説明

地盤調査装置及び地盤調査方法並びに地盤改良工法

【課題】 地滑りの起こしやすい、透水層と不透水層との境界層を正確に判定できるようにする。
【解決手段】 地盤に対して直角に突き立てられるスクリューポイント21が貫入開始される場合及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合、支持手段A及び移動手段Bを介してロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺しロッド20の自重のみに調整した後、ロッド20を低回転させつつロッド20に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント21を貫入させ透水層を調査する一方、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド20に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント21の停止状態が継続される場合、最大重量が加重された状態のロッド20を高回転させつつスクリューポイント21を貫入させて不透水層を調査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤又は法面に対して、先端部にスクリューポイントを有するロッドを鉛直方向に貫入させて、地盤又は法面の成層構造における透水層と不透水層との境界層を調査するための地盤調査装置及び地盤調査方法並びに地盤改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の地盤調査装置としては、スウェーデン式サウンディング試験装置が一般的に知られている。この装置は、ドリルの刃状を呈したスクリューポイントと称される抵抗体をロッドの先端部に設けて、該ロッドを地盤に対して鉛直方向に突き立てると共に、該ロッドに錘を載せつつ回転させながら地盤に貫入させ、地盤に対するスクリューポイントの回転時の抵抗やロッドの貫入量を測定しながら地盤の硬軟を調査するものである。この装置の場合、ロッドに錘を載せる際人力によって成されるので、その作業に多大の労力と煩雑さを要するという問題がある。
【0003】
この問題を解消すべく、錘の代わりに、流体圧シリンダに設定された複数の所定圧力をロッドに順次加えることによって、ロッド貫入時の作業効率を改善しようとするものが公知になっている。
【特許文献1】特開平10−121453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の上記公報の地盤調査装置の場合、錘の代わりに流体圧シリンダを使用することで作業効率は改善されるものの、地盤の成層構造に対する綿密な調査を行う手段はなく、地盤調査する主目的とされる地滑りの起こしやすい地層、即ち透水層と不透水層との境界層を正確に探知することはできないと考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を鑑み、地盤又は法面における、地滑りの起こしやすい、透水層と不透水層との境界層を正確に探知できる地盤調査装置及び地盤調査方法並びに地盤改良工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る地盤調査装置は、ロッド20の先端部に設けられたスクリューポイント21を地盤又は法面に対して直角に突き立てるべくロッド20を支持する支持手段Aと、ロッド20を上下動させる移動手段Bと、ロッド20に流体圧を加えて地盤又は法面にスクリューポイント21を貫入させる加重手段Cと、ロッド20を回転させる回転手段Dと、貫入されたスクリューポイント21が地盤の表層から不透水層に達するまでの降下時間及び降下距離を測定する降下パラメータ測定手段と、ロッド20を回転させる駆動源40又は回転しているロッド20を介して伝達される振動音の波形を測定する波形測定手段と、該各測定手段によって測定される測定値及び波形を表示させる表示手段とを備えた地盤調査装置であって、地盤又は法面に対して直角に突き立てられるスクリューポイント21が貫入開始される場合、及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段及び移動手段を介してロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド20の自重のみに調整した後、ロッド20を低回転させつつロッド20に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント21を貫入させる透水層調査ステップと、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド20に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント21の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド20を高回転させつつスクリューポイント21を貫入させる不透水層調査ステップとを備えた、制御手段Eが設けられてなることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、地盤に対して垂直に突き立てられるスクリューポイント21が貫入開始される場合、及び低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段A及び移動手段Bを介してロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド20の自重のみにするようにしたので、スクリューポイント21が貫入している地層が砂、土、礫などの軟弱な層であっても、これらの層を貫通して硬い岩盤や粘土層に一気に到達することがなく、地盤の上層部がどのような成層構造になっているのか容易に且つ正確に探知できるようになる。
【0008】
また、スクリューポイント21を低回転させて貫入させているので、貫入部位の地層によって、ロッド20を回転させる駆動源40の波形、又はロッド20を介して伝達される振動音の波形が異なるため、貫入部位の地層を推察できるようになる。この波形を目視することで、ロッド20の降下時間が速くなった時点からロッド20に対して規定の最大重量を加重した時点の地層に、地滑りを起こすとされる透水層と不透水層の境界層が存在すると判定できるのである。
【0009】
なお、ここでいう規定の最大重量とは、国土省で規定されている最大重量(1000W)であり、スクリューポイント21の停止状態とは、岩盤層に当たってスクリューポイント21が回転だけして降下しない状態と、粘土層に貫入してその途中で回転できずに停止する状態とを含む。
【0010】
また本発明に係る地盤調査装置は、油圧ショベル50のアーム51の先端部に取り付けられ、アーム51の軸線に対して直交方向の軸線を回転中心にして回転する回転板58と、該回転板58に連結固定されると共に、その先端部にスクリューポイント21が設けられたロッド20をアーム51の軸線方向に沿うよう支持する支持手段Aと、ロッド20を上下動させる移動手段Bと、ロッド20に流体圧を加えて地盤又は法面にスクリューポイント21を貫入させる加重手段Cと、ロッド20を回転させる回転手段と、貫入されたスクリューポイント21が地盤又は法面の表層から不透水層に達するまでの降下時間及び降下距離を測定する降下パラメータ測定手段と、ロッド20を回転させる駆動源40又は回転しているロッド20を介して伝達される振動音の波形を測定する波形測定手段と、該各測定手段によって測定される測定値及び波形を表示させる表示手段とを備えた地盤調査装置であって、地盤又は法面の上下方向及び左右方向に対してスクリューポイント21が直角に突き立てられるようアーム51を調整するアーム調整ステップと、地盤又は法面にスクリューポイント21が貫入開始される場合、及び、地盤又は法面に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段A及び移動手段Bを介してロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド20の自重のみに調整した後、ロッド20を低回転させつつロッド20に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント21を貫入させる透水層調査ステップと、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド20に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント21の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド20を高回転させつつスクリューポイント21を貫入させる不透水層調査ステップとを備えた、制御手段Eが設けられてなることを特徴とする。
【0011】
かかる構成によれば、アーム51の回動と、回転板58の回転によってスクリューポイント21を法面の上下方向及び水平方向に対して直角に突き立てることができるため、傾斜地であっても成層構造を容易に且つ正確に探知できると共に、地滑りを起こすとされる境界層を容易に且つ確実に探知できる。
【0012】
また本発明によれば、前記ロッド20を、筒状に形成された複数の連結用ロッド20c,…と、スクリューポイント21の近傍端部に径方向に沿って供給孔20bが形成された掘削用ロッド20aと、各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aの端部の内周面又は外周面に螺着して連結する環状継手60とで構成するようにもできる。
【0013】
この場合、ロッド20を筒状にすることで、ロッド20を介してグラウト材の充填が可能になり、既製の地盤調査装置において地盤改良の機能を容易にもたせることができる。
【0014】
また本発明によれば、掘削用ロッド20aの引上位置を調整するための位置調整手段と、グラウト材が収容された収容タンク71と、最上位置の連結用ロッド20cの端部に連結されるホース72を有すると共に、収容タンク71からグラウト材を吸引して、ホース72、各連結用ロッド20c,…、掘削用ロッド20aの供給孔20bを介して透水層に充填するポンプ73を有する充填装置70とを設けるような構成を採用することもできる。
【0015】
この場合、地盤調査及び地盤改良の機能を備えた地盤調査装置を提供できる。
【0016】
また本発明の地盤調査方法は、ロッド20の先端部に設けられたスクリューポイント21を地盤又は法面に対して直角に突き立て、該ロッド20に流体圧を加えて地盤又は法面にスクリューポイント21を貫入させ、貫入されたスクリューポイント21が地盤又は法面の表層から不透水層に達するまでの、ロッド20の降下時間及び降下距離を測定すると共に、ロッド20を回転させる駆動源40又は回転しているロッド20を介して伝達される振動音の波形を測定し、地盤又は法面の成層構造を調査する地盤調査方法であって、地盤に対して直角に突き立てられるスクリューポイント21が貫入開始される場合、及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段A及び移動手段Bを介してロッド20に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド20の自重のみに調整した後、ロッド20を低回転させつつロッド20に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント21を貫入させ透水層を調査する一方、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド20に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント21の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド20を高回転させつつスクリューポイント21を貫入させて不透水層を調査するようにしたことを特徴とする。
【0017】
また本発明に係る地盤改良方法は、上記地盤調査装置を用いて、上記地盤調査方法を実施し、掘削した深さに応じて複数の連結用ロッド20c,…を掘削用ロッド20aに連結した状態で、不透水層を調査した後、不透水層に位置している掘削用ロッド20aのスクリューポイント21を、不透水層の真上に位置する透水層まで引き上げると共に、掘削用ロッド20aの供給孔20bを透水層に位置させて、各連結用ロッド20c,…、掘削用ロッド20aの供給孔20bを介して透水層にグラウト材を充填するようにしたことを特徴とする。
【0018】
この場合、不透水層の真上に位置する透水層(軟弱地盤)の改良を調査の段階において迅速に行える。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、スクリューポイントを透水層及び不透水層に対応すべく貫入すると共に、ロッドを回転させる駆動源又は回転しているロッドを介して伝達される振動音の波形を測定しているので、地盤又は法面の成層構造を正確に把握することができると共に、地滑りを起こすとされる境界層を容易に探知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態に係る地盤調査装置につき図1〜図6を参照して説明する。
本実施形態1に係る地盤調査装置の構成は、図1〜図5に示すように、移動可能に構成された架台1と、該架台1に立設された縦長の枠体5と、該枠体5に上下動自在に設けられた移動体10と、枠体5に取り付けられたシリンダ15と、該シリンダ15に流体圧を供給する加重手段Cと、シリンダ15に取り付けられた移動体10を上下動させるための移動手段Bと、移動体10に設けられた、先端部にスクリューポイント21を有するロッド20と、該ロッド20を回動させるための回動手段Dと、加重手段C、移動手段B及び回動手段Dを制御する制御手段Eとから構成されている。なお、支持手段Aは、架台1、枠体5、移動体10、後述のモータ40の回転軸との連結部から構成されている。
【0021】
架台1は、前後に車輪2が設けられた平面視矩形状の台車からなり、後述する下枠7に対して着脱可能な構成になっている(図示せず)。
【0022】
枠体5は、平面視略正方形状の上枠6及び下枠7と、該上端部が上枠6の左右の両側に溶着されると共に、下端部が下枠7の左右の両側に溶着された左右一対の側部支柱8と、上端部が上枠6の後部に溶着されると共に、下端部が下枠7の後部に溶着された後部支柱9とを備えている。
【0023】
移動体10は、側面視コ字形状を呈し、後述のチェーン19の一部の各環に接続された正面視矩形状の基部11と、該基部11の上端部及び下端部から水平方向に折り曲げられた折曲部12とを有している。そして、移動体10は、チェーン19の移動に従動し、下側の折曲部12にロッド20を回転させるためのモータ(回動手段)40が取り付けられている。
【0024】
シリンダ15は、図5に示すように、内部が油収容室16と空気収容室17の二つの室に構成され、上下方向にロッド18が貫通して、図1に示すように、該ロッド18の上端部及び下端部にそれぞれ支持板22が取り付けられ、該支持板22にスプロケット23が回転自在に設けられている。そして、該両スプロケット23には、環状のチェーン19が捲回されると共に、該チェーン19に移動体10の基部が固着されている。
【0025】
加重手段Cは、内部に所定量の油が収容され、シリンダ15に油又は空気のいずれかを供給するタンク25と、該タンク25に空気を供給するコンプレッサ26と、該コンプレッサ26の圧力を調整するレギュレータ27と、タンク25及びシリンダ15にそれぞれ設けられ、タンク25及びシリンダ15の流体圧を切り換えるための三方弁28と、タンク25の下流側に設けられたニードル弁29及び二方弁30とを備えている。なお、図1〜図4においては、コンプレッサ26とレギュレータ27は図示していないが、市販のものを作業現場に別途搬入するため省略している。
【0026】
移動手段Bは、左右の側部支柱8に、その長さ方向に沿って設けられたレール35と、移動体10の上下の折曲部12に架設された支持板36と、該支持板36の上部及び下部にそれぞれ回転自在に取り付けられ、レール35を滑動する複数のローラ37とを有している。
【0027】
回動手段Dは、鉛直方向のロッド20の基端部と、水平方向に導出されたモータ40の回転軸と、モータ40に設けられたギアボックス(減速機構部)41とが、コレットによって連結されてロッド20の回転数が検出できるよう検出器が設けられている(図示せず)。
【0028】
制御手段Eは、マイクロコンピュータが搭載されると共に、降下距離及び降下時間並びにモータ40の電流波形を測定して表示する表示装置が備えられた制御盤からなり、枠体5に取り付けられている。そして、コンプレッサ26、レギュレータ27、各三方弁28、ニードル弁29、二方弁30、モータ40を図6のフローに従って動作させるようプログラムされている。
【0029】
つぎに本実施形態1に係る地盤調査装置を用いた地盤調査方法について図5及び図6並びに表1を参照して説明する。
【0030】
【表1】

【0031】
まず降下距離0cmの地点では、一方の三方弁28のa−b間の流路が開放されると共に、他方の三方弁28のa−c間の流路が大気解放され、タンク25内部に空気圧力が供給されて、油がニードル弁29、二方弁30を介してシリンダ15に供給され、シリンダ15の空気収容室17の空気圧が0.5減圧される(S1)。この空気圧の数値は、モータ40や移動体10の重量に相当し、この重量が減圧されるのでロッド20に係る加重は「0」になり、ロッド20が降下せずに停止状態(以下スタンバイ状態という)になる。
【0032】
そして、空気収容室17の減圧と同時に、ロッド20の降下距離が測定(S4)されると共に、ロッド20の降下時間の測定が開始される(S5)。降下距離は、ロッド20が上昇した下側のスプロケット23の中心位置を開始位置とし、この開始位置から降下する距離を測定する。一方、降下時間は、チェーン19の各環が近接スイッチSの検知部を通過する毎に近接スイッチSはオンすることになるが、このオン−オン期間の速度を降下時間として換算する。
【0033】
降下距離20cmの地点では、一方の三方弁28のa−b間の流路が閉鎖されて、a−c間の流路が開放され、空気収容室17に空気圧が供給され、二方弁30、ニードル弁29を介してシリンダ15の油がタンク25に戻され、他方の三方弁28のa−b間の流路が閉鎖されて、シリンダ15の空気圧が元に戻る(S2)。つまり、モータ40や移動体10の重さ(450W)がロッド20に加重されるようになる。
【0034】
降下距離20〜40cmの区間では、一方の三方弁28のa−c間の流路の開放が維持されると共に、他方の三方弁のa−b間の流路の閉鎖が維持されて、シリンダ15の空気圧が徐々に加圧される(S3)と同時に、ロッド20が低回転されて(S8)、ロッド20が加圧に対応して貫入されていく。
【0035】
そして、降下距離60cm手前の地点で、スクリューポイント21が砂、礫、土などの透水層に到達すると、ロッド20の降下時間が所定時間よりも速く(S6)なり、上述したS1〜S3の動作が繰り返し行われると同時に、ロッド20の低回転が維持されている。この理由としては、スクリューポイント21が、軟弱な透水層を貫通してその下の岩盤や粘度層などの不透水層に到達するのを防止するためで、透水層において、空洞になっているか、もしくは水が浸透して泥状態になっているかどうかを確認するためである。判定手段としては、ロッド20を低回転させているモータ40の電流波形を、測定手段及び表示手段としてのオシロスコープによって視認する(図示せず)。例えば砂層であれば、一定した略平坦な波形となり、小石や礫が混在した層であれば、スクリューポイント21が礫にあたって弾く際に、瞬間的に波高値が大きくなる山形状の波形が不連続に見られるようになる。砂に小石が混在する層であれば、駆動源40の負荷が大きくなり、交流波形のような連続した波形になる(図示せず)。
【0036】
降下距離60〜120cmの区間では、ロッドを低回転させつつ一定の加重(700W)が加重され、降下距離140の手前の地点で、再度上述したS1〜S5の動作が繰り返し行われ、降下距離140〜200cmの区間では一定の加重(800W)が加えられている。
【0037】
つぎに降下距離220cmの地点では、ロッド20への加重が規定の最大荷重を加えても(S9)、スクリューポイント21が停止状態になっている。即ち、この停止は、スクリューポイント21の回転が停止した場合、或いはロッド20の降下が停止した場合の停止時間が所定時間よりも長いと判定された場合(S7)で、降下距離220〜260の地点では、ロッド20の回転数を徐々に上げてスクリューポイント21を貫入する(S10)。
【0038】
降下距離280cm、340cmの手前の地点では、スクリューポイント21の降下時間が所定時間よりも速くなったと判定されるので、280〜320cm、320〜340cm、360〜380cmの区間において、上述したS1〜S5の動作が繰り返し行われることになる。
【0039】
そして、降下距離400〜420cmの地点では、上記と同様、停止時間が所定時間よりも長いと判定(S7)されると、これ以降の貫入は不可能と判定されて、ロッド20の地盤からの引き抜きが行われて作業終了となる。
【0040】
つまり、ロッド20に最大荷重をかけた状態で回転させてもスクリューポイント21が貫入しない場合、これ以降は不透水層であることを示唆しており、この不透水層の手前に地滑りを起こすとされる境界層があると推察できる。
【0041】
この時の電流波形は、岩盤層であれば、スクリューポイント21が降下せずに空回りするので平坦な波形となる。粘土層であれば、スクリューポイント21が降下しても途中で粘性によって回転しなくなり、回転の負荷が掛かったまま停止状態になってしまうため、肩上がりの波形になる。そして、透水層(砂層、小石や礫が混在した層、砂に小石が混在した層)と、不透水層(岩盤層や粘土層)が交互に連続している場合は、鋸歯のような連続した波形になる。
【0042】
なお前記実施形態1の場合、略水平な地表を調査対象としているが、法面を調査対象とすることもできる。この場合、スクリューポイント21を法面に対して直角に突き立てられるよう、装置に、それ自体を斜めの状態に支持できる支持棒を取り付ける必要がある。
【0043】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2に係る地盤調査装置につき図7及び図8を参照して説明する。これらの図において、図1〜図5と同一符号は同一もしくは相当するものを示し、異なる点は、油圧ショベル50のアーム51の先端部を改良し、改良した先端部に上述した地盤調査装置を取り付けて、法面の地盤調査を行うようにした点であり、アーム51の先端部における地盤調査装置の取付構造につき以下に詳細に説明する。なお、地盤調査装置による地盤調査方法については図6のフローチャートと同様のため説明は省略する。
【0044】
この取付構造は、図7及び図8に示すように、アーム51の先端部の左右の両側面にそれぞれ左右一対のリンク52,53を取り付けて、各リンク52,53の支点を連結した軸を、油圧シリンダ54のロッド55の先端部に接続する。
【0045】
取付部材56の軸線とアーム51の軸線とが一致するよう、角筒状の取付部材56の一端部をアーム51の先端部に回動支持し、取付部材56の他端部に円形状の基台57の上面に回動自在に回転板58を設けて、該回転板58に地盤調査装置の枠体5とをボルト、ナットなどの締結部材によって連結固定する(図示せず)。なお、図示していないが回転板58には、回転モータが内装されている。
【0046】
そして、取付部材56とアーム51とが一直線状に位置するよう調整し、この状態でロッド20のスクリューポイント21を法面の所望の位置に突き立て、アーム51を上下方向に回動させながら、法面の上下方向の線分に対してスクリューポイント21が垂直になるよう調整する。
【0047】
つぎに法面の左右方向の線分に対してスクリューポイント21が垂直になるよう、内装された回転モータで回転板58を回転させて調整する。
【0048】
その後、前記実施形態1と同様に、図6で示す作業工程を順次行えば、法面における透水層と不透水層との境界を検出することができ、この境界を、例えば地盤改良装置を用いて掘削することで、地盤が改良されて法面の崩壊を防止できるようになる。
【0049】
なお、前記各実施形態1,2の場合、地滑りを起こすとされる境界層の判定手段として、モータ40に供給される電流波形を目視するようにしたが、地盤に貫入されているロッド20を介して伝達される振動音の波形を目視するようにしてもよい。
【0050】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3に係る地盤調査装置につき図9及び図10を参照して説明する。これらの図において、図1〜図5と同一符号は同一もしくは相当するものを示し、異なる点は以下の通りである。即ち前記ロッド20を、スクリューポイント21の近傍端部に径方向に沿って供給孔20bが一つ又は複数形成された筒状の掘削用ロッド20aと、該掘削用ロッド20aの基端部に連結される複数の筒状の連結用ロッド20c,…と、掘削用ロッド20a及び各連結用ロッド20c,…及びの端部の内周面又は外周面に螺着して連結する環状継手60とで構成する。なお、最上位置の連結用ロッド20cの基端部は、モータ40の回転軸との連結部に連結される。
【0051】
さらに、掘削用ロッド20aの引上位置を調整するための位置調整手段と、グラウト材を充填するための充填装置70とを設ける。
【0052】
位置調整手段は、図示しない支持部材によって直立状態に支持された油圧タンク65と、該油圧タンク65からの油を供給できるよう連結支持されると共に、出退自在に設けられたロッド67を有する直立状態の油圧シリンダ66と、該ロッド67の先端部及び最上位置の連結用ロッド20cの基端部に連結される連結部材68とが設けられている。
【0053】
連結部材68は、油圧シリンダ66の長さ方向に沿って配された直立部68aと、該直立部68aの上端部及び下端部から互いに反対方向に延出された二股状の上折曲部68b及び下折曲部68cとを備えている。そして、上折曲部68bの二股の間に油圧シリンダ66のロッド67の先端部を挿通した状態で、上折曲部68bと油圧シリンダ66のロッド67を連結する一方、これと同様に、下折曲部38cの二股の間に最上位置の連結用ロッド20cの基端部を挿通した状態で、下折曲部38cと最上位置の連結用ロッド20cの基端部を連結する。
【0054】
具体的には、油圧シリンダ66のロッド67の先端部を貫通した係止ピン69cを上折曲部68bの上面に当接係止させる一方、最上位置の連結用ロッド20cの基端部の内周面又は外周面に、径外方向に突出する係止ピン69b,69bが設けられた環状の連結用継手69aを螺着し、下折曲部の上面に係止ピン69b,69bを当接係止させる。この状態で、油圧シリンダ66のロッド67を上昇させて、掘削用ロッド20a及び各連結用ロッド20c,…を地中から引き上げる。
【0055】
充填装置は70、グラウト材が収容された収容タンク71と、最上位置の連結用ロッド20c,…の基端部に連結されるホース72を有すると共に、グラウト材を収容タンク71から吸引して透水層に充填するポンプ73を有する。
【0056】
つぎに地盤調査装置を用いた地盤改良工法について説明する。まず掘削用ロッド20aをモータ40の回転軸との連結部に連結し、掘削用ロッド20aのスクリューポイント21の先端部を地表に対して鉛直方向に突き立てる。つぎに前記実施形態1と同様に、掘削用ロッド20aを回転させて地表調査を開始する。続いて、掘削用ロッド20aの基端部に連結用ロッド20cの端部を適宜連結し、不透水層と透水層の境界を調査する。
【0057】
そして、掘削用ロッド20aのスクリューポイント21が不透水層に達した時点で、各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aを不透水層の真上に位置する透水層に引き上げて、掘削用ロッド20aの供給孔20bを透水層に位置させた後、充填装置70のポンプ73を作動させて、収容タンク71からグラウト材を吸引し、吸引したグラウト材を、ホース72、各連結用ロッド20c,…、掘削用ロッド20aの供給孔20bを介して略径外方向に放出し、不透水層と透水層との境界を、各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aを地中から引き抜く際に補強する。この際、透水層において、グラウト材を下側の透水部から上側の軟弱部に順次充填するようになる。ここでいう透水部は、略空間層であり、N値が0〜3を示し、軟弱部は、N値が6以下を示す。例えば、スクリューポイント21の直径は20〜40mm、供給孔20bの直径は、円形の場合10〜20mm、楕円形の場合、短軸が10mm、長軸が20mm、ポンプ73の排出圧は5〜30kg/m2、各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aを地中から引き抜く力は500〜2000kgとする。
【0058】
なお前記実施形態3の場合、グラウト材を供給するための供給孔20bを一つ形成するようにしたが、放射状に複数形成してもよく、掘削用ロッド20aを回転させながら供給するようにしてもよい。但し、グラウト材の充填に際して、グラウト材が外部に漏れることなく、掘削用ロッド20aを回転させる手段が別途必要になる。
【0059】
また前記実施形態3の場合、連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aを引き抜く装置として油圧シリンダ66を用いるようにしたが、エアーシリンダ、エアーハイドロギヤードモータのいずれを使用してもよい。
【0060】
また前記実施形態3の場合、各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aの端部内周面に螺着する環状継手60を用いたが、端部外周面に螺着させるようにしてもよい。要は、グラウト材の充填を邪魔することなく各連結用ロッド20c,…及び掘削用ロッド20aを連結できればよい。
【0061】
また前記実施形態3では、ロッド20を、掘削用ロッド20aと連結用ロッド20c,…で構成するようにしたが、前記実施形態1,2のロッド20にも適用できるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態1に係る地盤調査装置を示す側面図。
【図2】図1の正面図。
【図3】図1の背面図。
【図4】図1の平面図。
【図5】本発明の実施形態1に係る地盤調査装置の動作説明図。
【図6】本発明の実施形態1に係る地盤調査装置のフローチャート。
【図7】本発明の実施形態2に係る地盤調査装置を示す側面図。
【図8】図7の平面図。
【図9】本発明の実施形態3に係る地盤調査装置の要部の断面図。
【図10】本発明の実施形態3に係る地盤調査装置の全体の構成を示した概略図。
【符号の説明】
【0063】
1…架台、2…車輪、5…枠体、6…上枠、7…下枠、8…側部支柱、9…後部支柱、10…移動体、11…基部、12…折曲部、15…シリンダ、16…油収容室、17…空気収容室、18…ロッド、19…チェーン、20…ロッド、20a…掘削用ロッド、20b…供給孔、20c…連結用ロッド、21…スクリューポイント、22…支持板、23…スプロケット、25…タンク、26…コンプレッサ、27…レギュレータ、28…三方弁、29…流量調整弁、30…二方弁、35…レール、36…支持板、37…ローラ、40…モータ、41…ギアボックス、50…油圧ショベル、51…アーム、52,53…リンク、54…油圧シリンダ、55…ロッド、56…取付部材、57…基台、58…回転板、60…環状継手、65…油圧タンク、66…油圧シリンダ、67…ロッド、68…連結部材、68a…直立部、68b…上折曲部、68c…下折曲部、69a…連結用継手、69b…係止ピン、69c…係止ピン、70…充填装置、71…収容タンク、72…ホース、73…ポンプ、A…支持手段、B…移動手段、C…加重手段、D…回転手段、E…制御手段、S…近接スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッド(20)の先端部に設けられたスクリューポイント(21)を地盤又は法面に対して直角に突き立てるべくロッド(20)を支持する支持手段(A)と、ロッド(20)を上下動させる移動手段(B)と、ロッド(20)に流体圧を加えて地盤にスクリューポイント(21)を貫入させる加重手段(C)と、ロッド(20)を回転させる回転手段(D)と、貫入されたスクリューポイント(21)が地盤又は法面の表層から不透水層に達するまでの降下時間及び降下距離を測定する降下パラメータ測定手段と、ロッド(20)を回転させる駆動源(40)又は回転しているロッド(20)を介して伝達される振動音の波形を測定する波形測定手段と、該各測定手段によって測定される測定値及び波形を表示させる表示手段とを備えた地盤調査装置であって、地盤又は法面に対して直角に突き立てられるスクリューポイント(21)が貫入開始される場合、及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント(21)の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段及び移動手段を介してロッド(20)に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド(20)の自重のみに調整した後、ロッド(20)を低回転させつつロッド(20)に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント(21)を貫入させる透水層調査ステップと、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド(20)に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント(21)の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド(20)を高回転させつつスクリューポイント(21)を貫入させる不透水層調査ステップとを備えた、制御手段(E)が設けられてなることを特徴とする地盤調査装置。
【請求項2】
油圧ショベル(50)のアーム(51)の先端部に取り付けられ、アーム(51)の軸線に対して直交方向の軸線を回転中心にして回転する回転板(58)と、該回転板(58)に連結固定されると共に、その先端部にスクリューポイント(21)が設けられたロッド(20)をアーム(51)の軸線方向に沿うよう支持する支持手段(A)と、ロッド(20)を上下動させる移動手段(B)と、ロッド(20)に流体圧を加えて地盤又は法面にスクリューポイント(21)を貫入させる加重手段(C)と、ロッド(20)を回転させる回転手段(D)と、貫入されたスクリューポイント(21)が地盤又は法面の表層から不透水層に達するまでの降下時間及び降下距離を測定する降下パラメータ測定手段と、ロッド(20)を回転させる駆動源又は回転しているロッド(20)を介して伝達される振動音の波形を測定する波形測定手段と、該各測定手段によって測定される測定値及び波形を表示させる表示手段とを備えた地盤調査装置であって、地盤又は法面の上下方向及び左右方向に対してスクリューポイント(21)が直角に突き立てられるようアーム(51)を調整するアーム調整ステップと、地盤又は法面にスクリューポイント(21)が貫入開始される場合、及び、地盤又は法面に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント(21)の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段(A)及び移動手段(B)を介してロッド(20)に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド(20)の自重のみに調整した後、ロッド(20)を低回転させつつロッド(20)に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント(21)を貫入させる透水層調査ステップと、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド(20)に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント(21)の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド(20)を高回転させつつスクリューポイント(21)を貫入させる不透水層調査ステップとを備えた、制御手段(E)が設けられてなることを特徴とする地盤調査装置。
【請求項3】
前記ロッド(20)は、筒状に形成された複数の連結用ロッド(20c,…)と、スクリューポイント(21)の近傍端部に径方向に沿って供給孔(20b)が形成された掘削用ロッド(20a)と、各連結用ロッド(20c,…)及び掘削用ロッド(20a)の端部の内周面又は外周面に螺着して連結する環状継手(60)とで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の地盤調査装置。
【請求項4】
掘削用ロッド(20a)の引上位置を調整するための位置調整手段と、グラウト材が収容された収容タンク(71)と、最上位置の連結用ロッド(20c)の基端部に連結されるホース(72)を有すると共に、収容タンク(71)からグラウト材を吸引して、ホース(72)、各連結用ロッド(20c,…)、掘削用ロッド(20a)の供給孔(20b)を介して透水層に充填するポンプ(73)を有する充填装置(70)とが設けられてなることを特徴とする請求項3に記載の地盤調査装置。
【請求項5】
ロッド(20)の先端部に設けられたスクリューポイント(21)を地盤又は法面に対して直角に突き立て、該ロッド(20)に流体圧を加えて地盤又は法面にスクリューポイント(21)を貫入させ、貫入されたスクリューポイント(21)が地盤又は法面の表層から不透水層に達するまでの、ロッド(20)の降下時間及び降下距離を測定すると共に、ロッド(20)を回転させる駆動源(40)又は回転しているロッド(20)を介して伝達される振動音の波形を測定し、地盤又は法面の成層構造を調査する地盤調査方法であって、地盤に対して直角に突き立てられるスクリューポイント(21)が貫入開始される場合、及び地盤に低回転させつつ所定重量で貫入させているスクリューポイント(21)の降下時間が所定時間よりも速くなった場合に、支持手段(A)及び移動手段(B)を介してロッド(20)に係る加重を、流体圧によって相殺してロッド(20)の自重のみに調整した後、ロッド(20)を低回転させつつロッド(20)に流体圧を徐々に加圧して、スクリューポイント(21)を貫入させ透水層を調査する一方、低回転させつつ所定重量で貫入させているロッド(20)に対して規定の最大重量を加重してもスクリューポイント(21)の停止状態が継続される場合に、最大重量が加重された状態のロッド(20)を高回転させつつスクリューポイント(21)を貫入させて不透水層を調査するようにしたことを特徴とする地盤調査方法。
【請求項6】
請求項4に記載の地盤調査装置を用いて、請求項5に記載の地盤調査方法を実施し、掘削した深さに応じて複数の連結用ロッド(20c,…)を掘削用ロッド(20a)に連結した状態で、不透水層を調査した後、不透水層に位置している掘削用ロッド(20a)のスクリューポイント(21)を、不透水層の真上に位置する透水層まで引き上げると共に、掘削用ロッド(20a)の供給孔(20b)を透水層に位置させて、各連結用ロッド(20c,…)、掘削用ロッド(20a)の供給孔(20b)を介して透水層にグラウト材を充填するようにしたことを特徴とする地盤改良工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−115685(P2008−115685A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−214798(P2007−214798)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(592180694)株式会社大北耕商事 (8)
【Fターム(参考)】