説明

合成樹脂製キャップ

【課題】不正開封の事実を容易に認識できると共に、装着時における弱化部の破断を防止可能な合成樹脂製キャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体(10)に下面開口の窓部(15)を形成し、該窓部の一方の縦辺の下端部から破断用横辺(15b)を突設して、該破断用横辺より係止片(17)を立設し、該破断用横辺の先端部又は係止片を前記窓部の他方の縦辺に弱化部(20)を介して連結し、前記破断用横辺(15b)上方のキャップ本体側壁(12)部分より薄肉の薄肉板(16)を突設して、該薄肉板を前記係止片へ一体に連結させると共に、該係止片の上端を容器のねじ部(3)より下方の口部(2)部分外面に形成した周方向へ延びる係止突部(4)下面へ係止可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器の口部へ螺合させる合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
流通時における不正開封を防止すべく、瓶口に装着されるキャップのピルファープルーフ裾部の下端部に折返し部を設けて瓶口のあご部へ係止させると共に、ピルファープルーフ裾部とキャップ上部との境界部に破断線等を設けておき、開蓋すると破断線が破断してキャップ上部のみが抜けて開蓋され、ピルファープルーフ裾部は瓶口のあご部下に定着するため、開蓋後、再度キャップ上部を装着してもキャップ上部とピルファープルーフ裾部とが一体にならないことから不正開封の事実を認識可能にすると共に、装着時、ピルファープルーフ裾部の折返し部をあご部に通過可能に接触させ、ピルファープルーフ裾部内面はあご部に接触させないようにして装着時における破断線部分でのピルファープルーフ裾部の破壊を防止するようにした合成樹脂製キャップが従来技術として知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−103852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術では、開蓋後、再度キャップ上部を装着した場合に、キャップ上部とピルファープルーフ裾部とが一体にならないにしても不正開封の痕跡としては明瞭でないことからその事実を見逃すおそれがあった。また、キャップの装着時に、ピルファープルーフ裾部内面をあご部に接触させないようにして破断線部分での破壊を防止可能にしているが、ピルファープルーフ裾部の折返し部があご部を通過する際に、破断線部分に拡径方向への力がかかることは避けられず、このため破断線部分で破壊が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、不正開封の事実を容易に認識できると共に、装着時における弱化部の破断を防止可能な合成樹脂製キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、容器1の口頸部2外面へ螺合させた合成樹脂製キャップにおいて、
キャップ本体(10)のねじ部(13)より下方の側壁(12)部分に横辺(15a)と一対の縦辺15c、15dから構成される下面開口の窓部15を形成し、
該窓部の一方の縦辺の下端部から破断用横辺15bを突設して、該破断用横辺より係止片17を立設し、該破断用横辺の先端部又は係止片を前記窓部の他方の縦辺に弱化部20を介して連結し、
前記破断用横辺15b上方のキャップ本体側壁12部分より薄肉の薄肉板16を突設して、該薄肉板を前記係止片へ一体に連結させると共に、該係止片の上端を容器のねじ部3より下方の口部2部分外面に形成した周方向へ延びる係止突部4下面へ係止させ、
前記キャップ本体10の装着時に、前記係止片17内面が前記係止突部4に係合して外方へ弾性変形可能に、かつ該係止突部4通過後、前記係止片17が弾性復元してその上端が容器のねじ部3より下方の口頸部2部分外面に形成した前記係止突部4の下方に位置することが可能に設け、
開蓋時における前記キャップ本体10の上昇で前記弱化部20が破断可能に、かつ前記窓部の一方の縦辺15dと前記係止片17との間の前記薄肉板16部分が斜め下方に伸びる方向へ塑性変形して前記係止片17が下方へ変位可能に設けたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記係止片17上面と前記容器口部の係止突部4下面とのそれぞれを内縁が外縁より高いテーパ面に形成したことを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明は前記薄肉板16を突設するキャップ本体側壁12部分側の前記係止片17上端部の端部を前記キャップ本体側壁12部分方向へ円弧状に膨出させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、開蓋時におけるキャップ本体の上昇で弱化部が破断可能に、かつ窓部の一方の縦辺と係止片との間の薄肉板部分が斜め下方に伸びる方向へ塑性変形可能に設けたので、不正開封後、薄肉板を原形に復させることができず、また、薄肉板部分が下方に伸びる方向へ塑性変形することで係止片が下方へ変位可能に設けたので、不正開封の痕跡が明瞭であり、したがって、不正開封の事実を看過するおそれがない。
【0010】
また、本発明は、キャップ本体の装着時に、係止片内面が係止突部に係合して外方へ弾性変形可能に設けたので、装着時に、弱化部と薄肉板とに装着時の力がかかることがなく、したがって、弱化部と薄肉部が装着時に破壊するおそれがない。
【0011】
さらに、本発明は、係止片上面と容器口部の係止突部下面とのそれぞれを内側が外側より高いテーパ面に形成したので、開蓋時、キャップ本体が上昇しても係止片が係止突部から容易に離脱することがないため、弱化部が確実に破断すると共に、薄肉板の伸び変形が確実に確保され、また、キャップ本体が回動しても係止片はほぼ静止状態を保持するため、キャップ本体の回動力が効率良く薄肉板に作用することになり、したがって、薄肉板の伸び変形をより大きくすることができる。
【0012】
さらに、本発明は、係止片の上端部における端部を円弧状に膨出させたので、開蓋時、係止片が係止突部へ係止し易く、したがって、係止片の下方への変位が確実になされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a) 本発明に係る合成樹脂製キャップの図2(b)のA−A線に沿う断面図である。 (b) 同キャップの正面図である。
【図2】(a)同キャップの平面図である。 (b)同キャップの左側半断面図である。
【図3】要部を示す拡大断面図である。
【図4】作用説明図である。
【図5】作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
本発明に係る合成樹脂製キャップが装着される容器1は、図1および図2に示すように胴部の上端から肩部を介して口頸部2を起立している。口頸部2の外面にはねじ部を構成する雄ねじ3が形成されており、雄ねじ3より下方の口頸部2部分の外面には係止突部を構成する環状突条4が周設されている。
【0016】
容器1の口頸部2に装着される合成樹脂製キャップのキャップ本体10は天壁11から側壁12を垂下しており、側壁12の内面にはねじ部を構成する雌ねじ13が形成されている。雌ねじ13より下方の側壁12部分は拡径されて大内径部14に形成されており、大内径部14には下面開口の窓部15が開口されている。窓部15は横辺15aと、左右一対の縦辺15c、15dとで囲まれている。
【0017】
該窓部の一方の縦辺15dの下端部からキャップ本体側壁12と同一肉厚の破断用横辺15bを突設して、該破断用横辺より係止片17を立設し、破断用横辺の先端部又は係止片17を窓部の他方の縦辺15cに弱化部20を介して連結すると共に、縦辺15cと反対側(縦辺15d側)の破断用横辺15b上方のキャップ本体側壁12部分より薄肉の薄肉板16を突設して係止片17へ一体に連結させる。
【0018】
本実施形態では、係止片17はその下部が内方へ傾斜する傾斜部17aに形成され、傾斜部17aから起立部17bが起立していて、起立部17bの上端が係止突部(環状突条4)下方に配設される。なお、起立部17b上面と容器口部の係止突部(環状突部4)下面とのそれぞれは内縁が外縁より高いテーパ面であるのが好ましい。こうすることにより開蓋時、キャップ本体が上昇しても係止片が係止突部から容易に離脱することがない。
【0019】
次に作用について説明する。
容器の口頸部2にキャップ本体10を装着すると、係止片17の傾斜部17a内面が係止突部(環状突条4)に係合して外方へ弾性変形する。さらなるキャップ本体10の下降で傾斜部17aと起立部17bが係止突部4を通過すると、係止片17が内方へ弾性復元して起立部17bの上端が係止突部4下面に係止する。その間、係止片17と窓部の一方の縦辺15dとの間の薄肉板16部分および弱化部20には下方への力が殆どかからないため、これらの部分が装着時に破断するおそれがない。
【0020】
開蓋に際して、キャップ本体10を反時計方向へ螺動させると、キャップ本体10は回動しつつ上昇するが、係止片17はその上端が係止突部4下面に係止するため、ほぼ静止状態を保持する。このため弱化部20が破断すると共に、窓部15の一方の縦辺15dと係止片17との間の薄肉板16部分が斜め下方に伸びる方向へ塑性変形して係止片17が下方へ変位する(図4および図5)。開蓋後、リキャップしても係止片17は元の形状に復元することはできず、したがって、外部から容易に不正開封の事実を認識できる。
【0021】
なお、上記では、容器と一体成形の口頸部2に本発明に係る合成樹脂製キャップを適用する例について説明したが、これに限定されることなく、例えば、容器の開口(注出口)に装着した別体のスパウト(注出部材)に本発明に係る合成樹脂製キャップを螺合させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は容器の口部へ螺合させる合成樹脂製キャップの分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 容器
2 口頸部
3 ねじ部(雄ねじ)
4 係止突部(環状突条)
10 キャップ本体
12 側壁
13 ねじ部(雌ねじ)
15 窓部
15a 横辺
15c、15d 縦辺
15b 破断用横辺
16 薄肉板
17 係止片
20 弱化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(1)の口頸部(2)外面へ螺合させた合成樹脂製キャップにおいて、
キャップ本体(10)のねじ部(13)より下方の側壁(12)部分に横辺(15a)と一対の縦辺(15c、15d)から構成される下面開口の窓部(15)を形成し、
該窓部の一方の縦辺の下端部から破断用横辺(15b)を突設して、該破断用横辺より係止片(17)を立設し、該破断用横辺の先端部又は係止片を前記窓部の他方の縦辺に弱化部(20)を介して連結し、
前記破断用横辺(15b)上方のキャップ本体側壁(12)部分より薄肉の薄肉板(16)を突設して、該薄肉板を前記係止片へ一体に連結させ、
前記キャップ本体(10)の装着時に、前記係止片(17)内面が前記係止突部(4)に係合して外方へ弾性変形可能に、かつ該係止突部(4)を通過後、前記係止片(17)が弾性復元してその上端が容器のねじ部(3)より下方の口部(2)部分外面に形成した前記係止突部(4)の下方に位置することが可能に設け、
開蓋時における前記キャップ本体(10)の上昇で前記弱化部(20)が破断可能に、かつ前記窓部の一方の縦辺(15d)と前記係止片(17)との間の前記薄肉板(16)部分が斜め下方に伸びる方向へ塑性変形して前記係止片(17)が下方へ変位可能に設けた
ことを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記係止片(17)上面と前記容器口部の係止突部(4)下面とのそれぞれを内縁が外縁より高いテーパ面に形成したことを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製キャップ。
【請求項3】
前記薄肉板(16)を突設するキャップ本体側壁(12)部分側の前記係止片(17)上端部の端部を前記キャップ本体側壁(12)部分方向へ円弧状に膨出させたことを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂製キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−232779(P2012−232779A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102495(P2011−102495)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】