説明

周波数安定化レーザー光源、および、波長校正方法

【課題】周波数安定化制御システムの安定性を改善するため、変調信号と検波用の基準信号とを位相同期させてロックイン検波器での位相同期検波を実現すること。
【解決手段】周波数安定化レーザー光源において、基準信号から正弦波の変調信号を生成する変調信号生成器21は、矩形波の基準信号とフィードバック信号との位相差を電圧出力する位相比較器32と、位相比較器32の電圧出力によって出力信号の周波数を調整する電圧制御発振器34と、電圧制御発振器34の出力信号から正弦波信号を生成する正弦波発振器36とを有し、ループ回路により形成される。正弦波信号を位相比較器32へのフィードバック信号にして、位相比較器32での位相差が零となるように電圧制御発振器34の出力周波数が調整されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヨウ素分子などの吸収線を利用してレーザー光の周波数を安定させることができる周波数安定化レーザー光源に関する。具体的には、633nmHe−Neレーザー光源や532nm半導体励起固体(DPSS)レーザー光源などの周波数安定化レーザー光源において用いられている周波数安定化制御システムの安定性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数安定化レーザー光源とは、周波数を高精度に安定させることにより、長さの標準として使用可能なレーザー光を生成する装置である。発明者らは、この周波数の安定化制御システムについて鋭意研究してきた。
【0003】
レーザー光を用いて測長を行うためには、レーザー光の周波数が一定でなければならない。そのため、原子あるいは分子の吸収線(吸収スペクトル線とも言う。)を検出し、この吸収線に基づいてレーザー光の周波数を固定(ロック)させる方法が知られている(特許文献1参照)。ヨウ素などのレーザー光を吸収させる基準物質を選び、基準物質が示す複数本の吸収線のうちの1本の吸収線を決めておく。また、レーザー光の周波数帯域が複数本の吸収線を含むように、レーザー光の周波数を変調させながら走査させる。そして、周波数安定化レーザー光源には、任意の1本の吸収線を適切に検波して、その吸収線にレーザー光の中心周波数を正確に合わせる機能が不可欠となる。
【0004】
特許文献1に記載の周波数安定化レーザー光源は、図1に示すように、レーザーヘッド10とコントローラー30とに大別される。
レーザーヘッド10は、半導体レーザーを励起光として出力する励起光源(励起手段)11と、励起されたレーザー結晶(レーザー媒質)121から誘導放出される光を一対のミラー間で共振させて周波数変調を行う光共振器(光共振手段)12と、この光共振器12で生成されるレーザー光の一部を吸収セル14まで導光する光学素子系と、導光されたレーザー光の照射を受ける吸収セル14と、照射によって吸収セル内のヨウ素分子を透過した光を受光する受光器15を備える。
【0005】
光共振器12には、励起光が照射されるレーザー結晶121と共振器ミラー123とを有する。レーザー結晶121の励起光源側の面には、誘導放出光を反射する反射面124が形成されている。この反射面124と、共振器ミラー123の半透過面(もう一方の反射面)との間隔が共振器長(間隔長)Lとなる。
そして、レーザーヘッド10は、励起光源11からの励起光によって光共振器12内でレーザー光を生成する。また、光共振器12に内蔵されたピエゾ素子からなるアクチュエーター13により、変調周波数(fs)でレーザー光を周波数変調して、外部にレーザー光を出力する。また、周波数変調されたレーザー光の一部を吸収セル14内のヨウ素分子に照射して、その透過光を受光器15で受光する。
【0006】
一方、コントローラー30は、主にレーザー光の周波数安定化制御回路によって構成され、その構成要素は、基準信号供給回路28、ロックイン検波器23、正弦波発振器26、アクチュエーター駆動回路31である。正弦波発振器26は、基準信号供給回路28からの周波数変調用の基準信号を受けて、正弦波状の制御信号を生成する。制御信号の周波数をfs(変調周波数)とする。正弦波発振器26に供給される基準信号は、変調周波数fsに等しい周波数の矩形波であり、図中ではf信号で示す。
【0007】
ロックイン検波器23は、受光器15からの検波出力をロックイン検波する。ロックイン検波には、基準信号供給回路28からの基準信号を使用する。この基準信号は、変調周波数fsの3倍の周波数の矩形波であり、図中では3f信号で示す。このロックイン検波により少なくとも1本の分子吸収線を示す3次微分信号(図中ではDC信号と示す。)が得られる。
【0008】
正弦波発振器26では、ロックイン検波器23からの3次微分信号によって基準信号(f信号)のDCレベルが調整されるとともに、必要に応じて基準信号(f信号)の振幅が調整される。そして、正弦波発振器26は、低周波フィルタを用いて矩形波の基準信号から正弦波状の制御信号を生成する。生成された制御信号は、アクチュエーター駆動回路31に出力される。アクチュエーター駆動回路31は制御信号に基づいてアクチュエーター13を駆動させて、共振器長Lを変化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−130848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
受光器15は、変調周波数fsで周波数変調されたレーザー光を受光している。そして、ロックイン検波器23では、検波出力から必要な分子吸収線を検波するため、変調周波数fsの3倍の周波数の基準信号(3f信号)を用いている。このロックイン検波では、検波出力に含まれる分子吸収線の信号と、基準信号(3f信号)とが正確に位相同期していることが必要で、位相差Δφがあると分子吸収線を正しく検波できない。
【0011】
<位相ずれ>
従来の制御システムでは、正弦波発振器26で生成された正弦波状の制御信号、および検波用の基準信号(3f信号)は、いずれも図1の基準信号供給回路28における原発振器の発振信号を分周したものを使用する。一見、両信号は位相同期するように思えるが、実際には位相ずれが生じる。図2に正弦波状の制御信号と基準信号(3f信号)との位相差Δφを示す。アクチュエーター13を用いて周波数変調させる場合、アクチュエーター13の制御信号が正弦波であることが望ましい。そのため、正弦波発生器26に低周波フィルタを設けて、矩形波の基準信号(f信号)から正弦波状の制御信号を生成している。従って、矩形波のf信号に対し、正弦波状の制御信号は位相遅延を生じてしまう。f信号と3f信号は同じ基準信号供給回路28からの信号であるから位相同期している。しかし、ロックイン検波器23で検波される検波出力は、位相遅延のある制御信号で周波数変調されたレーザー光を検出したものであるから、検波出力に含まれる分子吸収線の信号と、基準信号(3f信号)とに位相差Δφがあることになる。
【0012】
このように従来の制御システムでは、正弦波状の制御信号または検波用の基準信号(3f信号)に対して位相調整を行うための位相調整器を設ける必要があった。その結果、周波数安定化レーザー光源毎の調整量にバラツキや、環境変化にともなう位相差Δφの変化などにより、周波数安定化の目標値が動いてしまうことになり、周波数安定化レーザー光源毎の安定度や品質にバラつきが生じてしまった。
【0013】
また、複数台の周波数安定化レーザー光源を用いたビート周波数の測定による波長校正の際、各々の周波数安定化レーザー光源で変調信号(前述の正弦波状の制御信号)の生成に用いる基準信号が異なることにより、測定するビート周波数信号の変動量(バラつき)が時間とともに変化してしまうという問題があった。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、周波数安定化制御システムの安定性を改善するため、まず、正弦波状の制御信号と検波用の基準信号(3f信号)との位相差Δφをなくしてロックイン検波器において位相同期検波を実現して、環境変動や経時変化等の影響に対してロバスト性を向上させることである。また、複数台の周波数安定化レーザー光源による波長校正の測定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、レーザー光を周波数変調するための変調信号(AC信号)を生成する変調信号生成部を設けて、正弦波発振器を内部に配置した構成の位相同期回路(PLL発振回路)を用いれば、基準信号(f信号)に対して位相ずれが生じない正弦波状の制御信号を生成することができることに着目した。
【0016】
すなわち、上記目的を達成するために、本発明にかかる所望波長の出射レーザー光を得る周波数安定化レーザー光源は、
間隔長(L)を可変とする一対の反射面間で光を共振させて、前記間隔長(L)で定まる発振周波数(fc)のレーザー光を生成し、かつ、前記一対の反射面のうちの少なくとも一方を変調周波数(fs)で振動させることにより、前記発振周波数(fc)を変調周期(1/fs)で周波数変調し、変調したレーザー光を出射する光共振器(12)と、
前記光共振器(12)からのレーザー光の一部を照射すると特定の波長成分を吸収する物質を入れた吸収セル(14)と、
前記吸収セル(14)での特定吸収線波長成分を検波する検波手段(15)と、
前記検波手段(15)からの検波出力に対して所定の基準信号を用いて同期検波を行い、取得した取得検波信号に基づいて前記間隔長(L)制御を行う制御手段(20)と、を備え、
前記間隔長(L)制御によって前記発振周波数(fc)成分を前記特定吸収線波長成分の中心に安定化させて、前記光共振器(12)から所望波長の出射レーザー光を得る周波数安定化レーザー光源であって、
前記制御手段(20)は、前記発振周波数(fc)を周波数変調するための基準正弦波を前記基準信号に同期させて生成し、該基準正弦波を用いて前記反射面を振動させるための正弦波状の駆動信号を得て、前記発振周波数(fc)の周波数変調制御を行うことを特徴とする。
【0017】
ここで、前記制御手段は、前記基準信号に同期した基準正弦波を生成する正弦波発振部(36)と、前記検波手段(15)からの検波出力を基準信号に同期して取得した取得検波出力に基づき、前記間隔長(L)をDC出力の間隔長調整信号として得る基準周波数調整部(41)と、前記取得検波出力に基づき前記発振周波数の変調幅(fd)をDC出力の変調幅調整信号として得る変調幅調整部(42)とを備え、前記基準正弦波に対し前記間隔長調整信号および変調幅調整信号を重畳させて、前記正弦波状の駆動信号を得ることが好ましい。
また、制御手段は、前記正弦波発振部(36)で生成された基準正弦波と基準信号との位相差(Δφ)を電圧出力する位相比較部(32)と、前記電圧出力に応じて調整した周波数の出力を発振する電圧制御発振部(34)と、を備え、前記電圧制御発振部(34)は、該電圧制御発振部の出力に基づいて生成された基準正弦波と基準信号との位相差(Δφ)が零になるように、出力周波数を調整することが好ましい。
【0018】
また、前記制御手段は、前記基準正弦波を生成するための基準信号、および前記同期検波用の基準信号を供給する手段として、基準信号として使用可能な内部基準信号を発振する原発振部(51)と、基準信号として使用可能な外部基準信号を外部から入力する基準信号入力部(52)と、前記原発振部からの内部基準信号または前記外部基準信号を選択する基準信号選択部(53)と、を有し、該選択基準信号を供給する基準信号供給手段(22)を備えるとよい。
なお、前記基準信号供給手段は、さらに前記選択基準信号の一部を外部へ出力する基準信号出力部を有することが好ましい。
【0019】
さらに、本発明にかかる周波数安定化レーザー光源の波長校正方法は、前述の複数の周波数安定化レーザー光源を用いて、波長校正の基準となる基準周波数安定化レーザー光源および波長校正の対象となる校正対象周波数安定化レーザー光源として、これらの周波数安定化レーザー光源にそれぞれ同一の原発振部からの基準信号を供給し、前記基準周波数安定化レーザー光源および校正対象周波数安定化レーザー光源からレーザー光を出射させ、前記基準周波数安定化レーザー光源の出射レーザー光と前記校正対象周波数安定化レーザー光源の出射レーザー光とのビート周波数を測定し、該ビート周波数が所定値となるように、前記校正対象周波数安定化レーザー光源の共振器ミラーの間隔長を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、制御手段は、所定の基準信号に同期した基準正弦波を用いて、少なくとも一方の反射面を振動させるための正弦波状の駆動信号を生成するとともに、同じ基準信号を用いて、検波手段からの検波信号を同期検波して特定波長成分を得ている。従って、周波数変調用の正弦波状の駆動信号と同期検波用の基準信号との位相差をなくすことができ、検波信号に含まれる微弱な特定波長成分を精度よく取得できる。よって、特定波長成分の取得に関して、環境変動や経時変化等の影響に対するロバスト性を向上させることができる。
また、制御手段に、基準信号に同期した基準正弦波を生成する正弦波発振部を設けて、さらに取得検波出力に基づいて一対の反射面の間隔長をDC出力の間隔長調整信号として得る基準周波数調整部と、発振周波数の変調幅、つまり振動させる反射面の振動振幅をDC出力の変調幅調整信号として得る変調幅調整部とを設けたから、生成した基準正弦波に対し間隔長調整信号と変調幅調整信号とを重畳させることによって、位相ずれのない基準正弦波状の駆動信号を得ることができる。
【0021】
また、周波数変調用の基準正弦波を発振するための構成を、位相同期回路(PLL発振回路)を基本構成として形成し、正弦波発振部を位相同期回路のループ回路に内蔵させるようにしたので、基準正弦波と検波用の基準信号との位相同期を確実に安定させることができる。これを正弦波発振部のPLL内蔵効果と呼ぶ。従って、例えば微小な分子吸収線の中心にレーザー光の発振周波数を固定(ロック安定化)させるために、従来の制御システムで必要となった周波数安定化レーザー光源毎の位相調整作業が不要となる。この位相調整作業を行うことによって従来の制御システムでは環境変動や経時変化等の影響を受けやすかったが、本発明では位相調整作業を行わないため、環境変動や経時変化等の影響に対するロバスト性を確実に向上させることができる。このように本発明によれば、周波数安定化制御システムの安定性を改善できる。
【0022】
また、基準信号供給手段に外部基準信号を入力可能にして、外部基準信号か原発信部からの内部基準信号かのいずれかを基準信号として選択できるようにしたので、複数台の周波数安定化レーザー光源の各基準正弦波を位相同期させることができる。従って、複数台のレーザー光を波長比較校正するときに、従来は各々の原発振器の周波数差による測定誤差の影響を受けたが、本発明によれば、周波数差による測定誤差の影響をなくすことができて、複数台の周波数安定化レーザー光源による波長校正の測定精度を向上できる。
【0023】
さらに、外部同期システムにより、一台一台の調整ではなく、共通の外部基準信号により各部の調整・評価が可能となる。複数台の周波数安定化レーザー光源による校正のばらつきが小さくなって、複数台の周波数安定化レーザー光源を使って、長さ測定などの検査を行っても精度ばらつきが大きくならない。その結果、均一な品質での製作、評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来の周波数安定化レーザー光源の全体構成図である。
【図2】従来システムにおける基準信号と変調信号との位相差を示す図である。
【図3】本発明の周波数安定化レーザー光源の全体構成図である。
【図4】周波数変調されたレーザー光の波形を示す図である。
【図5】分子吸収線の3次微分信号と2次微分信号を示す図である。
【図6】図3におけるコントローラーの構成を示す図である。
【図7】波長校正システムを説明する図である。
【図8】同期した変調信号による2つのレーザー光のビート測定の概念図。
【図9】非同期の変調信号による2つのレーザー光のビート測定の概念図。
【図10】図8と図9におけるビート周波数特性を示す図である。
【図11】本発明の周波数安定化レーザー光源の波長校正システムを説明するための図である。
【図12】本発明の複数台のレーザー光源システムを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る周波数安定化レーザー光源(以下、レーザー光源とも言う。)について説明する。図3は、所望波長の出射レーザー光を得るレーザー光源として、分子吸収線による周波数安定化レーザー光源の全体構成図である。レーザーヘッド10については、図1で説明した従来の構成と同等のものを用いるため簡単に説明する。つまり、図1の励起光源11は本発明の励起手段に相当する。共振器ミラー123は、共振器長Lが可変となるように移動自在に設けられている。また、レーザー結晶121は、励起光源11によって励起されて光を放出するレーザー媒質に相当する。そして、レーザー結晶121、共振器ミラー123、共振器ミラー123の駆動用のアクチュエーター13によって光共振器12が構成されている。光共振器12では、レーザー結晶121の反射面124と共振器ミラー123の反射面との間で、レーザー結晶121の放出光を共振させることによって、共振器長Lで定まる発振周波数(fc)のレーザー光が生成される。同時に、光共振器12では、共振器ミラー123を振動させて振動速度の変化に応じた変調周期(1/fs)で、レーザー光の発振周波数(fc)が変調される。そして、共振器ミラー123を透過した変調レーザー光が出射されるようになっている。
【0026】
ここで、出射された変調レーザー光の一部から特定波長成分(特定周波数)を吸収するガスを入れた分子吸収セルと、この分子吸収セルを透過したレーザー光を受光する受光器15(本発明の検波手段に相当する。)の構成について、詳しく説明する。図1のように、光共振器12から取り出されるレーザー光がビームスプリッター16で、出力光と検出光とに分割される。検出光は、ミラー17を反射してビームスプリッター18を透過した後、吸収セル14を照射する。吸収セル14を透過したレーザー光はミラー19を反射して再び吸収セル14を透過する。この透過光はビームスプリッター18を反射して受光器15で受光される。
【0027】
吸収セル14には、所定周波数のレーザー光を吸収するガス(ヨウ素分子)が入っている分子ガスセルである。吸収セル14に入る光をポンプ光と呼び、ミラー19を折り返してくる光をプローブ光と呼ぶ。セル内のガスに照射されるポンプ光とプローブ光は、ガスを透過する際にエネルギーの一部を吸収される。従って、受光器15では、周波数変調レーザー光の特定波長成分以外の光が検出されるが、実質的に特定波長成分が分かる。本実施形態では、ミラー反射による往復光路のポンプ光およびプローブ光を用いた吸収線検出系を説明したが、別の吸収線検出形態を用いてもよい。さらに、吸収セルを用いる検出形態ではなく、他の検出形態によって、例えば分光器を用いてレーザー光の特定波長成分を検出してもよい。
【0028】
また、図1の光共振器12に内蔵されたアクチュエーター13はピエゾ素子であり、電圧を印加されると変形し、共振器ミラー123の位置を変化させて、共振器長Lを調整可能である。また、所定の周波数で共振器ミラー123を振動させることができる。本実施形態では、変調信号(本発明の基準正弦波に相当し、図中ではAC信号で示す。)に基づく周波数変調と、共振器長LのDC走査とを兼ね備えたアクチュエーター13を示すが、周波数変調とDC走査とを分離した駆動機構でもよく、例えばPZTと可動型共振器ミラーとの組み合わせでもよい。
【0029】
<コントローラー>
次に、図3に基づいて本発明に特徴的なコントローラー20について説明する。
コントローラー20は、分子吸収線の中心にレーザー光の発振周波数を固定(ロック安定化)させるため、受光器15からの検波出力を基準信号に同期して取得し、この取得検波出力に基づいて決定された振幅の基準正弦波で共振器ミラー123の駆動制御を行う制御手段として設けられている。コントローラー20は、基準信号供給回路22と、安定化制御回路50と、アクチュエーター駆動回路31を備える。
【0030】
安定化制御部50には、受光器15からの検波出力をロックイン検波して必要な分子吸収線を得るためのロックイン検波器23と、正弦波状の変調信号(AC信号)を生成するための変調信号生成器21と、アクチュエーター13を制御する制御信号を生成するための信号処理部25と、安定化目標値となる所望の吸収線波長の指令値を設定してDC信号として信号処理部25へ出力する吸収線波長指令値設定部24とを有する。
【0031】
変調信号生成器21は、レーザー光を周波数変調するための変調信号を生成する。変調信号の周波数をfs(変調周波数)とする。ヘッド10のアクチュエーター13に設けられた共振器ミラー123を変調周波数fsで振動させると、共振器ミラー123を透過するレーザー光が周波数変調される。これによりレーザー光の周波数は、中心周波数fcを中心に、最大周波数(fc+fd)での発振と最小周波数(fc−fd)での発振とを交互に変調周期(1/fs)で繰り返す。レーザー光の波形は図4に示すように密の状態と粗の状態とを有する。ここで、fdは変調深さ(変調幅)であり、変調信号の振幅を示す。変調深さfdは、レーザー光の最大周波数および最小周波数の間にヨウ素分子の分子吸収線が複数本程度含まれるように設定される。
【0032】
変調信号の生成には、図1のように基準信号供給回路22からの基準信号が使用される。変調信号生成器21に供給される基準信号(f信号)は、変調周波数fsに等しい周波数の矩形波である。
ロックイン検波器23は、受光器15からの微弱な検波出力を検波する。ロックイン検波には、基準信号供給回路22からの基準信号(3f信号)を使用する。この基準信号は、変調周波数fsの3倍の周波数の矩形波である。このロックイン検波により少なくとも1本の分子吸収線を示す3次微分信号(DC信号)が得られる。
【0033】
変調信号生成器21からの変調信号(AC信号)によってレーザー光を周波数変調するために、信号処理部25ではAC信号に基づくアクチュエーター13の制御信号をアクチュエーター駆動回路31に出力する。アクチュエーター駆動回路31は制御信号に基づいてアクチュエーター13を駆動させて、共振器長Lを周期的に変化させる。
【0034】
また、信号処理部25は、ロックイン検波器23からの3次微分信号を監視しながら、ロックイン検波器23からのDC信号に基づいてアクチュエーター13を駆動させる。言い換えると、ロックイン検波器23は、受光器15からの検波出力に対して基準信号(3f信号)を用いて同期検波を行って、検波出力(取得検波信号)が一定になるように共振器ミラー123の位置を調整する。このような共振器長制御の結果、レーザー光の発振周波数が予め設定された特定吸収線波長成分の中心にロック(安定化)されることになる。なお、ロックイン検波器23において、特定波長成分の検波タイミングが一定になるように共振器ミラーの間隔長(L)を制御調整することによっても、同様の効果が得られる。以上のような制御を共振器長LのDC走査と呼ぶ。このように、信号処理部25は、AC信号による周波数変調の制御と、共振器長LのDC走査との両方をアクチュエーター13で実行するために、アクチュエーター13の制御信号を処理している。
【0035】
なお、レーザーヘッド内の各部(励起光源,共振器,分子ガスセル等)には、図示しない温度センサと温度制御素子が取付けられ、各部は適正な温度に安定にコントロールされている。レーザー光出力強度も、光吸収線検波を安定させるため安定化制御を施している。
【0036】
受光器15は、変調周波数fsで周波数変調されたレーザー光を受光している。そして、ロックイン検波器23では、検波出力から必要な分子吸収線を検波するため、変調周波数fsの3倍の周波数の基準信号(3f信号)を用いている。このロックイン検波では、検波出力に含まれる分子吸収線の信号と、基準信号とが正確に位相同期していることが必要で、位相差Δφがあると分子吸収線を正しく検波できないという問題があった。
【0037】
図5に、光共振長LをDC走査した時に、ロックイン検波器23が検波する分子吸収線の3次微分信号を2次微分信号と合わせて示す。複数の分子吸収線(a1〜a15)が検波されることが分かる。原理的には、所望の分子吸収線のラムディップ窪みの中心にレーザー光の中心周波数(fc)を固定させるため、分子吸収線の3次微分信号におけるゼロクロス(基準レベル)信号で光共振長LをDC走査する。このDC走査において前述の位相差Δφがあると、必要な分子吸収線を高精度に検波できなくなるから、レーザー光の周波数を高精度に安定させるためには、変調信号(AC信号)と基準信号(3f信号)とを位相同期させなければならない。この位相同期の安定性が、周波数安定化制御の安定度に大きく影響を及ぼす。
【0038】
<位相同期システム>
本発明で特徴的なことは、コントローラー20における変調信号生成器21をPLL発振回路(位相同期回路)の基本構成で形成し、正弦波発振器36をPLL発振回路に内蔵したことである。変調信号生成器21について図6に基づいて詳しく説明する。
図6のように変調信号生成器21は、位相比較器(PD)32と、ローパスフィルタ(LPF)33と、電圧制御発振器(VCO)34と、分周器(1/N)35と、正弦波発振器36と、矩形発生部(コンパレータ)37を有するループ回路である。
【0039】
位相比較器(PD)32は、基準信号供給手段22からの矩形波の基準信号(f信号)とフィードバック信号との位相差(Δφ)を電圧出力する。ローパスフィルタ(LPD)33は、位相比較器32の電圧出力からノイズを除去する。電圧制御発振器(VCO)34は、ノイズ除去後の電圧出力によって、この変調信号生成器21の出力信号の周波数を制御する。すなわち、変調信号生成器21は、電圧出力に応じて調整した周波数の出力信号を発信する。分周器35は、出力信号を整数(N)分の1に分周して出力する。正弦波発振器36は、分周器35の分周信号から基準正弦波を生成する。基準正弦波は、基準信号(3f信号)として信号処理部25に供給される。コンパレータ37は、基準正弦波の一部を使って矩形波を生成し、この矩形波をPD32のフィードバック信号として位相比較器32に出力する。電圧制御発振器34は、正弦波発振器36で生成された基準正弦波と基準信号(f信号)との位相差(Δφ)が零になるように、出力信号の周波数を調整する。
【0040】
このように正弦波発振器36の基準正弦波をコンパレータ37経由で位相比較器32へのフィードバック信号とすることで、位相比較器32への基準信号(f信号)と位相同期した基準正弦波を変調信号(AC信号)として生成することができる。この変調信号は、信号処理部25へ送られるから、ロックイン検波器23に供給される基準信号(3f信号)に対して位相差(Δφ)のない変調信号となって、レーザー光を周波数変調させることができる。
【0041】
本実施形態では、PLL発振回路の基本構成の中で、フィードバックして位相比較する最終段に近い場所に、変調信号(AC信号)用の正弦波発振器36を配置したから、基準正弦波の生成時に生じる位相遅れに関係なく、生成された基準正弦波の位相を基準信号(f信号)の位相に同期させることができる。仮に、変調信号生成器21において温度変動といった環境変動等でLPF33通過後の位相ずれが生じても、基準正弦波発生後の信号で位相同期(PLL)するため、位相差が元に戻るように制御される。
なお、一般的なPLL発振回路を用いて電圧制御発振器(VCO)34で直接的に基準正弦波を生成してもよい。その場合、駆動周波数をN倍に高める必要があり、変調周波数(fs)とロックイン検波との兼合いでPLL発振回路を構成することが困難となる場合がある。また、仮に構成できたとしても、実際の駆動周波数での位相誤差が1/N圧縮されて位相検波してしまうことになる。従って、本実施形態のように分周器35を設けた方が好ましい。
【0042】
また、本発明で特徴的なことは、任意の分子吸収線の周波数にレーザー光の周波数を安定化させるために、信号処理部25が、基準周波数調整部41および変調幅調整部42を備えることである。基準周波数調整部41は、使用する分子吸収線信号の周波数に応じて共振器長Lを調整し、DC信号を出力する。言い換えると、基準周波数調整部41は、ロックイン検波器23で取得した3次微分信号に基づき、共振器長LをDC出力の共振器長調整信号として取得する。また、変調幅調整部42は、変調信号(AC信号)の変調深さ(fd)を調整する。言い換えると変調幅調整部42は、共振器ミラー123の変調深さをDC出力の変調幅調整信号として取得する。信号処理部25は、これらDC出力である共振器長調整信号と変調幅調整信号とをAC信号に重畳させて、基準正弦波状のアクチュエーター制御信号を生成し、アクチュエーター駆動回路31に出力する。このような構成の信号処理部25を備えたことで、レーザー光を周波数変調したり、任意の分子吸収線の周波数にレーザー光の周波数を固定したりすることができる。
【0043】
<波長校正システム>
また、2台の周波数安定化レーザー光源による波長校正を行う際、原発振器間の周波数ずれによって、ビート周波数に揺らぎが発生するという問題があった。この問題について図7〜図10に基づいて説明する。
【0044】
図7は、第1周波数安定化レーザー光源(図中のNo.1で示す)を基準として、第2周波数安定化レーザー光源(図中のNo.2で示す)の波長を比較し、これを校正するシステムを示す。第1レーザー光源はm番目の吸収線に、第2レーザー光源はn番目の吸収線にそれぞれロックされている。第1、第2レーザー光の中心周波数(fc1、fc2)、変調信号の変調周波数(fs1、fs2)および変調深さ(fd1、fd2)を用いて各レーザー光の波形を示すと、図7のようになる。原発振器間の周波数ずれを(fs1−fs2)で示す。
【0045】
波長校正では、2つのレーザー光を重ね合わせた光を受光器で検出し、周波数カウンターでビート周波数を測定する。図8を用いて、原発信器の周波数ずれがない場合を説明する。同図の上側には、レーザー光のスペクトル(fopt1、fopt2)と変調信号(AC1、AC2)の関係を模式的に示す。下側には、ビート周波数スペクトル(f)の時間的な推移を示す。変調信号(AC1、AC2)の周波数ずれがあると、m番目の吸収線にロックされた第1レーザー光の中心周波数(fc1)とn番目の吸収線にロックされた第2レーザー光の中心周波数(fc2)との差(fc1−fc2)が一定値を示し、ビート周波数スペクトル(f)に時間的な揺らぎが生じない。従って、中心周波数差(fc1−fc2)がm番目とn番目の各吸収線の周波数差となるように、適正に第2レーザー光源の波長を校正できる。
【0046】
周波数ずれがあると(fs1−fs2≠0)、変調周波数差(fs1−fs2)や変調度に応じた影響を測定精度に与えてしまう。図9を用いて、原発信器の周波数ずれがある場合を説明する。同図上のように、変調信号(AC1、AC2)が変調周波数に差(fs1−fs2)があり、また変調深さの差(fd1−fd2)があると、ビート周波数スペクトル(f)がビート変動周期(fBS=fs1−fs2)で変動して揺らぎが生じてしまう。同図下には、時間的に変動するビート周波数スペクトル(f(t))の様子を模式的に示す。このように、ビート周波数スペクトル(f(t))が揺らぐため、適正に第2レーザー光源の波長を校正できない。
【0047】
図10はビート周波数の特性図である。同図に基づいてビート周波数スペクトルの揺らぎを説明する。同図(A)のように、(fd1=fd2)かつ(fs1−fs2)かつ変調信号が位相同期している場合、あるビート周波数で一定になる。一方、同図(B)のように、変調深さの差(fd1−fd2)があると、ビート周波数に第1の変動幅(Δfd(min)=|fd1−fd2|)と、第2の変動幅(Δfd(max)=|fd1+fd2|)とが生じてしまう。その結果、測定データに対する影響度合いが異なってくる
【0048】
また、変調周波数に差(fs1−fs2)があると、変動周期(TBS=|(1/fs1)−(1/fs2)|)でビート周波数が変動してしまう。例えば、変調周波数差(fs1−fs2)が0.01Hzの場合、100秒以上の平均化処理が必要となってしまう。
また、変調信号(AC1、AC2)間に10秒未満の瞬時に2周波分の位相差があると、ビート信号の変調特性(周波数のふらつき)が変化するから、測定データに対する影響が時々刻々と変化してしまう。
【0049】
以上のように、複数台の周波数安定化レーザー光源を用いたビート周波数の測定による波長校正の際、各々のレーザー光源で変調信号(AC信号)の生成に用いる基準信号が異なることにより、測定するビート周波数信号の変動量(バラつき)が時間とともに変化してしまうという問題があった。
【0050】
このような問題に対し、本発明では、基準信号供給手段22に、基準信号を外部と授受する入出力部を設けた。すなわち、基準信号供給手段22は、図6のように、原発振器51と基準信号入力部52と、基準信号選択部(SW)53と基準信号出力部54と分周回路55を備えている。
【0051】
原発振器51は、内部基準信号を発振する。基準信号入力部52は、外部からの外部基準信号を入力する端子である。基準信号選択部53は、内部基準信号と外部基準信号とを選択するスイッチ素子である。基準信号出力部54は、基準信号選択部53で選択された基準信号の一部を外部へ出力する端子である。分周回路55については、選択された基準信号の発振周波数を整数(N)分の1にして出力する分周器56を有する。本実施形態では、原発信器51からの基準信号(6f信号とする)は、変調周波数(fs)の6倍の周波数の信号である。分周器56によって周波数を6分の1にされた基準信号(f信号)が変調信号生成器21に変調用として供給される。また、分周器56によって周波数を2分の1にされた基準信号(3f信号)がロックイン検波器23に検波用として供給される。
【0052】
このように、基準信号供給手段22が、基準信号を外部と授受する入出力手段を有するから、例えば、他の周波数安定化レーザー光源の原発振器の基準信号を用いて本周波数安定化レーザー光源の波長校正をする場合、基準信号選択部53を切り替えるだけで、他の周波数安定化レーザー光源からの外部基準信号を分周器56に送ることができる。さらに、3台目の周波数安定化レーザー光源の入力部と本周波数安定化レーザー光源の基準信号出力部54とを接続すれば、本周波数安定化レーザー光源の基準信号入力部52から取り込んだ外部基準信号を3台目の周波数安定化レーザー光源にも送ることができる。
【0053】
このようにして、一つの原発振器からの基準信号を複数台の周波数安定化レーザー光源に共有して使用することが容易に行え、複数台の周波数安定化レーザー光源の変調信号(AC信号)を位相同期させることができる。従来は、独立した原発振器からの基準信号によって周波数変調をそれぞれ行っていたため、レーザー光の周波数差や位相差が生じてしまい、波長校正測定時の測定精度へ影響を及ぼしていたが、このような影響を低減させることができる。
【0054】
図11は、複数台の周波数安定化レーザー光源(No.1、No.2)のうちの一台を基準として、他方のレーザー光源を波長比較校正するシステムを示す。複数ある原発振器51のうちの一つから基準信号を発振させて、全てのレーザー光源の基準信号とする。あるいは、別の外部基準信号を用いて、全てのレーザー光源の基準信号に用いてもよい。全レーザー光源での変調信号の位相同期が可能となる。各レーザー光スペクトルのビートをRFスペクトルアナライザー61で観測し、ビート周波数を周波数カウンター62で計測する。ビート計測において、図6の変調幅調整部42により変調深さ(fd)をアンプゲイン調整すれば、基準となるレーザー光源(No.1)のレーザー光スペクトルに対する校正対象のレーザー光源(No.2)のレーザー光スペクトルのビート周波数を安定させることができる。図8で示したようなビート周波数スペクトルが得られる。従って、図10(A)のようなビート周波数特性が得られるから、図6の基準周波数調整部41により出射レーザー光の周波数をDCレベル調整して、ビート周波数を所望の値に合わせることができる。測定インターバルに関わらず、安定した波長校正を行うことができる。
【0055】
図12は、複数台の周波数安定化レーザー光源(No.1、No.2)で加工部品などの長さ測定をそれぞれ行う場合に用いることができる複数台のレーザー光源システムを示す。第1周波数安定化レーザー光源では自身の原発振器51の基準信号を選択し、その基準信号出力部54と第2周波数安定化レーザー光源の基準信号入力部52とを接続する。そして、第2周波数安定化レーザー光源では外部基準信号を選択する。この結果、各周波数安定化レーザー光源において同期した基準信号を使用することができ、レーザー光同士の周波数差や位相差が低減され、測定誤差の影響をなくすことができる。従って、生産段階で均一な品質での製作や評価などが可能となる。
【0056】
なお、上記実施形態では、LD励起固体レーザー光源を例にして説明したが、固体レーザー光源に限らず、He−Ne気体レーザーなどの気体レーザー光源や半導体レーザー光源の周波数安定化にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0057】
11 励起光源(励起手段)
12 光共振器
13 アクチュエーター
14 吸収セル
15 受光器
20 コントローラー(制御手段)
22 基準信号供給回路(基準信号供給手段)
23 ロックイン検波器
25 信号処理部
29 変調信号生成器(変調信号生成部)
32 位相比較器(位相比較部)
34 電圧制御発振器(電圧制御発振部)
36 正弦波発振器(正弦波発振部)
41 基準周波数調整部
42 変調幅調整部
51 原発振器(原発振部)
52 基準信号入力部
53 基準信号選択部
54 基準信号出力部
121 レーザー結晶(レーザー媒質)
123 共振器ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔長を可変とする一対の反射面間で光を共振させて、前記間隔長で定まる発振周波数のレーザー光を生成し、かつ、前記一対の反射面のうちの少なくとも一方を変調周波数で振動させることにより、前記発振周波数を変調周期で周波数変調し、変調したレーザー光を出射する光共振器と、
前記光共振器からのレーザー光の一部を照射すると特定の波長成分を吸収する物質を入れた吸収セルと、
前記吸収セルでの特定吸収線波長成分を検波する検波手段と、
前記検波手段からの検波出力に対して所定の基準信号を用いて同期検波を行い、取得した取得検波信号に基づいて前記間隔長制御を行う制御手段と、
を備え、
前記間隔長制御によって前記発振周波数成分を前記特定吸収線波長成分の中心に安定化させて、前記光共振器から所望波長の出射レーザー光を得る周波数安定化レーザー光源であって、
前記制御手段は、前記発振周波数を周波数変調するための基準正弦波を前記基準信号に同期させて生成し、該基準正弦波を用いて前記反射面を振動させるための正弦波状の駆動信号を得て、前記発振周波数の周波数変調制御を行うことを特徴とする周波数安定化レーザー光源。
【請求項2】
請求項1記載の周波数安定化レーザー光源において、
前記制御手段は、
前記基準信号に同期した基準正弦波を生成する正弦波発振部と、
前記検波手段からの検波出力を基準信号に同期して取得した取得検波出力に基づき、前記間隔長をDC出力の間隔長調整信号として得る基準周波数調整部と、
前記取得検波出力に基づき前記発振周波数の変調幅をDC出力の変調幅調整信号として得る変調幅調整部とを備え、
前記基準正弦波に対し前記間隔長調整信号および変調幅調整信号を重畳させて、前記正弦波状の駆動信号を得ることを特徴とする周波数安定化レーザー光源。
【請求項3】
請求項1または2記載の周波数安定化レーザー光源において、
前記制御手段は、
前記基準信号に同期した基準正弦波を生成する正弦波発振部と、
前記正弦波発振部で生成された基準正弦波と基準信号との位相差を電圧出力する位相比較部と、
前記電圧出力に応じて調整した周波数の出力を発振する電圧制御発振部と、を備え、
前記電圧制御発振部は、該電圧制御発振部の出力に基づいて生成された基準正弦波と基準信号との位相差が零になるように、出力周波数を調整することを特徴とする周波数安定化レーザー光源。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の周波数安定化レーザー光源において、
前記制御手段は、前記基準正弦波を生成するための基準信号、および前記同期検波用の基準信号を供給する手段として、
基準信号として使用可能な内部基準信号を発振する原発振部と、
基準信号として使用可能な外部基準信号を外部から入力する基準信号入力部と、
前記原発振部からの内部基準信号または前記外部基準信号を選択する基準信号選択部と、を有し、該選択基準信号を供給する基準信号供給手段を備えることを特徴とする周波数安定化レーザー光源。
【請求項5】
請求項4記載の周波数安定化レーザー光源において、
前記基準信号供給手段は、さらに前記選択基準信号の一部を外部へ出力する基準信号出力部を有することを特徴とする周波数安定化レーザー光源。
【請求項6】
請求項1記載の複数の周波数安定化レーザー光源を用いて、波長校正の基準となる基準周波数安定化レーザー光源および波長校正の対象となる校正対象周波数安定化レーザー光源として、これらの周波数安定化レーザー光源にそれぞれ同一の原発振部からの基準信号を供給し、該基準信号を用いて前記発振周波数成分を安定化させて、前記基準周波数安定化レーザー光源および校正対象周波数安定化レーザー光源からレーザー光を出射させ、前記基準周波数安定化レーザー光源の出射レーザー光と前記校正対象周波数安定化レーザー光源の出射レーザー光とのビート周波数を測定し、
該ビート周波数が所定値となるように、前記校正対象周波数安定化レーザー光源の共振器ミラーの間隔長を調整することを特徴とする周波数安定化レーザー光源の波長校正方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−38833(P2012−38833A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175938(P2010−175938)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】