説明

吊り込み装置一体式吊り足場

【課題】 吊り足場本体の上側で補強部材を横梁の長手方向に吊り込むことができるようにする。
【解決手段】 横梁12の上側に、長手方向両端側が横梁12の外側へ所要寸法ずつ突出する仮設梁部材15を所要間隔で載置し、各仮設梁部材15の横梁12の両ウェブ12aから所要寸法ずつ離れた個所の下側に、横梁12の長手方向に延びるレール兼連結部材16を一体に連結する。各仮設梁部材12の長手方向両端部に、横梁12の所要寸法下方位置に配置した吊り足場本体5の所要個所を吊りチェーン17を介して吊る。各レール兼連結部材16にチェーンブロック19付きのトロリー18を長手方向に走行可能に取り付けて吊り込み装置一体式吊り足場を形成する。横梁12の補強部材26は、吊り足場本体5の上側にて、トロリー18のチェーンブロック19に吊った状態で、トロリー18と共にレール兼連結部材16に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁構造物の横梁の下方に仮設する吊り足場本体を備えると共に、該吊り足場本体上にて所要の部材を上記横梁の長手方向に沿って吊り込む作業を行うための吊り込み装置を備えた吊り込み装置一体式吊り足場に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路の高架橋のような橋梁構造物の補強工事やメンテナンス工事を行う場合、該橋梁構造物の下方の道路や河川の運用を妨げない状態で上記補強工事等を実施できるようにするために、主桁の下方に吊り足場を広範囲に仮設することが一般的に行われている。
【0003】
上記吊り足場は、たとえば、図6にその一例の該略を示すように、橋梁構造物1の各主桁2の下フランジ2aにクランプ状に取り付けた吊り足場支持体3に、吊りチェーン4の上端側を掛けるようにして連結する。且つ大引材6と根太材7等で形成した格子枠の上側に足場板又は合板からなる床材8を載置した構成としてある吊り足場本体5を、上記主桁2の所要寸法下方位置に配置して、上記吊りチェーン4の下端部を、上記吊り足場本体5における各大引材6の所要個所にそれぞれ連結した構成としてある。
【0004】
9は上記吊り足場本体5の端部からの転落防止、飛来落下防止を図るための手摺や朝顔の如き転落・落下防止部材である(たとえば、特許文献1参照)。
【0005】
又、上記と同様に橋梁構造物の主桁の下方に吊り足場を仮設する場合、吊り足場本体を吊るための吊りチェーンの上端側を掛けるために、上記主桁のウェブの側面に吊りピース(足場吊り下げ金具)を突設することも従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
ところで、近年、首都高速道路の一部の高架橋のような老朽化が進んだ橋梁構造物では、図7に示すように、橋幅方向の両側に立設した一対の脚柱11の間に橋幅方向に延びる横梁12を連結してなる門型の鋼製橋脚10における上記各脚柱11と横梁12との隅角部の補強が求められることがある。この種の鋼製橋脚10の隅角部を補強する手段の1つとしては、たとえば、鋼製橋脚10における既設の横梁12の下側に、該横梁12の長手方向に沿って所要寸法延びる補強部材(図示せず)を配置して、該補強部材を、横梁12の長手方向に順次取り付けると共に、該横梁12の長手方向に配列される各補強部材同士を一体に連結することで、上記既設の横梁12の下側に、上記一対の脚柱11の間を繋ぐ新たな横梁(増設横梁)を増設する工法が行われてきている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0007】
上記のような鋼製橋脚10における横梁12の補強工事を行う場合は、該横梁12の下方に吊り足場を仮設する必要が生じるが、上記横梁12が箱断面の場合、図6に示したようなクランプ状に取り付ける吊り足場支持体3は用いることができない。
【0008】
そのため、上記鋼製橋脚10の箱断面の横梁12の下方に吊り足場を仮設する場合は、図8に示すように、上記横梁12の両ウェブ12aの外側面に吊りピース13をそれぞれ突設して、該各吊りピース13に、複数の吊りチェーン14の上端側をそれぞれ掛け、且つ、図6に示したと同様の図示しない大引材と根太材と床材等からなる構成として、上記横梁12の所要寸法下方位置に配置した吊り足場本体5の所要の複数個所に、上記各吊りチェーン14の下端部をそれぞれ連結した構成とすればよいと考えられる。
【0009】
【特許文献1】特開平11−324312号公報
【特許文献2】特開2002−161514号公報
【非特許文献1】下里哲弘,「首都高速道路の若返り作戦」,JSSC会誌,社団法人日本鋼構造協会,2003年10月,No.50,p.1−10
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、上記図8に示した吊り足場では、横梁12の両ウェブ12aの外側面に直接突設した各吊りピース13に、吊り足場本体5の所要個所を吊るための吊りチェーン14の上端側を掛けるようにしてあるため、上記各吊りチェーン14が、横梁12の両ウェブ12aの外側面に近い位置を通って上下方向に配置される。そのために、上記吊り足場本体5の上側では、上記横梁12の長手方向に連続するスペースが狭く、したがって、上記吊り足場本体5の上側にて、上記横梁12に取り付けるための補強部材(図示せず)を横梁12の長手方向に沿って搬送するためのスペースや、該補強部材を横梁12の長手方向に搬送するための搬送手段を設置するためのスペースを確保することが難しいというのが実状である。
【0011】
したがって、従来、上記横梁12の補強部材をその取り付け個所に搬入する場合は、上記横梁12に対する上記補強部材の取り付け位置と対応する上記吊り足場本体5の所要個所を部分的に解体して一旦取外し、この吊り足場本体5が部分的に取り外された個所を通して上記補強部材を真下より吊上げて横梁12に対する取り付け位置に配置させるようにし、その後、上記横梁12への取り付け位置に配置された補強部材の下方にて、上記一旦取り外してあった部分の吊り足場本体5を再び取り付けてから、上記補強部材の横梁12への取り付け作業を行う必要がある。
【0012】
よって、上記補強部材を横梁12への取り付け位置に搬入する作業に要する手間と時間が嵩んでしまっていた。又、上記吊り足場本体5を部分的に取り外す際には、該吊り足場本体5を取り外した部分からの転落や飛来落下を未然に防止するための対策を講じる必要も生じてしまう。
【0013】
しかも、上記鋼製橋脚10の横梁12の下方に存在する道路や河川等の占有の問題から上記横梁12の下部空間を利用することができない場合は、上記横梁12の補強部材をその取り付け位置へ搬入する搬入作業自体が困難になってしまう。
【0014】
そこで、本発明は、高架橋の鋼製橋脚における横梁のような横梁に、吊りピースの設置を要することなく該横梁の下方位置に吊り足場本体を配設することができ、且つ該吊り足場本体の上側を通して上記横梁の長手方向に沿って所要の部材を吊り込むことができる吊り込み装置を備えた吊り込み装置一体式吊り足場を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、橋梁構造物の横梁の上側に、横梁の長手方向と直交する方向に延びてその両端側が該横梁の外側へ所要寸法ずつ突出するようにしてある仮設梁部材を、上記横梁の長手方向に所要間隔で配列して載置し、該各仮設梁部材における横梁の外側に位置する部分の下側に、横梁の長手方向に平行に延びるレール兼連結部材をそれぞれ配置して、該各レール兼連結部材と、上記各仮設梁部材とを連結し、且つ上記各仮設梁部材の長手方向両端部と上記横梁の下方位置に配置した吊り足場本体とを索状物を介して連結し、更に、上記各レール兼連結部材に、吊り装置付きのトロリーを長手方向に走行可能に取り付けてなる構成とする。
【0016】
又、上記構成において、各レール兼連結部材を、I形鋼製とし、且つ該各レール兼連結部材の上フランジを各仮設梁部材の下側に取り付けると共に、吊り装置付きのトロリーを、上記各レール兼連結部材の下フランジに長手方向に走行自在に取り付けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吊り込み装置一体式吊り足場によれば、以下のような優れた効果を発揮する。(1)橋梁構造物の横梁の上側に、横梁の長手方向と直交する方向に延びてその両端側が該横梁の外側へ所要寸法ずつ突出するようにしてある仮設梁部材を、上記横梁の長手方向に所要間隔で配列して載置し、該各仮設梁部材における横梁の外側に位置する部分の下側に、横梁の長手方向に平行に延びるレール兼連結部材をそれぞれ配置して、該各レール兼連結部材と、上記各仮設梁部材とを連結し、且つ上記各仮設梁部材の長手方向両端部と上記横梁の下方位置に配置した吊り足場本体とを索状物を介して連結し、更に、上記各レール兼連結部材に、吊り装置付きのトロリーを長手方向に走行可能に取り付けてなる構成としてあるので、横梁に吊りピースを設けることなく該横梁の所要寸法下方位置に、吊り足場本体を、上記横梁より各仮設梁部材と各索状物を介し吊り下げて配設することができる。
(2)又、上記各仮設梁部材の長手方向両端部より上記吊り足場本体を吊る索状物と、上記横梁における長手方向と直交する方向の両端部との間に、横梁の長手方向に沿って延びる広いスペースを確保することができ、更に、上記仮設梁部材の所要個所同士を連結するための部材を、横梁の長手方向に延びるレールを兼ねたレール兼連結部材として、該レール兼連結部材に、吊り装置付きのトロリーを走行可能に取り付けてあるため、上記吊り足場本体の上方にて、上記トロリーの吊り装置に吊った所要の部材を、上記レール兼連結部材の長手方向に沿うトロリーの走行により横梁の長手方向に沿って吊り込むことができる。
(3)したがって、従来の吊り足場で要していた如き部材の下方からの搬入に伴う該吊り足場本体の部分的な解体、取り外し作業や、部材搬入後の吊り足場本体の再組立作業を不要にできて、部材搬入作業に要する手間及び時間を大幅に削減することができると共に、上記横梁の下方の道路や河川の占有の問題に影響を受ける虞を解消できる。
(4)各レール兼連結部材を、I形鋼製とし、且つ該各レール兼連結部材の上フランジを各仮設梁部材の下側に取り付けると共に、吊り装置付きのトロリーを、上記各レール兼連結部材の下フランジに長手方向に走行自在に取り付けるようにした構成とすることにより、上記(1)の構成を有する吊り込み装置一体式吊り足場におけるレール兼連結部材による各仮設梁部材との連結と、該レール兼連結部材に対する吊り装置付きのトロリーを長手方向に走行可能に取り付ける構成を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0019】
図1乃至図5は本発明の吊り込み装置一体式吊り足場の実施の一形態として、図7及び図8に示したと同様の鋼製橋脚10の箱断面の横梁12に適用する場合を示すもので、以下のような構成としてある。
【0020】
すなわち、上記横梁12の上フランジ12bの上側に、該横梁12の長手方向と直交する方向に所要寸法延びる仮設梁部材15の長手方向中間部を、横梁12の長手方向に所要間隔で複数載置して、該各仮設梁部材15の両端側が、上記横梁12の両ウェブ12aより外方へそれぞれ所要寸法ずつ突出するようにする。
【0021】
上記各仮設梁部材15の上記横梁12の両ウェブ12aより外側へ所要寸法ずつ離れた個所の下側に、横梁12の長手方向に沿って延びるレール兼連結部材16として、たとえば、I形鋼製のレール兼連結部材16をそれぞれ平行に配置して、該各レール兼連結部材16の上フランジ16aを、上記各仮設梁部材15の下側にそれぞれ取り付けて、上記横梁12の長手方向に所要間隔で配列された上記各仮設梁部材15と、上記各レール兼連結部材16とを格子状に一体に連結する。これにより、上記各仮設梁部材15の横梁12の長手方向への移動や傾きを阻止できるようにする。
【0022】
更に、上記横梁12の所要寸法下方位置に、図8に示したと同様に、図示しない大引材と根太材と床材等からなる構成の吊り足場本体5を該横梁12の長手方向に沿わせて配置して、上記各仮設梁部材15の長手方向両端部に上端部を連結した索状物、たとえば、吊りチェーン17の下端部を、上記吊り足場本体5の長手方向と直交する方向の両端部となる個所にそれぞれ連結し、上記各吊りチェーン17を介して仮設梁部材15に吊り足場本体5を吊り下げ支持させるようにする。これにより、上記吊り足場本体5に作用する荷重を、上記各吊りチェーン17及び各仮設梁部材15を介して上記横梁12の上フランジ12bへ伝えて支持させることができるようにする。
【0023】
更に、上記I形鋼製としてある各レール兼連結部材16の下フランジ16bに、吊り装置としてのチェーンブロック19付きのトロリー18を所要数ずつ取り付けて、該各トロリー18が、上記各レール兼連結部材16の下フランジ16bをレールとして長手方向に走行できるようにして、本発明の吊り込み装置一体式吊り足場を構成する。
【0024】
詳述すると、上記各仮設梁部材15は、I形鋼を用いるようにしてあり、上記横梁12の上側に長手方向の中間部を載置した状態にて、該各仮設梁部材15における上記横梁12の両ウェブ12aの外側近傍となる個所に、上記横梁12の下側に掛け回すように通した図示しないチェーンブロックの両端部をそれぞれ連結することで、該仮設梁部材15が長手方向に傾かないようにしてある。
【0025】
なお、上記横梁12の上端部にて、両ウェブ12aの外側に上フランジ12bの両端縁部が突出している場合は、上記横梁12の上フランジ12bの両端縁部と、上記I形鋼製としてある各仮設梁部材15の下フランジ15aが上下方向に重なる部分を、図示しないクランプ状の固定部材を用いて固定するようにしてもよい。
【0026】
上記各仮設梁部材15の長さ寸法は、該各仮設梁部材15の長手方向両端部と、上記吊り足場本体5の長手方向と直交する方向の両端部の所定個所との間に配される上記各吊りチェーン17と、上記横梁12の両ウェブ12aの外側面との間に、上記各トロリー18のチェーンブロック19に吊り下げる所要の部材としての横梁用の補強部材26を該横梁12の長手方向に沿って通過させることが可能なスペースが確保できるような長さ寸法に設定してある。
【0027】
上記各仮設梁部材15の長手方向両端部に対する各吊りチェーン17の上端部の連結は、たとえば、図5に示す如く、上記I形鋼製としてある各仮設梁部材15の長手方向両端部のウェブ15bに貫通孔20をそれぞれ穿設し、該各貫通孔20に、それぞれ対応する吊りチェーン17の上端部を、シャックル21を介して連結することで行うようにしてある。
【0028】
上記各仮設梁部材15と上記各レール兼連結部材16との取り付けは、たとえば、図4に示すように、上記各仮設梁部材15の下フランジ15aと、上記各レール兼連結部材16の上フランジ16aにおける両者が上下方向に重なる部分に、上下方向のボルト孔22,23をそれぞれ穿設し、該各ボルト孔22,23に、上記各レール兼連結部材16の上フランジ16aの下側からそれぞれ挿通させたボルト24に、上記各仮設梁部材15の下フランジ15aの上側からナット25を螺着させて締めることで、上記各仮設梁部材15と上記各レール兼連結部材16を一体に連結するようにしてあり、且つ上記各レール兼連結部材16の上フランジ16aの下側には、上記各ボルト24のボルト頭のみが配されるようにすることで、該各レール兼連結部材16の下フランジ16bの長手方向に沿う上記各トロリー18の走行に干渉しないようにしてある。
【0029】
更に、上記各レール兼連結部材16には、図2に示すように、その長手方向の任意の位置に、上記横梁12への補強部材26の取り付け作業時に該補強部材26を上記各トロリー18に取り付けてあるチェーンブロック19より吊り替えて保持するため等に用いるチェーンブロック27を、必要に応じて取外し可能に取り付けるようにしてある。
【0030】
なお、上記各レール兼連結部材16の長手方向両端部には、下フランジ16bをレールとして走行する上記各トロリー18の脱落を防止するための図示しないストッパーを設けるようにしてもよい。
【0031】
その他、図7及び図8に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0032】
以上の構成としてある本発明の吊り込み装置一体式吊り足場を、鋼製橋脚10の横梁12に装着すると、該横梁12の下方には、吊り足場本体5が配設されるため、該吊り足場本体5の上側に図示しない作業者が乗って、上記横梁12の下側での各種作業を行うことができるようになる。
【0033】
よって、上記鋼製橋脚10の横梁12に補強部材26を取り付ける補強工事を行う場合は、上記各レール兼連結部材16のうちの一方のレール兼連結部材16に取り付けてある各トロリー18を、図2に二点鎖線で示す如く、上記横梁12の長手方向一端部寄りとなるレール兼連結部材16の長手方向一端側(図では右端側)へ移動させた状態にて、上記補強部材26を、図示しないクレーン等で吊上げて上記横梁12の長手方向一端部付近に配置した後、該補強部材26に予め設けてある吊りピース26aに、上記各トロリー18に取り付けてある各チェーンブロック19をかけて、上記図示しないクレーン側から上記各トロリー18のチェーンブロック19側へ上記補強部材26を吊り替える。この際、上記各トロリー18のチェーンブロック19に吊り替えられる上記補強部材26の荷重は、上記各チェーンブロック19及びトロリー18と、上記一方のレール兼連結部材16及び各仮設梁部材15を介して上記横梁12の上フランジ12bへ伝えられて支持されるようになる。
【0034】
上記のようにして上記各トロリー18のチェーンブロック19に補強部材26が吊られた後は、上記吊り足場本体5上にて、作業者が上記補強部材26を手動で押し引きすることで、該補強部材26を吊っている各チェーンブロック19付きのトロリー18を、上記レール兼連結部材16の下フランジ16bに沿って走行させて、上記補強部材26を、上記吊り足場本体5の上側を通して上記横梁12に対する取り付け位置の下方位置まで該横梁12の長手方向に沿わせて吊り込むようにする。
【0035】
次いで、上記各トロリー18に取り付けてあるチェーンブロック19を適宜操作することで、上記補強部材26を、横梁12に対する取り付け位置に配置させ、しかる後、ボルト等の図示しない所定の固定手段により上記横梁12に上記補強部材26を一体に取り付けるようにする。
【0036】
なお、上記横梁12における所定の取り付け位置の下方位置まで吊り込んだ上記補強部材26を、横梁12への取り付け位置に配置させるときに、上記補強部材26を、上記一方のレール兼連結部材16の長手方向所要個所に取外し可能に取り付けるチェーンブロック27に一旦吊り替えてから、該チェーンブロック27を適宜操作することで、上記補強部材26を上記横梁12に対する取り付け位置に配置させるようにしてもよい。
【0037】
更に、上記本発明の吊り込み装置一体式吊り足場では、上記横梁12の両ウェブ12aのそれぞれ外側となる位置に、レール兼連結部材16が設けてあるため、図1に示すように、一方のレール兼連結部材16に取り付けてある各トロリー18のチェーンブロック19に吊ってある補強部材26を、図1に二点鎖線で示すように、上記吊り足場本体5の上側で、上記横梁12の下側を通して他方のレール兼連結部材16に取り付けてある各トロリー18のチェーンブロック19に吊り替えることが可能になる。よって、当初、上記鋼製橋脚10の横梁12の長手方向一端部寄りにて、図示しないクレーンより上記一方のレール兼連結部材16に取り付けてあるトロリー18のチェーンブロック19に吊り替えるようにした補強部材26であっても、上記横梁12のいずれのウェブ12a側に対しても取り付け作業を行うことができるようになる。
【0038】
このように、本発明の吊り込み装置一体式吊り足場によれば、横梁12の上に、長手方向所要間隔で該横梁12の長手方向と直交する方向に所要寸法延びる各仮設梁部材15を載置し、該各仮設梁部材15の長手方向両端部に上端部を連結した吊りチェーン17を介して吊り足場本体5を吊り下げるようにしてあるため、上記横梁12に吊りピースを取り付けることなく、横梁12の所要寸法下方位置に吊り足場本体5を配設することができる。
【0039】
又、上記各仮設梁部材15の長手方向両端部に、上記吊り足場本体5を吊るための吊りチェーン17をそれぞれ連結した構成としてあることにより、上記各吊りチェーン17と、上記横梁12の両ウェブ12aとの間に、横梁12の長手方向に沿って延びる広いスペースを確保することができる。しかも、上記横梁12の上側に長手方向に所要間隔で載置されている各仮設梁部材15の長手方向における上記横梁12の両ウェブ12aより外側へ所要寸法離れた個所の下フランジ15a同士をそれぞれ連結するための各連結部材を、横梁12の長手方向に延びるレールを兼ねたレール兼連結部材16とするようにしてあるため、該各レール兼連結部材16に、チェーンブロック19付きのトロリー18を走行可能に取り付けることで、上記吊り足場本体5の上方にて、上記各トロリー18のチェーンブロック19に吊った補強部材26を、横梁12の長手方向に沿って吊り込むことが可能な吊り込み装置を構成できる。
【0040】
よって、従来の吊り足場で要していた如き部材の下方からの搬入に伴う該吊り足場本体の部分的な解体、取り外し作業や、部材搬入後の吊り足場本体の再組立作業を不要にできて、部材搬入作業に要する手間及び時間を大幅に削減することができる。
【0041】
更に、上記鋼製橋脚10の横梁12の下方の道路や河川の占有の問題に影響を受けることなく、上記補強部材26を横梁12に対する所定の取り付け位置へ搬入することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、上記各仮設梁部材15の長さ寸法は、該各仮設梁部材15の長手方向両端部と、横梁12の所要寸法下方位置に配置した吊り足場本体5の長手方向と直交する方向の両端部所要個所とを連結する各吊りチェーン17と、横梁12の両ウェブ12aとの間に、上記吊り足場本体5の上方にて上記横梁12の長手方向に沿って吊り込むべき補強部材26のサイズに応じたスペースを確保可能となる範囲内でできるだけ短くする方が、本発明の吊り込み装置一体式吊り足場の重量を軽減する点では有利であるが、上記補強部材26のサイズに応じて長さ寸法は適宜変更してよい。
【0043】
上記各仮設梁部材15は、重量と剛性との兼ね合いや、製作の容易性、及び、その下側に配置する各レール兼連結部材16との取り付けの容易性を勘案すると、I形鋼を用いることが望ましいが、所要の長さ寸法と、吊り足場本体5から作用する荷重や、上記補強部材26のような吊り込み対象となる部材の荷重に耐え得る剛性を確保できれば、I形鋼以外の形鋼製としてもよく、更には、丸や角断面の棒状やパイプ状の部材等、任意の断面形状の部材を用いるようにしてもよい。
【0044】
上記各仮設梁部材15と上記各レール兼連結部材16との取り付けは、該レール兼連結部材16の下フランジ16bに取り付けるトロリー18の長手方向に沿う走行に干渉しないようにしてあれば、上記各仮設梁部材15として用いる部材の断面形状等に応じて、図4に示したボルト24とナット25以外の任意の取り付け手段を採用してよい。
【0045】
各仮設梁部材15の長手方向両端部に、吊り足場本体5を、吊りチェーン17を介して吊る構成を示したが、上記吊り足場本体5に作用する荷重を上記各仮設梁部材15の長手方向両端部へ伝えることができるようにしてあれば、吊りチェーン17以外の任意の索状物を用いるようにしてもよい。
【0046】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の吊り込み装置一体式吊り足場の実施の一形態として、鋼製橋脚の横梁に装着した状態を示す概略側面図である。
【図2】図1の装置の一部切断概略正面図である。
【図3】図1の装置の概略平面図である。
【図4】図1の装置における仮設梁部材とレール兼連結部材との取付部を拡大して示す側面図である。
【図5】図1の装置における仮設梁部材と吊りチェーンとの連結部分を拡大して示す側面図である。
【図6】従来用いられている吊り足場の一例の該略を示す側面図である。
【図7】脚柱と横梁とからなる鋼製橋脚の概要を示す正面図である。
【図8】鋼製橋脚の横梁の下方に吊り足場を仮設する場合に考えられる構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0048】
5 吊り足場本体
12 横梁
15 仮設梁部材
16 レール兼連結部材
16a 上フランジ
16b 下フランジ
17 吊りチェーン(索状物)
18 トロリー
19 チェーンブロック(吊り装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁構造物の横梁の上側に、横梁の長手方向と直交する方向に延びてその両端側が該横梁の外側へ所要寸法ずつ突出するようにしてある仮設梁部材を、上記横梁の長手方向に所要間隔で配列して載置し、該各仮設梁部材における横梁の外側に位置する部分の下側に、横梁の長手方向に平行に延びるレール兼連結部材をそれぞれ配置して、該各レール兼連結部材と、上記各仮設梁部材とを連結し、且つ上記各仮設梁部材の長手方向両端部と上記横梁の下方位置に配置した吊り足場本体とを索状物を介して連結し、更に、上記各レール兼連結部材に、吊り装置付きのトロリーを長手方向に走行可能に取り付けてなる構成を有することを特徴とする吊り込み装置一体式吊り足場。
【請求項2】
各レール兼連結部材を、I形鋼製とし、且つ該各レール兼連結部材の上フランジを各仮設梁部材の下側に取り付けると共に、吊り装置付きのトロリーを、上記各レール兼連結部材の下フランジに長手方向に走行自在に取り付けるようにした請求項1記載の吊り込み装置一体式吊り足場。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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