説明

固形状魚餌及びその製造方法

【課題】水産廃棄物処理上の問題解決の一助となり得、環境に優しく保管の容易な魚餌を廉価に提供する。
【解決手段】魚餌を、水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を、押出反応機内の100℃以上の炭酸ガス超臨界又は亜臨界条件下で殺菌又は滅菌後、熱可塑樹脂化し、実質的に気泡を含まない魚餌としての適当な水分量と比重を有する固形状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類などの水産物を含む水産廃棄物からなる固形状の魚餌に関するものである。
【背景技術】
【0002】
漁獲される魚の中には魚種により食用に供されず廃棄されるものもあり、魚の加工段階で廃棄される内臓、頭、尾鰭などが水産廃棄物となる。また、鮮度が低下し、食用に不適当になり、水産廃棄物となることもある。
【0003】
特許文献1では水産廃棄物などを寄せ魚餌に加工する方法が提案されている。この方法は原料中の残存水分を固定化し、さらに水中での再分散性を改善する目的で、吸水性の物質、例えば、澱粉、吸水性パルプ、ポリビニルアルコールなどを混練時に混入し、型に充填し、加熱成形固形化する方法である。しかし、この方法では製品魚餌中の水分比率が大きく、腐敗、黴発生が起こりやすい欠点がある。また、型に充填した後、加熱するため、生産効率が低く経済的に不利である。
【0004】
特許文献2には、発電所や堤防などで多量に発生し、通常廃棄物として処理されるムラサキイガイの有効利用を目的とした養魚用配合飼料が記載されている。この飼料は魚粉や大豆粕、フィードオイルなどに、ムラサキイガイを可食部として5%以上(乾物換算)含むものであり、飼料中にムラサキイガイを添加することにより、ヒラメを始めとする魚類の摂餌が刺激され、摂餌量が増大し、その結果成長が向上するとされている。この技術は廃棄物の有効利用であり、魚種に適応した魚餌が養殖に効率的であることを提案している。しかし、原料が特定され汎用性に欠け、また魚粉など高価な原料を使用し不経済である。
【0005】
特許文献3には、植物搾汁滓を利用した魚介類用餌料が記載されている。これは植物搾汁滓の微生物醗酵物又はその粉砕物を含むマトリックス材料中に炭素原子数が2〜3個である低級アミノ酸Aと炭素原子数が4個以上である高級アミノ酸Bとを、モル比がA/B=1〜40となるように含有させてなるものである。しかし、この魚介類用餌料は魚介類の自然な餌の観点から栄養成分が偏り乖離している欠点がある。また、高価なアミノ酸を配合することも不経済である。
【0006】
特許文献4には、本発明者らの先の発明である水産廃棄物を魚餌に加工する方法が記載されている。この方法は主原料の水産廃棄物と副原料の多糖類などからなる組成物を炭酸ガスの超臨界又は亜臨界条件下で滅菌し、水分率が30重量%未満の固形状の魚餌にするものである。しかし、魚餌中の水分量が多いため魚餌自体の強度が低く、水にも膨潤し易い、そのため、釣り針に付けて長時間使用するような漁法においては、水の抵抗力などにより釣り針から脱落するおそれがあり不向きである。
【0007】
【特許文献1】特開平11−103789号公報
【特許文献2】特開平11−28061号公報
【特許文献3】特願平8−214300号公報
【特許文献4】特願2003−373214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような従来技術の課題に鑑み、水産廃棄物処理上の問題解決の一助となり得、環境に優しく保管の容易な魚餌を廉価に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明の固形状魚餌は、水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を熱可塑成形した実質的に気泡を含まないことを第1の特徴とする。また、水分率が15重量%未満で、かつ吸水後の比重が1から1.15であることを第2の特徴とする。さらに、殺菌又は滅菌されたことを第3の特徴とする。またさらに、熱可塑化した樹脂を金型により魚形状に成形したことを第4の特徴とする。加えて、生分解性の塗料を用いて表面を被覆することを第5の特徴とし、彩色を施すことを第6の特徴とする。さらに加えて、釣り針の取り付け穴を設けたことを第7の特徴とする。
【0010】
本発明に係る固形状魚餌の製造方法としては、水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を破砕混合工程、100℃以上の炭酸ガスの超臨界又は亜臨界条件の殺菌又は滅菌工程、脱水縮合工程、押出し熱可塑工程により熱可塑樹脂化するか又は水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を破砕混合工程、100℃以上の殺菌又は滅菌工程、脱水縮合工程、押出し熱可塑工程により熱可塑樹脂化する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の魚餌は水産廃棄物を主原料として利用しているため、資源の有効利用ができ、水産廃棄物処理上の問題解決の一助となり得る。また、魚餌の製造時における100℃以上の炭酸ガス超臨界又は亜臨界条件下で殺菌又は滅菌する工程は低コストで実施できるため、原料コストと併せて経済的に製造できる。また、原料である水産廃棄物を適宜選択することにより、魚種に応じた自然餌に近い魚餌を提供することができる。
【0012】
本発明の魚餌の比重は1.00から1.15であり、用途により比重を調整することが可能である。このため、水中での沈降速度を適宜選択することができ、摂取効率に優れている。したがって、養殖場における沈降魚餌による環境汚染を招かない。また、本発明の魚餌は押出し熱可塑成形により製造しているため、サイズを自由に変化させることができ、魚の成長の度合いに応じて調節することが可能である。また、水分含有率が低いため酸化防止を図った軽包装で長期間保管することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
水産物には魚介類、海藻類などがあり、水産廃棄物には加工商品化の途中で魚介類や海藻類から除外された部分、例えば魚類の頭、尾鰭、中骨、内臓、貝類の内臓、海藻類の根、腐敗した魚介類などがある。本発明にはこれらのいずれのものも原料として使用することができる。また、保管状態が悪く、部分的に腐敗が認められ食用に不適当になった水産物も同様に原料として使用することができ経済的である。また、使用する水産廃棄物を適宜選択することにより、魚種に適応した自然餌に近い魚餌を提供することができる。
【0014】
また、栄養分がそのままで魚の骨まで可食に加工された缶詰を想起すると、本発明工程で処理された骨、貝殻および甲殻類の殻も魚餌として問題ないことが分かる。また貝殻は魚餌の比重調節剤として使用される。成魚の肥育には脂肪の多い魚餌を給餌するが、脂肪が多くなると魚餌の比重は小さくなる。本発明では必要に応じ比重調節剤として、例えば、ほたて貝の貝殻粉末(真比重は2.7)を0から15重量%程度配合する。
【0015】
本発明では、通常は廃棄物として扱われる魚類の残滓などの水産廃棄物をより多く主原料として使用する方が経済的に有利であり、有機資源の有効利用ができるため望ましい。しかし、使用する原料が水産廃棄物のみでは熱可塑化が上手く行えず、魚餌自体の強度が不足し水中での分解および崩壊速度が大きくなり過ぎることがある。そのため、使用する水産廃棄物の重量配合量は原材料全体の20重量%〜60重量%であることが望ましい。さらに好ましくは40重量%〜60重量%であることが望ましい。
【0016】
水産廃棄物の繋ぎ材料として多糖類を使用することにより、本発明の魚餌の強度の向上、膨潤速度および崩壊速度を低下させることができる。多糖類としては澱粉、セルロース、ヘミセルロースなどを使用する。多糖類が多く含まれるイモ類、穀類などをそのまま使用することもできる。多糖類の配合量は使用する水産廃棄物の種類により異なる。また、澱粉、セルロースなどは比重が1.5と大きいので、脂肪分が多い材料の場合は比重を大きくするための増量剤としても使用することができる。この多糖類の重量配合量については、原材料全体の10重量%〜60重量%であることが望ましい。さらに好ましくは10重量%〜35重量%であることが望ましい。また、このように繋ぎ材料として通常の石油由来のプラスチック樹脂ではなく植物由来の安価な澱粉等の多糖類を使用することは、経済的に有利であり、また自然環境に対しても優しい。
【0017】
また、本発明の魚餌の強度の向上、膨潤速度および分解・崩壊速度を低下させるために生分解性の樹脂を使用することもできる。生分解性樹脂としては脂肪族、芳香族のポリエステル又はそれらの共重合ポリエステルなどを使用することができる。
【0018】
本発明の魚餌は水産物を含む水産廃棄物と多糖類を混合し、押出し機により熱可塑化することにより樹脂化し、これを冷却して固化させることにより固形状の魚餌とするものである。熱可塑化する場合、可塑剤を加えることにより、熱可塑性を向上させることができる。また、可塑剤の配合量を増加させることにより、さらに熱可塑性を向上させることができる。可塑剤には可食性のグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトールなどが使用できる。
【0019】
また、可塑剤の添加は熱可塑性を向上させるだけでなく、熱可塑化した樹脂に柔軟性を持たせることができる。例えば、本発明の魚餌をマグロ延縄漁などのイワシやサンマなどの生魚を餌として行われる漁法において使用する場合、マグロが魚餌を食べた際の感触はイワシやサンマの魚体と同様の状態にすることが望ましい。すなわち、天然の魚類に似た適度な柔軟性を持たせることが好ましいことがわかる。本発明の魚餌は可塑剤の配合量を多くすることにより優れた柔軟性を持たせることができる。経済性を考慮すると、可食性可塑剤の重量配合量は原材料全体の5重量%〜40重量%であることが望ましい。さらに好ましくは5重量%〜25重量%であることが望ましい。
【0020】
また、上記の各可塑剤を配合する際に、魚油、肝油、エビ油、イカ油を併用すると、本発明の魚餌に可塑性や柔軟性を持たせるだけでなく、摂餌成分としての働きを持たせることができる。また、その他に、摂餌成分として各種アミノ酸ならびにアミノ酸混合物、ビタミン、ミネラル、色素、脂肪などの許可された添加剤、水産動物エキスや精製魚油(油脂)等を必要に応じて配合し使用することもできる。
【0021】
魚餌は最終的には魚の生息環境から除外される必要があるため、川底あるいは海底に沈降させしまう必要がある。淡水と海水により異なるが、これらの比重より大きいことが必要である。淡水の比重は温度により異なるが1から0.995、海水の比重は場所と温度により異なるが1.028から1.020である。魚餌比重が1.00未満では淡水においても長期に水面に浮遊し、腐敗が起こり、魚の生息環境を汚染する。魚餌比重が1.15を越えると海水中であっても沈降速度が大き過ぎ、魚餌の摂取効率が低下する。また、海底に沈降した魚餌が腐敗し、生息環境を汚染する。しかし、前述のとおり、本発明の魚餌は比重調整剤を使用することにより、必要に応じて吸水後の比重を1から1.15にコントロールできるためこのような汚染は生じ難い。
【0022】
魚餌の比重の測定は魚餌小片を不織布製ティーバッグに入れ純水に1時間浸漬後、遠心脱水機で付着水を除去し、ティーバッグごと秤量瓶に移して計量し、ティーバッグ重量を差し引いた重量X1を求め、次に、標線まで純水Wを加え計量しX2を求めた。予め秤量瓶の質量X0と標線までの純水の質量W0、ティーバッグの容量TVを求め、計算式SG=X1/(W0+X1−X2−TV)から吸水後の魚餌比重SGを求めた。
【0023】
本発明の魚餌の製造工程は強力な破砕混合工程、100℃以上の炭酸ガス超臨界又は亜臨界条件の殺菌又は滅菌工程、脱水縮合工程、押出し熱可塑成形工程からなる一貫連続工程が好ましい。ちなみに、炭酸ガスは温度31.1℃以上、圧力7.48MPa以上の条件下で超臨界状態となり、温度31.1℃以上、圧力7.48MPa未満の条件下および温度31.1℃未満、圧力7.48MPa以上の条件下で亜臨界状態となる。これらの工程により殺菌又は滅菌された実質的に気泡を含まない熱可塑樹脂化された固形状魚餌を得ることができる。
【0024】
腐敗とは細菌により蛋白質、炭水化物、脂肪などが分解された状態を意味する。腐敗したものを摂取すると分解物が動物の生体に悪影響を及ぼし中毒が発生する。しかし、本発明の魚餌の場合、部分的に腐敗した水産廃棄物を原料として利用した場合においても、100℃以上の炭酸ガス超臨界又は亜臨界条件で殺菌又は滅菌した後、脱水縮合工程で再縮合され魚餌となるため、加工後の腐敗を防止することができ、魚に害はなく、その魚を摂取する人体にも害は及ばない。
【0025】
水産廃棄物には水分が多く含まれているが、これらの水は可塑剤として作用し、必要のない水分については脱水縮合工程で15重量%以下に調整される。
【0026】
魚餌の水分含有率の測定は100℃の真空乾燥機の中に24時間放置して乾燥させた後の重量と乾燥前の重量から算出し求めた。
【0027】
本発明の魚餌は押出し熱可塑成形による製造するため、魚餌の形状およびサイズは金型等を用いて自由に変化させることができ、魚の成長度合いにより調節することが可能である。例えば、押出し時に、粉末状或いはペレット状に熱可塑成形することにより、稚魚や小魚用の魚餌として使用することができる。また、殺菌又は滅菌されており、さらには水分含有率が低いため軽包装で長期保管することができる。
【0028】
本発明の魚餌は熱可塑化した樹脂素材の色合いのまま使用することもできるが、例えば、イワシのような魚形状に成形し魚餌として使用する場合、表面全体および特定の部位に対し部分的に生分解性の塗料を塗布して被覆することで、実際のイワシやアジのような天延の魚類に似た色彩や模様などを適宜施すことができる。このように、本発明の魚餌を天然の生物により近い状態の製品にすることにより集魚効果を高めることができる。尚、生分解性の塗料とは澱粉変性系、脂肪族ポリエステル系、植物系ポリエステル系、ポリエステル系の生分解性樹脂および大豆タンパクからなるグラビアインキ及びコート剤が使用できる。
【0029】
また、前述のように生分解性の塗料を使用し本発明の魚餌の全体若しくは特定の部位を被覆することで、次のような効果を得ることができる。例えば、後述する実施例1の魚形状の魚餌を使用する場合、海水に対する膨潤速度を遅くしたい場合については、魚餌表面の被覆させる割合を多くすることで膨潤する速度を遅めにコントロールすることができる。また、海水中において部分的に強度を持たせたい場合においてもその部分を被覆することで海水の膨潤を抑制させ強度を保持することができる。一方、被覆しない部位については海水に暴露されることで魚餌中の魚を誘引する物質が徐々に水中に流出して拡散するので、良好な集魚効果が得られる。
【0030】
マグロ延縄漁など冷凍や生のイワシやサンマのような比較的大きな餌を使用する場合、餌の厚みが10mm〜30mmと大きくなり、釣り針の装着作業が円滑に行えない場合が多い。また、さらに餌となる生魚の品質が悪い場合、針を装着する際に餌が千切れ損傷するなど、歩留まりが悪い状況が発生する。しかし、本発明の魚餌の場合、使用する釣り針の大きさに合わせて、予め釣り針を装着するための取付穴を加工しておくことができる。これにより釣り針の取り付けが容易になり、魚餌装着作業を円滑に行うことができる。また、魚餌の損傷も発生しないため歩留まりが向上する。
【実施例1】
【0031】
生アジ35重量%、トウモロコシ澱粉30重量%、グリセリン25.2重量%、乳酸(50%水溶液)2.7重量%、生分解性樹脂(エコフレックス:商品名 BASFジャパン株式会社製)5.9重量%、飽和炭酸水(Ph=4.5)0.4重量%、精製魚油0.8重量%を投入し、破砕混合工程で粉砕混合したスラリー(かゆ状の混合物)をせん断力下、145℃、3MPaで滅菌処理を行った。その後、連続した減圧状態での脱水縮合工程でスラリーの水分を15重量%に調整し、縦16mm、横30mmのノズルからダイス圧力0.3MPaで押出し、魚形状の金型を装着したプレス機を使用してイワシやアジに似た魚形状に成形した。製造した魚形状の魚餌には適度の弾力性があり、魚にとって摂餌し易い柔らかさであることが確認できた。
【0032】
本実施例で製造した魚形状の魚餌に対する漁獲効果について評価するため、天然餌の需要が最も多いマグロ延縄漁において、マグロ類の魚が漁獲されるかどうかの確認を行うための試験を実施した。試験は2週間に渡って、宮崎県日向市細島周辺の近海において、延縄船によるマグロ延縄漁で行った。魚餌の実験船への持ち込みはポリエチレン製の袋に詰めて行い、試験期間中の保管についても船上で空気にさらしたまま保管すると海水にさらされ分解や劣化が生じることが考えられるため、ポリエチレン製の袋に詰めて常温にて保管した。
【0033】
本実施例魚餌の釣果について評価する際に延縄漁で使用した漁具の規模は78鉢(15針/鉢)であり、針の数は総数で1170本である。漁具への餌の取り付け方法は、漁具全体にわたって1鉢単位で本発明魚餌を取り付けた。1鉢の釣り針の数は15本であり、その15本の針全部に本実施例魚餌を取り付けたため、漁具全体として1170尾(15針×78鉢)の本実施例魚餌を使用した。実験を実施したところ、マグロ以外のサメやサワラを始めとした各種の雑魚も含めて漁獲された魚のすべての数は合計で16匹であった。よって、漁獲された魚の数16尾と投げ縄時に針に付けた餌数1170個から求められる漁獲率は1.36%である。この結果から、本発明魚餌には間違いなく魚類の釣果があることを確認できた。また、針に餌を取り付ける際や針に付けた後の投げ縄の際も千切れたりすることはなく、針持ちの強度が十分あることも確認できた。揚げ縄の際に海水に10時間以上つけて針に残っていた本発明の魚餌の官能検査を実施したところ、明らかに試験前と同様の匂いが残存しており、官能的な臭いの持続性は十分にあることが確認できた。また、海水中で10時間使用した後の本発明魚餌が針から外れることなく残っていたことから、水中への投入時の遠心力、水中での抵抗力が加わっても針から容易に脱落することがないことが確認できた。
【0034】
成形した直後の魚餌の水分を、100℃で10時間真空乾燥機に放置し、乾燥前後の質量を計量し、測定した結果、7重量%であった。ポリエチレン内装25kg用紙袋にヒートシールし、30日間倉庫に保管した後、開封し外観、異臭の発生を確認したが、黴の発生、腐敗は認められず、臭いも変わらなかった。
【実施例2】
【0035】
実施例1と同様にして主原料を生マイワシ35重量%、トウモロコシ澱粉30重量%、グリセリン25.2重量%、乳酸(50%水溶液)2.7重量%、生分解性樹脂(エコフレックス:商品名 BASFジャパン株式会社製)5.9重量%、飽和炭酸水(Ph=4.5)0.4重量%、精製魚油0.8重量%を投入し、破砕混合工程で粉砕混合したスラリー(かゆ状の混合物)をせん断力下、145℃、3MPaで滅菌処理を行った。その後、連続した減圧状態での脱水縮合工程でスラリーの水分を15重量%未満に調整し、縦16mm、横30mmのノズルからダイス前圧力0.3MPaで押出し、魚形状の金型を装着したプレス機を使用してイワシやアジに似た魚形状に成形された本発明の魚餌を製造した。また、同様にダイス前圧力1MPaで直径2.5mmのノズルから押出し、ホットカッターでペレット状の魚餌を成形した。
【0036】
実施例2において製造したペレット状の魚餌を使用し、常温の海水中における沈降速度を測定した結果、約1.8m/分であった。これにより、沈降するまでに魚が摂取するに十分な時間があることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を熱可塑成形した実質的に気泡を含まないことを特徴とする固形状魚餌。
【請求項2】
水分率が15重量%未満で、かつ吸水後の比重が1から1.15であることを特徴とする請求項1記載の固形状魚餌。
【請求項3】
殺菌又は滅菌されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の固形状魚餌。
【請求項4】
熱可塑化した樹脂を金型により魚形状に成形したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の固形状魚餌。
【請求項5】
生分解性の塗料を用いて表面を被覆することを特徴とする請求項4の固形状魚餌。
【請求項6】
彩色を施すことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の固形状魚餌。
【請求項7】
釣り針の取り付け穴を設けたことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の固形状魚餌。
【請求項8】
水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を破砕混合工程、100℃以上の炭酸ガスの超臨界又は亜臨界条件の殺菌又は滅菌工程、脱水縮合工程、押出し熱可塑工程により熱可塑樹脂化することを特徴とする固形状魚餌の製造方法。
【請求項9】
水産物を含む水産廃棄物20〜60重量%、澱粉などの多糖類10〜60重量%、可食性の可塑剤5〜40重量%からなる組成物を破砕混合工程、100℃以上の殺菌又は滅菌工程、脱水縮合工程、押出し熱可塑工程により熱可塑樹脂化することを特徴とする固形状魚餌の製造方法。

【公開番号】特開2008−86274(P2008−86274A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−272014(P2006−272014)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(595026520)安井株式会社 (6)
【Fターム(参考)】