説明

地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式

【課題】 クラブハウス1に設置されている送信機2の場所から、遠方の地中に埋設されている誘導線ケーブル13の断線位置を推定する方式を提供する。
【解決手段】 低周波を発生させる送信機2の出力部3の一方の上側端子14から誘導線ケーブル13の一方のスタート側に接続をし、送信機2の出力部3の他方の下側端子15から送信機2のアース4に接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、送信機2の出力部3の他方の下側端子15から誘導線ケーブル13の他方の上がり側に接続をし、送信機2の出力部3の一方の上側端子14から送信機2のアース4に接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、測定された2つの電流値の比率を計算することによって、地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定する方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ゴルフ場内においてゴルフバッグ等を自動搬送する車両や、工場内で荷物を運搬する無人搬送車として、電磁誘導式の自動走行車が使用されている。以下において、電磁誘導式の自動走行車として、ゴルフ場内におけるゴルフバッグ等を自動搬送する電磁誘導式ゴルフカート5を一例として説明をする。
【0003】
図3に示すように、ゴルフ場内では、それぞれ9ホール単位(OUTコース:1番ホール〜9番ホール、INコース:10番ホール〜18番ホール)で、走行路が1ループになるように、地表から5cm程度の地中に誘導線ケーブル13が埋め込まれた状態で埋設されている。ここで、ゴルフ場のコースにも依存するものの、1本の誘導線ケーブル13の長さは4〜4.5km程度になるのが一般的である。
【0004】
電磁誘導式ゴルフカート5は、クラブハウス1等の地上に設置されている送信機2から地下の誘導線ケーブル13に、低周波の交流電流を流すことにより発生する磁界を、車両に設置したコイル等を用いて検出する。そして、電磁誘導式ゴルフカート5は、コースごとに地中の誘導線ケーブル13に沿って、スタート地点から上がり地点に向かって自動走行をするものである。
【0005】
一般的に誘導線ケーブル13としては、線径が0.5mm程度の銅線を5〜10本撚線とし、その周囲を合成ゴム等で覆った単線のケーブルが使用されている。これらのケーブルは、銅線の周囲を合成ゴム等で覆われているものの、地震、長年の使用及び何らかの張力等によって断線をする場合がある。そして、上述したように誘導線ケーブル13は地中に埋設されているために、断線箇所を発見するのがきわめて困難であり、手間のかかる作業という問題点があった。なお、ケーブルの断線は、U字溝、ケーブル間の接続部分及び路盤が割れている部分などで特に起こり易いことが経験上知られている。
【0006】
なお、ケーブルの断線位置を検出する方法としては、断線したケーブルに高周波信号を送り、発生する磁界をコイル等を用いて探索する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開平8−94699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1の方法では、探索者が地中に埋め込まれたケーブルに沿ってコース内すべてを歩いて回る必要があり、極めて煩わしいという問題点があった。すなわち、OUTコース又はINコースに使用されている1本の誘導線ケーブル13の長さは、4〜4.5km程度になるのが一般的であり、かなりの労力となるためである。
【0009】
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、クラブハウス1等に設置されている送信機2の場所において、遠方の地中に埋設されたケーブルの断線位置を推定する方式を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係わる地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定する方式は、送信機から誘導線ケーブルの一方と送信機からアースとの間に流れる電流値と、送信機から誘導線ケーブルの他方と送信機からアースとの間に流れる電流値とを測定し、それらの電流値の比率を計算することによって、離れた場所においても地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定できる方式である。
【0011】
すなわち、請求項1の発明は、地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式において、
送信機の出力部の一方からケーブルの一方に接続をし、送信機の出力部の他方から送信機のアースに接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、
送信機の出力部の他方からケーブルの他方に接続をし、送信機の出力部の一方から送信機のアースに接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、
測定された2つの前記電流値の比率を計算することによって、地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定することを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記交流電流の周波数は、低周波であることを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の発明において、前記ケーブルは、ループ状をしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係わる地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定する方式を用いると、クラブハウス1等に設置されている送信機2の場所において、地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定することができる。したがって、探索者が地中に埋め込まれたケーブルに沿ってコース内をすべて歩く必要がないために、短時間で効率的な補修作業をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下において、本発明の実施の形態として、ゴルフ場内において、ゴルフバッグ等を自動搬送する電磁誘導式ゴルフカート5を一例として説明をする。
【0016】
1.電磁誘導式ゴルフカートの走行路
図3は、ゴルフ場内での電磁誘導式ゴルフカート5の走行路を示す概略図である。すなわち、ゴルフ場内では、それぞれ9ホール単位(OUTコース:1番ホール〜9番ホール、INコース:10番ホール〜18番ホール)で、各走行路が1ループになるように誘導線ケーブル13が、地表から約4〜5cmの地中に埋め込まれた状態で埋設されている。なお、平坦コースや山岳コースなどゴルフ場に依存はするものの、それぞれ1本の誘導線ケーブル13の長さは4〜4.5km程度になるのが一般的である。
【0017】
なお、最近では、図3において、OUTコース及びINコースのそれぞれのコースごとに送信機2を設けているのが一般的となっている(図1、2)。すなわち、2台の送信機2を設けることにより、コースごとに流れる電流値をほぼ一定にすることができる。
【0018】
クラブハウス1等に設置されている送信機2は、その出力部3から誘導線ケーブル13に、低周波の交流電流、例えば1500Hzで、250mAに設定した交流電流を流すようにした。なお、送信機2の最大出力は約100W、誘導線ケーブル13のインピーダンスは50〜100Ωである。また、送信機2は、落雷の危険性回避や感電防止、その他の安全性確保を考慮して、第1種のアース4で大地と接地されている。
【0019】
一般的に誘導線ケーブル13としては、線径が約0.5mmの銅線を7本撚線とし、その周囲を合成ゴム等で覆った略円筒形状をした長尺で単線のケーブルが使用されている。そして、これらのケーブルは、地上に接地されている送信機2の出力部3付近を除いて、その大部分が地下に埋め込まれた状態でゴルフカート5の走行路に埋設されている。
【0020】
そして、電磁誘導式ゴルフカート5は、地中の誘導線ケーブル13に発生する低周波の磁界を、車両に設置したコイル等を用いて検出し、誘導線ケーブル13に沿って、スタート地点から上がり地点に向かって自動走行をするものである。
【0021】
2.本発明に係わる誘導線ケーブルの断線位置推定方式の概要
これらの誘導線ケーブル13は、芯線の周囲が合成ゴム等で覆われているものの、長年の使用や何らかの張力、地震等によって断線をする場合がある。そして、上述したように、誘導線ケーブル13は地中に埋設されているために、断線箇所を発見するのがきわめて困難であり、煩わしい作業という問題点があった。
【0022】
図1は、本発明に係わる誘導線ケーブルの断線位置推定方式の概略図である。一例として、図3に示す各コースのうちで、OUTコースの例を用いて説明をする。図1(a)は、OUTコースのうちで、上がり地点よりも、ややスタート地点に近い位置が断線7をした場合の例を示している。図1(a)の場合には、ループ内が断線7をしているために、送信機2の出力部3から誘導線ケーブル13との間に、低周波の交流電流が流れることはない。
【0023】
しかし、図1(b)に示すように、送信機2の出力部3の一方、例えば上がり地点側を送信機2のアース4に接続をすることによって、電流計11に交流電流が流れることが確認された。そして、この場合の電流値は、上述した断線をしていない場合の設定電流値(250mA)に比べて少ない値であった。
【0024】
また、図1(c)に示すように、送信機2の出力部3の他方、すなわちスタート地点側を送信機2のアース4に接続をすることによって、図1(b)の電流値よりもやや大きな交流電流が電流計11に流れることが確認された。なお、この場合の電流値も、図1(b)の場合と同様に、上述した断線をしていない場合の設定電流値(250mA)に比べて少ない値であった。
【0025】
一方、図1(a)〜(c)とは逆に、OUTコースのうちで、上がり地点に近い位置が断線7をした場合の電流値は、上述した場合とは逆になる傾向を示した。すなわち、上がり地点に近い位置が断線7をした場合には、送信機2の出力部3の上がり地点側をアース4に接続すると大きな電流が電流計11に流れ、送信機2の出力部3のスタート地点側をアース4に接続すると小さな電流が電流計11に流れることがわかった。
【0026】
3.本発明に係わる誘導線ケーブルの断線位置推定方式の内容
図2は、一実施例として、比較的簡単な電流測定装置12を用いた場合の本発明に係わる誘導線ケーブルの断線位置推定方式の概略図である。図2に示すように、電流測定装置12は、スイッチA9、スイッチB8、2個の1アンペア定格のヒューズ10a,b及び交流用の電流計11から構成されている。そして、電流測定装置12の入力側は送信機2の出力部3に、電流測定装置12の出力側はループ状をした誘導線ケーブル13の両端にそれぞれ接続されている。ここで、送信機2を保護するために、誤ってスイッチA9及びスイッチB8が同時にONにされた場合には、ヒューズ10a,bの一方又は両方が焼き切れる構造となっている。
【0027】
誘導線ケーブル13が断線をしていない状態、すなわち正常な状態では、スイッチA9及びスイッチB8が同時にOFFとなった状態であり、送信機2の出力部3からループ状をした誘導線ケーブル13に、250mAの交流電流がそのまま出力されるようにした(図1(a))。
【0028】
誘導線ケーブル13が断線をした場合には、以下の手順で断線位置を推定する。ここで、一実施例として、図1(a)に示すように、一般的なゴルフコースのOUTコースのうちで、スタート地点に近い位置の誘導線ケーブル13が断線7をした場合の測定例を用いて詳細な説明をする。
【0029】
まず、図1(b)に示すように、電流測定装置12のスイッチA9のみをONとし、スイッチB8はOFFの状態のままとする。そうすると、送信機2の出力部3の一方の上側端子14から、誘導線ケーブル13の一方のスタート側に接続をされた状態のままとなる。
そして、送信機2の出力部3の他方の下側端子15は、上がり地点からの誘導線ケーブル13から切り離されるとともに、ヒューズ10b及び電流計11を介してアース4に接続される。その結果、送信機2の出力部3とアース4との間には、180mAの電流が流れることが電流計11によって測定された。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、電流測定装置12のスイッチB8のみをONとし、スイッチA9はOFFの状態とままとした。そうすると、送信機2の出力部3の他方の下側端子15から、誘導線ケーブル13の他方の上がり側に接続をされた状態のままとなる。
そして、送信機2の出力部3の一方の上側端子14は、コースのスタート地点からの誘導線ケーブル13から切り離されるとともに、ヒューズ10a及び電流計11を介してアース4に接続される。その結果、送信機2の出力部3とアース4との間には、240mAの電流が流れることが電流計11によって測定された。
【0031】
これらの測定された数値から、以下の式(1)でそれぞれ2つの電流値の比率を計算した。
180mA/(180mA+240mA)=0.428 (1)
そして、スタート地点から誘導線ケーブル13全体の0.428の場所、すなわち42.8%付近を調査したところ路盤の割れが見つかり、その位置で誘導線ケーブル13の断線が確認された。
【0032】
これらの詳細な理由については不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、本実施例で使用している周波数が1500Hzと低周波であることから、誘導線ケーブル13の「L(インダクタンス)」の成分は、ほとんど無視をすることができる。その結果、誘導線ケーブル13のZ(インピーダンス)は、「C(キャパシタンス)」に強く依存しているものと考えられる。
【0033】
Z ≒ j/(ωC) (2)
その結果、送信機2の出力部3の一方又は他方とアース4との間に流れる電流値(I)は、誘導線ケーブル13の「C(キャパシタンス)」にほぼ比例することになる。
【0034】
I ∝ C (3)
一方、送信機2から断線7をする地点までの誘導線ケーブル13の長さが長いほど、容量成分である「C」が大きくなっているものと考えられる。したがって、上述した本実施例の場合には、スタート地点から断線地点までの距離よりも、上がり地点から断線地点までの距離が長いため、誘導線ケーブル13の容量成分である「C」も大きくなっており、その結果、送信機2の出力部3とアース4との間に流れる電流も大きくなっているものと考えられる。
【0035】
なお、上述した実施例では、単線のループ状をしたケーブルを使用した場合について説明をしたが、2芯以上の複線のケーブルを使用した場合についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明に係わる地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式を用いると、実際に断線をした位置から離れたクラブハウス内に設置されている送信機の位置からでもケーブルの断線位置を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係わる誘導線ケーブルの断線位置推定方式の概略図である。
【図2】本発明に係わる電流測定装置付近の概略図である。
【図3】ゴルフ場内での電磁誘導式ゴルフカートの走行コースを示す概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1:クラブハウス、2:送信機、3:出力部、4:アース、5:電磁誘導式ゴルフカート、
6:立木、7:断線、8:スイッチB、9:スイッチA、10a,b:ヒューズ、
11:電流計、12:電流測定装置、13:誘導線ケーブル、14:上側端子、
15:下側端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式において、
送信機の出力部の一方からケーブルの一方に接続をし、送信機の出力部の他方から送信機のアースに接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、
送信機の出力部の他方からケーブルの他方に接続をし、送信機の出力部の一方から送信機のアースに接続をしてこの間に流れる交流の電流値を測定し、
測定された2つの前記電流値の比率を計算することによって、地中に埋設されているケーブルの断線位置を推定することを特徴とする地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式。
【請求項2】
前記交流電流の周波数は、低周波であることを特徴とする請求項1記載の地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式。
【請求項3】
前記ケーブルは、ループ状をしていることを特徴とする請求項1又は2記載の地中に埋設されているケーブルの断線位置推定方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−113926(P2007−113926A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302701(P2005−302701)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(391015144)日立バッテリー販売サービス株式会社 (1)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】