説明

圧電振動体装置、及び電子機器

【課題】圧電振動体の振動特性の低下を抑制しつつ、部品点数を削減できる圧電振動体装置、及び電子機器を提供すること。
【解決手段】電極310,320が設けられる圧電素子31,32、及び圧電素子31,32が積層される補強板33を有し、電極310,320への電圧印加に応じて振動する圧電振動体30と、電極310,320と駆動回路基板12とを導通する配線パターン600を有するフレキシブル基板60とを備える。補強板33は、積層部331から延出し、圧電振動体30を支持する地板11に固定される支持部333を備える。フレキシブル基板60は、支持部333と共に地板11に固定される基板固定部60Aを備える。基板固定部60Aは、フレキシブル基板60が折り曲げられて、支持部333の地板11に対向する裏面に配置される固定部62と、支持部333の表面に配置される導通部63とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子と補強板とを有する圧電振動体装置、前記圧電振動体装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電振動体と、当該圧電振動体の振動によって駆動されるローター等の被駆動体とを備えた圧電アクチュエーターが知られている。このうち、圧電振動体は、ステンレス等の板状体である導電性の補強板に圧電素子が積層された構造を備えている。このような圧電アクチュエーターにおいては、圧電素子表面に形成された電極に電圧を印加すると、圧電振動体が振動して、ローター等の被駆動体が駆動される。
【0003】
ここで、圧電アクチュエーターは、一般的に小型の電子機器に用いられることが多い。この際、圧電振動体の補強板から延出した一対の支持部が、電子機器内の支持プレートに対してビスで固定されることで、圧電アクチュエーターが電子機器内に固定されていることが知られている(例えば、特許文献1の[0068]、[0073]、図2、図3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−211863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、支持部及び支持プレートの表面に凹凸やうねり等がある場合には、各部材間で隙間が生じるので、振動特性のQ値が低下し、圧電アクチュエーターの駆動特性を低下させてしまい、多数の圧電アクチュエーター間では駆動特性のばらつきが大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、圧電振動体の振動特性の低下を抑制しつつ、振動特性のばらつきを抑制できる圧電振動体装置、及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電振動体装置は、電極が設けられる圧電素子、及び前記圧電素子が積層される補強板を有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体と、可撓性を有するとともに、前記電極と当該電極に電圧を印加する回路基板とを導通する配線パターンを有するフレキシブル基板と、を備え、前記補強板は、前記圧電素子が積層される積層部と、当該積層部から延出するとともに前記圧電振動体を支持する支持体に固定される支持部とを備え、前記フレキシブル基板は、前記支持部と共に前記支持体に固定される基板固定部を備え、前記基板固定部は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、前記支持部の前記支持体に対向する裏面に配置される裏面配置部と、前記支持部の表面に配置される表面配置部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
ここで、フレキシブル基板は、可撓性を有する合成樹脂などで形成されている。また、積層部での振動は、支持部を経由して圧電振動体が固定される支持体へ伝達され、この振動の固有共振周波数は一般的に接触共振周波数と呼ばれている。
ところで、補強板の支持部を支持体にネジ等で直接固定する場合に、支持部の支持体に固定される側の面が歪んでいたり、小さな凹凸を有していたりすると、支持部と支持体との間に微小な隙間が生じる。従って、支持部及び支持体の接触は点接触となる。これによれば、圧電振動体の個体差によって、支持部及び支持体の接触の仕方が変わるので、各圧電振動体での接触共振周波数のばらつきが大きくなる。この状態で、圧電振動体が振動すると、補強板は微小な隙間において微振動し、振動特性を低下させてしまう。
そこで、本発明では、フレキシブル基板を折り曲げて、支持部の表面に配置される表面配置部と、支持部の裏面に配置される裏面配置部とを設け、支持部と共に支持体に固定されるフレキシブル基板の基板固定部を、前記表面配置部および裏面配置部を備えて構成している。なお、前記基板固定部は、支持部に対して、例えば、ネジのみで、あるいはワッシャー等の押さえ板およびネジで固定される。
これによれば、上述したように、支持部の支持体に対向する側の面(支持部の裏面)、及び支持部のネジ等で固定される側の面(支持部の表面)が歪んでいたり、小さな凹凸を有していたりしても、フレキシブル基板は可撓性を有するので、歪みや凹凸を吸収して、面全体に接触することができる。そして、支持部と、支持体及びワッシャー等の押さえ板とはフレキシブル基板を介して面接触することができ、上述した微小な隙間が生じることを抑制できる。すなわち、表面配置部及び裏面配置部により、フレキシブル基板は、支持部の表面及び裏面の歪みや凹凸を吸収する吸収効果が得られ、吸収材として上述した微小な隙間が生じることを抑制できる。
従って、微小な隙間によって生じる微振動を支持部の両面で抑制でき、振動特性の低下を抑制できる。また、圧電振動体を量産する場合において、圧電振動体の個体差によって生じる接触共振周波数のばらつきを小さくでき、振動特性のばらつきを抑制できる。
【0009】
一方、圧電振動体を支持している支持体側に衝撃など外乱が加わった場合、その外乱が圧電振動体に伝わらないことが好ましい。仮に上記外乱が圧電振動体に伝わるとその振動状態に影響をもたらせ、振動特性を低下させ、あるいは不安定にする。
そこで、本発明では、フレキシブル基板は、可撓性を有する合成樹脂などで形成されるため、ある程度の厚さ寸法が確保されることから、上記外乱を圧電振動体に伝達させにくくする緩衝効果が得られ、緩衝材として機能する。
従って、基板固定部が緩衝機能を果たし、かつ、フレキシブル基板が振動特性に影響を与えないため、圧電振動体の振動特性の低下及び不安定化を抑制することができる。
また、フレキシブル基板を折り曲げることで、基板固定部には、表面配置部及び裏面配置部が設けられているので、支持部の表面及び裏面に別々のフレキシブル基板を配置する必要がなく、部品点数を削減できる。すなわち、圧電素子の電極への電圧印加のために用いられるフレキシブル基板を、圧電振動体を支持体に固定する際の歪みや凹凸の吸収材また緩衝材としても兼用しているので、部品点数を削減できる。
さらに、表面配置部及び裏面配置部は、同じフレキシブル基板で構成されるので、支持部の表面及び裏面における上記吸収機能または緩衝機能のばらつきを少なくでき、上記吸収効果および緩衝効果が安定する。これにより、圧電振動体の振動特性が安定する。
【0010】
ところで、フレキシブル基板は圧電素子の電極と導通する配線パターンを有している。この配線パターンが電極と導通した状態で圧電振動体が振動すると、フレキシブル基板の配線パターンを有する部分によって、圧電振動体の振動が妨げられるおそれがある。このため、可能な限り薄いフレキシブル基板を用いることが望まれる。そして、この薄いフレキシブル基板を支持部の表面側または裏面側の一方のみに配置しただけでは、上述の吸収効果および緩衝効果を十分に得ることができない。そこで、本発明では、フレキシブル基板を折り曲げて、支持部の表面及び裏面に表面配置部及び裏面配置部を配置しているので、薄いフレキシブル基板を用いた場合でも、高い吸収効果および緩衝効果を得ることができる。
なお、上述の積層とは、圧電素子が補強板の表面及び裏面に配置されていること、または、補強板の表面または裏面のいずれか一方に配置されていることをいう。また、表面配置部及び裏面配置部は、フレキシブル基板が支持部の表面及び裏面に各々1層のみ配置されている構成、または、2層以上配置されている構成を含むものである。この際、フレキシブル基板が支持部の表面及び裏面に配置されている構成として、フレキシブル基板が支持部の表面及び裏面に直接配置されている構成、または、フレキシブル基板と支持部との間に他部材が配置されている構成も含むものである。
【0011】
本発明において、前記フレキシブル基板は、前記配線パターンが片面に形成された片面基板で構成され、かつ、パターン形成面が前記圧電素子の電極と対向する向きで配置され、前記表面配置部において、前記フレキシブル基板は前記支持部の配置側とは反対側に折り曲げられ、前記配線パターンは、前記表面配置部の前記支持部側とは反対側の面に露出されていることが好ましい。
【0012】
フレキシブル基板において、片面のみに配線パターンが形成された片面基板は、両面に配線パターンが形成された両面基板に比べて製造が容易であり、かつ、安価に製造できるため、コスト削減効果が大きい。
ところで、一般に片面基板のフレキシブル基板を用いた場合、圧電素子の電極に配線パターンを導通させるためには、パターン形成面を圧電素子の電極に対向する向きに配置する必要がある。例えば、圧電素子の上面にフレキシブル基板を配置した場合には、フレキシブル基板の下面側に配線パターンが形成されることになる。
この場合、フレキシブル基板の配線パターンを回路基板と導通させる際に、フレキシブル基板の下面に隠れている配線パターンと回路基板とを導通させなければならず、接続作業が煩雑になる。
一方、本発明では、表面配置部において、片面基板からなるフレキシブル基板を支持部の配置側とは反対側に折り曲げている。このため、配線パターンは、表面配置部の支持部側とは反対側の面、すなわち、表面配置部の表面側(フレキシブル基板の表面側)に露出されている。これにより、フレキシブル基板の配線パターンと回路基板とを容易に導通させることができ、接続作業が容易になる。また、配線パターンをフレキシブル基板の表面側に露出させて、回路基板と導通させているので、圧電振動体の平面方向のスペースを小さくでき、圧電振動体装置の小型化が図れる。
【0013】
本発明において、前記フレキシブル基板は、前記配線パターンが片面に形成された片面基板で構成され、かつ、パターン形成面が前記圧電素子の電極と対向する向きで配置され、前記フレキシブル基板は、前記裏面配置部から延びる回路基板導通部を備え、前記配線パターンは、前記回路基板導通部の前記支持部側の面に露出されていることが好ましい。
【0014】
本発明では、フレキシブル基板は、裏面配置部から延びる回路基板導通部を備えて、配線パターンは、回路基板導通部の支持部側の面、すなわち回路基板導通部の表面側に露出されるので、基板固定部とは外れた位置において、フレキシブル基板と回路基板とが導通する。このため、フレキシブル基板と回路基板との導通を容易にできるとともに、圧電振動体装置を薄く構成でき、レイアウトの自由度を向上できる。
また、本発明では、配線パターンは、基板固定部と外れた位置で回路基板と導通するので、表面配置部において、フレキシブル基板を折り曲げて配線パターンをフレキシブル基板の表面側に露出させる必要がない。この場合には、表面配置部を2層以上に構成しないため、圧電振動体装置をより薄く構成できる。
【0015】
本発明において、前記裏面配置部は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、2層以上、配置されて構成されていることが好ましい。
【0016】
本発明では、補強板の支持部や、この支持部が固定される支持体の凹凸等に応じて、フレキシブル基板の折り曲げ回数を設定することで、良好な上記吸収効果及び緩衝効果を得ることができ、圧電振動体の振動特性の低下を抑制できる。
さらに、フレキシブル基板の基板固定部を、フレキシブル基板自体の厚さ寸法を厚くするのではなく、フレキシブル基板を折り曲げることなどで2層以上に構成することで厚さ寸法を確保している。このため、基板固定部においては、振動特性に影響しないような厚さ寸法に設定できるとともに、良好な吸収効果及び緩衝効果が得られる厚さ寸法に設定できる。
また、様々な種類の圧電振動体において、必要な吸収効果及び緩衝効果を得るための基板固定部の厚さ寸法が異なる場合も、フレキシブル基板の折り曲げ回数を必要に応じて設定すればよく、汎用性を向上できる。
【0017】
本発明において、前記表面配置部及び前記裏面配置部の少なくともいずれか一方は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、2層以上、配置されて構成されていることが好ましい。
【0018】
本発明においても、上述したフレキシブル基板を2層以上配置したことによる効果と同様の効果を得ることができる。
【0019】
本発明の圧電振動体は、前記表面配置部及び前記裏面配置部の少なくともいずれか一方には、ダミー配線パターンまたはレジストが配置されていることを特徴とする。
【0020】
ここで、ダミー配線パターンとは、フレキシブル基板に形成された配線パターンにおいて、回路基板に対して導通されていないものである。
レジストは、フレキシブル基板に前記配線パターンを形成する際に用いられる保護膜であり、通常は、配線パターン形成後に除去するものである。ただし、本発明において、基板固定部にレジストを設ける場合は、基板固定部に設けられたレジストは除去せずに残しておけばよい。
本発明によれば、フレキシブル基板にダミー配線パターンやレジストを形成することで基板固定部を形成している。このため、基板固定部は、フレキシブル基板の厚さ寸法に加えて、前記ダミー配線パターンやレジストの厚さ寸法が加算される。このため、基板固定部は、フレキシブル基板のみが1層設けられた場合に比べて、吸収効果及び緩衝効果を高めることができる。
従って、本発明では、基板固定部が緩衝材と同様に緩衝機能を果たし、かつ、実装部においてフレキシブル基板が振動特性に影響を与えないため、圧電振動体の振動特性の低下を抑制することができる。
また、フレキシブル基板にダミー配線パターンやレジストを形成するので、上述した緩衝材を別途用意する必要がなく、部品点数を削減できる。
さらに、基板固定部の吸収効果及び緩衝機能は、ダミー配線パターンやレジストの厚さ寸法を設定することで、調整することができる。従って、適用する圧電振動体に求められる吸収効果及び緩衝機能を比較的容易に実現することができる。
【0021】
本発明の圧電振動体において、前記フレキシブル基板には、前記補強板の支持部と前記回路基板とを導通するグラウンド配線パターンが形成されていることが好ましい。
【0022】
フレキシブル基板にグラウンド配線パターンが形成されているので、このため、支持部にグラウンド導通部材が接触する領域を設ける必要がないため、支持部の面積を小さくできる。従って、部品点数を削減できるとともに、圧電振動体の平面サイズを小さくすることができる。
【0023】
本発明の電子機器は、上述の圧電振動体装置を備えることを特徴とする。
【0024】
このような電子機器として、腕時計等の時計や、カメラ等を例示することができる。
本発明によれば、上述の圧電振動体装置を備えるので、上述した圧電振動体装置と同様の効果を奏することができ、これにより、動作信頼性の高い電子機器を構成及び製造することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る時計を示す平面図。
【図2】前記第1実施形態における圧電アクチュエーター及び減速輪列を示す模式図。
【図3】前記第1実施形態における圧電振動体を示す斜視図。
【図4】前記第1実施形態における前記時計の要部を示す断面概略図。
【図5】前記第1実施形態におけるフレキシブル基板を示す平面図。
【図6】前記第1実施形態に係るフレキシブル基板の圧電振動体への取付方法の工程を示す図。
【図7】前記第1実施形態に係るフレキシブル基板の圧電振動体への取付方法の工程を示す図。
【図8】前記第1実施形態に係るフレキシブル基板の圧電振動体への取付方法の工程を示す図。
【図9】本発明の第2実施形態に係る時計の要部を示す断面概略図。
【図10】本発明の第3実施形態に係る時計の要部を示す断面概略図。
【図11】本発明の第1、2変形例に係る時計の要部を示す断面概略図。
【図12】本発明の第3変形例に係る時計の要部を示す断面概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態]
以下、本発明に係る第1実施形態を図面に基づいて説明する。
[時計の概略構成]
図1は、本実施形態に係る時計10を示す平面図である。
本実施形態に係る時計10は、本発明の電子機器に相当し、ムーブメント1、通常時刻を表示する文字板2、時針3、分針4及び秒針5のほか、クロノグラフ時間を示す秒クロノグラフ針6及び分クロノグラフ針7を備えている。
時針3、分針4及び秒針5は、一般的なアナログクォーツと同様のものであり、詳しい図示を省略するが、水晶振動子が組み込まれた回路基板と、コイル、ステーター及びローターを有するステッピングモーターと、駆動輪列と、電池とにより駆動される。
秒クロノグラフ針6は、後述する圧電アクチュエーター20及び減速輪列50により駆動され、また、分クロノグラフ針7は、図示を省略したが、当該秒クロノグラフ針6と同様の機構により駆動される。
【0027】
[圧電アクチュエーター及び減速輪列の構成]
図2は、圧電アクチュエーター20及び減速輪列50を示す模式図である。
圧電アクチュエーター20は、図2に示すように、電圧印加に応じて振動し、後述するフレキシブル基板60と導通する圧電振動体30と、当該圧電振動体30の振動により回転するローター40とを備えている。
このうち、被駆動体としてのローター40は、板ばね41によって圧電振動体30側に付勢されており、当該圧電振動体30とローター40外周との間に適切な摩擦力が発生することで、圧電振動体30の振動が効率良くローター40に伝達されるようになっている。なお、圧電振動体30及びフレキシブル基板60の構成については、後に詳述する。
【0028】
減速輪列50は、ローター40の回転を秒クロノグラフ針6に伝達する。この減速輪列50は、歯車51,52により構成されている。
歯車51は、ローター40と同軸に配置され、当該ローター40と一体となって回転する。
歯車52は、秒クロノグラフ針6(図1参照)の回転軸に固定され、歯車51に噛合している。このため、圧電振動体30の駆動により生じたローター40の回転が、歯車51,52を介して減速された秒クロノグラフ針6に伝達され、当該秒クロノグラフ針6が駆動する。
【0029】
[圧電振動体の構成]
図3は、圧電振動体30を示す斜視図である。
圧電振動体30は、矩形平板状を有する一対の圧電素子31,32(説明の便宜上、上方に位置する圧電素子を31とし、下方に位置する圧電素子を32とする)と、これらの圧電素子31,32の間に介装される平板状の補強板33とを備え、これら圧電素子31,32と補強板33とは、本実施形態では、導電性を有する接着剤により互いに接合される。
【0030】
圧電素子31,32の表面(それぞれ補強板33に対向する面とは反対側の面)には、電極310,320が、それぞれ形成される。この電極310,320は、ニッケル或いは金などによるめっき、スパッタ、蒸着等の方法で形成される。また、圧電素子31の表面には、電極310,320の他、圧電振動体30の振動状態を検出する検出電極311が形成される。
なお、圧電素子31,32の裏面(それぞれ補強板33に対向する面)にも、図示を省略するが、電極310,320が形成され、この電極310,320は補強板33と重ねられ導通されている。
このような圧電素子31,32の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT(登録商標))、水晶、ニオブ酸リチウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、メタニオブ酸鉛、ポリフッ化ビニリデン、亜鉛ニオブ酸鉛、スカンジウムニオブ酸鉛等を例示できる。
前記電極310,320には、回路基板としての駆動回路基板12(図4参照)から出力される駆動信号としての交流電圧が印加される。
【0031】
これら圧電素子31,32の寸法、並びに、圧電素子31,32に前述の各電極310,320を介して印加される交流電圧の周波数(駆動周波数)は、圧電素子31,32に繰り返し電圧が印加された際に、当該圧電素子31,32に縦振動(縦一次振動)及び屈曲振動(屈曲二次振動)が同時に現れるように、適宜設定される。
【0032】
補強板33は、ステンレス鋼等の導電性を有する金属材料から形成されている。この補強板33は、圧電素子31,32が積層される積層部331と、当該積層部331に一体的に形成された一対の突出部332及び支持部333とを備える。
積層部331は、平面視略矩形状に形成され、当該積層部331の平面視の寸法は、圧電素子31,32と略同じとなるように設定されている。
【0033】
一対の突出部332は、積層部331の短辺側の両側面(長手方向に直交する面)における一方の端部から外側に略円弧状に突出するように形成され、当該積層部331の中央を中心として点対称に形成されている。具体的に、各突出部332は、積層部331の対角位置にそれぞれ形成され、一方の突出部332が、前述のローター40(図2参照)に当接する。
【0034】
支持部333は、積層部331を平面視した際に、当該積層部331の長手方向に沿う一方の側面の略中央から延出している。この支持部333は、積層部331から延出する延出部3331と、当該延出部3331の延出方向先端に形成された固定部3332とを備えている。この固定部3332には、孔部3333と、切欠部3334とが形成されている。
【0035】
[フレキシブル基板の構成]
図4は、本実施形態の要部を示す概略断面図であり、具体的には、圧電振動体30にフレキシブル基板60が実装された圧電振動体装置80の概略断面図である。図5は、フレキシブル基板60の折り曲げ前の状態を示す平面図である。
圧電振動体装置80は、圧電振動体30と、フレキシブル基板60とで構成される。
フレキシブル基板60は、可撓性を有するポリイミド樹脂で長手状に形成され、図4に示すように、フレキシブル基板60上に形成された後述する配線パターン600を介して、各電極310,320と駆動回路基板12とを導通させるものである。具体的には、フレキシブル基板60を圧電振動体30に取り付けた際に、配線パターン600は、圧電素子31,32に対向する側に位置して、電極310,320と導通する。従って、フレキシブル基板60は、配線パターンが片面のみに形成された片面基板である
そして、フレキシブル基板60が取り付けられた圧電振動体30は、保持部材70及び駆動回路基板12を介して、ムーブメント1を構成する地板11(支持体)にねじ込まれるネジ100により固定されている
なお、フレキシブル基板60を圧電振動体30に取り付ける方法の詳細については後述する。
【0036】
保持部材70は、駆動回路基板12をネジ100で固定する際に湾曲するのを防止するために駆動回路基板12を抑えつつ、保持するものである。この保持部材70には、ネジ100が挿通する挿通孔70Aが形成されている。
駆動回路基板12は、圧電振動体30へ交流電圧を印加するものであり、駆動信号を圧電振動体30へ出力する。この駆動回路基板12には、ネジ100が挿通する挿通孔12Aが形成されている。また、駆動回路基板12には、フレキシブル基板60の配線パターン600と導通するための配線パターン120が形成されている。
各挿通孔70A,12Aは、後述する孔部621,6311,6331と略同一径に形成されている。
【0037】
フレキシブル基板60は、図5に示すように、圧電振動体30の電極310,320に導通接触される細帯状の実装部61と、実装部61の一端から延出して補強板33の支持部333と地板11との間に固定される固定部62と、実装部61の他端から延出し、配線パターン601〜603が形成される導通部63とを備える。なお、配線パターン600は、互いに絶縁された配線パターン601〜603で構成されている。
【0038】
実装部61は、電極310,320と駆動回路基板12とが導通し、駆動信号が通過する駆動配線パターン601を備え、圧電素子31,32の表面の電極310,320と接触する部分である。
固定部62は、補強板33の支持部333と地板11との間に固定される部分である。この固定部62には、平面視略円形状の孔部621と、平面視長孔形状の孔部622と、孔部621の径よりも小さい平面視略円形状の孔部623と、円弧状の切欠部624とを備える。
【0039】
導通部63は、実装部61から延出する第1導通部631と、第1導通部631から実装部61とは反対側に延出する細帯状の第2導通部632と、第2導通部632に連続して設けられた固定部62と略同一形状の第3導通部633とを備える。
この導通部63には、実装部61から連続して配線された駆動配線パターン601の他、検出電極311と駆動回路基板12とが導通し、検出信号が通過する検出配線パターン602、及び補強板33の支持部333と駆動回路基板12とが導通し、グラウンド(GND)信号が通過するグラウンド(GND)配線パターン603が形成されている。
また、第1導通部631には、平面視略円形状の孔部6311と、平面視長孔形状の孔部6312と、孔部6311の径よりも小さい平面視略円形状の孔部6313と、円弧状の切欠部6314とを備える。
第3導通部633には、平面視略円形状の孔部6331と、平面視長孔形状の孔部6332と、孔部6331の径よりも小さい平面視略円形状の孔部6333と、円弧状の切欠部6334とを備える。
【0040】
第1導通部631において、前記GND配線パターン603は、孔部6311および孔部6312の周囲に形成され、その外側に駆動配線パターン601および検出配線パターン602が形成されている。
第2導通部632において、前記GND配線パターン603は中心軸部分に配線され、その外側に前記駆動配線パターン601および検出配線パターン602が配線されている。
第3導通部633において、前記GND配線パターン603は孔部6332の周囲に形成され、その端縁は孔部6331まで延長されている。また、前記駆動配線パターン601および検出配線パターン602は、GND配線パターン603の外側に配線され、それらの端縁は孔部6331に沿って形成されている。
【0041】
ここで、図4に示すように、固定部62の孔部621、第1導通部631の孔部6311、第3導通部633の孔部6331の内径寸法は、補強板33の支持部333の孔部3333の内径寸法より大きく形成されている。これらの孔部621,6311,6331,3333は、圧電振動体30を地板11に取り付ける際、ネジ100が挿通される部分である。
また、地板11には、ネジ100が螺合されるネジ穴11Aが形成されている。
【0042】
このフレキシブル基板60の固定部62および導通部63は、図4に示すように、地板11に支持部333とともに固定されている。従って、本実施形態においては、固定部62および導通部63によって基板固定部60Aが構成されている。
この基板固定部60Aは、補強板33の支持部333と地板11との間に配置された固定部62と、折り曲げられて2層とされて支持部333および駆動回路基板12間に配置された導通部63とで構成されている。すなわち、基板固定部60Aは、フレキシブル基板60が3層配置されて構成されている。すなわち、固定部62が本発明に係る裏面配置部であり、導通部63が本発明に係る表面配置部である。
なお、本実施形態では、表面配置部は、2層で構成されていたが、3層以上であってもよい。また、裏面配置部は、1層で構成されていたが、2層以上であってもよい。
これにより、フレキシブル基板60の配線パターン600(601〜603)が、導通部63において圧電振動体30の表面側(駆動回路基板12に対向する面側)に露出する。このため、駆動回路基板12を導通部63の表面側に接触させることで、フレキシブル基板60の配線パターン600および駆動回路基板12の後述する配線パターン120が導通する。
【0043】
[フレキシブル基板の圧電振動体への取付方法]
次に、フレキシブル基板60を圧電振動体30に取り付ける方法について、図6〜図8を参照して、説明する。
図6〜図8は、本実施形態に係るフレキシブル基板60の圧電振動体30への取付方法の工程を示す図である。ここで、フレキシブル基板60の長手方向(圧電素子31,32の短辺に沿う方向)をX方向とし、これに直交する方向(圧電素子31,32の長辺に沿う方向)をY方向とし、圧電素子31,32の積層方向をZ方向とする。これらのX、Y及びZの各方向は、互いに直交する方向である。また、図6(A)〜図8(A)は平面図であり、図6(B)〜図8(B)は概略断面図である。なお、図6(B)〜図8(B)では、図示の都合上、ピンP1〜P4の図示を省略する。
【0044】
まず、治具(図示略)上に立設されたピンP1〜P4(二点鎖線)に対して、フレキシブル基板60の固定部62の孔部621〜623及び切欠部624を挿通させる。ピンP3,P4は、孔部621,622よりも小さく形成されているので、孔部621,622と干渉せず、図6(A)に示すように、フレキシブル基板60は、ピンP1,P2で治具に位置決めされる。そして、固定部62における孔部621の近傍に接着剤を塗布する。
次に、図6(A)に示すように、ピンP3,P4に対して、圧電振動体30の支持部333の孔部3333及び切欠部3334を挿通させて、圧電振動体30を治具及びフレキシブル基板60に対して位置決めし、さらに圧電振動体30を固定部62に対して押し付けて接着する。これにより、フレキシブル基板60の駆動配線パターン601の先端の接点601Aは、圧電振動体30の電極320に接触する位置に配置される。
また、フレキシブル基板60の駆動配線パターン601の接点601A,601B、及び検出配線パターン602の先端の接点602Aに、予めはんだ400を塗布しておく。
【0045】
次に、支持部333の孔部3333近傍に導電性の接着剤を塗布する。そして、フレキシブル基板60を折り曲げ線(図6中の一点鎖線L1)で+Z方向に向けて約180度折り曲げる。これにより、フレキシブル基板60の第1導通部631は、図7(B)に示すように、支持部333の表面側に対向する。そこで、図7(A)に示すように、第1導通部631の孔部6313及び切欠部6314をピンP1,P2に挿通して位置決めする。そして、第1導通部631を、導電性の接着剤により支持部333に固定する。
この際、第1導通部631のGND配線パターン603は、前記導電性接着剤により支持部333に接着される。また、第1導通部631に形成された駆動配線パターン601の中間の接点601Bは圧電振動体30の電極310に接触する位置に配置される。さらに、検出配線パターン602の先端の接点602A(図5参照)は検出電極311に接触する位置に配置される。
なお、第1導通部631に形成された駆動配線パターン601(図5参照)及び検出配線パターン602(図5参照)は、支持部333とは接触しない外周側に位置しているので、各配線パターン601〜603(図5参照)が電気的なショートを起こさないようになっている。また、図7(A)に示すように、導通部63の配線パターン600(図5参照)が形成されていない面が+Z方向側に露出する。
【0046】
次に、第1導通部631の孔部6311近傍に接着剤を塗布する。そして、フレキシブル基板60を導通部63の略中央部分の折り曲げ線(図7中の一点鎖線L2)で+Z方向に向けて折り曲げる。これにより、フレキシブル基板60の第3導通部633は、図8(B)に示すように、第1導通部631の配線パターン600が形成されていない面に対向する。そこで、図8(A)に示すように、第3導通部633の孔部6333及び切欠部6334をピンP1,P2に挿通して位置決めする。そして、第3導通部633を、接着剤により、第1導通部631に固定する。また、図8(A)に示すように、第3導通部633の配線パターン600が形成されている面が+Z方向側に露出する。
【0047】
次に、接着剤を乾燥させることで、フレキシブル基板60及び支持部333が固定される。
一方、フレキシブル基板60の実装部61にヒーターツール200(図7(B)参照)を押し当てて、前記各接点601A,601B,602A部分を加熱、加圧し、接点601A,601B,602A部分に設けられたはんだ400を用いて、各配線パターン601,602を各電極310,320,311に接合する。これにより、図8(B)に示すように、フレキシブル基板60と電極310,320,311とが、はんだ400の塗布部分のみで接合される。すなわち、はんだ400の塗布されていない部分では、フレキシブル基板60と圧電振動体30とは非接触の状態となっている。なお、はんだ400は、予め配線パターン601,602にはんだメッキを施すことで設けてもよいし、フレキシブル基板60と圧電振動体30とを実装する直前にディスペンサーなどで供給してもよい。
以上により、圧電振動体30にフレキシブル基板60が実装される。
【0048】
次に、フレキシブル基板60が実装された圧電振動体30が時計10の内部に取り付けられる工程について、図4を参照して、説明する。
まず、フレキシブル基板60及び圧電振動体30の孔部621,3333,6311,6331が地板11のネジ穴11Aに連通するように載置する。
次に、圧電振動体30の上方から駆動回路基板12を配置し、駆動回路基板12を保持する保持部材70を配置する。この際、保持部材70及び駆動回路基板12の挿通孔70A,12Aが地板11のネジ穴11Aと連通するように配置する。そして、保持部材70、駆動回路基板12、フレキシブル基板60が実装された圧電振動体30は、ネジ100によって、地板11に対して固定される。
なお、駆動回路基板12とフレキシブル基板60の導通は、配線パターン120および配線パターン600を前記保持部材70やネジ100を用いて押し付けて接触させるだけで実現してもよいし、導電性の接着剤を介在させて実現してもよい。この場合、フレキシブル基板60の配線パターン601〜603が、駆動回路基板12の配線パターン120において配線パターン601〜603に対応して形成される配線パターンに接続され、当該配線パターンは電子回路に接続されている。
【0049】
上述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態では、フレキシブル基板60が支持部333の表面及び裏面に配置されて、裏面配置部としての固定部62と、表面配置部としての導通部63とが構成されている。そのため、支持部333の表面及び裏面が歪んでいたり、小さな凹凸を有していたりしても、固定部62及び導通部63は可撓性を有するので、歪みや凹凸を吸収して支持部333の面全体に接触することができる。これに対して、支持部333の表面及び裏面がそれぞれ凹凸や歪みがある場合、フレキシブル基板60が介在していない支持部333の表面及び裏面において、地板11等と支持部333との接触は点接触となる。これによれば、圧電振動体30の個体差によって、フレキシブル基板60と支持部333と接触の仕方が変わるので、各圧電振動体30での接触共振周波数のばらつきが大きくなる。
一方、本実施形態では、支持部333と固定部62及び導通部63とは、面接触することができ、微小な隙間が生じることを抑制できる。従って、微小な隙間によって生じる微振動を抑制でき、振動特性の低下を抑制できる。すなわち、圧電振動体30を量産する場合において、圧電振動体30の個体差によって生じる接触共振周波数のばらつきを小さくでき、振動特性のばらつきを抑制できる。
(2)フレキシブル基板60は、可撓性を有し、ある程度の厚さ寸法が確保されることから、圧電振動体30を支持する地板11側すなわち時計10側から外部衝撃等の外乱が働いても、その外乱を圧電振動体に伝達しにくくする緩衝効果が得られ、緩衝材として機能する。基板固定部60Aが緩衝機能を果たし、かつ、実装部61においてフレキシブル基板60が振動特性に影響を与えないことが加わって、圧電振動体30の振動特性の低下を抑制することができる。このため、圧電アクチュエーター20の駆動特性の低下も防止できる。
【0050】
(3)フレキシブル基板60の一部を用いて基板固定部60Aを構成しているので、別途、上記歪みや凹凸の吸収材や緩衝材を配置する必要がなく、部品点数を削減できる。すなわち、圧電素子31,32の電極310,320への電圧印加のために用いられるフレキシブル基板60を、圧電振動体30を地板11に固定する際の上記吸収材や緩衝材としても兼用しているので、部品点数を削減できる。
(4)基板固定部60Aにおける所望の厚さ寸法を確保するために、フレキシブル基板60の折り曲げ回数を必要に応じて設定すればよく、汎用性を向上できる。すなわち、補強板33の支持部333や、この支持部333が固定される地板11の凹凸等に応じて、フレキシブル基板60の折り曲げ回数を設定することで、良好な吸収効果や緩衝効果を得ることができ、駆動特性の低下を抑制できる。
(5)様々な種類の圧電振動体において、必要な吸収効果や緩衝効果を得るための基板固定部60Aの厚さ寸法が異なる場合も、フレキシブル基板60の折り曲げ回数を必要に応じて設定すればよく、汎用性を向上できる。
【0051】
(6)フレキシブル基板60は、片面のみに配線パターン600が形成された片面基板であるので、両面に配線パターン600が形成された両面基板に比べて製造が容易であり、かつ、安価に製造できるため、コスト削減効果が大きい。
(7)片面基板からなるフレキシブル基板60の一端側を外側に折り曲げているので、配線パターン600をフレキシブル基板60の表面側に露出させることができる。このため、フレキシブル基板60の配線パターンと駆動回路基板12とを容易に導通させることができ、接続作業が容易になる。また、配線パターン600をフレキシブル基板60の表面側に露出させて、駆動回路基板12と導通させているので、圧電振動体30の平面方向のスペースを小さくでき、圧電振動体装置80の小型化が図れる。
(8)本実施形態では、フレキシブル基板60にGND配線パターン603が形成されているので、別途、補強板33の支持部333に接触するGND導通部材を設ける必要がない。このため、支持部333にGND導通部材が接触する領域を設ける必要がないため、支持部333の面積を小さくできる。従って、部品点数を削減できるとともに、圧電振動体30の平面サイズを小さくすることができる。
【0052】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態に係るフレキシブル基板60が実装された圧電振動体30の概略断面図である。図の説明にあたって、前記第1実施形態と同一構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。なお、後述する実施形態においても同様である。
前記第1実施形態では、基板固定部60Aは、フレキシブル基板60が折り曲げられて、固定部62に1層、導通部63に2層配置されていたが、本実施形態では、フレキシブル基板60が支持部333の表面及び裏面にそれぞれ1層ずつ、計2層配置されている点で相違する。
【0053】
本実施形態においても、フレキシブル基板60は、配線パターン600が片面のみに形成された片面基板である。
導通部63は、支持部333と地板11との間に固定され、導通部63の一部は、補強板33の支持部333の先端から突出している。なお、本実施形態では、固定部62が本発明に係る表面配置部であり、支持部333と地板11との間に固定される導通部63が本発明に係る裏面配置部である。また、支持部333の先端から突出した導通部63の一部は、本発明に係る回路基板導通部である。
突出した導通部63の一部(回路基板導通部)の配線パターン600は、圧電振動体30の表面側(駆動回路基板12に対向する面側)に露出するとともに、基板固定部60Aとは外れた位置に配置された駆動回路基板12の配線パターン120と対向し、導通接触している。
固定部62は、支持部333の表面に固定されている。
【0054】
上述した第2実施形態によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態では、フレキシブル基板60の一端側(固定部62)を支持部333の表面に配置し、他端側(導通部63)を裏面に配置することで、フレキシブル基板60は、支持部333の表面に固定部62を1層、支持部333の裏面に導通部63を1層配置でき、厚さ寸法を確保できる。従って、上述した前記第1実施形態の効果(1)〜(3)と同様の効果を得ることができる。他に、前記第1実施形態の効果(6)、(8)を奏することができる。
また、フレキシブル基板60が支持部333の表面及び裏面にそれぞれ1層ずつ配置されて、基板固定部60Aが構成されているので、前記第1実施形態のように導通部63を折り曲げる工程を必要とせず、作業工程を簡素化できる。この際、導通部63を折り曲げていないため、圧電振動体装置80を薄く構成できる。
さらに、基板固定部60Aとは外れた位置において、フレキシブル基板60と駆動回路基板12とが導通する。このため、フレキシブル基板60と駆動回路基板12との導通を容易にできるとともに、圧電振動体装置80を薄く構成でき、レイアウトの自由度を向上できる。
【0055】
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係るフレキシブル基板60が実装された圧電振動体30の概略断面図である。
前記第1実施形態では、フレキシブル基板60において、配線パターン600は、圧電素子31,32と対向する側の面に形成されていた。これに対し、本実施形態では、片面基板のフレキシブル基板60を用いている点では同じであるが、駆動配線パターン601及び検出配線パターン602は、圧電素子31,32と対向する側と反対側の面(表面側)に形成されている点で相違する。このため、フレキシブル基板60に貫通孔64を形成し、この貫通孔64を通して配線パターン601,602を押し出すことで、電極310,320と導通している。
【0056】
基板固定部60Aは、支持部333と地板11との間に固定される固定部62A(裏面配置部)が折り曲げられて2層とされ、さらに導通部63A(表面配置部)が支持部333の表面に固定されているので計3層のフレキシブル基板60で構成されている。
固定部62Aは、折り曲げられるため、前記第1実施形態の固定部62よりも長く形成されている。
導通部63Aは、折り曲げられることがないため、前記第1実施形態の導通部63よりも短く形成されている。また、導通部63Aの配線パターン601,602が圧電素子31,32と対向する側と反対側の面に形成されるので、配線パターン601,602は外部に露出している。これにより、配線パターン601,602は、駆動回路基板12の配線パターン120と対向し、導通接触する。
【0057】
本実施形態では、GND配線パターンを形成しないフレキシブル基板60を採用したが、GND配線パターンを形成してもよく、この場合には、フレキシブル基板60にGND配線パターンを補強板33に向けて押し出す貫通孔を形成することで、GND配線パターンと補強板33とを導通接触できる。
【0058】
上述した第3実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)〜(5)と同様の効果を奏する。
【0059】
[実施形態の変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
図11(A)は、本発明の第1変形例に係るフレキシブル基板60が実装された圧電振動体30の概略断面図である。
本変形例では、フレキシブル基板60が支持部333の表面及び裏面にそれぞれ配置され、かつ固定部62(裏面配置部)の両面には、ダミー配線パターン600Aが形成されている。
このダミー配線パターン600Aは、駆動回路基板12には導通されていない。
また、配線パターン601,602は、圧電振動体30が実装される側とは反対側の面に形成されている。そして、配線パターン601,602は、フレキシブル基板60に形成されたスルーホール65を介して電極310,320と導通している。さらに、図示しないGND配線パターンも同様に、圧電素子31,32と対向する側と反対側の面に形成され、スルーホールを介して補強板33に導通接触されている。
【0060】
本変形例によれば、フレキシブル基板60にダミー配線パターン600Aを形成することで、基板固定部60Aは、フレキシブル基板60とダミー配線パターン600Aとで4層に構成されている。そのため、フレキシブル基板60の実装部61においては、振動特性に影響しないような厚さ寸法に設定できるとともに、基板固定部60Aにおいては、前記フレキシブル基板60およびダミー配線パターン600Aが積層されているので吸収効果及び緩衝効果が得られる厚さ寸法に設定できる。
従って、基板固定部60Aが緩衝材と同様に緩衝機能を果たし、かつ、実装部61においてフレキシブル基板60が振動特性に影響を与えないため、圧電振動体30の振動特性の低下を抑制することができる。
また、フレキシブル基板60にダミー配線パターン600Aを形成するので、上述した緩衝材を別途用意する必要がなく、部品点数を削減できる。
さらに、要求される吸収効果及び緩衝機能に応じて、ダミー配線パターン600Aの厚み寸法を設定すればよいので、汎用性を向上できる。
【0061】
図11(B)は、本発明の第2変形例に係るフレキシブル基板60が実装された圧電振動体30の概略断面図である。
本変形例では、前記第1変形例において固定部62の両面にダミー配線パターン600Aを形成したが、固定部62(裏面配置部)の支持部333と対向する側の面には、レジスト600Bが塗布されている。なお、レジスト600Bは、固定部62(裏面配置部)の地板11と対向する側の面に塗布してもよい。
レジスト600Bは、フレキシブル基板60に配線パターン600を形成する際に用いられる保護膜であり、通常は、配線パターン600形成後に除去するものであるが、本実施形態では、このレジスト600Bは、除去されずに残されている。
本変形例によれば、レジスト600Bが前記ダミー配線パターン600Aと同様に機能するため、上述した第1変形例と同様の効果を奏することができる。
なお、上述した第1、2変形例では、フレキシブル基板60が圧電振動体30の圧電素子31,32側で折り曲げられていたが、支持部333側で折り曲げられていてもよい。
また、図11(A)に示すダミー配線パターン600Aの表面及び裏面にもレジスト600Bを配置してもよい。また、上述した第1、第2変形例を前記各実施形態と組み合わせる構成としてもよい。例えば、第1、第2変形例では、基板固定部60Aにおいてフレキシブル基板70は折り曲げられていなかったが、前記第1、第3実施形態のように、折り曲げる構成を加えてもよい。また、前記第2実施形態のように、導通部63の一部を補強板33の支持部333の先端から突出させて、基板固定部60Aとは外れた位置に配置された駆動回路基板12と導通させてもよい、
【0062】
図12は、本発明の第3変形例に係るフレキシブル基板60が実装された圧電振動体30の概略断面図である。
前記第3実施形態では、支持部333と地板11との間に固定される固定部62Aが1回、折り曲げられていたが、本変形例では2回、折り曲げられている点、及び配線パターン601,602はスルーホール65を介して電極310,320と導通している点が相違し、他の構成は同一である。
本変形例によれば、固定部62A(裏面配置部)におけるフレキシブル基板60の折り返し回数を2回に設定することで、基板固定部60Aの厚み寸法が大きくなるため、より大きな吸収効果及び緩衝効果が得られる。
【0063】
なお、前記第3実施形態では、フレキシブル基板60は、導通部63Aの配線パターン601,602が圧電素子31,32と対向する側と反対側の面に形成され、一対の貫通孔64に配線パターン601,602を押し出して電極310,320と導通させる、いわゆる片面基板であったが、フレキシブル基板60にスルーホールを形成して、配線パターン601,602を電極310,320と導通させる、いわゆる両面基板であってもよい。また、この両面基板を採用した場合に、フレキシブル基板60にGND配線パターンを形成してもよい。この場合には、GND配線パターンも同様に、圧電素子31,32と対向する側と反対側の面に形成され、スルーホールを介して補強板33に導通接触される。
【0064】
前記第2実施形態では、固定部62(表面配置部)は、1層であったが、フレキシブル基板60を折り曲げて、2層以上に構成してもよい。また、導通部63(裏面配置部)を2層以上に構成してもよく、固定部62(表面配置部)及び導通部63(裏面配置部)をそれぞれ2層以上に構成してもよい。
前記各実施形態では、フレキシブル基板60の配線パターン600を圧電素子31,32の電極310,320にはんだ400で固着させて導通していたが、両者を固着させずに接触のみで導通する構成であってもよい。
具体的に、フレキシブル基板60の配線パターン600と電極310,320とを導通させる箇所に対して、上下から板ばね等で挟み込んで、配線パターン600を電極310,320に接触させて導通させてもよい。また、フレキシブル基板60を電極310,320側に向けて突出部分を形成し、当該突出部分を電極310,320に接触させ、導通させてもよい。これによれば、前記各実施形態では、ヒーターツール200の加熱及び加圧によって生じる圧電素子31,32への影響や、加熱及び加圧の際に生じる応力を抑制できる。
前記各実施形態では、圧電振動体30は地板11に支持されていたが、これに限定されず、地板11以外の構成部材、または他の電子機器の構成部材であってもよい。
【0065】
前記各実施形態では、フレキシブル基板60は、補強板33の積層部331側で折り曲げられていたが、フレキシブル基板60を補強板33の支持部333側で折り曲げてもよい。具体的には、フレキシブル基板60が支持部333の先端側で迂回するように折り曲げられて、前記各実施形態と同様に、支持部333の表面及び裏面に固定部62及び導通部63が配置される。
【符号の説明】
【0066】
10…時計(電子機器)、11…地板(支持体)、12…駆動回路基板(回路基板)、30…圧電振動体、31,32…圧電素子、33…補強板、60…フレキシブル基板、60A…基板固定部、62…固定部(表面配置部、裏面配置部)、63…導通部(表面配置部、裏面配置部、回路基板導通部)80…圧電振動体装置、310,320…電極、331…積層部、333…支持部、600〜603…配線パターン、600A…ダミー配線パターン、600B…レジスト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が設けられる圧電素子、及び前記圧電素子が積層される補強板を有し、前記電極への電圧印加に応じて振動する圧電振動体と、
可撓性を有するとともに、前記電極と当該電極に電圧を印加する回路基板とを導通する配線パターンを有するフレキシブル基板と、を備え、
前記補強板は、前記圧電素子が積層される積層部と、当該積層部から延出するとともに前記圧電振動体を支持する支持体に固定される支持部とを備え、
前記フレキシブル基板は、前記支持部と共に前記支持体に固定される基板固定部を備え、
前記基板固定部は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、前記支持部の前記支持体に対向する裏面に配置される裏面配置部と、前記支持部の表面に配置される表面配置部とを備えている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動体装置において、
前記フレキシブル基板は、前記配線パターンが片面に形成された片面基板で構成され、かつ、パターン形成面が前記圧電素子の電極と対向する向きで配置され、
前記表面配置部において、前記フレキシブル基板は前記支持部の配置側とは反対側に折り曲げられて、前記配線パターンは、前記表面配置部の前記支持部側とは反対側の面に露出されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の圧電振動体装置において、
前記フレキシブル基板は、前記配線パターンが片面に形成された片面基板で構成され、かつ、パターン形成面が前記圧電素子の電極と対向する向きで配置され、
前記フレキシブル基板は、前記裏面配置部から延びる回路基板導通部を備え、
前記配線パターンは、前記回路基板導通部の前記支持部側の面に露出されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項4】
請求項2に記載の圧電振動体装置において、
前記裏面配置部は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、2層以上、配置されて構成されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の圧電振動体装置において、
前記表面配置部及び前記裏面配置部の少なくともいずれか一方は、前記フレキシブル基板が折り曲げられて、2層以上、配置されて構成されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の圧電振動体装置において、
前記表面配置部及び前記裏面配置部の少なくともいずれか一方には、ダミー配線パターンまたはレジストが配置されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の圧電振動体装置において、
前記フレキシブル基板には、前記補強板の支持部と前記回路基板とを導通するグラウンド配線パターンが形成されている
ことを特徴とする圧電振動体装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の圧電振動体装置を備える
ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−160525(P2011−160525A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18710(P2010−18710)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】