説明

固液分離装置

【課題】 固液分離装置において高圧縮、高処理量を可能とし、かつ従来スリット、網目で構成されている固液分離フィルターを不要とする。
【解決手段】 固液分離装置にあって、固液混合物の投入口と、この投入口に臨ませて配置される下部キャタピラーコンベアと、下部キャタピラーコンベアの下流側に対向して配置される上部キャタピラーコンベアを具備し、これら一対のキャタピラーコンベアの間隔が上流側から下流側に至るに従い漸減するように配置され、固液混合物を下部から上部への搬送途上で圧搾脱液し、脱液は下部コンベア上流先端から自然排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐、ジュース等の搾汁、ならびに製紙スラッジ、汚泥水、生ごみの脱液減容など搾液、脱液を目的とする固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から固液分離装置はいくつかの方式が実用化されている。代表的な方式として外周に網目等液体を通す間隙持つ筒状ケーシングの内側にスクリューコンベアを配置し、このスクリューコンベアにて固液混合物に圧力をかけ液体を筒状ケーシング外に排出し内側に残る固体の液体比率を減じる方法がある。特公平07−010440、特公平06−042928は、この方式の問題のひとつである間隙部のめずまりを防止することを目的としている。
【0003】
他の方式として、ピストンと筒状ケーシングによる圧搾プレス方式がある。外周に網目等液体を通す間隙持つ筒状ケーシングとピストンを配置し、このピストンにより固液混合物に圧力をかけ液体を筒状ケーシング外に排出し内側に残る固体の液体比率を減じる。特開平8−19897は、この方式の問題点の一つである固体の取り出しに関する。
【0004】
更に他の方式としてベルトプレス型脱液機がある。これは一対の脱液ロール上を走行する濾布の間に固液混合物をはさみ、圧接させて脱液するものである。濾布のめずまり、破断等の問題があり、数多くの考案もなされている。特開2005−16399は目ずまり防止に関するものであり、特開平10
−193185は濾布の破断防止に関するものである。
【特許文献1】特公平07−010440
【特許文献2】特公平06−042928
【特許文献3】特開平8−19897
【特許文献4】特開2005−16399
【特許文献5】特開平10−193185
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来汚泥の脱液等に広く使われているスクリュープレス式固液分離装置の原理は、先端に行くに従いスクリューピッチがする減少するスクリューにて、固液混合物を前進させながら圧力を生じさせる。このときスクリュー羽根と固液混合物のすべり抵抗が筒状ケーシングと固液混合物とのすべり抵抗を上回ると、固液混合物はスクリューと一緒に回転し前進不能となる。この圧力を高めるためには筒状ケーシングの同一区間において、固液混合物が接する筒状ケーシングの表面積を固液混合物が接するスクリューの表面積とくらべて十分大きくする必要がある。具体的にはスクリュー軸を徐々に太くし、スクリューの表面積を徐々に減じる方法がある。この場合固液混合物の搬送量は大幅に減少する。即ち、スクリュープレス式固液分離装置において、処理量と脱液能力とは原理的に相反する課題であり、例えば汚水を大量に処理する用途では水分率82−83%が限度である。更に脱液率をあげる、言い換えれば水分率を下げるためには、固液混合物の内部圧力を高める必要があるため処理量的には非効率な装置となる。
【0006】
ピストンによる圧搾プレス方式は、内部圧力を高めることが容易である。この方式の課題として、ピストンの往復運動のため実効稼働率が50%と低い、ピストンを駆動させる油圧シリンダーが筒状ケーシングと同軸で突き出し処理量あたりの寸法がおおきくなるなどがあげられる。更に上記の方式の共通の課題としてフィルターの目ずまりがある。
【0007】
ベルトプレス方式には、濾布の破断、目ずまりによる定期的な洗浄等の問題がある。
【0008】
従来、固液分離装置においてさまざまな方式が考案されているが、固体と液体の分離において適当なサイズの孔、スリット、網目をもつフィルターの利用が基本となっている。このためこのフィルターの目ずまりは不可欠である。これについて、いろいろな考案がなされているが、フィルターを用いる限りにおいて、この課題の全面的解決は不可能といえる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するため請求項1の発明は、固液混合物から固体と液体を分離させる固液分離装置にあって、被分離物である固液混合物の投入口と、この投入口に臨ませて配置される下部キャタピラーコンベアコンベアと、下部キャタピラーコンベアコンベアの下流側に対向して配置される上部キャタピラーコンベアコンベアを具備している。これら一対のキャタピラーコンベアコンベアの間隔は上流側から下流側に至るに従い漸減するように配置されたことを特徴としている。
【0010】
請求項2の固液分離装置は、請求項1の固液分離装置において、下部キャタピラーコンベアコンベアと上部キャタピラーコンベアコンベアの間隙が伸縮する手段を具備することを特徴としている。
【0011】
請求項3の固液分離装置は、請求項1の固液分離装置において、下部キャタピラーコンベアコンベアと上部キャタピラーコンベアコンベアの下流先端排出部位に排出を規制する排出規制手段を具備することを特徴としている。
【0012】
請求項4の固液分離装置は、請求項1、請求項2、請求項3において、下部キャタピラーコンベアコンベアと上部キャタピラーコンベアコンベアが上流側から下流側へ向かって上方へ傾斜していることを特徴としている。
【0013】
請求項5の固液分離装置は、請求項1、請求項2、請求項3において、下部側キャタピラーコンベアコンベアの固液混合物をうけいれる上流部は概ね水平であり、途中で折れ曲がり下流側に向かって上方へ傾斜していることを特徴としている.
【0014】
請求項6の固液分離装置は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5において、上部キャタピラーコンベアコンベア速度と下部キャタピラーコンベアコンベアの速度が互いに異なることを特徴としている。
【0015】
上記固液分離装置によれば一対のキャタピラーコンベアの間隙が上流側から下流側に従い漸減しているため投入された固液混合物は上下に圧縮され液体をしぼりだすことができる。固液混合物内部に生じる内圧は、間隙の減少度合いによって決まる。
【0016】
一対のキャタピラーコンベアの間隙を可動にし、スプリング、空気、油圧アクチュエーターにより被圧縮物からの反力をうけ、被圧縮物が一定の圧力を受ける構造とすることにより所定の脱液率が
保持される。また、この構造は被圧縮物の処理量の均一化、非圧縮物に混入した石等の塊状異物のスムーズな排出に効果的である。
【0017】
他の方法として、一対のキャタピラーコンベアの下流先端排出口に排出規制手段を設けることによって被圧縮物の内部圧力を一定に保つことにより、より脱液能力をあげることができる。勿論本手段と前述の下部キャタピラーコンベアコンベアと上部キャタピラーコンベアコンベアの間隙が伸縮する手段とを併せ持つことは可能である。
【0018】
本発明の固液分離装置は従来法にて不可欠であったフィルターを基本的には必要としない。これは下記の理由による。即ち、上下のキャタピラーコンベア間で圧縮される固液混合物に内包する液体は、内部圧力の低い上流側、即ち投入口側へ移動する。このため上下のキャタピラーコンベアは上流から下流に向かって上方に傾斜させることによって搾り出された液体を投入口側へスムースに移動できる。下部キャタピラーコンベアの上流先端付近にはキャタピラーコンベア搬送面と堰板による排液口を設けてある。このキャタピラーコンベア搬送面と堰板との隙間は従来法のフィルターの役割をするがキャタピラーコンベアが固体分を常に排出口と反対の方向へ搬送する作用をしているため液体のみが重力により排出口より自然に排出される。このため目ずまりは基本的に起こらない。ただし、キャタピラーコンベアの搬送面に搾孔を施こし、搬送面裏側に脱液することにより脱液効率は更に向上する。この搾孔は目ずまりにより安定性を欠くものの補助的手段として有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は搬送面を対向させた一対のキャタピラーコンベアコンベアの搬送面に固液混合物を引き込み圧縮し、液体を搾り出し、固液を分離する。このため次の顕著な効果を奏する。
(イ)機械的に面状に圧縮するため、高圧圧縮が可能となり、圧力に依存する高脱液が可能となる。また、一対のキャタピラーコンベアコンベアの搬送面の間隙は、漸減しているため固液混合物を確実に引き込むことができる。
(ロ)従来法で不可欠な液体を透過分離するフィルターが基本的には不要なため、目ずまりは原理的に皆無である。このため安定的運転が可能となる。
(ハ)上下のキャタピラーコンベアの速度に差をつけることにより、単に圧縮のみでなく固体を細かく破砕し固体内部に包含する液体をもみだすことができ、更に高い脱液が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明による固液分離装置の実施例を以下に示す。
【実施例1】
【0021】
本発明による固液分離装置の実施の形態について、図面を参照にしながら説明する。図1は、固液分離装置のB−B縦断面図、図2はA−A横断面図をそれぞれ示している。固液分離装置は、固液混合物を投入する投入口1、これらを上方に搬送する下部キャタピラーコンベアコンベア3、下部キャタピラーコンベアコンベアの途中から相対して配置された上部キャタピラーコンベアコンベア2、固液混合物の搬送量を規制するゲート4、圧縮され搾り出された脱液を受ける脱液受けパン5、これを排出するドレイン6、脱液された固体を排出するシュート14から構成される。
【0022】
上部キャタピラーコンベアコンベア、下部キャタピラーコンベアコンベアは、多数の板状材をチエーンにて連結した、トッププレート型チエーンコンベア(図示せず)にて構成されている。板状材は、ステンレススチールを用いたが、構造用鋼材、ゴム、プラスチック等、被固液混合物と目的とする脱液率により適宜選択することができる。また、搬送面には、上記板状材に多数の貫通孔をあける、あるい
は網状を用い搬送面の裏側へ脱液がにじみ出る構造としてもよい。
【0023】
投入された固液混合物は、下部キャタピラーコンベアコンベアにて下流へ搬送され、上部キャタピラーコンベアコンベアとの間で圧縮され、脱液される。このとき挟み込まれる固液混合物の量によって圧縮率が異なる。
【0024】
ゲート4は、下部キャタピラーコンベアにて搬送される固液混合物の層厚を規制するものである。これにより安定した圧縮率を得ることができる。
【0025】
しかしながら運転開始、終了時など固液混合物の量がすくない時、上部キャタピラーコンベアと下部キャタピラーコンベアの間隙が固定の場合、十分な圧縮がなされないことがある。押し圧調整ばね11は上記間隙を可変にしたものである。即ち、固液混合物がはいってこない状態では上記間隙はほとんど零であり、内部圧力が押し圧調整ばね11のバネによる圧力を上回ると間隙が押し広げられる。このため固液混合物の内部圧力を一定に保つことができる。この機構は固液混合物に硬い塊状のものが含まれる場合、或いは硬い塊状の異物が介在したとき、自動的に間隙が押し広げら通過させうる安全機構としても有効である。
【0026】
脱液は固液混合物の圧力が低い方へ移動する。上下キャタピラーコンベアの間隙は、上方へ行くほど狭くなっている。いい換えれば上方ほど固液混合物の内圧が高くなるため、脱液の多くは下方へ搾り出される。この脱液は投入された固液混合物と一部混じりあうが流動性の高い液体部分は下部キャタピラーコンベアの下流端部にある排液ゲートとの隙間から脱液受けパンに排出される。
【0027】
下部キャタピラーコンベアの下流端部にある排液ゲートとの隙間は、固液混合物の状態により異なる。実験によると固液混合物が製紙スラッジのように固体成分が繊維質である場合、数ミリメートルあけて液体を通り易くするのが好ましい。また下水汚泥のように水分の一部が細かいコロイド状の場合、排液ゲートをキャタピラーコンベア搬送面に平行な帯状とし下辺部をキャタピラーコンベアに接触させ、主として排液はこの帯状ゲートの堰(図示せず)を乗り越える方式が望ましい。この場合の排液はばっき槽へ返送する。
【0028】
更に本発明による固液分離装置は、上下のキャタピラーコンベアの速度に差を持たせることにより、固液混合物を練り潰すことができる。これにより脱液率はさらに向上する。
【実施例2】
【0029】
本発明による固液分離装置の実施の別の形態について、図面を参照にしながら説明する。 図3は固液分離装置の縦断面図を示している。固液分離装置は、固液混合物を投入する投入口1、これらを上方に搬送する下部キャタピラーコンベアコンベア3、下部キャタピラーコンベアの途中から相対して配置された上部キャタピラーコンベアコンベア2、固液混合物の搬送量を規制するゲート4、圧縮され搾り出された脱液を受ける脱液受けパン5、これを排出するドレイン6、脱液された固体を排出するシュート14から構成される。
【0030】
上部キャタピラーコンベアコンベア、下部キャタピラーコンベアコンベアは多数の板状材をチエーンにて連結した、トッププレート型チエーンコンベア(図示せず)にて構成されている。板状材は、ステンレススチールを用いたが、構造用鋼材、ゴム、プラスチック等、被固液混合物と目的とする脱液率により適宜選択することができる。また、搬送面には、上記板状材に多数の貫通孔をあける、あるいは
網状を用い搬送面の裏側へ液がにじみ出る構造としてもよい。
【0031】
投入された固液混合物は下部キャタピラーコンベアにて上方へ搬送され、上部キャタピラーコンベア搬送面との間で圧縮され、脱液される。このとき挟み込まれる固液混合物の量によって圧縮率が異なる。
【0032】
ゲート4は下部キャタピラーコンベアにて搬送される固液混合物の層厚を規制するものである。これにより安定した圧縮率を得ることができる。
【0033】
しかしながら運転開始、終了時など固液混合物の量がすくなく時、上部キャタピラーコンベアと下部キャタピラーコンベアの間隙が固定では十分な圧縮がなされないことがある。圧力調整ゲート12は排出口に設けられ出口における固液混合物の内圧を規制する。即ち、固液混合物がはいっこない状態では上記ゲートはほとんど閉じており、内部圧力が圧力調整ゲート12のバネ等による圧力を上回るとゲートが押し広げられる。このため固液混合物の内部圧力を一定に保つことができる。
【0034】
この機構は特に本発明の固液分離機に破砕機能を付加するとき有効である。例えばキャベツ、大根、人参等の廃棄野菜を減容、脱液するとき単に押しつぶしただけでは脱液がむずかしい。このため従来、別の破砕機で破砕した後、固液分離装置にかけている。本発明では上下のキャタピラーコンベアの搬送面のいずれか、または、両方に図4でしめす破砕刃をつけることにより破砕機能を兼ね備えることができる。ただしこの場合、上下キャタピラーコンベアの最小間隙は破砕刃の高さとなる。このため投入量が少ない場合、十分な圧縮力が得られないことがある。
【0035】
本実施例では上下キャタピラーコンベアの間隙を固定し、排出口に圧力調整ゲートを設けることにより上記問題を解決した。
【0036】
更に上下キャタピラーコンベアの速度を変えることにより、破砕能力を上げることができる。本実施例では下部キャタピラーコンベアの速度と上部キャタピラーコンベアの速度比は1対3としている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、豆腐、ジュース等の搾汁、ならびに製紙スラッジ、汚泥水、生ごみの脱液減容など搾液、脱液を目的とする固液分離装置に関する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】固液分離装置の断面図(実施例1)
【図2】固液分離装置の断面図(実施例1)
【図3】固液分離装置の断面図(実施例2)
【図4】破砕刃
【符号の説明】
【0039】
1・・・投入口、2・・・上部キャタピラーコンベアコンベア、3・・・下部キャタピラーコンベアコンベア、4・・・ゲート、5・・・脱液受けパン、6・・・ドレイン、7・・・モータ(上部)、8・・・モータ(下部)、9・・・テンショナー(上部)、10・・・テンショナー(下部)、11・・・押し圧調整ばね、12・・・圧力調整ゲート、
13・・・排液ゲート、14・・・シュート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混合物から固体と液体を分離させる固液分離装置にあって、被分離物である固液混合物の投入口と、この投入口に臨ませて配置される下部キャタピラーコンベアと、下部キャタピラーコンベアの下流側に対向して配置される上部キャタピラーコンベアを具備し、これら一対のキャタピラーコンベアの搬送面の間隔が上流側から下流側に至るに従い漸減するように配置されたことを特徴とする固液分離装置。
【請求項2】
下部キャタピラーコンベアと上部キャタピラーコンベアの搬送面の間隙を伸縮可能とする手段を具備することを特徴とする請求項1の固液分離装置。
【請求項3】
下部キャタピラーコンベアと上部キャタピラーコンベアの搬送面で構成される下流先端排出部位に排出を規制する排出規制手段を具備することを特徴とする請求項1の固液分離装置。
【請求項4】
下部キャタピラーコンベアと上部キャタピラーコンベアが上流側から下流側へ向かって上方へ傾斜していることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3の固液分離装置。
【請求項5】
下部側キャタピラーコンベアが固液混合物をうけいれる上流部において概ね水平であり、途中で折れ曲がり下流側に向かって上方へ傾斜していることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3の固液分離装置。
【請求項6】
上部キャタピラーコンベア速度と下部キャタピラーコンベアの速度が互いに異なることを特徴とする
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5の固液分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−50316(P2007−50316A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235727(P2005−235727)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(593210651)株式会社物井工機 (9)
【出願人】(305039747)
【Fターム(参考)】