説明

圧縮機、チタン製動翼、ジェットエンジン、及びチタン製動翼の製造方法

コバルト・クロム合金の粉末等から成形した第1成形体等により構成される第1電極を用い、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料等を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に肉盛層を形成し、金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末等から成形した第2成形体等により構成される第2電極を用い、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料等を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側にアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートを形成すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機、チタン製動翼、ジェットエンジン、及びチタン製動翼の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジンの軽量化を促進するため、前記ジェットエンジンにおける圧縮機には、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケース及びチタン製動翼が用いられる。
【0003】
一方、前記チタン製圧縮機ケースの内面と前記チタン製動翼の先端部との擦り合いによるチタンファイヤーを防止するために、Ni−グラファイト等の軟質の材料を溶射材料として用い、前記チタン製圧縮機ケースの内面には、溶射によってアブレイダブル性のあるポーラス状のアブレイダブル・コートが形成されている。ここで、アブレイダブル性とは、擦り合う関係にある相手部品によって容易に削られるという特性のことをいい、前記アブレイダブル・コートは、擦り合う関係にある前記チタン製動翼によって容易に削られるものである。
【発明の開示】
【0004】
ところで、前記アブレイダブル・コートはポーラス状であるため、前記チタン製圧縮機ケース内面における空気抵抗が大きくなって、前記圧縮機の圧縮効率の低下を招くという問題がある。
【0005】
また、前記アブレイダブル・コートは溶射によって形成されているため、前記アブレイダブル・コートの前記チタン製圧縮機ケースに対する密着性が悪く、前記アブレイダブル・コートが前記チタン製圧縮機ケースの内面から剥がれ易いという問題がある。更に、同じ理由により、前記アブレイダブル・コートの形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、前記アブレイダブル・コートの形成後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ必要である。そのため、前記圧縮機の製造に要する工程数が増えて、作業能率の向上を容易に図ることができないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の第1の特徴は、ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機にあって、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備え、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、前記チタン製動翼は、チタン合金により構成された動翼本体と;コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した第2成形体、又は加熱処理した前記第2成形体により構成される第2電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;を備えたことである。
【0007】
また、本発明の第2の特徴は、ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機にあって、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備え、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、前記チタン製動翼は、チタン合金により構成された動翼本体と;コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;Siの固形物、Siの粉末から成形した第2成形体、或いは加熱処理した前記第2成形体により構成される第2電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;を備えたことである。
【0008】
更に、本発明の第3の特徴は、ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機であって、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備えてあって、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、前記チタン製動翼は、チタン合金により構成された動翼本体と;金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した成形体、又は加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;を備えたことである。
【0009】
また、本発明の第4の特徴は、ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機であって、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備えてあって、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、前記チタン製動翼は、チタン合金により構成された動翼本体と;Siの固形物、Siの粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;を備えたことである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係わるジェットエンジンの模式的な図である。
【図2】図2は、実施形態に係わる圧縮機の上半分の断面図である。
【図3】図3(a)は、第1の実施形態に係わるチタン製動翼の先端部を示す図であって、図3(b)は、第1の実施形態に係わるチタン製動翼の側面図である。
【図4】図4は、実施形態に係わる放電加工機の模式的な図である。
【図5】図5(a)(b)(c)は、第1の実施形態に係わるチタン製動翼の製造方法を説明する模式的な図である。
【図6】図6は、放電エネルギーによって金属の母材にコートを形成した場合における、融合部の厚さとコートの密着強度との関係を示す図である。
【図7】図7は、放電エネルギーによって金属の母材にコートを形成した場合における、融合部の厚さと母材の変形との関係を示す図である。
【図8】図8(a)は、第2の実施形態の変形例に係わるチタン製動翼の先端部を示す図であって、図8(b)は、第2の実施形態の変形例に係わるチタン製動翼の側面図である。
【図9】図9(a)(b)は、第2の実施形態に係わるチタン製動翼の製造方法を説明する模式的な図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明をより詳細に説明するために、本発明の各実施形態につき、適宜に図面を参照して説明する。なお、図面中において、「FF」は、前方向を指してあって、「FR」は、後方向を指している。また、説明中において、適宜に、「前後方向」のことをX軸方向といい、「左右方向」のことをY軸方向といい、「上下方向」のことをZ軸方向という。
【0012】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について図1から図4を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、実施形態に係わる圧縮機1は、ジェットエンジン3に用いられ、空気を圧縮するものである。また、圧縮機1は、チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケース5と、このチタン製圧縮機ケース5の後側に一体的に設けられかつニッケル合金により構成されたニッケル製圧縮機ケース(図示省略)とを具備している。
【0014】
チタン製圧縮機ケース5の内側には、ケース軸心S、換言すれば、エンジン軸心Sを中心として回転可能な複数段のチタン製圧縮機ロータ7が配設されており、複数段のチタン製圧縮機ロータ7は一体的に連結されている。ここで、各段のチタン製圧縮機ロータ7は、それぞれ、チタン合金により構成されかつ外周面に複数のダブテール溝9sが等間隔に形成されたチタン製ディスク9と、チタン製ディスク9における複数のダブテール溝9sに設けられかつチタン合金により構成された複数のチタン製動翼11とを備えている。
【0015】
また、チタン製圧縮機ケース5の内側には、複数段のチタン製圧縮機ステータ13が複数段のチタン製圧縮機ロータ7と交互に配設されている。ここで、各段のチタン製圧縮機ステータ13は、それぞれ、チタン合金により構成された複数のチタン製静翼15を等間隔に備えている。
【0016】
なお、図示は省略するが、前記ニッケル製圧縮機ケースの内側には、複数段のニッケル製圧縮機ロータがそれぞれ配設されており、複数段のニッケル製圧縮ロータは、複数段のチタン製圧縮機ロータと一体的に連結されている。また、ニッケル製圧縮機ケースの内側には、複数段のニッケル製圧縮機ステータが複数段のニッケル製圧縮機ロータと交互に配設されている。
【0017】
図3に示すように、第1の実施形態に係わるチタン製動翼11は、チタン合金により構成された動翼本体17を備えており、この動翼本体17は、基端側に、ダブテール溝9sに嵌合可能なダブテール17dを有している。
【0018】
動翼本体17の先端部には、肉盛層19が形成されている。そして、肉盛層19は、第1電極21(図5(b)参照)を用い、電気絶縁性のある液S(図3参照)中において、動翼本体17の先端部と第1電極21との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、第1電極21の材料或いは該材料の反応物質を動翼本体17の先端部に溶着させることによって、形成されるものである。なお、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0019】
ここで、第1電極21は、コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末からプレスによる圧縮によって成形した第1成形体、或いは真空炉等によって加熱処理した前記第1成形体により構成されるものである。また、「溶着させる」とは、拡散と併せて溶着させること、堆積と併せて溶着させること、堆積及び拡散と併せて溶着させることを含む意である。
【0020】
なお、第1電極21は、圧縮によって成形する代わりに、泥漿、MIM(Metal Injection Molding)、溶射等によって成形しても差し支えない。また、第1電極21の先端部は、動翼本体17の先端部に近似した形状を呈している。
【0021】
チタン製圧縮機ケース5の内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、肉盛層19の腹面側19aには、アブレイシブ性のあるアブレイシブ・コート23が形成されている。ここで、アブレイシブ性とは、擦り合う関係にある相手部品を容易に削ることができる特性のことをいい、アブレイシブ・コート23は、擦り合う関係にあるチタン製圧縮機ケース5の内面を削ることができるものである。そして、アブレイシブ・コート23は、第2電極25(図5(c)参照)を用い、電気絶縁性のある液S中において、肉盛層19の腹面側19aと第2電極25との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、第2電極25の材料或いは該材料の反応物質を肉盛層19の腹面側19aに溶着させることによって、形成されるものである。なお、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0022】
ここで、第2電極25は、金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した第2成形体、又は加熱処理した前記第2成形体により構成されるものである。また、前記セラミックスは、cBN、TiC、TiN、TiAlN、TiB2、WC、SiC、Si3N4、Cr3C2、Al2O3、ZrO2−Y、ZrC、VC、B4Cのうちいずれか1種の材料又は2種以上の混合材料のことをいう。更に、前記導電性のあるセラミックスの粉末は、前記セラミックスの粉末の表面に導電性の皮膜を付けること等によって製造できる。また、「溶着させる」とは、拡散と併せて溶着させること、堆積と併せて溶着させること、堆積及び拡散と併せて溶着させることを含む意である。
【0023】
なお、第2電極25は、圧縮によって成形する代わりに、泥漿、MIM、溶射等によって成形しても差し支えない。また、第2電極25の先端部は、肉盛層19の腹面側19a、換言すれば、動翼本体17の先端部の腹面側17aに近似した形状を呈している。
【0024】
一方、第2電極25の代わりに、Siの固形物、Siの粉末からプレスによる圧縮によって成形した別の第2成形体、或いは真空炉等によって加熱処理した前記別の成形体により構成される別の第2電極27を用いてもよい。そして、この場合には、電気絶縁性のある油中において、パルス状の放電を発生させる。なお、別の第2電極27は、圧縮によって成形する代わりに、泥漿、MIM、溶射等によって成形しても差し支えない。
【0025】
また、別の第2電極27の先端部は、肉盛層19の腹面側19a、換言すれば、動翼本体17の先端部の腹面側17aに近似した形状を呈している。
【0026】
更に、肉盛層19と動翼本体17の先端部の境界、アブレイシブ・コート23と肉盛層19の境界には、それぞれ、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部(融合層)B1,B2が生成されている。そして、肉盛層19及びアブレイシブ・コート23を形成する際に適正な放電条件を選択することによって、融合部B1,B2は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されている。なお、前記適正な放電条件は、ピーク電流が30A以下で、パルス幅が200μs以下であって、好ましくは、ピーク電流が20A以下で、パルス幅が20μs以下である。
【0027】
ここで、融合部B1,B2の厚さが3μm以上かつ20μm以下になるようにしたのは、図6及び図7に示す試験結果に基づくものである。
【0028】
即ち、放電条件を変えて、放電エネルギーによって金属の母材にコートを形成した場合に、前記母材と前記コーの境界に生成された融合部の厚さと、前記コートの密着強度との関係が図6に示すようになり、前記融合部の厚さが3μm以上になると、前記コートの密着強度が高くなるという、新規な第1の知見を得ることができた。また、前記融合部の厚さと前記母材の変形との関係が図7に示すようになり、前記融合部の厚さが20μm以下であると、前記母材の変形を抑えることできるという、新規な第2の知見を得ることができた。よって、新規な第1及び第2の知見から、動翼本体17の母材の変形を抑えつつ、肉盛層19及びアブレイシブ・コート23の密着強度を高めることができるように、融合部B1,B2の厚さが3μm以上かつ20μm以下になるようにした。
【0029】
なお、図6及び図7における横軸は、前記融合部の厚さを対数表示してあって、図6における縦軸は、前記コートの密着強度を無次元化して表示してあって、図7における縦軸は、前記母材の変形を無次元化して表示してある。
【0030】
次に、図4に示すように、実施形態に係わる放電加工装置29はベッド31を具備しており、このベッド31には、テーブル33が設けられてあって、このテーブル33は図示省略のX軸サーボモータの駆動によってX軸方向へ移動可能かつ図示省略のY軸サーボモータの駆動によってY軸方向へ移動可能である。
【0031】
テーブル33には、油等の電気絶縁性のある液Sを貯留する加工槽35が設けられており、この加工槽35内には、支持プレート37が設けられている。この支持プレート37には、チタン製動翼11のダブテール17dをクランプする治具39が設けられている。
【0032】
ベッド31の上方には、加工ヘッド41が図示省略のコラムを介して設けられており、この加工ヘッド41は図示省略のZ軸サーボモータの駆動によってZ軸方向へ移動可能である。加工ヘッド41には、第1電極21を保持する第1ホルダ43が設けられており、加工ヘッド41における第1ホルダ43の近傍には、第2電極25又は別の第2電極27等を保持する第2ホルダ45が設けられている。また、第1ホルダ43、第2ホルダ45は共通の電源47に電気的に接続されている。なお、第1ホルダ43と第2ホルダ45が個別の電源に電気的に接続されるようにしても差し支えない。
【0033】
図4及び図5に示すように、第1の実施形態に係わるチタン製動翼の製造方法は、チタン合金により構成された動翼本体17からチタン製動翼11を製造するための方法であって、具体的には、次のようになる。
【0034】
即ち、図5(a)に示すように、動翼本体17の先端部が上方向を向いた状態の下で、治具39によって動翼本体17のダブテール17dをクランプすることにより、動翼本体17を加工槽35内の所定位置にセットする。次に、前記X軸サーボモータ、前記Y軸サーボモータの駆動によってテーブル33をX軸方向、Y軸方向へ移動させることにより、動翼本体17の先端部と第1電極21が上下に対向するように、動翼本体17の位置決めを行う。なお、テーブル33をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0035】
そして、前記Z軸サーボモータの駆動によって第1電極21を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ移動させつつ、電気絶縁性のある液SL中において、前記適正な放電条件の下で、動翼本体17の先端部と第1電極21との間にパルス状の放電を発生させる。これによって、図5(b)に示すように、その放電エネルギーにより、第1電極21の材料或いは該材料の反応物質を動翼本体17の先端部に溶着させて、動翼本体17の先端部に肉盛層19を形成する。なお、パルス状の放電を発生させる際に、前記Z軸サーボモータの駆動によって第1電極21を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0036】
肉盛層19を形成した後に、前記X軸サーボモータ、前記Y軸サーボモータの駆動によってテーブル33をX軸方向、Y軸方向へ移動させることにより、肉盛層19の翼腹側19aと第2電極25又は別の第2電極27が上下に対向するように、動翼本体17の位置決めを行う。なお、テーブル33をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。そして、前記Z軸サーボモータの駆動によって第2電極25又は別の第2電極27を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ移動させつつ、電気絶縁性のある液SL中において、前記適正な放電条件の下で、肉盛層19の翼腹側19aと第2電極25又は別の第2電極27との間にパルス状の放電を発生させる。これによって、図5(c)に示すように、その放電エネルギーにより、第2電極25又は別の第2電極27の材料或いは該電料の反応物質を肉盛層19の翼腹側19aに溶着させて、アブレイシブ性のあるアブレイシブ・コート23を形成する。なお、パルス状の放電を発生させる際に、前記Z軸サーボモータの駆動によって第2電極25又は別の第2電極27を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0037】
以上により、チタン合金により構成された動翼本体17からチタン製動翼11を製造することができる。
【0038】
次に、第1の実施形態の作用について説明する。
【0039】
肉盛層19の翼腹側19aにアブレイシブ・コート23が形成されているため、チタン製圧縮機ロータ7の回転中にアブレイシブ・コート23がチタン製圧縮機ケース5の内面に接触しても、チタン製圧縮機ケース5の内面がアブレイシブ・コート23によって削られるだけで、チタンファイヤーが生じることはない。換言すれば、動翼本体17の先端部に肉盛層19を介して形成されたアブレイシブ・コート23によってチタンファイヤーを防止することができる。
【0040】
更に、アブレイシブ・コート23の下地として、コバルト・クロム合金又はニッケル合金からなる肉盛層19が形成されているため、アブレイシブ・コート23がアブレイシブ機能を奏しなくなった場合でも、チタンファイヤーが生じることがなく、安全性を高めることができる。
【0041】
また、アブレイシブ・コート23は、溶射によることなく、放電エネルギーより第2電極25又は別の第2電極27の材料等を肉盛層19に溶着させることによって形成されるため、アブレイシブ・コート23の範囲を放電が生じる範囲に限定することができ、アブレイシブ・コート23を形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、アブレイシブ・コート23を形成した後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ不要になる。同様に、肉盛層19は、溶射によることなく、放電エネルギーより第2電極25又は別の第2電極27の材料等を動翼本体17の先端部に溶着させることによって形成されるため、肉盛層19の範囲を放電が生じる範囲に限定することができ、肉盛層19を形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、肉盛層19を形成した後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ不要になる。
【0042】
更に、融合部B1,B2は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるよう構成されているため、換言すれば、肉盛層19及びアブレイシブ・コート23を形成する際に適正な放電条件を選択しているため、動翼本体17の母材の変形を抑えつつ、肉盛層19及びアブレイシブ・コート23の密着強度を高めることができる。
【0043】
以上の如き、第1の実施形態によれば、動翼本体17の先端部に肉盛層19を介して形成されたアブレイシブ・コート23によってチタンファイヤーを防止できるため、チタン製圧縮機ケース5の内面に前述のようなポーラス状のアブレイダブル・コートを形成する必要がなくなる。そのため、チタン製圧縮機ケース5内における空気抵抗を小さくして、圧縮機1の圧縮効率の低下を抑制できる。
【0044】
また、アブレイシブ・コート23の範囲を放電が生じる範囲に限定することができ、アブレイシブ・コート23を形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、アブレイシブ・コート23を形成した後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ不要になるため、圧縮機1の製造に要する工程数、換言すれば、チタン製動翼11の製造に要する工程を削減して、作業能率の向上を容易に図ることができる。
【0045】
更に、動翼本体17の母材の変形を抑えつつ、肉盛層19及びアブレイシブ・コート23の密着強度を高めることができるため、チタン製動翼11の品質、換言すれば、圧縮機1の品質が安定する。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について図1、図4、図6、図7、図8、及び図9を参照して説明する。
【0047】
図1、図8、及び図9に示すように、第2の実施形態に係わるチタン製動翼49は、第1の実施形態に係わるチタン製動翼11と同様に、ジェットエンジン3における圧縮機1に用いられるものであって、チタン合金により構成された動翼本体17を備えてあって、この動翼本体17は、基端側に、ダブテール溝9sに嵌合可能なダブテール17dを有している。また、チタン製圧縮機ケース5の内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、動翼本体17の先端部における翼腹側17aから前縁側17fにかけての部位には、アブレイシブ性のあるアブレイシブ・コート51が形成されている。
【0048】
そして、アブレイシブ・コート51は、前述の第2電極25と同じ構成の電極53を用い、電気絶縁性のある液S中において、動翼本体17の先端部における翼腹側17aから前縁側17fにかけての部位と電極53との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、電極53の材料或いは該材料の反応物質を動翼本体17の先端部における翼腹側17aから前縁側17fにかけての部位に溶着させることによって、形成されるものである。なお、電気絶縁性のある液S中において、パルス状の放電を発生させる代わりに、電気絶縁性のある気中において、パルス状の放電を発生させるようにしても差し支えない。
【0049】
一方、電極53の代わりに、前述の別の第2電極27と同じ構成の別の電極55を用いてもよい。そして、この場合には、電気絶縁性のある油中において、パルス状の放電を発生させる。
【0050】
更に、アブレイシブ・コート51と動翼本体17の境界には、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部(融合層)Bが生成されている。そして、アブレイシブ・コート51を形成する際に適正な放電条件を選択することによって、融合部Bは、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されている。なお、前記適正な放電条件は、ピーク電流が30A以下で、パルス幅が200μs以下であって、好ましくは、ピーク電流が20A以下で、パルス幅が20μs以下である。
【0051】
ここで、融合部Bの厚さが3μm以上かつ20μm以下になるようにしたのは、第1の実施形態における融合部B1,B2と同様に、図6及び図7に示す試験結果に基づくものである。
【0052】
図4及び図9に示すように、第2の実施形態に係わるチタン製動翼の製造方法は、チタン合金により構成された動翼本体17からチタン製動翼49を製造するための方法であって、具体的には、次のようになる。
【0053】
即ち、図9(a)に示すように、動翼本体17の先端部が上方向を向いた状態の下で、治具39によって動翼本体17のダブテール17dをクランプすることにより、動翼本体17を加工槽35内の所定位置にセットする。次に、前記X軸サーボモータ、前記Y軸サーボモータの駆動によってテーブル33をX軸方向、Y軸方向へ移動させることにより、動翼本体17の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と第2ホルダ45に保持された電極53が上下に対向するように、動翼本体17の位置決めを行う。なお、テーブル33をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。
【0054】
そして、前記X軸サーボモータ、前記Y軸サーボモータの駆動によってテーブル33をX軸方向、Y軸方向へ移動させることにより、動翼本体17の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と電極53又は別の電極55が上下に対向するように、動翼本体17の位置決めを行う。なお、テーブル33をX軸方向とY軸方向のうちのいずれかの方向に移動させるだけで足りる場合もある。そして、前記Z軸サーボモータの駆動によって電極53又は別の電極55を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ移動させつつ、電気絶縁性のある液SL中において、前記適正な放電条件の下で、動翼本体17の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と電極53又は別の電極55との間にパルス状の放電を発生させる。これによって、図9(b)に示すように、その放電エネルギーにより、電極53又は別の電極55の材料或いは該電料の反応物質を動翼本体17の先端部における翼腹側17aから前縁側17fにかけての部位に溶着させて、アブレイシブ性のあるアブレイシブ・コート51を形成する。なお、パルス状の放電を発生させる際に、前記Z軸サーボモータの駆動によって電極53又は別の電極55を加工ヘッド41と一体的にZ軸方向へ僅かな移動量だけ往復させる。
【0055】
以上により、チタン合金により構成された動翼本体17からチタン製動翼49を製造することができる。
【0056】
次に、第2の実施形態の作用について説明する。
【0057】
動翼本体17の先端部における翼腹側17aから前縁側17fにかけての部位にアブレイシブ・コート51が形成されている、チタン製圧縮機ロータ7の回転中にアブレイシブ・コート51がチタン製圧縮機ケース5の内面に接触しても、チタン製圧縮機ケース5の内面がアブレイシブ・コート51によって削られるだけで、チタンファイヤーが生じることはない。換言すれば、動翼本体17の先端部に形成されたアブレイシブ・コート51によってチタンファイヤーを防止することができる。
【0058】
また、アブレイシブ・コート51は、溶射によることなく、放電エネルギーより電極53又は別の電極55の材料等を動翼本体17の先端部に溶着させることによって形成されるため、アブレイシブ・コート51の範囲を放電が生じる範囲に限定することができ、アブレイシブ・コート51を形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、アブレイシブ・コート51を形成した後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ不要になる。
【0059】
更に、融合部Bは、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるよう構成されているため、換言すれば、アブレイシブ・コート51を形成する際に適正な放電条件を選択しているため、動翼本体17の母材の変形を抑えつつ、アブレイシブ・コート51の密着強度を高めることができる。
【0060】
以上の如き、第2の実施形態によれば、動翼本体17の先端部に形成されたアブレイシブ・コート51によってチタンファイヤーを防止できるため、チタン製圧縮機ケース5の内面に前述のようなポーラス状のアブレイダブル・コートを形成する必要がなくなる。そのため、チタン製圧縮機ケース5内における空気抵抗を小さくして、圧縮機1の圧縮効率の低下を抑制できる。
【0061】
また、アブレイシブ・コート51の範囲を放電が生じる範囲に限定することができ、アブレイシブ・コート51を形成する前におけるブラスト処理,マスキングテープの貼り付け処理等の前処理、アブレイシブ・コート51を形成した後におけるマスキングテープの除去処理等の後処理がそれぞれ不要になるため、圧縮機1の製造に要する工程数、換言すれば、チタン製動翼49の製造に要する工程を削減して、作業能率の向上を容易に図ることができる。
【0062】
更に、動翼本体17の母材の変形を抑えつつ、アブレイシブ・コート51の密着強度を高めることができるため、チタン製動翼49の品質、換言すれば、圧縮機1の品質が安定する。
【0063】
以上のように、本発明をいくつかの好ましい実施形態により説明したが、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【0064】
また、2004年1月14日に日本国特許庁に出願された特願2004−007282号の内容は、参照により本願の内容に引用されたものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機にあって、
チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;
前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備え、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、
前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、
前記チタン製動翼は、
チタン合金により構成された動翼本体と;
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した第2成形体、又は加熱処理した前記第2成形体により構成される第2電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を備えたことを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機にあって、
チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;
前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備え、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、
前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、
前記チタン製動翼は、
チタン合金により構成された動翼本体と;
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;
Siの固形物、Siの粉末から成形した第2成形体、或いは加熱処理した前記第2成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を備えたことを特徴とする圧縮機。
【請求項3】
前記肉盛層と前記動翼本体の先端部の境界、前記アブレイシブ・コートと前記肉盛層の境界に、それぞれ、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部が生成され、前記融合部は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機であって、
チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;
前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備えてあって、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、
前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、
前記チタン製動翼は、
チタン合金により構成された動翼本体と;
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した成形体、又は加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を備えたことを特徴とする圧縮機。
【請求項5】
ジェットエンジンに用いられ、空気を圧縮する圧縮機であって、
チタン合金により構成されたチタン製圧縮機ケースと;
前記チタン製圧縮機ケースの内側に配設され、複数のチタン製動翼を等間隔に備えてあって、前記チタン製圧縮機ケースのケース軸心を中心として回転可能な圧縮機ロータと;を具備しており、
前記チタン製圧縮機ケースの内面にアブレイダブル・コートが形成される代わりに、
前記チタン製動翼は、
チタン合金により構成された動翼本体と;
Siの固形物、Siの粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を備えたことを特徴とする圧縮機。
【請求項6】
前記アブレイシブ・コートと前記肉盛層の境界に、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部が生成され、前記融合部は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記セラミックスは、cBN、TiC、TiN、TiAlN、TiB2、WC、SiC、Si3N4、Cr3C2、Al2O3、ZrO2−Y、ZrC、VC、B4Cのうちいずれか1種の材料又は2種以上の混合材料であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の圧縮機。
【請求項8】
ジェットエンジンにおける圧縮機に用いられるチタン製動翼であって、
チタン合金により構成された動翼本体と;
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した第2成形体、又は加熱処理した前記第2成形体により構成される第2電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を具備したことを特徴とするチタン製動翼。
【請求項9】
ジェットエンジンにおける圧縮機に用いられるチタン製動翼であって、
チタン合金により構成された動翼本体と;
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部に形成された肉盛層と;
Siの固形物、Siの粉末から成形した第2成形体、或いは加熱処理した前記第2成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させることによって、前記肉盛層の翼腹側に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を具備したことを特徴とするチタン製動翼。
【請求項10】
前記肉盛層と前記動翼本体の先端部の境界、前記アブレイシブ・コートと前記肉盛層の境界に、それぞれ、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部が生成され、前記融合部は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のチタン製動翼。
【請求項11】
ジェットエンジンにおける圧縮機に用いられるチタン製動翼において、
チタン合金により構成された動翼本体と;
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した成形体、又は加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を具備してなることを特徴とするチタン製動翼。
【請求項12】
ジェットエンジンにおける圧縮機に用いられるチタン製動翼において、
チタン合金により構成された動翼本体と;
Siの固形物、Siの粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させることによって、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に形成されたアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートと;
を具備してなることを特徴とするチタン製動翼。
【請求項13】
前記アブレイシブ・コートと前記肉盛層の境界に、組成比が厚さ方向へ傾斜的に変化する融合部が生成され、前記融合部は、厚さが3μm以上かつ20μm以下になるように構成されたことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載のチタン製動翼。
【請求項14】
前記セラミックスは、cBN、TiC、TiN、TiAlN、TiB2、WC、SiC、Si3N4、Cr3C2、Al2O3、ZrO2−Y、ZrC、VC、B4Cのうちいずれか1種の材料又は2種以上の混合材料であることを特徴とする請求項8又は請求項11に記載のチタン製動翼。
【請求項15】
請求項8から請求項14のうちのいずれかの請求項に記載のチタン製動翼を具備したことを特徴とする圧縮機。
【請求項16】
請求項1から請求項7、請求項15のうちのいずれかの請求項に記載の圧縮機を具備したことを特徴とするジェットエンジン。
【請求項17】
チタン合金により構成された動翼本体から、チタン製動翼を製造するためのチタン製動翼の製造方法であって、
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させて、前記動翼本体の先端部に肉盛層を形成し、
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した第2成形体、又は加熱処理した前記第2成形体により構成される第2電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させて、前記肉盛層の翼腹側にアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートを形成することによって、前記動翼本体から前記チタン製動翼を製造することを特徴とするチタン製動翼の製造方法。
【請求項18】
チタン合金により構成された動翼本体から、チタン製動翼を製造するためのチタン製動翼の製造方法であって、
コバルト・クロム合金の粉末若しくはニッケル合金の粉末から成形した第1成形体、又は加熱処理した前記第1成形体により構成される第1電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部と前記第1電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーより、前記第1電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部に溶着させて、前記動翼本体の先端部に肉盛層を形成し、
Siの固形物、Siの粉末から成形した第2成形体、或いは加熱処理した前記第2成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記肉盛層の翼腹側と前記第2電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記第2電極の材料或いは該材料の反応物質を前記肉盛層の翼腹側に溶着させて、前記肉盛層の翼腹側にアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートを形成することによって、前記動翼本体から前記チタン製動翼を製造することを特徴とするチタン製動翼の製造方法。
【請求項19】
チタン合金により構成された動翼本体から、チタン製動翼を製造するためのチタン製動翼の製造方法において、
金属の粉末とセラミックスの粉末との混合粉末、或いは導電性のあるセラミックスの粉末から成形した成形体、又は加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある液中又は気中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させて、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位にアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートを形成することによって、前記動翼本体から前記チタン製動翼を製造することを特徴とするチタン製動翼の製造方法。
【請求項20】
チタン合金により構成された動翼本体から、チタン製動翼を製造するためのチタン製動翼の製造方法において、
Siの固形物、Siの粉末から成形した成形体、或いは加熱処理した前記成形体により構成される電極を用い、電気絶縁性のある油中において、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位と前記電極との間にパルス状の放電を発生させ、その放電エネルギーにより、前記電極の材料或いは該材料の反応物質を前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位に溶着させて、前記動翼本体の先端部における翼腹側から前縁側にかけての部位にアブレイシブ性のあるアブレイシブ・コートを形成することによって、前記動翼本体から前記チタン製動翼を製造することを特徴とするチタン製動翼の製造方法。
【請求項21】
パルス状の放電を発生させる際の放電条件は、ピーク電流が30A以下であって、パルス幅が200μs以下であることを特徴とする請求項17から請求項20のうちのいずれかの請求項に記載のチタン製動翼の製造方法。
【請求項22】
前記セラミックスは、cBN、TiC、TiN、TiAlN、TiB2、WC、SiC、Si3N4、Cr3C2、Al2O3、ZrO2−Y、ZrC、VC、B4Cのうちいずれか1種の材料又は2種以上の混合材料であることを特徴とする請求項17又は請求項19に記載のチタン製動翼の製造方法。
【請求項23】
請求項17から請求項22のうちのいずれかの請求項に記載のチタン製動翼の製造方法によって製造されたことを特徴とするチタン製動翼。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/068845
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517086(P2005−517086)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000410
【国際出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】