説明

可視光通信照明装置

【課題】展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、可視光通信の通信範囲および/または可視光の光量を現場で調整することができる可視光通信照明装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明にかかる可視光通信照明装置100は、可視光を発して照明を行う発光部102と、発光部102から発せられた可視光を所定の照射範囲に照射する照射部104と、発光部102から発せられた可視光を拡散する拡散部106と、発光部102から発せられる可視光の光量を、光量設定部114で設定された光量に変更する光量変更部108と、発光部102を変調して可視光通信で情報を発信する変調部110と、ライティングレール120を通じて電源供給部から供給される交流電流を直流電流に変換するAC/DC変換部112と、光量を設定させる光量設定部114と、で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から発せられた可視光で照明を行うと共に、光源を変調して可視光通信で情報を発信する可視光通信照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、照明で用いる光源から発せられた可視光を利用して無線通信を行う技術である可視光通信技術が存在する。これにより、例えば、照明装置から空間へ可視光を発すると同時に当該照明装置から携帯端末へ情報を配信することが可能となる。そして、可視光通信技術を利用した場合、光の照射範囲が情報の通信範囲と一致するので、利用者にとって通信範囲がわかり易いという利点がある。なお、可視光通信の通信速度を高めたい場合には、応答速度が極めて速いという特徴を持つLED(発光ダイオード)が光源として適している。また、近年では、高出力、白色、低色温度、高演色(照射される物体色の再現性がよい)のLEDが開発されており、例えば展示用照明としてLEDを用いることが可能となった。なお、可視光通信技術に関する従来技術として特許文献1が存在する。特許文献1では、LEDの輝度変化によってデータを送信する“LEDによる情報提供装置”に関する技術が開示されている。
【0003】
ところで、美術館などの展示空間において可視光通信技術を応用した場合、具体的には、展示物を照明すると共に、展示物の解説や見学ルートの案内などの情報を例えば携帯端末を介して利用者に提供することが可能となる。ただし、この場合、展示物の大きさや展示物の設置間隔などに応じて可視光通信の通信範囲を調整する必要がある。また、光源から発せられる可視光の光量は、展示物周囲の光環境(具体的には展示空間内の様々な点における照度や輝度など)を基準として相対的に調整する必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−202741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまでは、予め決められた展示物のレイアウトに基づいて適切な光源を事前に用意しておくことで、可視光の照射範囲、つまり可視光通信の通信範囲を調整していたので、展示物のレイアウトが現場で変更された場合に可視光通信の通信範囲を現場で調整することができなかったという問題点があった。
【0006】
また、これまでは、予め決められた展示物のレイアウトに基づいて適切な光源を事前に用意する際に、光源から発せられる可視光の光量も併せて調整していたので、展示物のレイアウトが現場で変更された場合に可視光の光量を現場で調整することができなかったという問題点があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、可視光通信の通信範囲および/または可視光の光量を現場で調整することができる可視光通信照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる請求項1に記載の可視光通信照明装置は、可視光を発して照明を行う発光手段と、前記発光手段を変調して可視光通信で情報を発信する変調手段と、を備えた可視光通信照明装置において、前記発光手段から発せられた可視光を所定の照射範囲に照射する照射手段および前記発光手段から発せられる可視光の光量を変更する光量変更手段のうち少なくとも1つをさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる請求項2に記載の可視光通信照明装置は、請求項1に記載の可視光通信照明装置において、可視光の光量を設定させる光量設定手段をさらに備え、前記光量変更手段は、前記発光手段から発せられる可視光の光量を、前記光量設定手段で設定された光量に変更することを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる請求項3に記載の可視光通信照明装置は、請求項1または2に記載の可視光通信照明装置において、前記光量変更手段は、所定の時刻または所定の時間間隔で、前記発光手段から発せられる可視光の光量を変更することを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる請求項4に記載の可視光通信照明装置は、請求項1から3のいずれか1つに記載の可視光通信照明装置において、外部の電源から供給された交流電流を直流電流に変換する電流変換手段をさらに備え、前記発光手段はLEDであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可視光を発して照明を行う発光手段と、発光手段を変調して可視光通信で情報を発信する変調手段と、を備えた可視光通信照明装置において、発光手段から発せられた可視光を所定の照射範囲に照射する照射手段および発光手段から発せられる可視光の光量を変更する光量変更手段のうち少なくとも1つをさらに備えたので、展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、可視光通信の通信範囲および/または可視光の光量を現場で調整することができるという効果を奏する。具体的には、展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、変更後のレイアウトに応じて可視光通信の通信範囲を現場で調整することができ、レイアウトの変更に因り変化した展示物周囲の光環境(展示空間内の様々な点における照度や輝度など)に応じて可視光の光量を現場で調整することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明によれば、可視光の光量を設定させ、発光手段から発せられる可視光の光量を、設定された光量に変更するので、光量の値を所望な値に変更することができるという効果を奏する。
【0014】
また、本発明によれば、所定の時刻または所定の時間間隔で、発光手段から発せられる可視光の光量を変更するので、光量を変更するタイミングが予め決まっている場合、光量変更のための作業負担を軽減することができるという効果を奏する。
【0015】
また、本発明によれば、発光手段はLEDであり、外部の電源から供給された交流電流を直流電流に変換するので、具体的には、本発明にかかる可視光通信照明装置を所定の場所に取り付ける際、規格化された交流対応のライティングレール(配線ダクト)を利用することができるという効果を奏する。ここで、展示空間では展示物のレイアウト変更を頻繁に行うため、通常、展示用照明装置は、当該展示用照明装置を取り付けるためのライティングレールから電力の供給を受けている。しかし、ライティングレールは通常、交流対応であり、一方、光源として用いるLEDは直流点灯である。そこで、ライティングレールを経て供給された交流電流を直流電流に変換する機能を設けることで、本発明にかかる可視光通信照明装置を所定の場所に取り付ける際、規格化された交流対応のライティングレールを利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる可視光通信照明装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成について、図1から図3を参照して説明する。図1は、本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成の一例を示す図である。また、図2および図3は、本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成の別の一例を示す図である。なお、本実施例では、展示物が展示された展示空間(例えば美術館)で当該可視光通信システムを用いた場合について説明する。
【0018】
図1に示すように、可視光通信照明システムは、光源から発せられた可視光で展示物に照明を行うと共に、光源を変調して可視光通信で情報を発信する可視光通信照明装置100と、展示物を展示している部屋の所定の場所(具体的には天井)に設置されたライティングレール(配線ダクト)120と、可視光通信照明装置100をライティングレール120に取り付けるための取付部(ライティングレール接続部)140と、可視光通信照明装置100および取付部140を接続し、図示の如く可視光通信照明装置100の向きを変えることができる(首振り機能を有する)接続部160と、で構成される。ここで、ライティングレール120は、可視光通信照明装置100を取り付けるためのものであり、可視光通信照明装置100への電源供給を媒介する。
【0019】
可視光通信照明装置100は、発光部102と、照射部104と、拡散部106と、光量変更部108と、変調部110と、AC/DC変換部(電流変換部)112と、光量設定部114と、を備える。発光部102は、具体的には1つまたは複数(図1では3つ)からなるLEDであり、可視光を発して照明を行う。照射部104は、具体的にはレンズや配光角変換材などであり、発光部102から発せられた可視光を透過して所定の照射範囲に照射する。換言すると、照射部104は、発光部102から発せられた可視光の照射範囲を所定の照射範囲に変更する。つまり、照射部104は、可視光の配光を調整するためのフィルターである。拡散部106は、可視光を直視した場合の眩しさを抑制するための光拡散フィルター(具体的には加工ガラスや拡散シートなど)であり、発光部102から発せられた可視光を拡散する。特に、光源がLEDである場合、その輝度が高く、直視すると眩しいので、拡散部106を設ける。光量変更部108は、発光部102から発せられる可視光の光量を変更する。変調部110は、発光部102を変調して可視光通信で情報を発信する。AC/DC変換部112は、ライティングレール120を通じて(経て)電源供給部(外部の電源)から供給された交流電流を直流電流に変換する。ここで、展示空間では展示物のレイアウト変更を頻繁に行うため、通常、展示用照明装置はライティングレールから電力供給を行うタイプを用いており、これに対応する必要がある。しかし、ライティングレールは通常、交流であり、一方、LEDは直流点灯である。そのため、AC/DC変換部112を設けて交流から直流へ電流の変換を行う。光量設定部114は、具体的には無線コントローラや操作つまみなどであり、可視光の光量を設定させる。
【0020】
ここで、可視光通信照明装置100が有する幾つかの機能を1つの材料で兼ねてもよい。具体的には、照射部104と拡散部106とを兼ね合わせた材料を用いてもよい。また、可視光通信照明装置100が備える幾つかの部の設置位置を入れ替えてもよい。具体的には、図1において、AC/DC変換部112と光量変更部108との設置位置を入れ替えてもよい。また、変調部110の設置位置は特に限定しない。例えば、図示の如く、可視光通信照明装置100に変調部110を内蔵させてもよい。また、可視光通信照明システムが複数の可視光通信照明装置100を備え、1つの変調部110で各発光部102を一括して変調する場合には、変調部110を可視光通信照明装置100に内蔵させず外部に設置してもよい。また、可視光通信照明装置100の外部に変調部110を設置した場合、変調部110で変調された電源を、ライティングレール140を介して電力線搬送で可視光通信照明装置100へ供給してもよい。また、光量設定部114の設置位置は特に限定しない。具体的には、図示の如く、可視光通信照明装置100に光量設定部114(図1では光量を設定させるための操作つまみ)を設置してもよい。また、可視光通信照明装置100の外部に、光量を設定させるための無線コントローラを光量設定部114として設置することで、光量の遠隔操作を実現してもよい。また、可視光通信照明装置100の外部に、可視光の光量を時間で制御する(切り替える)ための遠隔サーバーを光量設定部114として設置することで、光量を管理してもよい。また、光量変更部108は、発光部102から発せられる可視光の光量を、所定の時刻または所定の時間間隔で、光量設定部114で設定された光量に変更してもよい。
【0021】
また、発光部102が複数のLEDで構成される場合、図2および図3に示すように、各LEDをライン型形状(直線状)に配置してもよい。ここで、従来の展示に使用されているスポット型の照明器具の場合、例えば複数の人が壁面の展示物を鑑賞しながら可視光通信で情報を受信したいとき、図4に示すように、通信させたいエリア(範囲)と可視光の照射範囲とが合わなくなってしまう、という問題がある。また、図5に示すように、配光角度の広い照明器具(図5に示す配光角度θ'が大きい照明器具)を用いた場合、展示物が互いに近接していたとき(具体的には、図5に示すように、作品間の最小展示間隔M(m)未満の間隔で展示物が展示されていたとき)、一方の通信エリアと他方の通信エリア(隣接エリア)とが干渉してしまう、という問題がある。また、図6に示すように、配光角度の広い照明器具(図6に示す配光角度θ'が大きい照明器具)を用いた場合、身長の高い人が身に付けているヘッドフォンで情報を受信する際、見た目の通信エリア(床が明るくなっている面積分の範囲(図6に示す床面照射範囲))と実際の通信エリア(ヘッドフォンに受信装置が備え付けられている場合の受信範囲(図6参照))との差が大きくなってしまう、という問題がある。そこで、図2および図3に示すように、複数のLEDをライン型形状(直線状)に配置することで、これら問題を解決することができる。
【0022】
以上、説明したように、可視光通信照明装置100によれば、発光部102から発せられた可視光を透過して所定の照射範囲に照射する照射部104および発光部102から発せられる可視光の光量を変更する光量変更部108のうち少なくとも1つをさらに備えたので、展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、可視光通信の通信範囲および/または可視光の光量を現場で即座に調整することができる。具体的には、展示物のレイアウトが現場で変更された場合でも、変更後のレイアウトに応じて可視光通信の通信範囲を現場で即座に調整することができ、レイアウトの変更に因り変化した展示物周囲の光環境(展示空間内の様々な点における照度や輝度など)に応じて可視光の光量を現場で即座に調整することができる。また、可視光通信照明装置100を利用すれば、展示空間において、高速で情報通信を行うことができ、且つ利用者は通信エリアを容易に視認することができる。また、可視光通信照明装置100を利用すれば、美観や利用者満足、設備コストパフォーマンスに優れた展示空間を構築することが可能となる。また、可視光通信照明装置100を利用すれば、レイアウトや演出方法の変更作業が頻繁に生じる展示空間において、運営者が展示変更作業と同時に現地で自由に通信エリアや光量を調整することができるシステムを構築することが可能となる。
【0023】
また、可視光通信照明装置100によれば、光量設定部114で可視光の光量を設定させ、光量変更部108で、発光部102から発せられる可視光の光量を光量設定部114で設定された光量に変更するので、光量の値を所望の値に変更することができる。
【0024】
また、可視光通信照明装置100によれば、光量変更部108で、所定の時刻または所定の時間間隔で、発光部102から発せられる可視光の光量を変更するので、光量を変更するタイミングが予め決まっている場合、光量変更のための作業負担を軽減することができる。
【0025】
また、可視光通信照明装置100によれば、発光部102はLEDであり、AC/DC変換部112で、外部の電源から供給された交流電流を直流電流に変換するので、具体的には、可視光通信照明装置100を所定の場所に取り付ける際、規格化された交流対応のライティングレール(配線ダクト)120を利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
以上のように、本発明にかかる可視光通信照明装置は、可視光通信の通信範囲および/または可視光の光量を現場で調整することができ、特に展示物のレイアウト変更を頻繁に行う展示空間で好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成の別の一例を示す図である。
【図3】本実施例の可視光通信照明装置100を含む可視光通信照明システムの構成の別の一例を示す図である。
【図4】通信させたい範囲と照射範囲とが異なる状況の一例を示す図である。
【図5】一方の照明器具の照射範囲と他方の照明器具の照射範囲とが干渉する状況の一例を示す図である。
【図6】見た目の通信範囲と実際の通信範囲とが異なる状況の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
100 可視光通信照明装置
102 発光部
104 照射部
106 拡散部
108 光量変更部
110 変調部
112 AC/DC変換部(電流変換部)
114 光量設定部
120 ライティングレール(配線ダクト)
140 取付部(ライティングレール接続部)
160 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を発して照明を行う発光手段と、前記発光手段を変調して可視光通信で情報を発信する変調手段と、を備えた可視光通信照明装置において、
前記発光手段から発せられた可視光を所定の照射範囲に照射する照射手段および前記発光手段から発せられる可視光の光量を変更する光量変更手段のうち少なくとも1つをさらに備えたこと
を特徴とする可視光通信照明装置。
【請求項2】
可視光の光量を設定させる光量設定手段
をさらに備え、
前記光量変更手段は、前記発光手段から発せられる可視光の光量を、前記光量設定手段で設定された光量に変更すること
を特徴とする請求項1に記載の可視光通信照明装置。
【請求項3】
前記光量変更手段は、所定の時刻または所定の時間間隔で、前記発光手段から発せられる可視光の光量を変更すること
を特徴とする請求項1または2に記載の可視光通信照明装置。
【請求項4】
外部の電源から供給された交流電流を直流電流に変換する電流変換手段
をさらに備え、
前記発光手段はLEDであること
を特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の可視光通信照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−352562(P2006−352562A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176556(P2005−176556)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】