使用して、文字や記号を該種子1に焼き付ける。このレーザマーキング装置2は、レーザ光を発振する図示しない発振手段を備えた装置本体3と、この装置本体3から出力されたレーザ光Lを種子1の表面に焦点を結ぶように取り付けられたレンズ4とを備えている。なお、上記装置本体3には、上記種子1の表面に文字,記号,図形等のデータを記憶する図示しない記憶装置や、レーザ光の出力を制御する制御装置、或いは、上記文字,記号,図形等の大きさや複数の文字等の間隔等を変更するデータ入力装置等を備えている。なお、こうしたレーザマーキング装置2による種子1への焼付け作業は、例えば、空豆や大豆等のように、種子1の種類によっては、該種子1の表面のみならず表皮が形成されているものも存在することから、こうした表皮が存在する種子1では、表皮の内側に形成された実(発芽した際に双葉となる部位)にも、上記文字,記号等を焼き付ける。こうした作業により、図2に示すように、種子1の表面に、例えば、「Many Thanks」なる文字と「!」なる記号とが焼き付けられる。
【0018】
そして、上述した種子1への文字等の焼付け作業が終了すると、次いで、図3に示すように、この種子1の表面に水溶性コーティング剤6をコーティングする。この水溶性コーティング剤6は、寒天などの多糖類系コーティング剤であり、顔料が添加されている。なお、こうした水溶性コーティング剤の塗布方法は、液状とされたコーティング剤に、上記種子1をディッピング(浸漬)し、その後上昇させ乾燥させることにより行う。こうした水溶性コーティング剤6のコーティングにより、外部から上記「Many Thanks!」なる文字等が視認不能となる。なお、本発明は、こうした水溶性コーティング剤6によるコーティングによるものに限定されることなく、図4に示すように、オブラートにより袋状に成形された袋体7に収納したものであっても良い。
【0019】
なお、こうした種子1の栽培方法に付いて簡単に説明すると、例えば、図5に示すように、容器10内に充填材11と共に充填し、水を与える。こうした栽培環境を与えることにより、上記種子1にコーティングされた水溶性コーティング剤6は溶解するとともに、上記容器10内に収容された種子1は、根1a及び茎1bがそれぞれ形成され、この茎1bの成長により、それまで充填材11内に埋設されていた種子1は、徐々に青みを帯びながら、上昇し該充填材11の表面よりもさらに上昇し、図6に示すように、子葉(双葉)1cとして、外部に露出する。そして、このように外部に露出した子葉(双葉)1cには、上記「Many Thanks!」なる文字等を視認できる状態となる。すなわち、こうした文字等5が視認できない状態で種子1を入手した受取人は、上記栽培方法により双葉を見た際に、初めて上記「Many Thanks!」なる文字等5を認識することができ、その意外性を感ずる。
【0020】
なお、上記種子1は、上述したように、種子1単体で(或いは、上記袋体7に収納した状態で)販売することもできるが、図7に示すように、蓋部20aにより密封された密閉缶20内に、図示しない充填材とともに密閉した状態で販売することも可能である。この密閉缶20の内部には、上記種子1が木屑や肥料等の充填材と共に充填されてなるものであり、上記蓋部20aには、該蓋部20aを開放するためのプルトップ20bが設けられている。したがって、上記プルトップ20bを操作し蓋部20aを取り外すことにより、密閉缶20の上部は円形状の開口が形成され、内部に水を供給することにより、図6に示すものと同じように、双葉が上昇すると、該双葉に焼き付けられた上記「Many Thanks!」なる文字等5を視認することができるようになる。
【0021】
このように、上述した種子1では、上記文字等5(からなるメッセージ)は、水溶性コーティング剤6によりコーティングされ、又は水溶性の袋体7により収納されていることから、外部から視認することができないので、贈答品として、種子1単体を受け取り主に贈ることもでき、また、種子1を栽培する容器10や、該種子1を収納した容器(上記密閉缶20)を、ガラスや樹脂等の透明な素材により成形されたものを使用することができる。また、こうした容器10等に充填される充填材も、土や砂或いは木屑等の不透明な素材ばかりではなく、透明なガラス玉や樹脂、或いは寒天等の透明なゲル状の素材からなるものを使用することも可能となる。
【0022】
なお、上記実施の形態に係る種子の製造方法では、種子1の表面に文字等5を焼き付ける方法として、レーザマーキング装置3を用いたが、こうした装置3によることなく、例えば、所定の文字等5を形成する図示しない凸部が形成された焼印を加熱し、種子1の表面に押し付ける方法であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】レーザマーキング装置により種子に文字等を記録する(焼き付ける)工程を模式的に示す模式図である。
【図2】図1に示す方法により、文字等が記録された(焼き付けられた)種子を示す平面図である。
【図3】図2に示す種子に水溶性コーティング剤がコーティングされた後の状態を示す断面図である。
【図4】図2に示す種子を袋体に収納した状態を示す正面図である。
【図5】容器内に図2に示す種子と充填材とを収容した状態を示す側断面図である。
【図6】図5に示す状態から双葉(子葉)が上昇した状態を示す側断面図である。
【図7】図2に示す種子を密閉缶内に収納した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 種子
2 レーザマーキング装置
5 文字,記号等
6 水溶性コーティング剤
7 袋体
10 容器
11 充填材
20 密閉缶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
双子葉植物の種子であって、表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録されてなるとともに、表面は不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等の被覆材により被覆され、または、不透明又は半透明な水溶性の袋体に収納されてなることを特徴とする種子。
【請求項2】
土,砂,小石若しくは樹脂製又はガラス製粒体等の充填材と共に、容器内に収納されてなることを特徴とする請求項1記載の種子。
【請求項3】
前記文字,図形,記号若しくはこれらの結合は、レーザ光により焼き付けられてなることを特徴とする請求項1記載の種子。
【請求項4】
双子葉植物の種子の表面側から表皮及び該表皮内部の実に、文字,図形,記号若しくはこれらの結合を記録する工程と、
上記文字,図形,記号若しくはこれらの結合が記録された種子の表面に、不透明又は半透明の水溶性又は非水溶性コーティング剤,粉粒体,ゼリー状凝固材又は粘土等の被覆材を被覆し、または該種子を水溶性の袋体に収納する工程と、
を含んでなることを特徴とする種子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−223274(P2006−223274A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51229(P2005−51229)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(505022976)株式会社コスモテック (4)
【Fターム(参考)】