説明

基地局及び干渉電力測定方法

【課題】PRACHの干渉電力レベルの測定精度を向上させること。
【解決手段】基地局は、ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算部と、該電力レベルのピークを検出するピーク検出部と、該ピークに対応する電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出部と、ピークの電力レベルと、干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定部と、プリアンブルが検出されたと判定されない場合、干渉電力レベルを、ピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正部と、該補正された干渉電力レベルを出力する出力部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、物理ランダムアクセスチャネル(PRACH: Physical Random Access Channel)(プリアンブル)は、移動局から基地局への上りリンクにおける移動局の同期を確立するとともに、通信開始のための初期セットアップを行うためのチャネルである。
【0003】
基地局は、移動機からのプリアンブルを高速フーリエ変換することにより周波数領域で表現される周波数領域表現信号に変換する。該基地局は、周波数領域表現信号に、レプリカ信号を乗算する。該基地局は、レプリカ信号が乗算された周波数領域表現信号を逆高速フーリエ変換することにより時間領域で表現される時間領域表現信号に変換する。該基地局は、時間領域表現信号の所定の区間におけるピークを検出し、該所定の区間のうち、該ピーク以外の区間の信号に基づいて干渉電力レベルを求める。基地局は、干渉電力レベルに予め設定される所定のマージンを加えた閾値を、ピークの電力レベルが超えるかどうかにより、該ピークが実際のピークであるかどうかを判定する。ピーク電力が閾値を超える場合には、基地局は該ピークが実際のピークであると判定し、プリアンブルが検出されたとして、基地局との間で通信開始のためのセットアップを行う。ピーク電力が閾値を超えない場合には、基地局は該ピークが実際のピークでないと判定し、プリアンブルが検出されなかったとして処理を継続する。
【0004】
プリアンブルを検出する際に、干渉電力レベルを算出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−141313号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS 36.104 V10.2.0. 2011 04, "8.4 Performance requirements for PRACH"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ピークの電力レベルが閾値を超えない場合には、基地局はプリアンブルが検出されなかったとして処理を継続する。この場合、誤検出されたピーク以外の信号に基づいて求められた干渉電力レベルが使用される。
【0008】
図1は、干渉電力レベルの精度を表す特性の一例を示す。
【0009】
図1に示される例では、入力レベル[dBm]と、PRACH干渉電力レベルとの関係が示される。また、図1には、理論値と、実測値が示される。
【0010】
図1によれば、入力レベルが高くなるに従って、理論値と、実測値との間の差が大きくなるのがわかる。すなわち、入力レベルが高くなるに従って、理論値から乖離する。
【0011】
PRACHの干渉電力レベルは、プリアンブルを検出する際の基準値とされるため、プリアンブルの検出率を向上させ、誤検出率を低下させるためには、PRACHの干渉電力レベルは精度よく求められる必要がある。
【0012】
開示の基地局は、PRACHの干渉電力レベルの測定精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
開示の一実施例の基地局は、
ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算部と、
該電力レベルのピークを検出するピーク検出部と、
該ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出部と、
前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定部と、
該プリアンブル検出判定部によりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記干渉電力レベル算出部により算出される干渉電力レベルを、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正部と、
該干渉電力補正部により補正された干渉電力レベルを出力する出力部と
を有する。
【発明の効果】
【0014】
開示の実施例によれば、PRACHの干渉電力レベルの測定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】入力レベルに対するPRACHの干渉電力レベルの一例を示す図である。
【図2】基地局の一実施例を示す機能ブロック図である。
【図3】基地局のハードウェア構成の一実施例を示す図である。
【図4】復調部の一実施例を示す部分ブロック図である。
【図5】PRACH プリアンブルの特性の一例を示す図である。
【図6】プリアンプルの検出処理の一実施例(その1)を示す図である。
【図7】プリアンプルの検出処理の一実施例(その2)を示す図である。
【図8】複数のユーザ端末が多重された場合の電力プロファイルの一例を示す図である。
【図9】基地局の動作の一実施例を示すフローチャートである。
【図10】入力レベルに対するPRACHの干渉電力レベルの一実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、実施例を説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0017】
<無線通信システム>
図2は、無線通信システムの一実施例を示す。
【0018】
無線通信システムは、基地局100と、ユーザ端末200とを有する。
【0019】
ユーザ端末200は、移動機に含まれる。移動機は、ユーザが通信することができる適切な如何なる端末でもよく、例えば、携帯電話、情報端末、パーソナルディジタルアシスタント、携帯用パーソナルコンピュータ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
基地局100と、ユーザ端末200とは、所定の無線通信方式に従って無線通信を行う。該所定の無線通信方式には、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile Communications)、LTE(Long Term Evolution)に限られない。ユーザ端末200から、基地局100に、PRACHを送信するいかなる通信方式に従って、無線通信を行うものに適用できる。
【0021】
<基地局>
図2は、基地局100の一実施例を示す。
【0022】
基地局100は、送受信増幅部102と、ベースバンド信号処理部104と、回線終端部122と、呼処理制御部124とを有する。
【0023】
送受信増幅部102は、ベースバンド信号処理部104からの下りリンクの信号をRF信号に変換して、アンテナから無線送信する。また、送受信増幅部102は、ユーザ端末200からの上りリンクの信号をダウンコンバートし、ベースバンド処理部104に入力する。
【0024】
ベースバンド信号処理部104は、送受信増幅部102と接続される。ベースバンド信号処理部104は、変調部106と、符号化部108と、MAC制御部110と、RLC制御部112と、PDCP制御部114と、スケジューラ116と、復調部118と、復号化部120とを有する。
【0025】
下りリンク信号を送信する場合について説明する。
【0026】
PDCP制御部114は、下りリンクで送信すべきデータをパケットデータコンバージェンスプロトコルサービスデータユニット(PDCP SDU(Service Data Unit))として処理し、PDCP プロトコルデータユニット(PDU(Protocol Data Unit)に変換する。PDCP制御部114は、RLC(Radio Link Control)制御部112へ、PDCP PDUに変換されたデータを入力する。
【0027】
RLC制御部112は、PDCP制御部114と接続される。RLC制御部112は、PDCP制御部114から入力されたデータを無線リンク制御サービスデータユニット(RLC SDU)として処理し、RLC PDUに変換する。RLC制御部112は、MAC(Medium Access Control)制御部110へ、RLC PDUに変換されたデータを入力する。
【0028】
MAC制御部110は、RLC制御部112と接続される。MAC制御部110は、RLC制御部112から入力されたデータをMAC SDUとして処理し、MAC PDUに変換する。MAC制御部110は、符号化部108へ、MAC PDUに変換されたデータを入力する。
【0029】
符号化部108は、MAC制御部110と接続される。符号化部108は、スケジューラ116によるスケジューリングに従って、MAC制御部110から入力されたデータに対して、誤り訂正符号化、スクランブリングを行う。符号化部108は、変調部106に、スクランブリングされたデータを入力する。
【0030】
変調部106は、符号化部108と接続される。変調部106は、スケジューラ116によるスケジューリングに従って、符号化部108からの信号を、変調信号に変換し、送受信増幅部102に入力する。
【0031】
スケジューラ116は、変調部106、符号化部108、復号化部120、及び復調部118と接続される。スケジューラ116は、上りリンクを送信するユーザ端末200に割り当てるリソースブロックを設定し、MCS(Modulation and Coding Scheme)を選択する。スケジューラ116は、符号化部108、復号化部120に、ユーザ端末200に割り当てるべきリソースブロックを表す情報を入力する。また、スケジューラ116は、符号化部108、変調部106、復号化部120、及び復調部118に、MCSを入力する。
【0032】
上りリンク信号が受信された場合について説明する。
【0033】
復調部118は、送受信増幅部102と接続される。復調部118は、スケジューラ116によるスケジューリングに従って、送受信増幅部102により入力されるべき信号を復調する。復調部118は、復号化部120に、復調信号を入力する。
【0034】
復号化部120は、復調部118と接続される。復号化部120は、スケジューラ116によるスケジューリングに従って、復調部118からの復調信号を復号する。復号化部120は、復調部118からの復調信号のスクランブルを解除し、誤り訂正復号処理を行う。復号化部120は、復号された信号をMAC制御部110に入力する。
【0035】
MAC制御部110は、復号化部120と接続される。MAC制御部110は、復号化部120からの信号をMAC PDUとして処理し、MAC SDUに変換する。MAC制御部110は、RLC制御部112へ、MAC SDUを入力する。
【0036】
RLC制御部112は、MAC制御部110と接続される。RLC制御部112は、MAC制御部110から入力されたデータをRLC SDUとして処理し、RLC PDUに変換する。RLC制御部112は、PDCP制御部114へ、RLC PDUを入力する。
【0037】
PDCP制御部114は、RLC制御部112と接続される。PDCP制御部114は、RLC制御部112から入力されたデータをPDCP SDUとして処理する。PDCP制御部114は、回線終端部122に、PDCP SDUを入力する。
【0038】
回線終端部122は、PDCP制御部114と接続される。回線終端部122は、PDCP制御部114からの信号がU−planeであればPDCP PDUとして上位ネットワークへ転送するために、上位装置に送信する。一方、回線終端部122は、受信データがC−planeであれば呼処理制御部124に入力する。
【0039】
呼処理制御部124は、回線終端部122と接続される。呼処理制御部124は、回線終端部122からの信号に従って呼処理を行う。
【0040】
図3は、基地局100のハードウェア構成の一実施例を示す。
【0041】
基地局100は、DSP(Digital Signal Processor)152と、CPU(Central Processing Unit)154と、メモリ156と、第1通信部158と、第2通信部160とを有する。DSP152と、CPU154と、メモリ156と、第1通信部158と、第2通信部160との間は、バス150により互いに接続される。DSP152は、1または複数のDSPであってもよい。また、CPU152は、1または複数のCPUであってもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)により実現されてもよい。
【0042】
DSP152は、メモリ154に記憶されるべきプログラムに従って、図2のベースバンド信号処理部104により実行されるべき処理を実行する。
【0043】
CPU154は、メモリ154に記憶されるべきプログラムに従って、図2のベースバンド信号処理部104により実行されるべき処理、呼処理制御部124により実行されるべき処理を実行する。
【0044】
メモリ154は、ベースバンド信号処理部104として、DSP152、CPU154を機能させるためのプログラムを格納する。また、メモリ154は、呼処理制御部124として、CPU154を機能させるためのプログラムを格納する。
【0045】
第1通信部156は、送受信増幅部102の機能を実行する。
【0046】
第2通信部158は、上位装置との間で信号を送受信する処理を実行する。
【0047】
<復調部>
図4は、復調部118の一実施例を示す。
【0048】
復調部118は、高速フーリエ変換部1182と、乗算部1184と、逆高速フーリエ変換部1186と、電力レベル計算部1188と、ピーク検出部1190と、干渉電力レベル算出部1192と、プリアンブル検出判定部1194と、干渉電力レベル補正部1196とを有する。
【0049】
ユーザ端末200により送信されるべき上りリンク信号は、送受信増幅部102によりダウンコンバートされ、A/D変換され、高速フーリエ変換部1182に入力される。
【0050】
高速フーリエ変換部1182は、送受信増幅部102からの信号を高速フーリエ変換することにより周波数領域表現信号を生成する。高速フーリエ変換部1182は、乗算部1184に、周波数領域表現信号を入力する。
【0051】
乗算部1184は、高速フーリエ変換部1182と接続される。乗算部1184は、高速フーリエ変換部1182からの周波数領域表現信号と、レプリカ信号とを乗算する。乗算部1184は、逆高速フーリエ変換部1186に、レプリカ信号が乗算された周波数領域表現信号を入力する。
【0052】
レプリカ信号は、基地局100で既知の信号である。例えば、RACH信号を発生させる系列として、CAZAC系列が使用される場合がある。CAZAC系列が使用される場合、RACH信号を作成するために、幾つかのCAZACシーケンスが選択される。各CAZACパターンを分離するために、各CAZACパターンは相互に直交している。CAZACシーケンスの系列長が長くなると、そのパターンに対する直交パターンが増加する。
【0053】
ユーザ端末200は、複数のCAZACパターンの中から一つをランダムに選出し、RACH信号(プリアンブル)として送信する。
【0054】
基地局100は、RACHで使用される複数のパターンのCAZAC系列を知っている。相関処理には、複数のパターンのレプリカ信号が使用される。
【0055】
受信されたRACH信号に含まれるCAZACパターンは基地局100では既知でないため、基地局100はすべてのCAZACパターンについて相関処理を行う。マッチするパターン間で相関処理が行われると、その電力プロファイルにピークが発生する。これに対し、マッチしないパターン間ではピークは生じない。
【0056】
逆高速フーリエ変換部1186は、乗算部1184と接続される。逆高速フーリエ変換部1186は、乗算部1184からの信号を逆高速フーリエ変換することにより、時間領域表現信号に変換する。逆高速フーリエ変換部1186は、電力レベル計算部1188に、時間領域表現信号を入力する。
【0057】
電力レベル計算部1188は、逆高速フーリエ変換部1186と接続される。電力レベル計算部1188は、逆高速フーリエ変換部1186からの時間領域表現信号に基づいて、電力レベルの計算を行う。例えば、電力レベル計算部1188は、所定の時間区間を分割した分割区間毎に電力レベルを計算する。電力レベル計算部1188は、ピーク検出部1190、及び干渉電力レベル算出部1192に、算出された電力レベルを表す情報を入力する。
【0058】
ピーク検出部1190は、電力レベル計算部1188と接続される。ピーク検出部1190は、電力レベル計算部1188により入力されるべき電力レベルに基づいて、所定の区間において、ピークを検出する。例えば、ピーク検出部1190は、電力レベル計算部1188により入力されるべき電力レベルをサーチし、該サーチされた範囲で電力レベルが最大となる箇所を検出する。つまり、ピーク検出部1190は、最大となる電力レベルを、ピークとして検出する。ピーク検出部1190は、プリアンブル検出判定部1194、及び干渉電力レベル算出部1192に、ピークを表す情報を入力する。ピークを表す情報には、該ピークの電力レベルを表す情報と、該ピークが検出された時間を表す情報とが含まれてもよい。
【0059】
干渉電力レベル算出部1192は、電力レベル計算部1188と、ピーク検出部1190と接続される。干渉電力レベル算出部1192は、電力レベル計算部1188により入力されるべき電力レベルから、ピーク検出部1190により入力されるべきピークを表す情報に基づいて、該ピークの電力レベルを除いた電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する。
【0060】
<干渉電力レベルを求める方法>
干渉電力レベル算出部1192は、ピークの電力レベルを除いた電力レベルの平均値を干渉電力レベルとしてもよい。
【0061】
また、干渉電力レベル算出部1192は、予め設定されるべき一定の時間に基づいて、該一定の時間の電力レベルの平均値を干渉電力レベルとしてもよい。この場合、ピークの電力レベルが除外される。
【0062】
また、干渉電力レベル算出部1192は、予め設定されるべき一定の時間と、忘却係数(重み係数)に基づいて、該一定の時間の電力レベルの忘却平均値を干渉電力レベルとしてもよい。この場合、ピークの電力レベルが除外される。このようにすることにより、突発的にピークが発生した場合でも、該ピークを下げることができる。
【0063】
また、干渉電力レベル算出部1192は、ユーザ端末200の電源がオンにされてからの時間に基づいて、該時間の電力レベルの平均値を干渉電力レベルとしてもよい。この場 合、ピークの電力レベルが除外される。
【0064】
干渉電力レベル算出部1192は、プリアンブル検出判定部1194、及び干渉電力レベル補正部1196に、干渉電力レベルを表す情報を入力する。
【0065】
プリアンブル検出判定部1194は、ピーク検出部1190、及び干渉電力レベル算出部1192と接続される。プリアンブル検出判定部1194は、ピーク検出部1190により入力されるべきピークの電力レベルが、干渉電力レベル算出部1192により入力されるべき干渉電力レベルに所定のマージンを加えた閾値以上となるかどうかにより、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する。プリアンブル検出判定部1194は、ピーク検出部1190により入力されるべきピークの電力レベルが、閾値以上となる場合にプリアンブルが検出されたと判定する。プリアンブル検出判定部1194は、ピーク検出部1190により入力されるべきピークの電力レベルが、閾値未満となる場合にプリアンブルが検出されないと判定する。
【0066】
<マージンの算出方法>
PRACH Preambleには、無線特性で、フォルスアラーム(False alarm)とミスドディテクション(Missed Detection)の2つのスペックが規定されている。
【0067】
False Alarmは、信号が入力されていない状態で誤りが検出される誤検出確率である。Missed Detectionは、送信信号が検出できない確率である。False Alarmが0.1%以下、Missed Detectionが1%以下となるように規定されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0068】
図5は、False Alarmの特性と、Missed Detectionの特性の一例である。図5において、横軸はピーク電力と干渉電力との差(以下、「マージン」という)であり、縦軸が誤検出確率である。
【0069】
図5に示される特性によれば、False Alarmが0.1%以下となるのはマージンが6dB以上、Missed Detectionが1%以下となるのはマージンが10dB以下であるのがわかる。従って、マージンの値は、6dB以上10dB以下の中間の値である8dBが適切であると考えられる。マージンの値は、予め設定される。
【0070】
プリアンブル検出判定部1194は、ピーク検出部1190により入力されるべきピークの電力レベルが、閾値以上となる場合に、プリアンブルが検出されたと判定する。プリアンブルが検出されたと判定された場合、プリアンブル検出判定部1194は、プリアンブルを表す情報と、干渉電力レベルを表す情報とを出力する。プリアンブルを表す情報には、ピークが検出された時間を表す情報であってもよい。
【0071】
図6は、プリアンブルの検出の一例(その1)を示す。
【0072】
図6には、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する処理の一例が示される。図6には、予め設定される所定の時間区間で検出されたピークが閾値を超える例が示される。上述したように、ピークは該所定の時間区間で最大となる電力レベルである。閾値は、該ピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値に所定のマージンを加えたものである。
【0073】
図6に示される例では、ピークの電力レベルが、閾値以上となるため、プリアンブルが検出されたと判定される。
【0074】
図7は、プリアンブルの検出の一例(その2)を示す。
【0075】
図7には、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する処理の一例が示される。図7には、予め設定される所定の時間区間で検出されたピークが閾値を超えない例が示される。上述したように、ピークは該所定の時間区間で最大となる電力レベルである。閾値は、該ピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値に所定のマージンを加えたものである。
【0076】
図7に示される例では、ピークの電力レベルが、閾値未満となるため、プリアンブルが検出されないと判定される。
【0077】
プリアンブル検出判定部1194は、プリアンブルが検出されないと判定した場合、干渉電力レベル補正部1196に、プリアンブルが検出されないことを表す情報を入力する。さらに、プリアンブル検出判定部1194は、プリアンブルが検出されないと判定した場合、干渉電力レベル補正部1196に、ピークの電力レベルを表す情報を入力する。
【0078】
干渉電力レベル補正部1196は、干渉電力レベル算出部1192と、プリアンブル検出判定部1194と接続される。干渉電力レベル補正部1196は、プリアンブル検出判定部1194によりプリアンブルが検出されないことを表す情報が入力された場合、干渉電力レベル算出部1192により入力されるべき干渉電力レベルを、プリアンブル検出判定部1194により入力されるべきピークの電力レベルを含めた値に補正する。例えば、干渉電力レベル補正部1196は、所定の時間区間の電力レベルの平均を干渉電力レベルとする。干渉電力レベル補正部1196は、ピークの電力レベルを含めた値に補正された干渉電力レベルを表す情報を出力する。
【0079】
ここで、複数のユーザ端末が多重された場合について説明する。
【0080】
図8は、複数のユーザ端末が多重された場合に取得されるべき電力プロファイルの一例である。図8に示される例では、2のユーザ端末が多重された場合を示す。3以上のユーザ端末が多重される場合についても同様である。
【0081】
複数のユーザ端末が多重された場合も、該複数のユーザ端末間で、別の系列やサイクリックシフト番号が使用されるため、異なる位置にピークが出現する。このため、特に混信することはない。複数のユーザ端末が多重された場合でも、各ピークの電力レベルが、干渉電力レベルにマージンを加えた値により表される閾値を超えていれば、プリアンブルとして検出する。
【0082】
<基地局の動作>
図9は、基地局の動作の一実施例を示す。
【0083】
例えば、LTEの上りリンク(Uplink)では、PRACHの他に、PUSCH、PUCCH、Sounding Reference Signal(S−RS)、Demodulation Reference Signal(D−RS)などの物理チャネルが送信される。これらのチャネルは、周波数軸、時間軸で分割多重されている。
【0084】
基地局100は、アンテナで受信された信号をダウンコンバートし、ベースバンド帯域に変換した後、各物理チャネルに分割して復調処理および復号処理を行う。
【0085】
以下、本実施例に特に関連するPRACHの復調処理について説明する。
【0086】
基地局100は、ベースバンド信号を高速フーリエ変換することにより周波数領域表現信号に変換する(ステップS902)。
【0087】
基地局100は、ステップS902により生成された周波数領域表現信号に、レプリカ信号を乗算する(ステップS904)。
【0088】
基地局100は、ステップS904によりレプリカ信号が乗算された周波数領域表現信号を逆高速フーリエ変換することにより時間領域表現信号に変換する(ステップS906)。
【0089】
基地局100は、ステップS906により生成された時間領域表現信号の電力レベルを計算する(ステップS908)。つまり、電力レベル計算部1188は、所定の時間区間を分割した分割区間毎に電力レベルを計算する。
【0090】
基地局100は、ピークを検出する(ステップS910)。つまり、ピーク検出部1190は、ステップ908により計算された分割区間の電力レベルの中から、最大となる電力レベルをピークとして検出する。
【0091】
基地局100は、干渉電力レベルを計算する。つまり、干渉電力レベル計算部1192は、ステップ910により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを計算する。
【0092】
基地局100は、ステップS910により検出されたピークの電力レベルが、ステップS912により計算された干渉電力レベルに所定のマージンを加えた閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS914)。つまり、プリアンブル検出判定部1194は、ピークの電力レベルが、干渉電力レベルに所定のマージンを加えた閾値以上となるかどうかに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する。
【0093】
ピークの電力レベルが閾値以上と判定された場合(ステップS914:YES)、基地局100は、プリアンブルが検出されたとして処理を行う。
【0094】
一方、ピークの電力レベルが閾値以上と判定されない、すなわちピークの電力レベルが閾値未満と判定された場合(ステップS914:NO)、基地局100は、プリアンブルが検出されないとして処理を行う。具体的には、ステップS912により計算された干渉電力レベルを、ステップS910により検出されたピークの電力レベルを含めた値に補正する(ステップS918)。
【0095】
<本実施例の効果>
図10は、本実施例の効果を説明するための干渉電力レベルの精度の特性の一実施例を示す。
【0096】
図10に示される例では、入力レベル[dBm]と、PRACH干渉電力レベルとの関係が示される。また、図10には、理論値と、実測値(従来)と、干渉電力レベルの補正を行ったもの(電力補正あり)が示される。
【0097】
図10によれば、入力レベルが高くなるに従って、理論値と、実測値との間の差が大きくなるに対し、電力補正ありは、入力レベルが高くなっても、理論値との差が略一定であることが分かる。
【0098】
本実施例によれば、プリアンブルが検出されないと判定された場合に、干渉電力レベルをピークの電力レベルを含めたものに補正することにより、PRACHの干渉電力レベルを理論値に近づけることができる。干渉電力レベルを理論値に近づけることができるため、干渉電力レベルの測定精度を向上させることができる。干渉電力レベルの測定精度が向上することにより、プリアンブルを見逃したり、誤検出したりすることが少なくなるため、干渉電力レベルの特性を改善できる。
【0099】
上述した実施例において、干渉電力レベル補正部1196により補正された干渉電力レベルを使用して、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するようにしてもよい。この場合、干渉電力レベル補正部1196から、プリアンブル検出判定部1194に、補正された結果得られた干渉電力レベルが入力される。プリアンブル検出判定部1194は、次のタイミングでピーク検出部1190により入力されるピークの電力レベルが、干渉電力レベル補正部1196からの干渉電力レベルにマージンを加えた閾値以上となるかどうかを判定することにより、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する。補正された干渉電力レベルに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定することにより検出精度を向上させることができる。具体的には、補正された干渉電力レベルは、補正される前よりも大きい値であるため、ピークの電力レベルが低い場合には、補正される前の干渉電力レベルが使用された場合にはプリアンブルが検出されたとされる場合でも、補正された干渉電力レベルを使用することによりプリアンブルが検出されないとされることがある。このため、誤検出を低減でき、検出精度を向上できる。
【0100】
以上の実施例を含む実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算部と、
該電力レベルのピークを検出するピーク検出部と、
該ピーク検出部により検出されたピークに対応する電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出部と、
前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定部と、
該プリアンブル検出判定部によりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記干渉電力レベル算出部により算出される干渉電力レベルを、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正部と、
該干渉電力補正部により補正された干渉電力レベルを出力する出力部と
を有する基地局。
(付記2)
付記1に記載の基地局において、
前記プリアンブル検出判定部は、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル補正部により補正された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する、基地局。
(付記3)
付記1または2に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル算出部は、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値を求めることにより干渉電力レベルを算出する、基地局。
(付記4)
付記1ないし3のいずれか1項に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル補正部は、前記プリアンブル検出判定部によりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルとの平均値を求めることにより干渉電力レベルを補正する、基地局。
(付記5)
付記1に記載の基地局において、
前記閾値は、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルに、誤検出確率に基づいて設定されるマージンを加えた値である、基地局。
(付記6)
ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算ステップと、
該電力レベルのピークを検出するピーク検出ステップと、
該ピーク検出ステップにより検出されたピークに対応する電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出ステップと、
前記ピーク検出ステップにより検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出ステップにより算出された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定ステップと、
該プリアンブル検出判定ステップによりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記干渉電力レベル算出ステップにより算出される干渉電力レベルを、前記ピーク検出ステップにより検出されたピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正ステップと、
該干渉電力補正ステップにより補正された干渉電力レベルを出力する出力ステップと
を有する基地局における干渉電力測定方法。
(付記7)
付記3に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル算出部は、予め設定されるべき一定の時間に基づいて、該一定の時間における前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値を求めることにより干渉電力レベルを算出する、基地局。
(付記8)
付記3に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル算出部は、予め設定されるべき一定の時間と、忘却係数に基づいて、該一定の時間における前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルの忘却平均値を求めることにより干渉電力レベルを算出する、基地局。
(付記9)
付記3に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル算出部は、前記ユーザ端末の電源がオンにされてからの時間に基づいて、該時間における前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値を求めることにより干渉電力レベルを算出する、基地局。
【符号の説明】
【0101】
100 基地局
102 送受信増幅部
104 ベースバンド信号処理部
106 変調部
108 符号化部
110 MAC制御部
112 RLC制御部
114 PDCP制御部
116 スケジューラ
118 復調部
1182 高速フーリエ変換部
1184 乗算部
1186 逆高速フーリエ変換部
1188 電力レベル計算部
1190 ピーク検出部
1192 干渉電力レベル算出部
1194 プリアンブル検出判定部
1196 干渉電力レベル補正部
120 復号化部
122 回線終端部
124 呼処理制御部
150 バス
152 DSP
154 CPU
156 メモリ
158 第1通信部
160 第2通信部
200 ユーザ端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算部と、
該電力レベルのピークを検出するピーク検出部と、
該ピーク検出部により検出されたピークに対応する電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出部と、
前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定部と、
該プリアンブル検出判定部によりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記干渉電力レベル算出部により算出される干渉電力レベルを、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正部と、
該干渉電力補正部により補正された干渉電力レベルを出力する出力部と
を有する基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局において、
前記プリアンブル検出判定部は、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル補正部により補正された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定する、基地局。
【請求項3】
請求項1または2に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル算出部は、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベル以外の電力レベルの平均値を求めることにより干渉電力レベルを算出する、基地局。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の基地局において、
前記干渉電力レベル補正部は、前記プリアンブル検出判定部によりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記ピーク検出部により検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルとの平均値を求めることにより干渉電力レベルを補正する、基地局。
【請求項5】
請求項1に記載の基地局において、
前記閾値は、前記干渉電力レベル算出部により算出された干渉電力レベルに、誤検出確率に基づいて設定されるマージンを加えた値である、基地局。
【請求項6】
ユーザ端末からのランダムアクセスチャネルの信号と、該ランダムアクセスチャネルのレプリカ信号との間の相関に基づいて、電力レベルを計算する電力レベル計算ステップと、
該電力レベルのピークを検出するピーク検出ステップと、
該ピーク検出ステップにより検出されたピークに対応する電力レベル以外の電力レベルに基づいて、干渉電力レベルを算出する干渉電力レベル算出ステップと、
前記ピーク検出ステップにより検出されたピークの電力レベルと、前記干渉電力レベル算出ステップにより算出された干渉電力レベルに基づいて設定される閾値とに基づいて、プリアンブルが検出されたかどうかを判定するプリアンブル検出判定ステップと、
該プリアンブル検出判定ステップによりプリアンブルが検出されないと判定された場合、前記干渉電力レベル算出ステップにより算出される干渉電力レベルを、前記ピーク検出ステップにより検出されたピークの電力レベルを含む干渉電力レベルに補正する干渉電力レベル補正ステップと、
該干渉電力補正ステップにより補正された干渉電力レベルを出力する出力ステップと
を有する基地局における干渉電力測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5299(P2013−5299A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135779(P2011−135779)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】