地下コンクリート構造、地下コンクリート構造の構築方法
【課題】面外方向または面外方向と面内方向の両方のリブを備えた壁状の杭や地下壁等の地下コンクリート構造およびこのような構造の構築方法を提供する。
【解決手段】コンクリート杭10は、拡底部16を有する円柱体12と、この円柱体12に連結される壁状体14とにより構成される。拡底部16は壁状体14の面外方向に突出してリブ18を構成する。別の実施形態では、本発明の地下コンクリート構造は、リブ付きの地下壁として構築される。また、円柱体12に代えて、壁状の杭を用いてもよい。
【解決手段】コンクリート杭10は、拡底部16を有する円柱体12と、この円柱体12に連結される壁状体14とにより構成される。拡底部16は壁状体14の面外方向に突出してリブ18を構成する。別の実施形態では、本発明の地下コンクリート構造は、リブ付きの地下壁として構築される。また、円柱体12に代えて、壁状の杭を用いてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭や地下壁等の壁状の地下コンクリート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化・重量化に伴って、地震時等に建物の基礎杭に掛かる引抜き力・押込み力も大きくなっている。このため、基礎杭がそのような大きな引抜き力・押込み力に抵抗できるように、支持層地盤よりも深い硬質地盤へ杭を長く打設することが必要となり、工事の長期化やコストの増加を招いている。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、リブ付きの場所打ちコンクリート杭が開示されている。このようなリブ付きのコンクリート杭によれば、杭に作用する引抜き力・押込み力にリブが抵抗することで、これら引抜き力・押込み力に対して大きな抵抗力が得られる。その結果、必要な抵抗力を得るのに必要な杭の長さが短くすることができるので、工期短縮や工事コストの低減につながる。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるコンクリート杭は円柱杭であり、この円柱杭の場合には、杭間隔をある間隔以上にしなければならないなどの制約があって設計の自由度が小さい。これに対して、壁杭であれば、幅と厚さを適宜設定できるなど、設計の自由度が円柱杭よりも大きいというメリットがある。
【0005】
特許文献2には、このような壁杭にリブを設けた場所打ちコンクリート杭が開示されている。同文献に開示される場所打ちコンクリート杭では、バケットを用いて掘削孔を削孔し、その際、リブの構築深さでバケットを大きく開いて掘削孔にダボを形成することにより、コンクリート杭にリブが形成されるようにしている。
【特許文献1】特開平11−336457号公報
【特許文献2】特開昭63−75218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献2に開示された場所打ちコンクリート杭では、削孔時にバケットを大きく開くことでリブを形成している。このため、リブを壁杭の両端部にしか設けることができず、リブの配置の自由度が小さい。また、壁杭の端面に設けられたリブでは、面内方向の水平力に対する抵抗力を増強することはできない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、面外方向のリブを備えることにより、面内方向の水平力に対しても大きな抵抗力を発揮し得る壁状の地下コンクリート構造およびこのような地下コンクリート構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る地下コンクリート構造は、壁状部と、該壁状部から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出する少なくとも一つのリブ部とを備えることを特徴とする地下コンクリート構造。
本発明によれば、壁状部から面外方向に突出するリブが水平方向の面内力に抵抗することで、このような面内力に対して大きな抵抗力を発揮できる。
【0009】
また、本発明の一態様において、地下コンクリート構造は、コンクリート製の壁状体と、拡底部を有する少なくとも1本のコンクリート製の杭とが連結されてなり、前記拡底部が前記壁状体から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出して前記リブ部を構成する。
【0010】
この場合、前記杭は円柱体であることとすれば、工費の安い円柱状のコンクリート構造を壁状体で連結して地下コンクリート構造を構築できるので、工期短縮および工事コストの低減を図ることができる。あるいは、前記杭は、壁状体であることとしてもよい。
【0011】
また、前記杭を複数本備え、これら複数本の杭を連結するように壁状体が設けられていることとしてもよい。
【0012】
また、本発明の地下コンクリート構造は、場所打ちコンクリート杭あるいは地下壁として構築されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る地下コンクリート構造の構築方法は、壁状の掘削孔と、拡底部を有する少なくとも1本の杭状の掘削孔とを、前記拡底部が前記壁状の掘削穴から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出するように接続してなる一体の掘削孔を削孔する削孔工程と、この掘削孔に鉄筋または鉄骨を挿入してコンクリートを打設する打設工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
この構築方法の一態様において、前記削孔工程では、複数本の前記杭状の掘削孔を削孔した後、これら複数本の掘削孔の間の地盤を掘削して前記一体の掘削孔を削孔する。この場合、前記杭状の掘削孔は円柱状の掘削孔であってもよく、その場合、このような掘削孔をアースドリル工法等により削孔してもよい。ようにすれば、工費の安いアースドリル工法で掘削した掘削孔の間の地盤を除去するだけで、掘削工事が完了するので、工期短縮および工事コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、前記円柱状の掘削孔は壁状の掘削孔であってもよく、その場合、この掘削孔をバケット工法等により削孔してもよい。
【0016】
なお、本発明における「地下コンクリート構造」とは、鉄筋コンクリート構造、鉄骨コンクリート構造、および、鉄骨鉄筋コンクリート構造を含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、壁杭や地下壁のような壁状の地下コンクリート構造に面外方向または面外方向と面内方向の両方のリブを設けることにより、この地下コンクリート構造の面内方向の水平力に対して効果的に抵抗させることができる。また、このような地下コンクリート構造は、拡底部を備える杭と壁状体との組み合わせにより構築できるので、構築コストを抑えることができると共に、工期も短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態であるコンクリート杭10の正面図であり、図2は、コンクリート杭10の平面図である。これらの図面に示すように、コンクリート杭10は、2本の円柱体12が壁状体14により連結された構成を有している。円柱体12は、その下端部に拡底部16を有している。拡底部16は、下方に向けて次第に拡径するように構成されている。ただし、拡底部16は拡径された円柱状の部分として構成されていてもよい。この拡底部16における直径は壁状体14の厚さよりも大きくなっている。したがって、拡底部16は壁状体14からその厚さ方向(面外方向)および幅方向(面内方向)に突起して、リブ18を構成している。
【0019】
かかる構成によれば、コンクリート杭10に作用する引抜き力や押込み力に対してリブ18が抵抗することで、これら引抜き力・押込み力に対して大きな抵抗力が得られる。したがって、想定される押込み力・引張り力に対して必要な抵抗力を得るためのコンクリート杭10の長さが短くて済み、これにより、特に工事の手間が掛かる硬質地盤への杭の打設深さが短くなり、場合によっては、杭を硬質地盤まで打設することが不要となるなど、工期短縮や工事コストの削減を図ることができる。
【0020】
また、リブ18がコンクリート杭10の面外方向に突起するように設けられるので、コンクリート杭10に作用する面内方向の水平力に対しても大きな抵抗力を期待できる。すなわち、面外方向のリブがない通常の壁杭の場合は、面内方向の水平力に対して、その厚さ面積分でしか抵抗できない。一方、コンクリート杭10の場合は、面内方向の水平力に対してリブ18で抵抗することにより、大きな抵抗力を発揮できるのである。
【0021】
また、本実施形態のコンクリート杭10は、円柱体12と壁状体14とを連結した構造を有しているので、従前の円柱杭および壁杭の構築工法を適用するだけで構築でき、特別な機械を用いる必要がないので、その意味でも、工期短縮および工費の低減が図られる。
【0022】
図3は、コンクリート杭10が建物30の基礎杭として構築された構成を示す断面図である。地震が発生した場合、同図に矢印で示すように、建物30の揺れによってコンクリート杭10には大きな押込み力と引抜き力が交互に作用する。上述のように、コンクリート杭10によれば、リブ18が設けられることによって押込み力・引抜き力に対して大きな抵抗力が得られるので、地震に伴う押込み力・引抜き力に抵抗するのに必要なコンクリート杭10の長さを短くすることができるうえ、水平力に対しても大きな抵抗力を発揮できる。このため、建物30が高層化・重量化して基礎杭に大きな押込み力や引抜き力、あるいは水平力が作用する場合にも、コンクリート杭10の長さを抑えることができ、工事の長期化や工費の増大を回避できる。
【0023】
図4は、コンクリート杭10が、逆打工法における地下工事部分に設けられる鉄骨柱40を支持する杭として構築され、建物の完成後は、このコンクリート杭10が建物の基礎杭として使用される構成を示す断面図である。本例でも、コンクリート杭10には、鉄骨柱40を介して、地上建物部42の重量が押込み力として作用するが、上述のように、コンクリート杭10が押込み力に対して大きな抵抗力を発揮するので、建物重量を支えるのに必要なコンクリート杭10の長さを短くすることができる。
【0024】
図5〜図7は、コンクリート杭10の施工手順を説明するための図である。先ず、図5に示すように、アースドリル工法によって2本の掘削孔20を削孔した後、拡底バケット50により拡底孔部22を掘削する(図5には、左側の掘削孔20の削孔を完了し、右側の掘削孔の拡底孔部22を掘削している状態を示している)。ただし、掘削孔20の削孔はアースドリル工法に限らず他の工法により行ってもよい。なお、拡底バケット50の構成および拡底孔部22の掘削工程については、例えば、特開昭62−10392号公報等を参照。
【0025】
次に、図6に示すように、掘削孔20の間の地盤を、例えば、ハイドロフレーズ掘削機52(あるいは、バケット式の掘削機その他適宜な掘削機)で長方形状に掘削して、コンクリート杭10を構築するための一体の掘削孔24とする。そして、図7に示すように、掘削孔24に鉄筋籠26を挿入した後、トレミー管28を用いてコンクリートを打設することにより、コンクリート杭10を構築する。なお、掘削孔24に鉄骨を挿入してコンクリート杭10を鉄骨コンクリート造としてもよく、あるいは鉄筋籠および鉄骨の両方を挿入して鉄骨鉄筋コンクリート造としてもよい。
【0026】
以上の工程によれば、工費の安いアースドリル工法で掘削孔20を削孔した後、その間の地盤のみハイドロフレーズ掘削機52等で掘削するだけで掘削孔24を削孔できる。このため、ハイドロフレーズ掘削機52等による掘削量が少なくて済むので、掘削工事費を抑えることができる。ただし、先に壁状の掘削孔を削孔してから、アースドリル工法により円形の孔を掘削してコンクリート杭掘削孔24を削孔することも可能であり、そのような手順の工法も本発明の範囲に含まれる。
【0027】
図8〜図10は、コンクリート杭10の各種変形例を示す。各図において、(a)は正面図を、(b)は平面図を、夫々示している。
【0028】
図8に示すコンクリート杭100は、円柱体12の拡底部16を2段に設けたものである。なお、拡底部16の段数は2段に限らず、3段以上設けても良い。
【0029】
図9に示すコンクリート杭200は、円柱体12を壁状体16の両端ではなく、中間部に設けたものである。同図では、拡底部16を2段に設けた構成を示しているが、拡底部16を1段としてもよいし、3段以上としてもよい。また、同図では、円柱体12を2本設けた構成を示しているが、これに限らず、1本または3本以上の円柱体12を設けてもよい。さらに、図10に示すように、壁状体16の両端部と、中間部の1箇所以上に円柱体12を設ける構成でもよい。
【0030】
これらのコンクリート杭の構築も、図5〜図7を参照して説明した工程と同様に、アースドリル工法による掘削と、ハイドロフレーズ掘削機等による掘削とにより削孔し、鉄筋籠を挿入してコンクリートを打設する工程で行うことができる。
【0031】
図11は、本発明が地中壁300に適用された場合の実施形態を示す断面図であり、図12は、この地中壁300の斜視図である。本実施形態では、地中壁300の外壁面に面外方向に突起するリブ302が設けられている。地中壁300は、図13に平面図を示すように、上記コンクリート杭10の場合と同様、拡底部304を有する円柱体306と、壁部308との組み合わせにより構成される。この地中壁300は、地下工事の際の土留め壁として機能すると共に、建物310の完成後は地下躯体の外壁としても機能する。そのため、図13に示すように、地中壁300の内壁面側(図13における上側)にリブ302が突起しないよう、壁部308の壁厚を大きくすると共に、その中心線と円柱体306の中心とを面外方向にずらして配置している。
【0032】
地震により建物310が揺れた場合には、地下躯体の外壁部分に最も大きな引抜き力・押込み力が作用するが、本実施形態では、この外壁部分にリブ302が設けられることとなり、地震に伴う引抜き力・押込み力に対して効果的に抵抗することができる。
【0033】
なお、本実施形態において、図11中に破線で示すように、地中壁300を躯体よりも深く打設することで、杭として機能させることもできる。
【0034】
また、地中壁300が地下躯体の外壁または杭として本体利用される場合に限らず、地中壁300が仮設の壁として構築され、地中壁300と建物310の躯体とが連結金具等によって連結される構成であってもよい。この構成においても、地震時に躯体に作用する力が連結金具を介して地中壁300に伝達され、この力に対してリブ302が効果的に抵抗できることになる。
【0035】
また、地中壁300の形状として、図12に示すような四角の枠状の壁のほか、図14(a)〜(c)に示すように、L字型、十字型、T字型等の種々のものを用いることができる。
【0036】
また、上記各実施形態では、円柱体と壁状体との組み合わせにより、リブを備える地下コンクリート構造が構成されるものとしたが、これに限らず、例えば、図15に示すように、壁状体からなる杭400と壁状体402との組み合わせにより地下コンクリート構造が構成されるものとしてもよく、本発明の範囲にはこのような構成も含まれる。この場合、杭400は、例えばバケット工法により削孔して、その掘削孔にコンクリートを打設することにより構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態であるコンクリート杭の正面図である。
【図2】本実施形態のコンクリート杭の平面図である。
【図3】本実施形態のコンクリート杭が高層ビルの基礎杭として構築された構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態のコンクリート杭が、逆打工法における地下工事部分に設けられる鉄骨柱を支持する杭として構築された構成を示す断面図である。
【図5】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その1)である。
【図6】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その2)である。
【図7】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その3)である。
【図8】本実施形態のコンクリートの変形例を示す図である。
【図9】本実施形態のコンクリートの別の変形例を示す図である。
【図10】本実施形態のコンクリートの更に別の変形例を示す図である。
【図11】本発明が地中壁に適用された場合の実施形態を示す断面図である。
【図12】本実施形態の地中壁の斜視図である。
【図13】本実施形態の地中壁の平面図である。
【図14】図14(a)〜(c)は、本発明の適用が可能な地中壁の各種形状を示す平面図である。
【図15】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10,100,200 コンクリート杭
12 円柱体
14 壁状体
16 拡底部
18 リブ
20 掘削孔
22 拡底孔部
24 掘削孔
300 地中壁
302 リブ
304 拡底部
306 円柱体
308 壁部
310 建物
400 杭
402 壁状体
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭や地下壁等の壁状の地下コンクリート構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の高層化・重量化に伴って、地震時等に建物の基礎杭に掛かる引抜き力・押込み力も大きくなっている。このため、基礎杭がそのような大きな引抜き力・押込み力に抵抗できるように、支持層地盤よりも深い硬質地盤へ杭を長く打設することが必要となり、工事の長期化やコストの増加を招いている。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1には、リブ付きの場所打ちコンクリート杭が開示されている。このようなリブ付きのコンクリート杭によれば、杭に作用する引抜き力・押込み力にリブが抵抗することで、これら引抜き力・押込み力に対して大きな抵抗力が得られる。その結果、必要な抵抗力を得るのに必要な杭の長さが短くすることができるので、工期短縮や工事コストの低減につながる。
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるコンクリート杭は円柱杭であり、この円柱杭の場合には、杭間隔をある間隔以上にしなければならないなどの制約があって設計の自由度が小さい。これに対して、壁杭であれば、幅と厚さを適宜設定できるなど、設計の自由度が円柱杭よりも大きいというメリットがある。
【0005】
特許文献2には、このような壁杭にリブを設けた場所打ちコンクリート杭が開示されている。同文献に開示される場所打ちコンクリート杭では、バケットを用いて掘削孔を削孔し、その際、リブの構築深さでバケットを大きく開いて掘削孔にダボを形成することにより、コンクリート杭にリブが形成されるようにしている。
【特許文献1】特開平11−336457号公報
【特許文献2】特開昭63−75218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、特許文献2に開示された場所打ちコンクリート杭では、削孔時にバケットを大きく開くことでリブを形成している。このため、リブを壁杭の両端部にしか設けることができず、リブの配置の自由度が小さい。また、壁杭の端面に設けられたリブでは、面内方向の水平力に対する抵抗力を増強することはできない。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、面外方向のリブを備えることにより、面内方向の水平力に対しても大きな抵抗力を発揮し得る壁状の地下コンクリート構造およびこのような地下コンクリート構造の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る地下コンクリート構造は、壁状部と、該壁状部から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出する少なくとも一つのリブ部とを備えることを特徴とする地下コンクリート構造。
本発明によれば、壁状部から面外方向に突出するリブが水平方向の面内力に抵抗することで、このような面内力に対して大きな抵抗力を発揮できる。
【0009】
また、本発明の一態様において、地下コンクリート構造は、コンクリート製の壁状体と、拡底部を有する少なくとも1本のコンクリート製の杭とが連結されてなり、前記拡底部が前記壁状体から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出して前記リブ部を構成する。
【0010】
この場合、前記杭は円柱体であることとすれば、工費の安い円柱状のコンクリート構造を壁状体で連結して地下コンクリート構造を構築できるので、工期短縮および工事コストの低減を図ることができる。あるいは、前記杭は、壁状体であることとしてもよい。
【0011】
また、前記杭を複数本備え、これら複数本の杭を連結するように壁状体が設けられていることとしてもよい。
【0012】
また、本発明の地下コンクリート構造は、場所打ちコンクリート杭あるいは地下壁として構築されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る地下コンクリート構造の構築方法は、壁状の掘削孔と、拡底部を有する少なくとも1本の杭状の掘削孔とを、前記拡底部が前記壁状の掘削穴から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出するように接続してなる一体の掘削孔を削孔する削孔工程と、この掘削孔に鉄筋または鉄骨を挿入してコンクリートを打設する打設工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
この構築方法の一態様において、前記削孔工程では、複数本の前記杭状の掘削孔を削孔した後、これら複数本の掘削孔の間の地盤を掘削して前記一体の掘削孔を削孔する。この場合、前記杭状の掘削孔は円柱状の掘削孔であってもよく、その場合、このような掘削孔をアースドリル工法等により削孔してもよい。ようにすれば、工費の安いアースドリル工法で掘削した掘削孔の間の地盤を除去するだけで、掘削工事が完了するので、工期短縮および工事コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、前記円柱状の掘削孔は壁状の掘削孔であってもよく、その場合、この掘削孔をバケット工法等により削孔してもよい。
【0016】
なお、本発明における「地下コンクリート構造」とは、鉄筋コンクリート構造、鉄骨コンクリート構造、および、鉄骨鉄筋コンクリート構造を含む概念である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、壁杭や地下壁のような壁状の地下コンクリート構造に面外方向または面外方向と面内方向の両方のリブを設けることにより、この地下コンクリート構造の面内方向の水平力に対して効果的に抵抗させることができる。また、このような地下コンクリート構造は、拡底部を備える杭と壁状体との組み合わせにより構築できるので、構築コストを抑えることができると共に、工期も短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態であるコンクリート杭10の正面図であり、図2は、コンクリート杭10の平面図である。これらの図面に示すように、コンクリート杭10は、2本の円柱体12が壁状体14により連結された構成を有している。円柱体12は、その下端部に拡底部16を有している。拡底部16は、下方に向けて次第に拡径するように構成されている。ただし、拡底部16は拡径された円柱状の部分として構成されていてもよい。この拡底部16における直径は壁状体14の厚さよりも大きくなっている。したがって、拡底部16は壁状体14からその厚さ方向(面外方向)および幅方向(面内方向)に突起して、リブ18を構成している。
【0019】
かかる構成によれば、コンクリート杭10に作用する引抜き力や押込み力に対してリブ18が抵抗することで、これら引抜き力・押込み力に対して大きな抵抗力が得られる。したがって、想定される押込み力・引張り力に対して必要な抵抗力を得るためのコンクリート杭10の長さが短くて済み、これにより、特に工事の手間が掛かる硬質地盤への杭の打設深さが短くなり、場合によっては、杭を硬質地盤まで打設することが不要となるなど、工期短縮や工事コストの削減を図ることができる。
【0020】
また、リブ18がコンクリート杭10の面外方向に突起するように設けられるので、コンクリート杭10に作用する面内方向の水平力に対しても大きな抵抗力を期待できる。すなわち、面外方向のリブがない通常の壁杭の場合は、面内方向の水平力に対して、その厚さ面積分でしか抵抗できない。一方、コンクリート杭10の場合は、面内方向の水平力に対してリブ18で抵抗することにより、大きな抵抗力を発揮できるのである。
【0021】
また、本実施形態のコンクリート杭10は、円柱体12と壁状体14とを連結した構造を有しているので、従前の円柱杭および壁杭の構築工法を適用するだけで構築でき、特別な機械を用いる必要がないので、その意味でも、工期短縮および工費の低減が図られる。
【0022】
図3は、コンクリート杭10が建物30の基礎杭として構築された構成を示す断面図である。地震が発生した場合、同図に矢印で示すように、建物30の揺れによってコンクリート杭10には大きな押込み力と引抜き力が交互に作用する。上述のように、コンクリート杭10によれば、リブ18が設けられることによって押込み力・引抜き力に対して大きな抵抗力が得られるので、地震に伴う押込み力・引抜き力に抵抗するのに必要なコンクリート杭10の長さを短くすることができるうえ、水平力に対しても大きな抵抗力を発揮できる。このため、建物30が高層化・重量化して基礎杭に大きな押込み力や引抜き力、あるいは水平力が作用する場合にも、コンクリート杭10の長さを抑えることができ、工事の長期化や工費の増大を回避できる。
【0023】
図4は、コンクリート杭10が、逆打工法における地下工事部分に設けられる鉄骨柱40を支持する杭として構築され、建物の完成後は、このコンクリート杭10が建物の基礎杭として使用される構成を示す断面図である。本例でも、コンクリート杭10には、鉄骨柱40を介して、地上建物部42の重量が押込み力として作用するが、上述のように、コンクリート杭10が押込み力に対して大きな抵抗力を発揮するので、建物重量を支えるのに必要なコンクリート杭10の長さを短くすることができる。
【0024】
図5〜図7は、コンクリート杭10の施工手順を説明するための図である。先ず、図5に示すように、アースドリル工法によって2本の掘削孔20を削孔した後、拡底バケット50により拡底孔部22を掘削する(図5には、左側の掘削孔20の削孔を完了し、右側の掘削孔の拡底孔部22を掘削している状態を示している)。ただし、掘削孔20の削孔はアースドリル工法に限らず他の工法により行ってもよい。なお、拡底バケット50の構成および拡底孔部22の掘削工程については、例えば、特開昭62−10392号公報等を参照。
【0025】
次に、図6に示すように、掘削孔20の間の地盤を、例えば、ハイドロフレーズ掘削機52(あるいは、バケット式の掘削機その他適宜な掘削機)で長方形状に掘削して、コンクリート杭10を構築するための一体の掘削孔24とする。そして、図7に示すように、掘削孔24に鉄筋籠26を挿入した後、トレミー管28を用いてコンクリートを打設することにより、コンクリート杭10を構築する。なお、掘削孔24に鉄骨を挿入してコンクリート杭10を鉄骨コンクリート造としてもよく、あるいは鉄筋籠および鉄骨の両方を挿入して鉄骨鉄筋コンクリート造としてもよい。
【0026】
以上の工程によれば、工費の安いアースドリル工法で掘削孔20を削孔した後、その間の地盤のみハイドロフレーズ掘削機52等で掘削するだけで掘削孔24を削孔できる。このため、ハイドロフレーズ掘削機52等による掘削量が少なくて済むので、掘削工事費を抑えることができる。ただし、先に壁状の掘削孔を削孔してから、アースドリル工法により円形の孔を掘削してコンクリート杭掘削孔24を削孔することも可能であり、そのような手順の工法も本発明の範囲に含まれる。
【0027】
図8〜図10は、コンクリート杭10の各種変形例を示す。各図において、(a)は正面図を、(b)は平面図を、夫々示している。
【0028】
図8に示すコンクリート杭100は、円柱体12の拡底部16を2段に設けたものである。なお、拡底部16の段数は2段に限らず、3段以上設けても良い。
【0029】
図9に示すコンクリート杭200は、円柱体12を壁状体16の両端ではなく、中間部に設けたものである。同図では、拡底部16を2段に設けた構成を示しているが、拡底部16を1段としてもよいし、3段以上としてもよい。また、同図では、円柱体12を2本設けた構成を示しているが、これに限らず、1本または3本以上の円柱体12を設けてもよい。さらに、図10に示すように、壁状体16の両端部と、中間部の1箇所以上に円柱体12を設ける構成でもよい。
【0030】
これらのコンクリート杭の構築も、図5〜図7を参照して説明した工程と同様に、アースドリル工法による掘削と、ハイドロフレーズ掘削機等による掘削とにより削孔し、鉄筋籠を挿入してコンクリートを打設する工程で行うことができる。
【0031】
図11は、本発明が地中壁300に適用された場合の実施形態を示す断面図であり、図12は、この地中壁300の斜視図である。本実施形態では、地中壁300の外壁面に面外方向に突起するリブ302が設けられている。地中壁300は、図13に平面図を示すように、上記コンクリート杭10の場合と同様、拡底部304を有する円柱体306と、壁部308との組み合わせにより構成される。この地中壁300は、地下工事の際の土留め壁として機能すると共に、建物310の完成後は地下躯体の外壁としても機能する。そのため、図13に示すように、地中壁300の内壁面側(図13における上側)にリブ302が突起しないよう、壁部308の壁厚を大きくすると共に、その中心線と円柱体306の中心とを面外方向にずらして配置している。
【0032】
地震により建物310が揺れた場合には、地下躯体の外壁部分に最も大きな引抜き力・押込み力が作用するが、本実施形態では、この外壁部分にリブ302が設けられることとなり、地震に伴う引抜き力・押込み力に対して効果的に抵抗することができる。
【0033】
なお、本実施形態において、図11中に破線で示すように、地中壁300を躯体よりも深く打設することで、杭として機能させることもできる。
【0034】
また、地中壁300が地下躯体の外壁または杭として本体利用される場合に限らず、地中壁300が仮設の壁として構築され、地中壁300と建物310の躯体とが連結金具等によって連結される構成であってもよい。この構成においても、地震時に躯体に作用する力が連結金具を介して地中壁300に伝達され、この力に対してリブ302が効果的に抵抗できることになる。
【0035】
また、地中壁300の形状として、図12に示すような四角の枠状の壁のほか、図14(a)〜(c)に示すように、L字型、十字型、T字型等の種々のものを用いることができる。
【0036】
また、上記各実施形態では、円柱体と壁状体との組み合わせにより、リブを備える地下コンクリート構造が構成されるものとしたが、これに限らず、例えば、図15に示すように、壁状体からなる杭400と壁状体402との組み合わせにより地下コンクリート構造が構成されるものとしてもよく、本発明の範囲にはこのような構成も含まれる。この場合、杭400は、例えばバケット工法により削孔して、その掘削孔にコンクリートを打設することにより構築できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態であるコンクリート杭の正面図である。
【図2】本実施形態のコンクリート杭の平面図である。
【図3】本実施形態のコンクリート杭が高層ビルの基礎杭として構築された構成を示す断面図である。
【図4】本実施形態のコンクリート杭が、逆打工法における地下工事部分に設けられる鉄骨柱を支持する杭として構築された構成を示す断面図である。
【図5】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その1)である。
【図6】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その2)である。
【図7】本実施形態のコンクリート杭の施工手順を説明するための図(その3)である。
【図8】本実施形態のコンクリートの変形例を示す図である。
【図9】本実施形態のコンクリートの別の変形例を示す図である。
【図10】本実施形態のコンクリートの更に別の変形例を示す図である。
【図11】本発明が地中壁に適用された場合の実施形態を示す断面図である。
【図12】本実施形態の地中壁の斜視図である。
【図13】本実施形態の地中壁の平面図である。
【図14】図14(a)〜(c)は、本発明の適用が可能な地中壁の各種形状を示す平面図である。
【図15】本発明の別の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
10,100,200 コンクリート杭
12 円柱体
14 壁状体
16 拡底部
18 リブ
20 掘削孔
22 拡底孔部
24 掘削孔
300 地中壁
302 リブ
304 拡底部
306 円柱体
308 壁部
310 建物
400 杭
402 壁状体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁状部と、該壁状部から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出する少なくとも一つのリブ部とを備えることを特徴とする地下コンクリート構造。
【請求項2】
コンクリート製の壁状体と、拡底部を有する少なくとも1本のコンクリート製の杭とが連結されてなり、前記拡底部が前記壁状体から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出して前記リブ部を構成していることを特徴とする請求項1記載の地下コンクリート構造。
【請求項3】
前記杭は、拡底部を有する円柱体であることを特徴とする請求項2記載の地下コンクリート構造。
【請求項4】
前記杭は、拡底部を有する壁状体であることを特徴とする請求項2記載の地下コンクリート構造。
【請求項5】
前記杭を複数本備え、これら複数本の杭を連結するように壁状体が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のうち何れか1項記載の地下コンクリート構造。
【請求項6】
場所打ちコンクリート杭として構築された請求項1〜5のうち何れか1項記載の前記地下コンクリート構造体。
【請求項7】
地下壁として構築された請求項1〜5のうち何れか1項記載の地下コンクリート構造。
【請求項8】
壁状の掘削孔と、拡底部を有する少なくとも1本の杭状の掘削孔とを、前記拡底部が前記壁状の掘削穴から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出するように接続してなる一体の掘削孔を削孔する削孔工程と、この掘削孔に鉄筋または鉄骨を挿入してコンクリートを打設する打設工程とを含むことを特徴とする地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項9】
前記削孔工程では、複数本の前記杭状の掘削孔を削孔した後、これら複数本の掘削孔の間の地盤を掘削して前記一体の掘削孔を削孔することを特徴とする請求項8記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項10】
前記杭状の掘削孔は円柱状の掘削孔であることを特徴とする請求項9記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項11】
前記円柱状の掘削孔をアースドリル工法により削孔することを特徴とする請求項10記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項12】
前記杭状の掘削孔は、壁状の掘削孔であることを特徴とする請求項9記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項13】
前記壁状の掘削孔をバケット工法により削孔することを特徴とする請求項12記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項1】
壁状部と、該壁状部から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出する少なくとも一つのリブ部とを備えることを特徴とする地下コンクリート構造。
【請求項2】
コンクリート製の壁状体と、拡底部を有する少なくとも1本のコンクリート製の杭とが連結されてなり、前記拡底部が前記壁状体から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出して前記リブ部を構成していることを特徴とする請求項1記載の地下コンクリート構造。
【請求項3】
前記杭は、拡底部を有する円柱体であることを特徴とする請求項2記載の地下コンクリート構造。
【請求項4】
前記杭は、拡底部を有する壁状体であることを特徴とする請求項2記載の地下コンクリート構造。
【請求項5】
前記杭を複数本備え、これら複数本の杭を連結するように壁状体が設けられていることを特徴とする請求項2〜4のうち何れか1項記載の地下コンクリート構造。
【請求項6】
場所打ちコンクリート杭として構築された請求項1〜5のうち何れか1項記載の前記地下コンクリート構造体。
【請求項7】
地下壁として構築された請求項1〜5のうち何れか1項記載の地下コンクリート構造。
【請求項8】
壁状の掘削孔と、拡底部を有する少なくとも1本の杭状の掘削孔とを、前記拡底部が前記壁状の掘削穴から面外方向または面外方向と面内方向の両方に突出するように接続してなる一体の掘削孔を削孔する削孔工程と、この掘削孔に鉄筋または鉄骨を挿入してコンクリートを打設する打設工程とを含むことを特徴とする地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項9】
前記削孔工程では、複数本の前記杭状の掘削孔を削孔した後、これら複数本の掘削孔の間の地盤を掘削して前記一体の掘削孔を削孔することを特徴とする請求項8記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項10】
前記杭状の掘削孔は円柱状の掘削孔であることを特徴とする請求項9記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項11】
前記円柱状の掘削孔をアースドリル工法により削孔することを特徴とする請求項10記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項12】
前記杭状の掘削孔は、壁状の掘削孔であることを特徴とする請求項9記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【請求項13】
前記壁状の掘削孔をバケット工法により削孔することを特徴とする請求項12記載の地下コンクリート構造の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−184895(P2008−184895A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56636(P2008−56636)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【分割の表示】特願2003−158129(P2003−158129)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【分割の表示】特願2003−158129(P2003−158129)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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