説明

回路構成体

【課題】 寸法を縮小することができるとともに部品点数を減少させて基材の一面側と他面側の導電路同士を接続した回路構成体を提供する。
【解決手段】 基材10を介して複数の導電路20を備えてなる回路構成体1において、基材10には貫通孔13が設けられるとともに当該基材の一面側11及び他面側15には金属体25によって導電路20が形成され、基材の一面側11及び他面側15の導電路20A,20Cをそれぞれ折り曲げて貫通孔13に挿入し、基材の一面側11の導電路20Aと当該基材の他面側15の導電路20Cとを貫通孔13の中心軸Lに沿って当接させて接続した定着接続部30Aを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、プリント基板等の回路構成体は、半導体デバイスを実装して小電流が流れる信号系制御回路を形成し、コントロールユニットに保持される(特許文献1参照。)。この種の回路構成体においては、車載バッテリー等と各電子機器との間に配置され、電力を各電子機器に供給するものが知られている。
【0003】
この種の回路構成体は、複数の導電路が基材の表面(一面側)及び裏面(他面側)に形成されたものである。この回路構成体は、配線設計の自由度を向上させるため、基材の表面と裏面の導電路同士がピンや接続部材等によって接続されるものである。
【特許文献1】特開2003−31978公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した回路構成体は、ピンや接続部材等が基材から突出しており、当該回路構成体の寸法が大きくなるという問題を有していた。さらに、この回路構成体は、基材の表面と裏面の導電路同士を接続するためにピンや接続部材等が必要となり、部品点数が増加してしまうという問題も有していた。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み提案されたものであって、寸法を縮小することができるとともに部品点数を減少させて基材の一面側と他面側の導電路同士を接続した回路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、基材を介して複数の導電路を備えてなる回路構成体において、前記基材には貫通孔が設けられるとともに当該基材の一面側及び他面側には金属体によって前記導電路が形成され、前記基材の一面側及び他面側の導電路をそれぞれ折り曲げて前記貫通孔に挿入し、当該基材の一面側の導電路と当該基材の他面側の導電路とを当該貫通孔の中心軸に沿って当接させて接続した定着接続部を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記定着接続部が、前記基材の一面側及び他面側の導電路がそれぞれの端部を当接させて電気的に接続されたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1において、前記定着接続部が、前記基材の一面側及び他面側の導電路が互いに重ね合わされて電気的に接続されたものであることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記基材の一面側及び他面側の導電路の厚みが70〜800μmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
本発明によれば、定着接続部が基材から突出することがなく回路構成体の寸法を縮小することができるとともに、当該定着接続部をピンや接続部材等を用いることなく形成し、部品点数を減少させて基材の一面側と他面側の導電路同士を接続することができる。
【0011】
<請求項2の発明>
本発明によれば、定着接続部は基材の一面側及び他面側の導電路がそれぞれの端部を当接させて電気的に接続されたものであり、当該定着接続部を基材の一面側及び他面側のそれぞれの導電路の端部を用いて容易に形成することができる。
【0012】
<請求項3の発明>
本発明によれば、定着接続部は基材の一面側及び他面側の導電路が互いに重ね合わされて電気的に接続されたものであり、当該定着接続部を基材の一面側及び他面側の導電路同士を重ね合わせた強固なものとすることができる。
【0013】
<請求項4の発明>
本発明によれば、基材の一面側及び他面側の導電路の厚みが70〜800μmであり、本発明の回路構成体を、大電流用の回路構成体に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を、添付の図面に従って説明する。本実施形態では、回路構成体1を、大電流を流す電力系配線基板を例に挙げて説明する。図1及び図2は、電力系配線基板の一例を示すものである。図示の電力系配線基板1は、車載バッテリー等の電源と各電子機器との間に配置されるものである。この電力系配線基板1は、電力を各電子機器に分配するために用いられる。
【0015】
本実施形態の電力系配線基板1は、図1及び図2に図示するように、導電路20A〜20Dが板状の絶縁材料からなる基材10の表面11及び裏面15にそれぞれ形成されたものである。各導電路20A等は、板状の絶縁材料によって絶縁されている。基材10は、ガラスエポキシ樹脂やセラミック基板等によって形成される。この基材10には、図1に図示するように、貫通孔13が設けられる。この基材10は、図示の例に限らず、貫通孔13を複数設けたものであってもよい。なお、この電力系配線基板1は、図示しないが、複数の導電路によって形成された導電回路を有するものである。
【0016】
導電路20A〜20Dは、電流が流れる配線パターンを形成し、電力を各電子機器に供給するものである。導電路20A,20Bは、図示するように、基材10の表面11(一面側)に形成される。一方、導電路20C,20Dは、図示するように、基材10の裏面15(他面側)に形成される。この導電路20A〜20Dは、例えば銅製の圧延材25A〜25Dによって、それぞれ構成される。ここでは、各銅製圧延材25A〜25Dの厚み寸法を420μmとした。各銅製圧延材25A等は、図2に図示するように、接着剤によって基材10に固定される。なお、この実施形態では、図1に図示するように、各導電路20A,20Cは折り曲げられた正面視略L字形状の各銅製圧延材25A,25C、各導電路20B,20Dは板状の各銅製圧延材25B,25Dによって、それぞれ構成される。
【0017】
さて、本実施形態の電力系配線基板1は、定着接続部30Aを有するものである。この定着接続部30Aは、図2に図示するように、基材10の表面11の導電路20Aと基材10の裏面15の導電路25Cとを貫通孔13の中心軸Lに沿って当接させて接続したものである。
【0018】
定着接続部30Aの成形方法を、図2を用いて説明する。圧延材25A(導電路20A)は、図2の(a)図に図示するように、一端が貫通孔13に挿入されて基材10の表面11に接着される。符号27Aは圧延材25A(導電路20A)の端部である。
【0019】
一方、圧延材25Cは、図示するように、一端が前記圧延材25Aの一端と当接するようにして貫通孔13に挿入され、基材10の裏面15に接着される。符号27Cは圧延材25C(導電路20C)の端部である。
【0020】
図示のように、各導電路20A,20Cがそれぞれの一端を貫通孔13に挿入して配置されると、圧延材25Aの端部27Aは、圧延材25Cの端部27Cと当接する。定着接続部30Aは、図2の(a)図及び(b)図に図示するように、前記圧延材の端部27A,27C同士を貫通孔13の中心軸Lに沿って当接させた後に、圧延材25Cの一端の側面28Cが圧延材25A(導電路20A)及び圧延材25B(導電路20B)と半田付けされて形成される。図中の符号Hは半田付けした箇所である。
【0021】
定着接続部30Aは、図2の(a)図及び(b)図に図示するように、圧延材25Cの一端の側面28Cを圧延材25A,25Bと溶着(半田付け)し、ピンや接続部材等を用いることなく形成される。これによって、ピン等の部品点数を減少させ、基材表面11の導電路20A,20Bと基材裏面15の導電路20Cとを電気的に接続することができる。
【0022】
また、この定着接続部30Aは、図示するように、両圧延材25A,25Cの端部27A,27C同士を当接させて貫通孔13の内部に形成される。これによって、定着接続部30Aが基材10から突出することがなく、電力系配線基板1の寸法を抑えることができる。
【0023】
図示の導電路20の厚みtは、70〜800μmである。例えば、小電流を流す信号系配線基板は、導電路の厚みを15μmとしている。これに対し、本実施形態では、導電路20A〜20Dの厚みtを70〜800μmとして大電流が流れる配線パターンを形成した。これによって、この導電路20A〜20Dを厚膜に形成して大電流を流すことができるものとすることができる。
【0024】
この導電路20A〜20Dの厚みtは、各銅製圧延材25A〜25Dをそれぞれ複数枚重ねて接合したり、各銅製圧延材25A〜25Dの厚みを変えて調整される。導電路20A,20Cは、銅製圧延材25A,25Cの厚み寸法が大きくなるにつれて、曲げ加工による当該圧延材25A,25Cの破壊を防ぎながら基材10の表面11と裏面15にそれぞれ形成される。なお、本実施形態では、各銅製圧延材25A〜25Dの厚み寸法を420μmとした。各銅製圧延材25A〜25Dの厚み寸法は、70〜800μmの間を35μm間隔で調節することができる。
【0025】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を、添付の図面に従って説明する。ここでは、上述した電力系配線基板1と同一の構成は同一の符号を付しその説明を省略する。本実施形態の電力系配線基板1Aは、定着接続部30Bを有するものである。この定着接続部30Bは、図3に図示するように、基材表面11の導電路20Aと基材裏面15の導電路20Cが互いに重ね合わされて電気的に接続されたものである。
【0026】
定着接続部30Bの成形方法を、図3を用いて説明する。なお、電力系配線基板1Aは、図3から理解できるように、各銅製圧延材25A〜25Dが基材10の表面11若しくは裏面15にそれぞれ接着され、導電路20A〜20Dが形成されたものである。
【0027】
圧延材25Cは、図3の(a)図に図示するように、一端26Cを貫通孔の左側壁13Aに沿わせながら貫通孔13に挿入し、基材10の裏面15に接着される。一方、圧延材25Aは、一端26Aを貫通孔の右側壁13Bに沿わせながら貫通孔13に挿入し、基材10の表面11に接着される。
【0028】
図示のように、各導電路20A,20Cがそれぞれの一端26A,26Cを側壁13B,13Aに沿わせながら貫通孔13に挿入して配置されると、圧延材25A(導電路20A)の一端26Aと圧延材25C(導電路20C)の一端26Cとが貫通孔13の内部で重ね合わされる。定着接続部30Bは、図3の(a)図及び(b)図に図示するように、前記圧延材の一端26A,26C同士を貫通孔13の中心軸L1に沿って重ね合わせた後に、圧延材25Aの一端26Aが、圧延材25B(導電路20B)と半田付けされて形成される。
【0029】
定着接続部30Bは、図3の(b)図に図示するように、前記圧延材の一端26A,26C同士が貫通孔13の内部で重ね合わされて形成される。これによって、定着接続部30Bを導電路20Aと導電路20Cとを重ね合わせた強固なものとすることができる。さらに、この定着接続部30Bは、図示するように、前記圧延材の一端26A,26C同士を貫通孔13の内部で重ね合わせた後に、当該圧延材の一端26Aを圧延材25Bと溶着(半田付け)し、ピンや接続部材等を用いることなく形成される。これによって、ピン等の部品点数を減少させ、基材表面11の導電路20A,20Bと基材裏面15の導電路20Cとを電気的に接続することができる。なお、この定着接続部30Bは、両圧延材25A,25Cの一端26A,26C同士を重ね合わせて形成するとともに厚膜の導電路20A,20Cを形成する圧延材25A,25Cを用いて十分な接触面積を確保し、抵抗値を低くしたものである。
【0030】
各導電路20A〜20Dの厚みtは、実施形態1の電力系配線基板1と同様に、70〜800μmである。この実施形態では、各導電路20A〜20Dの厚みtを、単一の各銅製圧延材25A〜25Dを用いて420μmとした。
【0031】
定着接続部30Bは、図示するように、両圧延材25A,25Cの一端26A,26C同士が貫通孔13の内部で重ね合わされて形成される。これによって、定着接続部30Bが基材10から突出することがなく、電力系配線基板1Aの寸法を抑えることができる。
【0032】
<他の実施形態>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において構成の一部を適宜変更して実施することができるものである。
(1)電力系配線基板1,1Aは、基材表面11の導電路と基材裏面15の導電路とを、半田付けして溶着しているが、溶接によって溶着したものとしてもよい。
(2)電力系配線基板1,1Aは、銅製圧延材25を用いて形成したが、銅製若しくはアルミニウム製等の金属箔を用いて形成したものとしてもよい。
(3)電力系配線基板1,1Aは、貫通孔の開口の幅寸法を、両圧延材25A,25Cが、隙間を設けることなく当該貫通孔に挿入される大きさとしたが、隙間を設けて当該貫通孔に挿入される大きさとし、十分な量の半田が、圧延材25Aの一端26Aと圧延材25Cの一端26Cとの当接面に流れるようにしたものであってもよい。
(4)電力系配線基板1,1Aは、貫通孔の開口を、四角形状としたが、円形状や楕円形状として形成したものであってもよい。
(5)電力系配線基板1Aは、基材10の厚み寸法を大きくして貫通孔13に挿入される両圧延材25A,25Cの端部26A,26Cの各寸法を長くし、定着接続部30Bが当該圧延材25Aと当該圧延材25Cとの接触面積を広くして抵抗値をさらに低くしたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態1に係る回路構成体の分解斜視図
【図2】(a)図は実施形態1に係る圧延材を接着した回路構成体の概略断面図、(b)図は同回路構成体の定着接続部の概略断面図
【図3】(a)図は実施形態2に係る圧延材を接着した回路構成体の概略断面図、(b)図は同回路構成体の定着接続部の概略断面図
【符号の説明】
【0034】
1,1A・・・電力系配線基板(回路構成体)
10・・・基材
11・・・基材表面(基材の一面側)
13・・・貫通孔
15・・・基材裏面(基材の他面側)
20・・・導電路
25・・・圧延材(金属体)
27A・・・基材表面(基材の一面側)の導電路の端部
27C・・・基材裏面(基材の他面側)の導電路の端部
30A,30B・・・定着接続部
L,L1・・・貫通孔の中心軸
t・・・導電路の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を介して複数の導電路を備えてなる回路構成体において、
前記基材には貫通孔が設けられるとともに当該基材の一面側及び他面側には金属体によって前記導電路が形成され、
前記基材の一面側及び他面側の導電路をそれぞれ折り曲げて前記貫通孔に挿入し、当該基材の一面側の導電路と当該基材の他面側の導電路とを当該貫通孔の中心軸に沿って当接させて接続した定着接続部を有することを特徴とする回路構成体。
【請求項2】
前記定着接続部は、前記基材の一面側及び他面側の導電路がそれぞれの端部を当接させて電気的に接続されたものであることを特徴とする請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記定着接続部は、前記基材の一面側及び他面側の導電路が互いに重ね合わされて電気的に接続されたものであることを特徴とする請求項1に記載の回路構成体。
【請求項4】
前記基材の一面側及び他面側の導電路の厚みが70〜800μmであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の回路構成体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−48770(P2007−48770A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228409(P2005−228409)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】