説明

地絡バンク特定方法および地絡バンク特定装置

【課題】 多重接地式低圧交流配電線路における複数のバンクにおいて地絡発生のバンクを多重接地のままで特定する地絡バンク特定方法と特定装置の提供。
【解決手段】 複数のバンクB1〜B5を備えた多重接地式低圧交流配電線路1において、あるバンクで地絡が発生したとき、バンク間の共同接地線5に流れる地絡電流を変流器10で検出し、低圧交流配電線路1のいずれかの基準とする電圧を電圧検出器20で検出し、この検出した電流と電圧の位相差に基づいて各バンク間の地絡電流方向を検知することで、総合的に地絡発生バンクの位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低圧需要家に電力供給する複数のバンク(柱上変圧器)のB種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定方法および特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バンクの変圧器B種接地線が単独接地されている場合、当該バンクの低圧交流配電線路から電力供給される住宅や工場、事務所などの低圧需要家において地絡が発生すると、地絡発生の低圧需要家に電力供給するバンクのB種接地線にのみ地絡電流が流れる。複数あるバンクで低圧需要家に地絡が発生した場所のバンクの特定探査は、別の地絡発生の無いバンクには地絡電流が流れないので、地絡発生のバンクのみについて行い、漏電遮断器がある低圧需要家ではその動作確認で行い、また、漏電遮断器がない低圧需要家については引込線で地絡電流を測定しその有無で地絡が発生した低圧需要家を特定する。さらに、地絡発生が特定できた低圧需要家の負荷回線で地絡電流を測定し、地絡発生場所を特定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−101352号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バンクの変圧器二次側の中性線または1端子に施設するB種接地工事は、バンク個々について行う単独接地の他、複数の各バンクのB種接地線を並列に連結して多重化する多重接地がある。B種接地工事が行われる土地の状況によっては、単独接地では接地抵抗を規定の値に保つことが経済的に難しくなる場合がある。このような場合には、複数バンクのB種接地線を共同接地線で並列に連結して合成接地抵抗値を低くし、これを規定値に保つことが行われている。
【0004】
複数のバンクを多重接地した多重接地式(架空共同地線式)の低圧交流配電線路においては、任意の1つのバンクから電力供給される低圧需要家に地絡が発生して地絡電流が流れた場合、当該バンクのB種接地線だけでなく共同接地線を通して連結される他の全てのバンクのB種接地線にもその接地抵抗値に応じた地絡電流が流れる。このため、地絡が発生した低圧需要家を電力供給するバンクの特定ができず、B種接地を共同接地している全てのバンクから電力供給される全ての低圧需要家の引込線や負荷回線で地絡電流を測定する必要があり、探査範囲が広がり過ぎて地絡発生箇所の特定とその作業が困難であった。
【0005】
また、複数の各バンクのB種接地を切り離して単独接地に戻すことで、地絡発生のバンクを正確に特定することができる。この場合、複数のバンクでのB種接地の切離しの手間と、元の多重接地に戻す手間を要するのみならず、地絡発生が間欠的に行われる間欠地絡では、B種接地切離し後、次の地絡発生までB種接地抵抗値が規定値未満となる状態を招く不具合があり、信頼性に欠ける。
【0006】
本発明の目的は、多重接地式低圧交流配電線路における複数バンクにおいて、あるバンクから供給される低圧需要家で地絡が発生したとき、この地絡発生のバンクを多重接地のままで正確に特定できる地絡バンク特定方法とその特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明方法は、複数のバンクのB種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定方法であって、複数のバンクのいずれかの共同接地線に地絡電流を検出する変流器を設け、この変流器で検出した地絡電流と低圧交流配電線路のいずれかの電圧との位相差から、検出した地絡電流の方向を検知し、この検知した地絡電流方向に基づいて地絡発生のバンクを特定することを特徴とする。
【0008】
ここで、低圧交流配電線路は、高圧配電線路に柱上変圧器であるバンクで連携される単相交流式または三相交流式の低圧配電線路が適用できる。この低圧交流配電線路における複数のバンクは、住宅や工場などの低圧需要家に電力供給する柱上変圧器系で、各バンクの変圧器B種接地線が共通の共同接地線で連結されて多重接地される。1つのバンクで漏電による地絡が発生すると、地絡発生のバンクを含む全てのバンクのB種接地線、共同接地線に異なる大きさの地絡電流が流れる。各バンクでの地絡電流は交流で、その電流方向は地絡発生のバンクに流入する方向と、地絡発生のバンクから流出する方向の繰り返しである。各バンクでの地絡電流方向を、この地絡電流と低圧交流配電線路の予め設定された線間電圧や対地電圧などの基準とする線路電圧との位相差から求めて、複数の電流方向を総括的に判読して地絡発生したバンクを特定する。複数のバンクの全てにおいて地絡電流方向を検知することが望ましいが、地絡発生バンクの位置によっては少数バンクで地絡電流方向を検知すれば地絡発生のバンクが特定できる。各バンクで地絡電流の方向検出は、地絡電流と低圧交流配電線路の基準とする線路電圧の位相差により地絡電流値が小さくても正確にして容易に検出でき、多重接地のままで地絡発生バンクの特定が正確にして簡単、安価な設備で実行できる。
【0009】
本発明方法においては、複数バンクでの地絡電流方向を、各バンクでの地絡電流と共同接地線と大地間の対地電圧との位相差に基づいて検知することができる。この場合、共同接地線の対地電圧は、接触式電圧検出器あるいは小形軽量で安価な非接触式電圧検出器を使用することで簡単、迅速に検出でき、地絡発生バンクを特定する作業が高能率で行え、特定する設備費の低減が図れる。
【0010】
また、複数のバンクでの地絡電流方向を、各バンクでの地絡電流とB種接地線に直列接続した抵抗の両端の端子電圧との位相差に基づいて検知することができる。B種接地線に直列接続した抵抗に地絡電流が流れて両端に端子電圧が発生し、この端子電圧は対地電圧と同位相であることから、対地電圧と同様に地絡電流方向の検知に適用できる。抵抗を使用した地絡電流方向検知のための基準電圧は精度的に優れ、地絡電流方向検知の精度を上げる。
【0011】
また、上記抵抗は、B種接地線の途中に着脱自在に直列接続された短絡バーを外して代わりに直列接続することができる。通常のバンクにおいては、定期的な接地抵抗測定のために電柱の上部に短絡バーを収容したアースターミナルが常設されている。短絡バーはB種接地線の途中一部を構成し、定期的な接地抵抗測定時にB種接地線から外される。そこで、B種接地線の途中に短絡バーに代わり抵抗を挿入するようにすれば、抵抗挿入のためにB種接地線を切断するなどといった不都合な作業が省略できる。また、B種接地線の近くの大地に接地補助極を打ち込んで対地電圧を測定する方法に比べ、B種接地線に抵抗を挿入する作業は容易であり、接地補助極の打ち込みが難しいところのバンクであっても適用できて汎用性に優れる。
【0012】
また、地絡電流の検出箇所は、負荷電流が流れないバンク間の共同接地線の接続箇所を選定すれば、負荷電流と重複しないので両者を分離する必要がなく、地絡電流方向の検出が容易になる。
【0013】
また、複数のバンクの共同接地線それぞれに独自に地絡電流を検出する変流器を設置して、複数のバンクで地絡電流方向を同時に検知することができる。さらに、複数のバンクの共同接地線それぞれに変流器を常設して、複数バンクでの地絡バンク特定動作を常時および同時刻に行うことができる。このように複数のバンクでの地絡バンク特定動作を常時行うことで、間欠地絡を発生するバンクの特定にも正確に対応できる。
【0014】
上記目的を達成する本発明装置は、複数のバンクの変圧器B種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定装置であって、バンクの共同接地線に流れる地絡電流を検出する変流器と、低圧交流配電線路のいずれかの基準とする線路の電圧を検出する電圧検出器と、変流器で検出された地絡電流と電圧検出器で検出された電圧の位相差から共同接地線における地絡電流方向を検出する電流方向検出回路とを具備する。
【0015】
また、本発明装置は、複数のバンクの共同接地線それぞれに設置されて各共同接地線に流れる地絡電流を独自に検出する複数の変流器と、低圧交流配電線路のいずれかの基準とする線路の電圧を検出する電圧検出器と、複数の変流器で検出されたそれぞれの地絡電流と電圧検出器で検出された電圧との位相差から複数のバンクの共同接地線での地絡電流方向をそれぞれに検出して記録する電流方向検出記録回路とを具備した構造とすることができる。
【0016】
ここで、電圧検出器は、共同接地線と大地間の対地電圧を検出する接触式または非接触式のものや、バンクのB種接地線に直列接続した抵抗の両端の端子電圧を検出する電圧計が適用できる。また、電流方向検出回路は、検出した地絡電流方向のデータを視認できるよう表示したり、遠隔地に送信する機能を備えたものが適用できる。同様に電流方向検出記録回路は、記録した地絡電流方向のデータを視認できるよう表示したり、遠隔地に送信する機能を備えたものが適用できる。また、電流方向検出記録回路で、複数バンクの共同接地線での地絡電流方向をそれぞれに検出して記録すると共に、検出された複数の地絡電流の同時刻での位相が同相か反転相かを比較検知させることができる。この場合、左右両側に共同接地線を延在させた任意の単一バンクにおいて、両側の共同接地線から検出された地絡電流の同時刻の位相が同位相であると、両側の地絡電流方向は同方向と判断でき、両側の共同接地線から検出された地絡電流の同時刻の位相が互いに反転した位相であると、両側の地絡電流方向は逆方向と判断でき、このときの単一バンクが地絡発生のバンクと特定することもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、多重接地式低圧交流配電線路の複数バンクのいずれかに地絡が発生して、複数のバンクに地絡電流が流れても、多重接地のままで地絡発生したバンクが簡単、正確に特定できるようになり、多重接地式低圧交流配電線路のバンク地絡対策が作業性よく、常に正確にできるようになるという優れた効果を奏し得る。
【0018】
また、複数バンクの共同接地線のそれぞれに変流器を常設することで、間欠地絡をも正確に検知して間欠地絡発生バンクの特定ができるようになり、多重接地式低圧交流配電線路のバンク地絡対策がより信頼性よく行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6を参照して説明する。
【0020】
図1は、複数例えば5つのバンクB1〜B5を備えた単相三線式の多重接地式低圧交流配電線路1を示す。高圧交流配電線路に接続された各バンクB1〜B5のそれぞれのB種接地線4は、低圧柱2の変圧器二次側に低圧線3がある場合は低圧線中性線に、低圧線がない場合は直接柱上変圧器中性線に接続される。また、各バンクB1〜B5の中性線は共同接地線5で接続されて、5つのバンク全体のB種接地を並列に連結した多重接地で行われる。これにより低圧線中性線は同時に共同接地線5ともなる。各バンクB1〜B5における接地抵抗値は、5つのバンクB1〜B5の接地抵抗を並列接続したときの合成接地抵抗値になる。また、各バンクB1〜B5の低圧線中性線あるいは変圧器中性線の間を接続する箇所の共同接地線には負荷電流が流れず、いずれかのバンクの低圧需要家7に地絡が発生したときに、後述するような地絡電流Iが流れる。
【0021】
図2は、5つのバンクB1〜B5の内の、図1で左から2番目のバンクB2から供給する低圧需要家7に漏電による地絡が発生して地絡電流Igが発生した場合を示す。この地絡電流Igは交流で、地絡箇所から大地に流れ出し、地絡発生バンクB2のB種接地線4を通り、大地から地絡発生バンクB2に地絡電流Ig2が戻る。このバンクB2から供給されるB種接地が施設された低圧柱2が当該柱以外にあれば、そのB種接地線4からも大地を通った地絡電流が戻ってくる。また、地絡電流Iは、地絡発生のバンクB2以外のバンクB1、B3〜B5の低圧柱2(バンクが施設された低圧柱を含む)のB種接地線4を通って、それぞれに電流Ig1、Ig3〜Ig5が大地から戻る。この電流Ig1、Ig3〜Ig5は共同接地線5を通って地絡発生のバンクB2に戻る。5つのバンクB1〜B5の間を接続する共同接地線5を流れる4つの地絡電流IをIa〜Idとすると、この各地絡電流Ia〜Idは、その流れる方向が地絡発生バンクと地絡が発生していないバンクの位置関係によって決まり、それぞれの大きさは各バンクの位置関係と各々のバンクのB種接地抵抗値によって決まる。地絡発生箇所から大地に流出する電流Igは、共同接地線5で連結された5つの各バンクB1〜B5のすべてのB種接地線4を通って大地から戻り、それぞれの電流Ig1〜Ig5の向きは同じであることから、B種接地線4を流れる地絡電流Ig1〜Ig5を検知しても地絡発生バンクは分からない。
【0022】
ここで、図2に示すように、左端のバンクB1と地絡発生のバンクB2を接続する共通接地線5を流れる地絡電流Iaは、図2の左から右に流れる方向(以下、必要に応じマイナス方向と称する)に流れる。また、地絡発生のバンクB2とその右隣りのバンクB3を接続する共同接地線5を流れる電流Ibは、右から左に流れる方向(以下、必要に応じプラス方向と称する)に流れる。また、別のバンクB3とバンクB4を接続する共同接地線5を流れる電流Icと、バンクB4とバンクB5を接続する共同接地線5を流れる電流Idは、共に右から左のプラス方向に流れる。
【0023】
つまり、図2で地絡発生のバンクB2においては、左右で隣接するバンクB1、B3の共同接地線を流れる電流の向きが、一方がプラス方向、他方がマイナス方向になる。このことから隣接バンクから地絡電流が流れ込むばかりのバンクが、地絡発生バンクであると判定できる。さらに、地絡が発生していないバンクでは、隣接するバンクとの共同接地線を流れる地絡電流の向きが両方ともプラス、あるいは両方ともマイナスになり、地絡電流が流れ込むが流れ出していくバンクは、地絡発生バンクでないと判定できる。
【0024】
なお、ここでは便宜上に電流の向きを設定したが、地絡電流は交流であるので実際の判定にあたっては、地絡発生の有無を判定しようとするバンクに隣接する共同接地線を流れる電流の位相が、電圧に対して図3の波形図に示すように両側ともに同相であるか、位相が反転しているかで判定する。図3に示すZCT1〜ZCT5は、共同接地線5を流れる電流を検出する零相変流器であり、後述する変流器10に相当する。
【0025】
また、例えば図4に示すように左端のバンクB1に地絡が発生した場合、このバンクB1では隣接するバンクとの共同接地線が一方にしかないが、地絡の発生していないバンクB2〜B5からの電流Ia〜Idが集まって流れるのでその大きさから、あるいは、その他の各バンク間の共同接地線5を流れる地絡電流の向きから判定することができる。
【0026】
上記のような地絡発生のバンクB2の位置の特定は、図1あるいは図5に示す地絡バンク特定装置を使用して行うことができる。
【0027】
図1は、任意のバンクBの共同接地線5に流れる地絡電流を検出する変流器10と、交流配電線路1のいずれかの線路の電圧を検出する電圧検出器20と、変流器10で検出された地絡電流と電圧検出器20で検出された線路電圧の位相差から共同接地線5における地絡電流方向を検出する電流方向検出回路30を備える。電流方向検出回路30には、検出した電流方向を表示する表示手段40や、検出した電流方向をメモリし、遠隔地に送信する手段(図示せず)を付設することができる。電圧検出器20は、例えば共同接地線5の対地電圧を検出する接触式または小型軽量で安価な非接触式のものを使用することができる。また、電圧検出器20は、図6で後述する抵抗Rの端子電圧を検出する電圧計が適用できる。
【0028】
地絡発生バンクの特定作業は、例えば次の手順で行える。任意の2つのバンクB1とバンクB2の間の共同接地線5に変流器10を設置して地絡電流(図2のIaに相当)を検出し、この地絡電流と検電器20で検出した例えば対地電圧との位相差を求めて、図2における地絡電流Iaの電流方向がマイナス方向であることを検知する。次に、別の2つのバンクB2とバンクB3の間の共同接地線5に変流器10を設置して地絡電流(図2のIbに相当)を検出し、この地絡電流と検電器20で検出した基準とする対地電圧との位相差を求めて、図2における地絡電流Ibの電流方向がプラス方向であることを検知する。地絡発生バンクがバンクB2である場合、上述の2回の電流方向検知の結果からバンクB2に地絡電流が流入していることが分かり、バンクB2が地絡発生バンクであると特定できる。
【0029】
また、図1の低圧交流配電線路1において、右端のバンクB5側から地絡電流方向を順に検知することもできる。この場合は、右端のバンクB5とその左隣りのバンクB4の間の共同接地線5に変流器10を設置して地絡電流(図2のIdに相当)を検出し、この地絡電流と検電器20で検出した基準とする例えば対地電圧との位相差を求めて、図2における地絡電流Idの電流方向がプラス方向であることを検知する。同様にしてバンクB4とバンクB3の間の共同接地線5の地絡電流方向を検知し、さらにバンクB3とバンクB2の間の共同接地線5の地絡電流方向を検知し、いずれもプラス方向であることを検知する。この場合、まだ地絡発生バンクの特定をせず、バンクB2とバンクB1の間の共同接地線6の地絡電流方向がマイナス方向であると検知した段階で、地絡発生バンクがバンクB2であると特定する。
【0030】
図4に示す交流配電線路1は、地絡発生バンクが左端のバンクB1である。この場合、例えばバンクB1とバンクB2の間の共同接地線5に変流器10を設置して地絡電流を検出し、この地絡電流と検電器20で検出した基準とする対地電圧との位相差を求めて、図3における地絡電流Iaの電流方向がプラス方向であることを検知する。この1回の電流方向の検知で、共同接地線5の一番端のバンクB1に地絡電流が流入していることが分かり、バンクB1が地絡発生バンクであることが特定できる。実際は、他のバンク間の電流方向や大きさ(バンクB1が地絡バンクの場合、電流は他のバンクに比べ最も大きくなる)をも検知して、総合的に地絡発生バンクを特定することが望ましい。
【0031】
図5の地絡バンク特定装置は、複数のバンク間の共同接地線5に単機ずつ変流器10、…を設置している。この場合、交流配電線路1のいずれかの基準とする線路電圧を検出する電圧検出器20と、複数の変流器10、…で検出されたそれぞれの地絡電流と電圧検出器20で検出された電圧との位相差から複数バンク間の共同接地線5での地絡電流方向をそれぞれに検出して記録する電流方向検出記録回路50を装備する。電流方向検出記録回路50は、複数のバンク間の共同接地線5を流れる地絡電流方向を同時に検知したり、順次に検知することができる。
【0032】
電流方向検出記録回路50で複数のバンク間の地絡電流方向を同時に検知して記録し、その位相を比較すれば、地絡バンク両側では共同接地線5を流れる地絡電流位相が反転するので、これより地絡バンクを特定できる。この場合、電圧検出器20を省略してもよい。
【0033】
また、複数のバンク間の共同接地線5のそれぞれに単機ずつ変流器10、…を常設して、電流方向検出記録回路50を常時作動させることで、間欠地絡発生バンクでの間欠地絡が検知でき、間欠地絡発生バンクの特定ができる。すなわち、各バンクB1〜B5において発生した地絡は、地絡状況の変動で回復したりして間欠的に発生することが多く、地絡無しのときに各バンク間の地絡電流方向を検知するようにしても検知不能となり、間欠地絡発生バンクの特定ができないことがある。複数の各バンク間に変流器10、…を常設して、複数の各バンク間の地絡電流方向検知を常時および同時刻で行うことで、間欠地絡発生バンクが特定できる。また、電流方向検出記録回路50が間欠地絡発生バンクを検知すれば、無線あるいは有線で遠隔地に間欠地絡発生のデータ信号と地絡発生バンクの位置データ信号を送信するようにすることが望ましい。
【0034】
地絡電流方向検知のための交流配電線路1のいずれかの基準とする線路電圧は、図6に示すような各バンクBにおけるB種接地線4に追加的に直列接続した抵抗Rの両端の端子電圧も有効である。B種接地線4に流れる地絡電流が抵抗Rを流れ、その両端に発生する端子電圧は対地電圧と同位相であることから、地絡電流方向検知のための基準電圧として適用できる。
【0035】
また、図6に示すように、各バンクBのB種接地線4には、定期的な接地抵抗測定に備えてアースターミナル60が常設されている。アースターミナル60には短絡バー61が収容され、短絡バー61がB種接地線4の途中に端子62、63を介して直列接続される。定期的な接地抵抗測定時に短絡バー61が端子62、63から取り外されて、接地抵抗測定が行われる。接地抵抗測定が終了すると、短絡バー61が端子62、63に戻されてB種接地線の一部になる。そこで、短絡電流方向検知の際に、B種接地線4から短絡バー61を取り外し、代わりに抵抗Rの両端を端子62、63に接続する。この端子62、63の間の端子電圧を電圧検出器20で検出する。
【0036】
B種接地線4に挿入する抵抗Rの抵抗値は、B種接地線4の法的に規定された接地抵抗に応じ、かつ、基準電圧が測定し易い適値のものが選定される。抵抗値の異なる複数種類の抵抗Rを用意し、B種接地線4の種類に応じて予め分かっている最適な一種類を切換的に使用する。抵抗Rが設置されるアースターミナル60は、一般人が容易に近づけない高所にあるため、間欠地絡発生バンクを特定するためにバンクに常設しても安全性が確保できる。
【0037】
なお、本発明の地絡バンク特定装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の地絡バンク特定方法と特定装置を説明するための低圧交流配電線路の概要を示す配線図である。
【図2】図1の低圧交流配線路の等価回路図である。
【図3】図2に対地電圧と地絡電流の位相差を示す波形図を加えた図である。
【図4】図1の低圧交流配電線路の図2と別の地絡状況時の等価回路図である。
【図5】図1と異なる地絡バンク特定方法と特定装置を説明するための低圧交流配電線路の概要を示す配線図である。
【図6】低圧交流配電線路の基準となる電圧測定の一例を説明するための配線図である。
【符号の説明】
【0039】
1 低圧交流配電線路
2 低圧柱
3 低圧線
4 B種接地線
5 共同接地線(低圧線中性線を含む)
7 低圧需要家
10 変流器
20 電圧検出器(接触式あるいは非接触式)
30 電流方向検出回路
40 表示手段
50 電流方向検出記録回路
B1〜B5 バンク(柱上変圧器)
Ia〜Id 地絡電流
R 抵抗
60 アースターミナル
61 短絡バー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンクのB種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定方法であって、
前記複数のバンクのいずれかの前記共同接地線に地絡電流を検出する変流器を設け、当該変流器で検出した地絡電流と前記低圧交流配電線路のいずれかの電圧との位相差から、前記検出地絡電流の方向を検知し、この検知した地絡電流方向に基づいて地絡発生のバンクを特定することを特徴とする地絡バンク特定方法。
【請求項2】
前記複数のバンクでの地絡電流方向を、各バンクでの地絡電流と前記共同接地線と大地間の対地電圧との位相差に基づいて検知することを特徴とする請求項1に記載の地絡バンク特定方法。
【請求項3】
前記複数のバンクでの地絡電流方向を、各バンクでの地絡電流と前記B種接地線に直列接続した抵抗の両端の端子電圧との位相差に基づいて検知することを特徴とする請求項1に記載の地絡バンク特定方法。
【請求項4】
前記抵抗を前記B種接地線に、当該B種接地線の途中に着脱自在に直列接続した短絡バーを前記B種接地線から外し、この外した短絡バーに代り直列接続するようにしたことを特徴とする請求項3に記載の地絡バンク特定方法。
【請求項5】
前記複数のバンクの共同接地線それぞれに独自に地絡電流を検出する変流器を設置して、複数の各バンクでの地絡電流方向を同時に検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の地絡バンク特定方法。
【請求項6】
前記複数のバンクの共同接地線それぞれに前記変流器を常設して、複数バンクでの地絡バンク特定動作を常時および同時刻に行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の地絡バンク特定方法。
【請求項7】
複数のバンクのB種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定装置であって、
前記バンクの共同接地線に流れる地絡電流を検出する変流器と、前記低圧交流配電線路のいずれかの基準とする線路の電圧を検出する電圧検出器と、前記変流器で検出された地絡電流と前記電圧検出器で検出された電圧との位相差から前記共同接地線における地絡電流方向を検出する電流方向検出回路を具備したことを特徴とする地絡バンク特定装置。
【請求項8】
複数のバンクのB種接地線を共同接地線で並列に連結した多重接地式低圧交流配電線路における地絡バンク特定装置であって、
前記複数のバンクの共同接地線それぞれに設置されて各共同接地線に流れる地絡電流を独自に検出する複数の変流器と、前記低圧交流配電線路のいずれかの基準とする線路の電圧を検出する電圧検出器と、前記複数の変流器で検出されたそれぞれの地絡電流と前記電圧検出器で検出された電圧との位相差から前記複数バンクの共同接地線での地絡電流方向をそれぞれに検出して記録する電流方向検出記録回路とを具備したことを特徴とする地絡バンク特定装置。
【請求項9】
前記電圧検出器は、前記共同接地線と大地間の対地電圧を検出する非接触式電圧検出器であることを特徴とする請求項7または8に記載の地絡バンク特定装置。
【請求項10】
前記電圧検出器は、前記B種接地線に直列接続した抵抗の両端の端子電圧を検出することを特徴とする請求項7または8に記載の地絡バンク特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−271610(P2007−271610A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56286(P2007−56286)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】