説明

囲い込み袋および囲い込み方法

【課題】被覆材が付着させられている鉄骨を囲い込むとともに、建物の解体時には、閉鎖作業空間を鉄骨の周囲に形成しつつ、被覆材が付着させられている鉄骨を覆うことができる囲い込み袋を提供すること。
【解決手段】本発明は、被覆材Tが付着させられた鉄骨2を覆う囲い込み袋1であって、断面略U字の筒型形状の袋本体32と、袋本体の側壁42を折りたたみ状態に維持する止め部52、54と、作業口40と、を備え、止め部の係止により側壁が折りたたみ状態に維持され、鉄骨の外形に沿って鉄骨を覆う第1の囲い込み状態と、止め部が解放されて側壁が延ばされ、鉄骨の周囲に所定の空間が形成された状態で鉄骨を覆う第2の囲い込み状態とを採ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、囲い込み袋および囲い込み方法に関し、詳細には、耐火被覆材等が付着している鉄骨を覆う囲い込み袋、およびこのような袋を使用した鉄骨の囲い込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の梁等に使用される鉄骨の表面に被覆材を付着させ、鉄骨の耐熱性(耐火性)等を向上させることが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような被覆材は、アスベストのように建物の完成後に人体に有害であることが判明すると、その建築物が存続している間は被覆材からの粉塵の発散を防止するためこれを囲い込み、建築物の解体時等には周囲への粉塵の発散を防止しつつ被覆材を鉄骨から除去しなければならない事態を生じさせることになる。
【0004】
このような事態に対処するために、建物の存続中は、被覆材が付着させられた梁などの鉄骨をボードで囲い込んでおき、建物の解体時には、被覆材の飛散防止のため解体現場全体をビニールシート等で隔離した状態で被覆材を鉄骨から剥がし、その後、建物自身の解体を行うという手法が採られている。
【0005】
しかしながら、上記手法では、被覆材が付着させられている梁などの鉄骨をボードで囲い込む作業は煩雑であり、さらに、建物の解体時には、解体現場をビニールシート等で囲い込むという別の作業が必要となるため、この手法には費用および手間がかさむという問題があった。
【0006】
このような問題は、アスベストに限らず、他の被覆材、例えばロックウールを鉄骨に付着させた場合にも生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、建物の存続中は、被覆材が付着させられている鉄骨を囲い込むとともに、建物の解体時には、作業者が外部から鉄骨の被覆材を除去することができるようにする閉鎖作業空間を鉄骨の周囲に形成しつつ、被覆材が付着させられている鉄骨を覆うことができる囲い込み袋を提供することを目的とする。
また、本発明は、上述したような囲い込み袋を使用した囲い込み方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明によれば、建物の天井に配置され被覆材が付着させられた鉄骨を覆う囲い込み袋であって、前記鉄骨に沿って延びる断面略U字の筒型形状の袋本体と、前記袋本体の側壁を折りたたみ状態に維持する止め部と、前記側壁に形成された作業口と、を備え、前記止め部の係止により側壁が折りたたみ状態に維持され、前記鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆う第1の囲い込み状態と、前記止め部が解放されて前記側壁が延ばされ、前記鉄骨の周囲に所定の空間が形成された状態で前記鉄骨を覆う第2の囲い込み状態とを、採ることができる、ことを特徴とする囲い込み袋が提供される。
なお、「鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆う」とは、囲い込み袋の袋本体が鉄骨の輪郭を覆うことを指す。
【0009】
本発明の囲い込み袋は、袋本体のU字状の各端を鉄骨の両側で天井に連結することによって、鉄骨を覆って天井に取付けられる。そして、建物が使用されている期間は、第1の囲い込み状態で鉄骨を覆うことによって、被覆材が付着させられている鉄骨を見栄えよく目隠しし且つ鉄骨に付着させられている被覆材の飛散を防止できる。また、建物を解体する際には、袋本体の側壁を折りたたみ状態に維持する止め部を解放して囲い込み袋を第2の囲い込み状態にすることにより、被覆材が付着させられている鉄骨を覆った状態で鉄骨の回りに閉鎖作業空間を形成することができる。この閉鎖作業空間によって、作業口から工具を差し込んで鉄骨に付着させられている被覆材を除去する作業が可能となる。
したがって、止め部を解放するという簡単な作業のみで、囲い込み袋を、鉄骨に付着した被覆材を除去する作業が可能な状態に移行させることができる。
【0010】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記側壁の上部が透明材料で形成され、前記作業口が前記透明材料で形成されている部分に設けられている。
このような構成によれば、閉鎖作業空間内の被覆材が付着された鉄骨を、透明材料を通して視認しながら被覆材の除去作業が行われるので、除去作業の効率が向上するとともに、確実な除去を行うことが可能となる。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記左右の両側壁に、長手方向に延びる切り離し可能部分と、該切り離し可能部分の下方に配置されたファスナとが設けられている。
このような構成によれば、被覆材の除去作業が完了すると、ファスナにより左右の側壁を連結し、鉄骨から除去した被覆材が溜まっている閉鎖作業空間の底部を閉鎖した後、この閉鎖された閉鎖作業空間底部を構成する袋本体を切り離して廃棄することができるので、鉄骨から除去した被覆材の廃棄が容易になる。
【0012】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記ファスナ近傍に空気抜き部材が取付けられている。
このような構成によれば、閉鎖した下部空間から空気を抜くことができる。
【0013】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記袋本体の下方部分が前記側壁部分に沿って切り離し可能であり、該下方部分が上方部分にファスナによって接続されている。
このような構成によれば、除去された被覆材が収容される下方部分を切り離すことができるので、被覆材の廃棄の処理が容易になる。
【0014】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記下方部分が、上方に向かって開放した複数の直方体状部分を備えている。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記直方体状部分は、開放した上端が閉鎖可能である。
このような構成によれば、除去された被覆材が収容された空間を閉鎖できるので、被覆材が飛散することを防止できる。
【0015】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記空気抜き部材にフィルタが設けられている。
このような構成によれば、空気抜き部材のフィルタによって、閉鎖作業空間の底部から空気を抜く際に、空気と共に被覆材が閉鎖作業空間外に飛散することが防止される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、建物の天井に配置され被覆材が付着させられた鉄骨を断面略U字の筒型形状の袋本体で覆う囲い込み方法であって、前記袋本体の側壁を折りたたんだ状態で、前記袋本体のU字の両端を前記鉄骨の両側で前記天井に連結し、前記袋本体で前記鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆うステップと、前記側壁の折りたたみを解放し前記側壁を延ばして、前記鉄骨の周囲に前記袋本体で覆われた所定の作業空間を形成するステップと、前記側壁に形成された作業口から工具を前記作業空間内に挿入し、前記鉄骨に付着させられている被覆材を除去するステップと、を備えている、ことを特徴とする囲い込み方法が提供される。
【0017】
このような構成によれば、建物が使用されている期間は、被覆材が付着させられている鉄骨を、袋本体で見栄の良い状態で囲い込むことよって被覆材の飛散を防止し、建物を解体する際には、被覆材が付着させられている鉄骨を覆った状態で鉄骨の回りに閉鎖作業空間を形成することができ、作業口から閉鎖作業空間内に工具を差し込んで鉄骨に付着させられている被覆材を除去する作業が可能となる。したがって、止め部を解放するという簡単な動作で、囲い込み袋を、鉄骨に付着した被覆材を飛散させずに除去する作業が可能な状態に移行させることができる。
【0018】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記袋本体の一方の側壁を他方の側壁に結合させて前記作業空間の底部を閉鎖するステップを更に備えている。
このような構成によれば、鉄骨から除去した被覆材の飛散を効果的に防止できる。
【0019】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記閉鎖された作業空間の底部を前記天井に連結されている袋本体から分離するステップを更に備えている。
このような構成によれば、除去した被覆材を廃棄する作業が簡略化される。
【0020】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記袋本体の下方部分を上方部分から切り離すステップを更に備えている。
本発明の他の好ましい態様によれば、前記下方部分の上端を閉じて、前記下方部分の内部を閉鎖するステップを更に備えている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、建物の存続中は、被覆材が付着させられている鉄骨を囲い込むとともに、建物の解体時には、作業者が外部から鉄骨の被覆材を除去することができるようにする閉鎖作業空間を鉄骨の周囲に形成しつつ、被覆材が付着させられている鉄骨を覆うことができる囲い込み袋が提供される。
また、本発明によれば、上述したような囲い込み袋を使用した囲い込み方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の第1の実施形態の囲い込み袋1について説明する。図1は、第1の囲い込み状態にある囲い込み袋1の模式的な断面図であり、図2は、第2の囲い込み状態にある囲い込み袋1の模式的な断面図である。
本実施形態の囲い込み袋1は、建物の天井Cに梁として取付けられ、アスベスト等の耐火被覆材Tが付着させられた鉄骨(H鋼)2を覆うために使用される囲い込み袋である。
【0023】
囲い込み袋1は、断面略U字の筒型形状の袋本体4を備えている。袋本体4の幅、すなわちU字の底の幅は、鉄骨2の幅より若干広めに設定されている。また、袋本体4の上下方向の長さ(高さ)、すなわち側壁6、6の上下方向の長さは、鉄骨2の上下方向長さ(高さ)の3倍より若干長い寸法に設定されている。なお、袋本体4の長さは、鉄骨2の長さに応じて設定される。
【0024】
側壁6の上部は、透明材料で作られた透明部分6a(一点鎖線)で構成され、この透明部分6aの上下方向長さは、鉄骨2の高さ(上下方向の長さ)より長く設定されている。従って、側壁6が延ばされた後述の第2の囲い込み状態となったとき、囲い込み袋1の外側から、透明部分6aを通して内側の鉄骨2を視認することができる。また、側壁6の下部は、不透明材料、例えば白色布で作られた不透明部分6b(実線)で構成されている。
【0025】
透明部分6aの材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂系フィルム、フッ素樹脂系フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、その他の合成樹脂系フィルム、塩化ビニル樹脂系をポリエステル繊維布にコーティングした材料、ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン繊維布にコーティングした材料等が挙げられる。
【0026】
また、不透明部分6bの材料としては、塩化ビニル系樹脂をポリエステル繊維布にコーティングした材料、ポリオレフィン樹脂をポリオレフィン繊維布にコーティングした材料、フッ素系樹脂をポリエステル繊維布にコーティングした材料、フッ素系樹脂をガラス繊維布にコーティングした材料、ガラス繊維等が挙げられる。
【0027】
透明部分6aには、複数の作業口8が設けられている。作業口8は、気密性を有する膜で作られた円筒状部材から構成され、一方の開口端が透明部分6aに形成された開口に接続されている。作業口8の他方の開口端(先端)は、ゴム等の弾性部材によって閉鎖可能に構成されている。
【0028】
又、両側壁6の不透明部分6bの内面の上部(透明部分6aとの境界近傍)には、袋本体4の長手方向(図面の奥行き方向)に延びる面ファスナ10が両側壁6の全長にわたって取付けられ、左右の側壁6の面ファスナ10を結合させることによって、袋本体4内の空間を上下に分割できるように構成されている。
【0029】
さらに、各面ファスナ10の上方には、袋本体4の長手方向に沿って延びる切り離し可能部分12が形成され、この部分で袋本体4の側壁6を上下に分割できるように構成されている。本実施形態では、この切り離し可能部分12は、スライドファスナ(いわゆるジッパ)によって構成され、スライダSを移動させることにより側壁6を上下に分割できるように構成されている。
【0030】
また、ファスナ10には空気抜き部材14が取付けられている。空気抜き部材14は、フィルタを内蔵したチェックバルブであり、本実施形態では、袋本体4の長手方向に沿って、数m間隔で配置されている。
【0031】
さらに、不透明部分6bの上下方向の略中間位置には、不透明部分6bから分岐して外方に向かって延びるベロ6cが袋本体4の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0032】
このように構成された囲い込み袋1は、袋本体4の両側壁6の端部6dが、それぞれ、鉄骨2の両側で天井板16に連結されることによって、鉄骨2を覆って天井に固定されている。囲い込み袋1は、側壁6、6が折りたたまれ、鉄骨2の外形に沿って鉄骨2を覆う第1の囲い込み状態と、側壁6が延ばされて鉄骨2の周囲に空間が形成された状態で鉄骨2を覆う第2の囲い込み状態(図2)とを採ることができるが、第1の囲い込み状態が初期状態であり、当初は、この状態で鉄骨を覆って天井Cに取付けられている。
【0033】
なお、本発明において、「鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆う」とは、上述したように、囲い込み袋の袋本体が鉄骨の輪郭を覆うことを指し、図1に示されているようにH鋼の外周を矩形状に覆う状態もこれに含まれる。
【0034】
本実施形態の第1の囲い込み状態では、囲い込み袋1は、図1に示されているように、袋本体4の側壁6が、不透明部分6bを外側にして3重に折りたたまれた断面U字形状とされ、鉄骨4を下方から覆っている。
【0035】
袋本体4は、図3の拡大図に示されているように、袋本体4の両側壁6の端部6dが、天井Cにねじ止めされた膜体固定用の断面略U字状のレール18内に第1の固定用スプリング20を用いて固定されることにより天井Cに固定されている。さらに、囲い込み袋1は、側壁6のベロ6cが、レール18内の袋本体4の側壁6の端部6dの外方側位置で、第2の固定用スプリング22を用いて固定されることにより、第1の囲い込み状態に維持されている。
【0036】
第1および第2の固定用スプリング20、22は、図4に示されているような蛇行した形状を有するスプリングであり、蛇行の幅wが、レール18の内法より若干大きく設定され、レール18内に配置したとき、レール18との間で、側壁6の端部6dまたはベロ6cを挟持して固定できるように構成されている。
【0037】
このような構成によって、第2の固定用スプリング22をレール18から取り外すことにより、ベロ6cがレール18から解放され、袋本体4の不透明部分6bが下方に垂れ下がり、囲い込み袋1を第1の囲い込み状態(図1)から、第2の囲い込み状態(図2)に移行させることができる。
【0038】
袋本体4の長手方向両側端は、図5に示されているように、鉄骨2に対応する部分が開口し、鉄骨2より下方は不透明部分6bと同一材質で構成された蓋24によって覆われている。
梁として使用される鉄骨(H鋼)2は、端部が上下方向に延びる柱等に接続されて終端しているので、袋本体4の長手方向両端の開口している部分の周縁を、この柱に接続することにより、袋本体4によって囲まれた空間を閉鎖空間とすることが可能となる。
【0039】
次に、囲い込み袋1の動作及び囲い込み袋1を用いた鉄骨の囲い込み方法を説明する。
上述したように、本実施形態の囲い込み袋1は、当初は、図1に示す第1の囲い込み状態(初期状態)で鉄骨2を覆うように建物の天井に取付けられている。建物が使用されている期間は、この第1の囲い込み状態が維持される。
【0040】
建物を解体する際あるいは鉄骨の付着させられているアスベスト等の被覆材を除去する際には、足場等に登った作業者Oが、側壁6が折りたたまれた第1の囲い込み状態に維持している第2のスプリング22をレール18から外すことによりベロ6cをレール18から解放し、囲い込み袋1を第1の囲い込み状態から第2の囲い込み状態(図2に示されている展開状態)に移行させ、鉄骨2の回りに閉鎖作業空間を形成する。
【0041】
次いで、透明部分6aに形成されている作業口8から杖の付いたヘラHを袋本体4で覆われた空間内に差し込み、鉄骨2の表面に付着させられている被覆材Tを掻き取り、掻き取った被覆材T’を閉鎖作業空間の底部に落とす(図2)。
【0042】
本実施形態の囲い込み袋1では、このような第2の固体用スプリング22を外してベロ6cを解放するという簡単な動作で、囲い込み袋1を、鉄骨2に付着した被覆材Tを除去する作業が可能な状態に移行させることができる。このとき、作業口8の開口端(先端)は、ヘラHの杖が通された状態でゴムあるいはひもで閉鎖されるので、掻き落とされた被覆材が、袋本体4で覆われた閉鎖作業空間から外部に飛散することはない。また、透明部分6bを通して被覆材Tを視認しながら作業を進めることができるので被覆材Tを確実に掻き落とすことができる。
【0043】
鉄骨2からの被覆材Tの掻き落とし作業が終了すると、両側壁6の面ファスナ10を結合させて、掻き落とした被覆材T’が溜まっている閉鎖作業空間の底部を密閉する(図6)。次いで、側壁6に形成されている切り離し可能部分を構成するスライドファスナ12のスライダSを摺動させて、掻き落とした被覆材T’が溜まっている閉鎖作業空間の底部を切り離なす(図7)。
【0044】
さらに、分離された閉鎖作業空間内の空気を、空気抜き部材14を通して抜いた後、切り離された底部の上端に位置するスライドファスナ12同士を結合させ(図8)、掻き取られた被覆材T’とともに廃棄する。
このような作業によって、大がかりな覆いを設けることなく、被覆材の除去を安全に行なうことができる。
【0045】
上記第1の実施形態では、袋本体4は、側壁6の上部が透明部材で、下部が不透明部材で構成されていたが、袋本体を2重構造とし、内側の袋本体26を透明材料で、外側のカバー袋28を不透明材料で構成したものでもよい。
【0046】
このような構成では、透明材料の袋本体26が、上記実施形態の袋本体6と同様の寸法形状とされ、外側のカバー袋28が、鉄骨2の外形に沿って鉄骨2を覆う寸法形状とされている。そして、図9に示されているように、折りたたんだ状態の袋本体26で鉄骨2を覆い、さらに、折りたたんだ状態の袋本体26をカバー袋28で覆うことによって、袋本体26を第1の囲い込み状態に維持している。
【0047】
袋本体26の端部とカバー袋28の端部は、それぞれ、上記実施形態の袋本体6の端部とベロ6cと同様にして天井Cに固定されているので、第2の固定用スプリングを取りはずことによって、カバー袋28を取り外し、袋本体26を第2の囲い込み状態に移行させ、上記実施形態と同様に、被覆材Tの除去作業を行うことができる。
【0048】
また、袋本体の天井への固定方法は、レール、スプリング等を使用した上記実施形態の方法に限定されるものではない。
【0049】
次に本発明の第2の実施形態の囲い込み袋30について説明する。図10は、第1の囲い込み状態にある囲い込み袋30の模式的な断面図であり、図11は、第2の囲い込み状態にある囲い込み袋30の模式的な断面図であり、図12は、第2の囲い込み状態にある囲い込み袋30の一部分を破断した模式的な斜視図である。
【0050】
本実施形態の囲い込み袋30も第1の実施形態の囲い込み袋1と同様に、建物の天井Cに梁として取付けられ、アスベスト等の耐火被覆材Tが付着させられた鉄骨(H鋼)2を覆うために使用される囲い込み袋である。
【0051】
図10に示されているように、囲い込み袋30は、鉄骨2を覆う袋本体32と、この袋本体32の外側を覆うカバー袋34とを備えている。袋本体32は、上方の左右の側壁部36と、側壁部36の下方に連続して配置された複数の収容部38とを備えている。
【0052】
側壁部36は、例えば、塩化ビニル樹脂系フィルム、フッ素樹脂系フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム、その他の合成樹脂系フィルム、塩化ビニル樹脂系をポリエステル繊維布にコーティングした材料、ポリオレフィン系樹脂をポリオレフィン繊維布にコーティングした材料等の透明材料で構成されている壁体である。
【0053】
そして、側壁部36は、鉄骨2の上下方向長さ(高さ)より若干長い上下方向の長さを有し、鉄骨2の幅より若干長い間隔をおいて配置され、第1の実施形態の囲い込み袋1の複数の作業口8と同様に構成された作業口40を備えている。
【0054】
また、収容部38は、上方に向かって開放した直方体形状を有し(図13)、塩化ビニル系樹脂をポリエステル繊維布にコーティングした材料、ポリオレフィン樹脂をポリオレフィン繊維布にコーティングした材料、フッ素系樹脂をポリエステル繊維布にコーティングした材料、フッ素系樹脂をガラス繊維布にコーティングした材料、ガラス繊維等の不透明材料で形成されている。
【0055】
側壁部36の下端部36bと、収容部38の長辺側側壁42の上端部42aには、略全長にわたって延びる面ファスナ44、46がそれぞれ取付けられ、この面ファスナ44、46によって、収容部38が側壁部36の下方に着脱自在に接続されている。
【0056】
また、側壁部36によって構成される袋本体32の上方部分の長手方向両端は、側壁部36の端を建物の壁あるいは柱に接続したり、または、側壁部36の端に閉鎖用の膜材料を取付けること等によって閉鎖されるのが好ましい。
【0057】
収容部38の短辺側側壁48の上端部48aにも略全長にわたって延びる面ファスナ50が取付けられ、側壁部36の下方で隣接する収容部38の短辺側側壁48同士は、この面ファスナ50によって上端が接続されている。
【0058】
囲い込み袋30は、収容部38が折りたたまれ鉄骨2の外形に沿って鉄骨2を覆う第1の囲い込み状態(図10)と、収容部38が延ばされて鉄骨2の周囲に閉鎖作業空間が形成された状態で鉄骨2を覆う第2の囲い込み状態(図11)を採ることができるが、第1の囲い込み状態が初期状態であり、当初は、この状態で鉄骨2を覆って天井Cに取付けられている。
【0059】
また、本実施形態では、収容部38を折りたたみ状態に維持する止め部として機能する面ファスナ52、54が、収容部38の外面に取付けられている。この面ファスナ52、54は、収容部38が、図10に示されているような状態で折りたたまれたとき対向する位置に配置され、互いに係合することにより、収容部38を図10の折りたたみ状態に維持する。
本実施形態では、さらに、第1の囲い込み状態において、袋本体32の囲い込み袋30がカバー袋34によって覆われている。
【0060】
袋本体32およびカバー袋34は、側壁部36の上端部36aおよびカバー袋34の上端部34aが、鉄骨2に沿って延びる取付け金具56の下端部56bに接続されることによって天井Cに取付けられている。
【0061】
詳細には、図14に示されているように、袋本体32は、側壁部36の下方に収納部38を接続し収納部38を折りたたんだ状態で、側壁部36の上端部36aに沿って取付けられた面ファスナ58を、取付け金型56の下端部56bの内側に取付けられた面ファスナ60に接続することにより、鉄骨2を覆って天井Cに取付けられる。
【0062】
一方、カバー袋34は、上端部34aの内側に沿って取付けられた面ファスナ62を、取付け金具56の下端部56bの鉄骨2と反対側の面(外側面)に取付けられている面ファスナ64に接続することにより、鉄骨2を覆う袋本体32を覆って天井Cに取付けられる。
【0063】
このような構成によって、カバー袋34の上端部34aの面ファスナ62を、取付け金具56の下端部56bの外側の面ファスナ64から剥がすことによって、カバー袋34を取り外すことができる。
【0064】
さらに、収容部38の外面に取付けられ収容部38を折りたたみ状態に維持している面ファスナ52、54の係合を解除(剥がす)ことによって、収容部38を図10の折りたたみ状態から図11、12の展開状態に移行させて、囲い込み袋30を、鉄骨2の外形に沿って鉄骨2を覆う第1の囲い込み状態(図10)から、収容部38が延ばされて鉄骨2の周囲に閉鎖作業空間が形成された状態で鉄骨2を覆う第2の囲い込み状態(図11)に移行させることができる。
【0065】
このように構成されている第2の実施形態の囲い込み袋30では、第1の実施形態の囲い込み袋と同様に、鉄骨の付着させられているアスベスト等の被覆材を除去する際には、第1の囲い込み袋状態から第2の囲い込み袋に移行させて、被覆材Tの除去作業を行う。除去された被覆材は閉鎖作業空間の底部、即ち、収容部38内に溜められる。
【0066】
鉄骨2からの被覆材Tの掻き落とし作業が終了すると、収容部38の長辺側側壁42の上端部42aの面ファスナ46を側壁部36の下端部36bの面ファスナ44から外して、収容部38を側壁部36から取り外し、さらに、隣接する収容部38間で、短辺側側壁48を上端で接続している面ファスナ50を開放し、各収容部38を一つづつに切り離す。
【0067】
次いで、収容部38の対向する長辺側側壁42の上端部42a同士を密着させて、収容部38を図15に示されているような三角柱形状に移行させ収容部38の内部を封止し、さらに、収容部38の対向する長辺側側壁42の上端部42aの面ファスナ46同士を係合させ、収容部38を三角柱形状から展開しないようにする。次いで、収容部38内の空気を、図示しない空気抜き部材を通して抜いた後、収容部38を内部に溜った被覆材とともに廃棄する。
このような作業によって、大がかりな覆いを設けることなく、被覆材の除去を安全に行うことができる。
【0068】
なお、収容部38の長辺側側壁42の上端部42aに取付けられている面ファスナ46は、対向する長辺側側壁42の上端部42aに取付けられている面ファスナ46と係合可能な形状が選択され、他の面ファスナも同様に、上述した相手方の面ファスナと係合(噛合)可能な形状が選択され、また空気抜き部材14と同様の部材(図示せず)が設けられている。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
上記第1実施形態では、作業口8、40の円筒状部材の開口端(先端)は、ゴム等の弾性部材によって閉鎖される構成であったが、図16および図17に示されているように、ひも70で円筒状部材72の開口端を閉鎖する構成でも良い。さらに、図18および図19に示されているにように、側壁には開口部を設けず、例えば十文字のスリット74のみを形成し、そのスリット74を囲むように円筒状部材76を取付けた構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】第1の囲い込み状態にある第1実施形態の囲い込み袋の模式的な断面図である。
【図2】第2の囲い込み状態にある第1実施形態の囲い込み袋の模式的な断面図である。
【図3】第1実施形態の袋本体の天井Cへの接続部の構造を拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】第1実施形態の袋本体を天井Cに固定するために使用するスプリングの平面図である。
【図5】第1実施形態の袋本体の長手方向端部の構成を示す模式的な斜視図である。
【図6】第1実施形態の掻き落とされた被覆材T’の処理方法を示す模式的な断面図である。
【図7】第1実施形態の掻き落とされた被覆材T’の処理方法を示す模式的な断面図である。
【図8】第1実施形態の掻き落とされた被覆材T’の処理方法を示す模式的な断面図である。
【図9】第1実施形態の変形例の囲い込み袋の構成を示す模式的な断面図である。
【図10】第1の囲い込み状態にある第2実施形態の囲い込み袋の模式的な断面図である。
【図11】第2の囲い込み状態にある第2実施形態の囲い込み袋の模式的な断面図である。
【図12】第2の囲い込み状態にある第2実施形態の囲い込み袋の一部分を破断した模式的な斜視図である。
【図13】第2実施形態の囲い込み袋の収容部の構造を示す斜視図である。
【図14】第2実施形態の囲い込み袋の天井への取付け部材の構造を示す模式的な図面である。
【図15】第2実施形態の囲い込み袋の収容部が封止された状態を示す斜視図である。
【図16】作業口の変形例を示す斜視図である。
【図17】作業口の変形例を示す断面図である。
【図18】作業口の他の変形例を示す斜視図である。
【図19】作業口の他の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1:囲い込み袋
2:鉄骨
4:袋本体
6:側壁
6a:透明部分
6b:不透明部分
8:作業口
10:ファスナ
12:分離可能部分
14:空気抜き部材
T:被覆材
C:天井
O:作業者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の天井に配置され被覆材が付着させられた鉄骨を覆う囲い込み袋であって、
前記鉄骨に沿って延びる断面略U字の筒型形状の袋本体と、
前記袋本体の側壁を折りたたみ状態に維持する止め部と、
前記側壁に形成された作業口と、を備え、
前記止め部の係止により側壁が折りたたみ状態に維持され、前記鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆う第1の囲い込み状態と、
前記止め部が解放されて前記側壁が延ばされ、前記鉄骨の周囲に所定の空間が形成された状態で前記鉄骨を覆う第2の囲い込み状態とを、採ることができる、
ことを特徴とする囲い込み袋。
【請求項2】
前記側壁の上部が透明材料で形成され、
前記作業口が前記透明材料で形成されている部分に設けられている、
請求項1に記載の囲い込み袋。
【請求項3】
前記左右の両側壁に、長手方向に延びる切り離し可能部分と、該切り離し可能部分の下方に配置されたファスナとが設けられている、
請求項1または2に記載の囲い込み袋。
【請求項4】
前記ファスナ近傍に空気抜き部材が取付けられている、
請求項3に記載の囲い込み袋。
【請求項5】
前記空気抜き部材にはフィルタが設けられている、
請求項4に記載の囲い込み袋。
【請求項6】
前記袋本体の下方部分が前記側壁部分に沿って切り離し可能であり、
該下方部分が上方部分にファスナによって接続されている、
請求項1または2に記載の囲い込み袋。
【請求項7】
前記下方部分が、上方に向かって開放した複数の直方体状部分を備えている、
請求項6に記載の囲い込み袋。
【請求項8】
前記直方体状部分は、開放した上端が閉鎖可能である、
請求項7に記載の囲い込み袋。
【請求項9】
建物の天井に配置され被覆材が付着させられた鉄骨を断面略U字の筒型形状の袋本体で覆う囲い込み方法であって、
前記袋本体の側壁を折りたたんだ状態で、前記袋本体のU字の両端を前記鉄骨の両側で前記天井に連結し、前記袋本体で前記鉄骨の外形に沿って該鉄骨を覆うステップと、
前記側壁の折りたたみを解放し前記側壁を延ばして、前記鉄骨の周囲に前記袋本体で覆われた所定の作業空間を形成するステップと、
前記側壁に形成された作業口から工具を前記作業空間内に挿入し、前記鉄骨に付着させられている被覆材を除去するステップと、を備えている、
ことを特徴とする囲い込み方法。
【請求項10】
前記袋本体の一方の側壁を他方の側壁に結合させて前記作業空間の底部を閉鎖するステップを更に備えている、
請求項9に記載の囲い込み方法。
【請求項11】
前記閉鎖された作業空間の底部を前記天井に連結されている袋本体から分離するステップを更に備えている、
請求項10に記載の囲い込み方法。
【請求項12】
前記袋本体の下方部分を上方部分から切り離すステップを更に備えている、
請求項9に記載の囲い込み方法。
【請求項13】
前記下方部分の上端を閉じて、前記下方部分の内部を閉鎖するステップを更に備えている、
請求項12に記載の囲い込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−126890(P2007−126890A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320942(P2005−320942)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(500303940)株式会社 小川テック (14)
【Fターム(参考)】