説明

圧縮脱液装置

【課題】圧縮脱液装置において、破砕機能を付加不要、又は、破砕機能を付加してもコンパクト設計が容易で、しかも、使用後の洗浄が容易となる圧縮脱液装置を提供すること。
【解決手段】含水有機物等を圧縮脱液するための装置。圧縮脱液ゾーンを形成する脱液バレル3Aと、該処理バレル内を回転するスクリュー7とを備え、該スクリュー7の元部側に原料供給口14を、先端側に製品排出口28をそれぞれ配する。脱液バレル3Aは、スクリュー7に共回り不可に遊嵌され、外周部にスペーサ部12a(12b)を複数個備えた多数の非回転環状板12と、スクリューに嵌合されて前記スクリュー回転により揺動する多数の揺動環状板13とを、交互に配して形成する。さらに、脱液バレル3Aの前には背圧板17を配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な圧縮脱液機能を備えた脱液装置に関する。特に、食品・薬品分野において発生する含水率(含液率)が高く固形分を含有する廃棄物[例えば、果汁絞り粕、漢方薬絞り糟、抽出残渣(茶殻、コーヒー滓)、野菜屑]を、適宜、破砕後、圧縮脱液するのに好適な装置に係る。
【0002】
ここでは、食品分野等における高含水廃棄物に適用して破砕(粉砕)・圧縮脱水(圧縮脱液)する場合を例に採り説明する。これ以外に、本発明の圧縮脱液装置は、油成分等を含む油粕等の高含液廃棄物、さらには各種汚泥や畜糞尿(敷き藁等を含んでいる。)にも勿論適用できる。
【背景技術】
【0003】
生ゴミ等の高含水廃棄物を、破砕後、連続的にスクリュープレス等で圧縮脱水する機能を備えた圧縮脱水装置は、公知である(特許文献1・2等)。
【0004】
そして、これらの圧縮脱水装置を用いて、食品・薬品分野の圧縮脱水を行なった場合、圧縮脱水後に、装置内(圧縮脱液ゾーン)を隅々まで洗浄する必要があり、また、運転途中で詰まりが発生した場合も装置内(圧縮脱液ゾーン:処理バレル)洗浄をする必要がある。
【0005】
しかし、処理バレル内はスクリュー等が内蔵されているため、スクリュー等を取り外さなければ、装置内の隅々まで洗浄することは困難であった。隅々まで洗浄しないと、目詰まりが発生して脱水能力も低下し易かったり、更には、脱水後製品に汚染も発生し易かったりした。更に、運転途中で処理バレル内を洗浄することは、運転を長時間中止する必要があり、生産性を低下させた。
【0006】
更に、それらの圧縮脱水装置は、破砕および圧縮脱水を略同時的に行なうものではなく、コンパクト化が困難であった。
【特許文献1】特開2000−325914号公報
【特許文献2】特開2002−18397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記にかんがみて、使用後の処理バレル内の隅々までの洗浄が容易となる圧縮脱液装置を提供することを第一の目的(課題)とする。
【0008】
本発明は、破砕機能を付加不要、又は、破砕機能を付加してもコンパクト設計が容易な圧縮脱液装置を提供することを第二の目的(課題)とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、上記第一の目的を達成できる、下記構成の圧縮脱液(脱水)装置に想到した。
【0010】
圧縮脱液機構を備えた装置であって、
処理バレルと、該処理バレル内を回転するスクリューとを備え、更に、該スクリューの元部側に原料供給口を、先端側に製品排出口をそれぞれ備え、
前記処理バレルは、圧縮脱液ゾーンを備え、
該圧縮脱液ゾーンは、脱液バレルと、製品排出量を抑制する絞り手段とを備えて、スクリューの推進作用により原料が圧縮脱液可能とされ、
前記脱液バレルは、固定された後フランジと、軸方向にスライド可能とされた前フランジとの間に、多数の環状板の群が、該環状板の相互間に周方向に多数の脱液スリットを形成可能に複数の連結ロッドにより積層締結されて構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成において、前記環状板を、複数個の円弧状板の両端連結重合部を相互に連結させて形成された分割環状板とし、前記円弧状板の前記連結重合部の少なくとも一方に、前記連結ロッドとの係合解除可能な方向に形成されたU字状カットを備えている構成とすることができる。
【0012】
連結ロッドの締結を緩めて、脱液バレルを縦方向で開き可能又は円弧状板を取り外し可能とすることができて、前記本発明の第一の目的をより達成し易くなる。
【0013】
また、上記構成において、前記脱液バレルを、スクリューが共回り不可に遊嵌され、外周部にスペーサ部を複数個備えた多数の非回転環状板と、各非回転環状板の相互間に連続的又は間欠的に配して、前記スクリューの回転により揺動する多数の揺動環状板とからなる複合横断分割板群で形成すれば、脱液バレル内での粉砕が揺動環状板の作用により同時的にでき、上記第二の目的を達成することができる。
【0014】
さらに、原料供給口と圧縮脱液ゾーンとの間に、内周面に1個又は複数個の破砕用縦溝を備えている破砕バレルにより、破砕ゾーンを形成した場合は、多様な原料の破砕に対応できる圧縮脱水装置のコンパクト設計がより容易となり、上記第二の目的をより達成し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の圧縮脱液装置の望ましい実施態様A・Bについて説明する。
【0016】
<実施形態A>
基本的には、本装置は、処理バレル3、3Aと、該処理バレル3、3A内を回転するスクリュー7を備え、更に、該スクリュー7のスクリュー羽根7bの開始部位バレル3Bに原料供給口(原料ホッパ14)を、スクリュー羽根7bの終端部位の先側に製品排出口(製品シュート28)を、それぞれ備えたものである。
【0017】
具体的には、架台24、24上に縦方向に配された板状の本体フレーム2、2(図3参照)および前後端に配された前・後支持板25、25Aで、スクリュー7、製品シュート28が支持され、さらに前支持板25が、モータ(減速モータ)21のベースとされている。原料ホッパ14は、スクリュー羽根の開始部位バレル3Bの上半分が切りかかれて取り付けられている。なお、図1における図符号「23」は軸受け、図3における図符号「29」は連結ロッド孔である。
【0018】
本実施形態では、前記処理バレル3、3Aにより、破砕ゾーンZ1および圧縮脱液ゾーンZ2がスクリュー7の推進方向(原料流れ方向)に沿って連続的に形成されている。破砕ゾーンZ1は必然的ではなく、圧縮脱液ゾーンZ2のみでもよい。
【0019】
そして、破砕ゾーンZ1は、内周面に1個又は複数個(図例では2個)の破砕用縦溝8を備えた無孔の破砕バレル3で形成されている。
【0020】
具体的には、該破砕バレル3は、母線方向で分割されて(図例では2分割)、組み付け分解可能とされるとともに、前記隣接分割線間にスペーサ板5、5を挿入して前記破砕用縦溝8が形成されている。図例では、本体フレーム2、2の中間位置から突設された破砕バレル3の支持板5でスペーサ板を兼ねている。即ち、支持板5に破砕バレル3半割体の分割部に沿って形成されたフィン部3aで、支持板(スペーサ板)5を挟持してねじ6固定することにより、破砕バレル3が本体フレーム2、2に取り付けられている。ここで、破砕用縦溝8の深さ及び幅は、スペーサ板(支持板)5の本体フレーム2からの突出長さ及び板厚により調節する。通常、破砕用縦溝8の深さ及び幅は、原料の種類により異なるが、例えば、深さ:5〜15mm、幅:5〜15mmとする。
【0021】
ここで、破砕バレル3の分割数は、図例の2分割体に限られない。スクリュー羽根7bが大径の場合は、適宜、3〜6分割体とすることができる。
【0022】
なお、スクリュー羽根7bの外径は、通常、100〜600mmとする。
【0023】
破砕用縦溝8に入り込んだ原料は、スクリュー羽根7bでカットされるとともに、順次送り込まれてくる原料に押し出されて、前方へ進む。
【0024】
なお、破砕用縦溝8の代わりに、破砕バレル3の内面にスクリュー7が回転可能な破断用ネジ溝を形成して、破砕ゾーンZ1とすることもできる。
【0025】
また、圧縮脱液ゾーンZ2を形成する脱液バレル3Aは、スクリュー7に共回り不可に遊嵌され、外周部にスペーサ部12a(12b)を複数個備えた多数の非回転環状板12(12A)と、前記スクリュー7に嵌合されてスクリュー回転により揺動する多数の揺動環状板13の群とが交互に配されるとともに、非回転環状板12の群が、固定された後フランジ(破砕バレル3の前フランジを兼ねる)4と、軸方向にスライド可能とされた前フランジ9との間に挟持締結されて形成されている。なお、ここで円環状とは、脱液バレルの内周面が円断面を形成するものであればよく、外周面は円断面である必然性はなく、多角断面でもよい。
【0026】
図6(B)に示すように、スペーサ部12bを非回転環状板12の両側に突出する構成とした場合は、非回転環状板12のピッチを大きくする設計が容易となり、結果的に、非回転環状板12および揺動環状板13の枚数を少なくすることができる。
【0027】
具体的には、非回転環状板12(12A)と揺動環状板13とは、交互にスクリュー7に嵌合されている。そして、非回転環状板12(12A)は、固定された後フランジ(破砕バレル3の前フランジを兼ねる)4と、スライド可能な前フランジ9との間に、1個又は複数本の連結ロッド(回り止めロッド)10によりスペーサ部12a(12b)を介して締結されて固定されている。すなわち、スペーサ部12a(12b)は、の放射方向に開口して形成されたU字形切欠き12cを備え、該U字形切り欠き22に連結ロッド10を係合させてスクリュー7と共回り不可とされている。なお、スペーサ部12a(12b)に形成するU字形切欠き12cは、図7に示す非回転環状板12Bの如く、周方向に開口を有するものとすることができる。
【0028】
上記の如く、非回転環状板12(12A)がスクリュー7と共回り不可な状態で、揺動環状板(ドーナツ板)13がスクリュー7により揺動(軸方向の擦り(滑り)移動乃至共回り)する。このため、当該揺動環状板13の揺動作用による破砕機能も期待できる。
【0029】
なお、スクリュー羽根7bの外周縁を波状乃至鋸歯状とすることにより、より細かい破砕(粉砕)機能が期待できる。
【0030】
必然的ではないが、スクリュー羽根7bの形態は、推進方向にピッチを段階的に小さくしたものが好ましい(図1参照)。脱液圧縮力が段階的に増大して、脱液効率の増大が期待できる。
【0031】
ここで、非回転環状板12(12A)とスクリュー羽根7bとの嵌合寸法の関係は、プラス嵌合(遊嵌)関係にあればよく、通常、非回転環状板内径−スクリュー外径=1〜2mmとする。小さすぎると摩耗が発生し易くなる。逆に、大きすぎると、スクリュー羽根7bと非回転環状板12との間に原料の逃げやすくなり、スクリュー7による脱水に必要な圧縮力を得難くなる。
【0032】
揺動環状板13とスクリュー羽根7bとの嵌合寸法の関係は、プラス嵌合であってもよいが、ゼロ乃至マイナス嵌合(揺動環状板内径≦スクリュー羽根外径)とすることが望ましい。スクリュー羽根7bの回転により揺動環状板13を確実に揺動させることができる。なお、スクリューの径により異なるが、例えば、スクリュー羽根外径−揺動環状板内径=1〜2mmとする。
【0033】
この数値が、小さすぎると、相対的に揺動環状板13の内径が大きくなって、揺動環状板13と非回転環状板12(12A)と間に破砕に必要な内径差(段差)を確保し難くなる。内径段差に基づく原料固形分の圧縮作用乃至破砕作用を得難くなる。逆に、上記数値が大きすぎると、スクリュー7の挿入時に手間が掛かかるとともに、揺動環状板13に摺り(滑り:逃げ)移動が発生し難くなり、非回転環状板12(12A)と揺動環状板13との相互面間で摩耗が発生し易い。
【0034】
非回転環状板12(12A)のスペーサ部12a(12b)の板厚t、及び/又は、揺動環状板13の板厚を変えることにより、脱液スリット15を調節でき、あらゆる形態・性質の含液原料まで対応可能である。即ち、含水原料ばかりでなく、通常、圧縮脱液が困難(特に、フィルタープレスによる)とされている含油原料まで適用可能である。ここで、脱液(脱水)スリット15は、処理原料、設定脱液率等により異なるが、通常、0.1〜2mm(望ましくは、0.2〜1mm)の範囲で適宜設定する。なお、各環状板12(12A)、13の板厚は、鋼板等で製作する場合、1〜6mmの範囲で適宜設定する。
【0035】
また、スクリュー7の推進方向(原料の移動方向)に沿って、脱液スリット15、15の幅を順次に小さくしていけば、脱液効率の増大が期待できる。
【0036】
そして、脱液バレル3Aの前フランジ9の手前でスクリューシャフト7aに背圧板(絞り手段)17が、任意位置にセットボルト20で固定可能となっている。この背圧板17により製品排出量を絞ることにより、処理能力および脱液率の調節が可能となる。背圧板17の代わりに、多孔板を使用してもよい。なお、多孔板の開口率は30〜50%とする。また、背圧板17は、スクリューシャフト7aに軸受け保持して非回転式とすることも可能である。
【0037】
さらに、脱液バレル3Aの下面に、脱液の回収を容易にするために、脱液シュート26が配されている。なお、脱液シュート26の出口には除塵メッシュを配しておくことが望ましい。また、脱液バレル3Aの全長に亘る脱液受け槽を配してもよい。
【0038】
次に、上記実施形態の使用態様を説明する。
【0039】
予め、含液原料(被処理物)に対応する、脱液スリット幅、背圧板隙間、さらには、スクリュー回転数を設定する。
【0040】
そして、原料ホッパ14に含液原料を所定量投入後、モータ21を起動してスクリュー7を回転させる。
【0041】
すると、原料はスクリュー7により破砕バレル3から脱液バレル3Aへ順次送り込まれる。
【0042】
そして、破砕バレル3(破砕ゾーンZ1)では、原料中の固形分は、スクリュー羽根7bと破砕用縦溝8との間に咬み込まれて、破砕される。
【0043】
そして、脱液バレル3A(圧縮脱液ゾーンZ2)では、スクリュー7の原料押出(推進)作用と背圧板17の背圧作用で原料が圧縮されて絞り作用を受ける。この圧縮により発生した液体(水)は、脱液スリット15から順次脱液(排液)されて、脱液シュート26を介して、バケツ等の受け容器で回収される。また、脱液後の製品は、製品シュート28から排出されて回収される。
【0044】
さらに、脱液バレル3Aは、内側に非回転環状板12(12A)と揺動環状板13との内径差により内周面が段状凹凸で形成される。この内周面の凹部にスクリュー7との推進作用と背圧板17の背圧作用により圧縮されて原料固形分が移動してくると、該原料固形分はスクリュー7の推進作用と揺動回転する揺動環状板13の圧縮乃至剪断作用で破砕(粉砕)される。
【0045】
また、揺動環状板がスクリューの回転と原料の押圧作用によって揺動(回転)することにより、脱液スリット15の入口の付着物が除去され洗浄される。すなわち、目詰まりが発生せず、良好な脱水能を維持できる。さらに、前記段状凹凸の段差が原料固形分の移動を阻止する堰の作用を奏し、該段差で、原料固形分は更なる圧縮作用を受けて脱液(脱水)される。
【0046】
この際、スクリュー7は、間欠的に逆転させることにより、上記運転中の洗浄・脱水・破砕の各作用を増大させることができる。
【0047】
脱液バレル3A内(圧縮脱液ゾーンZ2)の洗浄に際して、脱液バレル3Aの前フランジ9を緩めれば、非回転環状板12(12A)相互の、更には、非回転環状板12(12A)と環状板13相互の隙間を広げることができる。このため、圧縮脱液ゾーンZ2の水洗等による洗浄が容易となる。
【0048】
例えば、原料の粘性が強かったり、油分を多く含んだりすると、脱液運転中でも、脱液スリット15が部分的に詰まり易い。この場合、連結ロッド10を緩めて、可動設定フランジ9を前方(背圧板17方向)へ移動させれば非回転環状板12相互間の脱液スリット15の幅を広げることができる。こうして、詰まりが発生した脱液スリット15の幅を広げた状態で、詰まりが発生した部位の脱液スリット15のみ、外周から噴射水洗浄を行なう。こうして、圧縮脱液運転を継続することができる。
【0049】
また、非回転環状板12Bとして、図7に示す如く、連結ロッド10が係合するスペーサ部12a(12b)のU字形切欠き12cが周方向に開口を有するものを使用した場合は、非回転環状板12Bを連結ロッド10から取り外すことができ、洗浄がさらに容易となる。
【0050】
<実施形態B>
図9に本実施形態の全体概略部分断面図を示す。
【0051】
本実施形態は、基本的には、前記実施形態Aと共通するため、共通部分については、一桁又は二桁の図符号に三桁位置を「1」とした図符号を付して、それらの説明の全部又は一部を省略する。以下、実施形態Aと相違する部分を主にして説明する。
【0052】
本実施形態では、脱液シュート126を、スクリュー羽根107bの開始部位バレル103B位置まで伸ばすとともに、該バレル103Bの底部側(原料ホッパ114対応部位)には脱液用孔群103bを形成してある。原料投入に際して、原料108に含まれる雫(付着水)を落下分離させることができる。このため、脱液ゾーンZ2における脱液能が向上する。なお、脱液用孔群103bの形態は、例えば、周面に沿った0.5〜1.0mm幅の断面鋸歯状のスリット群又は0.5〜1.0mmΦの丸孔群とすることができる。
【0053】
また、実施形態Aとの最大相違点は、脱液バレルを形成する環状板を、分割環状板112とした点にある。
【0054】
具体的には、図10・11に示すような、対称形で対を成す円弧状板(半円環状板)で構成されている。そして、円弧状板本体の両端連結重合部111aの一方に連結ロッド110にヒンジ連結されるロッド挿通孔111cを備え、同じく他方に連結ロッド110との係合を解除可能な方向に形成されたU字状カット111bを備えている。
【0055】
そして、円弧状板111、111Aを組み合わせて、図12の二点鎖線で示す如く、分割環状板112を形成する。こうして、図13に示すように、脱液バレル103Aの両側面に交互に板厚分ずつずれて、略半周ずつの長さを有するずれ脱液スリット115、115が形成される。
【0056】
当該構成により脱液バレル103Aは、連結ロッド110で連結された左右の円弧状板(半円環状板)111、111Aが、連結ロッド110を枢軸として鳥が翼を広げるように開閉可能となる(図12)。このため、本装置を使用後の乃至使用開始時の洗浄に際して、連結ロッド110の締結ナット116を緩めれば、脱液バレル103Aを縦方向に分割して開くことができ、洗浄作業性がより容易となる。
【0057】
なお、図13に示すように、形成される略半周長さの脱液スリット115の幅は、各円弧状板111、111Aの各板厚tと同一となる。ここで、各半円環板111、111Aの板厚は、例えば、0.2〜2mm、望ましくは、0.3〜1.5mmとし、同一板厚とするが、板厚を、順次薄肉として行くこともできる。当該構成とすることにより、脱液効率の増大が期待できる。
【0058】
そして、図13に示す如く、分割環状板112の各内径を、スクリュー羽根摺接径とスクリュー羽根遊嵌径として、交互に積層すれば、脱液バレルの内周面が軸方向の段状凹凸で形成され、原料に対する圧縮力及び破砕力が増大する。
【0059】
なお、脱液バレル103Aの外径は、分割環状板112の板厚にもよるが、スクリュー羽根107bの外径プラス10〜20mm程度のものとする。
【0060】
また、図10の二点鎖線で示すように、内周側に1個又は複数個の突起111dを備えた分割環状板112を、分割環状板112の所定枚数積層毎に配するとともに、図14に示す如く、スクリュー羽根107bにフィンのピッチに合わせて切欠き部107cを形成することもできる。当該構成により、脱液バレル103A内をスクリュー107により推し出されてきた原料が、円弧状板111に形成されたフィン(突起)111dにより堰き止められ、フィン111dと羽根切欠き部107cとで剪断力を受けて原料の破砕が促進される。また、フィン111dにより原料が堰き止められることにより、原料のスクリュー羽根107bによる共回りも阻止される。このため、原料に対する圧縮力が適正に作用して脱液性が向上する。
【0061】
なお、分割環状板112を図15に示すような円弧状板(半円環状板)111Bを用いて構成することもできる。なお、円弧状板111Bと対をなして分割環状板112を構成する他方の円弧状板(半円環状板)は、円弧状板111Bと対称形となるため図示は省略した。
【0062】
円弧状板111Bは、連結重合部111aの板厚tを、(本体)板厚tより薄く、かつ、スクリュー推進方向で隣接する前記連結重合部111aを合計板厚2tが本体板厚tよりも厚くなるようにしたものである。
【0063】
この円弧状板111Bを使用することにより、図16に示す如く、円弧状板111Bの本体板厚tより薄い設定幅のスリット115を形成可能となる。即ち、円弧状板111Bの板厚を相対的に厚くすることが可能となる。
【0064】
ここで、各円弧状板111Bの板厚をt及び連結重合部の板厚をtとするとき、スリット幅α=2tーtとなる。
【0065】
なお、スクリュー羽根径107bが大径である場合は、分割環状板の分割数を3個以上とすることもできる。図17は分割数を6個とした分割環状板112Aの例である。即ち、分割環状板112Aは、三対の円弧状板対111C、111Dを、6個の連結ロッド110で結合したものである。
【0066】
図12・17の分割環状板112、112Aは、交互に開き可能としたものであるが、両端連結重合部ともU字状カットを備えたものとしてもよい。こうした場合は、連結棒10、110の締結ナット16、116を緩めるだけで、円弧状板111、111A(又は、111C,111D)を取り外しことができ、脱液バレル及びスクリューの洗浄がより容易となる。
【0067】
本実施形態Bの使用態様は、前記実施形態Aにおけるものと同様である。
【0068】
但し、脱液バレル103Aが分割環状板112、112Aで形成されているため、脱液バレル103Aを分割位置で開くことができる。このため、前述の実施形態Aに比して、洗浄性が向上する。
【実施例1】
【0069】
図1に示すタイプの実施形態Aの圧縮脱水装置において、下記仕様としたものを使用して、下記条件で脱水テストを行なった。
【0070】
<装置仕様>
スクリュー7・・・シャフト径:80mm、シャフト長さ:1500mm、羽根外径:200mm、羽根ピッチ:160mm×5P、120mm×5P、80mm×4P
破砕バレル3・・・バレル内径:201mm、長さ:600mm
非回転環状板12・・・内径:201mm、板厚:3mm、環状幅:9mm、凹部幅:3mm、スリーブ部の厚さt:6mm;合計:100枚
揺動環状板13・・・内径:198mm、板厚:2.5mm、;合計:100枚
脱液バレル3Aの前フランジ9前面と背圧板17との間の設定隙間:10mm、
<試験方法・結果>
原料として、茶殻(含水率:83%)を用い、処理量500kg/h、スクリュー回転数:60min−1の条件で処理をした。その結果、脱水後の製品は、減容比(重量比・容積比)が約1/2となり、含水率は65%となった。この含水率は、圧縮乾燥では最高値に近いものである。
【0071】
そして、産業廃棄物として処理する場合は、処理費が減容比に比例して約半額となる。また、堆肥原料とする場合は、含水率が発酵(好気)に適したものであり、そのまま堆肥原料とすることができる。更には、天日乾燥を行なえば、家畜飼料とすることもできる。
【実施例2】
【0072】
図9に示すタイプの圧縮脱水装置において、下記仕様としたものを使用して、下記条件で脱水テストを行なった。
【0073】
<装置仕様>
スクリュー107・・・シャフト径:40mm、シャフト長さ:1200mm、羽根外径:100mm、羽根ピッチ:80mm×5P、60mm×5P、40mm×4P、羽根全長:840mm
破砕バレル103・・・バレル内径:100mm、長さ:100mm
脱液バレル103A・・・分割環状板112積層体(全長:560mm)
分割環状板の枚数170枚:大径側85枚、小径側85枚、
小径側内径:100mm、大径側内径:104mm、円環幅:10mm
重合部板厚t1:3.25mm、一般部板圧t2:6.0mm
但し、フィン付き円弧状板枚数17枚を55.25mmピッチで組み込む。
【0074】
フィン寸法:先端幅8mm、元部幅10mm、高さ11mm、
3)分割環状板の連結ロッド配設ピッチP:55.25mm
脱液バレル3Aの前フランジ9前面と背圧板17との間の設定隙間:8mm
減速モータ・・・0.4kW×1/360
<試験方法・結果>
原料として、萌やし屑(含水率:95%)を用い、原料供給量100kg/h、スクリュー回転数:5min−1の条件で処理をした。その結果、脱水後の製品は、13kg程度となり、減容比(重量比・容積比)で約1/8となり、含水率は65%となった。製品状態は、ちょっと湿ったパサパサの状態で、その含水率は、圧縮脱液では最高値に近いものである。
【0075】
そして、産業廃棄物として処理する場合は、処理費が減容比に比例して約1/8となる。また、前述と同様に、肥料原料や、牛・豚等の家畜飼料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明における圧縮脱液装置の実施形態Aを示す概略断面図である。
【図2】図1における破砕ゾーンの図3のII−II線矢視図である。
【図3】図2の縦断面図(バレル内スクリュー省略)である。
【図4】図1における圧縮脱液装置の圧縮脱液ゾーンを示す要部拡大断面図である。
【図5】図1における圧縮脱液装置に使用する非回転環状板の一形態を示す正面図である。
【図6】(A)、(B)は図5のVI−VI線部位における非回転環状板の各断面図である。
【図7】図1において使用する非回転環状板の他の形態を示す正面図である。
【図8】図1において使用する揺動環状板の正面図及び縦断面図である。
【図9】本発明における圧縮脱液装置の実施形態Bを示す概略断面図である。
【図10】実施形態Bの分割環状板を構成する円弧状板の一例における正面図及び側面図である。
【図11】同じく図10の円弧状板と組み合わせる他方の対称形の円弧状板の正面図及び側面図である。
【図12】図10と図11の円弧状板対を用いて分割環状板を形成する場合の説明用正面図である。
【図13】図12に示す分割環状板により形成した脱液バレルの要部平面図である。
【図14】図10に示すフィンを内側に備えた円弧状板で構成した分割環状板を配設した脱液バレルに適用するスクリューの一例を示す正面図である。
【図15】実施形態Bの分割環状板を構成する円弧状板の他の例における正面図及び側面図である。
【図16】図15に示す円弧状板で構成した分割環状板により形成した脱液バレルの要部平面図である。
【図17】多分割タイプの分割環状板の正面図である。
【符号の説明】
【0077】
3、103・・・破砕バレル
3A、103A・・・脱液バレル
7、107・・・スクリュー
9、109・・・脱液バレルの前フランジ
111、111A、111B・・・円弧状板(半円環状板)
111C、111D・・・円弧状板
12、12A・・・非回転環状板(円環状板)
12a、12b・・・スペーサ部
112、112A、・・・分割環状板(円環状板)
13・・・揺動環状板
15、115・・・脱液スリット
17、117・・・背圧板(絞り手段)
Z1・・・破砕ゾーン
Z2・・・圧縮脱液ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮脱液機構を備えた装置であって、
処理バレルと、該処理バレル内を回転するスクリューとを備え、更に、該スクリューの元部側に原料供給口を、先端側に製品排出口をそれぞれ備え、
前記処理バレルは、圧縮脱液ゾーンを備え、
該圧縮脱液ゾーンは、脱液バレルと、製品排出量を抑制する絞り手段とを備えて、スクリューの推進作用により原料が圧縮脱液可能とされ、
前記脱液バレルは、固定された後フランジと、軸方向にスライド可能とされた前フランジとの間に、多数の環状板の群が、該環状板の相互間に周方向に多数の脱液スリットを形成可能に複数の連結ロッドにより積層締結されて構成されている、
ことを特徴とする圧縮脱液装置。
【請求項2】
前記環状板が、複数個の円弧状板の両端連結重合部を相互に連結させて形成された分割環状板であり、前記円弧状板の前記連結重合部の少なくとも一方に、前記連結ロッドとの係合解除可能な方向に形成されたU字状カットを備えていることを特徴とする請求項1記載の圧縮脱液装置。
【請求項3】
前記円弧状板が開き可能に、両端連結重合部の一方に前記連結ロッドにヒンジ連結されるロッド挿通孔を備え、同じく他方に前記連結ロッドとの係合を解除可能な方向に形成されたU字状カットを備えていることを特徴とする請求項2記載の圧縮脱液装置。
【請求項4】
前記連結重合部の板厚を、前記円弧状板の本体板厚より薄く、かつ、スクリュー推進方向で隣接する前記連結重合部の合計板厚を前記円弧状板の本体板厚よりも厚くして、前記脱液スリットの幅を設定可能としたことを特徴とする請求項3記載の圧縮脱液装置。
【請求項5】
前記脱液バレルが、スクリューに共回り不可に遊嵌され、外周部にスペーサ部を複数個備えた多数の非回転環状板と、各非回転環状板の相互間に連続的又は間欠的に配され、前記スクリューの回転により揺動する多数の揺動環状板とからなる複合横断分割板群で形成されることを特徴とする請求項1記載の圧縮脱液装置。
【請求項6】
前記非回転環状板が、前記スペーサ部に形成された外側開放のU字状カット部に、前記前・後フランジの間に配される連結ロッドが係合されて固定されていることを特徴とする請求項5記載の圧縮脱液装置。
【請求項7】
前記絞り手段が、前記前フランジの開口面を塞ぎ可能な板部を備え、前記スクリューのシャフトに、先端の非回転環状板の固定フランジとの隙間を調節可能に取り付けられた背圧板で形成されていることを特徴とする請求項1〜6いずれか一記載の圧縮脱液装置。
【請求項8】
前記原料供給口と前記圧縮脱液ゾーンとの間に、内周面に1個又は複数個の破砕用縦溝を備えている無孔の粉砕バレルで形成された破砕ゾーンが配されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一記載の圧縮脱液装置。
【請求項9】
前記破砕バレルが母線方向で分割されて、組み付け分解可能とされるとともに、前記隣接分割線間にスペーサ板を挿入して前記破砕用縦溝が形成されていることを特徴とする請求項8記載の圧縮脱液装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−99643(P2010−99643A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286169(P2008−286169)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000235314)
【Fターム(参考)】