収納棚用扉および収納棚
【課題】埋め込みタイプの取っ手やロック機構等を取り付ける場合、および通気孔を形成する場合における製造コストの低減を図りつつ、十分な強度を確保する。
【解決手段】正面パネル21、端面パネル22a,22b、背面側折返し部23b、および係合用折返し部24が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された左金属板3aと、係合用折返し部24の係合が可能な係合用溝部41が形成された棒状のスペーサ4aとを備えて端部部材が構成されると共に、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合した状態で正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4aが位置し、かつ両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左端部が挟持された状態で端部部材が樹脂板2に取り付けられて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4aおよび樹脂板2によって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成されている。
【解決手段】正面パネル21、端面パネル22a,22b、背面側折返し部23b、および係合用折返し部24が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された左金属板3aと、係合用折返し部24の係合が可能な係合用溝部41が形成された棒状のスペーサ4aとを備えて端部部材が構成されると共に、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合した状態で正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4aが位置し、かつ両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左端部が挟持された状態で端部部材が樹脂板2に取り付けられて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4aおよび樹脂板2によって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉本体と、扉本体のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉、および収納棚用扉が取り付けられた収納棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の扉を備えた収納棚として、特開2002−201867号公報に框扉付家具が開示されている。この框扉付家具は、キャビネットにおける前面開口部を開閉可能に框扉が取り付けられている。また、框扉は、ガラス板の左辺に沿った端部(左端部)およびガラス板の右辺に沿った端部(右端部)に木製の縦框がそれぞれ取り付けられて、正面向かって左側から、縦框(木板)、ガラス板および縦框(木板)がこの順で並ぶように配列されて構成されている。この場合、この框扉では、縦框の側端面に形成した溝内にガラス板の左右両端部を嵌入した状態において、ガラス板および両縦框の下端部を連結するようにして金属製の横框が取り付けられ、この横框によって、ガラス板および両縦框が一体化されている。また、正面向かって左側の縦框における下端部側には、キャビネットに対して框扉を開閉するためのコ字状の取っ手が框扉の正面側に突出するように取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−201867号公報(第2−3頁、第1−24図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の框扉および框扉付家具には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の框扉では、ガラス板を嵌入可能な溝を側端面に形成した木板によって縦框が構成されている。この場合、上記したように、従来の框扉では、正面側に突出するタイプの取っ手が取り付けられている。一方、この種の収納棚用扉のなかには、指先を挿入可能な空間を扉の厚みの範囲内に形成する埋め込みタイプの取っ手を取り付けたものが存在する。また、収納棚用扉の開放を阻止するためのロック機構(施錠機構)を取り付ける場合には、これらの機構が扉の厚みの範囲内に収まるように取り付ける必要がある。しかしながら、従来の框扉では、取っ手やロック機構を取り付けるべき部位(扉の端部)を構成している縦框が木板で形成されているため、この框扉に対して、埋め込みタイプの取っ手や、ロック機構を取り付けようとした場合には、縦框を削って、これらを取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔を形成するという煩雑な作業を実行する必要が生じる。このため、従来の框扉には、埋め込みタイプの取っ手やロック機構を取り付けたときに製造コストが高騰するという問題点がある。
【0005】
また、この種の収納棚用扉によって棚本体の前面開口部位を閉塞する構成の収納棚は、湿り気を帯びた衣類やタオル、および洗い立ての食器などを収容する用途で使用されることがある。このため、この種の収納棚用扉では、棚本体の前面開口部位を閉塞した状態において棚本体内に湿気が籠もる事態を回避するために、複数の通気孔を形成しておくのが好ましい。この場合、収納棚用扉に形成すべき通気孔は、棚本体内への異物の侵入や、棚本体内からの収納物の落下を回避するために、その幅が8mm以下程度のスリットや、その直径が8mm以下程度の小孔で構成するのが好ましい。一方、上記したように、従来の框扉では、通気孔の形成に適した部位(扉の端部)を構成している縦框が木板で形成されている。このため、この框扉に対して、小さな通気孔を形成しようとした場合には、縦框にスリットや小孔を開口するか、或いは、縦框に大孔を開口すると共に小孔やスリットが設けられた嵌込み部材を大孔に嵌め込む構成を採用する必要がある。
【0006】
しかしながら、木板に小孔を形成する場合には、その形成作業時に、「割れ」や「ささくれ立ち」の発生を回避するために、回転切削工具(ドリルやリュータ等)の回転数を下げると共に、工具の貫通方向奥側に「あて板」を宛がう必要が生じる。このため、通気孔の形成に要するコストが高騰し、結果として、収納棚用扉の製造コストが高騰するという問題が生じる。また、木板に形成した大孔に嵌込み部材を嵌め込む構成を採用した場合には、木板とは別個に嵌込み部材を用意する必要が生じる。この場合、大きさ、色およびデザイン等が相違する複数種類の収納棚用扉を製造する場合には、各々に応じた大きさ、色およびデザインの複数種類の嵌込み部材を別個に用意する必要が生じる。このため、大孔に対して嵌込み部材を嵌め込む構成を採用した場合には、嵌込み部材の部品コストに起因して、収納棚用扉の製造コストが高騰するという問題が生じる。
【0007】
さらに、従来の框扉では、縦框に形成した溝内にガラス板の左右両端部を嵌入した状態において、ガラス板および両縦框の下端部を連結するようにして横框が取り付けられて、ガラス板および両縦框が一体化されている。したがって、従来の框扉では、両縦框およびガラス板の3つの部材が一体化した状態を維持するための力の大半が横框に対して加わることとなる。このため、従来の框扉では、縦框に取り付けられた取っ手に手を掛けて框扉を開閉したときに、取っ手を介して縦框に加えたれた力が、ガラス板や他方の縦框に対して横框を介して伝搬することとなる。この結果、従来の框扉では、開閉時に框扉に変形が生じ易く、また、変形が生じることに起因して、横框における縦框の固定部位に緩みが生じ易くなるという問題点がある。この場合、ガラス板を嵌入するために縦框に形成する溝をある程度深くして、縦框に対して十分に奥深くまでガラス板を嵌入することにより、上記の問題点を軽減できる可能性がある。しかしながら、このような構成では、縦框に対して奥深くまで嵌入したガラス板の存在に起因して、上記した埋め込みタイプの取っ手やロック機構の取り付けや、通気孔の形成が一層困難になるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、埋め込みタイプの取っ手やロック機構等を取り付ける場合、および通気孔を形成する場合における製造コストの低減を図りつつ、十分な強度を確保し得る収納棚用扉および収納棚を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の収納棚用扉は、平板状の扉本体と、当該扉本体の上辺、下辺、左辺および右辺のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて構成されて、収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉であって、前記端部部材は、前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体の正面側に位置させられる正面パネル、当該正面パネルにおける前記いずれかの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該いずれかの辺に沿った端面に対向させられる第1端面パネル、前記正面パネルにおける前記いずれかの辺と交差する2つの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの第2端面パネル、当該両第2端面パネルの縁部に連設されて前記正面パネルに対向させられると共に前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部、および前記正面パネルにおける前記第1端面パネルと反対側の縁部に連設されて当該第1端面パネルに対向させられた係合用折返し部が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された端部部材本体と、前記係合用折返し部の係合が可能な係合用溝部が形成された棒状のスペーサとを備え、前記係合用折返し部が前記係合用溝部に係合した状態で前記正面パネルにおける背面側の縁部に前記スペーサが位置し、かつ前記両背面側折返し部および前記スペーサによって前記扉本体における前記いずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で前記端部部材本体および当該スペーサが当該扉本体に取り付けられて、前記正面パネル、前記第1端面パネル、前記両第2端面パネル、前記スペーサおよび前記扉本体によって囲われた空間が当該収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されている。
【0010】
また、請求項2記載の収納棚は、請求項1記載の収納棚用扉が棚本体に対して開閉可能に取り付けられている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の収納棚用扉、および請求項2記載の収納棚によれば、係合用折返し部が係合用溝部に係合した状態で正面パネルにおける背面側の縁部にスペーサが位置し、かつ両背面側折返し部およびスペーサによって扉本体におけるいずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で端部部材本体およびスペーサを扉本体に取り付けて、正面パネル、第1端面パネル、両第2端面パネル、スペーサおよび扉本体によって囲われた空間が収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されるように収納棚用扉を構成したことにより、ネームプレート取付け部、取っ手およびロック機構等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔を連通させるための開口部等を、木板を削って形成するという煩雑な作業を行うことなく、収納棚用扉の厚みの範囲内に、ネームプレート取付け部、取っ手およびロック機構等を取り付けると共に、通気孔を連通させることができる。このため、この収納棚用扉、および収納棚用扉を備えた収納棚によれば、収納棚用扉の製造に要する時間を十分に短縮することができるため、収納棚用扉の製造コスト、ひいては、収納棚の製造コストを十分に低減することができる。また、正面パネルを金属板で構成したことにより、任意の形状の通気孔を打ち抜き加工によって容易に形成することができるため、製造コストの高騰を招くことなく、任意の各種形状の通気孔を形成することができる結果、湿気が籠もることなく、しかも趣向性の高い収納棚用扉および収納棚を提供することができる。さらに、端部部材の背面側折返し部とスペーサとによって扉本体の端部を挟持する構成を採用したことにより、取っ手から端部部材に加わる力や、ヒンジが取り付けられていることに起因して端部部材に加わる力が扉本体に対して直接的に伝搬するため、開閉時などに収納棚用扉に対して大きな変形が生じる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】扉1の正面図である。
【図2】扉1の平面図である。
【図3】扉1の背面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図1におけるB−B線断面図である。
【図6】扉1における樹脂板2の正面図である。
【図7】扉1における左金属板3aおよび右金属板3bの正面図である。
【図8】図7におけるC−C線断面図である。
【図9】扉1におけるスペーサ4a,4bの正面図である。
【図10】図9におけるD−D線断面図である。
【図11】左金属板3aおよび右金属板3bにスペーサ4a,4bをそれぞれ取り付けている状態を示す断面図である。
【図12】左金属板3aおよび右金属板3bに対するスペーサ4a,4bの取り付けを完了した状態を示す断面図である。
【図13】樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bを取り付けている状態を示す断面図である。
【図14】ロッカー100の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、収納棚用扉および収納棚の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜5に示す扉1は、収納棚用扉の一例である開き戸タイプの扉であって、図14に示すように、ロッカー100のロッカー本体101に対して開閉可能に取り付けられてロッカー本体101における前面開口部位を閉塞可能に構成されている。この場合、ロッカー100は、収納棚の一例であって、左右両側板、天板、底板、背板、棚板および仕切り板の各板体が金属板によって形成されたロッカー本体101(棚本体の一例)と、複数の扉1(この例では、4つの扉1)とを備えて構成されている。また、図1〜5に示すように、扉1は、樹脂板2、左金属板3a、右金属板3b、スペーサ4a,4b、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7を備えて正面視矩形状に形成されている。
【0015】
樹脂板2は、扉本体に相当し、一例として、ポリカーボネート樹脂によって平板状に形成されている。この樹脂板2は、図6に示すように、取っ手6およびロック機構7を取り付けるための切欠き部11と、通気孔12とが形成されている。この場合、通気孔12は、後述するように左金属板3aに形成されている複数の通気孔32(図3参照)に対して扉1の厚み方向で対向する位置に形成されている。また、この例では、各通気孔32に対して扉1の厚み方向で対向する位置に樹脂板2が存在しないように、四角形状の大孔で通気孔12が構成されている。なお、ポリカーボネート樹脂に代えて、アクリル樹脂等の各種樹脂材料で樹脂板2を構成することもできる。また、樹脂板2に代えて、ガラス板、金属板および木板等の各種板体によって扉本体を構成することもできる。この場合、金属板で扉本体を構成するときには、パンチングメタルやアルミニウム板で構成することによって扉1が過剰に重くなる事態を回避することができる。また、木板で扉本体を構成するときには、合板や集成材で構成することにより、無垢板を採用するのと比較して、扉1の製造コストの高騰を招くことなく、十分に高強度で、しかも、板目(模様)の美しい趣向性の高い扉1を提供することができる。
【0016】
左金属板3aは、端部部材本体の一例であって、スペーサ4aと相俟って端部部材を構成する。また、右金属板3bは、端部部材本体の他の一例であって、スペーサ4bと相俟って端部部材を構成する。この場合、左金属板3aは、金属の薄板を折り曲げ加工することによって、樹脂板2の左辺に沿った端部(左端部)に取付け可能な箱状に形成され、右金属板3bは、金属の薄板を折り曲げ加工することによって、樹脂板2の右辺に沿った端部(右端部)に取付け可能な箱状に形成されている。
【0017】
具体的には、この左金属板3aは、樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2の正面側に位置させられる正面パネル21(図4,7,8参照)と、正面パネル21の左辺(「いずれかの辺」の一例)に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における左辺に沿った端面に対向させられる端面パネル22a(第1端面パネルの一例:図4,8参照)と、正面パネル21における上辺および下辺(「いずれかの辺と交差する2つの辺」の一例)の2つの辺に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における上記の2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの端面パネル22b(「第2端面パネル」の一例:図4,8参照)と、端面パネル22aの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる背面側折返し部23a(図3,4,8参照)と、両端面パネル22bの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部23b(図3,4,8参照)と、正面パネル21における端面パネル22aと反対側の縁部に連設されて端面パネル22aに対向させられた係合用折返し部24(図4,8参照)とが一体的に形成されている。
【0018】
一方、右金属板3bは、樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2の正面側に位置させられる正面パネル21(図4,7,8参照)と、正面パネル21の右辺(「いずれかの辺」の他の一例)に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における右辺に沿った端面に対向させられる端面パネル22a(第1端面パネルの他の一例:図4,8参照)と、正面パネル21における上辺および下辺(「いずれかの辺と交差する2つの辺」の他の一例)の2つの辺に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における上記の2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの端面パネル22b(「第2端面パネル」の他の一例:図4,8参照)と、端面パネル22aの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる背面側折返し部23a(図3,4,8参照)と、両端面パネル22bの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部23b(図3,4,8参照)と、正面パネル21における端面パネル22aと反対側の縁部に連設されて端面パネル22aに対向させられた係合用折返し部24(図4,8参照)とが一体的に形成されている。
【0019】
また、図7に示すように、左金属板3aの正面パネル21には、ネームプレート取付け部5を取り付けるための(ネームプレート取付け部5における図示しない取付け用爪部を嵌入するための)一対の取付け用孔31aと、取っ手6を取り付けるための取付け用孔31bと、複数の通気孔32とが開口されている。この場合、この扉1では、一例として、上記の各通気孔32が左右方向に長いスリット状に形成されている。なお、正面パネル21に対する両取付け用孔31aおよび取付け用孔31bや各通気孔32は、一例として、左金属板3aを形成するための金属板の打ち抜き加工時に正面パネル21に打ち抜いて形成することができるため、例えば、木板を削って、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔32,12を連通させるための開口部等を形成するのと比較して容易に形成することが可能となっている。この場合、本例では、左右方向に長いスリット状の通気孔32を形成したが、任意の形状の打ち抜き用の刃部を用意することで、三角形や四角形等の角孔状の通気孔や、星形やハート形などの通気孔を容易に形成することができる。また、右金属板3bにおける正面パネル21と端面パネル22aとの角部には、ロッカー本体101に対して開閉可能に取り付けるための一対のヒンジ8,8が取り付けられている。
【0020】
一方、スペーサ4a,4bは、一例として、木製の角棒で形成されている。このスペーサ4a,4bは、図9,10に示すように、左金属板3aおよび右金属板3bにおける上記の係合用折返し部24と係合可能な係合用溝部41が形成されている。この場合、スペーサ4a,4bは、木製の角棒を扉1の上下方向の長さに合わせて切断すると共に、上記の係合用折返し部24の厚みや長さに合わせて係合用溝部41を形成するだけで比較的容易に製作することが可能となっている。なお、木製の角棒に代えて、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの樹脂製の角棒、または、アルミニウム等の金属製の角棒を用いてスペーサ4a,4bを形成することもできる。
【0021】
ネームプレート取付け部5は、一例として、樹脂材料で形成されている。取っ手6は、一例として、その主要部分が樹脂材料で形成されると共に、ロック機構7を施錠/解錠するためのキーシリンダが取り付けられている。なお、扉1およびロッカー100についての理解を容易とするために、取っ手6に取り付けられたキーシリンダとロック機構7との連結部位に関する図示および説明を省略する。ロック機構7は、扉1がロッカー本体101に取り付けられた状態においてロッカー本体101の左側板や仕切り板に設けられた係合部に係合してロッカー本体101に対する扉1の回動を規制する。なお、扉1およびロッカー100についての理解を容易とするために、ロック機構7とロッカー本体101との係合状態に関する図示および説明を省略する。
【0022】
この扉1の組立てに際しては、まず、図11に示すように、左金属板3aにおける正面パネル21と両背面側折返し部23bとの間に矢印E1の向きでスペーサ4aを差し込んだ後に、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させるようにして矢印Fの向きで左金属板3aに対してスペーサ4aを移動させる。同様にして、右金属板3bにおける正面パネル21と両背面側折返し部23bとの間に矢印E2の向きでスペーサ4bを差し込んだ後に、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させるようにして矢印Fの向きで右金属板3bに対してスペーサ4bを移動させる。これにより、図12に示すように、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合して左金属板3aに対するスペーサ4aの横方向への位置ずれが規制された状態において正面パネル21における背面側の縁部(係合用折返し部24が形成された縁部)にスペーサ4aが取り付けられると共に、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合して右金属板3bに対するスペーサ4bの横方向への位置ずれが規制された状態において正面パネル21における背面側の縁部(係合用折返し部24が形成された縁部)にスペーサ4bが取り付けられる。
【0023】
次いで、図13に示すように、樹脂板2に対して矢印G1の向きで左金属板3aおよびスペーサ4aを移動させて、両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持された状態で左金属板3aおよびスペーサ4aを樹脂板2に取り付けると共に、樹脂板2に対して矢印G2の向きで右金属板3bおよびスペーサ4bを移動させて、両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で右金属板3bおよびスペーサ4bを樹脂板2に取り付ける。この際には、図4に示すように、樹脂板2における左端部、左金属板3aにおける正面パネル21、左金属板3aにおける端面パネル22a,22b、およびスペーサ4aによって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成されると共に、樹脂板2における右端部、右金属板3bにおける正面パネル21、右金属板3bにおける端面パネル22a,22b、およびスペーサ4bによって囲われた空間Sbが扉1の厚みの範囲内に形成される。
【0024】
また、この状態においては、左金属板3aにおける正面パネル21に形成された各通気孔32と、樹脂板2に形成された通気孔12とが上記の空間Saを介して扉1の厚み方向で連通した状態となる。この場合、この扉1では、前述したように、左金属板3aにおける正面パネル21に任意の形状(この例では、スリット状)の複数の通気孔32が打ち抜き形成されており、樹脂板2に対して左金属板3aおよびスペーサ4aを取り付けるだけで、各通気孔32が樹脂板2の通気孔12に対して連通した状態となる。したがって、木板に対して回転切削工具を用いて小孔やスリットを形成する作業、小孔やスリットが形成された嵌込み部材を木板に嵌め込む作業を行うことなく、任意の形状の通気孔32を扉1に設けることが可能となっている。
【0025】
続いて、左金属板3aにおける正面パネル21の両取付け用孔31a,31aにネームプレート取付け部5における取付け用爪部(図示せず)を嵌入することで、左金属板3aにネームプレート取付け部5を取り付ける。次いで、上記の空間Sa内にロック機構7の本体部分を収容するようにしてロック機構7を取り付けると共に、左金属板3aにおける正面パネル21の取付け用孔31bに取っ手6を取り付ける。この際に、この扉1では、樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bを取り付けるだけで、扉1の厚みの範囲内に上記の空間Sa,Sbが形成される。したがって、木板等を削って取付け用凹部や取付け用孔を形成するという煩雑な作業が不要となる分だけ、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7の取付け作業を含む扉1の組立て作業に要する時間を十分に短縮することが可能となっている。この後、図3に示すように、一例として、左金属板3aおよび右金属板3bにおける両背面側折返し部23bと樹脂板2とを貫通させるようにして扉1の背面側からスペーサ4a,4bにそれぞれ2本の木ねじをねじ込むと共に、樹脂板2を貫通させるようにして扉1の背面側からスペーサ4a,4bにそれぞれ2本の木ねじをねじ込む。これにより、樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bが固定されて、図1〜5に示すように、扉1が完成する。
【0026】
この扉1では、図4に示すように、左金属板3aの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持され、かつ、右金属板3bの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で、左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bが樹脂板2に取り付けられている。したがって、図5に示すように、左金属板3aにおける右金属板3b側の端部や、右金属板3bにおける左金属板3a側の端部(図示せず)においては、正面パネル21と両面側折返し部23bの間に樹脂板2およびスペーサ4a,4bが厚み方向において隙間無く配列した状態となり、これにより、十分な強度が確保される。また、この扉1では、樹脂板2が扉1の外形とほぼ同様の形状で扉1全体としての大きさとほぼ同じ大きさに形成されている。したがって、左金属板3aに取り付けられた取っ手6に手を掛けて扉1を開閉したときに、取っ手6を介して左金属板3aに加えられた力が、樹脂板2に対して直接的に伝搬するため、扉1に変形が生じ難くなっている。
【0027】
また、木板で構成された一対の縦框の間にガラス板が配列された従来の框扉を有する框扉付家具とは異なり、図1に示すように、正面向かって左側から、左金属板3a、スペーサ4a、樹脂板2、スペーサ4bおよび右金属板3bという材質や色合いが互いに異なる部材がこの順で並んだ趣向性の高いロッカー100を提供することが可能となっている。
【0028】
このように、この扉1、および扉1を備えたロッカー100では、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させた状態で左金属板3aの正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4aを位置させ、かつ係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させた状態で右金属板3bの正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4bを位置させると共に、左金属板3aの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持された状態で左金属板3aおよびスペーサ4aを樹脂板2に取り付けて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4aおよび樹脂板2によって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成され、右金属板3bの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で右金属板3bおよびスペーサ4bを樹脂板2に取り付けて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4bおよび樹脂板2によって囲われた空間Sbが扉1の厚みの範囲内に形成されるように構成されている。
【0029】
したがって、この扉1、および扉1を備えたロッカー100によれば、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔32,12を連通させるための開口部等を、木板を削って形成するという煩雑な作業を行うことなく、扉1の厚みの範囲内に、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けると共に、通気孔32および通気孔12を連通させることができる。このため、この扉1、および扉1を備えたロッカー100によれば、扉1の製造に要する時間を十分に短縮することができるため、扉1の製造コスト、ひいては、ロッカー100の製造コストを十分に低減することができる。また、正面パネル21を金属板で構成したことにより、任意の形状の通気孔(この例では、横長スリット状の通気孔32)を打ち抜き加工によって容易に形成することができるため、製造コストの高騰を招くことなく、任意の各種形状の通気孔を形成することができる結果、湿気が籠もることなく、しかも、趣向性の高い扉1およびロッカー100を提供することができる。さらに、左金属板3aの背面側折返し部23bとスペーサ4aとによって樹脂板2の左辺に沿った端部(左端部)を挟持すると共に、右金属板3bの背面側折返し部23bとスペーサ4bとによって樹脂板2の右辺に沿った端部(右端部)を挟持する構成を採用したことにより、取っ手6から左金属板3aに加わる力や、ヒンジ8が取り付けられていることに起因して右金属板3bに加わる力が樹脂板2に対して直接的に伝搬するため、開閉時などに扉1に対して大きな変形が生じる事態を回避することができる。
【0030】
なお、収納棚用扉、および収納棚の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の扉1では、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等が取り付けられることがなく、かつ通気孔32も形成されていない右金属板3bの側にも空間Sbが形成されるように構成したが、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等の取付けや、通気孔32の形成が不要な端部部材には、上記の空間Sbに相当する空間が形成されない構成を採用することもできる。具体的には、一例として、上記の扉1におけるスペーサ4bを十分に幅広に形成して、スペーサ4bが端面パネル22aの内面に接するように右金属板3bに取り付けることができる。また、上記の扉1では、樹脂板2の左端部および右端部の双方に端部部材としての左金属板3aおよびスペーサ4a、並びに右金属板3bおよびスペーサ4bを取り付けているが、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等の取付けや、通気孔32の形成が不要な端部には、端部部材を取り付けない構成を採用することもできる。
【0031】
さらに、扉の上端部または下端部にヒンジ(蝶番)を取り付けて収納棚の棚本体に対して上開き構造、または、下開き構造で取り付ける構成を採用するときなどには、上記の扉1における右金属板3bに相当するパネルを扉の上端部または下端部に取り付ける構成を採用することもできる。また、ネームプレート取付け部5、およびネームプレート取付け部5を取り付けるための構成要素(左金属板3aの両取付け用孔31a,31a)は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを設けない構成を採用することもできる。さらに、ロック機構7、およびロック機構7を取り付けるための構成要素(左金属板3aの取付け用孔31bや、樹脂板2の切欠き部11)は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを設けない構成を採用することもできる。同様にして、左金属板3aの各通気孔32や樹脂板2の通気孔12は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを形成しない構成を採用することもできる。加えて、開き戸タイプの扉1を例に挙げて説明したが、収納棚用扉の構成はこれに限定されず、引き戸タイプの扉に対しても、本発明を適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 扉
2 樹脂板
3a 左金属板
3b 右金属板
4a,4b スペーサ
5 ネームプレート取付け部
6 取っ手
7 ロック機構
8 ヒンジ
11 切欠き部
12,32 通気孔
21 正面パネル
22a,22b 端面パネル
23a,23b 背面側折返し部
24 係合用折返し部
31a,31b 取付け用孔
41 係合用溝部
100 ロッカー
101 ロッカー本体
Sa,Sb 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉本体と、扉本体のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉、および収納棚用扉が取り付けられた収納棚に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の扉を備えた収納棚として、特開2002−201867号公報に框扉付家具が開示されている。この框扉付家具は、キャビネットにおける前面開口部を開閉可能に框扉が取り付けられている。また、框扉は、ガラス板の左辺に沿った端部(左端部)およびガラス板の右辺に沿った端部(右端部)に木製の縦框がそれぞれ取り付けられて、正面向かって左側から、縦框(木板)、ガラス板および縦框(木板)がこの順で並ぶように配列されて構成されている。この場合、この框扉では、縦框の側端面に形成した溝内にガラス板の左右両端部を嵌入した状態において、ガラス板および両縦框の下端部を連結するようにして金属製の横框が取り付けられ、この横框によって、ガラス板および両縦框が一体化されている。また、正面向かって左側の縦框における下端部側には、キャビネットに対して框扉を開閉するためのコ字状の取っ手が框扉の正面側に突出するように取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−201867号公報(第2−3頁、第1−24図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の框扉および框扉付家具には、以下の問題点が存在する。すなわち、従来の框扉では、ガラス板を嵌入可能な溝を側端面に形成した木板によって縦框が構成されている。この場合、上記したように、従来の框扉では、正面側に突出するタイプの取っ手が取り付けられている。一方、この種の収納棚用扉のなかには、指先を挿入可能な空間を扉の厚みの範囲内に形成する埋め込みタイプの取っ手を取り付けたものが存在する。また、収納棚用扉の開放を阻止するためのロック機構(施錠機構)を取り付ける場合には、これらの機構が扉の厚みの範囲内に収まるように取り付ける必要がある。しかしながら、従来の框扉では、取っ手やロック機構を取り付けるべき部位(扉の端部)を構成している縦框が木板で形成されているため、この框扉に対して、埋め込みタイプの取っ手や、ロック機構を取り付けようとした場合には、縦框を削って、これらを取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔を形成するという煩雑な作業を実行する必要が生じる。このため、従来の框扉には、埋め込みタイプの取っ手やロック機構を取り付けたときに製造コストが高騰するという問題点がある。
【0005】
また、この種の収納棚用扉によって棚本体の前面開口部位を閉塞する構成の収納棚は、湿り気を帯びた衣類やタオル、および洗い立ての食器などを収容する用途で使用されることがある。このため、この種の収納棚用扉では、棚本体の前面開口部位を閉塞した状態において棚本体内に湿気が籠もる事態を回避するために、複数の通気孔を形成しておくのが好ましい。この場合、収納棚用扉に形成すべき通気孔は、棚本体内への異物の侵入や、棚本体内からの収納物の落下を回避するために、その幅が8mm以下程度のスリットや、その直径が8mm以下程度の小孔で構成するのが好ましい。一方、上記したように、従来の框扉では、通気孔の形成に適した部位(扉の端部)を構成している縦框が木板で形成されている。このため、この框扉に対して、小さな通気孔を形成しようとした場合には、縦框にスリットや小孔を開口するか、或いは、縦框に大孔を開口すると共に小孔やスリットが設けられた嵌込み部材を大孔に嵌め込む構成を採用する必要がある。
【0006】
しかしながら、木板に小孔を形成する場合には、その形成作業時に、「割れ」や「ささくれ立ち」の発生を回避するために、回転切削工具(ドリルやリュータ等)の回転数を下げると共に、工具の貫通方向奥側に「あて板」を宛がう必要が生じる。このため、通気孔の形成に要するコストが高騰し、結果として、収納棚用扉の製造コストが高騰するという問題が生じる。また、木板に形成した大孔に嵌込み部材を嵌め込む構成を採用した場合には、木板とは別個に嵌込み部材を用意する必要が生じる。この場合、大きさ、色およびデザイン等が相違する複数種類の収納棚用扉を製造する場合には、各々に応じた大きさ、色およびデザインの複数種類の嵌込み部材を別個に用意する必要が生じる。このため、大孔に対して嵌込み部材を嵌め込む構成を採用した場合には、嵌込み部材の部品コストに起因して、収納棚用扉の製造コストが高騰するという問題が生じる。
【0007】
さらに、従来の框扉では、縦框に形成した溝内にガラス板の左右両端部を嵌入した状態において、ガラス板および両縦框の下端部を連結するようにして横框が取り付けられて、ガラス板および両縦框が一体化されている。したがって、従来の框扉では、両縦框およびガラス板の3つの部材が一体化した状態を維持するための力の大半が横框に対して加わることとなる。このため、従来の框扉では、縦框に取り付けられた取っ手に手を掛けて框扉を開閉したときに、取っ手を介して縦框に加えたれた力が、ガラス板や他方の縦框に対して横框を介して伝搬することとなる。この結果、従来の框扉では、開閉時に框扉に変形が生じ易く、また、変形が生じることに起因して、横框における縦框の固定部位に緩みが生じ易くなるという問題点がある。この場合、ガラス板を嵌入するために縦框に形成する溝をある程度深くして、縦框に対して十分に奥深くまでガラス板を嵌入することにより、上記の問題点を軽減できる可能性がある。しかしながら、このような構成では、縦框に対して奥深くまで嵌入したガラス板の存在に起因して、上記した埋め込みタイプの取っ手やロック機構の取り付けや、通気孔の形成が一層困難になるという問題が生じる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、埋め込みタイプの取っ手やロック機構等を取り付ける場合、および通気孔を形成する場合における製造コストの低減を図りつつ、十分な強度を確保し得る収納棚用扉および収納棚を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく請求項1記載の収納棚用扉は、平板状の扉本体と、当該扉本体の上辺、下辺、左辺および右辺のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて構成されて、収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉であって、前記端部部材は、前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体の正面側に位置させられる正面パネル、当該正面パネルにおける前記いずれかの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該いずれかの辺に沿った端面に対向させられる第1端面パネル、前記正面パネルにおける前記いずれかの辺と交差する2つの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの第2端面パネル、当該両第2端面パネルの縁部に連設されて前記正面パネルに対向させられると共に前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部、および前記正面パネルにおける前記第1端面パネルと反対側の縁部に連設されて当該第1端面パネルに対向させられた係合用折返し部が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された端部部材本体と、前記係合用折返し部の係合が可能な係合用溝部が形成された棒状のスペーサとを備え、前記係合用折返し部が前記係合用溝部に係合した状態で前記正面パネルにおける背面側の縁部に前記スペーサが位置し、かつ前記両背面側折返し部および前記スペーサによって前記扉本体における前記いずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で前記端部部材本体および当該スペーサが当該扉本体に取り付けられて、前記正面パネル、前記第1端面パネル、前記両第2端面パネル、前記スペーサおよび前記扉本体によって囲われた空間が当該収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されている。
【0010】
また、請求項2記載の収納棚は、請求項1記載の収納棚用扉が棚本体に対して開閉可能に取り付けられている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の収納棚用扉、および請求項2記載の収納棚によれば、係合用折返し部が係合用溝部に係合した状態で正面パネルにおける背面側の縁部にスペーサが位置し、かつ両背面側折返し部およびスペーサによって扉本体におけるいずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で端部部材本体およびスペーサを扉本体に取り付けて、正面パネル、第1端面パネル、両第2端面パネル、スペーサおよび扉本体によって囲われた空間が収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されるように収納棚用扉を構成したことにより、ネームプレート取付け部、取っ手およびロック機構等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔を連通させるための開口部等を、木板を削って形成するという煩雑な作業を行うことなく、収納棚用扉の厚みの範囲内に、ネームプレート取付け部、取っ手およびロック機構等を取り付けると共に、通気孔を連通させることができる。このため、この収納棚用扉、および収納棚用扉を備えた収納棚によれば、収納棚用扉の製造に要する時間を十分に短縮することができるため、収納棚用扉の製造コスト、ひいては、収納棚の製造コストを十分に低減することができる。また、正面パネルを金属板で構成したことにより、任意の形状の通気孔を打ち抜き加工によって容易に形成することができるため、製造コストの高騰を招くことなく、任意の各種形状の通気孔を形成することができる結果、湿気が籠もることなく、しかも趣向性の高い収納棚用扉および収納棚を提供することができる。さらに、端部部材の背面側折返し部とスペーサとによって扉本体の端部を挟持する構成を採用したことにより、取っ手から端部部材に加わる力や、ヒンジが取り付けられていることに起因して端部部材に加わる力が扉本体に対して直接的に伝搬するため、開閉時などに収納棚用扉に対して大きな変形が生じる事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】扉1の正面図である。
【図2】扉1の平面図である。
【図3】扉1の背面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図である。
【図5】図1におけるB−B線断面図である。
【図6】扉1における樹脂板2の正面図である。
【図7】扉1における左金属板3aおよび右金属板3bの正面図である。
【図8】図7におけるC−C線断面図である。
【図9】扉1におけるスペーサ4a,4bの正面図である。
【図10】図9におけるD−D線断面図である。
【図11】左金属板3aおよび右金属板3bにスペーサ4a,4bをそれぞれ取り付けている状態を示す断面図である。
【図12】左金属板3aおよび右金属板3bに対するスペーサ4a,4bの取り付けを完了した状態を示す断面図である。
【図13】樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bを取り付けている状態を示す断面図である。
【図14】ロッカー100の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、収納棚用扉および収納棚の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1〜5に示す扉1は、収納棚用扉の一例である開き戸タイプの扉であって、図14に示すように、ロッカー100のロッカー本体101に対して開閉可能に取り付けられてロッカー本体101における前面開口部位を閉塞可能に構成されている。この場合、ロッカー100は、収納棚の一例であって、左右両側板、天板、底板、背板、棚板および仕切り板の各板体が金属板によって形成されたロッカー本体101(棚本体の一例)と、複数の扉1(この例では、4つの扉1)とを備えて構成されている。また、図1〜5に示すように、扉1は、樹脂板2、左金属板3a、右金属板3b、スペーサ4a,4b、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7を備えて正面視矩形状に形成されている。
【0015】
樹脂板2は、扉本体に相当し、一例として、ポリカーボネート樹脂によって平板状に形成されている。この樹脂板2は、図6に示すように、取っ手6およびロック機構7を取り付けるための切欠き部11と、通気孔12とが形成されている。この場合、通気孔12は、後述するように左金属板3aに形成されている複数の通気孔32(図3参照)に対して扉1の厚み方向で対向する位置に形成されている。また、この例では、各通気孔32に対して扉1の厚み方向で対向する位置に樹脂板2が存在しないように、四角形状の大孔で通気孔12が構成されている。なお、ポリカーボネート樹脂に代えて、アクリル樹脂等の各種樹脂材料で樹脂板2を構成することもできる。また、樹脂板2に代えて、ガラス板、金属板および木板等の各種板体によって扉本体を構成することもできる。この場合、金属板で扉本体を構成するときには、パンチングメタルやアルミニウム板で構成することによって扉1が過剰に重くなる事態を回避することができる。また、木板で扉本体を構成するときには、合板や集成材で構成することにより、無垢板を採用するのと比較して、扉1の製造コストの高騰を招くことなく、十分に高強度で、しかも、板目(模様)の美しい趣向性の高い扉1を提供することができる。
【0016】
左金属板3aは、端部部材本体の一例であって、スペーサ4aと相俟って端部部材を構成する。また、右金属板3bは、端部部材本体の他の一例であって、スペーサ4bと相俟って端部部材を構成する。この場合、左金属板3aは、金属の薄板を折り曲げ加工することによって、樹脂板2の左辺に沿った端部(左端部)に取付け可能な箱状に形成され、右金属板3bは、金属の薄板を折り曲げ加工することによって、樹脂板2の右辺に沿った端部(右端部)に取付け可能な箱状に形成されている。
【0017】
具体的には、この左金属板3aは、樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2の正面側に位置させられる正面パネル21(図4,7,8参照)と、正面パネル21の左辺(「いずれかの辺」の一例)に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における左辺に沿った端面に対向させられる端面パネル22a(第1端面パネルの一例:図4,8参照)と、正面パネル21における上辺および下辺(「いずれかの辺と交差する2つの辺」の一例)の2つの辺に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における上記の2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの端面パネル22b(「第2端面パネル」の一例:図4,8参照)と、端面パネル22aの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる背面側折返し部23a(図3,4,8参照)と、両端面パネル22bの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部23b(図3,4,8参照)と、正面パネル21における端面パネル22aと反対側の縁部に連設されて端面パネル22aに対向させられた係合用折返し部24(図4,8参照)とが一体的に形成されている。
【0018】
一方、右金属板3bは、樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2の正面側に位置させられる正面パネル21(図4,7,8参照)と、正面パネル21の右辺(「いずれかの辺」の他の一例)に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における右辺に沿った端面に対向させられる端面パネル22a(第1端面パネルの他の一例:図4,8参照)と、正面パネル21における上辺および下辺(「いずれかの辺と交差する2つの辺」の他の一例)の2つの辺に沿った縁部に連設されて樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における上記の2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの端面パネル22b(「第2端面パネル」の他の一例:図4,8参照)と、端面パネル22aの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる背面側折返し部23a(図3,4,8参照)と、両端面パネル22bの縁部に連設されて正面パネル21に対向させられると共に樹脂板2に取り付けられた状態において樹脂板2における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部23b(図3,4,8参照)と、正面パネル21における端面パネル22aと反対側の縁部に連設されて端面パネル22aに対向させられた係合用折返し部24(図4,8参照)とが一体的に形成されている。
【0019】
また、図7に示すように、左金属板3aの正面パネル21には、ネームプレート取付け部5を取り付けるための(ネームプレート取付け部5における図示しない取付け用爪部を嵌入するための)一対の取付け用孔31aと、取っ手6を取り付けるための取付け用孔31bと、複数の通気孔32とが開口されている。この場合、この扉1では、一例として、上記の各通気孔32が左右方向に長いスリット状に形成されている。なお、正面パネル21に対する両取付け用孔31aおよび取付け用孔31bや各通気孔32は、一例として、左金属板3aを形成するための金属板の打ち抜き加工時に正面パネル21に打ち抜いて形成することができるため、例えば、木板を削って、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔32,12を連通させるための開口部等を形成するのと比較して容易に形成することが可能となっている。この場合、本例では、左右方向に長いスリット状の通気孔32を形成したが、任意の形状の打ち抜き用の刃部を用意することで、三角形や四角形等の角孔状の通気孔や、星形やハート形などの通気孔を容易に形成することができる。また、右金属板3bにおける正面パネル21と端面パネル22aとの角部には、ロッカー本体101に対して開閉可能に取り付けるための一対のヒンジ8,8が取り付けられている。
【0020】
一方、スペーサ4a,4bは、一例として、木製の角棒で形成されている。このスペーサ4a,4bは、図9,10に示すように、左金属板3aおよび右金属板3bにおける上記の係合用折返し部24と係合可能な係合用溝部41が形成されている。この場合、スペーサ4a,4bは、木製の角棒を扉1の上下方向の長さに合わせて切断すると共に、上記の係合用折返し部24の厚みや長さに合わせて係合用溝部41を形成するだけで比較的容易に製作することが可能となっている。なお、木製の角棒に代えて、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの樹脂製の角棒、または、アルミニウム等の金属製の角棒を用いてスペーサ4a,4bを形成することもできる。
【0021】
ネームプレート取付け部5は、一例として、樹脂材料で形成されている。取っ手6は、一例として、その主要部分が樹脂材料で形成されると共に、ロック機構7を施錠/解錠するためのキーシリンダが取り付けられている。なお、扉1およびロッカー100についての理解を容易とするために、取っ手6に取り付けられたキーシリンダとロック機構7との連結部位に関する図示および説明を省略する。ロック機構7は、扉1がロッカー本体101に取り付けられた状態においてロッカー本体101の左側板や仕切り板に設けられた係合部に係合してロッカー本体101に対する扉1の回動を規制する。なお、扉1およびロッカー100についての理解を容易とするために、ロック機構7とロッカー本体101との係合状態に関する図示および説明を省略する。
【0022】
この扉1の組立てに際しては、まず、図11に示すように、左金属板3aにおける正面パネル21と両背面側折返し部23bとの間に矢印E1の向きでスペーサ4aを差し込んだ後に、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させるようにして矢印Fの向きで左金属板3aに対してスペーサ4aを移動させる。同様にして、右金属板3bにおける正面パネル21と両背面側折返し部23bとの間に矢印E2の向きでスペーサ4bを差し込んだ後に、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させるようにして矢印Fの向きで右金属板3bに対してスペーサ4bを移動させる。これにより、図12に示すように、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合して左金属板3aに対するスペーサ4aの横方向への位置ずれが規制された状態において正面パネル21における背面側の縁部(係合用折返し部24が形成された縁部)にスペーサ4aが取り付けられると共に、係合用折返し部24が係合用溝部41に係合して右金属板3bに対するスペーサ4bの横方向への位置ずれが規制された状態において正面パネル21における背面側の縁部(係合用折返し部24が形成された縁部)にスペーサ4bが取り付けられる。
【0023】
次いで、図13に示すように、樹脂板2に対して矢印G1の向きで左金属板3aおよびスペーサ4aを移動させて、両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持された状態で左金属板3aおよびスペーサ4aを樹脂板2に取り付けると共に、樹脂板2に対して矢印G2の向きで右金属板3bおよびスペーサ4bを移動させて、両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で右金属板3bおよびスペーサ4bを樹脂板2に取り付ける。この際には、図4に示すように、樹脂板2における左端部、左金属板3aにおける正面パネル21、左金属板3aにおける端面パネル22a,22b、およびスペーサ4aによって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成されると共に、樹脂板2における右端部、右金属板3bにおける正面パネル21、右金属板3bにおける端面パネル22a,22b、およびスペーサ4bによって囲われた空間Sbが扉1の厚みの範囲内に形成される。
【0024】
また、この状態においては、左金属板3aにおける正面パネル21に形成された各通気孔32と、樹脂板2に形成された通気孔12とが上記の空間Saを介して扉1の厚み方向で連通した状態となる。この場合、この扉1では、前述したように、左金属板3aにおける正面パネル21に任意の形状(この例では、スリット状)の複数の通気孔32が打ち抜き形成されており、樹脂板2に対して左金属板3aおよびスペーサ4aを取り付けるだけで、各通気孔32が樹脂板2の通気孔12に対して連通した状態となる。したがって、木板に対して回転切削工具を用いて小孔やスリットを形成する作業、小孔やスリットが形成された嵌込み部材を木板に嵌め込む作業を行うことなく、任意の形状の通気孔32を扉1に設けることが可能となっている。
【0025】
続いて、左金属板3aにおける正面パネル21の両取付け用孔31a,31aにネームプレート取付け部5における取付け用爪部(図示せず)を嵌入することで、左金属板3aにネームプレート取付け部5を取り付ける。次いで、上記の空間Sa内にロック機構7の本体部分を収容するようにしてロック機構7を取り付けると共に、左金属板3aにおける正面パネル21の取付け用孔31bに取っ手6を取り付ける。この際に、この扉1では、樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bを取り付けるだけで、扉1の厚みの範囲内に上記の空間Sa,Sbが形成される。したがって、木板等を削って取付け用凹部や取付け用孔を形成するという煩雑な作業が不要となる分だけ、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7の取付け作業を含む扉1の組立て作業に要する時間を十分に短縮することが可能となっている。この後、図3に示すように、一例として、左金属板3aおよび右金属板3bにおける両背面側折返し部23bと樹脂板2とを貫通させるようにして扉1の背面側からスペーサ4a,4bにそれぞれ2本の木ねじをねじ込むと共に、樹脂板2を貫通させるようにして扉1の背面側からスペーサ4a,4bにそれぞれ2本の木ねじをねじ込む。これにより、樹脂板2に対して左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bが固定されて、図1〜5に示すように、扉1が完成する。
【0026】
この扉1では、図4に示すように、左金属板3aの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持され、かつ、右金属板3bの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で、左金属板3a、右金属板3bおよびスペーサ4a,4bが樹脂板2に取り付けられている。したがって、図5に示すように、左金属板3aにおける右金属板3b側の端部や、右金属板3bにおける左金属板3a側の端部(図示せず)においては、正面パネル21と両面側折返し部23bの間に樹脂板2およびスペーサ4a,4bが厚み方向において隙間無く配列した状態となり、これにより、十分な強度が確保される。また、この扉1では、樹脂板2が扉1の外形とほぼ同様の形状で扉1全体としての大きさとほぼ同じ大きさに形成されている。したがって、左金属板3aに取り付けられた取っ手6に手を掛けて扉1を開閉したときに、取っ手6を介して左金属板3aに加えられた力が、樹脂板2に対して直接的に伝搬するため、扉1に変形が生じ難くなっている。
【0027】
また、木板で構成された一対の縦框の間にガラス板が配列された従来の框扉を有する框扉付家具とは異なり、図1に示すように、正面向かって左側から、左金属板3a、スペーサ4a、樹脂板2、スペーサ4bおよび右金属板3bという材質や色合いが互いに異なる部材がこの順で並んだ趣向性の高いロッカー100を提供することが可能となっている。
【0028】
このように、この扉1、および扉1を備えたロッカー100では、係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させた状態で左金属板3aの正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4aを位置させ、かつ係合用折返し部24を係合用溝部41に係合させた状態で右金属板3bの正面パネル21における背面側の縁部にスペーサ4bを位置させると共に、左金属板3aの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4aによって樹脂板2における左辺に沿った端部(左端部)が挟持された状態で左金属板3aおよびスペーサ4aを樹脂板2に取り付けて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4aおよび樹脂板2によって囲われた空間Saが扉1の厚みの範囲内に形成され、右金属板3bの両背面側折返し部23bおよびスペーサ4bによって樹脂板2における右辺に沿った端部(右端部)が挟持された状態で右金属板3bおよびスペーサ4bを樹脂板2に取り付けて、正面パネル21、端面パネル22a,22b、スペーサ4bおよび樹脂板2によって囲われた空間Sbが扉1の厚みの範囲内に形成されるように構成されている。
【0029】
したがって、この扉1、および扉1を備えたロッカー100によれば、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けるための取付け用凹部や取付け用孔、および通気孔32,12を連通させるための開口部等を、木板を削って形成するという煩雑な作業を行うことなく、扉1の厚みの範囲内に、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等を取り付けると共に、通気孔32および通気孔12を連通させることができる。このため、この扉1、および扉1を備えたロッカー100によれば、扉1の製造に要する時間を十分に短縮することができるため、扉1の製造コスト、ひいては、ロッカー100の製造コストを十分に低減することができる。また、正面パネル21を金属板で構成したことにより、任意の形状の通気孔(この例では、横長スリット状の通気孔32)を打ち抜き加工によって容易に形成することができるため、製造コストの高騰を招くことなく、任意の各種形状の通気孔を形成することができる結果、湿気が籠もることなく、しかも、趣向性の高い扉1およびロッカー100を提供することができる。さらに、左金属板3aの背面側折返し部23bとスペーサ4aとによって樹脂板2の左辺に沿った端部(左端部)を挟持すると共に、右金属板3bの背面側折返し部23bとスペーサ4bとによって樹脂板2の右辺に沿った端部(右端部)を挟持する構成を採用したことにより、取っ手6から左金属板3aに加わる力や、ヒンジ8が取り付けられていることに起因して右金属板3bに加わる力が樹脂板2に対して直接的に伝搬するため、開閉時などに扉1に対して大きな変形が生じる事態を回避することができる。
【0030】
なお、収納棚用扉、および収納棚の構成は、上記の構成に限定されない。例えば、上記の扉1では、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等が取り付けられることがなく、かつ通気孔32も形成されていない右金属板3bの側にも空間Sbが形成されるように構成したが、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等の取付けや、通気孔32の形成が不要な端部部材には、上記の空間Sbに相当する空間が形成されない構成を採用することもできる。具体的には、一例として、上記の扉1におけるスペーサ4bを十分に幅広に形成して、スペーサ4bが端面パネル22aの内面に接するように右金属板3bに取り付けることができる。また、上記の扉1では、樹脂板2の左端部および右端部の双方に端部部材としての左金属板3aおよびスペーサ4a、並びに右金属板3bおよびスペーサ4bを取り付けているが、ネームプレート取付け部5、取っ手6およびロック機構7等の取付けや、通気孔32の形成が不要な端部には、端部部材を取り付けない構成を採用することもできる。
【0031】
さらに、扉の上端部または下端部にヒンジ(蝶番)を取り付けて収納棚の棚本体に対して上開き構造、または、下開き構造で取り付ける構成を採用するときなどには、上記の扉1における右金属板3bに相当するパネルを扉の上端部または下端部に取り付ける構成を採用することもできる。また、ネームプレート取付け部5、およびネームプレート取付け部5を取り付けるための構成要素(左金属板3aの両取付け用孔31a,31a)は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを設けない構成を採用することもできる。さらに、ロック機構7、およびロック機構7を取り付けるための構成要素(左金属板3aの取付け用孔31bや、樹脂板2の切欠き部11)は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを設けない構成を採用することもできる。同様にして、左金属板3aの各通気孔32や樹脂板2の通気孔12は、収納棚用扉に必須の構成要素ではなく、必要がなければ、これらを形成しない構成を採用することもできる。加えて、開き戸タイプの扉1を例に挙げて説明したが、収納棚用扉の構成はこれに限定されず、引き戸タイプの扉に対しても、本発明を適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 扉
2 樹脂板
3a 左金属板
3b 右金属板
4a,4b スペーサ
5 ネームプレート取付け部
6 取っ手
7 ロック機構
8 ヒンジ
11 切欠き部
12,32 通気孔
21 正面パネル
22a,22b 端面パネル
23a,23b 背面側折返し部
24 係合用折返し部
31a,31b 取付け用孔
41 係合用溝部
100 ロッカー
101 ロッカー本体
Sa,Sb 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の扉本体と、当該扉本体の上辺、下辺、左辺および右辺のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて構成されて、収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉であって、
前記端部部材は、前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体の正面側に位置させられる正面パネル、当該正面パネルにおける前記いずれかの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該いずれかの辺に沿った端面に対向させられる第1端面パネル、前記正面パネルにおける前記いずれかの辺と交差する2つの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの第2端面パネル、当該両第2端面パネルの縁部に連設されて前記正面パネルに対向させられると共に前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部、および前記正面パネルにおける前記第1端面パネルと反対側の縁部に連設されて当該第1端面パネルに対向させられた係合用折返し部が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された端部部材本体と、前記係合用折返し部の係合が可能な係合用溝部が形成された棒状のスペーサとを備え、
前記係合用折返し部が前記係合用溝部に係合した状態で前記正面パネルにおける背面側の縁部に前記スペーサが位置し、かつ前記両背面側折返し部および前記スペーサによって前記扉本体における前記いずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で前記端部部材本体および当該スペーサが当該扉本体に取り付けられて、前記正面パネル、前記第1端面パネル、前記両第2端面パネル、前記スペーサおよび前記扉本体によって囲われた空間が当該収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されている収納棚用扉。
【請求項2】
請求項1記載の収納棚用扉が棚本体に対して開閉可能に取り付けられている収納棚。
【請求項1】
平板状の扉本体と、当該扉本体の上辺、下辺、左辺および右辺のいずれかの辺に沿った端部に取り付けられた端部部材とを備えて構成されて、収納棚の棚本体に対して開閉可能に取り付けられる収納棚用扉であって、
前記端部部材は、前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体の正面側に位置させられる正面パネル、当該正面パネルにおける前記いずれかの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該いずれかの辺に沿った端面に対向させられる第1端面パネル、前記正面パネルにおける前記いずれかの辺と交差する2つの辺に沿った縁部に連設されて前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における当該2つの辺に沿った各端面に対向させられる2つの第2端面パネル、当該両第2端面パネルの縁部に連設されて前記正面パネルに対向させられると共に前記扉本体に取り付けられた状態において当該扉本体における背面側の外縁部に位置させられる2つの背面側折返し部、および前記正面パネルにおける前記第1端面パネルと反対側の縁部に連設されて当該第1端面パネルに対向させられた係合用折返し部が金属板の折り曲げ加工によって一体的に形成された端部部材本体と、前記係合用折返し部の係合が可能な係合用溝部が形成された棒状のスペーサとを備え、
前記係合用折返し部が前記係合用溝部に係合した状態で前記正面パネルにおける背面側の縁部に前記スペーサが位置し、かつ前記両背面側折返し部および前記スペーサによって前記扉本体における前記いずれかの辺に沿った端部が挟持された状態で前記端部部材本体および当該スペーサが当該扉本体に取り付けられて、前記正面パネル、前記第1端面パネル、前記両第2端面パネル、前記スペーサおよび前記扉本体によって囲われた空間が当該収納棚用扉の厚みの範囲内に形成されている収納棚用扉。
【請求項2】
請求項1記載の収納棚用扉が棚本体に対して開閉可能に取り付けられている収納棚。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−74629(P2011−74629A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225739(P2009−225739)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000167299)光葉スチール株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000167299)光葉スチール株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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