説明

回転選別機の選別助長装置

【課題】 流動層の隆起が高くなると該流動層の先端で反転する穀粒が増加し、シリンダーの壷穴に嵌り込んだ穀粒と干渉して該壷穴から離脱するようになり、持上げ作用による選別性能が低下する課題がある。
【解決手段】 選別胴内に形成する流動層に沿わせて選別助長板を設けた回転選別機において、回転するシリンダー1の内周に沿って選別助長板2を設けて作用面3を円弧状にし、非作用面5を平坦にした弓形の断面形状にするとともに該選別助長板2の上手側隙間6よりも下手側隙間7を狭くした円弧状空間40を形成させ、該選別助長板2の自重で穀粒を壷穴22に押圧する構成にした選別助長装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種穀粒が混在する穀物を選別処理して、整粒籾、枝梗付着粒、脱ぷ粒等に分別するように構成された回転選別機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、選別胴が回転する上向きの回転側に変位した流動層を形成させ、壷穴の持上げ作用による飛翔距離によって玄米と籾を選別する回転選別機において、該流動層の表面に近づけた選別補助板を前記選別胴の排出側に斜設した壷穴式の穀粒選別機が開示されている(例えば特許文献1参照。)。又、選別補助板を流動層の表面を覆うように斜設し、該流動層が隆起する下手側に圧力弁を設けて変動する隆起高さを一定にするとともに壷穴に選別穀粒を強制的に押込み穀粒の循環を早め、落下する穀粒を前記選別補助板の始端側に優先的に供給して分別性能を向上させる回転選別機の選別安定装置がある(例えば特許文献2参照。)。しかしながら、前者は流動層に沿わせた選別補助板が斜板で構成され、これを前記選別胴の排出側に設置したものであり、後者も同様の斜板で形成して前記選別補助板の先端に圧力弁を設けた構成である。更に、選別胴の選別始端側に設けたセンサー案内板を該選別胴内に架設した軸に装着し、供給した穀粒の層厚さを検出するとともに終端側に移送する前記案内板を複数枚設け、扇形にした案内板の下方をL字状に折曲げて前記選別胴の内周に面して回動自在に枢着したものがある(例えば特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開昭62−140987号公報(第1−3頁、第1−3図)
【特許文献2】特許第3449760号公報(第1−2頁、第1−3図)
【特許文献3】特開昭61−136443号公報(第4−6頁、第1―4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動層の隆起が高くなると該流動層の先端で反転する穀粒が増加し、シリンダーの壷穴に嵌り込んだ穀粒と干渉して該壷穴から離脱するようになり、持上げ作用による選別性能が低下する課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解消する本発明は、流動層に沿わせて選別助長板を設けた回転選別機において、回転するシリンダーの内周に沿って選別助長板を設け、該選別助長板の作用面を円弧状にするとともに非作用面を平坦にした弓形の断面形状にし、隆起する流動層を均等にするとともに円弧状の作用面が楔形になってシリンダーの内周に穀粒を順次押込む構成にした。
【0006】
選別助長板の上手側隙間よりも下手側隙間を狭く形設し、回動支点を調節側板の上手側に延設して、該選別助長板を回動可能の構成にし、隆起する高さに順応した選別助長板の自重が穀粒を押圧する選別助長装置にした。
【0007】
選別胴の長さに対して選別始端側に選別助長板を装備させ、供給側における初期段階で分別性能を向上させる構成にした。
【発明の効果】
【0008】
回転するシリンダー1の内周面に円弧状にした選別助長板2を近設し、回転方向の上手側隙間6よりも下手側隙間7を狭くした楔形の円弧状空間40を形成したので、該上手側隙間6から侵入した穀粒が壷穴22に徐々に押込まれ、持ち回り状態における該壷穴22への嵌り込みが確実にできるようになり、脱落の防止と分別性能が一層向上するとともに、回動自在に装着した前記選別助長板2をシリンダー1の選別始端側に装備し、変動する流動層Bの隆起高さを前記選別助長板2の自重で押え込みながら円弧状空間40に穀粒を充満させる自動調節構造にしたので、特に選別処理量の多い場合に分別効果を発揮するものである。又、隆起高さの変動を検出する従来技術に見られるセンサーを用いた制御装置等が省略でき、前記選別助長板2の上下動で流動層Bの自動調節が行え、構造の簡素化と低コストが実現できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の実施形態を精選処理装置に併設された回転選別機の実施例図を参照にして選別経路の概要を述べる。図1は多段に選別胴を配置した側面図であり、図2の正面図に図5の経路図を併用して選別経路を説明すると、整粒籾、枝梗付粒、脱ぷ粒、小粒籾の夫々が混在する供給材を三列に配置した多段の選別胴10に振り分けるホッパー16を機体枠17の上方に設け、先ず上段シリンダー1aに通じる供給通路31から供給材を流入させ、壷穴22aを成形した該上段シリンダー1aの持ち回り作用により、供給材から小粒籾18と脱ぷ米19をコンベヤ20が内設された受け樋21に回収し、流下樋27を介して矢印へ方向に移送させ、これを中段シリンダー1bに供給する経路と、回収されなかった大粒籾23と枝梗粒25が傾斜する前記上段シリンダー1a内を矢印ニの方向に移動し、落流樋24を落下して下段シリンダー1cに供給する選別経路にしたものである。
【0010】
小粒籾18と脱ぷ米19を受継いだ中段シリンダー1bの選別は、該脱ぷ粒19と極小籾に適応させた小径の壷穴22bを装備し、前述する持ち回り作用によって飛翔した該脱ぷ米19と極小粒籾が受け樋21に回収され、矢印ロ方向に移送して機体枠17の側方に設けた上取出し口28から、別途に設けたタンクに投入する経路と、前記中段シリンダー1b内を移動した小粒籾18を排出側に誘導し、対設した下取出し口29から図5に示す精選籾26と一緒にサイロ等に貯留する選別経路にしたものである。
【0011】
次に上段シリンダー1aの受け樋21に回収されなかった大粒籾23と枝梗粒25は、傾斜する前記上段シリンダー1a内を矢印ニ方向に移動し、上段の壷穴22aよりも壷穴22cを大きくした下段シリンダー1cに落流樋24を介して供給し、大粒の精選籾26を持ち回り作用で受け樋21に回収した後に、選別胴10の最下位置に開口する精選樋43から、図2に示す集穀コンベヤ46に流入させてサイロ等に搬送する選別経路にしたものである。一方回収されなかった枝梗粒25は、矢印ホの方向に移動して併設された脱芒機(図示せず)に受継ぎ、枝梗処理をするようにした回転選別機Aの構成にしてある。
【0012】
このような多段構造にした選別胴10の駆動モータをインバータ付きのモータM1、M2、M3にして機体枠17の側方に設け、各段ごとに駆動するチエン30をコンベヤ軸15に軸着したスプロケット47に巻回させ、各段の該コンベヤ軸15を分別する穀粒に応じた最適状態にするために、シリンダー1a、1b、1cの回転速度を変速可能にした駆動装置にしたものである。
【0013】
図4は選別助長板を設けた選別胴の拡大側面図であって、図3の選別助長板を設けた選別胴の断面図と図6の斜視図を併用して該選別胴の構造を説明すると、落流樋24から流入した大粒籾23と枝梗粒25が下段シリンダー1cとともに回転するコンベヤ20の先端から該下段シリンダー1cの頭部11に流入し、続いてコンベヤ軸15に嵌着した入口側板50に穿った外通孔51を通過して、回転方向の上昇側に変位した流動層Bを形成し、分別する大粒籾3が大径にした壷穴22cに嵌り込み、持ち回り作用によって中心部に設けた受け樋21に回収され、前記コンベヤ20で矢印ハ方向に移送するものである。
【0014】
次に本発明の要旨である選別助長板の構成を説明すると、多段構造にした選別胴10の落流樋24側から中央付近に至る間(以下選別始端側とする)に選別助長板2を装着したものであって、受け樋21から下方に延設した支持板32で断面形状を弓形にした整流翼33を上下動可能に装着し、シリンダー1の内周面と該整流翼33の作用面3で形成する円弧状空間40を楔状にした選別助長板2の構成にしたものである。このような円弧状空間40は、各段のシリンダー1a、1b、1cに流入する供給材と穀粒量の変化によって流動層Bの隆起高さが異なる(図5参照。)。これに対応する前記円弧状空間40の容積を各段で変化させたものであって、供給材の全量が流入する上段シリンダー1aに比べて下段シリンダー1cの空間容積を少なく設定したものである。
【0015】
図3の選別助長板を設けた選別胴の断面図と図4の選別胴の拡大側面図を併用して選別助長板の構造を説明すると、円弧状空間40を形成する選別助長板2の作用面3を円弧状にするとともに、非作用面5を平坦にした弓形の断面形状にした整流翼33にし、その両側に固着した調節側板36に設けた回動支点Pを該整流翼33の始端部8から上手側に離間させ、他端に長穴37を穿ち矢印イの方向に上昇可能な構成にして前記始端部8側も変動可能な構成にしたものである。このような回動支点Pにしたので、選別助長板2の自重で流動層Bの表面を効果的に押圧するようになり、その上昇位置を鎖線で図3に示してある。
【0016】
このように回動する支持構造は、受け樋21の下方に延設した支持板32の一側方に支持軸52を設け、調節側板36に設置した支持パイプ55に該支軸52を嵌入させて軸端を割ピン53で係止した回動支点Pにし、前記支持板32の他端にはストッパーピン38を対向するように突出させ、該調節側板36の長穴37に嵌挿して該回動支点Pを中心に選別助長板2が上下動するものである。尚、図示する実線位置の円弧状空間40は、該ストッパーピン38が長穴37の上端に接当して自重で下降した状態を保持したものである。
【0017】
整流翼33の装着位置は、シリンダー1の回転方向に対して上昇側に変位させて設けてあり、円弧状空間40に穀粒が侵入して流動層Bが成長するにともない矢印イ方向に前記整流翼33が押上げられ、変動する隆起高さを自重で均等化させながら壷穴22に分別する穀粒を押込み、持ち回り作用時に嵌り込んだ穀粒が離脱したり落下することを減少させ、分別する性能を向上させた選別助長装置にしてある。
【0018】
各段のシリンダー1で持ち回る穀粒が受け樋21に回収されずに反転して流下する経路は、平坦にした整流翼33の非作用面5を穀粒が滑落して上手側隙間6から再度円弧状空間40に侵入する循環運動を行い、この流下物を流動層Bの下層に侵入させることによって、分別する穀粒が壷穴22に優先して嵌り込み易くなり、シリンダー1の選別始端側における選別性能を一層促進させる選別助長装置にしたものである。
【0019】
各段のシリンダー1に設けた選別助長板2a、2b、2cを円弧状空間40の上側に並設するが、発生する流動層Bの隆起高さが各段によって異なり、たとえば上段シリンダー1aでは供給材の全量で流動層Bを形成するために、中下段シリンダー1b、1cに設置する整流翼33の上手側隙間6と下手側隙間7よりも広く設定するものである。又、円弧状の作用面3全体を変動させるために回動支点Pを調節側板36の上手側に設け、始端部8から離間させた支点位置にして前記円弧状空間40の変化に追随し易くした構成にしたので、選別助長板2の自重が押圧力になって該流動層Bの表面に有効に作用するようになり、しかも、隆起高さの変化に応じた重力で壷穴22に分別する穀粒を嵌め込む自動調節装置である。尚、選別助長板2の自重を調節するためにバネの付勢力や前記整流翼33にウエイト等の装着を可能にすれば回転選別機Aの性能が一層改善できる。
【0020】
以上説明したように、シリンダー1の内周面に選別助長板2を近設し、その上手側隙間6よりも下手側隙間7を狭くして楔形の円弧状空間40を形成したので
、上手側隙間6から侵入した穀粒が壷穴22に徐々に押込まれ、該壷穴22への嵌り込みが確実に実施できるようになり、脱落の防止と選別性能が一層向上するとともに前記選別助長板2をシリンダー1の選別始端側に装備し、変動する流動層Bの隆起高さを自重で押え込みながら前記円弧状隙間40に穀粒を充満させる自動調節構造になり、特に選別する処理量の多い場合の分別効果を促進させるものである。又、前記選別助長板2の上下動で流動層Bの自動調節が行え、従来のセンサー等を用いた検出装置に比べて構造の簡素化と低コストが実現できる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0021】
異種穀粒が混在する供給材から多種類の穀粒を簡素化した選別構造で効率よく分別する回転選別機に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】多段に選別胴を配置した側面図である。
【図2】多段に選別胴を配置した正面図である。
【図3】選別助長板を設けた選別胴の断面図である。
【図4】選別助長板を設けた選別胴の拡大側面図である。
【図5】多段にした選別胴の経路図である。
【図6】選別助長板の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
B・・流動層 P・・回動支点
1・・シリンダー 2・・選別助長板 3・・作用面
5・・非作用面 6・・上手側隙間 7・・下手側隙間
8・・始端部 10・・選別胴 15・・コンベヤ軸
16・・小粒籾 19・・脱ぷ粒 20・・コンベヤ
21・・受け樋 22・・壷穴 23・・大粒籾
24・・落粒樋 25・・枝梗粒 26・・精選粒
27・・流下樋 32・・支持板 33・・整流翼
36・・調節側板 40・・円弧状空間
矢印イ・・選別助長板の上昇方向 矢印ロ・・脱ぷ粒の移送方向
矢印ハ・・大粒籾の移送方向 矢印ニ・・大粒籾、枝梗粒の搬送方向
矢印ホ・・枝梗粒の搬送方向 矢印ヘ・・脱ぷ粒、小粒籾の移送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壷穴式の選別胴が回転する上昇側に被選別物が流動層を形成し、この流動層に沿わせて選別助長板を設けた回転選別機において、回転するシリンダー(1)の内周に沿って選別助長板(2)を設け、該選別助長板(2)の作用面(3)を円弧状にするとともに非作用面(5)を平坦にした弓形の断面形状にしたことを特徴とする回転選別機の選別助長装置。
【請求項2】
選別助長板(2)の上手側隙間(6)よりも下手側隙間(7)を狭く形設し、
回動支点(P)を調節側板(36)の上手側に延設して、前記選別助長板(2)を回動可能の構成にしたことを特徴とする請求項1に記載した回転選別機の選別助長装置。
【請求項3】
選別胴(10)の長さに対して選別始端側に選別助長板(2)を装備させたことを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載した回転選別機の選別助長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−55754(P2006−55754A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−240454(P2004−240454)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000005164)セイレイ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】