説明

均熱プレートを備えた配線基板及びその製造方法

【課題】配線基板の表面層に設けられる回路パターンを削減して、配線基板上のスペースを有効に活用することが可能な均熱プレートを備えた配線基板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】中間層にメタルプレート11を設け、且つ、このメタルプレート11と同一の層に複数の突起型端子12を設ける。そして、複数の突起型端子12のうち、少なくとも2個の突起型端子12を、中間層にて電気的に接続する。従って、各突起型端子12どうしを電気的に接続する際に、表面層で接続する必要が無いので、表面層に設ける回路パターン14を削減することができ、配線基板上のスペースを有効に活用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均熱プレートを備えた配線基板及びその製造方法に係り、特に配線基板表面での端子間接続配線を削減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の電気接続箱に搭載される配線基板は、電子部品の発熱による局所的な温度上昇を回避するために、配線基板の中間層にメタルプレート(均熱プレート)を設ける構成としたものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。このようなメタルプレートを用いることにより、電子部品で発生した熱が配線基板全体に拡散され、ひいては放熱効果を促進させるので、局所的な温度上昇による電子部品、回路パターンの損傷を防止することができる。
【0003】
図10、図11は、従来における配線基板110の構成を示す説明図であり、図10は表面層、図11は中間層(即ち、表面層を取り除いた内部の層)をそれぞれ示している。図11に示すように、配線基板110の中間層のほぼ中央には、金属製で導電性を有するメタルプレート111が設けられている。また、配線基板110の左側の側辺部、及び右側の側辺部には、短冊形状の突起型端子112がそれぞれ複数個(図では12個ずつ)設けられ、各突起型端子112の一部は、配線基板110の外側に向けて突起している。そして、配線基板110にコネクタ(図示省略)を接続する場合には、この突起した部分をコネクタ接続用の端子として用いることができる。
【0004】
また、図10に示すように、配線基板110の表面には、絶縁性材料であるプリプレグ131が設けられて表面層とされている。この表面層には各種の電子部品115が搭載され、且つ回路パターン114が配索される。更に、表面層に設けられる回路パターン114と、中間層に設けられる突起型端子112とを接続するために、複数の突起型端子112うちの少なくとも一つに、スルーホール113が穿設されている(図11参照)。即ち、導電性のスルーホール113を経由して、突起型端子112と回路パターン114を電気的に接続することができる。
【0005】
また、例えば、図10の左上に示す3個のスルーホール113-1、113-2、113-3を電気的に接続する場合には、配線基板110の表面層に各スルーホール113-1、113-2、113-3間を接続するための回路パターン114-1、114-2を設ける必要がある。このため、配線基板110の表面層に形成される回路パターン114が多くなり、その分電子部品を配置するためのスペースが縮小されるという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−281138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来における配線基板110は、メタルプレート111と同一の層に複数の突起型端子112を形成し、少なくとも一つの突起型端子112にスルーホール113を設け、該スルーホール113を介して、表面層に形成された回路パターン114を突起型端子112に接続している。そして、複数の突起型端子112間を電気的に接続する場合には、配線基板110の表面層に回路パターン114(図10に示す114-1、114-2等)を形成する必要があるので、配線基板110上のスペースを有効に利用できないという欠点があり、何とか配線基板110上のスペースを有効に活用したいという要望が高まりつつあった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、配線基板の表面層に設けられる回路パターンを削減して配線基板上のスペースを有効に活用することが可能な均熱プレートを備えた配線基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の発明は、表面層に回路パターンが形成され、中間層に均熱プレートが設けられた配線基板において、直線形状とされた少なくとも一つの側辺部と、前記均熱プレートと同一の層に形成され、その一部が前記側辺から外側に突出する複数の突起型端子と、を有し、前記複数の突起型端子のうち、少なくとも2個の突起型端子は、前記中間層にて電気的に接続されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記表面層から前記中間層に向けて貫通し、前記表面層に形成された回路パターンと前記突起型端子とを電気的に接続するスルーホールを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記均熱プレートは、前記回路パターンと電気的に接続される導体として用いられることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、表面層に回路パターンが形成され、中間層に均熱プレートが設けられた配線基板を製造する配線基板の製造方法において、平板の金属を、前記均熱プレート、及び複数の突起型端子の形状に加工する第1のステップと、前記第1のステップで形成された均熱プレート及び前記突起型端子の層の、上側層及び下側層の少なくとも一方の層に樹脂層を形成する第2ステップと、を備え、前記各突起型端子の一部は、前記樹脂層の外部へ突出し、且つ、少なくとも2個の前記突起型端子は互いに連結されるように加工されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、中間層に設けられる複数の突起型端子のうち、少なくとも2つの突起型端子が互いに接続されるので、この2つの突起型端子を表面層で接続するための回路パターンを配索する必要がなく、表面層における回路パターンを削減することができる。このため、表面層のスペースを有効に活用することができ、各種の電子部品を搭載するスペースを大きく確保することができる。
【0014】
請求項2の発明では、突起型端子にスルーホールを形成し、該スルーホールを介して表面層に設けられた回路パターンと接続する場合に、スルーホールの個数を削減することができ、配線基板の表面層のスペースを有効に活用することができる。
【0015】
請求項3の発明では、均熱プレート(メタルプレート)を導体として使用し、回路パターンとの接続に用いるので、均熱プレートを用いて回路パターン間の接続を容易に行うことができる。
【0016】
請求項4の発明では、均熱プレートと突起型端子を同一の工程で作製することができるので、簡単な手順で配線基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の、表面層の構成を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る配線基板の、中間層の構成を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示す説明図であり、金属板を加工する工程を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示す説明図であり、プリプレグを積層する工程を示す。
【図5】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示す説明図であり、スルーホールを形成する工程を示す。
【図6】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示す説明図であり、回路パターンを形成する工程を示す。
【図7】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示す説明図であり、リブを切断して最終的な配線基板とする工程を示す。
【図8】本発明の一実施形態に係る配線基板を作製する手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る配線基板の、変形例を示す説明図である。
【図10】従来における配線基板の、表面層の構成を示す説明図である。
【図11】従来における配線基板の、中間層の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板10の表面層を示す説明図、図2は、中間層(即ち、表面層を取り除いた層)を示す説明図である。
【0019】
図2に示すように、配線基板10の中間層のほぼ中央には、矩形状のメタルプレート(均熱プレート)11が設けられている。該メタルプレート11は、金属製の材料で構成され、導電性を備える。
【0020】
また、配線基板10の左側の側辺部及び右側の側辺部には、短冊形状の突起型端子12がそれぞれ複数個(図では12個ずつ)設けられ、各突起型端子12の一部は、配線基板10の外側に突起している。そして、配線基板10にコネクタ(図示省略)を接続する場合には、この突起した部分を端子として用いることができる。なお、各突起型端子12は、個々を区別する必要がある場合には、サフィックス「-n」を付して表記する。
【0021】
複数の突起型端子12のうちのいくつかは、連結部16を介して互いに連結されている。具体的には、図2に示す突起型端子12-1、12-2、12-3が連結部16により互いに連結され、突起型端子12-4、12-5が連結部16により互いに連結され、更に、突起型端子12-6、12-7が連結部16により互いに連結されている。
【0022】
図1に示すように、配線基板10の表面には、絶縁性材料であるプリプレグ31が設けられて表面層とされている。この表面層には各種の電子部品15が搭載され、また回路パターン14が配索される。また、配線基板10の表面に設けられる回路パターン14と、中間層に設けられる突起型端子12とを接続するために、複数の突起型端子12うちの少なくとも一つに、スルーホール13が穿設されている(図2参照)。即ち、導電性のスルーホール13を経由して、突起型端子12と回路パターン14を電気的に接続することができる。
【0023】
この際、3つの突起型端子12-1、12-2、12-3のうち、一つの突起型端子12-3にのみスルーホール13が形成され、他の突起型端子12-1、12-2にはスルーホール13は形成されない。同様に、2つの突起型端子12-4、12-5のうち、一つの突起型端子12-4にのみスルーホール13が形成され、2つの突起型端子12-6、12-7のうち、一つの突起型端子12-6にのみスルーホール13が形成されている。
【0024】
即ち、図10、図11に示した従来の配線基板110では、中間層に設けられる各突起型端子112がそれぞれ分離しているので、これらを電気的に接続するためには、表面層に回路パターン114-1、114-2(図10参照)等を設ける必要があったが、本実施形態では、図2に示したように、3つの突起型端子12-1、12-2、12-3が連結部16により中間層で接続されているので、3つの突起型端子12-1、12-2、12-3の全てにスルーホール13を設ける必要がなく、且つ、表面層に接続用の回路パターンを設ける必要がない。
【0025】
従って、図1に示すように表面層に形成する回路パターン14を削減することができ、その分、多くの電子部品15を、配線基板10上に設けることができるようになる。
【0026】
次に、上述した配線基板10を製造する手順を、図3〜図7に示す説明図、及び図8に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図3〜図7に示す説明図では、説明を簡略化するために、突起型端子12の数を左右5個ずつとしている。
【0027】
まず、メタルプレート11及び突起型端子12の材料となる金属板25を、エッチング、或いはプレス加工により、図3に示す如くの形状に加工する(図8のステップS1;第1のステップ)。具体的には、矩形状のメタルプレート(均熱プレート)11と、左右にそれぞれ5個ずつ設けられる短冊形状の突起型端子12を形成し、更に、突起型端子12-11、12-12、12-13を連結する連結部16を形成し、突起型端子12-14と12-15を連結する連結部16を形成する。なお、図3に示す例では、メタルプレート11と各突起型端子12を切り離す構成としているが、後述するように使用用途に応じて、メタルプレート11と少なくとも1つの突起型端子12を接続する構成とすることも可能である。
【0028】
次いで、図4に示すように、金属箔を備えたプリプレグ(樹脂層)31を金属板25の片面或いは両面に積層し、このプリプレグ31を加熱プレスすることにより、配線基板10の外形を作製する(ステップS2;第2のステップ)。
【0029】
図5に示すように、プリプレグ31の表面と所望の突起型端子12-13、12-15とを連結するためのスルーホール13を穿設し、更に、このスルーホール13にメッキを施して電気的に導通状態とする(ステップS3)。
【0030】
その後、プリプレグ31の表面に回路パターンをマスキングし、エッチングして所望する回路パターン14を形成する(ステップS4)。その結果、図6に示すように、回路パターン14、及びスルーホール13が形成された配線基板10が形成されることになる。
【0031】
次いで、図7(a)の平面図、(b)の正面図(断面図)に示すように、メタルプレート11及び突起型端子12周辺のリブ21(図6参照)をプレス、或いはルータ等により切断する(ステップS5)。こうして、中間層にメタルプレート11、及び突起型端子12が設けられ、且つ、スルーホール13が穿設された配線基板10を作製することができるのである。
【0032】
このようにして、本実施形態に係る配線基板10では、中間層に設けられる複数の突起型端子12のうち、少なくとも2つの突起型端子12が互いに連結されるので、この2つの突起型端子12を表面層で接続するための回路パターン14を配索する必要がなく、表面層における回路パターンを削減することができる。このため、表面層のスペースを有効に活用することができ、各種の電子部品15を搭載するスペースを大きく確保することができる。
【0033】
また、突起型端子12にスルーホール13を形成し、該スルーホール13を介して表面層に設けられた回路パターン14と接続する場合に、スルーホール13の個数を削減することができ、配線基板10の表面層のスペースを有効に活用することができる。
【0034】
更に、メタルプレート11を導体として使用し、回路パターン14との接続に用いるので、メタルプレート11を用いることにより回路パターン14間の接続を容易に行うことができる。
【0035】
なお、上述した実施形態では、メタルプレート11と複数の突起型端子12がそれぞれ切り離されて構成される例について説明したが、図9に示すように、メタルプレート11を少なくとも一つの突起型端子12と接続することにより、メタルプレート11自体を電極として使用することも可能である。この際、例えばメタルプレート11をグランド端子とすることにより、回路パターン14を配索する際に、容易にグランド接続することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の均熱プレートを備えた配線基板及びその製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0037】
例えば、上記した実施形態では車両の電気接続箱に搭載される配線基板を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の配線基板についても適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、配線基板の表面層のスペースを有効に利用する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0039】
10 配線基板
11 メタルプレート
12 突起型端子
13 スルーホール
14 回路パターン
15 電子部品
16 連結部
21 リブ
25 金属板
31 プリプレグ
110 配線基板
111 メタルプレート
112 突起型端子
113 スルーホール
114 回路パターン
115 電子部品
131 プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層に回路パターンが形成され、中間層に均熱プレートが設けられた配線基板において、
直線形状とされた少なくとも一つの側辺部と、
前記均熱プレートと同一の層に形成され、その一部が前記側辺から外側に突出する複数の突起型端子と、を有し、
前記複数の突起型端子のうち、少なくとも2個の突起型端子は、前記中間層にて電気的に接続されていることを特徴とする均熱プレートを備えた配線基板。
【請求項2】
前記表面層から前記中間層に向けて貫通し、前記表面層に形成された回路パターンと前記突起型端子とを電気的に接続するスルーホールを備えたことを特徴とする請求項1に記載の均熱プレートを備えた配線基板。
【請求項3】
前記均熱プレートは、前記回路パターンと電気的に接続される導体として用いられることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の均熱プレートを備えた配線基板。
【請求項4】
表面層に回路パターンが形成され、中間層に均熱プレートが設けられた配線基板を製造する配線基板の製造方法において、
平板の金属を、前記均熱プレート、及び複数の突起型端子の形状に加工する第1のステップと、
前記第1のステップで形成された均熱プレート及び前記突起型端子の層の、上側層及び下側層の少なくとも一方の層に樹脂層を形成する第2ステップと、を備え、
前記各突起型端子の一部は、前記樹脂層の外部へ突出し、且つ、少なくとも2個の前記突起型端子は互いに連結されるように加工されることを特徴とする均熱プレートを備えた配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−258271(P2010−258271A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107746(P2009−107746)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】