説明

合成樹脂から一体に成形されたスパウト

【課題】 合成樹脂から一体成形されているにも拘らず、容器の搬送時等におけるスコアの偶発的破断を発生せしめることなく、スパウトを開封する際には充分容易にスコアを破断することができるスパウトを提供する。
【解決手段】 頂面壁(4)のみならず円筒壁(6)の上端部にも破断スコア(22、24)によって規定された切取領域(20)を形成し、円筒壁(6)に形成された破断スコア(22、24)から破断を開始するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチと称されている合成樹脂フィルム製容器に好適に適用することができるスパウト(注出口)に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の如く、詰め替え用各種洗浄液のための容器としてパウチが広く実用に供されている。そして、かかるパウチに適用されるスパウトとして、開封した後の再シ−ルが不必要である点に鑑み、下記特許文献1に開示されている如く、安価に製作することができる一体成形パウチ、即ち低密度ポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から一体に成形されたスパウト、が提案されている。かかるスパウトは円形頂面壁とこの頂面壁の周縁から垂下する円筒壁とを有し、頂面壁にはその周縁に沿って延在する円形スコアが形成され、そして更に頂面壁の上面には連結筒を介して円形把持片が接続されている。スパウトを開封して内容液を排出する際には、把持片を把持して頂面壁に形成されている円形スコアに応力を生成して円形スコアを破断し、頂面壁及びこれに接続された把持片を除去して円筒壁の上面を開口する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−210321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者等の経験によれば、合成樹脂から一体に成形された従来のスパウトには、把持片を把持して円形スコアを破断する時に、特に円形スコアの破断開始時に、相当大きな力を要し、スパウトの開封が必ずしも容易でない、という解決すべき問題が存在する。かかる問題を解決するためには、円形スコアの残留厚さを著しく小さく設定することが意図されるが、円形スコアの残留厚さを著しく小さく設定すると、容器の搬送の際等に円形スコアが偶発的に破断されてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、合成樹脂から一体成形されているにも拘らず、容器の搬送時等におけるスコアの偶発的破断を発生せしめることなく、スパウトを開封する際には充分容易にスコアを破断することができる、新規かつ改良されたスパウトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意研究及び実験の結果、上述したとおりの従来のスパウトにおいては破断すべきスコアが単純な円形である故に破断開始に相当大きな力を要することを認識し、そしてかかる認識に基づき、頂面壁のみならず円筒壁の上端部にも破断スコアによって規定された切取領域を形成し、円筒壁に形成された破断スコアから破断を開始するようになすことによって、上記主たる技術的課題を達成することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するスパウトとして、円形頂面壁と該頂面壁の周縁から垂下する円筒壁とを有する、合成樹脂から一体に成形されたスパウトにおいて、
該円筒壁の上端部には、周方向に間隔をおいて該頂面壁と該円筒壁の境界域から下方に延びる一対の縦破断スコア間に規定された切取領域が配設されており、
該頂面壁には、該一対の縦破断スコア間を除いて該頂面壁と該円筒壁との該境界域を円弧状に延びる弧状破断ラインによって規定された切取領域が配設されており、
該円筒壁の上端部に規定されている該切取領域には把持片が付設されており、該把持片を把持して変位せしめることによって該一対の縦破断スコア及び該弧状破断スコアを破断することによって、該円筒壁の上端部に規定された該切取領域と該頂面壁に規定された該切取領域とが一体に切り取られる、
ことを特徴とするスパウトが提供される。
【0008】
好ましくは、該円筒壁の上端部には、外周面を局部的に平坦面にせしめることによって生成され周方向中心に向かって厚さが漸次減少する薄肉領域が配設されており、該一対の縦破断スコアは該薄肉領域に形成されている。該把持片は該円筒壁の上端部に規定された該切取領域の外周面に接続された接続部から下方に延びる垂下片から構成、或いは該円筒壁の上端部外周面に沿って延在し且つ該円筒壁の上端部に規定された該切取領域に対向して位置する部分の内周面が該円筒壁の上端部に規定された該切取領域に接続されているリングから構成されているのが好的である。該一対の縦破断スコアの一方の上端から該頂面壁内に延出する付加破断スコアが形成されているのが好都合である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のスパウトにおいては、応力を集中せしめることができる、円筒壁の上端部に形成されている一対の縦破断スコアから破断が開始される故に、スコアの残留厚さを著しく小さく設定する必要なくして、スコアの破断を充分容易に開始してスパウトを開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従って構成されたスパウトの好適実施形態を示す斜面図。
【図2】図1に示すスパウトの正面図。
【図3】図1に示すスパウトの側面図。
【図4】図1に示すスパウトの平面図。
【図5】図1に示すスパウトの、図4の線v−vに沿った断面図。
【図6】図1に示すスパウトを、破断スコアを破断して開封した状態で示す斜面図。
【図7】本発明に従って構成されたスパウトの変形例を示す平面図。
【図8】本発明に従って構成されたスパウトの他の変形例を示す平面図。
【図9】本発明に従って構成されたスパウトの更に他の変形例を示す平面図。
【図10】図9に示すスパウトの、図9の線x−xに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に従って構成されたスパウトの好適実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0012】
図1乃至図5を参照して説明すると、本発明に従って構成された、全体を番号2で示すスパウトは、その全体が軟質ポリエチレンの如き適宜の合成樹脂から一体に射出成形されている。かかるスパウト2は円形頂面壁4とこの頂面壁4の周縁から垂下する円筒壁6とを有する。
【0013】
円筒壁6の軸線方向中間部の外周には軸線方向に間隔をおいて2個の支持フランジ10及び12が形成されている。実質上水平に延在する支持フランジ10及び12は菱形の先端部を平行両側縁及び平行両端縁で切断した形状である。支持フランジ10と支持フランジ12との間には鉛直に延びる2個の補強片14及び水平に延びる補強片16が配設されている。支持フランジ12よりも下方において、円筒壁6の外周には、支持フランジ10及び12と略同一形状で且つ軸線方向に間隔をおいて水平に延在する4個の突出フランジ、鉛直に延びる種々の補強片を含むそれ自体は周知のパウチ装着手段18も配設されている。
【0014】
本発明に従って構成されたスパウト2においては、円筒壁6の上端部には切取領域20が規定されていることが重要である。図2及び図5と共に図6(図6においては後述する縦破断スコア22、横破断スコア24及び弧状破断スコア30が破断された状態を図示している)を参照することによって理解される如く、図示の実施形態においては、2個の縦破断スコア22と横破断スコア24によって切取領域20が規定されている。図6に明確に図示する如く、円筒壁6の上端部における特定角度領域には、外周面を局部的に平坦面にせしめることによって生成され周方向中心に向かって厚さが漸次減少する薄肉領域26が配設されている。上記縦破断スコア22及び横破断スコア24は薄肉領域26に配設されており、縦破断スコア22は周方向に間隔をおいて頂面壁4と円筒壁6との境界域から下方に延びており、横破断スコア24は2個の縦破断スコア22の下端間を接続している。2個の縦破断スコア22は下方に向かって相互に接近する方向に傾斜せしめられており、それ故に切取領域20は下方に向かって周方向幅が漸次低減する略逆台形状であるが、所望ならば2個の縦破断スコア22を軸線方向に平行に延在せしめる(従って、切取領域20は略矩形状である)こともでき、或いは傾斜して延びる2個の縦破断スコア22の下端を直接的に接続する(従って、切取領域20は逆2等片三角形状である)こともできる。縦破断スコア22及び横破断スコア24は円筒壁6の外周面(又は内周面)に溝を形成して残留厚さを低減せしめた形態でよい。
【0015】
本発明に従って構成されたスパウト2においては、更に、頂面壁4にも切取領域28が規定されていることが重要である。かかる切取領域28は、上記一対の縦破断スコア22間を除いて頂面壁4の周縁を円弧状に延びている弧状破断スコア30によって規定されている。弧状破断スコア30の片端は縦破断スコア22の一方の上端に接続され、多端は縦破断スコア22の他方の上端に接続されている。弧状破断スコア30は頂面壁4の上面即ち外面(又は下面即ち内面)に溝を形成して残留厚さを低減した形態でよい。
【0016】
更に、本発明に従って構成されたスパウト2においては、円筒壁6に規定された切取領域20に把持片32が付設されていることが重要である。図1、図3及び図5を参照することによって理解される如く、図示の実施形態においては、把持片32は、切取領域20の形状に対応した部位34を介して切取領域20に接続された接続部即ち上端部から軸線方向下方に向かって半径方向外方に傾斜して延び、次いで軸線方向下方に延びている垂下片から構成されている。把持片32の下端部は略円形状に拡大されており、その内面は円錐形状の突出片36を介して円筒壁6の外周面に分離可能に接続されている。
【0017】
上述したとおりのスパウト2は、図1に図示する如く、その下部即ちパウチ装着手段18を、内溶液が充填されているパウチ38(その一部のみを図1に二点鎖線で図示する)の排出開口内に挿入され、パウチ38の排出開口がパウチ装着手段18の周囲に加熱溶着される。かくして、パウチ38の排出開口にスパウト2が固定され、パウチ38の排出開口が密封される。
【0018】
パウチ38の内容液を排出する際には、把持片32の下端部を把持して把持片32の下部を半径方向外方乃至上方に強制して、把持片32の下端部に配設されている突出片36の先端を破断して円筒壁6の外周面から分離せしめる。次いで、把持片32を更に上方に強制する。かくすると、把持片32の上端部を切取領域20に接続している突出部34を介して切取領域20の横破断スコア24及び一対の縦破断スコア22に応力が生成され、これによって横破断スコア24が破断され、次いで一対の縦破断スコア22が下端から上端に向かって漸次破断される。かような横破断スコア24及び一対の縦破断スコア22の破断は、応力が比較的狭い限定された部位に集中して生成され、そしてまた把持片32を上方に強制することにより横破断スコア24及び一対の縦破断スコア22に効果的に応力が加えられる故に、充分容易に実現され得る。
【0019】
横破断スコア24及び一対の縦破断スコア22の破断に続いて、把持片32を更に上方乃至半径方向反対側に強制すると、一対の縦破断スコア22の一方又は両方に続いて弧状スコア30がその片端から或いはその両端から漸次破断され、かくして切取領域20及び切取領域28が把持片32と共にスパウト2の他の部位から切り離され、図6に明確に図示する如く、円筒壁6の上面が開口される。しかる後においては、開口された円筒壁6の上面を通して内容液を排出することができる。
【0020】
図7は本発明に従って構成されたスパウトの変形例を図示している。図7に図示するスパウト102においては、頂面壁104に一対の縦破断スコア(図示していない)の一方(図7において上方に位置する縦破断スコア)の上端から頂面壁104内に弧状に延出する付加破断スコア131が形成されている。かようなスパウト102においては、一対の縦破断スコアの破断に続いて付加破断スコア131を破断し、次いで把持片132を図7において下方から反時計方向に漸次強制乃至変位することによって、弧状破断スコア130をその片端(図7において下方に位置する端)から他端に向けて円滑に破断を進行せしめることができる。
【0021】
図8は本発明に従って構成されたスパウトの他の変形例を図示している。図8に図示するスパウト202においては、頂面壁204に一対の縦破断スコア(図示していない)の一方(図8において上方に位置する縦破断スコア)の上端から頂面壁204内に直線状に延出する付加破断スコア231が形成されている。かようなスパウト202においては、一対の縦破断スコアの破断に続いて付加破断スコア231を破断し、次いで把持片232を図7において下方から反時計方向に漸次強制乃至変位することによって、弧状破断スコア230をその片端(図8において下方に位置する端)から他端に向けて円滑に破断を進行せしめることができる。
【0022】
図9及び図10は本発明に従って構成されたスパウトの更に他の変形例を図示している。図9及び図10に図示するスパウト302においては、把持片332は円筒壁306の上端部外周面に沿って延在しているリングから構成されている。リングから構成されている把持片332の、円筒壁306に規定されている切取領域320に対向して位置する部分の内周面は、切取領域320の形状に対応した形状の突出部334を介して切取領域320に接続されている。かようなスパウト302においては、パウチ内に収容されている内容液を排出する際には、把持片332の、切取領域320に対して直径方向反対側に位置する部位を把持して把持片332を上方及び直径方向反対側に向けて変位し、次いで必要に応じてリングから構成された把持片332に指を通し、把持片332を更に上方に強制して、横破断スコア及び縦破断スコア(図示していない)を破断し、そしてまた弧状破断スコア330を破断し、切取領域320及び328と共に把持片332をスパウト302の他の部分から切り取って円筒壁306の上面に開口を生成する。
【符号の説明】
【0023】
2:スパウト
4:頂面壁
6:円筒壁
20:切取領域
22:縦破断スコア
24:横破断スコア
26:薄肉領域
28:切取領域
30:弧状破断スコア
32:把持片
38:パウチ
102:スパウト
104:頂面壁
130:弧状破断スコア
131:付加破断スコア
202:スパウト
204:頂面壁
230:弧状破断スコア
231:付加破断スコア
302:スパウト
306:円筒壁
320:切取領域
330:弧状破断スコア
332:把持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形頂面壁と該頂面壁の周縁から垂下する円筒壁とを有する、合成樹脂から一体に成形されたスパウトにおいて、
該円筒壁の上端部には、周方向に間隔をおいて該頂面壁と該円筒壁の境界域から下方に延びる一対の縦破断スコア間に規定された切取領域が配設されており、
該頂面壁には、該一対の縦破断スコア間を除いて該頂面壁と該円筒壁との該境界域を円弧状に延びる弧状破断ラインによって規定された切取領域が配設されており、
該円筒壁の上端部に規定されている該切取領域には把持片が付設されており、該把持片を把持して変位せしめることによって該一対の縦破断スコア及び該弧状破断スコアを破断することによって、該円筒壁の上端部に規定された該切取領域と該頂面壁に規定された該切取領域とが一体に切り取られる、
ことを特徴とするスパウト。
【請求項2】
該円筒壁の上端部には、外周面を局部的に平坦面にせしめることによって生成され周方向中心に向かって厚さが漸次減少する薄肉領域が配設されており、該一対の縦破断スコアは該薄肉領域に形成されている、請求項1記載のスパウト。
【請求項3】
該把持片は該円筒壁の上端部に規定された該切取領域の外周面に接続された接続部から下方に延びる垂下片から構成されている、請求項1又は2に記載のスパウト。
【請求項4】
該把持片は該円筒壁の上端部外周面に沿って延在し且つ該円筒壁の上端部に規定された該切取領域に対向して位置する部分の内周面が該円筒壁の上端部に規定された該切取領域に接続されているリングから構成されている、請求項1又は2に記載のスパウト。
【請求項5】
該一対の縦破断スコアの一方の上端から該頂面壁内に延出する付加破断スコアが形成されている、請求項1から4までのいずれかに記載のスパウト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−173615(P2011−173615A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38785(P2010−38785)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【Fターム(参考)】