説明

双方向履物

【課題】 甲被体をぐらつきにくくし、履きやすさの向上を図る。
【解決手段】 足が載置される基板1と、基板1の長手方向5中間であって基板1の両側部6に架け渡され使用時に足の甲を被う甲被体10とを備え、甲被体10を基板1の長手方向5に直交する巾方向7を軸線として傾動可能になるようにその両端部11を基板1に対して取り付けるとともに、甲被体10の傾動時に甲被体10をガイドするガイド手段20を設け、ガイド手段20を、甲被体10に設けられ甲被体10と同動する被ガイド部21と、被ガイド部21を移動可能にガイドするガイド部22とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッパやサンダル等の履物において、足が載置される基板の長手方向の一方側及び他方側の双方向どちら側からでも履くことのできる双方向履物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の双方向履物としては、例えば、特許文献1(実開平7−5402号公報)に掲載されたものが知られている。図17に示すように、この双方向履物Saは、足が載置される基板100と、基板100の長手方向中間であって基板100の両側部101に架け渡され使用時に足の甲を被う甲被体102とを備えて構成されている。この甲被体102は、基板100の長手方向に直交する巾方向を軸線として傾動可能になるように、その両端部103が巾方向に沿う軸線を有した金属製のピン104を介して基板100の側部101に取り付けられている。
【0003】
この双方向履物Saを使用するときは、基板100の長手方向の一方側または他方側から、足を基板100と甲被体102との間に形成される空間に挿通して、足を基板100に載置させる。足を載置させると、甲被体102は、挿通された足の甲によって押され、足が挿通された側とは反対側にピン104を傾動軸として傾動する。そのため、この双方向履物Saは、基板100の長手方向の一方側及び他方側のどちら側から履いても甲被体102が上記のように傾動するので、例えば、病院やホテル等、大勢の人が出入りする場所において、履物Saを脱いだ時に、次に使用する人が履き易いように履物Saの向きを変える必要がなく、大変便利になっている。
【0004】
【特許文献1】実開平7−5402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この従来の双方向履物Saにおいては、足を基板100と甲被体102との間に形成される空間に挿通して甲被体102を傾動させる際、甲被体102が左右に振れる等してぐらつきやすく、履きにくいことがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、甲被体をぐらつきにくくし、履きやすさの向上を図った双方向履物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、本発明の双方向履物は、足が載置される基板と、該基板の長手方向中間であって該基板の両側部に架け渡され使用時に足の甲を被う甲被体とを備え、該甲被体を上記基板の長手方向に直交する巾方向を軸線として傾動可能になるようにその両端部を上記基板に対して取り付けた双方向履物において、上記甲被体の傾動時に該甲被体をガイドするガイド手段を設けた構成としている。
【0008】
これにより、この双方向履物を履くときは、基板の長手方向の一方側または他方側から、足を基板と甲被体との間に形成される空間に挿通して、足を基板に載置させる。足を基板に載置させると、甲被体は、挿通された足の甲によって押され、足が挿通された側とは反対側に巾方向を軸線として傾動する。このとき、甲被体は、ガイド手段によってガイドされながら傾動するので、左右に振れる等してぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。即ち、基板の長手方向の一方側及び他方側のどちら側から履いても、ガイド手段によって、甲被体はガイドされるので、履きやすさが向上させられる。
【0009】
そして、必要に応じ、上記ガイド手段を、上記甲被体に設けられ該甲被体と同動する被ガイド部と、該被ガイド部を移動可能にガイドするガイド部とを備えて構成している。これにより、被ガイド部はガイド部にガイドされ、この被ガイド部が甲被体と同動するので、甲被体がガイド部にガイドされるようになり、そのため、甲被体が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができる。
【0010】
また、必要に応じ、上記ガイド手段を、上記基板の両側部に夫々設けた構成としている。これにより、ガイド手段を基板の両側部に設けたので、より一層甲被体が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、そのため、甲被体のぐらつきが確実に抑制される。
【0011】
更に、必要に応じ、上記被ガイド部を、上記甲被体の端部側に設けられたピンで構成し、上記ガイド部を、下端が上記基板の側部に固着されるとともに上記甲被体の軸心を中心とする円弧状に形成され上記ピンが挿通される開口を有したシート状部材で構成している。これにより、甲被体が傾動する際、ピンがガイド部としてのシート状部材に形成された開口に沿って甲被体の軸心を中心とする円弧状に移動するようになるので、甲被体はその軸心を中心として傾動するようになる。このとき、ガイド部としてのシート状部材は、基板に固着されているので、甲被体が確実に基板に対してその軸心を中心として基板の長手方向に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体のぐらつきが抑制される。また、甲被体が左右に振れようとしても、甲被体がシート状部材に抑えられるようになるので、これによっても甲被体がぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。
【0012】
更にまた、必要に応じ、上記被ガイド部を索体で構成し、該索体の一端部を上記甲被体の上記長手方向一方端に固着し、他端部を上記甲被体の上記長手方向他方端に固着するとともに、中間部を上記基板の側部に沿わせて配設し、上記ガイド部を、上記基板の側部に設けられ上記索体が挿通される挿通孔を備えて構成している。これにより、甲被体が傾動する際、甲被体は、甲被体の長手方向一方端または長手方向他方端のいずれか一方が基板側に向かって下方に移動し、いずれか他方が上方に移動するとともに、索体も甲被体の傾動に追従して移動する。このとき、索体は、ガイド部の挿通孔に沿って移動するので、甲被体が確実に基板に対してその軸心を中心として基板の長手方向に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体のぐらつきが抑制される。また、甲被体が左右に振れようとしても、索体によって引っ張られることになるので、甲被体がぐらつく事態が確実に抑制され、円滑に傾動させられる。
【0013】
そして、また、必要に応じ、上記ガイド部を、上記甲被体の端部を挟んで設けられた一対のリング状部材の組で構成している。これにより、ガイド部を、挿通孔を形成するための必要最小限の部材で構成することができるので、ガイド部を筒状の管部材で構成した場合と比較して、基板に設けられる部材を極力少なくすることができ、そのため、履き心地が向上される。
【0014】
また、必要に応じ、上記被ガイド部を、上記甲被体の端部側に設けられ円弧状に形成された筒状部材で構成し、上記ガイド部を上記筒状部材に移動可能に挿通される索体で構成し、該索体の一端部及び他端部を上記甲被体の端部を挟んで上記基板に夫々固着した構成としている。これにより、ガイド部としての索体は、被ガイド部としての筒状部材の内部に挿通されて円弧状に形成されており、甲被体が傾動する際、筒状部材が索体に沿って甲被体の軸心を中心とする円弧状に移動するようになるので、甲被体はその軸心を中心として傾動するようになる。そのため、甲被体が確実に基板に対してその軸心を中心として基板の長手方向に沿って傾動するようになるので、甲被体が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体のぐらつきが抑制される。また、甲被体が左右に振れようとしても、索体によって引っ張られることになるので、甲被体がぐらつく事態が確実に抑制され、円滑に傾動させられる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記甲被体の端部から立ち上がる立ち上がり縁部を、傾動端で上記基板に当接する傾斜面に形成した構成としている。これにより、甲被体が傾動した際、立ち上がり縁部が基板に当接するので、基板に対する支持が安定し、使用時に歩きやすくなる。また、甲被体が傾動したときの外観が、一般的なスリッパやサンダル等の履物と略同じに見えるようになる。
【0016】
更にまた、必要に応じ、上記甲被体を中立位置に付勢する付勢手段を設けた構成としている。これにより、本双方向履物を脱いだとき、付勢手段によって甲被体が中立位置に戻るので、非使用時には常に甲被体が中立位置に位置するようになり、そのため、基板と甲被体との間に形成される空間を大きくすることができるので、使用する際に足をこの空間に挿通させやすくなり、履きやすさを向上させることができる。
【0017】
更にまた、必要に応じ、上記甲被体を、弾性変形可能な部材で形成し、非使用時に中立位置に位置できるように、その端部を上記基板に取り付けた構成としている。これにより、足を基板と甲被体との間に形成される空間に挿通させると、甲被体が足の甲によって押されて端部が撓み、この端部の撓みにより甲被体が傾動する。また、足を基板と甲被体との間に形成される空間から抜くと、足の甲による押圧がなくなって端部が撓み、この端部の撓みによって甲被体は足が挿通されていた側に傾動し、中立位置に戻る。そのため、使用時に甲被体の端部の撓みによって甲被体を傾動させ、非使用時にその弾性力により中立位置に戻るので、基板と甲被体との間に形成される空間を大きくすることができ、使用する際に足をこの空間に挿通させやすくなり、より一層履きやすさを向上させることができる。
【0018】
また、必要に応じ、上記甲被体を、その端部を上記巾方向に沿う軸線を有した回動軸を介して上記基板の側部に回動可能に取り付けた構成としている。これにより、甲被体は回動軸を中心に回動して傾動するようになるので、より一層傾動を円滑に行なわせることができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の双方向履物によれば、基板の長手方向の一方側または他方側から、足を基板と甲被体との間に形成される空間に挿通して、足を基板に載置させると、甲被体は、挿通された足の甲によって押され、足が挿通された側とは反対側に巾方向を軸線として傾動する。このとき、甲被体は、ガイド手段によってガイドされながら傾動するので、左右に振れる等してぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。即ち、基板の長手方向の一方側及び他方側のどちら側から履いても、ガイド手段によって、甲被体はガイドされるので、履きやすさが向上させられる。
【0020】
また、甲被体を中立位置に付勢する付勢手段を設けた場合には、本双方向履物を脱いだとき、付勢手段によって甲被体が中立位置に戻るので、非使用時には常に甲被体が中立位置に位置するようになり、そのため、基板と甲被体との間に形成される空間を大きくすることができるので、使用する際に足をこの空間に挿通させやすくなり、より一層履きやすさを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態に係る双方向履物を説明する。
図1乃至図8には、本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物Sを示している。本双方向履物Sの基本的構成は、基板1と、甲被体10と、ガイド手段20とを備えてなる。
【0022】
基板1は、上面2に足が載置される板状の載置部材3と、載置部材3の下面に貼設され床面に接する接地部材4とを備えて構成されている。この接地部材4は、載置部材3と平面視及び底面視が同形に形成されている。
【0023】
甲被体10は、基板1の長手方向5中間であって基板1の両側部6に架け渡され使用時に足の甲を被うものであり、基板1の長手方向5に直交する巾方向7を軸線として傾動可能になるように、その両端部11が基板1に対して取り付けられている。第一の実施の形態では、この甲被体10は、その両端部11が基板1の両側部6に巾方向7に沿う軸線を有した回動軸12を介して取り付けられ、この回動軸12を中心に回動可能に取り付けられている。この回動軸12は、甲被体10を中立位置Nに付勢する付勢手段を構成するもので、弾性のゴムで構成され、一端部12aが基板1に埋設されて固着され、他端部12bが甲被体10の端部11に固着されている。また、この甲被体10は、端部11から立ち上がる立ち上がり縁部13が、傾動端14で基板1に当接する傾斜面に形成されている。
【0024】
ガイド手段20は、甲被体10の傾動時に甲被体10をガイドするもので、甲被体10に設けられ甲被体10と同動する被ガイド部21と、被ガイド部21を移動可能にガイドするガイド部22とを備えて構成されている。このガイド手段20は、基板1の両側部6に夫々設けられている。
【0025】
被ガイド部21は、第一の実施の形態では、甲被体10の端部11側に設けられたピン30で構成され、甲被体10の長手方向一方端15及び長手方向他方端16に一対設けられている。このピン30は、頭部33aを有したピン本体33と、頭部33aと同形に形成され、ピン本体33が挿通される孔34aが形成された止め具34とを備えて構成されている。甲被体10が傾動端14で基板1に当接したとき、その一部が基板1の載置部材3の上面2に当接するように設けられている。
【0026】
ガイド部22は、第一の実施の形態では、下端23が基板1の側部6に固着されるとともに甲被体10の軸心を中心とする円弧状に形成されピン30が挿通される開口24を有したシート状部材25で構成されている。このシート状部材25は、半円状に形成され、直線側が下端23として基板1の側部6に固着されている。また、このシート状部材25は、甲被体10と基板1の側部6との間に設けられ、回動軸12によって甲被体10とともに基板1の側部6に取り付けられている。更に、このシート状部材25に形成された開口24は、甲被体10が傾動して、一対のピン30のうち一方のピン30aの一部が基板1の載置部材3の上面2に当接したとき、他方のピン30bが係止されるように、円弧の途中が切断された形状に形成されている。
また、ピン本体33は甲被体10側から開口24に挿通され、頭部33aの反対側から止め具34の孔34aがピン本体33に挿通されて、ピン本体33が甲被体10に設けられている。
【0027】
従って、この第一の実施の形態に係る双方向履物Sを使用すると、以下のように作用する。この双方向履物Sは、常時は、甲被体10が中立位置Nに位置している。
【0028】
甲被体10が中立位置Nに位置している状態で、基板1の長手方向5の一方側または他方側から、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間に挿通して、足を基板1に載置させると、図8に示すように、甲被体10は、挿通された足の甲によって押され(足は図示せず)、足が挿通された側とは反対側に回動軸12を中心として回動して傾動する。このとき、回動軸12は弾性のゴムで形成されているので、このゴムが捻られるようになる。また、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動する。詳しくは、甲被体10が足の甲によって押されると、甲被体10に設けられたピン30がシート状部材25に形成された開口24に沿って甲被体10の軸心を中心とする円弧状に移動し、甲被体10がその軸心を中心として傾動する。ガイド部22としてのシート状部材25は、基板1に固着されているので、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体10が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体10が左右に振れる等してぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。即ち、甲被体10がガイド部22にガイドされるようになるので、甲被体10が中立位置Nから傾動する際の往路軌道を略一定にすることができ、履きやすさを向上させることができる。また、甲被体10が左右に振れようとしても、甲被体10がシート状部材25に抑えられるようになるので、これによっても甲被体10がぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。
【0029】
また、この双方向履物Sを履いて歩行すると、甲被体10は、足の甲の動きに合わせて、基板1の一方側及び他方側に軸心を中心として傾動するが、甲被体10は立ち上がり縁部13が傾動端14で基板1に当接する傾斜面に形成されているので、甲被体10が傾動した際、立ち上がり縁部13が基板1に当接するようになり、そのため、基板1に対する支持が安定し、使用時に歩きやすくなる。更に、傾動端14が基板1の載置部材3に当接すると、ピン30も基板1の載置部材3に当接するので、この点でも、基板1に対する支持が安定し、使用時に歩きやすくなる。更にまた、この双方向履物Sの使用時の外観は、一般的なスリッパやサンダル等の履物と略同じに見えるようになる。
【0030】
そして、この双方向履物Sを脱ごうとして、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間から抜くと、足の甲による甲被体10への押圧力がなくなるので、捻られていた回動軸12が元に戻ろうとする。この回動軸12の付勢力によって、甲被体10が、足が挿通されていた側に向かって回動軸12を中心として回動して傾動し、中立位置Nに戻る。このときも、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動するので、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体10が傾動した位置から中立位置Nに戻る際の復路軌道を略一定にすることができるので、確実に甲被体10が中立位置Nに戻るようになるとともに、甲被体10が左右に振れる等してぐらつく事態が抑制されるので円滑に傾動させることができる。また、甲被体10が左右に振れようとしても、甲被体10がシート状部材25に抑えられるようになるので、これによっても甲被体10がぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させることができる。この場合、本双方向履物Sを脱ぐと、付勢手段によって甲被体10が中立位置Nに戻るので、非使用時には常に甲被体10が中立位置Nに位置するようになり、そのため、基板1と甲被体10との間に形成される空間を大きくすることができるので、使用する際に足をこの空間に挿通させやすくなり、履きやすさを向上させることができる。
【0031】
即ち、ガイド手段20によって、甲被体10は、往路経路と復路軌道とが常に基板1の長手方向5に沿って一定の軌道になるようにガイドされるので、本双方向履物Sを履くときに履きやすく、脱いだときに確実に甲被体10が中立位置Nに戻って、次に履くときに基板1の長手方向5の一方側及び他方側のどちら側から履いても履きやすくなる。
【0032】
図9乃至図12には、本発明の第二の実施の形態に係る双方向履物Sを示している。本双方向履物Sの基本的構成は、基板1と、甲被体10と、ガイド手段20とを備えてなる。
【0033】
基板1は、本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物Sと同様に構成された載置部材3と接地部材4とを備えて構成され、載置部材3の上面2に、長手方向5の側部6に沿って所定長さの切り込み部8が形成されている。
【0034】
甲被体10は、第二の実施の形態では、弾性変形可能な部材で形成され、非使用時に中立位置Nに位置できるように、その端部11が基板1に取り付けられている。詳しくは、甲被体10の両端部11は、基板1の切り込み部8から載置部材3内に埋設され、この載置部材3内で、例えば、接着剤等で基板1に取り付けられている。その他の構成は、第一の実施の形態と同様である。
【0035】
ガイド手段20は、本発明の第一の実施の形態と同様に、被ガイド部21とガイド部22とを備えて構成され、基板1の両側部6に夫々設けられている。
【0036】
被ガイド部21は、第二の実施の形態では、索体31で構成されている。この索体31は、一端部31aが甲被体10の長手方向一方端15に固着され、他端部31bが甲被体10の長手方向他方端16に固着されるとともに、中間部31cが基板1の載置部材3の上面2にその側部6に沿って配設されている。
【0037】
ガイド部22は、第二の実施の形態では、基板1の側部6に設けられ索体31が挿通される挿通孔26を備えた一対のリング状部材27の組で構成されている。この一対のリング状部材27は、甲被体10の端部11を挟んで、基板1の載置部材3の上面2に固着されている。
【0038】
従って、この第二の実施の形態に係る双方向履物Sを使用すると、以下のように作用する。この双方向履物Sは、常時は、中立位置Nに位置している。
【0039】
甲被体10が中立位置Nに位置している状態で、基板1の長手方向5の一方側または他方側から、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間に挿通して、足を基板1に載置させると、甲被体10は、挿通された足の甲によって押されて端部11が撓み、この端部11の撓みにより甲被体10は足が挿通された側とは反対側に巾方向7を軸線として傾動する。このとき、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動する。
【0040】
詳しくは、甲被体10が足の甲によって押されると、甲被体10の端部11が撓み、甲被体10の長手方向一方端15または長手方向他方端16のいずれか一方(足が挿通された側とは反対側)が基板1側に向かって下方に移動し、いずれか他方(足が挿通された側)が上方に移動するとともに、索体31も甲被体10の傾動に追従して移動する。このとき、索体31はリング状部材27の挿通孔26に沿って移動するので、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体10が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体10が左右に振れる等してぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。即ち、甲被体10がガイド部22にガイドされるようになるので、甲被体10が中立位置Nから傾動する際の往路軌道を略一定にすることができ、履きやすさを向上させることができる。また、甲被体10が左右に振れようとしても、索体31によって引っ張られることになるので、甲被体10がぐらつく事態が確実に抑制され、円滑に傾動させられる。
【0041】
そして、この双方向履物Sを脱ごうとして、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間から抜くと、足の甲による押圧がなくなって甲被体10の端部11が撓み、この端部11の撓みによって甲被体10は足が挿通されていた側に向かって巾方向7を軸線として傾動し、中立位置Nに戻る。このときも、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動するので、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体10が傾動した位置から中立位置Nに戻る際の復路軌道を略一定にすることができるので、確実に甲被体10が中立位置Nに戻るようになる。そのため、使用時に甲被体10の端部11の撓みによって甲被体10を傾動させ、非使用時にその弾性力により中立位置Nに戻るので、基板1と甲被体10との間に形成される空間を大きくすることができ、使用する際に足をこの空間に挿通させやすくなり、より一層履きやすさを向上させることができる。
【0042】
また、この第二の実施の形態においては、ガイド部22を一対のリング状部材27で構成しているので、挿通孔26を形成するための必要最小限の部材で構成することができ、ガイド部22を筒状の管部材で構成した場合と比較して、基板1に設けられる部材を極力少なくすることができ、そのため、履き心地を向上させることができる。更に、端部11を基板1に埋設しているので、足を基板1に載置させた際、足に端部11が接触せず、この点でも、履き心地を向上させることができる。
その他の作用,効果は、第一の実施の形態と同様である。
【0043】
図13乃至図16には、本発明の第三の実施の形態に係る双方向履物Sを示している。本双方向履物Sの基本的構成は、基板1と、甲被体10と、ガイド手段20とを備えてなる。
基板1及び甲被体10は、第二の実施の形態と同様に構成されている。
【0044】
ガイド手段20は、本発明の第一及び第二の実施の形態と同様に、被ガイド部21とガイド部22とを備えて構成され、基板1の両側部6に夫々設けられている。
【0045】
被ガイド部21は、第三の実施の形態では、甲被体10の端部11側に設けられ円弧状に形成された筒状部材32で構成されている。
【0046】
ガイド部22は、第三の実施の形態では、筒状部材32に移動可能に挿通される索体28で構成されている。この索体28は、その一端部28a及び他端部28bが、甲被体10の端部11を挟んで基板1の載置部材3の上面2に夫々固着されている。
【0047】
従って、この第三の実施の形態に係る双方向履物Sを使用すると、以下のように作用する。この双方向履物Sは、常時は、中立位置Nに位置している。また、ガイド部22としての索体28は、被ガイド部21としての筒状部材32の内部に挿通されて円弧状に形成されている。
【0048】
甲被体10が中立位置Nに位置している状態で、基板1の長手方向5の一方側または他方側から、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間に挿通して、足を基板1に載置させると、甲被体10は、挿通された足の甲によって押されて端部11が撓み、この端部11の撓みにより甲被体10は足が挿通された側とは反対側に巾方向7を軸線として傾動する。このとき、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動する。
【0049】
詳しくは、甲被体10が足の甲によって押されると、甲被体10の端部11が撓み、筒状部材32が索体28に沿って甲被体10の軸心を中心とする円弧状に移動して、甲被体10がその軸心を中心として足が挿通された側とは反対側に傾動するようになる。索体28は、基板1の載置部材3の上面2に固着されているので、確実に筒状部材32を円弧状に移動させることができる。そのため、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになるので、甲被体10が傾動する際の移動軌道を略一定にすることができ、甲被体10が左右に振れる等してぐらつく事態が抑制され、円滑に傾動させられる。即ち、甲被体10がガイド部22にガイドされるようになるので、甲被体10が中立位置Nから傾動する際の往路軌道を略一定にすることができ、履きやすさを向上させることができる。また、甲被体10が左右に振れようとしても、索体28によって引っ張られることになるので、甲被体10がぐらつく事態が確実に抑制され、円滑に傾動させられる。
【0050】
そして、この双方向履物Sを脱ごうとして、足を基板1と甲被体10との間に形成される空間から抜くと、足の甲による押圧がなくなって甲被体10の端部11が撓み、この端部11の撓みによって甲被体10は足が挿通されていた側に向かって巾方向7を軸線として傾動し、中立位置Nに戻る。このときも、甲被体10は、ガイド手段20によってガイドされながら傾動するので、甲被体10が確実に基板1に対してその軸心を中心として基板1の長手方向5に沿って傾動するようになり、そのため、甲被体10が傾動した位置から中立位置Nに戻る際の復路軌道を常に一定にすることができるので、確実に甲被体10が中立位置Nに戻るようになる。
その他の作用,効果は、第二の実施の形態と同様である。
【0051】
尚、上記第一の実施の形態において、基板1を、載置部材3の下面に接地部材4を貼設して構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、一つの部材で構成しても良く、適宜変更して差支えない。
また、上記第一の実施の形態において、シート状部材25の開口24を円弧の途中が切断された形状に形成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、切断されていなくても良く、適宜変更して差支えない。
更に、上記第一の実施の形態において、甲被体10の端部11を回動軸12を介して基板1に取り付けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、甲被体10の端部11を基板1に撓み可能に取り付けても良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、上記第一の実施の形態において、回動軸12を弾性のゴムで構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、ビス等で構成しても良く、適宜変更して差支えない。
【0052】
尚また、上記第二の実施の形態において、甲被体10を、その両端部11を基板1の切り込み部8から載置部材3内に埋設させて基板1に取り付けたが、必ずしもこれに限定されるものではなく、甲被体10を、その両端部11を載置部材3と接地部材4との間に介装させて基板1に取り付けても良く、適宜変更して差支えない。
また、上記第二の実施の形態において、ガイド部22を一対のリング状部材27の組で構成したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。
更に、上記第二の実施の形態において、一対のリング状部材27を基板1の載置部材3の上面2に固着したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、基板1の側部6に固着しても良く、適宜変更して差支えない。
更にまた、上記第三の実施の形態において、ガイド部22としての索体28の一端部28a及び他端部28bを、基板1の載置部材3の上面2に固着したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、基板1の側部6に固着しても良く、適宜変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を示す正面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を示す側面図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を示す平面図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を示す底面図である。
【図6】図1中A−A線断面図である。
【図7】図1中B−B線断面図である。
【図8】本発明の第一の実施の形態に係る双方向履物を使用状態で示す正面図である。
【図9】本発明の第二の実施の形態に係る双方向履物を示す斜視図である。
【図10】本発明の第二の実施の形態に係る双方向履物を示す正面図である。
【図11】図9中C−C線断面図である。
【図12】本発明の第二の実施の形態に係る双方向履物を使用状態で示す正面図である。
【図13】本発明の第三の実施の形態に係る双方向履物を示す斜視図である。
【図14】本発明の第三の実施の形態に係る双方向履物を示す正面図である。
【図15】図13中D−D線断面図である。
【図16】本発明の第三の実施の形態に係る双方向履物を使用状態で示す正面図である。
【図17】従来の双方向履物の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
S 双方向履物
N 中立位置
1 基板
2 上面
3 載置部材
4 接地部材
5 長手方向
6 側部
7 巾方向
8 切り込み部
10 甲被体
11 端部
12 回動軸
13 立ち上がり縁部
14 傾動端
15 一方端
16 他方端
20 ガイド手段
21 被ガイド部
22 ガイド部
23 下端
24 開口
25 シート状部材
26 挿通孔
27 リング状部材
28 索体
30 ピン
31 索体
32 筒状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足が載置される基板と、該基板の長手方向中間であって該基板の両側部に架け渡され使用時に足の甲を被う甲被体とを備え、該甲被体を上記基板の長手方向に直交する巾方向を軸線として傾動可能になるようにその両端部を上記基板に対して取り付けた双方向履物において、
上記甲被体の傾動時に該甲被体をガイドするガイド手段を設けたことを特徴とする双方向履物。
【請求項2】
上記ガイド手段を、上記甲被体に設けられ該甲被体と同動する被ガイド部と、該被ガイド部を移動可能にガイドするガイド部とを備えて構成したことを特徴とする請求項1記載の双方向履物。
【請求項3】
上記ガイド手段を、上記基板の両側部に夫々設けたことを特徴とする請求項1または2記載の双方向履物。
【請求項4】
上記被ガイド部を、上記甲被体の端部側に設けられたピンで構成し、上記ガイド部を、下端が上記基板の側部に固着されるとともに上記甲被体の軸心を中心とする円弧状に形成され上記ピンが挿通される開口を有したシート状部材で構成したことを特徴とする請求項2または3記載の双方向履物。
【請求項5】
上記被ガイド部を索体で構成し、該索体の一端部を上記甲被体の上記長手方向一方端に固着し、他端部を上記甲被体の上記長手方向他方端に固着するとともに、中間部を上記基板の側部に沿わせて配設し、上記ガイド部を、上記基板の側部に設けられ上記索体が挿通される挿通孔を備えて構成したことを特徴とする請求項2または3記載の双方向履物。
【請求項6】
上記ガイド部を、上記甲被体の端部を挟んで設けられた一対のリング状部材の組で構成したことを特徴とする請求項5記載の双方向履物。
【請求項7】
上記被ガイド部を、上記甲被体の端部側に設けられ円弧状に形成された筒状部材で構成し、上記ガイド部を上記筒状部材に移動可能に挿通される索体で構成し、該索体の一端部及び他端部を上記甲被体の端部を挟んで上記基板に夫々固着したことを特徴とする請求項2または3記載の双方向履物。
【請求項8】
上記甲被体の端部から立ち上がる立ち上がり縁部を、傾動端で上記基板に当接する傾斜面に形成したことを特徴とする請求項1乃至7何れかに記載の双方向履物。
【請求項9】
上記甲被体を中立位置に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至8何れかに記載の双方向履物。
【請求項10】
上記甲被体を、弾性変形可能な部材で形成し、非使用時に中立位置に位置できるように、その端部を上記基板に取り付けたことを特徴とする請求項9記載の双方向履物。
【請求項11】
上記甲被体を、その端部を上記巾方向に沿う軸線を有した回動軸を介して上記基板の側部に回動可能に取り付けたことを特徴とする請求項1乃至9何れかに記載の双方向履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−142361(P2010−142361A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321133(P2008−321133)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(597170520)
【Fターム(参考)】