説明

回転検出装置及び回転検出システム

【課題】エンコーダ等のセンサを設けることなく、回転速度にかかわらず直流モータの回転状態を精度良く検出できるようにすることを目的とする。
【解決手段】モータ2に対し、直流電源3からの直流電圧に重畳部5からの交流電圧を重畳して印加する。モータ2の第1相コイルL1にはコンデンサC1が並列接続されており、これによりモータ回路のインピーダンスはモータ2の回転に伴って周期的に変化し、その変化がモータ2に流れる電流の交流成分の振幅変化として現れる。また、重畳部5からの交流電流が直流電源3側に分流するのを抑制してより多くの交流電流がモータ2へ流れるようにするために、LC並列共振回路8が設けられている。信号処理部22は、電流検出部21にて検出された電流に含まれる交流成分に基づき、回転パルスSpを生成する。そしてこの回転パルスSpに基づき、回転角検出部7がモータ2の回転角を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータの回転角や回転方向などの回転状態を検出する回転検出装置、及びこの回転検出装置を備えた回転検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシ付きの直流モータ(以下単に「直流モータ」という)は、車両においても従来から用いられており、例えば、車両の空調装置における温度調整用のエアミックスダンパーや吹き出し口切り替え用のモードダンパーなどの開閉角度を調整するために用いられている。このような用途で用いられる直流モータを制御するにあたっては、各ダンパーの開閉角度を精度良く調整するために、直流モータの回転角や回転方向、回転速度などの回転状態を検出し、その検出した回転状態に基づいて、各ダンパーの開閉角度が所望の角度となるように制御していた。
【0003】
直流モータの回転状態を検出する一般的方法として、ロータリエンコーダやポテンショメータ等のセンサを設け、このセンサからの検出信号に基づいて検出する方法がよく知られている。そのため、車両においても、このようなセンサを設けて回転状態を検出する方法が採用されている。
【0004】
しかし、このようにセンサを設けて回転状態を検出する方法では、センサを設置するスペースが直流モータ毎に必要になると共に、直流モータへの直流電源供給用のハーネスとは別に、センサによる検出信号を他の装置(車載ECU等)へ伝送するためのハーネスも直流モータ毎に必要となり、車両の重量増・コストアップを招く。そのため、センサやそれに伴うハーネスを削減するために、センサレス方式化の要望が高まっている。
【0005】
ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを用いることなく直流モータの回転状態を検出するセンサレス方式は種々提案されており、例えば、整流子とブラシが切り替わるときに発生するサージパルスを検出・計数することにより検出する方法が知られている。しかし、この方法では、モータが起動・停止する際の低回転時にはモータの起電力が小さくなってサージパルスも小さくなるため、回転速度が低くなればなるほどサージパルスを検出することが困難となって誤検出してしまう可能性が高くなる。
【0006】
また、別のセンサレス方式として、整流子に形成された複数のセグメント(整流子片)のうち特定の2つのセグメント間に(即ちこのセグメント間に接続されている相コイルと並列に)抵抗器を接続し、このセグメント間に流れる電流に基づいて回転パルスを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この特許文献1に開示されたセンサレス方式では、いずれか一つの相コイルに抵抗器が並列接続されることにより、ブラシを介してモータ回路(複数相の相コイルからなる電機子コイル側の回路)に直流電流が供給されると、ブラシ間に流れる電流は、モータの回転角に応じて周期的な変動を伴うように変化する。この電流の変化に基づいて回転パルスを検出することにより、上述した単なるサージパルスに基づく検出方法と比較してその検出精度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−111465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示された方法でも、上述したサージパルスに基づく方法と同様、回転速度が低くなればなるほど電流の変化が小さくなって誤検出の可能性が高くなるという問題は残されている。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、エンコーダ等のセンサを設けることなく、回転速度にかかわらず直流モータの回転状態を精度良く検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、直流モータは、該直流モータにおける、直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されている。
【0012】
そして、当該回転検出装置は、上記一対のブラシ間に印加される直流電圧に対し、交流電圧を重畳する交流重畳手段と、この交流重畳手段から直流モータに供給される交流電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、この通電検出手段により検出された電気量に基づいて、直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、交流重畳手段からの交流電流が直流モータ以外に分流するのを抑制する分流抑制手段と、を備えている。
【0013】
このように構成された回転検出システムでは、検出対象の直流モータに対し、駆動用の直流電圧とは別に、交流重畳手段によって交流電圧を印加可能に構成されている。直流モータの駆動は、周知の通り、直流電源からの直流電力によって行われるものであるため、交流重畳手段から交流電圧を印加したとしても、その交流電圧は、直流モータのトルクに影響を与えない。
【0014】
一方、直流モータは、回転に伴ってインピーダンスが周期的に変化するよう構成されていることから、直流モータに流れる電流のうち、交流重畳手段からの交流電圧印加による交流成分(交流電流)の振幅は、直流モータの回転に伴って(即ちインピーダンスの周期的変化に伴って)周期的に変化する。そのため、その交流電流に関する電気量を検出すれば、その電気量に基づいて(例えばその電気量が示す交流成分の振幅の変化に基づいて)、直流モータの回転状態を検出することが可能となるのである。なお、電気量としては、例えば、電流、電圧、又は電力などが考えられる。
【0015】
また、交流重畳手段からの交流電圧は直流モータのトルクに影響を与えないことから、直流モータの状態(加・減速中、定速中、停止中など)とは関係なく、常に一定の交流電圧を直流モータへ印加し、交流電流を流すことができる。
【0016】
これにより、例えば制動の際に直流モータへの直流電圧が遮断されても、交流電圧を印加し続けることにより、減速〜停止にかけても回転状態を確実に検出することができる。また、停止中であっても、交流電圧を印加させ続けることで、直流モータの回転状態を検出でき、例えば何らかの外力を受けて所定量回転したとしても、これを確実に検出することができる。
【0017】
ところで、交流重畳手段から供給される交流電流に関する電気量に基づいて回転状態を検出するよう構成された本発明の回転検出装置において、回転状態の検出を精度良く行うためには、交流重畳手段から出力される交流電流の多くが(理想的には全てが)直流モータに流れるのが望ましい。
【0018】
しかし実際には、直流モータに対しては交流重畳部からの交流電圧だけでなく少なくとも直流電源からの直流電圧も印加可能に構成されているため、交流重畳部から出力される交流電流の経路としては、直流モータ側に流れる経路の他に、直流モータ側以外(例えば直流電源側)に向かう経路も存在する。そのため、交流重畳部から出力される交流電流は、全てが直流モータに流れず、その一部がその直流モータ側以外に向かう経路へ分流してしまう。
【0019】
そこで本発明では、分流抑制手段を設けることにより、交流重畳手段からの交流電流が直流モータ以外の他の経路に分流するのを抑制止している。
従って、請求項1に記載の回転検出装置によれば、仮に制動時に直流電源からの直流電圧が0になったとしても、交流電圧を印加し続けることにより、減速時〜停止時にかけても回転状態を確実に検出することができる。しかも、回転状態の検出は交流重畳手段から供給されて直流モータに流れる交流電流に基づいて行われるため、直流電流に影響を与えることなく(即ちモータのトルクに影響を与えることなく)検出を行うことができる。
【0020】
そのため、エンコーダ等のセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度にかかわらず直流モータの回転状態を精度良く検出することが可能な回転検出装置を提供することが可能となる。
【0021】
また、分流抑制手段を備えていることにより、交流重畳手段から出力される交流電流が直流モータ側以外の経路に分流するのが抑制され、より多くの交流電流が直流モータへ流れるように構成されている。そのため、通電検出手段にて検出される検出結果(電気量)の品質を高品質に維持することができ、回転状態の検出精度の高い回転検出装置の提供が可能となる。
【0022】
次に、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の回転検出装置であって、分流抑制手段は、直流電源から直流モータへの通電経路に配置されており、交流重畳手段は、通電経路における、直流モータと分流抑制手段の間に接続されて交流電圧を印加するよう構成されている。
【0023】
このように構成された請求項2に記載の回転検出装置によれば、印加部位から直流モータ以外へ分流する交流電流を抑制することができ、より多くの交流電流を直流モータに流すことができる。
【0024】
ここで、分流抑制手段の具体的構成は種々考えられ、例えば、請求項3に記載のように、所定の阻止帯域の電流の通過を阻止できるように構成してもよいし、また例えば、請求項7に記載のように、インダクタンス素子を設けるというごく簡素な構成としてもよい。
【0025】
即ち、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の回転検出装置であって、分流抑制手段は、交流重畳手段にて印加される交流電圧の周波数成分の一部又は全てを含む所定の周波数帯域を阻止帯域として、少なくとも該阻止帯域の電流の通過を抑制できるよう構成されている。なお、ここでいう阻止とは、必ずしも、その帯域(阻止帯域)の電流の通過を完全に遮断することのみを意味しているものではなく、もちろんそれ(完全な遮断)も含めて、少なくとも、当該分流抑制手段がない場合に比べればその通過を十分に低減できる、という意味合いである。
【0026】
このように構成された請求項3に記載の回転検出装置によれば、交流重畳手段から出力される交流電流のうち、その周波数成分の一部又は全てが直流モータ側以外の経路に分流するのを抑制することができる。
【0027】
そして、より具体的な構成例としては、例えば請求項4に記載の並列共振回路や、例えば請求項5に記載の帯域阻止フィルタ回路などが考えられる。
即ち、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の回転検出装置であって、分流抑制手段は、所定のインダクタンス値を持つインダクタンス素子と所定の静電容量値を持つ静電容量素子とが並列接続されてなり、共振周波数が上記阻止帯域内の周波数となるように設定された、並列共振回路である。
【0028】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の回転検出装置であって、分流抑制手段は、上記阻止帯域の電流の通過を抑制できるよう構成された帯域阻止フィルタ回路である。
【0029】
分流抑制手段をこのように並列共振回路や帯域阻止フィルタ回路にて構成することで、分流抑制手段を簡易的な回路構成で実現でき、且つ、阻止帯域の電流の通過を確実に阻止することができる。
【0030】
そして、請求項6に記載の発明は、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の回転検出装置であって、交流重畳手段は、交流電圧として正弦波電圧を印加可能に構成されており、分流抑制手段は、阻止帯域としてその正弦波電圧の周波数を含む所定の周波数帯域が設定されている。そして、回転状態検出手段は、正弦波電圧の周波数を含む所定の周波数帯域を通過帯域として、通電検出手段により検出された電気量から、その通過帯域の交流成分を通過させると共にその通過帯域以外の交流成分の通過を阻止する帯域通過フィルタ回路と、この帯域通過フィルタ回路を通過した交流成分の振幅の変化に基づき、該振幅の変化に対応した信号である回転信号を生成する回転信号生成手段と、を備えている。
【0031】
正弦波電圧は、一般に、その周波数成分としてはほぼ全てが基本波周波数成分であって、高調波成分の存在は無視し得る程度である。そのため、その正弦波電圧の周波数(基本波周波数)を分流抑制手段にて抑制可能とすることで、交流重畳手段から出力される交流電流(この場合は正弦波電流)の分流を抑制することができる。
【0032】
そして、回転状態検出手段において、帯域通過フィルタ回路を用いてその正弦波電圧の周波数(基本波周波数)の交流成分を通過させることで、必要な周波数の交流成分は通過させて不要な周波数成分を阻止することができ、S/N(信号対雑音比)の高い交流成分の通過(抽出)が可能となる。そのため、そのS/Nの高い交流成分に基づき、回転信号を確実且つ高精度に生成することが可能となる。
【0033】
一方、請求項7に記載の発明は、請求項2に記載の回転検出装置であって、分流抑制手段は、インダクタンス素子である。
インダクタンス素子は、周知の通り、周波数が高くなるほどインピーダンスが大きくなるような周波数特性を有する。また、インダクタンス値が大きいほど、インピーダンスも大きくなる。そのため、交流電流の通過を抑制することができ、周波数が高ければ高いほどその抑制効果も大きくなる。
【0034】
そのため、インダクタンス素子で構成するというごく簡素且つ安価な構成でありながら、交流重畳手段からの交流電流が直流モータ側以外に分流するのを抑制することができる。
【0035】
そして、分流抑制手段が上記のようにインダクタンス素子で構成されている場合には、交流重畳手段や回転状態検出手段は、例えば請求項8に記載のように構成すると効果的である。
【0036】
即ち、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の回転検出装置であって、交流重畳手段は、交流電圧として、所定の周波数の基本波成分及び該基本波成分に対する少なくとも1つの高調波成分を有する、歪波電圧を印加可能に構成されている。そして、回転状態検出手段は、歪波電圧の基本波成分の周波数以下における所定の周波数を遮断周波数として、通電検出手段により検出された電気量から、上記遮断周波数以上の交流成分を通過させる高域通過フィルタ回路と、この高域通過フィルタ回路を通過した交流成分の振幅の変化に基づき、該振幅の変化に対応した信号である回転信号を生成する回転信号生成手段と、を備えている。
【0037】
歪波電圧は、基本波成分以外に高調波成分を有しており、全体としてそのエネルギー(周波数スペクトル)は基本波周波数以上の広い帯域に分布している。これに対し、分流抑制手段を構成するインダクタンス素子は、上述の通り、周波数が高くなればなるほどインピーダンスが大きくなって通過しにくくなる。そのため、交流重畳手段から出力される交流電流(高調波を含む電流)がモータ側以外の経路に分流するのを効果的に抑制することができる。
【0038】
そして、回転状態検出手段において、高域通過フィルタ回路を用いてその歪波電圧の基本波周波数以上の交流成分を通過させることで、より大きなエネルギーの交流成分を抽出することが可能となる。そのため、そのエネルギーの大きい交流成分に基づき、回転信号を確実且つ高精度に生成することが可能となる。
【0039】
次に、請求項9に記載の発明は、直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータと、この直流モータの回転状態を検出する回転検出装置と、を備えた回転検出システムである。
【0040】
直流モータは、該直流モータにおける、直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されている。
【0041】
回転検出装置は、一対のブラシ間に印加される直流電圧に対し、交流電圧を重畳する交流重畳手段と、交流重畳手段から直流モータに供給される交流電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、通電検出手段により検出された電気量に基づいて、直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、交流重畳手段からの交流電流が直流モータ以外に分流するのを抑制する分流抑制手段と、を備えている。
【0042】
この回転検出システムによれば、直流モータの回転状態を検出するための回転検出装置として、上述した請求項1〜請求項8の何れかに記載の構成のものを備えているため、上述した各請求項1〜8と同様の効果を得ることができる。
【0043】
そして、回転に伴って一対のブラシ間のインピーダンスが周期的に変化するような直流モータの具体的構成は種々考えられ、例えば請求項10や請求項11に記載の構成が挙げられる。
【0044】
即ち、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の回転検出システムであって、直流モータは、少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、この電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、この整流子を介して各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、を有している。そして、複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている。
【0045】
また、請求項11に記載の発明は、請求項9に記載の回転検出システムであって、直流モータは、内周面においてその周方向に界磁発生用の複数の磁石が固定されたハウジングと、このハウジング内に設けられ、複数の相コイルからなる電機子コイルを有するロータコアと、電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、この整流子に摺接する少なくとも一対のブラシと、を有している。そして、回転に伴って上記一対のブラシ間のインダクタンスが周期的に変化するよう構成されている。
【0046】
請求項10に記載の回転検出システムにおける直流モータは、整流子片間の静電容量値に差を持たせることで、回転に伴うインピーダンスの周期的な変化が生じるように構成されており、一方、請求項11に記載の回転検出システムにおける直流モータは、回転に伴ってインダクタンスが周期的に変化するように構成されており、これにより回転に伴うインピーダンスの周期的な変化が生じるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図2】第1実施形態のモータに印加される電圧(交流重畳電圧)の波形を表す図である。
【図3】第1実施形態のモータが180°回転する間に生じる3種類の状態(モータ回路)を説明するための説明図である。
【図4】第1実施形態のモータの回転中に流れるモータ電流波形の一例を表す図である。
【図5】第1実施形態の回転信号検出部の構成を表すブロック図である。
【図6】第1実施形態の重畳部から出力される交流電流の周波数スペクトルを表す説明図である。
【図7】第1実施形態の回転検出システムの交流等価回路を表す回路図である。
【図8】LC並列共振回路のインピーダンスの周波数特性を表す説明図である。
【図9】停止制御時におけるモータ電流波形の一例を表す説明図である。
【図10】信号処理部にて生成される回転パルスの一例を表す説明図である。
【図11】第2実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図12】第2実施形態の重畳部にて生成される交流(方形波)電圧及び重畳部から出力される交流電流を表す説明図である。
【図13】第2実施形態の回転信号検出部の構成を表すブロック図である。
【図14】第2実施形態の重畳部から出力される交流電流の周波数スペクトルを表す説明図である。
【図15】第3実施形態の回転検出システムの概略構成を表す図である。
【図16】第3実施形態の回転検出システムの交流等価回路を表す回路図である。
【図17】バンドリジェクトフィルタ(BRF)の構成を説明するための説明図である。
【図18】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図19】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図20】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図21】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図22】検出対象のモータの他の実施例を表す説明図である。
【図23】回転検出システムの他の実施例を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本発明が適用された実施形態の回転検出システムの概略構成を示す。図1に示すように、本実施形態の回転検出システム1は、直流モータ(以下単に「モータ」と称す)2の回転角を検出するための装置であり、モータ2を回転駆動させる(トルクを発生させる)ための直流電圧を出力する直流電源3と、モータ2の回転角を検出するための交流電圧を出力する重畳部5と、モータ2に流れる電流(モータ電流)に基づいてモータ2の回転角に応じた信号(回転パルスSp)を生成し出力する回転信号検出部6と、この回転信号検出部6から出力される回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出する回転角検出部7と、重畳部5から出力される交流電流が直流電源3側に分流するのを抑制するためのLC並列共振回路8と、を備えている。
【0049】
直流電源3は、所定電圧値Vbの直流電圧を出力するものであり、その直流電圧がモータ2に印加される(詳しくは各ブラシ16,17間に印加される)。この直流電源3の正極側からモータ2を経てグランドライン(グランド電位)に至る直流通電経路には、本実施形態の回転検出システム1における最も特徴的構成の1つであるLC並列共振回路8が設けられているが、このLC並列共振回路8については後述する。
【0050】
重畳部5は、所定の周波数f1の交流電圧を生成する交流電源4と、直流電源3から出力される直流電圧に交流電源4にて生成された交流電圧を重畳させてモータ2へ印加するためのカップリングコンデンサC10と、を備えている。
【0051】
交流電源4にて生成される交流電圧は、本実施形態では正弦波電圧である。そのため、重畳部5から出力される電圧は正弦波電圧となり、電流についても正弦波状の交流電流が出力される。
【0052】
そのため、直流電源3からの直流電圧に重畳部5からの交流電圧が重畳されてなる交流重畳電圧は、図2に示すように、直流電圧(Vb)に振幅Vsで周波数f1の交流電圧が重畳された、交直混在(脈流の一種)の電圧となる。そのため、この交流重畳電圧がモータ2に印加されることによってモータ2に流れる電流も、直流電流に交流電流が重畳された電流(交流重畳電流)となる(図4参照。詳細は後述。)
但し、モータ2は直流モータであるため、交流重畳電流のうち、モータ2の回転に寄与する(トルクを与えて回転駆動させる)成分は、直流電源3にて印加される直流電圧による直流成分であり、重畳部5から印加される交流電圧による交流成分は回転そのものには関与せず、トルクに影響を与えることもない。
【0053】
重畳部5からの交流電圧は、モータ2の回転状態(本実施形態では回転角)を検出するためにモータ2に印加されるのであり、回転信号検出部6は、後述するように、モータ2に流れる電流のうち交流成分に基づいて回転パルスSpを生成する。つまり、重畳部5は、モータ2を回転させるための電源としてではなく、モータ2の回転状態(本実施形態では回転角)を検出する目的で設けられているのである。
【0054】
また、重畳部5から出力される交流電圧は、直流電源3の正極側からモータ2を経てグランドラインに至る直流通電経路における、直流電源3の正極側からモータ2に至る経路、より詳しくはその経路に設けられたLC並列共振回路8とモータ2の間の経路の印加部位Pに印加される。そのため、重畳部5から出力される交流電流は、印加部位Pを経てモータ2側へ流れることとなる。
【0055】
なお、重畳部5から出力される交流電流の一部は、印加部位Pから直流電源3側にも分流する。但し本実施形態では、その分流を抑制するための分流抑制手段として、LC並列共振回路8が設けられており、これにより、直流電源3側への分流は最小限に抑えられている。
【0056】
また、直流電源3からの直流電圧の出力、及び重畳部5からの交流電圧の出力は、それぞれ独立して制御することが可能に構成されている。本実施形態では、モータ2を回転させる際(起動〜定常回転時)は直流電源3からの直流電圧を印可させると共に重畳部5からの交流電圧も重畳して印加させる。一方、回転中のモータ2を停止(制動)させる際は、モータ2への直流電源3からの直流電圧を遮断し、重畳部5からの交流電圧の印加は継続させる。つまり、重畳部5からの交流電圧は、少なくともモータ2が回転している間はモータ2へ印加され続けるのである。
【0057】
モータ2は、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17を備え、電機子コイルとして3相の相コイルを有するブラシ付きの3相直流モータであり、各ブラシ16,17と接触する3つの整流子片11,12,13からなる整流子10を備えている。そして、電機子コイルを構成する3つ(3相)の各相コイルL1,L2,L3が、それぞれ、図示のようにΔ結線されている。
【0058】
即ち、第3整流子片13と第1整流子片11との間に第1相コイルL1が接続され、第1整流子片11と第2整流子片12との間に第2相コイルL2が接続され、第2整流子片12と第3整流子片13との間に第3相コイルL3が接続されている。これら3つの相コイルL1,L2,L3からなる電機子コイル及び整流子10により、アーマチャが構成される。なお、各相コイルL1,L2,L3のインダクタンスは同じ値(L1=L2=L3)である。また、各相コイルL1,L2,L3は、互いに電気角で2/3πずつ離れるように配置されている。
【0059】
そして、3つの整流子片11,12,13のうちいずれか2つが、各ブラシ16,17にそれぞれ接触しており、モータ2の回転による整流子10の回転に伴って、各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片は切り替わっていく。
【0060】
なお、本実施形態のモータ2は、図示は省略したものの、ヨークハウジングを有すると共に、ヨークハウジングの内壁側に永久磁石からなる界磁が設けられ、この界磁と対向するようにアーマチャが配置されている。
【0061】
更に、本実施形態では、モータ2において、第1相コイルL1と並列に、コンデンサC1が接続されている。そのため、直流電源3からの直流電圧、重畳部5からの交流電圧、更にはこれら両者が重畳された交流重畳電圧は、各ブラシ16,17およびこれらに接触しているいずれか2つの整流子片を介して、モータ2内部の各相コイルL1,L2,L3及びコンデンサC1からなる回路(モータ回路)に印加される。
【0062】
モータ2の各ブラシ間に上記交流電圧又は交流重畳電圧が印加されると、モータ回路には、交流電流、又は直流電流に交流電流が重畳された交流重畳電流(交流成分を含む電流)が流れる。
【0063】
コンデンサC1は、周知の通り、直流的には電流がほとんど流れない非常に高い抵抗として機能し、交流的には周波数が高くなればなるほど電流が流れやすい低インピーダンス特性を有する。そのため、直流電源3からみればこのコンデンサC1は等価的に存在しないものとして扱うことができ、よって、直流電源3からの直流電流は各相コイルL1,L2,L3にのみ流れることとなる。
【0064】
一方、重畳部5からみれば、各相コイルL1,L2,L3は高インピーダンスであるのに対してコンデンサC1は低インピーダンスとなり、両者の差は大きい。そのため、例えば図1に示す状態からモータ2が時計回りに回転(即ち整流子10が時計回りに回転)して、通電経路の下流側(グランド電位側)のブラシ17に第1整流子片11が接触するようになると、各ブラシ16,17間に、第1相コイルL1とコンデンサC1の並列回路が形成される。即ち、各ブラシ16,17間にコンデンサC1のみの通電経路が形成され、モータ回路全体として、このコンデンサC1と、各相コイルL1,L2,L3の合成インダクタンスとの、並列共振回路が形成される。そのため、その状態では、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは並列共振特性を有し、その共振周波数以上の周波数帯域では周波数が高くなればなるほどインピーダンスは低くなる。
【0065】
つまり、直流的にみればモータ回路は3つの相コイルL1,L2,L3のみからなる回路とみなせ、故に、直流電源3からの直流電流によって回転するモータ2の回転速度やトルクにコンデンサC1の存在が影響することはない。
【0066】
これに対し、交流的にみれば、モータ2の回転角に応じて各ブラシ16,17と接触する2つの整流子片が切り替わる毎に、各ブラシ間に形成されるモータ回路も変化し、よってモータ回路のインピーダンスも変化する。但し、本実施形態では、第1相コイルL1に対してのみコンデンサC1を一つ接続しているため、モータ2が180°回転する間に整流子片の切り替わりは3回生じるもののインピーダンスの変化は二段階である。
【0067】
図3(a)に、モータ2が180°回転する間における、モータ2内部の結線状態の変化、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路の変化を示す。図3(a)に示すように、本実施形態のモータ2のモータ回路は、モータ2が180°回転する間に、主として状態A、状態B、及び状態Cの三種類に変化する。
【0068】
状態Aは、図示の如く、直流電源3の正極側(以下「Vb側」ともいう)のブラシ16に第1整流子片11が接触し、グランド電位側(以下「GND側」ともいう)のブラシ17に第2整流子片12が接触した状態である。この状態Aでのモータ2の等価回路、即ち各ブラシ16,17間に形成されるモータ回路は、図中右側に示す回路となる。
【0069】
この状態Aでは、コンデンサC1と第3相コイルL3とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Aでは、各相コイルL1,L2,L3によるインダクタンスが支配的となってモータ回路全体のインピーダンスが高くなり、故に、モータ2に流れる電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の振幅は小さい。
【0070】
状態Bは、状態Aから時計回りに約50°回転した状態であり、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Aのときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わっている。GND側のブラシ17には第2整流子片12が接触している。
【0071】
この状態Bでも、コンデンサC1と第2相コイルL2とが直列に接続された状態となっているため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路は存在せず、一方のブラシ16から他方のブラシ17に至るまでの経路には必ずいずれかの相コイルが存在することになる。そのため、この状態Bでもモータ回路全体のインピーダンスは高く、故に、交流電流成分の振幅は小さい。なお、この状態Bと状態Aは、図の等価回路を比較して明らかなように、回路全体のインピーダンスは同じである。そのため、交流電流成分の振幅も同じ大きさである。
【0072】
状態Cは、状態Bからさらに時計回りに約50°回転した状態であり、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A,Bのときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わっている。Vb側のブラシ16には第3整流子片13が接触している。
【0073】
この状態Cでは、第2相コイルL2及び第3相コイルL3の直列回路と、第1相コイルL1と、コンデンサC1とが、それぞれ並列接続された状態となる。そのため、各ブラシ16,17間には、コンデンサC1のみの通電経路が存在する。これにより、モータ回路のインピーダンスは低くなる。
【0074】
特に本実施形態では、モータ回路全体として並列共振回路が形成され、そのインピーダンスは並列共振特性を持つことになる。そのため、その共振周波数より高い周波数帯域では、周波数が高くなるほどコンデンサC1が支配的となってインピーダンスは低くなる。そのため、交流電流成分の振幅は大きくなる。
【0075】
このように、モータ2が180°回転する間には、各ブラシ16,17と接触する整流子片の切り替わりが3回生じ、これに伴って各ブラシ16,17間のモータ回路は状態A,B,Cの三種類に切り替わる。但し状態Aと状態Bは、既述の通り、回路全体のインピーダンスが等しいため、180°回転の間に生じるインピーダンスの変化は二段階である。
【0076】
なお、モータ2の回転の過程では、隣接する2つの整流子片に一つのブラシが同時に接触する切り替わり期間が存在し、この切り替わり期間においてもブラシ間のインピーダンスが変化するが、この切り替わり期間はモータ2が一回転する間において瞬間的に生じるのみであり、これに伴うインピーダンスの変化も瞬間的なものである。そのため、本実施形態ではこの切り替わり期間については考慮しないものとする。
【0077】
状態Cから更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態Cのときの第3整流子片13から第2整流子片12へと切り替わる。GND側のブラシ17には第1整流子片11が接触している。この状態は、上述した状態Aにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Aと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態A’という。
【0078】
この状態A’から更に回転が進むと、GND側のブラシ17に接触する整流子片が、状態A’のときの第1整流子片11から第3整流子片13へと切り替わる。Vb側のブラシ16には第2整流子片12が接触している。この状態は、上述した状態Bにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Bと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態B’という。
【0079】
この状態B’から更に回転が進むと、Vb側のブラシ16に接触する整流子片が、状態B’のときの第2整流子片12から第1整流子片11へと切り替わる。GND側のブラシ17には第3整流子片13が接触している。この状態は、上述した状態Cにおいて、Vb側のブラシ16とGND側のブラシ17とが入れ替わった状態であり、モータ回路全体のインピーダンスは状態Cと同じである。そのため、以下の説明ではこの状態を状態C’という。
【0080】
そして、この状態C’から更に回転が進むと、再び状態Aに切り替わり、以下、回転が進むにつれて状態B→状態C→状態A’→状態B’→状態C’→状態A→・・・と切り替わる。
【0081】
つまり、モータ2は、一回転する間にその回転角に応じてモータ回路が状態A、B、C、A’、B’、C’の六種類に順次切り替わるのであり、60°回転毎に状態が切り替わるということになる。このうち、状態A、B、A’、B’は、いずれも同じインピーダンス(高インピーダンス)である。また、状態C、C’も同じインピーダンスであり、その値は状態A等のインピーダンスよりも非常に低い。
【0082】
図3(b)に、各状態におけるモータ回路のインピーダンスの周波数特性を示す。上述の通り、状態A,B,A’,B’のモータ回路のインピーダンスは同じである。この状態A,B,A’,B’の場合、コンデンサC1の影響はほとんどなく、周波数faで小さなピーク値(小さな共振点)が生じるものの、全体としてみれば周波数が高くなるほどインピーダンスが増加する特性となる。
【0083】
これに対し、状態C,C’の場合、各相コイルL1,L2,L3とコンデンサC1との共振によってインピーダンス特性は大きく変化し、共振周波数fbを中心(最大値)としてインピーダンスは小さくなる。そのため、状態A,B,A’,B’と状態C,C’とでは、インピーダンスが一致(特性が交差)する周波数fcを除き、インピーダンスが異なる。特に、周波数fcよりもある程度高い周波数以上の帯域では、インピーダンスの比が大きくなる。
【0084】
そのため、本実施形態では、重畳部5から出力される交流電流の周波数f1が、上記周波数fcよりも高い所定の周波数となるように設定されている。
そして、上述したモータ回路のインピーダンスの変化は、モータ2に流れるモータ電流に含まれる交流成分(交流電流成分)の変化、或いはモータ電流が流れる通電経路の電圧に含まれる交流成分(交流電圧成分)の変化として直接現れる。
【0085】
図4は、回転中のモータ電流の一例を示す図である。図4に示すように、モータ電流は、直流電流成分に交流電流成分が重畳した波形となる。そして、交流電流成分に着目すると、状態A、B、A’、B’のときは交流電流成分の振幅が小さく、状態C、C’のときは交流電流成分の振幅が大きくなる。即ち、モータ2が180°回転する間に、交流電流成分の振幅は二種類(二段階)に変化するのである。
【0086】
そこで本実施形態では、回転信号検出部6が、モータ2の回転に伴う上記インピーダンスの変化によって生じる、モータ電流の交流電流成分の振幅変化に基づいて、回転パルスSpを生成する。そして、その回転パルスSpに基づき、回転角検出部7が、モータ2の回転角を検出する。
【0087】
図5に、回転信号検出部6の具体的構成を示す。回転信号検出部6は、重畳部5から出力される交流電流を検出する電流検出部21と、この電流検出部21により検出された交流電流に基づく各種信号処理を行って回転パルスSpを生成する信号処理部22とを備えている。
【0088】
電流検出部21は、モータ電流が流れる通電経路(詳しくはグランド電位側のブラシ17からグランドラインに至る通電経路)に配置された電流検出抵抗R1からなり、この電流検出抵抗R1の両端の電圧が、モータ電流に応じた検出信号(本発明の電気量に相当)として信号処理部22へ取り込まれる。
【0089】
信号処理部22は、バンドパスフィルタ(BPF)23と、増幅部24と、包絡線検波部25と、ローパスフィルタ(LPF)26と、閾値設定部27と、比較部28と、を備えている。
【0090】
BPF23は、図示のように一般的な構成のものであり、オペアンプ30と、オペアンプ30の出力端子と反転入力端子の間に接続された、抵抗R2及びコンデンサC11からなる並列回路と、オペアンプ30の反転入力端子とグランドラインとの間に接続された、抵抗R3及びコンデンサC12からなる直列回路と、により構成されている。
【0091】
重畳部5から出力される交流電流の周波数成分は、図6の周波数スペクトルに示すように、基本的には、交流電源4にて生成される正弦波電圧の周波数(基本波周波数)f1のみである。尚、厳密には基本波周波数f1以外の高調波成分も含まれるが、そのレベルは基本波周波数f1の成分に比べれば無視し得る程度であるため、本実施形態では考慮しないものとする。
【0092】
そのため、BPF23は、図6に破線で示す通り、重畳部5から出力される交流電流の周波数f1を中心周波数とする所定の帯域幅(通過帯域)の信号が通過し、それ以外の帯域の信号の通過は阻止されるように構成されている。つまり、電流検出部21にて検出された検出信号のうち、周波数f1を中心とする所定の通過帯域の信号がBPF23によって抽出され、後段の増幅部24に入力される。
【0093】
なお、BPF23の通過帯域は、必ずしもその中心周波数を交流電流の周波数f1に一致させる必要はなく、多少のずれがあってもよい。但し、少なくとも、交流電流の周波数f1が通過帯域内に含まれるようにするのが望ましい。
【0094】
増幅部24は、オペアンプ31と、オペアンプ31の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R4と、オペアンプ31の反転入力端子とグランドラインとの間に接続された抵抗R5とを備え、非反転入力端子に入力される信号(BPF23からの検出信号)が所定の増幅率にて増幅される。
増幅部24にて増幅された検出信号は、包絡線検波部25にて包絡線検波される。この包絡線検波部25は、整流用のダイオードD1と、一端がこのダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続された抵抗R6と、一端がダイオードD1のカソードに接続されて他端がグランド電位に接続されたコンデンサC13とを備えてなるものであり、ダイオードD1のアノードに、増幅部24からの検出信号が入力される。
【0095】
この包絡線検波部25により、増幅部24から入力された検出信号が包絡線検波され、その振幅に応じた一定の信号(以下「検波信号」という)が生成される。
そして、その生成された検波信号は、LPF26にて高周波成分がカットされた上で、比較部28に入力される。LPF26は、抵抗R7及びコンデンサC14からなる周知の構成のものである。なお、抵抗R7にはダイオードD2が並列接続されている。このダイオードD2の接続方向は、検波信号が入力される方向に対して逆方向となっている。
【0096】
比較部28は、コンパレータ32と、コンパレータ32の出力端子と反転入力端子との間に接続された抵抗R10と、一端がコンパレータ32の非反転入力端子に接続されて他端がLPF26に接続された抵抗R8と、一端がコンパレータ32の反転入力端子に接続されて他端が閾値設定部27に接続された抵抗R9とを備えてなるものである。
【0097】
包絡線検波部25から出力された検波信号は、LPF26を介して比較部28に入力され、この比較部28において抵抗R8を介してコンパレータ32の非反転入力端子に入力される。一方、コンパレータ32の反転入力端子には、抵抗R9を介して閾値設定部27からの閾値が入力される。これにより、コンパレータ32では、検波信号と閾値との比較が行われ、その比較結果が出力される。
【0098】
閾値設定部27にて設定され比較部28に入力される閾値は、本実施形態では、図4に示したモータ電流波形のうち振幅が小さい期間(つまり状態A、B、A’、B’の期間)での検波信号よりも大きく、且つ、振幅が大きい期間(つまり状態C、C’の期間)での検波信号よりも小さい、所定の値が設定されている。
【0099】
そのため、振幅の小さい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は0Vであって閾値設定部27からの閾値よりも小さいため、コンパレータ32からはローレベルの信号が出力される。一方、振幅の大きい期間では、包絡線検波部25から比較部28へ入力される検波信号は閾値よりも大きくなるため、コンパレータ32からはハイレベルの信号が出力される。
【0100】
そして、コンパレータ32から出力されたローレベル、ハイレベルの信号が、モータ2の回転角に応じた回転パルスSpとして、回転角検出部7へ出力される。
このように、信号処理部22では、電流検出抵抗R1にて検出されたモータ電流(検出信号)に対して各種信号処理を行った上で回転パルスSpが生成されるため、外乱やノイズが低減された正確な回転パルスSpが生成される。
【0101】
回転角検出部7は、信号処理部22から入力された回転パルスSpに基づき、例えばその回転パルスSpの立ち上がりエッジを検出・計数するといった方法により、モータ2の回転角を検出する。そして、その検出された回転角は、図示しないモータ2の制御回路においてフィードバック信号として用いられる。
【0102】
ところで、本実施形態の回転検出システム1では、直流電源3からモータ2への直流電圧の印加とは別に、回転角検出のために重畳部5を設け、直流電圧に重畳部5からの交流電圧を重畳させて(又は交流電圧単独で)モータ2に印加させるようにしている。具体的には、図1に示すように、直流通電経路における印加部位Pに対して交流電圧を重畳して印加するようにしている。
【0103】
そのため、上述したように、重畳部5から出力される交流電流の一部は、印加部位Pから直流電源3側にも分流する。この直流電源3側への分流とその影響等について、図7を用いてより具体的に説明する。
【0104】
図7は、重畳部5からみた本回転検出システム1の交流等価回路である。図7に示すように、回転検出システム1は、重畳部5からみれば、モータ2及び回転信号検出部6の直列回路と、直流電源3とが、並列に接続された回路となっている。
【0105】
重畳部5からの交流電流の振幅変化に基づいて回転角検出を行うようにしている本実施形態の回転検出システム1において、回転検出を精度良く行うためには、理想的には、重畳部5から出力される交流電流iが全てモータ2に流れることが望ましい。
【0106】
しかし実際には、重畳部5からみた交流等価回路は、図7に示すようにモータ2に対して直流電源3が並列接続された状態になっているため、重畳部5からの交流電流は、モータ2側だけに流れるのではなく直流電源3側にも分流してしまう。
【0107】
モータ2の回転角検出を高精度に行うためには、直流電源3側に分流する交流電流ivが小さければ小さいほど良く、モータ2側に流れる交流電流imが大きければ大きいほどよい。しかし、一般に、直流電源3のインピーダンスZvは、モータ2側のインピーダンス(モータ2のインピーダンスZmと回転信号検出部6のインピーダンスZsの和)よりも小さい。そのため、重畳部5から出力される交流電流iの多くは、直流電流3側に分流してしまい、本来必要なモータ2側への交流電流imは小さくなってしまう。つまり、モータ2に対して交流電流を十分に流すことができなくなってしまう。
【0108】
そのため、電流検出部21にて検出される電流における交流成分(交流電流成分)の振幅は小さくなって、品質・精度の悪い検出信号しか検出できず、回転角の検出精度が低下してしまう。モータ2側への交流電流imを大きくするためには、例えば、重畳部5を構成するカップリングコンデンサC10を大容量化してより大きな交流電流iを供給することも考えられるが、この方法は、システム構成面及びコスト面の双方であまり好ましいものではない。
【0109】
そこで本実施形態の回転検出システム1では、直流電源3からモータ2への直流通電経路における、印加部位Pから直流電源3側の経路に、重畳部5からの交流電流が直流電源3側へ分流するのを抑制する(可能な限り低く抑える)ための、LC並列共振回路8が設けられている。このLC並列共振回路8は、所定の静電容量値を持つコンデンサC5と所定のインダクタンス値を持つコイルL5が並列接続されてなるものであり、そのインピーダンスは、図8に示すような周波数特性を有する。即ち、共振周波数においてピーク値を持つ、周知の並列共振特性を有する。
【0110】
そして本実施形態では、このLC並列共振回路8の共振周波数が、重畳部5から出力される交流電圧(交流電流)の周波数、即ち交流電源4にて生成される交流電圧の周波数f1となるように、LC並列共振回路8を構成するコンデンサC5及びコイルL5の各素子値が設定されている。
【0111】
そのため、このLC並列共振回路8は、重畳部5からみて非常に大きなインピーダンスを持つ回路となり、その共振周波数を含む所定帯域(阻止帯域)の電流の通過が阻止される。なお、ここでいう阻止とは、電流が全く通過しないことのみを意味しているのではなく、重畳部5からの交流電流の多くがモータ2側に流れて電流検出部21による検出信号を高品質に維持できる程度に直流電源3側への分流を抑制することも含むものである。
【0112】
このLC並列共振回路8によって、直流電源3側へ分流する電流ivは非常に小さくなり、重畳部5からの交流電流iの多くがモータ2側へ流れるようになる。これにより、モータ2側には十分な量の交流電流が流れるようになり、電流検出部21にて検出される検出信号の品質の大幅な向上が実現される。
【0113】
なお、LC並列共振回路8の共振周波数は、好ましくは上記のように交流電圧の周波数f1と一致させるのが良いが、直流電源3側への分流を十分に低減できる限り、交流電圧の周波数f1とのずれがあってもよい。
【0114】
次に、回転中のモータ2が停止する際のモータ電流波形の一例を、図9に示す。なお、図9では、モータ回路のインピーダンスが大きくて交流電流成分の振幅の小さい期間(状態A、B、A’B’となる期間)については交流電流成分の波形が非常に小さいため図示を省略している。後述する図10においても同様である。
【0115】
回転中のモータ2に制動をかけて停止させる停止制御(制動制御)を行う際には、モータ2への直流電源3からの直流電圧の印加(直流電流の供給)を停止させる。一方、重畳部5からの交流電圧(交流電流)は、モータ2の駆動に関与するものではなく、あくまでもモータ2の回転角を検出する目的で印加(供給)されるものであるため、起動〜定常回転中はもちろん、停止制御開始後も引き続き印加することができ、延いては、回転停止後も印加することができる。そのため、本実施形態では、停止制御開始後も、重畳部5からの交流電圧の印加は、少なくともモータ2が完全に停止するまでは継続して行われる。
【0116】
これにより、停止制御開始後(直流電源3からの直流電圧の印加を停止した後)のモータ電流は、図示の如く、モータ2自身の誘導起電力によって生じる電流に、重畳部5からの交流電流が重畳したものとなる。このうち、誘導起電力による電流の大きさは、モータ2の回転速度が低くなるにつれて次第に小さくなり、モータ2が停止したときにはゼロになる。
【0117】
一方、交流電流は、上記のように回転角検出のために少なくともモータ2が完全に停止するまでは継続して重畳部5から供給されるものであるため、図9に示すように、モータ2の回転速度に関係なく、回転角に応じた(モータ回路のインピーダンスの変化に応じた)振幅の交流電流が流れる。そのため、回転速度に関係なくモータ2の回転角を検出することができるのである。
【0118】
図9に示した停止制御時における、信号処理部22にて生成される回転パルスSpの一例を、図10に示す。図10の上段側の波形は、信号処理部22において増幅部24から出力される検出信号の波形である。この検出信号は、電流検出部21にて検出された検出信号(即ち電流検出抵抗R1の両端の電圧)のうち、周波数f1を中心とする所定の通過帯域の信号(BPF23からの出力信号)が増幅部24にて増幅されたものである。
【0119】
この増幅部24からの検出信号が、包絡線検波部25、LPF26、及び比較部28を経ることで、図10の下段側に示すような回転パルスSpが生成される。本例では、交流電流成分の振幅が小振幅から大振幅に変化するタイミング毎に、所定時間幅の回転パルスSpが生成される。
【0120】
そして、本実施形態では、回転パルスSpはモータ2が180°回転する毎に生成される。そのため、この回転パルスSpが生成される毎にモータ2が180°回転したものとして、モータ2の回転角を検出することができる。
【0121】
なお、本実施形態の回転検出システム1は、回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出するよう構成されたものであるが、回転パルスSpの間隔(例えば立ち上がりエッジの間隔)に基づいてモータ2の回転速度も検出できるよう構成してもよい。
【0122】
以上説明したように、本実施形態の回転検出システム1では、モータ2を駆動させるための駆動源としての直流電源3とは別に、回転角検出のために重畳部5が設けられ、モータ2が回転される際は、直流電源3からの直流電圧に重畳部5からの交流電圧が重畳された交流重畳電圧がモータ2へ印加され、これによりモータ2には交流成分を含む交流重畳電流が流れる。
【0123】
また、モータ2においては、3相の各相コイルL1,L2,L3のうち第1相コイルL1と並列に回転角検出用のコンデンサC1が接続されている。そして、信号処理部22にて、電流検出部21にて検出されたモータ電流(交流電流)の振幅の変化に応じた回転パルスSpを生成する。コンデンサC1が接続されていることにより、各ブラシ16,17間のモータ回路のインピーダンスは、モータ2の回転角に応じて変化し、その変化は交流電流の振幅変化として現れる。そのため、交流電流の振幅の変化に基づいて、回転パルスSpの生成、延いては回転角の検出を行うことができるのである。
【0124】
従って、本実施形態の回転検出システム1によれば、仮にモータ2の停止(制動)時に直流電源3らの直流電圧の印加(直流電流の供給)が停止されても、交流電圧が印加(交流電流が供給)され続けることにより、完全に停止するまで(延いては完全に停止した後も)回転角を確実に検出することができる。しかも、回転角の検出は、重畳部5から出力される交流電流に基づいて行っており、モータ駆動に影響を与えることなく検出が行われる。そのため、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0125】
また、印加部位Pから直流電源3側の経路にLC並列共振回路8が設けられており、これにより、重畳部5から出力される交流電流がモータ2側以外の経路(本実施形態では直流電源3の正極側)に分流するのが抑制され、より多くの交流電流がモータ2へ流れる。そのため、電流検出部21にて検出される検出信号の品質を高品質に維持することができ、更にはその検出信号に基づいて高品質の回転パルスSpを生成することができ、精度の高い回転角検出が可能となる。
【0126】
特に、本実施形態では、重畳部5から出力される交流電流は正弦波であり、その周波数成分は、図6で説明したように周波数f1のみである。そのため、LC並列共振回路8の共振周波数をその波周波数f1に一致させることで、重畳部5からの交流電流が直流電源3側へ分流するのをより確実に抑制することができる。
【0127】
更に、信号処理部22においてはその入力段にBPF23が設けられ、その通過帯域は基本波周波数f1を中心とする所定帯域幅に設定されている。そのため、電流検出部21を流れる電流から、周波数f1の交流成分を確実に抽出することができる。その一方で、通過帯域以外の周波数の信号はBPF23にて遮断されるため、S/Nの非常に高い検出信号を後段の増幅部24側へ出力することができる。
【0128】
なお、本実施形態において、重畳部5は本発明の交流重畳手段に相当し、電流検出部21(電流検出抵抗R1)は本発明の通電検出手段に相当し、BPF23は本発明の帯域通過フィルタに相当し、比較部28は本発明の回転信号生成手段に相当する。また、信号処理部22及び回転角検出部7により本発明の回転状態検出手段が構成される。
【0129】
[第2実施形態]
図11に、本実施形態の回転検出システム40の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システム40は、図1に示した第1実施形態の回転検出システム1と同様、モータ2の回転角を検出するためのシステムであり、モータ2に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備えている点、モータ2に回転角検出用の交流電圧を印加(重畳)するための重畳部41を備えている点、モータ2からグランドラインに至る経路に電流検出部21が設けられている点、この電流検出部21にて検出された検出信号に基づいて信号処理部47が回転パルスSpを生成する点、などについては、第1実施形態と同じである。
【0130】
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
【0131】
本実施形態の回転検出システム40では、重畳部41において、交流電源46にて生成される交流電圧は、図12の上段に示すような方形波電圧(歪波電圧の一種)である。そして、カップリングコンデンサC10を介して出力される交流電流は、図12の下段に示すような、略インパルス状の波形となる。
【0132】
そのため、重畳部41から出力される交流電流は、交流電源46にて生成される方形波電圧の周波数である基本波周波数f1の他に、高次の高調波成分も含まれる。具体的には、図14の周波数スペクトルに示すように、基本波周波数f1の他、その基本波周波数f1のn倍(nは2以上の自然数)の周波数fnであるn倍波(2倍波、3倍波、4倍波、・・・)が含まれる。その中でも特に、基本波成分(f1)及び奇数倍波成分(f3,f5,f7・・・)の電流がより大きくなる。
【0133】
尚、重畳部41から出力される交流電流は、常に図12に示すような略インパルス状の電流波形となるわけではなく、モータ2の回転角や、モータ2以外の他の回路等の回路定数などによって変化する。但し、高調波成分を含むことは同じである。
【0134】
また、上記第1実施形態の回転検出システム1では、重畳部5からの交流電流が直流電源3側に分流するのを抑制するために、LC並列共振回路8が設けられていたが、本実施形態では、LC並列共振回路8に代えて、同じ目的で、チョークコイルL7が設けられている。つまり、このチョークコイルL7によって、重畳部41からの交流電流が直流電源3側に分流するのを抑制している。
【0135】
チョークコイルL7は、インダクタンス素子の一種であって、周知の通り、周波数が高くなるほどインピーダンスが大きくなるような周波数特性を有する。また、インダクタンス値が大きいほど、インピーダンスも大きくなる。そのため、交流電流の通過を抑制することができ、周波数が高ければ高いほどその抑制効果も大きくなる。
【0136】
そこで、本実施形態では、上述したような高次の高調波成分まで含まれている交流電流が直流電源3側へ分流するのを効果的に抑制するために、分流抑制手段としてチョークコイルL7を用いているのである。これにより、本実施形態においても、重畳部41から出力される交流電流の多くがモータ2側に流れることになる。
【0137】
また、回転信号検出部42内の信号処理部47は、入力段のフィルタを除き、第1実施形態の信号処理部22と同じ構成である。即ち、第1実施形態の信号処理部22では、電流検出部21からの検出信号がBPF23を介して増幅部24へ入力される構成であったが、本実施形態の信号処理部47では、図13に示すように、電流検出部21からの検出信号が、HPF48を介して増幅部24へ入力される。
【0138】
HPF48は、コンデンサC15及び抵抗R11からなる周知の高域通過フィルタ回路である。信号処理部47に取り込まれた電流検出抵抗R1による検出信号は、このHPF48によって所定の遮断周波数より低い帯域の信号がカットされ、遮断周波数以上の帯域の信号が通過する。
【0139】
この遮断周波数は、図14に破線で示すように、重畳部41から出力される交流電流の基本波周波数f1よりも低い周波数に設定されている。そのため、重畳部41から出力される交流電流の全ての周波数成分がHPF48を通過することとなる。
【0140】
そして、このように構成された回転検出システム40においても、モータ2の回転に伴って、モータ2に流れる交流電流成分(本例では高次の高調波成分まで含む)の振幅が変化する。そのため、その振幅の変化に基づいて、信号処理部47にて回転パルスSpを生成することができる。そして、その回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出することができる。
【0141】
以上説明した本実施形態の回転検出システム40によれば、第1実施形態の回転検出システム1と同様、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0142】
また、印加部位Pから直流電源3側の経路にはチョークコイルL7が設けられており、これにより、重畳部5から出力される交流電流がモータ2側以外の経路(直流電源3の正極側)に分流するのが抑制され、より多くの交流電流がモータ2へ流れる。そのため、電流検出部21にて検出される検出信号の品質を高品質に維持することができ、更にはその検出信号に基づいて高品質の回転パルスSpを生成することができ、精度の高い回転角検出が可能となる。
【0143】
しかも、直流電源3側への交流電流の分流抑制を、チョークコイルL7にて実現しているため、第1実施形態のLC並列共振回路8や、後述する第3実施形態のバンドリジェクトフィルタ64(図15参照)に比べて、ごく簡素な構成でしかも低コストでその分流抑制を実現できる。
【0144】
特に、本実施形態では、重畳部5から出力される交流電流は、図14で説明したように、基本波周波数f1に加えて高次の高調波成分まで含む電流である。そのため、周波数が高くなればなるほどインピーダンスが大きくなるチョークコイルL7を分流抑制手段として用いることで、重畳部5からの交流電流が直流電源3側へ分流するのをより確実に抑制することができる。
【0145】
更に、信号処理部22においてはその入力段にHPF48が設けられ、その通過帯域は基本波周波数f1より小さい所定の遮断周波数以上に設定されている。そのため、電流検出部21を流れる電流から、基本波周波数f1及びその高調波成分まで含む交流成分をロスなく確実に抽出することができる。
【0146】
なお、例えば定格電力が数ワット以上のモータ(中・大型モータ)では、サージノイズ防止のためにもともとモータ2と直列にチョークコイルが配置されていることが多い。その場合は、そのサージノイズ防止用のチョークコイルを、本実施形態のチョークコイルL7として、即ち重畳部41からの交流電流が直流電源3側に分流するのを抑制するための手段として併用することが可能である
[第3実施形態]
図15に、本実施形態の回転検出システム60の概略構成を示す。本実施形態の回転検出システム60も、図1に示した第1実施形態の回転検出システム1と同様、モータ2の回転角を検出するためのシステムであり、モータ2に駆動用の直流電圧を印加するための直流電源3を備えている点、モータ2に回転角検出用の交流電圧を印加(重畳)するための重畳部5を備えている点、モータ2に流れる電流に基づいて回転パルスSpを生成する回転信号検出部6を備えている点、などについては、第1実施形態と同じである。
【0147】
そのため、第1実施形態と同じ構成要素には第1実施形態と同じ符号を付し、その詳細説明を省略する。そして、以下、第1実施形態の回転検出システム1とは異なる構成を中心に説明する。
【0148】
本実施形態の回転検出システム60では、直流電源3からモータ2への電力供給が、モータドライバ61を介して行われる。
また、直流電源3とモータドライバ61の間には、直流電源スイッチ63が設けられている。この直流電源スイッチ63は、制御部62からの直流印加制御信号Sdcにより制御(ON・OFF)され、ONされているときには直流電源3からの直流電圧がモータドライバ61に入力され、OFFされているときには直流電源3からモータドライバ61への直流電圧の入力が遮断される。
【0149】
モータドライバ61は、4つのスイッチからなる周知のHブリッジ回路(いわゆるフルブリッジ)にて構成されたものである。
即ち、モータドライバ61は、MOSFETからなるスイッチMOS1、スイッチMOS2、スイッチMOS3、及びスイッチMOS4を備え、このうちハイサイド側の各スイッチMOS1,MOS2(いずれもPチャネルMOSFET)のソースは直流電源スイッチ63を介して直流電源3に接続され、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4(いずれもNチャネルMOSFET)のソースはグランドラインに接続されている。また、ハイサイド側のスイッチMOS1のドレインはローサイド側のスイッチMOS3のドレインに接続されると共に、その接続点(即ちHブリッジ回路の一方の中点J)はモータ2における一方のブラシ16に接続されている。同様に、ハイサイド側における他方のスイッチMOS2のドレインはローサイド側における他方のスイッチMOS4のドレインに接続されると共に、その接続点(ブリッジ回路の他方の中点K)はモータ2における他方のブラシ17に接続されている。
【0150】
そして、各スイッチMOS1〜MOS4のゲートには、それぞれ、制御部62からモータドライバ制御信号SM1〜SM4が入力され、各スイッチMOS1〜MOS4は、それぞれ自身のベースに入力されるモータドライバ制御信号によってON・OFFされる。
【0151】
このように、モータドライバ61を備えていることにより、このモータドライバ61によるモータ2の正転・逆転の切り替えが可能である。即ち、モータ2を正転させる際は、直流電源スイッチ63をONさせると共に、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS1及びスイッチMOS4をONさせ、他の2つのスイッチMOS2,MOS3をOFFさせる。これにより、直流電源3からの直流電圧が、モータドライバ61を介してモータ2へ印加され、モータ2が正転を開始する。正転時には、図15に矢印で示したように、モータ2において、一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
【0152】
一方、モータ2を逆転させる際は、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうち、スイッチMOS2及びスイッチMOS3をONさせて、他の2つのスイッチMOS1,MOS4をOFFさせる。これにより、図15に矢印でしたように、モータ2において、他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることになる(但し起動〜定常回転時)。
【0153】
そして、回転中のモータ2を制動させる際は、短絡制動が行われる。短絡制動とは、モータドライバ61を構成する4つのスイッチMOS1〜MOS4のうちローサイド側の2つのスイッチMOS3,MOS4をONさせることで、モータ2の端子間(各ブラシ16,17間)を、これら各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させることにより、モータ2を制動させるものである。回転中のモータ2の各ブラシ16,17間を各スイッチMOS3,MOS4を介して短絡させると、その短絡時に発生するモータ2の逆起電力によるエネルギーが、ローサイド側の各スイッチMOS3,MOS4、及びモータ2によって消費され、これによりモータ2が制動されてやがて停止することになる。
【0154】
そのため、正転状態のモータ2に対して短絡制動を行うと、図15に矢印で示すように、モータ2には、正転時とは逆方向のモータ電流、即ち他方のブラシ17から一方のブラシ16へモータ電流が流れることとなる。逆に、逆転状態のモータ2に対して短絡制動を行うと、図15に矢印で示すように、モータ2には、逆転時とは逆方向のモータ電流、即ち一方のブラシ16から他方のブラシ17へモータ電流が流れることとなる。
【0155】
短絡制動によってモータ2を制動させる場合に、重畳部5を、例えばモータドライバ61の上流側(直流電源3側)に設けるようにすると、短絡制動が行われる期間中は、モータ2には重畳部5からの交流電圧が印加されないことになる。そこで本実施形態では、直流電源3からモータ2への通電経路のうち、起動〜定常回転時及び短絡制動時の双方ともにモータ電流が流れる共通電流経路に対して、重畳部5からの交流電圧を重畳するようにしている。
【0156】
より具体的には、図15に示すように、モータドライバ61の一方の中点Jからモータ2の一方のブラシ16に至る経路における印加部位Pに、重畳部5からの交流電圧が重畳(印加)される。
【0157】
一方、回転信号検出部6は、モータドライバ61の他方の中点Kからモータ2の他方のブラシ17に至る経路に設けられ、この経路を流れる電流を検出するように構成されている。そして、この回転信号検出部6からの回転パルスSpは、制御部62に入力される。
【0158】
制御部62は、上述した直流電源スイッチ63の制御や、モータドライバ61を構成する各スイッチMOS1〜MOS4の制御を行うほか、第1実施形態の回転角検出部7と同様の機能、即ち回転パルスSpに基づいて回転角を検出する機能も備えている。なお、重畳部5からの交流電圧の出力を制御部62によって制御するようにしてもよいし、また、信号処理部22内の閾値設定部27(図5参照)にて設定される閾値を、制御部62からの制御信号によって可変設定できるようにしてもよい。
【0159】
また、本実施形態では、重畳部5からの交流電圧が印加される印加部位Pからモータドライバ61における一方の中点Jに至る経路に、設定された周波数帯域(阻止帯域)の信号の通過を阻止するための、分流抑制手段としてのバンドリジェクトフィルタ(BRF)64が設けられている。
【0160】
本実施形態の回転検出システム60は、モータドライバ61を介してモータ2へ直流電力を供給するように構成され、且つ、そのモータドライバ61の各スイッチMOS1〜MOS4の切り替えによって正転、逆転、短絡制動が行われるように構成されているため、重畳部5からみた本回転検出システム60の交流等価回路は、図16に示すように、正転時、逆転時、短絡制動時のそれぞれで異なる。
【0161】
このうち、スイッチMOS1及びスイッチMOS4がONされる正転時については、図16(a)に示すような等価回路となり、重畳部5からの交流電流は、モータ2側に流れるほか、モータドライバ61の一方の中点JからスイッチMOS1を経て直流電源3側にも分流する。
【0162】
スイッチMOS2及びスイッチMOS3がONされる逆転時については、図16(b)に示すような等価回路となり、重畳部5からの交流電流は、モータ2側に流れるほか、モータドライバ61の一方の中点JからスイッチMOS3を経てグランドライン側にも分流する。
【0163】
スイッチMOS3及びスイッチMOS3がONされる短絡制動時については、図16(c)に示すような等価回路となり、重畳部5からの交流電流は、モータ2側に流れるほか、モータドライバ61の一方の中点JからスイッチMOS3を経てグランドライン側にも分流する。
【0164】
このように、正転時、逆転時、短絡制動時のいずれも、重畳部5からの交流電流は、モータ2側にのみ流れるのではなく、モータ2側以外の経路(本例ではモータドライバ61の一方の中点J側)にも分流してしまう。
【0165】
そこで、そのモータ2側以外の経路への分流を抑制するために、印加部位Pとモータドライバの一方の中点Jとの間に、BRF64が設けられている。これにより、定常回転(正転・逆転)時はもちろん、短絡制動時でも、重畳部5からの交流電流の多くがモータ2側へ流れる。
【0166】
BRF64は、具体的には、図17(a)に示すような回路構成となっている。即ち、2つのコンデンサC16,C17の直列接続体と並列に抵抗R12が接続され、この並列回路の両端において信号の入出力が行われる。また、2つのコンデンサC16,C17の接続点は、抵抗R13を介してグランドラインに接続されている。即ち、このBRF64は、一般によく知られているT型のバンドリジェクトフィルタ(帯域阻止フィルタ回路)である。
【0167】
BRF64の周波数特性は、図17(b)に破線で示す通りである。即ち、重畳部5から出力される交流電流の周波数f1を中心周波数とする所定の阻止帯域の信号が阻止され、それ以外の帯域の信号は通過する。
【0168】
尚、バンドリジェクトフィルタは、周知の通り、バンドエリミネートフィルタ、ノッチフィルタなどと呼ばれることもある。また、第1実施形態のLC並列共振回路8も、バンドリジェクトフィルタの一種と捉えることもできる。
【0169】
そして、このように構成された回転検出システム60においても、正転時、逆転時、短絡制動時のいずれも、モータ2の回転に伴って、モータ2に流れる交流電流成分の振幅が変化する。そのため、その振幅の変化に基づいて、信号処理部22にて回転パルスSpを生成することができる。そして、その回転パルスSpに基づいてモータ2の回転角を検出することができる。
【0170】
従って、本実施形態の回転検出システム60によっても、第1実施形態の回転検出システム1と同様、ロータリエンコーダ等の大がかりなセンサを設けることなく、またトルク変動が発生しないようにしつつ、回転速度によらずに回転角を精度良く検出することができる。
【0171】
また、印加部位Pからモータドライバ61側の経路にはBRF64が設けられており、これにより、重畳部5から出力される交流電流がモータ2側以外の経路(モータドライバ61側)に分流するのが抑制され、より多くの交流電流がモータ2へ流れる。そのため、電流検出部21にて検出される検出信号の品質を高品質に維持することができ、更にはその検出信号に基づいて高品質の回転パルスSpを生成することができ、精度の高い回転角検出が可能となる。
【0172】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0173】
例えば、分流抑制手段として、第1実施形態ではLC並列共振回路8を用い、第3実施形態ではBRF64を用いたが、これらの代わりに、第2実施形態で用いたチョークコイルL7を用いても良い。なお、上記第1、第3実施形態では、重畳部5から出力される交流電流は正弦波であり、その周波数は基本的には周波数f1のみである。そのため、チョークコイルL7のインダクタンス値は、その周波数f1におけるチョークコイルL7のインピーダンスがモータ2側のインピーダンスに対して十分高くなるように設定するとよい。
【0174】
また、上記第1実施形態及び第3実施形態では、信号処理部22の入力段においてBPF23を備え、これにより、電流検出部21による検出信号から、交流電流の周波数f1を含む所定の通過帯域の信号を抽出するようにしたが、BPF23を用いたのは一例であり、周波数f1の信号を抽出できる限り、他の種類のフィルタを用いても良い。例えば、BPF23に代えてHPFを用いることもできる。
【0175】
但し、HPFを用いると、周波数f1の信号だけでなく、周波数f1より高い帯域の信号も全て抽出されることとなり、例えば検出信号に周波数の高いノイズ成分が含まれていると、その影響を受けて検出信号のS/Nが低くなるおそれがある。そのため、S/Nをより高くするためには、BPFを用いるのが望ましい。
【0176】
また、上記第2実施形態では、分流抑制手段としてチョークコイルL7を用いたが、これに代えて、第1実施形態で用いたLC並列共振回路8や、第3実施形態で用いたBRF64を用いても良い。
【0177】
そして、そのようにLC並列共振回路8やBRF64を用いる場合は、その阻止帯域を、重畳部41から出力される交流電流の周波数成分のうち例えば基本波周波数f1や、3倍波周波数f3に設定するなど、できる限り、信号強度の高い周波数成分の通過が阻止されるように設定するのが望ましい。なお、LC並列共振回路8やBRF64の各素子値を適宜設定することで、阻止帯域内に複数の周波数成分を含ませることも可能である。
【0178】
また、上記第2実施形態では、信号処理部47の入力段においてHPF48を備え、これにより、電流検出部21による検出信号から、交流電流の基本波周波数f1よりも低い所定の遮断周波数以上の信号を抽出するようにしたが、HPF48を用いたのは一例であって、少なくとも1つの周波数成分を抽出できる限り、他の種類のフィルタを用いても良い。例えば、HPF48に代えてBPFを用いることもできる。
【0179】
但し、BPFを用いると、抽出できる周波数成分が限られ、その分、検出信号のエネルギーのロスが生じる。そのため、検出信号のエネルギーのロスを抑えることを優先するのであれば、HPF48を用いて高次高調波まで全ての周波数成分を抽出するのが望ましい。しかも、HPF48は、BPFに比べて回路構成を簡素化できるため、コストの面でも、HPF48の方が望ましい。
【0180】
一方、HPF48を用いて高次高調波まで全て抽出するということは、例えば検出信号に周波数の高いノイズ成分が含まれている場合にはそのノイズ成分まで抽出されることになり、S/Nの低下を招くおそれがある。
【0181】
そのため、検出信号のS/Nを高くすることを優先するのであれば、BPF等を用いて、必要な周波数成分のみを抽出するようにするのが望ましい。この場合、どの周波数成分を抽出するかについては適宜決めることができるが、信号強度の強い基本波成分(f1)及び奇数倍波成分(f3,f5,f7・・・)のうち少なくとも1つは抽出するのが望ましい。
【0182】
また、分流抑制手段としては、抵抗素子を用いることもできる。その場合、その抵抗素子の抵抗値が大きいほど、分流抑制効果を高めることができる。
但し、抵抗素子を用いると、交流電流の分流を抑制することができる一方で、直流電源3からモータ2へ供給される電力の一部がその抵抗素子にて消費されることとなり、その分が電力の損失となってしまう。そのため、比較的大きな電流が流れるようなモータの場合には、抵抗素子ではなく、上記各実施形態に示したLC並列共振回路8(図1)やチョークコイルL7(図11)、BRF64(図15)などのような、直流電力の損失が生じないものを用いるのが望ましい。
【0183】
更に、上記例示した回路、素子等以外にも、重畳部から出力される交流電流がモータ2側以外の経路に分流するのを効果的に抑制することができる限り、分流抑制手段の具体的構成は限定されるものではない。
【0184】
また、上記各実施形態では、電流検出部21として、電流検出抵抗R1を用いたが、電流検出抵抗R1に代えて例えばコイル(インダクタンス素子)を用いても良い。
また、上記各実施形態の信号検出部の構成(図5や図13)は、あくまでも一例であり、図示の構成に限定されるものではないことはいうまでもない。電流検出部からの検出信号に基づいて回転パルスSpを生成できる限り、種々の構成を採ることができる。
【0185】
また、上記実施形態では、重畳部内の交流電源が生成する電圧として、方形波電圧の場合(第1,第3実施形態)及び正弦波電圧の場合(第2実施形態)について説明したが、これら各電圧もあくまでも一例であり、他の種類の交流電圧を生成するようにしてもよい。
【0186】
また、上記各実施形態では、モータ2の回転の過程において、ブラシに接触する整流子片が切り替わる際に生じる、モータ回路の瞬間的なインピーダンスの変化については、考慮しないものとして説明したが、瞬間的ではあれ、インピーダンスが変化することは事実であり、しかもそのインピーダンスの変化は回転に伴って周期的に生じる。そのため、その瞬間的に生じるインピーダンスの変化に基づいて(延いてはそれにより生じる交流成分の変化に基づいて)回転角等の回転状態を検出することも可能である。その場合、上記各実施形態のモータ2のようにコンデンサC1を設けることは必ずしも必要ではなくなる。
【0187】
また、上記各実施形態では、モータ2の回転角を検出する回転検出システムについて説明したが、モータ2に代えて、例えば図18に示すようなモータ70を用いることで、回転方向も検出することが可能となる。
【0188】
図18に示すモータ70は、上記各実施形態のモータ2に対して更に、第2相コイルL2にもコンデンサC2が並列接続された構成となっている。そして、このコンデンサC2の静電容量値は、第1相コイルL1に並列接続されたコンデンサC1の静電容量値とは異なる値である。
【0189】
そのため、このモータ70が180°回転する間、各ブラシ16,17と接触する整流子片が切り替わる毎、即ち各ブラシ16,17間のモータ回路が変化する毎に、そのモータ回路のインピーダンスはそれぞれ異なる値に変化する。つまり、第1実施形態では、図3に示したように、180°回転する間にモータ回路は状態A〜Cの3種類に変化するもののインピーダンスの変化は状態A,Bの高インピーダンスと状態Cの低インピーダンスの二段階種類であったのに対し、本実施形態では、モータ回路が3種類に変化する毎に、インピーダンスもそれぞれ異なる値(3種類の値)となる。即ち、180°回転する間にモータ回路のインピーダンスは3段階に変化するのである。
【0190】
そのため、電流検出部21により検出されるモータ電流は、モータ70が同一方向に回転している限り、その振幅が、小振幅、中振幅、大振幅の3段階に順次変化する。
そこで、この3段階の振幅変化を検出するために、信号処理部22において、互いに異なる値の閾値が設定された2つの閾値設定部を設けると共に、これら各閾値設定部に対応するように2つの比較部を設け、各比較部からそれぞれ回転パルスを出力させるようにするとよい。より具体的には、例えば、検出信号の振幅が中振幅以上の場合にHレベルとなるような回転パルスを出力する比較部と、検出信号の振幅が大振幅以上の場合にHレベルとなるような回転パルスを出力する比較部とを設ける。
【0191】
このように構成することで、双方の比較部から出力される回転パルスの変化パターンに基づいて、モータ70の回転方向を検出できるようになる。
また、図18に示したモータ70以外にも、例えば、3つの相コイルの各々に、容量の異なるコンデンサを接続するようにしてもよい。このようにしても、分解能の高い回転角の検出及び回転方向の検出が可能である。
【0192】
なお、3つの相コイルの各々にコンデンサを接続する場合、いずれか2つのコンデンサは同じ静電容量値のものとすることもできる。但しその場合、回転角や回転速度の検出は可能であるものの、回転方向の検出はできなくなる。
【0193】
また、上記第1実施形態では、第1相コイルL1全体に対して完全に並列となるようにコンデンサC1を接続したが、例えば、第1相コイルL1の一部に中間タップをたててそこにコンデンサC1の一端を接続することにより、コンデンサC1を第1相コイルL1の一部に対して並列となるように接続してもよい。このような接続方法は、図18に示したモータ70や、後述する他のモータについても同様に適用できる。
【0194】
また、上記各実施形態では、モータ2として、各相コイルL1,L2,L3がΔ結線されている構成を例示したが、Δ結線に限らず、例えば図19に示すモータ80のように、スター結線された3つの相コイルL11,L12,L13からなるモータであってもよい。スター結線の場合、例えば、図19に示すように、2つの相コイルL11,L12の双方にそれぞれコンデンサC31,C32を並列接続することで、モータ80の回転角や回転方向を検出することができる。
【0195】
なお、図19に示した構成はあくまでも一例に過ぎず、例えば、何れか1つの相コイルにのみコンデンサを並列接続するようにしてもよい。また例えば、全ての相コイルL11,L12,L13にそれぞれコンデンサを並列接続してもよい。但しその場合、コンデンサの静電容量値は少なくとも二種類にする必要がある。また、例えば、2つの整流子片の間にコンデンサを接続するようにしてもよい。
【0196】
また、上記各実施形態では、電機子コイルの相数が3相の3相直流モータを例に挙げて説明したが、本発明の適用は、3相のモータに限定されるものではなく、4相以上のモータであっても適用可能である。
【0197】
4相以上のモータに対する本発明の適用例として、図20に、5相の直流モータの場合を示す。図20に示すモータ90は、5つの整流子片91,92,93,94,95からなる整流子を有し、隣接する各整流子片にそれぞれ、電機子コイルとしての各相コイルL21,L22,L23,L24,L25がそれぞれ接続(Δ結線)されている。なお、各相コイルのインダクタンスはいずれも同じである。
【0198】
そして、各相コイルL21,L22,L23,L24,L25のうち2つの相コイル(第1相コイルL21、第2相コイルL22)に、それぞれコンデンサC41,C42が並列接続されている。このような5相のモータ90についても、回転角や回転速度の検出を行うことができる。
【0199】
なお、4相以上のモータにおいて、何れか一つの相コイルにのみコンデンサを並列接続すれば、少なくとも回転角や回転速度の検出は可能となる。また、4相以上のモータにおいても、少なくとも2つの相コイルにそれぞれ静電容量値の異なるコンデンサを接続すれば、図18に示したモータ70と同様、回転に伴うインピーダンスの段階的変化の変化パターン(延いては交流電流の振幅変化パターン)に基づいて回転方向の検出も可能となる。
【0200】
また、上記各実施形態では、回転に伴うモータ回路のインピーダンスの周期的な変化を、モータ2の第1相コイルL1にコンデンサC1を並列接続することによって実現していたが、回転に伴ってインピーダンスの変化が周期的に生じるようなモータの具体的構成は、他にも種々考えられる。
【0201】
例えば、図21に示すモータ100も、回転に伴ってモータ回路のインピーダンスが周期的に変化する。図21のモータ100は、ハウジング101と、このハウジング101内に収容されたロータコア110とを備えている。ロータコア110は、ハウジング101の軸心に配置されている回転軸106に固定され、この回転軸106と共に回転する。
【0202】
ハウジング101は、略円筒形の形状をなし、その内周面には、界磁発生用の2つの磁石102,103が径方向に互いに対向するように固定されている。周方向で見れば、2つの磁石102,103が所定間隔隔てて固定されている。各磁石102,103は、いずれも永久磁石であり、ロータコア110と対向する面側の極性が一方はN極で他方がS極である。つまり、このモータ100は界磁が2極の直流モータとして構成されている。
【0203】
また、ハウジング101は、軟磁性体である継鉄(ヨーク)にて形成されたものであり、内周面に固定された2つの磁石102,103と共にモータ100の磁気回路を構成している。
【0204】
ロータコア110は、軟磁性体にて形成されたものであり、3つのティース(突極)111,112,113を有し、電機子コイル105が巻回されている。具体的には、第1ティース111に第1相コイルL1が巻回され、第2ティース112に第2相コイルL2が巻回され、第3ティース113に第3相コイルL3が巻回されており、これら3つの相コイルL1,L2,L3により電機子コイル105が構成されている。
【0205】
また、回転軸106には、整流子10が固定されており、この整流子10に、互いに対向して(即ち回転方向に180°離れて)配置された一対のブラシ16,17が摺接している。整流子10と各相コイルL1,L2,L3との結線状態は、第1実施形態のモータ2(図1参照)と同じである。
【0206】
更に、モータ100には、ハウジング101の内周面において、2つの磁石102,103の間に、凸部104が設けられている。ハウジング101の内周面には、2つの磁石102,103が周方向において所定の間隔を隔てて固定されているため、周方向において磁石102,103の存在しない領域(磁石間領域)が2箇所存在している。モータ100では、図21に示す通り、このうち1箇所の磁石間領域に、ハウジング101の内周面から径方向内側へ突出するように凸部104が設けられている。また、この凸部104は、2つの磁石102,103のいずれとも接触しないよう、周方向において各磁石102,103の双方からそれぞれ所定間隔隔てて設けられている。
【0207】
凸部104は、軟磁性体の材料で形成されたものであり、周方向に所定の長さを有し、且つ、径方向に所定の厚みを有している。そして、この凸部104が設けられていることにより、モータ100のロータコア110とハウジング101により構成される磁気回路の磁気抵抗は、ロータコア110の回転に伴って変化する。なお、以下の説明で「磁気抵抗」とは、特に断りのない限り、モータ2のロータコア110とハウジング101により構成される磁気回路の磁気抵抗を意味するものとする。
【0208】
ロータコア110及びハウジング101はいずれも軟磁性体にて形成されており、その透磁率は空気の透磁率よりも非常に大きい。そのため、モータ100の磁気抵抗は、ロータコア110(詳しくは各ティース111,112,113の外周面)とハウジング101の内周面又は磁石102,103との間のエアギャップ、及び各磁石102,103の厚みの和に大きく依存する。つまり、エアギャップが大きいほど磁気抵抗は大きくなり、逆にエアギャップが小さいほど、磁気抵抗は小さくなる。
【0209】
但し、各磁石102,103については、その透磁率は空気の透磁率とほぼ同じである。そのため、各磁石102,103は、磁気的にみれば空気が存在していることと等価となる。つまり、モータ100の磁気抵抗を考慮する上では、空気と同じ透磁率である各磁石102,103の存在は無視することができ、各磁石102,103はいずれもエアギャップとして扱うことができる。そのため、仮に凸部104がないならば、ロータコア110とハウジング101の内周面とのエアギャップはロータコア110が回転しても一定であり、故に、回転に伴って磁気抵抗が変化することはない。
【0210】
しかし、モータ100は、ハウジング101の内周面に、ハウジング101とほぼ同じ透磁率を有する、軟磁性の凸部104が設けられている。そのため、モータ100の回転角によって、即ちロータコア110の各ティース111,112,113の外周面がこの凸部104と対向しているか否かによって、モータ100の磁気抵抗は異なった値となる。つまり、モータ100の回転に伴ってその磁気抵抗が変化する。そして、磁気抵抗が変化すると、モータ回路のインダクタンスも変化するため、重畳部5から出力されて電流検出部21を流れる交流電流の振幅も変化する。
【0211】
この振幅の変化は、モータ100の回転(詳しくはロータコア110及び回転軸106の回転)に伴って周期的に生じる。そこで、この交流電流の振幅の変化に基づき、上述した各実施形態と同様に、モータ100の回転角を検出することができる。
【0212】
なお、ハウジング側に工夫を加えることでモータ回路のインダクタンスを周期的に変化させることが可能な構成は、図21に示したモータ100以外にも多種多様のものが考えられる。具体的には、凸部の設置位置や設置数を適宜変更したり、凸部の形状自体に工夫を加えることで回転に伴うモータ回路のインダクタンスの変化パターンに特徴を持たせたりすることができる。
【0213】
また、モータ回路のインダクタンスを周期的に変化させるための構成は、図21に示したモータ100のようにハウジング側に工夫を加える方法以外にも実現可能である。例えば、図22に示すモータ120は、第1実施形態のモータ2に対し、コンデンサC1に代えて、コンデンサ以外のインピーダンス素子122を相コイルに並列接続した構成となっている。
【0214】
インピーダンス素子122としては、例えばインダクタンス素子(コイル)であってもよいし、抵抗であってもよい。また、1つの相コイルにのみインピーダンス素子を並列接続するのはあくまでも一例に過ぎず、複数の相コイルにインピーダンス素子を接続してもよいし、1つの相コイルに対して複数のインピーダンス素子を接続してもよい。またその接続方法も、並列接続であってもよし直列接続であってもよい。つまり、結果としてモータ回路のインピーダンスが回転に伴って周期的に変化する限り、どのような素子をどの相コイルに対してどのように接続するかは適宜決めることができる。
【0215】
また、一般に直流モータにおいては、サージ吸収のためにリングバリスタが用いられることがある。このようにリングバリスタを有するモータの場合には、このリングバリスタを利用して、回転に伴う周期的なインピーダンス変化を生じさせるようにすることができる。
【0216】
例えば、リングバリスタが有する複数の電極のうち隣接する電極間にコンデンサやインダクタンス素子等を接続するようにしてもよい。また例えば、上述した各種モータのように別途コンデンサやインダクタンス素子等を接続することなく、各電極の面積に差異をもたせるなどしてリングバリスタ自体の構成に工夫を加えることで、回転に伴う周期的なインピーダンス変化が生じるようにすることもできる。
【0217】
また、上記各実施形態では、一対のブラシを有するモータについて説明したが、複数対のブラシを有するモータに対しても本発明を適用することが可能である。
また、一般に、モータを駆動するにあたっては、ブラシと整流子片との切り替わり時に発生するノイズ(サージ)を減少させるために、モータ外部においてブラシ間にコンデンサを接続する場合が多い。ブラシ間に、即ちモータと並列に、コンデンサを接続することで、ブラシと整流子片との切り替わり時に発生するノイズを低減させることができる。
【0218】
しかし、モータ外部においてブラシ間をコンデンサで接続すると、重畳部から供給される交流電流の大部分がその外部のコンデンサに流れてしまい、回転状態の検出が困難となるおそれがある。
【0219】
そこで、ノイズ低減用にモータ外部にコンデンサを設ける場合には、電流検出部21は、その外部のコンデンサとモータとで形成されるループ内であって且つモータ電流が流れる経路に配置するのが望ましい。その具体例を図23に示す。
【0220】
図23に示す回転検出システム130は、図1の回転検出システム1に対し、ノイズ低減用のコンデンサC50を設けたものである。この回転検出システム130は、モータ2に対し、コンデンC50が並列接続されている。より詳しくは、コンデンサC50の一端はモータ2における直流電源3側のブラシ16に接続され、他端は、電流検出部21からグランドラインに至る経路に接続されている。そのため、電流検出部21には外部のコンデンサC50に流れる電流は流れず、電流検出部21はモータ2に流れる電流のみを検出することができる。
【符号の説明】
【0221】
1,40,60,130…回転検出システム、2,70,80,90,100,120…モータ、3…直流電源、4,46…交流電源、5,41…重畳部、6,42…回転信号検出部、7…回転角検出部、8…LC並列共振回路、10…整流子、11,91〜95…整流子片、11…第1整流子片、12…第2整流子片、13…第3整流子片、16,17…ブラシ、21…電流検出部、22,47…信号処理部、23…BPF、24…増幅部、25…包絡線検波部、26…LPF、27…閾値設定部、28…比較部、30,31…オペアンプ、32…コンパレータ、48…HPF、61…モータドライバ、62…制御部、63…直流電源スイッチ、64…BRF、101…ハウジング、102,103…磁石、104…凸部、105…電機子コイル、106…回転軸、110…ロータコア、111…第1ティース、112…第2ティース、113…第3ティース、122…インピーダンス素子、C1,C2,C5,C11〜C17,C31,C32,C41,C42,C50…コンデンサ、C10…カップリングコンデンサ、D1,D2…ダイオード、J,K…中点、L1…第1相コイル、L2…第2相コイル、L3…第3相コイル、L5…コイル、L7…チョークコイル、L11〜L13,L21〜L25…相コイル、MOS1〜MOS4…スイッチ、P…印加部位、R1…電流検出抵抗、R2〜R13…抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータの回転状態を検出する回転検出装置であって、
前記直流モータは、該直流モータにおける、前記直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されており、
当該回転検出装置は、
前記一対のブラシ間に印加される直流電圧に対し、交流電圧を重畳する交流重畳手段と、
前記交流重畳手段から前記直流モータに供給される交流電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、
前記通電検出手段により検出された前記電気量に基づいて、前記直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
前記交流重畳手段からの交流電流が前記直流モータ以外に分流するのを抑制する分流抑制手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転検出装置であって、
前記分流抑制手段は、前記直流電源から前記直流モータへの通電経路に配置されており、
前記交流重畳手段は、前記通電経路における、前記直流モータと前記分流抑制手段の間に接続されて前記交流電圧を印加するよう構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記分流抑制手段は、前記交流重畳手段にて印加される前記交流電圧の周波数成分の一部又は全てを含む所定の周波数帯域を阻止帯域として、少なくとも該阻止帯域の電流の通過を抑制できるよう構成されている
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の回転検出装置であって、
前記分流抑制手段は、所定のインダクタンス値を持つインダクタンス素子と所定の静電容量値を持つ静電容量素子とが並列接続されてなり、共振周波数が前記阻止帯域内の周波数となるように設定された、並列共振回路である
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項5】
請求項3に記載の回転検出装置であって、
前記分流抑制手段は、前記阻止帯域の電流の通過を抑制できるよう構成された帯域阻止フィルタ回路である
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項6】
請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の回転検出装置であって、
前記交流重畳手段は、前記交流電圧として正弦波電圧を印加可能に構成されており、
前記分流抑制手段は、前記阻止帯域として前記正弦波電圧の周波数を含む所定の周波数帯域が設定されており、
前記回転状態検出手段は、
前記正弦波電圧の周波数を含む所定の周波数帯域を通過帯域として、前記通電検出手段により検出された前記電気量から、前記通過帯域の交流成分を通過させると共に該通過帯域以外の交流成分の通過を阻止する帯域通過フィルタ回路と、
前記帯域通過フィルタ回路を通過した交流成分の振幅の変化に基づき、該振幅の変化に対応した信号である回転信号を生成する回転信号生成手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出装置。
【請求項7】
請求項2に記載の回転検出装置であって、
前記分流抑制手段は、インダクタンス素子である
ことを特徴とする回転検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の回転検出装置であって、
前記交流重畳手段は、前記交流電圧として、所定の周波数の基本波成分及び該基本波成分に対する少なくとも1つの高調波成分を有する、歪波電圧を印加可能に構成されており、
前記回転状態検出手段は、
前記歪波電圧の前記基本波成分の周波数以下における所定の周波数を遮断周波数として、前記通電検出手段により検出された前記電気量から、前記遮断周波数以上の交流成分を通過させる高域通過フィルタ回路と、
前記高域通過フィルタ回路を通過した交流成分の振幅の変化に基づき、該振幅の変化に対応した信号である回転信号を生成する回転信号生成手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出装置。
【請求項9】
直流電源からの電力供給を受けて回転する直流モータと、
前記直流モータの回転状態を検出する回転検出装置と、
を備えた回転検出システムであって、
前記直流モータは、該直流モータにおける、前記直流電源からの直流電圧が印加される少なくとも一対のブラシ間のインピーダンスが、該直流モータの回転に伴って周期的に変化するように構成されており、
前記回転検出装置は、
前記一対のブラシ間に印加される直流電圧に対し、交流電圧を重畳する交流重畳手段と、
前記交流重畳手段から前記直流モータに供給される交流電流に関する電気量を検出する通電検出手段と、
前記通電検出手段により検出された前記電気量に基づいて、前記直流モータの回転角、回転方向及び回転速度のうち少なくとも何れか1つを検出する回転状態検出手段と、
前記交流重畳手段からの交流電流が前記直流モータ以外に分流するのを抑制する分流抑制手段と、
を備えたことを特徴とする回転検出システム。
【請求項10】
請求項9に記載の回転検出システムであって、
前記直流モータは、
少なくとも3相の相コイルからなる電機子コイルと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、
前記整流子を介して前記各相コイルへ電流を供給する少なくとも一対のブラシと、
を有し、
前記複数の整流子片のうち何れか2つの整流子片を一組として、少なくとも一組の整流子片間は、他の組の整流子片間とは異なる値の静電容量値を持つように構成されている
ことを特徴とする回転検出システム。
【請求項11】
請求項9に記載の回転検出システムであって、
前記直流モータは、
内周面においてその周方向に界磁発生用の複数の磁石が固定されたハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、複数の相コイルからなる電機子コイルを有するロータコアと、
前記電機子コイルが接続される複数の整流子片を有する整流子と、
前記整流子に摺接する少なくとも一対のブラシと、
を有し、
回転に伴って前記一対のブラシ間のインダクタンスが周期的に変化するよう構成されている
ことを特徴とする回転検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−176943(P2011−176943A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39121(P2010−39121)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】