説明

地盤改良機及びその制御方法

【課題】簡単な制御で確実に所定の地盤改良を行うことができる地盤改良機及びその制御方法を提供する。
【解決手段】地盤改良の最終工程で回転駆動装置を一定の回転数で回転させながら上昇させる際に、該最終工程に入るまでの間に前記区間深度ごとに計測して記録した中空ロッドの回転数とあらかじめ設定された区間深度ごとの区間深度目標回転数とを比較し、各区間深度で前記回転駆動装置の上昇速度を調節して該区間深度における合計回転数を前記区間深度目標回転数以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機及びその制御方法に関し、詳しくは、掘削した土砂と注入した地盤改良剤とを撹拌混合して地盤の改良を行う地盤改良機及び該地盤改良機の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削刃及び撹拌翼を有する掘削ヘッドを中空ロッドの先端に装着し、中空ロッドを回転駆動する回転駆動装置をリーダに沿って降下させるとともに、中空ロッドを通して掘削ヘッドにセメントミルクなどの地盤改良剤を供給し、掘削刃で掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼で撹拌混合することによって地盤改良を行う工法が知られている。このような地盤改良工法を実施する地盤改良機において、セメントミルクの供給量を常時監視し、固化材の過不足に応じて警報を出力する管理方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−266343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載された管理方法を用いて地盤改良を施工する際には、セメントミルク中の固化材の添加量、セメントミルクの供給量、掘削ヘッドの深度、速度、回転数などの多くのデータを使用し、複雑な演算処理を行う必要があった。また、施工が不十分と判定した場合には、警報を出力することで、オペレータに警報出力箇所の再施工を促すだけであることから、オペレータの負担を十分に軽減することはできなかった。さらに、掘削速度などの変動に応じてセメントミルクの供給量を増減すると、流量の変動に伴ってセメントミルク中の固化材の割合が変動してしまうことがあり、土砂に混合する固化材の過不足が生じて所定の地盤改良を行えなくなるおそれがあった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な制御で確実に所定の地盤改良を行うことができる地盤改良機及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、先端に掘削ヘッドを装着した中空ロッドを回転駆動装置で回転駆動しながら該回転駆動装置をリーダに沿って下降させるとともに、前記中空ロッドを介して前記掘削ヘッドに地盤改良剤供給手段から一定の流量及び一定の組成の地盤改良剤を供給し、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機において、前記回転駆動装置の昇降速度を制御する昇降速度制御手段と、前記回転駆動装置の昇降位置を検出する位置検出手段と、前記回転駆動装置の回転数を制御する回転数制御手段と、あらかじめ設定された区間深度ごとの回転駆動装置の回転数を計測して記録する回転数計測手段とを備えるとともに、地盤改良の最終工程で回転駆動装置を一定の回転数で回転させながら上昇させる際に、前記回転数計測手段に記録した各区間深度ごとの回転数とあらかじめ設定された区間深度目標回転数とを比較し、各区間深度で前記回転駆動装置の上昇速度を調節して各区間深度における回転数を前記区間深度目標回転数以上にする上昇速度制御手段を備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の地盤改良機の制御方法は、先端に掘削ヘッドを装着した中空ロッドを回転駆動装置で回転駆動しながら該回転駆動装置をリーダに沿って下降させるとともに、前記中空ロッドを介して前記掘削ヘッドに地盤改良剤供給手段から一定の流量及び一定の組成の地盤改良剤を供給し、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機の制御方法において、地盤改良の最終工程で回転駆動装置を一定の回転数で回転させながら上昇させる際に、該最終工程に入るまでの間に前記区間深度ごとに計測して記録した中空ロッドの回転数とあらかじめ設定された区間深度ごとの区間深度目標回転数とを比較し、各区間深度で前記回転駆動装置の上昇速度を調節して該区間深度における回転数を前記区間深度目標回転数以上にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最終工程で回転駆動装置を上昇させる際の回転駆動装置の上昇速度を制御するだけで、土砂と地盤改良剤とを撹拌混合するための撹拌翼の回転数をあらかじめ設定された目標回転数とすることができるので、全深度にわたって土砂と地盤改良剤とを均等に撹拌混合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明で使用する地盤改良機の一形態例を示す側面図である。
【図2】制御手段の一形態例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本形態例に示す地盤改良機11は、クローラを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に設けられたフロントブラケット15に起伏可能に設けられたリーダ16と、該リーダ16を後方から支持する起伏シリンダ17と、前記リーダ16に昇降可能に設けられた回転駆動装置18と、該回転駆動装置18を昇降用チェーン19を介して昇降させる昇降用モータ20と、上部旋回体13に設けられた運転室21及びエンジンや油圧ユニット、発電機などを収納した機器室22とを備えている。
【0011】
さらに、運転室21には、施工条件を設定したり、施工状況を監視したり、各機器を制御したりするための制御装置23が設けられている。この制御装置23は、図2に示すように、各種施工条件を設定するための施工条件設定手段24と、前記回転駆動装置18の昇降位置を検出する位置検出手段25と、前記回転駆動装置18の回転数を計測する回転数計測手段26と、図示しない地盤改良剤供給手段(バッチャープラント)から一定の流量、一定の組成で供給される前記地盤改良剤の流量を計測する地盤改良剤流量計測手段27と、前記回転駆動装置18の昇降速度を制御する昇降速度制御手段28と、前記回転駆動装置18の回転数を制御する回転数制御手段としてのトルク制御手段29とを備えており、昇降速度制御手段28及びトルク制御手段29は、前記施工条件設定手段24に設定された条件に基づいて制御を行う。
【0012】
さらに、制御装置23には、各種データに基づいて各種制御を行う演算手段や記憶手段を有しており、地盤改良施工時には、前記位置検出手段25と回転数計測手段26とのデータから、前記施工条件設定手段24にあらかじめ設定された区間深度ごとに回転駆動装置18の回転数を計測して記録する。
【0013】
このような地盤改良機11を使用して地盤改良を行う際には、掘削刃31及び撹拌翼32を有する掘削ヘッド33を先端(下端)に装着し、上端にスイベルジョイント34を装着した中空ロッド35を使用する。この中空ロッド35は、該中空ロッド35の上部が回転駆動装置18の駆動部を貫通した状態で回転駆動装置18に装着され、リーダ16の下端部に設けられた振止装置36によって回転可能かつ上下動可能に保持される。また、スイベルジョイント34には、図示しないバッチャープラントからセメントミルクなどの地盤改良剤がグラウトホース37を通して供給され、中空ロッド35の内部流路を通って掘削ヘッド33に供給されて掘削孔内に注入される。
【0014】
前記施工条件設定手段24には、地盤改良を行う地盤の状態に応じて計画した掘削深度、下降速度、トルク、回転数、地盤改良剤の混合比や流量などの施工条件が設定され、施工時には、前記施工条件に基づいて、バッチャープラントから地盤改良剤を一定の流量及び一定の組成で供給するとともに、昇降速度制御手段28及びトルク制御手段29からの指令によって回転駆動装置18で中空ロッド35を一定の回転数で回転させながら、昇降用モータ20で回転駆動装置18をリーダ16に沿って一定の速度で下降させる。
【0015】
前記制御装置23は、あらかじめ設定された区間深度ごと、例えば表1に示すように、位置検出手段25で検出した0〜0.5m、0.5〜1.0m、・・・2.5〜3.0m、3.0〜3.5mのように、支持層までの掘削深さに対して0.5m刻みで設定された各区間深度ごとの回転駆動装置18の回転数、すなわち、掘削ヘッド33を装着した中空ロッド35の回転数を回転数計測手段26で計測して制御装置23に記録する。
【0016】
通常、回転駆動装置18のトルクを調節して中空ロッド35を一定回転数で回転させながら回転駆動装置18を一定速度で下降させると、各区間深度ごとの中空ロッド35の回転数は一定となるはずであるが、掘削途中に比較的固い地盤(例えば、表1における1.0〜2.5mの範囲。)が存在すると、この部分で掘削抵抗が増大するため、下降速度や回転数が低下することがある。
【0017】
しかし、地盤改良を必要とする地盤は、一般に軟弱地盤であるから、昇降速度制御手段28により前記昇降用モータ20の回転数を一定に保つことによって回転駆動装置18の下降速度を一定にすることが可能であり、各区間深度ごとの掘削速度、すなわち、各区間深度ごとの掘削ヘッド33の通過時間を一定に保持するように制御する。これにより、バッチャープラントから供給する地盤改良剤を一定流量、一定組成に設定することで、地盤改良剤の組成変動を防止して各区間深度ごとの地盤改良剤の供給量を均一にすることができる。
【0018】
一方、比較的固い地盤での掘削抵抗の増大に伴って中空ロッド35の回転数が影響を受ける場合でも、回転駆動装置18の中空ロッド35を回転駆動するトルクを調節することにより、掘削ヘッド33の回転数を一定に保つようにするが、回転駆動装置18の最大トルクで中空ロッド35を回転駆動しても中空ロッド35の回転数が低下してしまうことがある。このとき、回転駆動装置18は一定速度で下降させているので、比較的固い地盤中を掘削しているときは、下降速度が一定で回転数が低下する状態になることから、例えば、表1における1.0〜2.5mの範囲の区間深度における掘削ヘッド33の回転数が少なくなり、撹拌翼32の回転数が少なくなる分だけ土砂と地盤改良剤との混合が不十分な状態になる。
【0019】
掘削ヘッド33が所定の深度(支持層)に到達したら、前記地盤改良剤の供給を停止するとともに、前記中空ロッド35を一定の回転速度で回転させながら前記回転駆動装置18を上昇させる。このとき、必要に応じて回転駆動装置18の昇降を繰り返すことにより、掘削刃31で掘削した土砂と地盤改良剤とを撹拌翼32で撹拌混合する。この間、制御装置23は、回転数計測手段26で計測した回転数を各区間深度ごとに積算して記録する。
【0020】
そして、地盤改良施工の最終工程で、前記回転駆動装置18により前記中空ロッド35を一定の回転数で回転させながら回転駆動装置18を上昇させて掘削ヘッド33を地中から抜き取る際には、制御装置23は、最終工程に入るまでの間に記録した各区間深度ごとの回転数と、各区間深度ごとにあらかじめ設定された区間深度目標回転数とを比較し、区間深度目標回転数と記録した回転数との差を求め、各区間深度で前記回転駆動装置18の上昇速度を調節して該区間深度における回転数(合計回転数)を前記区間深度目標回転数以上にする。
【0021】
例えば、表1では、1往復で地盤改良を行う際の各区間深度ごとの回転駆動装置18の回転数を示しており、各区間深度ごとの目標回転数は20回転、掘削時の回転駆動装置18の下降速度は毎分1mに設定している。回転駆動装置18の下降時、すなわち掘削時における1.0〜1.5mの区間深度の回転数(下降時回転数)は7回転となっている。この例では、掘削ヘッド33が所定の深度に到達した後、直ちに最終工程に入り、回転駆動装置18により中空ロッド35を一定の回転数で回転させながら回転駆動装置18を上昇させるので、掘削ヘッド33が所定の深度に到達して最終工程に入るまでの間に記録した1.0〜1.5mの区間深度における回転数は7回転となる。一方、1.0〜1.5mの区間深度に設定された区間深度目標回転数は20回転であるから、区間深度目標回転数と記録した回転数との差は13回転となる。したがって、最終工程で1.0〜1.5mの区間深度を上昇する際の掘削ヘッド33の回転数(上昇時回転数)が13回転以上になるように回転駆動装置18の上昇速度を毎分0.8mに調節する。すなわち、この区間深度内で一定の回転速度で回転している掘削ヘッド33が13回転以上回転する上昇速度に制御し、1往復した掘削ヘッド33の合計回転数を20回転以上にする。例えば、一つの区間深度内における通常の上昇速度に比べて10〜20%遅い上昇速度になるように上昇速度を調節することにより、該区間深度における掘削ヘッド33の回転数を10〜20%多くすることができる。
【0022】
このように、最初の掘削工程では、一定速度で掘削ヘッド33を下降させながら地盤改良剤を一定流量、一定組成で供給することにより、各区間深度に、一定の組成の地盤改良剤を一定の流量で供給することができ、全深度にわたって地盤改良剤を均等に注入分配することができる。
【0023】
そして、最終工程で回転駆動装置18を上昇させるときに、各区間深度の範囲で回転駆動装置18の上昇速度を制御することにより、各区間深度における最終工程までの間の掘削ヘッド33の回転数と、最終工程での掘削ヘッド33の回転数との和(合計回転数)を区間深度目標回転数以上にすることができ、各区間深度での土砂と地盤改良剤との混合を計画通りに行うことができる。さらに、各区間深度における回転数の計測と上昇速度の調節とを行うだけで制御することができるので、制御手段の簡略化が図れるとともに、自動化も容易に行うことができ、地盤改良機による地盤改良を効率よく、かつ、確実に行うことができる。また、掘削ヘッド33が所定の深度に到達した後、回転駆動装置18の昇降を繰り返して土砂と地盤改良剤との混合を行う場合も、最終工程に入る前に各区間深度ごとに計測した回転数を積算して記録し、記録した積算回転数と区間深度目標回転数とを比較することで、前記同様に、各区間深度における回転数を区間深度目標回転数以上にすることができる。
【0024】
なお、回転駆動装置18の下降速度及び上昇速度と、区間深度の境界位置と、回転数の検出位置とを完全に同期させることは困難なため、計測した回転数が多少ずれることがあるが、最終工程までの回転数と最終工程での回転数との和を目標回転数以上とすることにより、回転数不足による土砂と地盤改良剤との混合不十分な状態は確実に回避することができる。
【表1】

【符号の説明】
【0025】
11…地盤改良機、12…下部走行体、13…上部旋回体、14…ベースマシン、15…フロントブラケット、16…リーダ、17…起伏シリンダ、18…回転駆動装置、19…昇降用チェーン、20…昇降用油圧モータ、21…運転室、22…機器室、23…制御装置、24…施工条件設定手段、25…位置検出手段、26…回転数計測手段、27…地盤改良剤流量計測手段、28…昇降速度制御手段、29…トルク制御手段、31…掘削刃、32…撹拌翼、33…掘削ヘッド、34…スイベルジョイント、35…中空ロッド、36…振止装置、37…グラウトホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ヘッドを装着した中空ロッドを回転駆動装置で回転駆動しながら該回転駆動装置をリーダに沿って下降させるとともに、前記中空ロッドを介して前記掘削ヘッドに地盤改良剤供給手段から一定の流量及び一定の組成の地盤改良剤を供給し、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機において、前記回転駆動装置の昇降速度を制御する昇降速度制御手段と、前記回転駆動装置の昇降位置を検出する位置検出手段と、前記回転駆動装置の回転数を制御する回転数制御手段と、あらかじめ設定された区間深度ごとの回転駆動装置の回転数を計測して記録する回転数計測手段とを備えるとともに、地盤改良の最終工程で回転駆動装置を一定の回転数で回転させながら上昇させる際に、前記回転数計測手段に記録した各区間深度ごとの回転数とあらかじめ設定された区間深度目標回転数とを比較し、各区間深度で前記回転駆動装置の上昇速度を調節して各区間深度における回転数を前記区間深度目標回転数以上にする上昇速度制御手段を備えていることを特徴とする地盤改良機。
【請求項2】
先端に掘削ヘッドを装着した中空ロッドを回転駆動装置で回転駆動しながら該回転駆動装置をリーダに沿って下降させるとともに、前記中空ロッドを介して前記掘削ヘッドに地盤改良剤供給手段から一定の流量及び一定の組成の地盤改良剤を供給し、掘削ヘッドの掘削刃で掘削した土砂と前記地盤改良剤とを掘削ヘッドの撹拌翼で混合して地盤改良を行う地盤改良機の制御方法において、地盤改良の最終工程で回転駆動装置を一定の回転数で回転させながら上昇させる際に、該最終工程に入るまでの間に前記区間深度ごとに計測して記録した中空ロッドの回転数とあらかじめ設定された区間深度ごとの区間深度目標回転数とを比較し、各区間深度で前記回転駆動装置の上昇速度を調節して該区間深度における回転数を前記区間深度目標回転数以上にすることを特徴とする地盤改良機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−67453(P2012−67453A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210796(P2010−210796)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】