説明

受光光学系

【課題】受光センサの位置調整用のスペースを確保する。
【解決手段】被写界からの光束の光路上に配置される結像レンズ181と、光束を受光し、被写界に関する被写界データを取得する受光センサ183と、光束を屈曲させて、受光センサに導く板状の反射部材182bと、を有する受光光学系において、反射部材を、光束の入射する入射面側に赤外線吸収部182aを有し、且つ、入射面と対向する背面側に反射部を有する構成とし、反射部において、入射面から入射した光束を反射し、入射面から射出する構成とし、さらに、赤外線吸収部182aを、可視光線を透過し赤外線を吸収する特性を持つガラス板又は樹脂板で構成し、反射部を、反射部材の背面側に金属蒸着又はメッキ処理によって形成された反射膜で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光センサに光束を導くための受光光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、フィルムカメラ、デジタルカメラを問わずに一眼レフレックス構造を持つカメラにおいて、ペンタダハプリズム又はペンタダハミラー(以下、ペンタプリズムと称す)の後方にあるファインダ光学系の上部に測光用光学系を配置し、この測光用光学系の後方にAEセンサを配置する構造として、ファインダスクリーン上に1次結像した被写界像の光量をこのAEセンサで電気信号に変換してカメラの測光等に利用することが広く行われてきた。
【0003】
この測光用光学系の配置を工夫した発明が多く開示されている。例えば、以下に記す特許文献1や特許文献2がある。
【0004】
特許文献1に記載された開示の発明では、第2実施例(第8図)にあるように、結像レンズの直後に反射プリズムを配置し、測光光路が屈曲され上方の受光素子に光が入射する構成とすることで、受光素子を上方に配置できるので、カメラ本体の後方の出っ張りを小さくできる。また、本実施例において結像レンズと反射プリズムとを一体化することによって構成をさらに簡素化している。
【0005】
また、特許文献2に記載された開示の発明では、図3や図5等にカメラのファインダ視野内に焦点検出エリアなどの種々の情報を被写界像に重ねて表示(いわゆるスーパーインポーズ表示)を行うための表示光学系をさらに有した構造となっており、この表示光学系と測光用光学系とを適切に配置することによって、カメラ全体のコンパクト化を図っている。
【特許文献1】特開昭59−214829号公報
【特許文献2】特開平11−237659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このAEセンサの位置決めは非常に重要であり、光学的に高い精度が要求される。仮にAEセンサに微小な位置ズレが起こったままAEセンサユニットが組み付けられた場合、ミラーボックス上面に組み付けられたピント板上の測光を行う参照ポイント(測光点)にもズレが生じることになり、撮影者が意図した測光結果が得られなくなる可能性がある。このため、AEセンサユニットの組み立て時に、AEセンサの位置を調整するための位置調整用スペースを予め設ける必要があった。
【0007】
しかしながら、今日の一眼レフカメラは高機能化が進んでおり、ペンタプリズムの周囲には様々な機器が配置されるようになっている。例えば、光学ファインダ内の被写界像を撮影者の視力に合わせて調節するための視度調節機構や、ファインダ視野内にスーパーインポーズ表示を行うためのファインダ内表示装置、さらに内蔵ストロボやクイックシュー用の配線も配置されているため、上述したAE受光素子の位置調整用スペースを確保するのが難しく、また、カメラのコンパクト化も妨げていた。位置調整用スペースを確保するための発明の開示は、上述した特許文献1や特許文献2にはなかった。
【0008】
また、上述した特許文献1や特許文献2に開示の発明では、測光用光学系にプリズムと集光レンズとを一体化した光学部材が用いられていたが、この構成では赤外線成分をカットするための赤外線カットフィルタを測光用光学系の光路上に別途設ける必要があるため、AEセンサユニットの大型化を招き、AEセンサの位置調整用スペースの確保をさらに困難にしていた。
【0009】
同様の課題はAEセンサだけでなく、被写界の合焦位置を算出するAFセンサにも言え、AFセンサユニットの大型化を防ぎながらAFセンサの位置調整用スペースを確保する発明が望まれていた。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を抑えながら、AEセンサ等の受光センサの位置調整用スペースを確保できる受光光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明を実施の受光光学系は、被写界からの光束の光路上に配置される結像レンズと、光束を受光し、被写界に関する被写界データを取得する受光センサと、光束を屈曲させて、受光センサに導く板状の反射部材と、を有する受光光学系において、反射部材を、光束の入射する入射面側に赤外線吸収部を有し、且つ、入射面と対向する背面側に反射部を有する構成とし、反射部において、入射面から入射した光束を反射し、入射面から射出する構成としたものである。
【0012】
さらに本発明を実施の受光光学系は、上記発明において、赤外線吸収部を、可視光線を透過し赤外線を吸収する特性を持つガラス板又は樹脂板で構成したものである。
【0013】
さらに本発明を実施の受光光学系は、上記発明において、反射部を、反射部材の背面側に金属蒸着又はメッキ処理によって形成された反射膜で構成したものである。
【0014】
さらに本発明を実施の受光光学系は、上記発明において、被写界データを、少なくとも被写界の合焦状態に関するデータと輝度分布に関するデータのどちらかとしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明を実施の受光光学系によれば、コストの上昇を抑えながら、AEセンサ等の受光センサの位置調整用スペースを確保できる受光光学系を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付の図面に従って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の受光光学系を実施した一眼レフカメラの要部中央断面図であり、図2は、図1に示した一眼レフカメラのAEセンサ周辺の要部拡大図である。
【0018】
図1に示す一眼レフカメラ100には、カメラ外観を構成する外装カバー110が設けられている。この外装カバー110とペンタプリズム121との間には、ファインダ視野内にスーパーインポーズ表示を行うためのファインダ内表示装置130、及び不図示の電装フレキが配置されている。さらに、外装カバー110の上部には不図示のポップアップ式内蔵ストロボも設けられている。外装カバー110の被写界側前面には、不図示の撮影レンズと結合するためのマウント部140が設けられている。
【0019】
被写界からの光束は、撮像光学系を内在した不図示の撮影レンズを透過して、一眼レフカメラ100内に入射する。入射した光束は、光路中に配置されたクイックリターンミラー150に到達する。クイックリターンミラー150は、入射した光束を図中上方に屈曲させるメインミラー151と、このメインミラー151の像面側(図中右側)にあって、メインミラー151の中央部に形成されたハーフミラー部を透過した光束を図中下方に屈曲させるサブミラー152とを備えている。
【0020】
クイックリターンミラー150は、非撮影時は図示されるように光路上の観察位置に位置しているが、撮影者が不図示のレリーズボタンを操作し、一眼レフカメラ100が撮影動作に入ると、被写界光束をクイックリターンミラー150の後方に配置されたフィルムやCCD、CMOS等の撮像素子160に導くために光路上から退避位置に移動する。この間、撮像素子160の前面に配置されている不図示のシャッタが駆動し、所望の時間だけ撮像素子160の露光を行い、被写界像の電子画像データを取得する。
【0021】
非撮影時において、メインミラー151によって上方に屈曲された被写界光束はファインダ光学系120に導かれる。同時に、メインミラー151の中央部に形成されたハーフミラー部を透過しサブミラー152によって下方に屈曲された光束は、カメラボディの底部に設けられた測距用光学系170を介してAFセンサ171に入射する。
【0022】
AFセンサ171に光束を導く測距用光学系170は、コンデンサレンズ172、ミラー173、セパレータレンズ174の順に配置・構成されている。また、セパレータレンズ174のミラー173側表面には、不図示の絞りマスクが設けられている。さらに、不図示の赤外線カットフィルタが測距用光学系170の任意の光路上に配置される。絞りマスクとセパレータレンズ174によって二つに分割された被写界光束は、AFセンサ171内の別個のラインセンサに再結像され、取得した二つの画像データの位置関係を比較することによって被写界の合焦点を算出する。
【0023】
クイックリターンミラー150の上方に設けられたファインダ光学系120は、ピント板122、ペンタプリズム121、接眼光学系123の順に配置・構成されており、クイックリターンミラー150によってファインダ光学系120に入射された光束は、ピント板122で一次結像した後、ペンタプリズム121に入射する。ペンタプリズム121内で反射を繰り返した光束はペンタプリズム121後方の射出面より射出し、さらにペンタプリズム121に対向する接眼光学系123を透過して撮影者の瞳位置に到達する。
【0024】
ペンタプリズム121の後方には、接眼光学系123の他に測光用光学系180も配置されている。この測光用光学系180はペンタプリズム121の射出面に対向するように接眼光学系123の上方に位置されており、ピント板122で一次結合し、ペンタプリズム121内を反射した被写界像は、測光用光学系180にも入射することになる。
【0025】
図2に示すように、この測光用光学系180は被写界側から、凸レンズ181、被写界からの光束を上方に屈曲するための反射部材182、そして、AEセンサ183の順で配置・構成されている。このAEセンサ183は、多分割された撮影画面内の各領域に対応した不図示のフォトダイオードから構成されており、ピント板122の射出面に一次結像した被写界の輝度情報を取得する。
【0026】
この反射部材182は、さらに、リン酸塩系ガラスやポリメチン系色素等の赤外線吸収色素を含有した樹脂等の公知の赤外線吸収材からなる平行平面板状のフィルタ部182aと、アルミニウムや銀の蒸着によって形成されたミラー部182bとから構成されている。凸レンズ181を介して反射部材182に入射した被写界光束はこのフィルタ部182a内を透過し、赤外線成分が吸収された後ミラー部182bで反射され、再びフィルタ部182a内を透過して反射部材182外に射出される。反射部材182から射出した光束は、上方に配置されたAEセンサ183に入射し、そこでAEセンサ183は被写界の輝度に関する情報を取得し、電気信号に変換する。生成された電気信号は不図示の制御手段に送信され、露出補正等の撮影条件の補正等に利用される。
【0027】
被写界からの光束は、反射部材182中を透過する際にフィルタ部182aによって赤外線成分が吸収されるが、ミラー部182bでの反射によってフィルタ部182a内を往復することになるので、約2倍の厚みを持つ赤外線吸収材中を透過するのと同等となる。従って、その分フィルタ部182aの厚みを薄く設計することが可能となる。
【0028】
なお、上述した実施例の反射部材182のミラー部182bはアルミや銀の蒸着によって形成していたが、メッキ処理によってミラー部を形成した場合でも、本実施例と同様の効果が得られることは明らかである。
【0029】
また、実施例の反射部材の赤外線を吸収する構成として、赤外線吸収材でフィルタ部を構成していたが、一般的なガラス基材の表面に赤外線を選択的に吸収する薄膜をコーティングし、背面にアルミ蒸着等による反射膜を形成する構成とした場合でも、本実施例と同様の効果が得られることは明らかである。赤外線吸収膜としては、例えば、フタロシアニン系化合物やアントラキノン系化合物を含有したハードコード等が適用可能である。
【0030】
また、本発明に記載の反射部材は上述した実施例の測光用光学系のみに適用されるものではなく、例えば、一眼レフカメラ内の公知の測距用光学系にも同様に適用可能である。
【0031】
すなわち、一般的な測距用光学系ではすでに上述したように、非撮影状態でサブミラー152により下方に屈曲された被写界光束が、コンデンサレンズ172、ミラー173、不図示の絞りマスク及び赤外線カットフィルタ、セパレータレンズ174を介してAFセンサ171に導かれる構造となっているが、例えばこのミラー173の代わりに本発明の反射部材を適用することも可能である。
【0032】
この場合においても、反射部材の構造を公知の赤外線吸収材から成るフィルタ部と、フィルタ部の背面側に金属蒸着等によって形成されたミラー部とで構成することによって、フィルタ部から入射した被写界光束がミラー部で反射され、AFセンサ171の配置された方向に屈曲される間に、フィルタ部を構成する赤外線吸収材によって光束中の赤外線成分が取り除かれるので、測距用光学系内に赤外線カットフィルタを別途設ける必要がなくなる。これにより、セパレータレンズ174とAFセンサ171上のラインセンサとの間のアライメント等の各種位置調整を行うためのスペース確保や、AFセンサユニットのコンパクト化を達成することができる。
【0033】
上記の他の実施形態と同様に、測距用光学系に本発明を適用する場合に、ミラー173ではなくサブミラー152をフィルタ部とミラー部とで構成するようにしても、同様の効果を奏するということは言うまでもない。
【0034】
以上説明したように、本発明の反射部材を採用することによって、測光用光学系や測距用光学系等の受光光学系内に赤外線カットフィルタを単独の部材として配置する必要がなくなり、部品点数を削減すると共に、AEセンサやAFセンサ等の受光センサの位置調整に必要なスペースを確保することができる。それによって、受光センサのより高精度な位置決めが可能となり、測光や測距の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の受光光学系を実施した一眼レフカメラの要部中央断面図である。
【図2】図1に示した一眼レフカメラのAEセンサ周辺の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
150 クイックリターンミラー
151 メインミラー
152 サブミラー
170 測距用光学系
171 AFセンサ
172 コンデンサレンズ
173 ミラー
174 セパレータレンズ
180 測光用光学系
181 凸レンズ
182 反射部材
182a フィルタ部
182b ミラー部
183 AEセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界からの光束の光路上に配置される結像レンズと、
前記光束を受光し、前記被写界に関する被写界データを取得する受光センサと、
前記光束を屈曲させて、前記受光センサに導く板状の反射部材と、
を有する受光光学系において、
前記反射部材は、前記光束の入射する入射面側に赤外線吸収部を有し、且つ、入射面と対向する背面側に反射部を有する構成であり、
前記反射部において、前記入射面から入射した前記光束を反射し、前記入射面から射出することを特徴とする受光光学系。
【請求項2】
前記赤外線吸収部は、可視光線を透過し赤外線を吸収する特性を持つガラス板又は樹脂板であることを特徴とする請求項1に記載の受光光学系。
【請求項3】
前記反射部は、前記反射部材の背面側に金属蒸着又はメッキ処理によって形成された反射膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載の受光光学系。
【請求項4】
前記被写界データは、少なくとも被写界の合焦状態に関するデータと輝度分布に関するデータのどちらかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の受光光学系。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−91757(P2010−91757A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261233(P2008−261233)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000131326)株式会社シグマ (167)
【Fターム(参考)】