説明

回転ドラム式汚泥濃縮装置

【課題】汚泥流入時の衝撃を緩和することによりフロック破壊を防止し、濃縮性能の向上と汚泥処理量の増大化を図る。
【解決手段】多数の排液孔を有するドラムスクリーン3と、このドラムスクリーン3の内周面に設けられる螺旋状の搬送羽根11とを備え、ドラムスクリーン3の一端側に汚泥投入管8が設けられるとともに、他端側に汚泥排出口9が設けられたものにおいて、汚泥投入管8の先端部を下方に屈曲形成して、その汚泥投入管8の汚泥吐出口8aを汚泥水の水面中に配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥等から固形物を分離除去して濃縮する回転ドラム式汚泥濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥等を処理する際の重要なプロセスとして、汚泥の濃縮工程がある。この濃縮工程は、水処理施設で発生した低濃度の汚泥を固液分離することで濃縮し、処理汚泥量の減量を図るとともに、後段の脱水工程を効果的に機能させるものである。このような汚泥の濃縮を効率的に行うことで、脱水装置の小型化や脱水性能の向上を図ることが可能となる。
【0003】
ところで、例えば下水汚泥の濃縮工程に用いられる汚泥濃縮装置として、遠心力を利用して固液分離を行う遠心濃縮装置が知られている。ところが、この遠心濃縮装置は、電動機の消費動力が大きく、またオーバーホール等の維持管理コストが高いといった欠点がある。これに対し、回転ドラム式汚泥濃縮装置(回転ドラム型濃縮機)は、1)消費電力が小さく、電気代が安価である、2)濃縮機構がシンプルで維持管理コストが安価である、3)小規模容量から大規模容量まで処理可能である、4)コンパクトで設置スペースが小さい、といった特徴を有していることから多く利用されている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−193105号公報
【特許文献2】特開2007−330920号公報
【特許文献3】特開2008−18359号公報
【0005】
従来の回転ドラム式汚泥濃縮装置50は、図3に示されるように、多数の排液孔を有する円筒状のスクリーン(ドラムスクリーン)51の内周面に螺旋状の汚泥搬送用ガイド部材57を取り付け、ドラムスクリーン51の一端側に汚泥投入管52を、他端側にドラムスクリーン51の汚泥排出口に連設される固形物排出シュート53をそれぞれ設け、ドラムスクリーン51を回転させることによって、汚泥投入管52から投入された汚泥を反転させながら搬送して滞留時間を確保し、ろ過後のろ液をドラムスクリーン51の排液孔から排出するとともに、固形物を固形物排出シュート53まで搬送するように構成されている。ドラムスクリーン51の外周の上方位置にはそのドラムスクリーン51の長手方向に沿って洗浄水供給管54が配され、この洗浄水供給管54に複数個の洗浄水ノズル55が取り付けられている。この洗浄水供給管54には高圧水が供給され、この高圧水が洗浄水ノズル55からドラムスクリーン51に向けて噴出されることで、ドラムスクリーン51の逆洗が行われる。
【0006】
しかしながら、前記従来の回転ドラム式汚泥濃縮装置においては、汚泥投入管52の汚泥吐出口52aがドラムスクリーン51の略中心部に位置していて汚泥が落下(図3(b)の矢印g)する際の落下高さhが大きく、汚泥吐出口52aからドラムスクリーン51内への汚泥投入時に、ドラムスクリーン51上および汚泥水面56上への落下衝撃によって、凝集汚泥のフロックが破壊され易い状態となり、固液分離性能、濃縮性能の低下を招いてしまうという問題点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、汚泥流入時の衝撃を緩和することによりフロック破壊を防止し、濃縮性能の向上と汚泥処理量の増大化を図ることのできる回転ドラム式汚泥濃縮装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による回転ドラム式汚泥濃縮装置は、
多数の排液孔を有する円筒状のスクリーンと、このスクリーンの内周面に設けられる螺旋状の汚泥搬送用ガイド部材とを備え、前記スクリーンの一端側に汚泥投入管が設けられるとともに、他端側に汚泥排出口が設けられてなる回転ドラム式汚泥濃縮装置において、
前記汚泥投入管の先端部を下方に屈曲形成して、その汚泥投入管の汚泥吐出口を汚泥水の水面中に配することを特徴とするものである。
【0009】
本発明において、前記スクリーンの入口における前記汚泥搬送用ガイド部材の堰高さを他の部位における堰高さよりも低くするのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、汚泥投入管の汚泥吐出口がスクリーンにおける汚泥水の水面中に配されているので、汚泥の落下高さを低くすることができ、汚泥がスクリーン上および汚泥水面上に打ち付ける水圧を低減することができ、フロックの破壊を防止することができる。この結果、汚泥がスクリーン上に残り易くなり、固液分離を確実に進行させることができる。こうして、凝集剤の同程度の使用量に対して汚泥処理量を増大させることができるとともに、装置の小型化による設置面積、電動機出力の削減を図ることができる。また、電動機の出力削減に付随して、温室効果ガスの排出量の低減を図ることができる。
【0011】
本発明において、スクリーンの入口における汚泥搬送用ガイド部材の堰高さを他の部位における堰高さよりも低くすれば、汚泥水中に投入された汚泥を搬送羽根により確実に前方へ搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明による回転ドラム式汚泥濃縮装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1には、本発明の一実施形態に係る回転ドラム式汚泥濃縮装置の正面図が示されている。また、図2には、本実施形態における回転ドラム式汚泥濃縮装置を模式的に示す正面方向断面図(a)およびそのA−A断面図(b)がそれぞれ示されている。
【0014】
本実施形態において、回転ドラム式汚泥濃縮装置(以下、「汚泥濃縮装置」という。)1は、本体フレーム2と、この本体フレーム2上に配される複数のローラ(図示せず)によって水平軸線周りに回転自在に支持される円筒状のスクリーン(以下、「ドラムスクリーン」という。)3を備えている。ここで、ドラムスクリーン3の駆動方式は、ドラムスクリーン3の外周に巻き付けたチェーンをスプロケットを介した電動機により回転させるピンキヤ駆動方式と、ドラムスクリーン3が乗った二本のシャフトをチェーン掛けし、これを回転させる二軸駆動方式があり、いずれかの駆動方式により、ドラムスクリーン3は水平軸線周りに回転される。
【0015】
ドラムスクリーン3の下方には分離液受け5が設けられ、この分離液受け5の排出端は分離液排出管6に接続されている。また、ドラムスクリーン3を支持するケーシングの一端側の汚泥投入口7には汚泥投入管8が配され、一方、ケーシングの他端側には汚泥排出口9に連通される固形物排出シュート10が取り付けられ、分離液を分離した後の固形物(汚泥)がその汚泥排出口9を介して固形物排出シュート10から排出される。
【0016】
前記ドラムスクリーン3は、金属製ウェッジワイヤが互いに並列に所定の目幅を隔てて水平回転軸方向に配されて、全体として円筒状に形成されてなる構成とされている。ここで、ドラムスクリーン3の適正目幅は被処理物の性状によって異なるが、下水汚泥を対象とする場合には、0.15〜0.5mm程度とするのが好ましい。
【0017】
前記ドラムスクリーン3の内周面には、一端側の汚泥投入口7から他端側の汚泥排出口9に向けて、螺旋状の汚泥搬送用ガイド部材(以下、「搬送羽根」という。)11が設けられている。汚泥投入管8によってドラムスクリーン3内に投入された汚泥は、ドラムスクリーン3の回転に伴って搬送羽根11に沿って固液分離されながら出口側へ搬送される。このとき、ドラムスクリーン3のウェッジワイヤ間に形成された排液孔から汚泥中の液分がろ過されて汚泥の濃縮処理が行われ、液分は分離液受け5を経由して分離液排出管6にて排出され、液分をろ過された後の濃縮汚泥は、ドラムスクリーン3の汚泥排出口9を経由して固形物排出シュート10から排出される。
【0018】
ドラムスクリーン3の外周の上方位置にはそのドラムスクリーン3の長手方向に沿って洗浄水供給管12が配され、この洗浄水供給管12に複数個の洗浄水ノズル13が取り付けられている。この洗浄水供給管12には図示されない昇圧ポンプで昇圧された高圧水が供給され、この高圧水が洗浄水ノズル13からドラムスクリーン3に向けて噴出されることで、ドラムスクリーン3の逆洗が行われる。
【0019】
次に、本実施形態における汚泥投入管8および搬送羽根11の形状について図2を参照しつつ説明する。
【0020】
本実施形態の汚泥濃縮装置1においては、汚泥投入管8の先端部が下方に90°屈曲形成され、その排出端である汚泥吐出口8aがドラムスクリーン3の内周面近傍に、具体的には汚泥水の水面12下に開口されている。また、この汚泥吐出口8aに対向する部位である搬送羽根11の前段の堰高さHが後段の堰高さHに対して低く形成されている。
【0021】
このように構成することで、汚泥投入管8により供給された汚泥は、図2(b)で矢印j,kにて示されるように、汚泥投入管8先端の汚泥吐出口8aを通って汚泥水中から流入されることになり、汚泥の落下高さを従来のものに比して低くすることができ、汚泥がドラムスクリーン3上および汚泥水面上に打ち付ける水圧を低減することができる。この結果、フロック状の汚泥は破壊されずにドラムスクリーン3上に残り、水(分離液)のみがスクリーンの開口孔から排出されることで、固液分離が進行し、汚泥を濃縮することができる。このように汚泥投入管8より投入された汚泥は、フロック状の汚泥と清澄な液状部との混合状態で、螺旋状の搬送羽根11に沿ってドラムスクリーン3の回転に伴って固液分離されながら汚泥排出口9へ搬送される。
【0022】
以上のように、本実施形態では、フロックの破壊を防止することができるので、固液分離を確実に進行させることができ、凝集剤の同程度の使用量に対して汚泥処理量を増大させることができる。また、これによって、装置の小型化による設置面積、電動機出力の削減を図ることができるという効果がある。
【0023】
本実施形態では、金属製ウェッジワイヤを用いたドラムスクリーンについて説明したが、本発明は、例えばパンチングメタルなどの他のドラムスクリーンに対しても適用できるのは言うまでもない。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明による回転ドラム式汚泥濃縮装置の実施例について説明する。
【0025】
下水汚泥濃縮において、直径600mm、長さ1200mmのドラムスクリーン3において、搬送羽根11のピッチ間隔300mm×4ピッチで、汚泥投入管8の汚泥吐出口8aとドラムスクリーン3との距離を20mm〜80mmとし、汚泥投入管8の角度は、水平から90°下方に屈曲させることを基準とするが、その角度は、円周方向、長手方向ともに90°±30°以内で、かつ汚泥吐出口が汚泥液面下に接した状態とする。また、搬送羽根11前段の堰高さをスクリーン端から300mmとした。この範囲を越えたものについては、汚泥投入管8の汚泥吐出口8aが汚泥液面下に接した状態とならず、投入した汚泥がスクリーンおよび汚泥水面で落下衝撃が生じ、フロックの破壊が引き起こされた。
【0026】
次に、実施例の装置と従来装置との性能を比較するために、目標性能として、濃縮汚泥濃度4%以上、SS(懸濁固形物)回収率95%以上を得るのに必要な薬品添加率(%/TS、ただし、TS:全固形物)を比較する実験を行った。その結果、従来装置では、余剰汚泥処理量5m/hrで0.27%/TS、余剰汚泥処理量6m/hrで0.37%/TSであったのに対し、本実施例では、余剰汚泥処理量5m/hrで0.23%/TS、余剰汚泥処理量6m/hrで0.27%/TSであり、薬品添加率が低減できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る回転ドラム式汚泥濃縮装置の正面図
【図2】本実施形態における回転ドラム式汚泥濃縮装置を模式的に示す正面方向断面図(a)およびそのA−A断面図(b)
【図3】従来の汚泥濃縮装置を模式的に示す正面図(a)およびそのB−B断面図(b)
【符号の説明】
【0028】
1 回転ドラム式汚泥濃縮装置
3 ドラムスクリーン
5 分離液受け
6 分離液排出管
7 汚泥投入口
8 汚泥投入管
8a 汚泥吐出口
9 汚泥排出口
10 固形物排出シュート
11 汚泥搬送用ガイド部材(搬送羽根)
12 洗浄水供給管
13 洗浄水ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の排液孔を有する円筒状のスクリーンと、このスクリーンの内周面に設けられる螺旋状の汚泥搬送用ガイド部材とを備え、前記スクリーンの一端側に汚泥投入管が設けられるとともに、他端側に汚泥排出口が設けられてなる回転ドラム式汚泥濃縮装置において、
前記汚泥投入管の先端部を下方に屈曲形成して、その汚泥投入管の汚泥吐出口を汚泥水の水面中に配することを特徴とする回転ドラム式汚泥濃縮装置。
【請求項2】
前記スクリーンの入口における前記汚泥搬送用ガイド部材の堰高さを他の部位における堰高さよりも低くすることを特徴とする請求項1に記載の回転ドラム式汚泥濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−104881(P2010−104881A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278101(P2008−278101)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】