説明

合わせガラス、及び合わせガラスを備えた防火設備

【課題】防火性能上、最も優れたガラスである耐熱結晶化ガラスの利用範囲を広げるため、耐熱結晶化ガラスの外観を改善するとともに、十分な安全性を備えた防火安全ガラスを提供する。
【解決手段】結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板10を、樹脂フィルム11を介して、接着剤(接着層12)で貼り合せた合わせガラス100であって、樹脂フィルム11及び接着剤の少なくとも何れか一方に、ガラス板10の色調を調整する調整剤を含ませてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合わせた合わせガラス、及び当該合わせガラスを備えた防火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
百貨店、スーパー等の商業施設、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、大型オフィスビル等の民間施設において、窓やドアに使用されるガラスには、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して延焼を最小限に食い止める防火機能や、破損してもガラス破片が飛散せず、貫通孔を生じさせない安全機能が要求される。このため、最近の建物には、両者の機能を合わせ持つ防火安全ガラスが採用されるケースが増加している。
【0003】
防火安全ガラスは、耐火性に優れた耐熱板ガラスを使用して製造される。耐熱板ガラスは、主に、強化ガラスでもある耐熱強化ガラス及び低膨張防火ガラスと、耐熱結晶化ガラスとに分類される。耐熱強化ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されるソーダ石灰ガラスを原寸切断し、エッジに特殊研磨を施した後、特殊な熱処理を行って耐熱性及び耐衝撃性を高めたものである。低膨張防火ガラスは、建築用板ガラスとして通常使用されるソーダ石灰ガラスよりもソーダ分及び石灰分を低減するとともに、ホウ酸成分を添加し、成形したガラスを原寸切断した後、熱処理を施したガラスである。
【0004】
これに対して、耐熱結晶化ガラスは、成形した板ガラスに所定の熱処理を施すことによりガラス全体に微細結晶を析出させ、耐熱性を大きく高めたリチウム−アルミナ−珪酸系組成のガラスである。耐熱結晶化ガラスは、平均線膨張係数が非常に小さいため、例えば、火災発生時の消火活動による散水で急冷されても破損することがない。このため、現状では、耐熱結晶化ガラスは、防火性能上、最も優れたガラスであると言える。ところが、耐熱結晶化ガラスは、他の耐熱板ガラスとは異なり、強化ガラスではないことから、衝撃により破損し易いという問題がある。また、耐熱結晶化ガラスが破損した場合、その破片が鋭利なものとなり、危険を伴うことになる。
【0005】
これらの問題に対し、特許文献1及び2の防火安全ガラスでは、耐熱結晶化ガラスの安全性を向上させるため、複数枚の耐熱結晶化ガラスの片面あるいは両面にフッ素樹脂フィルムを接合し、単独では破損し易い耐熱結晶化ガラスの衝撃吸収性及び耐貫通性を向上させるとともに、万一ガラスが破損した場合でもガラス破片の飛散を防止し得る防火安全ガラスを実現している。
また、特許文献3には防火安全ガラスの製造方法が開示されている。同文献によれば、2枚の防火性ガラス板の間隙にフッ素樹脂フィルムを配置した後、熱をかけることにより圧着し、衝撃吸収性及び耐貫通性に優れた防火安全ガラスを完成させている。
このように、耐熱結晶化ガラスにおいては、従来から、安全性を向上させるための様々な工夫がなされており、その結果、建物の防火安全ガラスとして採用されるに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−224938号公報
【特許文献2】特開平8−132560号公報
【特許文献3】特開平9−002847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、防火安全ガラスに使われる耐熱結晶化ガラスは、通常のガラスに比べて透明感に乏しいという問題がある。例えば、耐熱結晶化ガラスの種類によっては、ガラス全体が薄褐色を呈するものがある。この原因については種々考えられるが、耐熱結晶化ガラスに含まれる不純物や、耐熱結晶化ガラスの結晶構造に由来すると考えられる。特許文献1乃至3に記載の防火安全ガラスにおいても、不純物等が原因で耐熱結晶化ガラスが呈色し、透明感に乏しい外観となり得る。
【0008】
防火安全ガラスとして耐熱結晶化ガラスを採用する場合、その呈色状態によっては建材として好まれない状況もあり得る。例えば、商業施設のショーウィンドウでは、内部の展示物を鮮やかに見せるため、できるだけ透明感のある無色のガラスが好まれる。そのため、耐熱結晶化ガラスを使用した製品は、現状では、外観があまり考慮されない場所等、利用される場面が限定されることも多い。このような耐熱結晶化ガラスにおける外観上の問題は、防火性能に影響するものではないが、商業上好ましいことではなく、商品価値の低下にもつながる。
【0009】
なお、耐熱結晶化ガラスの色調を改善するため、ガラス組成や結晶析出条件等の製造条件を変更し、呈色状態を変化させることも考えられる。しかしながら、耐熱結晶化ガラスの製造条件を変更しても、呈色状態を正確に予測できるわけではない。また、多くのガラス製品を製造するガラス溶融炉等の製造設備について、少量の製品製造のために全体の製造条件を変更することは容易ではなく、コスト面から見ても現実的ではない。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、防火性能上、最も優れたガラスである耐熱結晶化ガラスの利用範囲を広げるため、耐熱結晶化ガラスの外観を改善するとともに、十分な安全性を備えた防火安全ガラスを提供することを目的とする。さらに、そのような防火安全ガラスを備えつつ、外観上も良好な防火設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係る合わせガラスの特徴構成は、
結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合せた合わせガラスであって、
前記樹脂フィルム及び前記接着剤の少なくとも何れか一方に、前記ガラス板の色調を調整する調整剤を含ませることにある。
【0012】
上記課題で説明したように、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラス(耐熱結晶化ガラス)は、呈色し易く透明感に乏しいという問題があり、このことが耐熱板ガラスの利用場面を限定する要因となっていた。特に、ガラスの呈色状態は様々な要因で変化し得るものであり、耐熱板ガラスの製造条件を変更することにより、所望の色調に調整することも困難であった。
この点、本構成の合わせガラスは、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を貼り合わせる際、樹脂フィルム及び接着剤の少なくとも何れか一方に、ガラス板の色調を調整する調整剤を含ませている。すなわち、調整剤を耐熱板ガラスの側に含ませていないため、耐熱板ガラスの本来の性能に影響を与えず、ガラス板の色調を容易に且つ確実に調整することができる。従って、本構成の合わせガラスは、良好な外観を備えつつ、低コストの防火安全ガラスとなり得るものである。
なお、調整剤を樹脂フィルム及び接着剤の両方に含ませる場合は、樹脂フィルム及び接着剤において個別に調整剤を選択することができるので、色調の調整幅が広がる。また、調整剤を接着剤に含ませる場合は、調整剤含有量の調節が容易となり、合わせガラスを所望の色調に調整し易くなる。
【0013】
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記結晶化ガラスの平均線膨張係数は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kであることが好ましい。
【0014】
本構成の合わせガラスは、上記の平均線膨張係数を備えることから、平常時はもちろん、万一の火災発生時においても十分に小さい平均線熱膨張率を維持し、消火活動による散水で急冷されても破損することはない。
【0015】
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0016】
防火安全ガラスに用いられる樹脂フィルムは、発煙、発火しない素材を採用する必要がある。
この点、本構成の合わせガラスに用いられる樹脂フィルムは、耐熱性に優れた樹脂であるTHV、PC、及びPETからなる群から選択されるものであるから、高温環境下でもほとんど発煙せず、発火もし難い。
なお、樹脂フィルムをガラス板の間に挟み込んで接着すると、樹脂フィルムはガラス板に対して密着し、樹脂フィルムとガラス板との間に存在する接着剤(接着層)への酸素の供給が略遮断される。このため、接着剤に関しても、高温環境下での発煙、発火は起こり難い。従って、本構成の合わせガラスは、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得るものである。
【0017】
本発明に係る合わせガラスにおいて、前記接着剤は紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤であることが好ましい。
【0018】
本構成の合わせガラスであれば、ガラス板や樹脂フィルムに熱をかけずに接着剤を硬化させることができるので、例えば、複数のガラス板の一つに耐熱板ガラスではないものを使用したり、複数のガラス板に挟み込む樹脂フィルムとして比較的耐熱性の低いものを使用した場合でも、ガラス板及び樹脂フィルムの性能を熱によって劣化させることがない。また、熱をかけながらの圧着作業が不要となるので、研磨した後のガラス面に直接触れずに、ガラス板と樹脂フィルムとの接着を行うことができる。従って、合わせガラスの透明感は低下しない。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る合わせガラスの特徴構成は、
結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板の間に、樹脂フィルムを挟み込んで熱融着した合わせガラスであって、
前記樹脂フィルムに、前記ガラス板の色調を調整する調整剤を含ませることにある。
【0020】
本構成の合わせガラスは、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を貼り合わせる際、熱融着可能な樹脂フィルムを使用しており、その樹脂フィルムにガラス板の色調を調整する調整剤を含ませている。すなわち、調整剤を耐熱板ガラスの側に含ませていないため、耐熱板ガラスの本来の性能に影響を与えず、ガラス板の色調を容易に且つ確実に調整することができる。従って、本構成の合わせガラスは、良好な外観を備えつつ、低コストの防火安全ガラスとなり得るものである。
【0021】
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)であることが好ましい。
【0022】
防火安全ガラスに用いられる樹脂フィルムは、発煙、発火しない素材を採用する必要がある。
この点、本構成の合わせガラスに用いられる樹脂フィルムは、耐熱性に優れた樹脂であるTHVで構成されているので、高温環境下でもほとんど発煙、発火しない。また、THVは、強度に優れているため、ガラスにTHVを貼り合わせると、ガラスの耐衝撃性及び耐貫通性が大きく向上する。さらに、THVは、炭素−フッ素間の強固な原子間結合によるバリア効果によって高い難燃性を示す。従って、本構成の合わせガラスは、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得るものである。
【0023】
本発明に係る合わせガラスにおいて、
前記調整剤は、アルミ−コバルト酸化物、アルミ−亜鉛−コバルト酸化物、硅素−コバルト酸化物、硅素−亜鉛−コバルト酸化物、及びフタロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの青色顔料であることが好ましい。
【0024】
本構成の合わせガラスは、調整剤として、アルミ−コバルト酸化物、アルミ−亜鉛−コバルト酸化物、硅素−コバルト酸化物、硅素−亜鉛−コバルト酸化物、及びフタロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの青色顔料を用いることから、無色透明ないし淡青色透明の色調を呈し、商品価値の高い透明感に優れた外観を備えるものである。
【0025】
上記課題を解決するための本発明に係る防火設備の特徴構成は、
本発明に係る合わせガラスと、
前記合わせガラスを嵌め込む枠体と、
を備え、
前記枠体に前記合わせガラスの周縁部を受け入れる溝部が設けてあり、前記合わせガラスを前記枠体に嵌め込んだ状態において、前記合わせガラスの周縁部と前記溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止していることにある。
【0026】
本構成の防火設備は、本発明に係る合わせガラスのガラス周縁部と枠体の溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止している。これにより、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して、延焼を最小限に食い止めることができる。
また、本構成の防火設備は、上述の合わせガラスを使用するものであるから、良好な外観を備えつつ、低コストの防火設備として高い商品価値を有している。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラスの分解斜視図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラスの斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第二実施形態に係る合わせガラスの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第三実施形態であり、第一実施形態に係る合わせガラスを用いた防火設備の正面図、及び枠体の一部を外して側方から見た防火設備の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る合わせガラス、及び当該合わせガラスを用いた防火設備に関する実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0029】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラス100の分解斜視図である。合わせガラス100は、2枚のガラス板10(10a,10b)と、当該2枚のガラス板10の間に挟み込まれる樹脂フィルム11と、当該樹脂フィルム11を介して2枚のガラス板10を貼り合わせる接着剤から構成される接着層12とを有している。図2は、本発明の第一実施形態に係る合わせガラス100の斜視図であり、2枚のガラス板10を、樹脂フィルム11を介して接着層12により一体化した合わせガラス100を示している。合わせガラス100は、2枚のガラス板10(10a,10b)の内、少なくとも1枚が、結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラス(耐熱結晶化ガラス)とする。これにより、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得る。なお、2枚のガラス板10(10a,10b)のいずれもが耐熱結晶化ガラスであってもよい。
【0030】
結晶化ガラスで構成されるガラス板(耐熱結晶化ガラス)10の呈色状態は、ガラスに含まれる不純物や、ガラスの結晶構造等により変化すると考えられる。従来技術の項目で述べたように、耐熱結晶化ガラスにおける呈色は、防火性能に影響するものではないが、商業上好ましいことではない。そこで、合わせガラス100においては、樹脂フィルム11及び接着剤から構成される接着層12の少なくとも一方に、ガラス板10の色調を調整する調整剤を含ませている。本発明では、調整剤をガラス板10に含ませていないため、ガラス板10の本来の性能に影響を与えず、ガラス板10の色調、ひいては合わせガラス100全体の色調を容易に且つ確実に調整することができる。なお、色調は、例えば、株式会社島津製作所製の紫外可視分光光度計(UV−3100)を使用し、測定光の透過率により評価することができる。
【0031】
色調を調整後の合わせガラス100においては、商品価値の高い透明感のある外観を実現するべく、その色調を、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxを0.300〜0.317の範囲とすることが好ましい。これにより、合わせガラスは無色透明ないし淡青色透明の色調を呈し、透明感に優れた合わせガラスを実現することができる。
【0032】
図1及び図2では、2枚のガラス板10で1枚の樹脂フィルム11を挟み込むことにより合わせガラス100を構成しているが、ガラス板10は2枚を超える枚数であっても構わない。例えば、3枚のガラス板10で各ガラス板10の間に2枚の樹脂フィルム11を挟み込む構成が挙げられる。当該3枚のガラス板10が、ガラス板10a、ガラス板10b、及びガラス板10cで構成される場合(図示せず)、ガラス板10a、10b、10cのうち何れか1枚が耐熱結晶化ガラスであればよいが、ガラス板10a、10b、10cのうち2枚が耐熱結晶化ガラスであってもよく、3枚のガラス板の全てが耐熱結晶化ガラスであってもよい。ガラス板10が2枚を超える場合、内側に存在するガラス板10の両面に接着剤を塗布して接着層12を形成し、樹脂フィルム11を介して別のガラス板10と貼り合わされる。接着剤の詳細については後述する。
【0033】
耐熱結晶化ガラスは、β−石英固溶体の結晶が析出した透明結晶化ガラスであり、平均結晶粒径が可視光波長に比べて十分に小さいことが特徴である。耐熱結晶化ガラスの好ましい特性は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kの平均線膨張係数を有する。これにより、合わせガラス100は、平常時はもちろん、万一の火災発生時においても十分に小さい平均線熱膨張率を維持し、消火活動の散水(スプリンクラー等)で急冷されても破損することはない。
【0034】
耐熱結晶化ガラスは、組成として、SiO 60〜70重量%、Al 17〜27重量%、LiO 3〜6重量%、NaO 0.05〜1重量%、KO 0.1〜1重量%、ZrO 1〜3重量%、TiO 1〜3重量%、MgO 0.1〜0.9重量%、P 0.05〜2重量%、As 0〜2重量%、Sb 0〜2重量%を含有することが好ましい。このような組成を有する耐熱結晶化ガラスの色調は、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxが0.318〜0.330の範囲となる。この範囲であれば、耐熱結晶化ガラスを用いた合わせガラス100の色調を、調整剤を用いて容易に調整することができる。耐熱結晶化ガラスの各組成についての詳細を以下に説明する。
【0035】
SiOは、網目状のネットワーク構造を形成するとともに結晶を構成する成分である。SiO含有量が60重量%より少ないと平均線膨張係数が高くなるとともに機械的強度も低くなる。一方、70重量%より多いとガラスの溶解が困難となり、泡や失透物等の欠陥が発生する。SiO含有量は、64〜66重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0036】
Alは、結晶を構成する成分である。Al含有量が17重量%より少ないとガラスの失透性が強くなるとともに化学耐久性が低下する。一方、27重量%より多いとガラスの粘度が高くなりすぎて均一なガラスが得られなくなる。Al含有量は、21〜23重量%であることがさらに好ましい。これにより、化学耐久性を維持するとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0037】
LiOは、結晶を構成する成分である。LiO含有量が3重量%より少ないと所望の結晶を形成することが難しくなるとともに溶解性も悪くなる。一方、6重量%より多いとガラスの失透性が強くなる。Al含有量は、3〜5重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化を形成して耐熱性を高めることができるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0038】
NaOは、ガラスの溶解性を向上させる成分である。NaO含有量が0.05重量%より少ないと所望の溶解性が得られない。一方、1重量%より多いとガラスの平均線膨張係数及び誘電損失が大きくなる。NaO含有量は、0.4〜0.6重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの均一性を維持することができる。
【0039】
Oは、ガラスの溶解性を向上させる成分である。KO含有量が0.1重量%より少ないと所望の溶解性が得られない。一方、1重量%より多いとガラスの平均線膨張係数及び誘電損失が大きくなる。KO含有量は、0.2〜0.4重量%であることがさらに好ましい。これにより、所定の平均線膨張係数を維持するとともに、ガラスの均一性を維持することができる。
【0040】
尚、NaO及びKOの合計含有量は、0.5〜2重量%であることが好ましい。NaO及びKOの合計含有量が0.5重量%より少ない場合は、ガラスの溶解性が低下し、2重量%を超えるとガラスの強度や耐熱性が低下する。
【0041】
ZrOは、核形成剤として作用する成分である。ZrO含有量が1重量%より少ないと安定して結晶化しないとともに、粗く大きい結晶が形成されることから、透明な結晶化ガラスを得ることが困難となる。一方、3重量%を超えるとジルコニアの未分解物が生成し、ガラス中に失透物が発生する。
【0042】
TiOは、核形成剤として作用する成分である。TiO含有量が1重量%より少ないと結晶化の促進効果が得られず、所望の結晶が得られなくなる。一方、3重量%より多いと、液相温度が高くなることにより、成形作業が困難となる。さらに、耐熱結晶化ガラスが褐色に呈色して透明感が損なわれる。TiO含有量は、1.3〜3重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化度を達成して耐熱性を高めることができるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0043】
尚、ZrO及びTiOの合計含有量は、2.6〜5重量%であることが好ましい。ZrO及びTiOの合計含有量が2.6重量%より少ない場合は、結晶化の促進効果が得られず、機械的強度が低下する。一方、合計含有量が5重量%を超えると失透性が強くなり、均一な結晶化ガラスを得ることが困難となる。
【0044】
MgOは、溶解性を向上させ、泡欠陥の発生を防止する成分である。MgO含有量が0.1重量%より少ないと泡が発生し易くなる。一方、MgOが0.9重量%より多いと熱膨張係数が大きくなって熱的特性が低下する。さらに、TiOの存在下、呈色して透明感が損なわれる場合がある。MgO含有量は、0.4〜0.6重量%であることがさらに好ましい。これにより、泡欠陥の発生を防止することができるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0045】
は、核形成剤として含有するZrOの難溶解性を改善する成分である。P含有量が0.05重量%より少ないとその改善効果がない。一方、2重量%より多いと相分離し易くなるとともに結晶生成量が多くなり、透明性が低下する。P含有量は、1〜2重量%であることがさらに好ましい。これにより、所望の結晶化が得られるとともに、ガラスの透明性も維持することができる。
【0046】
また、As及びSbは清澄剤として添加され、その合計含有量は、0.2〜2重量%であることが好ましい。これにより、ガラスの溶解性、作業性、均一性を向上させることができる。合計含有量が0.2%より少なくなると清澄効果が低下し、2重量%を超えると環境上好ましくない。As及びSbのより好ましい合計含有量は、0.2〜0.4重量%である。
【0047】
更に、本発明で利用される耐熱結晶化ガラスは、CaO、PbO、F、Cl又はCeO2等の任意の成分を其々0.5〜3重量%含有してもよい。これにより、所望の用途に適した合わせガラスを構成することができる。
【0048】
また、本発明で利用される耐熱結晶化ガラスの厚みは1〜12mmが好ましく、4〜12mmがより好ましい。これにより、合わせガラス100は、防火設備として、所望の防火・安全性能を備えつつ、ガラスの色調を所望の程度に容易に調整することができる。また、上記厚み範囲の耐熱結晶化ガラスは、通常のガラス板と互換性があるため、従前の使用場所にそのまま適用することができる。
【0049】
樹脂フィルム11及び接着剤の少なくとも何れか一方には、耐熱板ガラスの色調を調整する調整剤が含まれる。耐熱結晶化ガラスは、薄褐色を呈している。この耐熱結晶化ガラスを用いて合わせガラス100を作製した場合、合わせガラス100の呈色状態によっては、透明感が不足し、外観上問題となる。調整剤は、この合わせガラス100の呈色状態を所望の色調に調整するために用いられる。ここで、「色調を調整する」とは、ある色に対し、その補色を用いることによって色味を相殺し、透明感を向上させること、及び積極的に所望の色を加えて着色することを意味する。
【0050】
本発明で用いられる調整剤としては、青色顔料であれば特に制限はなく、作製される合わせガラスに応じて適宜選択することができるが、例えば、アルミ−コバルト酸化物、アルミ−亜鉛−コバルト酸化物、硅素−コバルト酸化物、硅素−亜鉛−コバルト酸化物、及びフタロシアニン系化合物を使用することができる。これらの青色顔料は、複数種を組み合わせることも可能である。好ましい青色顔料は、フタロシアニン系化合物であり、その中でも、銅フタロシアニンのβ結晶であるC.I.ピグメントブルー15:3及びC.I.ピグメントブルー15:4がより好ましい。添加する調整剤の量は、作製する合わせガラスに応じて、適宜調整することができるが、好ましくは、樹脂フィルム11又は接着剤に対して0.1〜5重量%である。調整剤の量が0.1重量%未満であると、合わせガラスの色調を十分調整することができず、5重量%を超えると、合わせガラスの透明感を損なう虞がある。
【0051】
防火安全ガラスに用いられる樹脂フィルム11は、発煙、発火しない素材を採用する必要がある。このような樹脂フィルム11は、耐熱性に優れた樹脂であるテトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。その他、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、フロリネーテッドエチレンプロピレン(FEP)、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等も使用可能である。また、樹脂フィルムの厚さは、0.2〜2mmが好ましい。これにより、合わせガラス100は、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得る。樹脂フィルム11の厚みが0.2mm未満では、合わせガラス100が所望の耐衝撃性を得ることは困難である。一方、樹脂フィルム11の厚みが2mmを超えると、合わせガラス100の透明性を確保することが困難となるだけでなく、万一の火災発生時に樹脂フィルム11が溶融・分解することで煙の発生量が大幅に増加するおそれがある。
【0052】
ガラス板と樹脂フィルムとを接着させる接着剤としては、硬化前は比較的低粘度の液状接着剤(例えば、熱硬化性樹脂を主成分とするもの、紫外線硬化性樹脂を主成分とするもの等)を使用できるが、紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤が好ましい。合わせガラスが耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせである場合、両ガラスの平均線膨張係数が大きく異なるため、熱により硬化するタイプの接着剤で貼り合わせると、加熱時にガラス板の反りや破損が発生するおそれがある。また、加熱により樹脂フィルムや接着剤が劣化し、透明感が低下することもある。これに対して、光硬化型接着剤を用いると、ガラス板10や樹脂フィルム11に熱をかけずに接着層12を硬化させることができる。従って、耐熱板ガラスと通常のガラス板との組み合わせであっても、両者は確実に一体化し、ガラス板の反りや破損が発生せず、透明感も良好な合わせガラスを製造することができる。また、複数のガラス板10の一つに耐熱板ガラスではないものを使用したり、複数のガラス板10に挟み込む樹脂フィルム11として比較的耐熱性の低いものを使用した場合でも、ガラス板10及び樹脂フィルム11の性能を熱で劣化させることがない。さらに、熱をかけながらの圧着作業が不要となるので、ガラス面に直接触れずに、ガラス板10と樹脂フィルム11との接着を行うことができる。従って、合わせガラス100の透明感は低下しない。
【0053】
紫外線硬化樹脂としては、例えば、紫外線に対して反応するメタクロイル基やアントラセン基等の官能基をドープしたアクリル系樹脂等が挙げられる。光硬化型接着剤は、ガラス板10の未研磨面にバーコーターやスピンコーター等を使用して均一な膜厚に塗布され、接着層12が形成される。接着層12を形成したガラス板10の間に樹脂フィルム11を挟み込み、側方から紫外線を照射すると、接着層12が硬化し、一体の合わせガラス100が完成する。
【0054】
なお、調整剤は樹脂フィルム11及び接着剤の少なくとも何れか一方に含ませることができるが、調整剤を樹脂フィルム11及び接着剤の両方に含ませる場合、樹脂フィルム11及び接着剤において個別に調整剤を選択することができるので、色調の調整幅が広がる。また、接着剤に含ませる場合、調整剤の含有量の調節が容易となり、合わせガラス100を所望の色調に調整し易くなる。
【0055】
<第二実施形態>
図1及び図2では、第一実施形態として、接着層12を備えた合わせガラス100を示したが、本発明では、このような接着層12を有さず、耐熱結晶化ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板10の間に樹脂フィルム11を挟み込み、熱融着によって合わせガラスを構成しても構わない。図3は、本発明の第二実施形態に係る合わせガラス200の斜視図であり、2枚のガラス板10を、樹脂フィルム11を介して一体化してある。合わせガラス200は、2枚のガラス板10の内の少なくとも1枚が耐熱結晶化ガラスであればよい。本実施形態においては、樹脂フィルム11にガラス板10の色調を調整する調整剤を含めてある。これにより、合わせガラス200の透明感が向上する。なお、調整剤としては、第一実施形態で説明した調整剤と同じものを使用することができる。
【0056】
熱融着可能な樹脂フィルムとしては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、フロリネーテッドエチレンプロピレン(FEP)、4フッ化エチレン−パーフロロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、4フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等が挙げられる。これらのうち、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)が好ましい。樹脂フィルムの厚さは、0.2〜2mmが好ましい。これにより、合わせガラス200は、高い防火・安全性能を備えた防火安全ガラスとなり得る。樹脂フィルムの厚みが0.2mm未満では、合わせガラス200が所望の耐衝撃性を得ることは困難である。一方、樹脂フィルム11の厚みが2mmを超えると、合わせガラス200の透明性を確保することが困難となるだけでなく、万一の火災発生時に樹脂フィルム11が溶融・分解することで煙の発生量が大幅に増加するおそれがある。
【0057】
ここで、上記第一実施形態及び第二実施形態に係る合わせガラス100、200の構成を例示する。ただし、本発明の合わせガラスは、以下の構成に限定されない。
(1)耐熱結晶化ガラス+THV樹脂フィルム+耐熱結晶化ガラス
(2)耐熱結晶化ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+耐熱結晶化ガラス
(3)耐熱結晶化ガラス+光硬化性接着剤+ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム+光硬化性接着剤+他の耐熱板ガラス(例えば、無アルカリガラス(日本電気硝子社製OA−10)、高歪点ガラス(日本電気硝子社製PP8)等)
(4)他の耐熱板ガラス+THV樹脂フィルム+耐熱結晶化ガラス+THV樹脂フィルム+他の耐熱板ガラス
(5)耐熱結晶化ガラス+ポリビニルブチラール樹脂(PVB)+耐熱結晶化ガラス
【0058】
<第三実施形態>
図4は、本発明の第三実施形態であり、第一実施形態に係る合わせガラス100を用いた防火設備300の正面図、及び枠体20の一部を外して側方から見た防火設備300の要部拡大断面図である。要部拡大断面図中の矢印は、防火設備300の正面側を示したものである。図4に示されるように、防火設備300は、合わせガラス100を、枠体20に嵌め込んで、合わせガラス100の周縁部と枠体20の溝部21との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止して構成される。具体的には、枠体20には合わせガラス100の周縁部を受け入れる溝部21が形成されており、当該溝部21の幅は合わせガラス100の厚みより大きく構成されている。合わせガラス100の周縁部外側には、耐熱性の材料であるセラミックファイバーブランケット22が設けられている。合わせガラス100の周縁部と溝部21との間の隙間には、防火性シリコーン23が充填されている。これにより、万一の火災発生時に炎や煙を遮断して、延焼を最小限に食い止めることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、第一実施形態に係る合わせガラス100を用いているが、第二実施形態に係る合わせガラス200を枠体20に嵌め込んで防火設備を構成することも当然に可能である。防火設備の作製方法の一例を以下に示すが、この作製方法に限定されない。
【0060】
先ず、合わせガラス100の左右側面及び下部に取り付けられる枠体20の一部を作製する。防火設備に用いられる鋼材(例えば、アルミニウム合金板、溶融亜鉛メッキ鋼板等)をコの字型の断面を有する長尺物に加工し、内側に合わせガラス100の周縁部を受け入れる溝部21を形成する。長尺物を合わせガラス100の形状に合うように組み合わせ、内側の溝部21に沿って合わせガラス100をスライドさせ、合わせガラス100の三方を枠体20に嵌め込む。その後、別に作製した枠体20の一部であるコの字型の断面を有する長尺物を合わせガラス100の上部に嵌め込み、完全な枠体20とする。合わせガラス100の周縁部と枠体20の溝部21との間に発生する隙間には、防火性シリコーン23を封入する。防火性シリコーン23は、例えば、SE5007(東レ・ダウコーニング社製)、シーラント40N(信越シリコーン社製)、シーラント74(信越シリコーン社製)等を、コーキングガンを用いて充填される。
【実施例】
【0061】
本発明の合わせガラスの実施例について説明する。合わせガラスを構成するに際し、本発明に従い、ガラス板の色調を調整する調整剤を樹脂フィルム又は接着剤に含ませてある。完成した合わせガラスについて、色調を測定した。
【0062】
<実施例1>
合わせガラスを構成するガラス板は、最終的な組成がSiO 67重量%、Al 20重量%、LiO 4重量%、ZrO 3重量%、TiO 2重量%となるように、溶融したガラスをロールアウト法により製板し、最高温度900℃で結晶化し、その後両面を研磨した耐熱結晶化ガラスである。この耐熱結晶化ガラスは、30〜750℃の温度範囲において、−3×10−7/Kの平均線膨張係数を有し、幅1200mm×高さ2400mm×厚み4mmのサイズを有する。
耐熱結晶化ガラスを2枚準備し、その間に0.3mm厚のポリカーボネートフィルムを配し、三者をアクリル樹脂を主成分とする紫外線硬化樹脂を含有する接着剤で貼り合わせることにより合わせガラスを得た。接着層は2層であり、1層の厚みは0.2mmであった。接着剤には、調整剤として、青色顔料である銅フタロシアニンのβ結晶であるC.I.ピグメントブルー15:3が0.5重量%添加されている。これにより、合わせガラスの色調は、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxが0.300〜0.317の範囲となった。
【0063】
<像確認試験1>
合わせガラスの一方のガラス面から1m離れた場所に観察者を配置し、合わせガラスの他方のガラス面から1m離れた場所に蛍光灯を設置した。観察者は、合わせガラスを通して、蛍光灯の像を確認した。合わせガラスを通して見た蛍光灯は、蛍光灯を直接見た場合と比較して、色調に大きな差異は認められなかった。さらに、観察者は、蛍光灯が配されている地点と略同じ位置から、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みを確認した。その結果、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みはほとんど確認されなかった。
【0064】
<実施例2>
耐熱結晶化ガラスとして、実施例1と同じものを使用した。耐熱結晶化ガラスを2枚準備し、その間に0.3mm厚のポリカーボネートフィルムを配し、三者をアクリル樹脂を主成分とする紫外線硬化樹脂を含有する接着剤で貼り合わせることにより合わせガラスを得た。接着層は2層であり、1層の厚みは0.2mmであった。接着剤には、調整剤として、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3の分散性を向上させたC.I.ピグメントブルー15:4が1.0重量%添加されている。これにより、合わせガラスの色調は、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxが0.300〜0.317の範囲となった。
【0065】
<像確認試験2>
合わせガラスの一方のガラス面から1m離れた場所に観察者を配置し、合わせガラスの他方のガラス面から1m離れた場所に蛍光灯を設置した。観察者は、合わせガラスを通して、蛍光灯の像を確認した。合わせガラスを通して見た蛍光灯は、蛍光灯を直接見た場合と比較して、色調に大きな差異は認められなかった。さらに、観察者は、蛍光灯が配されている地点と略同じ位置から、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みを確認した。その結果、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みはほとんど確認されなかった。
【0066】
<実施例3>
耐熱結晶化ガラスとして、実施例1と同じものを使用した。耐熱結晶化ガラスを2枚準備し、その間に0.3mm厚のポリカーボネートフィルムを配し、三者をアクリル樹脂を主成分とする紫外線硬化樹脂を含有する接着剤で貼り合わせることにより合わせガラスを得た。接着層は2層であり、1層の厚みは0.2mmであった。ポリカーボネートフィルムには、調整剤として、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:4が1.0重量%添加されている。これにより、合わせガラスの色調は、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxが0.300〜0.317の範囲となった。
【0067】
<像確認試験3>
合わせガラスの一方のガラス面から1m離れた場所に観察者を配置し、合わせガラスの他方のガラス面から1m離れた場所に蛍光灯を設置した。観察者は、合わせガラスを通して、蛍光灯の像を確認した。合わせガラスを通して見た蛍光灯は、蛍光灯を直接見た場合と比較して、色調に大きな差異は認められなかった。さらに、観察者は、蛍光灯が配されている地点と略同じ位置から、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みを確認した。その結果、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みはほとんど確認されなかった。
【0068】
<実施例4>
耐熱結晶化ガラスは、実施例1と同じ耐熱結晶化ガラスを使用した。上記耐熱結晶化ガラス2枚の間にテトラフルオロエチレン(TFE)40重量%、ヘキサフルオロプロピレン(HEP)20重量%、ビニリデンフルオライド(VBF)40重量%の共重合体(THV)からなる厚さ0.5mmの樹脂フィルムを配し、熱圧着により貼り合わせて合わせガラスを得た。THVフィルムには、調整剤として、青色顔料であるC.I.ピグメントブルー15:4が1.0重量%添加されている。これにより、合わせガラスの色調は、CIEクロマトダイアグラムのxyY表示系において、反射光のxが0.300〜0.317の範囲となった。
【0069】
<像確認試験4>
合わせガラスの一方のガラス面から1m離れた場所に観察者を配置し、合わせガラスの他方のガラス面から1m離れた場所に蛍光灯を設置した。観察者は、合わせガラスを通して、蛍光灯の像を確認した。合わせガラスを通して見た蛍光灯は、蛍光灯を直接見た場合と比較して、色調に大きな差異は認められなかった。さらに、観察者は、蛍光灯が配されている地点と略同じ位置から、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みを確認した。その結果、蛍光灯の合わせガラスへの映り込みはほとんど確認されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る合わせガラス、及び合わせガラスを備えた防火設備は、百貨店、スーパー等の商業施設、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、大型オフィスビル等の民間施設において、防火安全ガラス及び防火設備として利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
10(10a,10b) ガラス板
11 樹脂フィルム
12 接着層
20 枠体
21 溝部
22 セラミックファイバーブランケット
23 防火性シリコーン
100,200 合わせガラス
300 防火設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板を、樹脂フィルムを介して、接着剤で貼り合せた合わせガラスであって、
前記樹脂フィルム及び前記接着剤の少なくとも何れか一方に、前記ガラス板の色調を調整する調整剤を含ませてある合わせガラス。
【請求項2】
前記結晶化ガラスの平均線膨張係数は、30〜750℃の温度範囲において、−10〜10×10−7/Kである請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】
前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1又は2に記載の合わせガラス。
【請求項4】
前記接着剤は、紫外線硬化樹脂を主成分とする光硬化型接着剤である請求項1〜3の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項5】
結晶化ガラスから構成される耐熱板ガラスを少なくとも一枚含む複数のガラス板の間に、樹脂フィルムを挟み込んで熱融着した合わせガラスであって、
前記樹脂フィルムに、前記ガラス板の色調を調整する調整剤を含ませてある合わせガラス。
【請求項6】
前記樹脂フィルムは、テトラフルオロエチレン(TFE)−ヘキサフロオロプロピレン(HFP)−ビニリデンフルオライド(VDF)共重合体(THV)である請求項5に記載の合わせガラス。
【請求項7】
前記調整剤は、アルミ−コバルト酸化物、アルミ−亜鉛−コバルト酸化物、硅素−コバルト酸化物、硅素−亜鉛−コバルト酸化物、及びフタロシアニン系化合物からなる群から選択される少なくとも一つの青色顔料である請求項1〜6の何れか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の合わせガラスと、
前記合わせガラスを嵌め込む枠体と、
を備え、
前記枠体に前記合わせガラスの周縁部を受け入れる溝部が設けてあり、前記合わせガラスを前記枠体に嵌め込んだ状態において、前記合わせガラスの周縁部と前記溝部との間に発生する隙間を耐熱性材料で封止してある防火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82602(P2013−82602A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20719(P2012−20719)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】