説明

回路基板の製造方法

【課題】製造コストの低減及び増加防止を図ることができる回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法においては、連結部5の切削による汎用回路基板11の分割工程の工程内において、配線の一部2a、2b、2c、2dを切削する配線切削工程を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板の製造方法に係り、特に、左ハンドル用回路基板及び右ハンドル用回路基板といったようなわずかに異なる回路基板の製造に利用される汎用回路基板を用いた回路基板の製造方法に好適に利用できる回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、多様の回路に適用され得るようにプリント導体を汎用プリント回路基板に配線し、かつその適用回路の種類に応じて選択変更すべき回路部のプリント導体を予め接続状態に形成しておき、この回路部にあるプリント導体のうち接続不要な部分を汎用プリント回路基板の配線基板とともに切除することを特徴とするプリント回路基板の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−37264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように汎用プリント回路基板から接続不要な部分のプリント導体を切除する切除工程を他の工程と関連なしに行っていたため、切除工程にともない、回路基板の製造コストが増加する問題があった。
【0005】
また、汎用プリント基板を在庫として保管してから切除工程を行わなければならないため、汎用プリント基板の在庫の増加及び切除ラインへ適用外の汎用プリント基板の誤用投入の発生を引き起こすおそれがあった。
【0006】
従って、本発明の目的は、製造コストの低減及び増加防止を図ることができる回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するため、相互に連結された複数の汎用回路基板を有する集合基板の連結部を切削することにより集合基板から複数の回路基板を分割する分割工程と、分割工程の工程内において、回路基板に形成された配線の一部を切削することにより汎用回路基板を所望の回路基板に加工する配線切削工程とを備えることを特徴とする回路基板の製造方法を提供する。
【0008】
[2]また、配線切削工程において切削される配線の一部は、分割工程において切削される連結部の周囲に形成されていることを特徴とする上記[1]に記載の回路基板の製造方法であってもよい。
【0009】
[3]また、配線の一部は、連結部の両側に各々1個又は2個以上形成されていることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の回路基板の製造方法であってもよい。
【0010】
[4]また、分割工程及び配線切削工程において行われる切削作業の切削ルートは、連結部及び配線の一部を連続して通過するルートであることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれか1に記載の回路基板の製造方法であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一形態によれば、分割工程の工程内において配線切削工程を行っているので、所望する回路基板の製造コストを増加させることなく、かつ、その個数を過不足なく所望の回路基板を製造することができるなどの種々の作用を生じる。そのため、回路基板の製造コストの低減及び増加防止を図ることができる回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の本実施の形態に係る回路基板の製造方法において用いられる集合基板を示す平面図である。
【図2】図2は、本実施の形態に係る集合基板に形成された1個の汎用回路基板を示す平面図である。
【図3】図3は、本実施の形態に係る集合基板から分割された1個の所望の回路基板の一例を示す平面図である。Aは外観図であり、Bは等価回路図を用いて示している。
【図4】図4は、本実施の形態に係る集合基板から分割された1個の所望の回路基板の他の一例を示す平面図である。Aは外観図であり、Bは等価回路図を用いて示している。
【図5】図5は、本実施の形態に係る集合基板に形成された1個の汎用回路基板に対して分割工程及び配線切削工程を行う状態の一例を示す平面図である。
【図6】図6は、本実施の形態に係る集合基板に形成された1個の汎用回路基板に対して分割工程及び配線切削工程を行う状態の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施の形態)
本実施の形態の回路基板の製造方法は、汎用回路基板形成工程、分割工程及び配線切削工程を備えている。
【0014】
汎用回路基板形成工程においては、図1に示すように、1枚の集合基板10に汎用のある配線パターン2がそれぞれ印刷形成されるとともに、プレス加工によりその1枚の集合基板10の内部にミシン目が形成されることにより、複数個の同一形状の汎用回路基板11が集合基板10の内部にかたどられる。また、図2に示すように、複数個の同一形状の汎用回路基板11には種々の回路素子3がそれぞれ搭載される。図1又は図2に示すように、集合基板10のミシン目4は集合基板10から分割される予定の複数個の汎用回路基板11の境界線に形成されており、そのミシン目4の形成により生じた連結部5によって複数の汎用回路基板11が相互に連結された状態になっている。
【0015】
ここで、本実施の形態の汎用回路基板11とは、互いに同様、共通又は類似する機能を発揮する複数種の回路基板1を得るために製造上用いられる回路基板をいう。この汎用回路基板11が必要になる一例としては、自動車に用いられる各種の回路基板の製造方法が挙げられる。
【0016】
自動車に用いられる各種の回路基板については、同車種であっても、そのハンドル位置の違いや、その車種のグレードに基づく装備の違い、国内仕様と輸出仕様との違いなどのわずかな違いに応じて、類似の回路基板を何種類も製造しなければならない状況が生じることがある。また、兄弟車種や共用部品の場合においても同様のことが言える。
【0017】
つまり、図2及び図3に示すように、互いに類似の回路基板1A、1B(上記部品番号1は部品番号1A、1Bの総括番号である。)においては、所定の領域6A、6B、6C又は6Dに形成された不要な配線の一部2a、2b、2c又は2dが切除されている点や不要な回路素子3aが搭載されていない点を除き、共通点が多い。このように類似する複数種の回路基板1の製造に汎用回路基板11が用いられる。
【0018】
分割工程においては、図5に示すように、ルータ型基板分割機のルータビットが例えば第1の点線矢印C1のルートを通過することにより、集合基板10の連結部5が切削される。本実施の形態においては、各々の汎用回路基板11は4個の連結部5によりそれぞれ連結されているため、1個の汎用回路基板11に対してこれら4個の連結部5を切削することにより、集合基板10から複数の汎用回路基板11が分割される。
【0019】
配線切削工程は、分割工程の工程内において、上記の連結部5の切削作業とともに行われる。この配線切削工程においては、ルータビットが例えば第2の点線矢印C2のルートを通過することにより、汎用回路基板11に形成された配線の一部2d又は2c及び2bが切削される。
【0020】
具体的には、図3の回路基板1Aを形成する場合、図5に示すように、例えば汎用回路基板11の右下に位置する所定の領域6Dに形成された配線の一部2dが不要なため、そこを切削することにより切除する。また、図4の回路基板1Bを形成する場合、図6に示すように、例えば汎用回路基板11の左下に位置する所定の領域6C及びその右上に位置する所定の領域6Bに形成された配線の一部2b及び2cがそれぞれ不要なため、それらを切削することにより切除する。これにより、汎用回路基板11が所望の回路基板1に加工される。
【0021】
なお、便宜上、配線切削工程と分割工程とを区別して記載してあるが、分割工程及び配線切削工程において行われる切削作業は同じルータビットを用いて行う同様の作業である。よって、分割工程及び配線切削工程の各切削作業は一連の作業として行われることが好ましい。通常、複数の連結部5のうちのいくつかの連結部5が切削されたとき、切削された連結部5の近くに不要な配線の一部2a、2b、2c又は2dがあれば、それもあわせて切削するといった作業の流れになる。
【0022】
したがって、配線切削工程において切削される配線の一部2a、2b、2c又は2dは、図5又は図6に示すように、分割工程において切削される連結部5の周囲に形成されていることが好ましい。
【0023】
また、不要な配線の一部は、図5又は図6に示すように、連結部5の両側に各々1個又は2個以上形成されていることが好ましい。本実施の形態においては、切除対象の配線の一部2a、2b、2c及び2dが上下に設けられた連結部5の両側に各々1個形成されている。
【0024】
また、分割工程及び配線切削工程において行われる切削作業の切削ルートは、連結部5及び配線の一部2a、2b、2c又は2dを連続して通過するルートであることが好ましい。例えば、図5又は図6に示すように、ルータ型基板分割機のルータビットが第1の点線矢印C1のルートの終点及び第2の点線矢印C2のルートの始点が連結したルートを通過するように、その切削ルートを制御することが好ましい。
【0025】
(本実施の形態の作用)
本実施の形態の回路基板1の製造方法においては、図5又は図6に示すように、分割工程の工程内において配線切削工程を行っている。そのため、分割後に在庫保管された汎用回路基板11から不要な配線の一部2a、2b、2c又は2dを削除して所望の回路基板を得る従来の製造方法と比較して、製造コストを増加させることなく、かつ、過不足なく、所望の回路基板1を製造することができる。
【0026】
また、本実施の形態の製造方法においては、図1又は図2に示すように、不要な配線の一部2a、2b、2c又は2dは、連結部5の周囲に形成されていることが好ましい。これにより、連結部5の切削作業と配線の切削作業とを連続的に行うことができる。
【0027】
また、本実施の形態の回路基板1の製造方法においては、図1又は図2に示すように、配線の一部2a、2b、2c及び2dが連結部5の両側に各々1個形成されていることが好ましい。もちろん、配線の一部2a、2b、2c及び2dは、連結部5の両側に各々2個以上形成されていてもよい。これにより、汎用回路基板11から多種類の所望の回路基板1を製造することができる。
【0028】
また、本実施の形態の回路基板1の製造方法においては、図5又は図6に示すように、分割工程及び配線切削工程において行われる切削作業の切削ルートが、連結部5の切削ルートの終点と配線の切削ルートの始点とが連結したルートを通るような、連結部5及び配線の一部2a、2b、2c又は2dを連続して通過するルートであることが好ましい。これによれば、分割工程及び配線切削工程を区別することなく一連の流れの中で行うことができるので、配線の一部2a、2b、2c又は2dについての切削漏れを防ぐとともに、製造時間の短縮化を図ることができる。
【0029】
(本発明の実施の形態の効果)
すなわち、本発明の実施の形態によれば、上記の通り、分割工程の工程内において配線切削工程を行っているので、所望する回路基板の製造コストを増加させることなく、かつ、その個数を過不足なく所望の回路基板を製造することができるなどの種々の作用を生じる。そのため、回路基板の製造コストの低減及び増加防止を図ることができる回路基板の製造方法を提供することができる。
【0030】
尚、本発明の実施の形態は、上記示した形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0031】
例えば、ルータ型基板分割機により分割工程又は配線切削工程を受ける集合基板10は、必要な部品がそれぞれの回路基板上に実装された状態であってもよい。すなわち、汎用回路基板11に必要な部品がチップマウンターで実装され、リフローハンダ槽によりリフローハンダ付けされ、ビジュアルチッカーによる検査後に、分割工程及び配線切削工程により部品実装された多種類の所望の回路基板1が製造されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、1B・・・所望の回路基板、2・・・配線パターン、2a、2b、2c、2d・・・(所望の回路基板において不要な)配線の一部、3・・・回路素子、3a・・・(所望の回路基板において搭載されない)回路素子、4・・・ミシン目、5・・・連結部、6A、6B、6C、6D・・・配線の一部が形成された領域、10・・・集合基板、11・・・汎用回路基板、C1、C2・・・切削ルート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連結された複数の汎用回路基板を有する集合基板の前記連結部を切削することにより前記集合基板から複数の回路基板を分割する分割工程と、
前記分割工程の工程内において、前記回路基板に形成された配線の一部を切削することにより前記汎用回路基板を所望の回路基板に加工する配線切削工程と
を備えることを特徴とする回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記配線切削工程において切削される前記配線の一部は、前記分割工程において切削される前記連結部の周囲に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記配線の一部は、前記連結部の両側に各々1個又は2個以上形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記分割工程及び前記配線切削工程において行われる切削作業の切削ルートは、前記連結部及び前記配線の一部を連続して通過するルートである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19161(P2012−19161A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157164(P2010−157164)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】