説明

回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法

【課題】簡易な構成でレゾルバから出力される多相出力信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部の検出誤差を求める。
【解決手段】ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位置信号を出力するレゾルバ30と、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部200と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路61と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部62とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転角に応じた3相以上の位置信号を出力するレゾルバと、このレゾルバから出力される3相以上の位置信号を位置検出値に変換する信号変換部とを備えた回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転角度位置検出装置としては、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載の従来例が知られている。
特許文献1記載の従来例は、励磁信号が供給されたレゾルバから出力される3相電流信号を半固定抵抗によって構成される電流/電圧変換器で電圧信号に変換し、この電圧信号を3相/2相変換器でsin信号及びcos信号に変換し、さらにR/D変換器(レゾルバ・デジタル・コンバータ)でデジタル角度信号に変換し、このデジタル角度信号をCPUに供給して回転角位置信号を演算し、この回転角位置信号に基づいてDD(ダイレクトドライブ)モータを駆動するようにしている。
【0003】
ここで、CPUで演算される回転角位置信号には、通常、誤差が含まれる。その誤差の検証は、通常、基準エンコーダを搭載したレゾルバ精度測定器等で基準エンコーダの値とCPUから出力された回転角位置信号とを比較測定することによって、レゾルバの検出誤差を評価するようにしている。この検出誤差は、レゾルバ本体の検出誤差と、3相/2相変換器、R/D変換器、CPU等を含む位置検出部の誤差とが重畳されたものとなっている。
【0004】
レゾルバを使用した回転位置検出装置では、高精度互換性の確保が要求されている。通常、レゾルバを含むDDモータと、検出回路を含むドライブユニットと、取り替え負荷の1対1の組み合わせが一般的であったが、実際に複数の組み合わせを多数同時に使用するときや保守・交換時のメンテナンス性を考慮した場合、レゾルバと検出回路の各々の誤差が最小に抑えられていると、高精度な互換性を保ちつつ組み合わせの自由や交換が可能となる。
【0005】
このように高精度を保ちつつ交換できる調整方法として、特許文献2に記載の従来例が知られている。この従来例では、励磁信号により励磁される励磁コイルとSIN成分とCOS成分の振幅変調信号を出力する二次コイルとを有するレゾルバと、前記励磁信号と振幅変調信号とに基づき前記レゾルの回転角度に応じた角度検出値を出力する信号処理回路を有する位置検出回路を備え、レゾルバの特定の回転角度に相当する特定の励磁信号と特定の変調信号を前記信号処理回路に与えてその検出誤差を算出するようにしている。
【0006】
同様に、特許文献3に記載の従来例では、レゾルバから出力される2相の2次側電圧をデジタル信号に変換するAD変換手段と、デジタル変換された2次側電圧を補正する補正手段と、この補正手段の出力から位置情報を算出する位置算出手段とを備えたレゾルバインターフェース装置において、前記補正手段の信号からレゾルバの検出誤差を補正する補正パラメータを求める調整手段と、この調整手段で求めた補正パラメータを記憶する記憶手段とを備え、前記補正手段は、前記記憶手段に記憶した補正パラメータを使って前記2次側電圧の振幅位相及びオフセットを補正することにより、レゾルバの検出誤差を補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−23155号公報
【特許文献2】特開2003−344108号公報
【特許文献3】特開2007−57316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、1相励磁2相出力型のレゾルバに対して検出誤差を算出するようにしたものであって、1相励磁で3相以上の多相出力型のレゾルバについて適用することができないという未解決の課題がある。
同様に、上記特許文献3に記載の従来例にあっては、上記特許文献2と同様に1相励磁2相出力型のレゾルバを対象としてAD変換手段から出力されるデジタル変換されたレゾルの2次側電圧を補正する補正手段の信号から補正パラメータを求めるようにしており、3相以上の多相出力型のレゾルバには適用できないとともに、その補正パラメータは2次側電圧に振幅調整ゲインを乗算する振幅調整と、2相の2次側電圧が90°の位相差となるように調整する位相調整と、オフセット調整とを行うもので、2相出力型のレゾルバに対しては有効であるが3相以上の多相出力型のレゾルバには応用できず、さらにはレゾルバの検出誤差は検出できるが検出回路の検出誤差を検出することはできないという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、簡易な構成でレゾルバから出力される多相出力信号に基づいて位置検出値を演算する位置信号演算部の検出誤差を求めることができる回転角度位置検出装置及びその誤差検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位置信号を出力するレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
【0010】
この構成であれば、レゾルバから3相以上のN相位置信号が出力され、このN相位置信号が、切換回路によって位置信号演算部のN相入力端子に順次シフトされたN段階分入力され、切換回路で入力を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいてレゾルバ側の検出誤差及び位置信号演算部の検出誤差が重畳された検出誤差を計測し、計測した各計測誤差の平均値を算出することにより、レゾルバ側の検出誤差を相殺して位置信号演算部側の検出誤差のみを算出することができる。
【0011】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、ロータの回転角に応じて120°の位相差を有するA相、B相及びC相の3相位置信号を出力するレゾルバと、該レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部とを備えたことを特徴としている。
この構成であれば、A相、B相及びC相の位置信号を出力する3相出力型のレゾルバにおいて、位置信号演算部の検出誤差を正確に検出することができる。
【0012】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正するので、検出誤差を抑制した位置信号演算部を構成することができる。
【0013】
また、本発明の他の形態に係る回転角度検出装置は、前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができる。このレゾルバ側の検出誤差をレゾルバ側で補正しておくことにより、検出誤差を抑制したレゾルバを構成することができる。このため、レゾルバと位置信号演算部との互換性を確保することができ、レゾルバと位置信号演算部とを任意に組合せることができる。
【0014】
さらに、本発明の一の形態に係る回転角度検出装置の誤差検出方法は、ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位置信号を出力するレゾルバと、該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測するステップと、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップとを備えたことを特徴としている。
この構成によれば、上述した回転角度位置検出装置と同様の作用を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レゾルバから出力されるN相位置信号を、位置信号演算部のN相入力端子に、順次シフトさせたN段階に切換えて入力し、入力信号を切換える毎に、位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差はレゾルバの検出誤差の位相が360°/N分ずれているので、各検出誤差を、平均値を算出するために360°/N分の位相差を有する検出誤差を加算したときに、レゾルバ側の検出誤差を相殺することができ、位置信号演算部のみの検出誤差を正確に検出することができるという効果が得られる。
【0016】
そして、算出した位置信号演算部の検出誤差を、信号補正部で、位置信号演算部で演算する位置検出信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度の位置信号演算部を構成することができる。
同様に、誤差検出部で計測した検出誤差から検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を減算することにより、レゾルバ側の検出誤差を算出することができ、このレゾルバ側の検出誤差でレゾルバのN相位置信号を補正することにより、検出誤差を抑制した高精度のレゾルバを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の回転角度検出装置を構成するレゾルバを装着した回転テーブル装置の軸方向の断面図である。
【図2】図1のレゾルバの平面から見た模式図である。
【図3】1相励磁3相出力のレゾルバステータのコイルの配線構造を示す回路図である。
【図4】制御システムの構成を示すブロック図である。
【図5】図4の検出誤差算出部で実行する検出誤差算出処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】本発明における位置信号演算部の検出誤差の動作を説明する説明図である。
【図7】本発明における位置信号演算部の検出誤差を補正した場合の動作を説明する説明図である。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す制御システムの構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に適用し得る多極レゾルバを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は絶対角度位置検出装置としての3相のアブソリュートレゾルバを装着した回転テーブル装置を示す断面図である。
回転テーブル装置10は、図1に示すように、上端を開放した円筒状の固定ケース体22と、この固定ケース体22にクロスローラ軸受14を介して回転自在に支持された回転テーブル12とで構成されている。そして、固定ケース体22に対する回転テーブル12の絶対角度位置を絶対角度位置検出装置を構成するアブソリュートレゾルバ30によって検出している。ここで、アブソリュートレゾルバ30およびクロスローラ軸受14は、回転テーブル装置10の半径方向内側からその順序で半径方向の同一平面上に配置されている。
【0019】
固定ケース体22には、内周側に軸方向上方(図1の上方向)に突出した円環状の内壁体22aが形成され、内壁体22aよりも径方向外側には、軸方向上方に突出した円環状の外壁体22bが形成されている。一方、回転テーブル12には、内周側に軸方向下方(図1の下方向)に突出した円環状の内壁体12aが形成され、内壁体12aよりも半径方向外側には、軸方向下方に突出した円環状の外壁体12bが形成されている。そして、固定ケース体22および回転テーブル12は、固定ケース体22の内壁体22aが回転テーブル12の内壁体12aと外壁体12bの間に、回転テーブル12の外壁体12bが固定ケース体22の内壁体22aと外壁体22bの間に位置するように互いに跨って配置されている。
【0020】
クロスローラ軸受14は、内輪14aと、外輪14bと、内輪14aおよび外輪14bの間で転動可能に設けられた複数のクロスローラ(ころ)14cとを有して構成されている。クロスローラ14cは、直径が長さよりわずかに大きな略円筒状で、軌道上偶数番目の回転軸と、軌道上奇数番目の回転軸が互いに90°傾斜している。
内輪14aは、固定ケース体22の内壁体22aに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、固定ケース体22の内壁体22aの上端を内輪14aの下面に当接させ、内輪押え26の押圧部26bを内輪14aの上面に接触させ、内輪押え26をボルト26aで固定ケース体22の内壁体22aに締結することにより固定される。
【0021】
外輪14bは、回転テーブル12の外壁体12bに軸方向に押圧された状態で固定されている。具体的には、回転テーブル12の外壁体12bの下端を外輪14bの上面に当接させ、外輪押え28の押圧部28bを外輪14bの下面に接触させ、外輪押え28をボルト28aで回転テーブル12の外壁体12bに締結することにより固定される。
なお、固定ケース体22は、ボルト24aにより固定板24に固定され、回転テーブル12は、例えば内壁体12aの内周面が後述するモータ40の回転軸の外周面に嵌合して回転駆動される。
【0022】
アブソリュートレゾルバ30は、図2に示すように、インナーロータ式レゾルバであって、環状の成層鉄心からなる円環状のレゾルバロータ18と、レゾルバロータ18の外側に所定間隔をもって対向して配置された環状の成層鉄心からなる環状のレゾルバステータ20とを有し、レゾルバロータ18はレゾルバステータ20との間の空隙がレゾルバステータ20の中心に対して偏芯して回転自在に支持されている。レゾルバステータ20には、先端に複数極片歯20aを先端に有する極片20bが円周方向に等間隔で相数3の8倍となる24個に形成されている。そのため、アブソリュートレゾルバ30は、レゾルバロータ18の1回転につきリラクタンス変化の基本波成分が1周期となるアブソリュートレゾルバ信号を出力する。
そして、レゾルバロータ18は、ボルト18bにより回転テーブル12の内壁体12aの外周面に取り付けられている。一方、レゾルバステータ20は、ボルト20cにより固定ケース体22における内輪押え26の内周面に取り付けられ、内輪押え26と一体に固定ケース体22の内壁体22aの内周面側に固定されている。
【0023】
次に、レゾルバステータ20の配線構造を説明する。
図3は、1相励磁3相出力のアブソリュートレゾルバ30のレゾルバステータ20のコイルの配線構造を示す回路図である。
レゾルバステータ20は、環状部材の内周に等間隔で複数の極片20aと、各極片20aに巻装した3相のA相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCを備えている。
A〜C相コイルLA〜LCのそれぞれは、図2に示すように、レゾルバステータ20の内周面に120°間隔で巻装されている。
【0024】
ここで、A相コイルLAは、図2及び図3に示すように、隣接する8つの極片20bに個別に巻装された8つのコイル部LA11、LA12、……LA18が直列に接続されている。また、B相コイルLBも、図2及び図3に示すように、隣接する8つの極片20bに個別に巻装された4つのコイル部LB11、LB12、……LB18が直列に接続されている。さらに、C相コイルLCも、図2及び図3に示すように、隣接する8つの極片20bに個別に巻装された4つのコイル部LC11、LC12、……LC18が直列に接続されている。
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイル部LA11、LB11及びLC11側の端部が互いに接続されて中性点が形成され、この中性点が接続端子COMに接続されている。
【0025】
そして、A相コイルLA、B相コイルLB及びC相コイルLCのコイルLA11、LB11、LC11および第2系統のコイルLA21、LB21、LC21に、端子COMから正弦波からなる励磁信号sinωtが入力されることにより、他端側から下式に示すように、互いに位相が120°異なる3相のレゾルバ信号φA、φB及びφCを得ることができる。
A相:φA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt ……(1)
B相:φB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt ……(2)
C相:φC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt ……(3)
ここで、ADC、BDC及びCDCはA相、B相及びC相に含まれる直流成分であり、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)及びCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次の交流成分である。
また、後述するように発振器50から励磁信号の供給を受けて3相コイルLA〜LCのコイル部LA11〜LC18によりレゾルバ信号φA、φB及びφCが検出されるので、励磁用コイルを設ける必要がなく、配線構造が簡素となる。
【0026】
次に、本実施の形態に係る制御システムの構成を説明する。
図4は、制御システムの構成を示すブロック図である。
制御システムは、図4に示すように、DDモータ40と、DDモータ40の回転軸の外周面に嵌合するアブソリュートレゾルバ30と、アブソリュートレゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCに基づいて回転角度を検出する位置信号演算部としての中継装置200と、中継装置200で検出した回転角度に基づいてモータ40を制御するパワーアンプ300とを有して構成されている。
【0027】
中継装置200は、発振器50と、発振器50から出力される励磁信号を適度な信号レベルに増幅する増幅器52と、発振器50から出力される励磁信号を移相する移相器53とを有する励磁信号形成回路54を備えている。増幅器52から出力される励磁信号sinωtがアブソリュートレゾルバ30のA〜C相のコイルLA〜LCの中性点に接続された端子COMに供給される。また、移相器53は、発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせ、2相のレゾルバ信号のうちのキャリア信号の位相と同期させたRef信号を後述するR/D変換器60に供給する。
【0028】
中継装置200は、さらに、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICが入力される電流/電圧変換器56と、この電流/電圧変換器56の出力がそれぞれ入力されてSIN信号及びCOS信号に変換する3相/2相変換器57と、この3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号が入力されて、これら2相出力を移相器53から供給される移相出力に基づいて信号処理してデジタル角度信号φに変換して出力するR/D(レゾルバ/デジタル)変換器58とを備えている。
【0029】
電流/電圧変換器56では、半固定式のセンス抵抗器R1、R2及びR3を使用して、コイルLA〜LCから出力される3相検出電流IA、IB及びICを下記(4)式、(4)式及び(6)式で表される3相検出電圧VA、VB及びVCに変換する。
A相:VA=(ADC+AAC1sin(θ))sinωt …………(4)
B相:VB=(BDC+BAC1sin(θ+120°))sinωt……(5)
C相:VC=(CDC+CAC1sin(θ+240°))sinωt……(6)
ここで、AAC1sin(θ)、BAC1sin(θ+120°)およびCAC1sin(θ+240°)はA相、B相及びC相に含まれる1次(基本波)成分である。
【0030】
R/D変換器58は、移相器53から入力されるRef信号に基づいて、3/2相変換器57からのレゾルバ信号を所定周期でサンプリングし、サンプリングして得られた信号値をデジタル角度信号φとしてCPU59に出力する。具体的には、2相のレゾルバ信号は、レゾルバロータ18の1回転当たり4096(=212)×1=4096パルスのデジタル角度信号φaに変換される。つまり、0から4095までのカウントアップされたデジタル値となる。
CPU59は、R/D変換器58から出力されるデジタル角度信号φからDDモータ40の回転角度位置を演算してその回転角度位置信号をインバータ回路を含むモータ制御回路60に出力する。
【0031】
また、アブソリュートレゾルバ30のコイルLa、Lb及びLcと中継器200の入力端子tia、tib及びticとの間に信号切換回路61が介挿されている。この信号切換回路61は、例えば半導体スイッチング素子を有するアナログスイッチで構成され、アブソリュートレゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCがそれぞれ個別に入力されるスイッチ回路SWa、SWb及びSWcを有する。これらスイッチ回路SWa〜SWcのそれぞれは、並列に配置された3つのスイッチ部S1、S2及びS3を有し、これらスイッチ部S1、S2及びSeの一方の固定端子tf11、tf12及びtf13にA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが入力され、他方の固定端子tf21、tf22及びtf23が互いに接続されて中継装置200の入力端子tia、tib及びticに接続されている。
【0032】
そして、各スイッチ回路SWa、SWb及びSWcのスイッチ部S1〜S3が、選択信号SL1及びSL2によって、選択的に3段階にオンオフ制御される。
すなわち、選択信号SL1及びSL2がともに論理値“0”であるときには、図4に示すように、スイッチ回路SWaのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御される。
【0033】
このため、中継装置200の入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子ticにC相レゾルバ信号φCが入力される。
また、選択信号SL1が論理値“1”で且つ選択信号SL2が論理値“0”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御される。
【0034】
このため、中継装置200の入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが入力され、中継装置200の入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子ticにA相レゾルバ信号φAが入力される。
さらに、選択信号SL1が論理値“0”で且つ選択信号SL2が論理値“1”であるときには、スイッチ回路SWaのスイッチ部S3がオンに、スイッチ部S1及びS2がオフに制御され、スイッチ回路SWbのスイッチ部S1がオンに、スイッチ部S2及びS3がオフに制御され、スイッチ回路SWcのスイッチ部SステップS2がオンに、スイッチ部S1及びS3がオフに制御される。
【0035】
このため、中継装置200の入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが入力され、中継装置200の入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが入力され、中継装置200の入力端子ticにB相レゾルバ信号φBが入力される。
信号切換回路61に供給される選択信号SL1及びSL2は、検出誤差算出部62から入力される。この検出誤差算出部62は、CPU等の演算処理装置を備えており、CPU59から出力される回転角位置信号が入力されているとともに、検出誤差検出開始スイッチSWsが設けられている。
【0036】
そして、検出誤差算出部62は、図5に示す検出誤差算出処理を実行する。この検出誤差算出処理は、所定時間(例えば10mec)毎のタイマ割込処理として実行され、図5に示すように、先ず、ステップS1で、検出誤差検出開始スイッチSWsのスイッチ信号を読込み、この検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるか否かを判定し、これがオフ状態であるときにはステップS2に移行して、ともに論理値“0”の選択信号SL1及びSL2を信号切換回路61に出力してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0037】
一方、ステップS1の判定結果が、検出誤差検出開始スイッチSWsがオン状態であるときには、ステップS3に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS4に移行して、読込んだ回転角度位置信号に基づいて下記(7)式で表される検出誤差Error1の計測を開始する。
次いで、ステップS5に移行して、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、検出誤差Error1の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS3に戻り、検出誤差Error1の計測が完了したときには、ステップS6に移行する。
【0038】
このステップS6では、論理値“1”の選択信号SL1と論理値“0”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いでステップS7に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いで、ステップS8に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(8)式で表される検出誤差Error2の計測を開始する。
次いで、ステップS9に移行して、検出誤差Error2の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS7に戻り、計測が完了したときにはステップS10に移行する。
【0039】
このステップS10では、論理値“0”の選択信号SL1と論理値“1”の選択信号SL2とを信号切換回路61に出力し、次いで、ステップS11に移行して、CPU59から出力される回転角度位置信号を読込み、次いでステップS12に移行して、回転角度位置信号に基づいて下記(9)式で表される検出誤差Error3の計測を開始する。
次いで、ステップS13に移行して、検出誤差Error3の計測が完了したか否かを判定し、計測が完了していないときには前記ステップS11に戻り、計測が完了したときには、ステップS14に移行して、計測した検出誤差Error1、Error2及びError3をもとに下記(10)式にしたがって平均値Errormを算出し、これを中継装置200すなわち位置信号演算部の検出誤差EcとしてRAM等のメモリ63に形成した所定記憶領域に記憶してからステップS15に移行する。
【0040】
このステップS15では、下記(11)式にしたがって計測した検出誤差Error1から前記ステップS14で算出した中継装置200の検出誤差Ecを減算して、レゾルバ側の検出誤差Erを算出し、算出したレゾルバ側の検出誤差ErをRAM等のメモリ63に形成した記憶領域に記憶してから検出誤差算出処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0041】
なお、レゾルバ側の検出誤差Er1、Er2及びErの誤差波形には2次までの高調波成分が重畳しているものとする。同様に、中継装置200の検出誤差Ecについても誤差波形には2次までの高調波が重畳しているものとする。
Error1=Er1+Ec
Er1=Rdc11+Rs11sinθ+Rc11cosθ+Rs12sin2θ
+Rc12cos2θ
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(7)
ここで、Rdc11:レゾルバ側誤差波形の直流成分
s11:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
c11:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
s12:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
c12:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
dc1:位置信号演算部側誤差波形の直流成分
s1:位置信号演算部側誤差波形のSIN1次成分
c1:位置信号演算部側誤差波形のCOS1次成分
s2:位置信号演算部側誤差波形のSIN2次成分
C2:位置信号演算部側誤差波形のCOS2次成分
【0042】
Error2=Er2+Ec
Er2=Rdc21+Rs21sinθ+Rc21cosθ+Rs22sin2θ
+Rc22cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+120)+Rc11cos(θ+120)
+Rs12sin2(θ+120)+Rc12cos2(θ+120)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(8)
ここで、Rdc21:レゾルバ側誤差波形の直流成分
s21:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
c21:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
s22:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
c22:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0043】
Error3=Er3+Ec
Er3=Rdc31+Rs31sinθ+Rc31cosθ+Rs32sin2θ
+Rc32cos2θ
=Rdc11+Rs11sin(θ+240)+Rc11cos(θ+240)
+Rs12sin2(θ+240)+Rc12cos2(θ+240)
Ec=Ddc1+Ds1sinθ+Dc1cosθ+Ds2sin2θ+Dc2cos2θ
…………(9)
ここで、Rdc31:レゾルバ側誤差波形の直流成分
s31:レゾルバ側誤差波形のSIN1次成分
c31:レゾルバ側誤差波形のCOS1次成分
s32:レゾルバ側誤差波形のSIN2次成分
c32:レゾルバ側誤差波形のCOS2次成分
【0044】
Ec=(Error1+Error2+Error3)/3
=0+Ec …………(10)
となり、レゾルバ側の誤差が消え、回路側の誤差のみが得られる。
Er=Error1−Ec …………(11)
となり、レゾルバ側のみの誤差が得られる。
【0045】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
モータ制御回路60によって、モータ40が回転駆動されると、回転テーブル12に回転トルクが付与され、回転テーブル12が回転する。
このときに、アブソリュートレゾルバ30の3相コイルLA〜LCの中性点には、端子COMを介して中継装置200の励磁信号形成回路54から励磁信号sinωtが供給されている。このため、回転テーブル12と一体に回転するレゾルバロータ18との間のリラクタンス変化が検出され、3相コイルLA〜LCにおけるコイル部LA11〜LC18から3相検出電流でなるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及び中継装置200の入力端子tia、tib及びticにそれぞれ入力される。
【0046】
これら各相レゾルバ信号φA〜φCは、電流/電圧変換器56で3相検出電圧VA〜VCに変換される。これら3相検出電圧VA〜VCは3相/2相変換器57に供給されて、SIN信号及びCOS信号に変換される。
次いで、R/D変換器58で移相器53から供給される発振器50から出力される励磁信号の位相を遅らせて3相/2相変換器57から出力されるSIN信号及びCOS信号のキャリア信号の位相と同期させたRef信号に基づいてSIN信号及びCOS信号をデジタル角度信号φに変換する。
【0047】
そして、このデジタル角度信号φがCPU59に供給されて、DDモータ40の回転角度位置検出値を演算し、この回転各位置検出値をモータ制御回路60に出力することにより、このモータ制御回路60でDDモータ40を駆動制御する。
ところで、通常状態では、アブソリュートレゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号B及びC相レゾルバ信号Cには検出誤差Erを含んでいるとともに、中継装置200で算出される回転角度位置検出値にも中継装置200で発生する検出誤差Ecを含んでいる。
【0048】
したがって、CPU59から出力される回転角度位置検出値にはレゾルバ側の検出誤差Erと中継装置200で発生する検出誤差Ecが重畳されている。
そこで、本実施形態では、DDモータ40をモータ制御回路60で回転駆動して、アブソリュートレゾルバ30からA相レゾルバ信号φA、B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが出力されている状態で、検出誤差算出部62の検出誤差検出開始スイッチSWsをオン状態とすることにより、前述した図5に示す検出誤差検出処理が実行される。
【0049】
このため、先ず、信号切換回路61で、図6(a)に示すように、アブソリュートレゾルバ30から出力されるA相レゾルバ信号φA,B相レゾルバ信号φB及びC相レゾルバ信号φCが、それぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに供給されている状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて精度測定を行うことにより、前記(1)式で表される検出誤差Error1を計測する。
【0050】
次いで、信号切換回路61に対して論理値“1”の選択信号SL1及び論理値“0”の選択信号SL2を出力して、図6(b)に示すように、アブソリュートレゾルバ30のB相レゾルバ信号φB、C相レゾルバ信号φC及びA相レゾルバ信号φAをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error2を計測する。
【0051】
さらに、信号切換回路61に対して論理値“0”の選択信号SL1及び論理値“1”の選択信号SL2を出力して、図6(c)に示すように、アブソリュートレゾルバ30のC相レゾルバ信号φC、A相レゾルバ信号φA及びB相レゾルバ信号φBをそれぞれ中継装置200の入力端子tia、tib及びticに入力し、この状態で、CPU59から出力される回転角度位置検出値を測定して、検出誤差Error3を計測する。
【0052】
そして、計測した3つの検出誤差Error1〜Error3を加算して3で除することにより、検出誤差平均値Errormを算出する。
このとき、前述した(1)〜(3)式から明らかなように、検出誤差Error1に含まれるレゾルバ検出誤差Erに対して、検出誤差Error2に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が120度の位相差を有し、検出誤差Error3に含まれるレゾルバ検出誤差Erの各信号成分が240°の位相差を有することになる。
【0053】
このため、三相交流の起電力の和はSINθ+SIN(θ+120°)+SIN(θ+240°)=0となることから120度ずつ位相が異なるレゾルバの検出誤差Erを加算することにより、レゾルバの検出誤差Erは零となり、中継装置200の検出誤差のみが残ることになり、中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを容易且つ正確に算出することができる。
そして、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Errorから減算することにより、レゾルバ検出誤差Erを求めることができる。
Er=Error−Ec
=(Rdc11+RS11sinθ+RC11cosθ+RS12sin2θ+RC12cos2θ)
【0054】
したがって、図4に示すように、算出した中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecを補正パラメータとしてCPU59に接続された記憶装置を構成するRAM等のメモリ64に記憶しておき、CPU59でデジタル位置信号φからDDモータ40の回転位置検出値を演算する際に、メモリ64に記憶されている中継装置200を構成する回路の検出誤差Ecに応じた補正パラメータで回転位置検出値を補正することにより、図7(a)〜(c)に示すように、検出誤差Ecを略零とする中継装置200を構成することができる。
【0055】
同様に、レゾルバ検出誤差Erも算出することができるので、このレゾルバ検出誤差Erに基づいてアブソリュートレゾルバ30から出力される3相レゾルバ信号φA、φB及びφCを補正することにより、レゾルバ検出誤差Erを略零とするアブソリュートレゾルバ30を構成することができる。
このように構成することにより、アブソリュートレゾルバ30と中継装置200との双方の検出誤差Er及びEcを略零とすることができ、アブソリュートレゾルバ30と中継装置200とを一対一で対応させる必要がなく、両者を任意に組合せることができ、メンテナンス時のアブソリュートレゾルバ30又は中継装置200の交換を行った場合でも、高精度を維持することができる。
【0056】
次に、本発明の第2の実施形態を図8について説明する。
この第2の実施形態は、本発明を互いに90度の位相差を有する4相レゾルバ信号を出力するレゾルバに適用したものである。
すなわち、第2の実施形態では、図8に示すように、レゾルバ30に4相のコイルがスター結線で巻装され、このレゾルバ30から出力される4相のレゾルバ信号φA、φB、φC及びφDが信号切換回路61を介して中継装置200の入力端子tia、tib、tic及びtidに入力されている。ここで、信号切換回路61は、前述した第1の実施形態における3相レゾルバ信号を順次シフトさせる場合と同様に、4相レゾルバ信号を順次4段階にシフトさせるように4つのスイッチ部を有する4つのスイッチ回路SWa〜SWdが設けられている。そして、各スイッチ回路SWa〜SWdのスイッチ部の切換えが選択信号SL1及びSL2を“00”、“10”、“01”及び“11”に切り換えることにより、4段階の切換えを行うようにしている。
【0057】
ここで、4段階の切換えは、選択信号SL1が“0”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tibにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tcにC相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにD相レゾルバ信号φDが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“0”であるときには、入力端子tiaにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tibにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tcにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tidにA相レゾルバ信号φAが入力される。
【0058】
また、選択信号SL1が“0”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにC相レゾルバ信号φCが、入力端子tibにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tcにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tidにB相レゾルバ信号φBが入力される。
また、選択信号SL1が“1”、SL2が“1”であるときには、入力端子tiaにD相レゾルバ信号φDが、入力端子tibにA相レゾルバ信号φAが、入力端子tcにB相レゾルバ信号φBが、入力端子tidにC相レゾルバ信号φCが入力される。
【0059】
そして、検出誤差算出部62で、検出誤差計測時に、信号切換回路61を4段階に切り換え、そのそれぞれにおいて、CPU59から出力される回転角度位置検出値に基づいて検出誤差Error1、Error2、Error3及びError4を計測し、計測した4つの検出誤差Error1〜Errorの平均値Errorm=(Error1+Error2+Error3+Error)/4を算出することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecのみを算出することができる。
【0060】
さらに、算出した中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを例えば計測した検出誤差Error1から減算することにより、レゾルバ30の検出誤差Erのみを算出することができる。
このように、第2の実施形態によれば、4相のレゾルバ信号を出力するレゾルバ30についても、本発明を適用することができ、3相及び4相のレゾルバ信号を出力するレゾルバ30にかかわらず、5相以上の(360°/N)相で各相レゾルバ信号の総和が零となる多相出力型のレゾルバに本発明を適用することができる。
【0061】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、検出誤差Error1〜Error3又はError1〜Error4の平均値を算出するレゾルバ検出誤差Erを相殺して中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、1回目の検出誤差波形を基準として、2回目の検出誤差波形の位相を電気角(360°/N)だけ進め、3回目の検出誤差波形の位相は、電気角(360°/N)×2だけ進めるようにして、レゾルバ本体側の検出誤差Erの波形を同じ位相とし、逆に中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecの波形が(360°/N)ずつ移動したものとなる。このため、検出誤差波形の平均値を算出したときに、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Erを相殺して、レゾルバ検出誤差Erを算出し、算出したレゾルバ検出誤差Erを検出誤差Error1から減算することにより、中継装置200を構成する検出回路の検出誤差Ecを求めることができる。
【0062】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、信号切換回路61をアブソリュートレゾルバ30及び中継装置200間に介挿した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、中継装置200内に信号切換回路61を設けるようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、レゾルバステータ20の極片20bに極片歯20aを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、極片歯20aを省略することもできる。
【0063】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、ロータ側が偏芯しているアブソリュートレゾルバ30に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、レゾルバの中継装置200は、電気角360°で演算されるため、図10に示す例えば励磁コイルを巻装した極片72aを有するレゾルバステータ72と同軸的に配設されたレゾルバロータ71の凸部71aが80個所あり、全周に渡って円周方向に等間隔で配置されている80極などの多極レゾルバでも適用可能である。
【0064】
例えば、R/D変換器58の分割数12bit/電気角360°であれば、
1極×12bit= 4,096⇒±1≒±316秒
80極×12bit=327,680⇒±1≒± 3,955秒
通常、電気回路のデジタル誤差を±1パルスと仮定した場合、中継装置を構成する検出回路側の誤差を±1パルスまで補正できることとなり、その検出誤差は上記のように極めて小さくなる。
【0065】
また、上記実施形態においては、アブソリュートレゾルバ30の内側が回転するインナーロータ式で構成したが、これに限らず、アブソリュートレゾルバ30をレゾルバロータ18が外側で、レゾルバステータ20が内側となるアウターロータ式で構成することもできる。この場合には回転テーブル装置10もインナーロータ式に代えてアウターロータ式を適用する。
【0066】
また、上記実施の形態においては、本発明を回転テーブル装置10に設置したアブソリュートレゾルバに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、回転テーブル12をロータとし、固定ケース体22の内周面にステータを配置したダイレクトモータ構成とすることもでき、さらに電動モータの回転軸の回転角度を直接検出したり、他の任意の回転駆動装置に適用して回転角度を検出したりすることができる。
【符号の説明】
【0067】
10…回転テーブル装置
12…回転テーブル
14…クロスローラ軸受
18…レゾルバロータ
20…レゾルバステータ
22…固定ケース体
30…アブソリュートレゾルバ
40…DDモータ
50…発振器
52…増幅器
53…移相器
56…電流/電圧変換器
57…3相/2相変換器
58…R/D変換器、
59…CPU
60…モータ制御回路
61…信号切換回路
62…検出誤差算出部
63,64…メモリ
200…中継装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位置信号を出力するレゾルバと、
該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記N相位置信号の前記位置信号演算部のN相入力端子への入力を順次シフトさせたN段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項2】
ロータの回転角に応じて120°の位相差を有するA相、B相及びC相の3相位置信号を出力するレゾルバと、
該レゾルバから出力される3相位置信号が入力され、当該3相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部と、
前記レゾルバ及び前記位置信号演算部間と、当該位置信号演算部内との何れか一方に設けた前記3相位置信号の前記位置信号演算部のA相、B相及びC相入力端子への入力をA相、B相及びC相、B相、C相及びA相、C相、A相及びB相の3段階に切換える信号切換回路と、
該信号切換回路で入力を切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測し、計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算部の検出誤差を算出する検出誤差算出部と
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置。
【請求項3】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を補正データとして当該位置信号換算部で演算する位置検出信号を補正する信号補正部を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項4】
前記検出誤差算出部で算出した位置信号演算部の検出誤差を、当該検出誤差算出部で計測した検出誤差から減算してレゾルバ側の検出誤差を求めるレゾルバ検出誤差検出部を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の回転角度位置検出装置。
【請求項5】
ロータの回転角に応じて360°/N(Nは3以上の整数)毎の位相差を有するN相の位置信号を出力するレゾルバと、
該レゾルバから出力されるN相位置信号が入力され、当該N相位置信号を信号処理して位置検出値を演算する位置信号演算部とを有する回転角度位置検出装置の誤差検出方法であって、
前記位置信号演算部のN相入力端子への前記レゾルバからのN相位置信号を順次シフトさせてN段階に切換えて入力するステップと、
該N相位置信号を順次切換える毎に、前記位置信号演算部から出力される位置検出値に基づいて検出誤差を計測するステップと、
計測した各検出誤差の平均値に基づいて前記位置信号演算の検出誤差を算出するステップと
を備えたことを特徴とする回転角度位置検出装置の誤差検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−107907(P2012−107907A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255250(P2010−255250)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】