説明

含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化方法

【課題】
空気中で紫外線照射した場合であっても表面特性に優れた塗膜を形成する事ができ、また、硬化性組成物を塗工した基材を一端保管した後に紫外線照射した場合であっても、表面特性に優れた塗膜を形成する事ができる硬化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法であり、(iv)該組成物の温度を50℃以上としてから紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法である。さらに本発明は、該方法が、前記工程(iv)の前に、(i)基材に該組成物を塗工する工程を含む方法、更には、前記工程(i)の後、工程(iv)の前に、(ii)該組成物を乾燥する工程、及び(iii)該組成物の温度を50℃未満とする工程を含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物の硬化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル化合物は紫外線の照射により容易に硬化させることができ、プラスチック樹脂に代表される各種物品表面に塗工し硬化させる事で、表面を保護し新たな機能を付与するハードコート素材として非常に幅広い用途に用いられている。
【0003】
これらハードコートはその用途の広がりに応じて、従来の求められてきた硬度、耐摩耗性、耐薬品性、耐久性等に加え、防汚性、耐候性、すべり性、帯電防止性、防曇性、難焦性、反射防止性等の更なる高機能が求められてきている。なかでも汚れ防止性、汚れ拭き取り性、特に耐指紋性、指紋拭き取り性の向上が着目を浴びている。
【0004】
ハードコートへの防汚性の付与方法としては、表面にフッ素系の化合物層をつくり、撥水撥油性を高めることで水、油を含んだ汚れ成分を弾かせる試みが広くなされている。典型的な手法としては側鎖にパーフルオロアルキル基を有する重合性モノマー、例えば、アクリル酸含フッ素アルキルエステルやメタクリル酸含フッ素アルキルエステルから得られる重合体を組成物中に配合する方法が広く知られている。近年では、より高度な特性を求めてフルオロポリエーテル基を有する含フッ素(α置換)アクリル化合物が検討されている(特許文献1〜3)。これらの含フッ素(α置換)アクリル化合物をハードコートに添加して基材に塗工し、表面自由エネルギーにより膜表面にフッ素基を浮かび上がらせ、最表面層にフッ素含有率の高い層を形成することが試みられている。
【0005】
ところが含フッ素(α置換)アクリル化合物は、酸素による硬化阻害が大きい。従って、含フッ素(α置換)アクリル化合物を配合したハードコートの硬化を空気中で行うと、含フッ素(α置換)アクリル化合物の硬化が不十分となり、膜表面の傷つき、汚れの残存の原因となり、目的としたハードコート表面を得ることができない。そのため、含フッ素(α置換)アクリル化合物の効果を十分に発揮させたハードコート表面を得る為には、紫外線照射を高コストである窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行わなければならないという欠点があった。また、含フッ素(α置換)アクリル化合物を添加したハードコートを基材に塗工した後すぐに硬化しない場合、例えば、基材を一端保管した後に硬化する場合に、得られる膜の表面状態が悪くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−138112号公報
【特許文献2】特開2010−053114号公報
【特許文献3】特開2010−285501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、空気中で紫外線照射した場合であっても表面特性に優れた塗膜を形成する事ができ、また、硬化性組成物を塗工した基材を一端保管した後に紫外線照射した場合であっても、表面特性に優れた塗膜を形成する事ができる硬化方法を提供することを目的とする。本発明者らは鋭意努力を重ねた結果、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する際に、該組成物の温度を50℃以上としてから紫外線を照射して該組成物を硬化することで、上記目的を達成できる事を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法であり、
(iv)該組成物の温度を50℃以上としてから紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の硬化方法は、空気中で紫外線照射した場合であっても表面状態に優れた膜を形成することができる。また、硬化性組成物を塗工した基材を一端保管した後に紫外線照射した場合であっても、表面特性に優れた塗膜を形成する事ができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法に関し、紫外線照射時に組成物の温度を50℃以上としておくことを特徴とする。本発明の方法は、前記工程(iv)の前に、(i)基材に該組成物を塗工する工程を含んでいてもよく、基材上に硬化被膜を形成する方法として好適に使用することができる。紫外線照射時に組成物の温度を上げておくことにより、組成物中のフッ素基が膜の表面に偏在し、優れた防汚性、及び撥水・撥油性を有する膜となる。また、酸素による硬化阻害を受けやすい含フッ素(α置換)アクリル化合物が加熱により分子運動し易くなるため、空気中での紫外線照射であっても十分硬化することができる。中でも、該組成物の温度を50℃以上160℃以下、好ましくは60℃以上120℃以下としてから紫外線を照射して該組成物を硬化するのがよい。前記下限値未満では十分な硬化性が得られず好ましくない。前記上限値超では基材となる樹脂やフィルム、及び組成物中のアクリル化合物そのものが分解する可能性があるため好ましくない。
【0011】
本発明において、基材は特に制限されるものではなく、例えば、外装用のプラスチックフィルム、ガラス、板、又は、液晶表示素子や有機EL素子用基板等の光学用途で用いられる基材が挙げられる。例えば、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリスチレン樹脂等の樹脂成形体、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリ塩化ビニルなどのフィルム、及びガラスが挙げられる。
【0012】
本発明において、組成物を基材に塗工する方法としては、例えばロールコート、グラビアコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、バーコート、スクリーン印刷等、従来の塗工方法を用いることができる。この時、形成する被膜の膜厚は、通常、数nm〜100μmであり、好ましくは数nm〜30μmである。得られる膜厚が上記下限値未満の場合、十分な表面硬度は得られず、また上記上限値超であるとハードコート膜の機械的強度が低下し、クラックが入りやすくなる。尚、硬化性組成物が溶剤を含む場合は、基材に組成物を塗工した後で、該組成物を乾燥し溶剤を除去する工程を含んでいてもよい。
【0013】
本発明において、基材に塗工した組成物の温度を50℃以上とする装置は、組成物を目的とする温度に上昇させ、さらに紫外線照射までの間、その温度を維持できるものであれば特に制限されない。例えば、バッチ式あるいはコンベア式の熱風乾燥炉、遠赤外線乾燥炉、近赤外線乾燥炉等を使用することが出来る。該工程は空気中で行うことができる。加熱時間は特に制限されないが、通常、10秒〜10分程度が好適である。加熱時間が長すぎると部分的な熱硬化が発生して硬化状態が不均一になる。また、基材が樹脂成形体やフィルムの場合には基材の劣化が起こる可能性がある。一方、加熱時間が短すぎると塗工された組成物の全体が上記温度にならない可能性がある。尚、当該方法が組成物を乾燥する工程を含む場合、組成物を乾燥する工程と組成物を前記温度とする工程は同一工程とすることができるし、別々の工程であってもよい。
【0014】
組成物に紫外線を照射する方法は従来公知の方法に従えばよい。本発明では、紫外線照射を空気中で行うことができる。紫外線の光源としては高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、およびLED等を使用できる。紫外線照射量及び照射時間は該硬化性組成物を硬化させるのに十分であり、かつ、硬化物層あるいは基材を劣化させない範囲であれば特に制限されない。通常、紫外線照射量は100mJ/cm〜3000mJ/cm、特には200mJ/cm〜2000mJ/cmである。
【0015】
本発明は、さらに、前記工程(i)の後、工程(iv)の前に、(ii)該組成物を乾燥する工程、及び(iii)該組成物の温度を50℃未満とする工程を含む方法を提供する。該方法は、組成物を基材に塗工した後、すぐに紫外線照射をしない場合の硬化方法に相当する。該組成物を乾燥する工程(ii)の目的は、組成物中の溶剤を揮発させることである。該乾燥工程は従来公知の方法に従えばよい。例えば、熱風乾燥機中、50〜120℃の範囲で、10秒〜10分の範囲で加熱することにより行う事ができる。該組成物の温度を50℃未満とする工程(iii)は、例えば、基材に組成物を塗工して乾燥した後、該基材を一旦50℃未満の温度条件下で保管する態様を示すものであり、通常、0〜40℃の範囲、さらには10〜30℃の範囲とされる。保管の期間は適宜選択されればよい。本発明において、工程(iii)は空気中で行うことができる。本発明の方法によれば、基材に組成物を塗工して乾燥した後すぐに硬化せず、例えばロールに巻き取り保管する場合等、時間をおいた後に組成物を硬化する場合であっても優れた表面特性を有する膜を提供することができる。
【0016】
また、本発明の方法は、組成物を硬化し、成形品を形成する方法に使用することもできる。本発明の方法により組成物を硬化して成形品を形成する態様は、従来公知の装置や鋳型等を使用して行えばよい。当該使用態様における組成物の厚さは特に制限されないが、典型的には、5〜10mm程度を上限とする。前記上限値を超えると硬化不十分になるおそれがあるため好ましくない。
【0017】
本発明の方法により硬化される硬化性組成物は、組成物中に含フッ素(α置換)アクリル化合物を含み、紫外線や電子線など活性エネルギー線で硬化可能である樹脂組成物であれば如何なるものも用いることができる。含フッ素(α置換)アクリル化合物は、フッ素化合物の優れた特性を有し、非フッ素系有機化合物との相溶性に優れた化合物であるのが良い。例えば、特開2010−138112号公報、特開2010−53114号公報、及び特開2010−285501号公報に開示されているような含フッ素(α置換)アクリル化合物を使用する事ができる。硬化性組成物は、市販品のハードコート剤に含フッ素(α置換)アクリル化合物を添加したものであってもよい。特には、(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物、(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物、及び(C)光重合開始剤を含む組成物が挙げられる。以下、各成分について詳細に説明する。
【0018】
(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物
含フッ素(α置換)アクリル化合物は、末端に、アクリル基、メタクリル基、及びα−フルオロアクリル基を少なくとも1個以上有し、分子中にフルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基を有するものがよい。中でも、下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有する化合物が好ましい。
【化1】

【0019】
本発明の含フッ素(α置換)アクリル化合物は下記式(1)または(2)で表すことができる。
【化2】

式中、aは1〜5の整数であり、b、c、及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+dは0ではなく、eは0または1であり、Rfはeが0のときは1価の、eが1のときは2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基であり、Qは酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基であり、Q’は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc+d+1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基である。
【化3】

式中、a、b、c、d、R、R、Rf、Q、Q’は上記と同じであり、vは1〜5の整数であり、Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基であり、c’、及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’は0ではない。
【0020】
式(1)及び(2)において、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、好ましくは、下記式(3)または(4)で表す基である。
【化4】

【化5】

式中、Rは、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜18のエーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいてもよい2価もしくは3価の有機基であり、nは1又は2の整数である。Rはエチレン基であるのが特に好ましい。
【0021】
上記Rとしては下記に示す基が挙げられる。
【化6】

【化7】

【0022】
式(1)及び(2)において、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基であり、好ましくは、下記式(5)で表される基である。
【化8】

式中、f、g、h、及びiはRの分子量が30〜600、好ましくは60〜300となる範囲において、それぞれ独立に0〜20の整数、好ましくは1〜10の整数である。各繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の、飽和もしくは不飽和の炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等があげられる。特に好ましくはメチル基、及びエチル基である。
【0023】
このようなRとしては、下記式で示される基が好ましい。
【化9】

h、gは0〜20の整数、好ましくは1〜10の整数であり、h+gは1〜40、好ましくは1〜20であり、式中のプロピレン基は分岐していてもよく、各繰り返し単位はランダムに結合されていてもよい。
【0024】
式(1)及び(2)において、Q及びQ’は、互いに独立に、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基である。aは1〜5の整数であり、bは0から5の整数である。c及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+d=0ではない。従って、Q及びQ’は2〜11価の有機基であり、好ましくは2〜6価の有機基である。Q及びQ’は、水酸基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及びウレタン結合を含んでいても良く、途中、環状構造や分岐を含んでいても良い。Q及びQ’は同一でも異なっていても良い。
【0025】
Q及びQ’の一態様としては、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の2価の有機基であり、たとえば以下のような基が挙げられる。
【化10】

【化11】

【0026】
また、Q及びQ’の別の態様としては、以下に示す基が挙げられる。
【化12】

式中Qは、互いに独立に、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい炭素数3〜20の2価の有機基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Qは、上記Q及びQ’の一態様として記載した基であってよく、好ましくは以下に示される基である。
【化13】

(式中、右端の炭素原子がN原子に結合する)
【0027】
また、Q及びQ’の別の態様としては、下記式(6)で示される基が挙げられる。
【化14】

式中、a’は1〜4の整数、b’及びb”は0〜4の整数であり、a’+b’+b”は2、3または4であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、Zが式(1)及び(2)中のRfに結合する。
【0028】
式(2)において、vは1〜5の整数である。Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基である。c’及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’=0ではない。従って、Q”は3〜12価の有機基であり、好ましくは3〜5価の有機基である。Q”は、水酸基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、及びウレタン結合を含んでいても良く、途中、環状構造や分岐を含んでいても良い。
【0029】
Q”としては、下記式(7)で示される基が好ましい。
【化15】

式中、c”、d”及びb'''は0〜3の整数であり、但し、c”+d”+b'''は1、2、3のいずれかの値であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、Zが式(2)中のRfに夫々結合する
【0030】
式(6)及び(7)中、Qは下記式で表わされる基であるのが好ましい。
【化16】

【0031】
式(6)及び(7)中、Zは下記式で表わされる基であるのが好ましい。
【化17】

【0032】
中でも、下記式で示される基が好ましい。
【化18】

【0033】
特に、下記式で示される基が好ましい。
【化19】

【0034】
式(1)及び(2)において、Rfは1価又は2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。フルオロアルキル基は炭素数2〜20、好ましくは4〜8であるものがよい。フルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有するものが好ましい。
【化20】

【0035】
1価のフルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で表すことができる。
【化21】

式中、j、k、l及びmは、Rfの分子量が200〜6000、好ましくは400〜2000となる範囲において、それぞれ独立に0〜100、好ましくは1〜50、さらに好ましくは2〜15の整数である。また、各繰り返し単位の配列はランダムであってよい。上記式中、pは1〜6の整数、Xは互い独立に、フッ素原子またはCF基である。
【0036】
好ましい1価のRfとしては下記の基が挙げられる。
【化22】

【0037】
2価のフルオロアルキルエーテル基を有する基は、下記式で表すことができる。
【化23】

式中、pは1〜6の整数、nは2〜200の整数である
【化24】

式中、Xはフッ素原子又はCF基、pは1〜6の整数、q、nはそれぞれ0〜200の整数、但し、q+nは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【化25】

式中、Xはフッ素原子又はCF基、p及びpは互いに独立に1〜6の整数、n、q及びqは互いに独立に0〜200の整数であり、n+q+qは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0038】
好ましい2価のRfとしては下記の基が挙げられる。
【化26】

式中、q+qは2〜200である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。
【0039】
上記式(1)で示され、1価のRfを有する化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化27】

式中、Rfは上述した1価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0040】
また、以下に示す化合物を挙げることができる。
【化28】

式中、a’、b’、hは上述の通りである。
【化29】

式中、a’は上述の通りである。Rfは上述した1価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である
【0041】
上記式(1)で示され、2価のRfを有する化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
【化30】

式中、Rfは上述した2価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0042】
また、以下に示す化合物を挙げることができる。
【化31】

式中、Rfは上述した2価のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有する基である。
【0043】
また、本発明で用いる含フッ素(α置換)アクリル化合物として、上述の含フッ素(α置換)アクリル化合物と、反応性基を有する非含フッ素(α置換)アクリル化合物を重合させて得られる共重合体に、(メタ)アクリル基及び反応性基を有する化合物をさらに反応させて得られる共重合体を使用する事ができる。当該共重合体は、上記含フッ素アクリレート化合物と、2−ヒドロキシエチルアクリレートのような水酸基を有するアクリル類や、2−イソシアナトエチルアクリレートのようなイソシアネート基を有するアクリレート類、グリシジルメタクリレートのようなエポキシ基を有するアクリレート類等とを共重合し、得られた共重合体の官能基に対して反応性を有する基を持つ(メタ)アクリル化合物をさらに反応させて得ることができる。例えば水酸基に対してはイソシアネート基を有するアクリレート類、イソシアネート基に対しては水酸基をもつアクリレート類、エポキシ基に対してはアクリル酸を反応させればよい。
【0044】
また、本発明で用いる含フッ素(α置換)アクリル化合物として、以下の繰り返し単位(a)
【化32】

(式中、Xはフッ素原子、水素原子、塩素原子、またはエーテル結合を含んでいてよく、水素原子の一部または全てがフッ素化されていてよい、炭素数1〜4のアルキル基であり、XおよびXは、互いに独立に、フッ素原子、水素原子、または塩素原子である)
と、以下の繰り返し単位(b)
【化33】

(但し、Yは水酸基、又は、エーテル結合またはエステル結合を1以上有していても良い、少なくとも1の水酸基を有する、炭素数1〜10の1価の有機基であり、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である)とを有する含フッ素共重合体(D)に、
(メタ)アクリル基を有するイソシアネート化合物(E)を反応させて得られる含フッ素(α置換)アクリル化合物を使用する事ができる。
【0045】
上記繰り返し単位(a)中、X、XおよびXは、フッ素原子、または塩素原子であるのが好ましく、特に、単位(a)がテトラフルオロエチレンおよび/またはクロロトリフルオロエチレンであることが好ましい。上記繰り返し単位(a)及び(b)は、1種単独でもよく、また2種以上を併用してもよい。含フッ素共重合体(D)はイソシアネート化合物(E)と反応するために、少なくとも1の水酸基を有する。上記繰り返し単位(b)中、Yで表わされる基としては、−OCHCHOH、−OCHCHCHCHOH、−OCHCHOCHCHOH、−COOCHCHOH、及び−COOCHCHCHCHOH、が挙げられる。中でも、−OCHCHCHCHOH、及び−COOCHCHOHが好ましい。Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子、及びメチル基である。
【0046】
含フッ素共重合体(D)は、重量平均分子量が500〜50000、好ましくは1000〜20000であるのがよく、1分子中に繰り返し単位(a)を2〜200個、好ましくは4〜100個、繰返し単位(b)を2〜200個、好ましくは4〜100個含有するのがよい。
【0047】
含フッ素共重合体(D)は、従来公知の方法により単位(a)の原料化合物と単位(b)の化合物とを共重合させることで製造することができる。単位(a)の原料としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフルオロオレフィンが挙げられる。単位(b)の原料としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル、ヒドロキシエチルアリルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸、10−ウンデセン酸、アルコキシビニルシラン等が挙げられる。含フッ素共重合体(D)は、上記単位(a)および単位(b)以外の重合単位を含有してもよい。
【0048】
上記含フッ素共重合体(D)と、アクリル基及びまたはメタクリル基を有するイソシアネート化合物(E)とを反応させることで、含フッ素(α置換)アクリル化合物を得ることが出来る。上記化合物を簡便に得る為には、市販品として入手できる「ルミフロン」(旭硝子株式会社)、「フルオネート」(DIC株式会社)、「ゼッフル」(ダイキン工業株式会社)、「セラフルコート」(セントラル硝子株式会社)、「ザフロン」(東亞合成株式会社)等、水酸基を有する含フッ素ポリマーと、アクリル基及びまたはメタクリル基を有するイソシアネート化合物とを反応させる方法が好適である。
【0049】
含フッ素共重合体(D)の水酸基とイソシアネート化合物(E)の反応は、0〜70℃の温和な条件下で両者を混合することで進行させることができる。反応の速度は、適切な触媒系、例えば酢酸第1錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクタン酸第1錫のようなスズ誘導体、鉄アセチルアセトネートのような鉄誘導体、チタンテトライソプロピレートのようなチタンアルコレート、トリエチルアミンのような第三級アミン、またはN−メチルモリホリンを、反応物総重量に対して0.001〜2重量%、好ましくは0.001〜0.5重量%で加えることによって増加させることができる。また必要に応じて各種溶媒で希釈して、反応を行っても良い。
【0050】
(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物
フッ素を含まない紫外線硬化性化合物は、上記含フッ素(α置換)アクリル化合物と混合でき、硬化可能であれば特に制限されるものではない。特には、アクリレート類であるのが好ましく、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、及びアクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等を含むものが挙げられる。
【0051】
また、ウレタンアクリレート類、ポリイソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリイソシアネートと末端ジオールのポリエステルに水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるもの、ポリオールに過剰のジイソシアネートと反応させて得られるポリイソシアネートに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られるものを使用することもできる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトートリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類が好ましい。上記化合物は単独でも2種以上を併用してもよい。また組成物の物性調整のため1官能のアクリレート類を配合しても良い。
【0052】
(C)光重合開始剤
光重合開始剤は、紫外線照射によりアクリル化合物を硬化させることができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、1.2−オクタンジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられ、単独でも2種以上を併用してもよい。
【0053】
硬化性組成物中、含フッ素(α置換)アクリル化合物の配合量は、所望する撥油性、組成物の溶解性、硬化条件に応じて適宜調製されればよい。成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の配合比率は特に制限はされないが、成分(B)100質量部に対し、成分(A)は0.01〜30質量部、好ましくは0.05〜5質量部、成分(C)は0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部とすることが好適である。該組成物にはさらに、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラー等を配合することも出来る。
【0054】
上記成分(B)及び(C)が配合されたハードコート剤は各社からさまざまなものが市販されている。本発明の硬化性組成物は、該市販品のハードコート剤に上記(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物を添加したものであっても良い。市販品のハードコート剤として、例えば、荒川化学工業(株)「ビームセット」、大橋化学工業(株)「ユービック」、オリジン電気(株)「UVコート」、カシュー(株)「カシューUV」、JSR(株)「デソライト」、大日精化工業(株)「セイカビーム」、日本合成化学(株)「紫光」、藤倉化成(株)「フジハード」、三菱レイヨン(株)「ダイヤビーム」、武蔵塗料(株)「ウルトラバイン」等が挙げられる。該ハードコート剤にはさらに、目的に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、界面活性剤、着色剤、及びフィラー等を配合することも出来る。
【0055】
有機溶剤としては、1−プロパノール、2−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエーテル類;酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸シクロヘキシルなどのエステル類などを挙げることができる。上記溶剤は、1種を単独で又は2種以上を混合してもよい。溶剤の使用量は特に制限されるものではないが、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計100質量部に対し、50〜10000質量部、特に100〜1000質量部となるような量であることが好ましい。
【0056】
本発明の硬化方法によれば、優れた表面特性を有する膜を形成することが可能になる。特に、アクリルハードコートの表面に撥水性、撥油性、防汚性を付与するのに有用である。これによって、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等による汚れが付着しにくくなり、かつ拭き取り性にも優れたハードコート表面を基材に与える事ができる。このため、本発明の方法は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に塗装膜もしくは保護膜を形成するための方法として有用である。
【0057】
本発明の方法により形成される硬化皮膜は、タブレット型コンピュータ、ノートPC、携帯電話、携帯(通信)情報端末、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダーなど人の手で持ち歩く各種機器の筐体;液晶、プラズマ、有機ELなどの各種フラットパネルディスプレイ及びTVの画面などの表示機器表面、自動車の外装、ピアノや家具の光沢表面、大理石等の建築用石材表面、トイレ、風呂、洗面等の水周りの装飾建材、美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、フォトフレーム用カバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製または透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等の塗装膜及び表面保護膜として有用である。
【0058】
特に、タッチパネルディスプレイなど人の指あるいは手のひらで画面上の操作を行う表示入力装置を有する各種機器、例えば、タブレット型コンピュータ、ノートPC、携帯電話、携帯(通信)情報端末、デジタルメディアプレイヤー、電子ブックリーダー、デジタルフォトフレーム、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動車用等のナビゲーション装置、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、デジタルサイネージ(電子看板)、セキュリティーシステム端末、POS端末、リモートコントローラなど各種コントローラ、車載装置用パネルスイッチなどの表示入力装置などの表面保護膜として有用である。
【0059】
さらに本発明の方法により形成される硬化皮膜は、光磁気ディスク、光ディスク等の光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイスの表面保護皮膜としても有用である。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0061】
[調製例1]
(A)含フッ素アクリレート化合物の調製
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた2000ml三口フラスコに、下記式(8)
【化34】

(式中、Rfは−CF(OCFCF(OCFOCF−であり、l/m=0.9、l+m≒45(平均値)である)
で示される両末端にα―不飽和結合を有するパーフルオロポリエーテル500gと、m−キシレンヘキサフロライド700g、及びテトラメチルシクロテトラシロキサン361gを投入し、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに塩化白金酸/ビニルシロキサン錯体のトルエン溶液0.442g(Pt単体として1.1×10−6モルを含有)を仕込み投入し、内温を90℃以上に維持したまま4時間攪拌を継続した。H−NMRで原料のアリル基が消失したのを確認した後、溶剤や過剰のテトラメチルシクロテトラシロキサンを減圧留去し、活性炭処理を行い、下記式(9)で示す無色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物498gを得た。
【化35】

【0062】
乾燥空気雰囲気下で、上記式(9)で示される化合物50.0gに対して、下記式(10)
【化36】

で示される化合物11.9g、m−キシレンヘキサフロライド50.0g、及び、ビニルシロキサン変性塩化白金酸のトルエン溶液0.0442g(Pt単体として1.1×10−7モルを含有)を混合し、100℃で4時間攪拌した。H−NMR及びIRでSi−H基が消失したのを確認した後、減圧溜去し、活性炭処理を行い、淡黄色透明の液体パーフルオロポリエーテル含有化合物を得た。乾燥空気雰囲気下で、該生成物50.0gに対して、THF50.0gとアクリロイルオキシエチルイソシアネート7.05を混合し、50℃に加熱した。そこにジオクチル錫ラウレート0.05gを添加し、50℃下24時間攪拌した。加熱終了後、80℃、2Torrで減圧留去を行い、淡黄色のペースト状物質56.1gを得た。H−NMRの結果から下記式(11)に示す化合物であることを確認した。
【化37】

(式中、Rfは−CF(OCFCF(OCFOCF−であり、l/m=0.9、l+m≒45(平均値)である)
【0063】
[調製例2]
硬化性組成物の調製
上記式(11)の化合物 1質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NKエステル A9550:新中村化学製)100質量部、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127:チバ・ジャパン(株)製)3質量部、2−プロパノール150質量部を配合し、混合し攪拌した後に、0.45ミクロンの疎水性PTFEフィルターでろ過を行った(以下、組成物1と称す)。
【0064】
[調整例3]
乾燥窒素雰囲気下で、還流装置と攪拌装置を備えた100mlの三口フラスコに、下記(12)式に示される含フッ素環状シロキサン50.0gと、
【化38】

(式中、Rfは下記の基である

上記式において、jは繰返し単位の数を示し、5.2(平均値)である)
トルエン20.0gを仕込み、攪拌しながら90℃まで加熱した。ここに、下記式(13)
【化39】

(上記式において、hは繰返し単位の数を示し、4.5(平均値)である)
で表わされるポリオキシエチレンメチルアリルエーテル9.75gとビニルシロキサン変性塩化白金酸のトルエン溶液0.0110g(Pt単位として2.73×10-8モルを含有)の混合溶液を1時間かけて滴下し、90℃で12時間攪拌した。当該反応溶液を室温まで冷却した。
【0065】
乾燥窒素雰囲気下で還流装置と攪拌装置を備えた100ml三口フラスコに、アリルアルコール16.9gを仕込み90℃まで加熱した中に、前記反応溶液を3時間かけて滴下した後、90℃で16時間攪拌した。得られた反応溶液を、100℃、6Torrで2時間減圧留去を行い、未反応のアリルアルコールを除去した。乾燥空気雰囲気下、得られた化合物60.0gに対して、2‐イソシアナトエチルアクリレート7.01g、及びジオクチル錫ラウレート0.010gを添加し、混合し、25℃で12時間攪拌したところ、下記式(14)で示される化合物を得た。
【化40】

(上記式において、Rfは上記の通りであり、h、a、及びbはそれぞれ繰返し単位の数を示し、hは4.5(平均値)、a­は1.5(平均値)、bは1.5(平均値)である)
[調製例4]
硬化性組成物の調製
上記式(14)の化合物を1質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(NKエステル A9550:新中村化学製)100質量部、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュアー127:チバ・ジャパン(株)製)3質量部、2−プロパノール150質量部を配合し、混合し攪拌した後に、0.45ミクロンの疎水性PTFEフィルターでろ過を行った(以下、組成物2と称す)。
【0066】
[実施例1]
組成物1をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工した(ウエット膜厚16.0μm)。紫外線照射部分の直前に乾燥炉を配備したコンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、空気中で、前記塗工面を105℃で1分間加熱し組成物の温度を100℃としてから、積算照射量1600mJ/cmの紫外線を塗工面に6秒間照射して組成物を硬化した。
【0067】
[実施例2]
組成物1をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工した(ウエット膜厚16.0μm)。紫外線照射部分の直前に乾燥炉を配備したコンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、空気中で、前記塗工面を74℃で1分間加熱し組成物の温度を70℃としてから、積算照射量1600mJ/cmの紫外線を塗工面に6秒間照射して組成物を硬化した。
【0068】
[実施例3]
組成物1をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工し(ウエット膜厚16.0μm)、熱風乾燥機(いすヾ製作所製)で該塗工面を100℃で1分間加熱して塗膜上の溶剤を揮発させた。その後、該塗工面を一旦室温(25℃)まで冷却した。冷却は空気中で行った。紫外線照射部分の直前に乾燥炉を配備したコンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、空気中で、前記塗工面を105℃で1分間加熱し組成物の温度を100℃としてから、積算照射量1600mJ/cmの紫外線を塗工面に6秒間照射して組成物を硬化した。
【0069】
[実施例4]
組成物1をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工した(ウエット膜厚16.0μm)。紫外線照射部分の直前に乾燥炉を配備したコンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、空気中で、前記塗工面を53℃で1分間加熱し組成物の温度を50℃としてから、積算照射量1600mJ/cmの紫外線を塗工面に6秒間照射して組成物を硬化した。
【0070】
[実施例5]
組成物2をポリカーボネート基板上にワイヤーバーNo.7で塗工した(ウエット膜厚16.0μm)。紫外線照射部分の直前に乾燥炉を配備したコンベヤ式メタルハライドUV照射装置(パナソニック電工製)を使用し、空気中で、前記塗工面を105℃で1分間加熱し組成物の温度を100℃としてから、積算照射量1600mJ/cmの紫外線を塗工面に6秒間照射して組成物を硬化した。
【0071】
[比較例1]
組成物1をポリカーボネート基板上にNo.7のワイヤーバーで塗工し(ウエット膜厚16.0μm)、熱風乾燥機中100℃で1分間加熱して塗膜上の溶剤を揮発させた。その後、該塗工面を一旦室温(25℃)まで冷却した。冷却は空気中で行った。コンベヤ式メタルハライドUV照射装置を使用し、空気中で、前記塗工面に積算照射量1600mJ/cmの紫外線を6秒間照射して組成物を硬化した。照射中のサンプル表面の最大温度は42℃であった。
【0072】
[接触角測定]
上記方法にて形成された各基材上の膜の水接触角、オレイン酸接触角及びオレイン酸転落角を、自動接触角計(協和界面科学社製)を用いて測定した。
【0073】
[マジックはじき性の評価]
ゼブラ社製、ハイマッキーの太字で長さ3cmの線を引き、外観を目視により観察した。評価は以下の指標で行った。結果を表1に示す。
◎:線が形成出来ずにインクが弾かれて液滴状になる
○:線が出来た後にインクが弾かれ線が消えて液滴状になる
△:線の形にインクのはじきあとが残る
×:弾かれずに線の形がそのまま残る。
【0074】
[指紋拭き取り性の評価]
5名のパネラーによって、各基材について指紋の付着性、及びティッシュによる指紋の拭き取り性が評価された。評価は以下の指標で行い平均値を求めた。結果を表1に示す。
4:容易に拭き取れる
3:拭き取れる
2:拭き取りにくい
1:拭き取れない
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示す通り、組成物を基材に塗工した後、該基材を一旦空気中で冷却した後、そのまま紫外線照射して得られた塗膜は、撥水・撥油性、マジックはじき性、及び指紋拭き取り性が劣っていた(比較例1)。これに対し、本発明の方法で得られた塗膜は、撥水・撥油性、マジックはじき性、及び指紋拭き取り性に優れていた(実施例1〜5)。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の硬化方法によれば、優れた表面特性を有する膜を形成することが可能になる。特に、アクリルハードコートの表面に撥水性、撥油性、防汚性を付与するのに有用である。このため、本発明の方法は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に塗装膜もしくは保護膜を形成するための方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素(α置換)アクリル化合物を含む硬化性組成物を硬化する方法であり、
(iv)該組成物の温度を50℃以上としてから紫外線を照射して該組成物を硬化する工程を含む方法。
【請求項2】
該組成物の温度を50℃以上160℃以下としてから紫外線を照射して該組成物を硬化する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
紫外線照射を空気中で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
硬化性組成物が、(A)含フッ素(α置換)アクリル化合物、(B)フッ素を含まない紫外線硬化性化合物、及び(C)光重合開始剤を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、末端に、アクリル基、メタクリル基、及びα−フルオロアクリル基を少なくとも1個以上有し、分子中にフルオロアルキル基またはフルオロポリエーテル基を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、aは1〜5の整数であり、b、c、及びdはそれぞれ0〜5の整数であり、但しc+dは0ではなく、eは0または1であり、Rfはeが0のときは1価の、eが1のときは2価の、フルオロアルキル基、またはフルオロアルキルエーテル基を有する基であり、Qは酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいa+b+1価の有機基であり、Q’は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc+d+1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基の少なくとも1を含む1価の有機基であり、Rはアクリル基、メタクリル基、およびα−フルオロアクリル基のいずれも含まない1価の有機基である)
または下記一般式(2)
【化2】

(式中、a、b、c、d、R、R、Rf、Q、Q’は上記と同じであり、vは1〜5の整数であり、Q”は酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよいc’+d’+2価の有機基であり、c’、及びd’はそれぞれ0〜5の整数であり、但しc’+d’は0ではない)
で表されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
Rfが下記式で示される単位のうち少なくとも一つを2回以上繰り返す単位を有する、請求項6に記載の方法。

【請求項8】
が下記式(3)または(4)で表される基である、請求項6または7に記載の方法。
【化3】

【化4】

(式中、Rは、互いに独立に、水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rは炭素数1〜18のエーテル結合及び/又はエステル結合を含んでいてもよい2価もしくは3価の有機基であり、nは1又は2の整数である)
【請求項9】
が下記式(5)で表される基である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【化5】

式中、f、g、h、及びiはRの分子量が30〜600となる範囲において、それぞれ独立に0〜20の整数である。各繰り返し単位の配列はランダムであってもよい。Rは炭素数1〜10の飽和もしくは不飽和の炭化水素基である)
【請求項10】
Q及び/またはQ’が下記式(6)で示される基である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【化6】

(式中、a’は1〜4の整数、b’及びb”は0〜4の整数であり、a’+b’+b”は2、3または4であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、式(1)または(2)中のRfに結合する)
【請求項11】
Q”が下記式(7)で示される基である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の方法。
【化7】

(式中、c”、d”及びb'''は0〜3の整数であり、但し、c”+d”+b'''は1、2、3のいずれかの値であり、各繰返し単位の配列はランダムであってよい。Qは、互いに独立に、炭素数3〜20のエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合を含んでいてもよい2価の連結基であり、途中環状構造や分岐を含んでいてもよく、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Zは、酸素原子、窒素原子、またはケイ素原子を有していてよい2価の連結基であり、式(2)中のRfに夫々結合する)
【請求項12】
が、下記のいずれかの基である請求項10または11に記載の方法。
【化8】

【請求項13】
Zが以下のいずれかの基である請求項10または11に記載の方法。
【化9】

【請求項14】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、請求項7から14のいずれか1項に記載されている含フッ素(α置換)アクリル化合物と、反応性基を有する非含フッ素(α置換)アクリル化合物とを重合させて得られる共重合体に、(メタ)アクリル基及び反応性基を有する化合物をさらに反応させて得られる共重合体である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
含フッ素(α置換)アクリル化合物が、以下の繰り返し単位(a)
【化10】

(式中、Xはフッ素原子、水素原子、塩素原子、またはエーテル結合を含んでいてよく、水素原子の一部または全てがフッ素化されていてよい、炭素数1〜4のアルキル基であり、XおよびXは、互いに独立に、フッ素原子、水素原子、または塩素原子である)
と、以下の繰り返し単位(b)
【化11】

(但し、Yは水酸基、又は、エーテル結合またはエステル結合を1以上有していても良い、少なくとも1の水酸基を有する、炭素数1〜10の1価の有機基であり、Rは水素原子ままたは炭素数1〜6のアルキル基である)とを有する含フッ素共重合体(D)に、
(メタ)アクリル基を有するイソシアネート化合物(E)を反応させて得られる含フッ素(α置換)アクリル化合物である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該方法が、前記工程(iv)の前に、(i)基材に該組成物を塗工する工程を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
該方法が、前記工程(i)の後、工程(iv)の前に、(ii)該組成物を乾燥する工程、及び(iii)該組成物の温度を50℃未満とする工程を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
基材が樹脂成型体、フィルム、またはガラスである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の方法により得られる硬化皮膜を備えた物品。
【請求項20】
請求項1〜15に記載の方法により硬化性組成物を硬化して得られる成形品。

【公開番号】特開2013−82779(P2013−82779A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222306(P2011−222306)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】