説明

回路基板およびそれを備えた電気接続箱

【課題】均熱・放熱性およびリサイクル性に優れ、しかも、コスト低減および小型軽量化が可能な回路基板およびそれを備えた電気接続箱を提供すること。
【解決手段】板状のメタルコア12と、このメタルコア12の表面を覆う絶縁部13とから回路基板11を構成する。周縁における絶縁部13を除去することによりメタルコア12を露出させ、この露出させたメタルコア12の一部を放熱部14とする。放熱部14を構成するメタルコア12に、複数の凸部15を形成することにより凹凸形状とする。実装した電気部品からメタルコア12に伝達された熱を、放熱部14から放出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路等といった電気回路を備えた回路基板およびそれを備えた電気接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路等を備えた回路基板を車載する場合、箱体に収容した状態で搭載するのが一般的である。ただし、電源回路等といった大電流を扱う電気回路を備えた回路基板を箱体に収容する場合、回路基板の発熱量が非常に大きいので、放熱性に十分配慮しなくてはならない。
【0003】
熱対策を講じた回路基板として、図6に示すように、基板1に対して金属板からなる放熱板2を重ね合わせて取り付け、この放熱板2の露出部分に電気部品3を接合させることにより、電気部品3の熱を放熱板2に伝達させて放出させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−163476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の回路基板では、基板1の放熱板2を取り付けた面に、回路を配索することができず、しかも、放熱板2を周囲に露出させるため、実装可能な面積が制限され、このため、必要な実装面積を確保するためには、回路基板の大型化が免れず、電気接続箱に収納した場合、この電気接続箱の大型化を招いてしまう。
【0006】
しかも、基板1とは別部品である放熱板2を貼り合わせるため、部品点数および製造工程の増加が避けられず、コスト高となってしまい、また、この回路基板を収納した電気接続箱を解体する際には、基板1から放熱板2を取り外さなければならず、その解体作業に多大な手間を要する。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、均熱・放熱性およびリサイクル性に優れ、しかも、コスト低減および小型軽量化が可能な回路基板およびそれを備えた電気接続箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明に係る回路基板は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 電気部品が実装される回路基板であって、板状のメタルコアと、このメタルコアの表面を覆う絶縁部とを有し、前記絶縁部を除去することにより前記メタルコアが露出された放熱部が周縁に設けられていること。
(2) 上記(1)の構成において、
前記放熱部を構成するメタルコアは、凹凸形状とされていること。
(3) 上記(1)または(2)の構成において、
前記放熱部が面に直交する方向へ屈曲されていること。
また、前述した目的を達成するため、本発明に係る電気接続箱は、下記(4)を特徴としている。
(4) 電気部品が実装された回路基板と、該回路基板を覆うケースとを備えた電気接続箱であって、前記回路基板として、上記(1)〜(3)のいずれかの回路基板を備えること。
【0009】
上記(1)の構成の回路基板によれば、メタルコアを露出させた放熱部が周縁に設けられているので、電気部品からメタルコアに伝達された熱を、露出させたメタルコアからなる放熱部から効果的に放出することができる。これにより、金属板からなる別個の放熱板が不要となり、大きな実装面積を確保しつつ構造の単純化による小型軽量化および低コスト化が可能となるとともに解体の容易化を図ることができ、従って、均熱・放熱性およびリサイクル性を向上させることができる。
上記(2)の構成の回路基板によれば、放熱部を構成するメタルコアが凹凸形状とされたことにより、メタルコアからなる放熱部の表面積を大きくすることができ、放熱効果を更に高めることができる。
上記(3)の構成の回路基板によれば、放熱部を面に直交する方向へ屈曲させることにより、平面内における大きさを小さくすることができ、この回路基板を収納した各種の機器の小型化を図ることができる。
上記(4)の構成の電気接続箱によれば、メタルコアを露出させた放熱部が周縁に設けられて、電気部品からメタルコアに伝達された熱を、露出させたメタルコアからなる放熱部から効果的に放出させることが可能な回路基板を備えたので、金属板からなる別個の放熱板を取り付けた回路基板を収納する場合と比較して、バスバを用いることなく回路基板への大電流の導入が可能となり、構造の単純化による小型軽量化および低コスト化を図ることができるとともに解体の容易化を図ることができ、これにより、均熱・放熱性およびリサイクル性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、均熱・放熱性およびリサイクル性に優れ、しかも、コスト低減および小型軽量化を可能とすることができる。
【0011】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る回路基板およびそれを備えた電気接続箱について図面を参照して説明する。
【0013】
(回路基板)
まず、実施形態に係る回路基板について説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る回路基板の構造を示す斜視図、図2は回路基板の一部の拡大斜視図である。
【0015】
図1および図2に示すように、回路基板11は、メタルコア基板からなるもので、板状のメタルコア12と、このメタルコア12の表面を覆うように形成された絶縁部13とを有し、これらが層状に形成された電気回路基板である。
【0016】
メタルコア12は、例えば、銅を素材とした板体であり、絶縁部13は、非導電性で且つ熱伝導率の低い例えばガラスエポキシ樹脂等によって成形されている。尚、メタルコア12の素材としては、銅の代わりに、比重が銅の約3分の1であるアルミニウムを用いてもよい。
【0017】
上記メタルコア基板からなる回路基板11には、絶縁部13に、銅箔からなる導電性回路パターン(不図示)が形成されている。
【0018】
そして、この回路基板11には、リレー等の図示しない電気部品が実装され、この電気部品の端子部が回路パターンにハンダ付けされて導通される。
【0019】
上記構造の回路基板11は、その周縁部分にて、絶縁部13を除去することにより、メタルコア12が露出されており、このメタルコア12が露出された部分が放熱部14とされている。
【0020】
この放熱部14を構成するメタルコア12は、一方の面側へ突出する複数の凸部15を形成することにより、凹凸形状とされており、これら凸部15が平面視にて千鳥状に配置されている。尚、この凸部15は、他方の面側へ突出させても良く、あるいは両面側へ突出させても良い。また、その配置も、平面視千鳥状でなくても良い。
【0021】
そして、上記実施形態に係る回路基板11によれば、メタルコア12を露出させた放熱部14が周縁に設けられているので、電気部品からメタルコア12に伝達された熱を、露出させたメタルコア12からなる放熱部14から効果的に放出することができる。これにより、金属板からなる別個の放熱板が不要となり、大きな実装面積を確保しつつ構造の単純化による小型軽量化および低コスト化が可能となるとともに解体の容易化を図ることができ、従って、均熱・放熱性およびリサイクル性を向上させることができる。
【0022】
特に、放熱部14を構成するメタルコア12に複数の凸部15を形成して凹凸形状としたことにより、メタルコア12からなる放熱部14の表面積を大きくすることができ、放熱効果を更に高めることができる。
【0023】
また、この回路基板11の放熱部14を、面に直交する方向へ屈曲させることにより、この回路基板11の平面内における大きさを小さくすることができ、この回路基板11を収納した各種の機器の小型化を図ることができる。
【0024】
尚、上記実施形態では、放熱部14を構成するメタルコア12に複数の凸部15を形成したが、図3に示すように、単にメタルコア12の一部を露出させて放熱部14としても良好な放熱効果を得ることができる。
【0025】
また、上記実施形態では、回路基板11の全周にわたって放熱部14を設けたが、回路基板11の周縁における一部にてメタルコア12を露出させて放熱部14を設けても良い。
【0026】
(電気接続箱)
次に、実施形態に係る電気接続箱について説明する。
【0027】
図4は本発明の実施形態に係る電気接続箱の構造を示す分解斜視図、図5は電気接続箱に設けられた回路基板を示す裏面側から視た斜視図である。
【0028】
図4に示すように、電気接続箱21は、上ケース(ケース)22および下ケース(ケース)23を有しており、これら上ケース22と下ケース23との間に回路基板24が配設され、この回路基板24が上ケース22および下ケース23によって覆われている。回路基板24には、その表裏面に図示しない配線パターンが形成されており、例えばリレー、ヒューズ、電子制御ユニット等といった図示しない電気部品が実装されている。
【0029】
上ケース22および下ケース23は、例えば、ガラス繊維入りポリプロピレンなどから形成されたもので、回路基板24を挟んで上ケース22と下ケース23とを組み合わせることにより、回路基板24を挟持して保持した状態にて上ケース22と下ケース23とが組み付けられている。
【0030】
この電気接続箱21は、ワイヤハーネスのコネクタが接続可能な複数のソケット25を備えている。
【0031】
ソケット25は、上ケース22に形成された嵌合凹部28を有しており、この嵌合凹部28内に、回路基板24の配線パターンに導通された状態に立設された導通用端子27が配置されている。そして、このソケット25では、嵌合凹部28に、ワイヤハーネス側のコネクタが嵌合されることにより、このコネクタの端子とソケット25側の導通用端子27とが導通される。
【0032】
また、この電気接続箱21は、外部リレー等の電気部品が取り付け可能な複数の部品取付ソケット26を備えている。
【0033】
これら部品取付ソケット26は、上ケース22に形成された嵌合凹部31を有しており、この嵌合凹部31内に、回路基板24の配線パターンに導通された状態に立設された接続端子32が配置されている。そして、この部品取付ソケット26では、嵌合凹部31に、電気部品が嵌合されることにより、この電気部品の端子と部品取付ソケット26側の接続端子32とが導通される。
【0034】
回路基板24は、前述したメタルコア基板からなるもので、板状のメタルコア42と、このメタルコア42の表面を覆うように形成された絶縁部43とを有し、これらが層状に形成された電気回路基板である。
【0035】
メタルコア42は、例えば、銅を素材とした板体であり、絶縁部43は、非導電性で且つ熱伝導率の低い例えばガラスエポキシ樹脂等によって成形されている。尚、メタルコア42の素材としては、銅の代わりに、比重が銅の約3分の1であるアルミニウムを用いてもよい。
【0036】
上記メタルコア基板からなる回路基板24には、絶縁部43に、銅箔からなる導電性回路パターン(不図示)が形成されている。
【0037】
上記構造の回路基板24は、その周縁部分に放熱部44が設けられている。この放熱部44は、図5に示すように、回路基板24の各辺にて、その絶縁部43を除去することにより露出させたメタルコア42を、回路基板24の面に直交する裏面方向へ向かって屈曲させることにより形成されている。
【0038】
尚、放熱部44を屈曲させる際には、屈曲前の平面状態にて回路基板24の角部を切り欠いておき、隣接する放熱部44同士が干渉しないようにする。
【0039】
そして、この放熱部44を構成するメタルコア42の一部にも、一方の面側へ突出する複数の凸部45を形成することにより凹凸形状とされており、これら凸部45が平面視にて千鳥状に配置されている。
【0040】
そして、上記構造の電気接続箱21では、回路基板24に実装された電気部品からの熱が回路基板24のメタルコア42に伝達され、このメタルコア42からなる放熱部44から放出される。
【0041】
このように、上記実施形態に係る電気接続箱によれば、メタルコア42を露出させた放熱部44が周縁に設けられて、電気部品からメタルコア42に伝達された熱を、露出させたメタルコア42からなる放熱部44から効果的に放出させることが可能な回路基板24を備えたので、金属板からなる別個の放熱板を取り付けた回路基板を収納する場合と比較して、バスバを用いることなく回路基板24への大電流の導入が可能となり、構造の単純化による小型軽量化および低コスト化を図ることができるとともに解体の容易化を図ることができ、これにより、均熱・放熱性およびリサイクル性を向上させることができる。
【0042】
特に、放熱部44が面に直交する方向へ屈曲されているので、回路基板24の平面内における大きさを小さくすることができ、電気接続箱21のさらなる小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る回路基板の構造を示す斜視図である。
【図2】回路基板の一部の拡大斜視図である。
【図3】回路基板の他の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電気接続箱の構造を示す分解斜視図である。
【図5】電気接続箱に設けられた回路基板を示す裏面側から視た斜視図である。
【図6】回路基板の従来技術を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
11、24:回路基板
12、42:メタルコア
13、43:絶縁部
14、44:放熱部
15、45:凸部
21:電気接続箱
22:上ケース(ケース)
23:下ケース(ケース)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が実装される回路基板であって、
板状のメタルコアと、このメタルコアの表面を覆う絶縁部とを有し、
前記絶縁部を除去することにより前記メタルコアが露出された放熱部が周縁に設けられていることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
前記放熱部を構成するメタルコアは、凹凸形状とされていることを特徴とする請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記放熱部が面に直交する方向へ屈曲されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
電気部品が実装された回路基板と、該回路基板を覆うケースとを備えた電気接続箱であって、
前記回路基板として、請求項1〜3のいずれか1項に記載の回路基板を備えることを特徴とする電気接続箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−324200(P2007−324200A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149984(P2006−149984)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】