説明

基地局及び通信制御方法

【課題】基地局の性能を向上することが可能な技術を提供する。
【解決手段】グループ分け処理部126は、通信部13が通信する複数の通信端末を、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する。通信端末が既知信号の送信に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースは、第1端末グループが使用する第1端末用上り無線リソースと、第2端末グループが使用する第2端末用上り無線リソースとを含んでいる。単位期間において、第1端末用上り無線リソースを用いて既知信号を送信することが可能な第1端末グループの通信端末の台数が、第2端末用上り無線リソースを用いて既知信号を送信することが可能な第2端末グループの通信端末の台数よりも大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から無線通信に関して様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、基地局と通信端末とを備える無線通信システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/077842号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1にも記載されているように、基地局においては、複数のアンテナでの送信指向性を制御して通信端末と下り通信を行うことがある。
【0005】
一方で、基地局においては、その性能の向上が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局の性能を向上する可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る基地局は、複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記既知信号用上り無線リソースは、前記第1端末グループが使用する第1端末用上り無線リソースと、前記第2端末グループが使用する第2端末用上り無線リソースとを含み、前記単位期間において、前記第1端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第1端末グループの通信端末の台数が、前記第2端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第2端末グループの通信端末の台数よりも大きくなっている。
【0008】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記第1端末グループの複数の通信端末からの既知信号が同一周波数帯域で多重されている。
【0009】
また、本発明に係る基地局は、複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データ量が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記無線リソース割り当て部は、前記第1端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅を、前記第2端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅よりも小さくする。
【0010】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記既知信号の送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、大きさが互いに異なる複数の帯域幅が定められており、前記第1端末グループの通信端末が送信する既知信号の送信周波数帯域幅は、前記複数の帯域幅のうちの最小値が設定されている。
【0011】
また、本発明に係る基地局は、複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記無線リソース割り当て部は、前記第1端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースと、当該上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースとを割り当てることがあり、前記第2端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースだけを割り当てる。
【0012】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記第2端末グループの複数の通信端末からの既知信号は同一周波数帯域で多重化されない。
【0013】
また、本発明に係る基地局の一態様では、前記第1端末グループには、VoIP(Voice over Internet Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末、リアルタイムゲームのアプリケーションを実行する通信端末及びリアルタイムビデオのアプリケーションを実行する通信端末が含まれ、前記第2端末グループには、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末及びFTP(File Transfer Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末が含まれる。
【0014】
また、本発明に係る通信制御方法は、通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記既知信号用上り無線リソースは、前記第1端末グループが使用する第1端末用上り無線リソースと、前記第2端末グループが使用する第2端末用上り無線リソースとを含み、前記単位期間において、前記第1端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第1端末グループの通信端末の台数が、前記第2端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第2端末グループの通信端末の台数よりも大きくなっている。
【0015】
また、本発明に係る通信制御方法は、通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データ量が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記工程(b)では、前記第1端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅が、前記第2端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅よりも小さくされる。
【0016】
また、本発明に係る通信制御方法は、通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程とを備え、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、前記工程(b)においては、前記第1端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースと、当該上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースとが割り当てられることがあり、前記第2端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースだけが割り当てられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のアンテナでの送信指向性を制御する基地局の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】無線通信システムの構成を示す図である。
【図2】基地局の構成を示す図である。
【図3】TDDフレームの構成を示す図である。
【図4】TDDフレームの構成の詳細を示す図である。
【図5】SRS送信可能帯域が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【図6】SRS0とSRS1を示す図である。
【図7】SRS用上り無線リソースを示す図である。
【図8】SRSの送信周波数帯域が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【図9】無線通信システムの動作を示す図である。
【図10】SRS用上り無線リソースと下り無線リソースとの対応付けを示す図である。
【図11】基地局での通信端末に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図12】ビームフォーミング及びヌルステアリングを説明するための図である。
【図13】ビームフォーミング及びヌルステアリングを説明するための図である。
【図14】アプリケーションで要求される転送データの許容遅延時間及び許容誤り率を示す図である。
【図15】VoIPのトラヒックモデルを示す図である。
【図16】Gameのトラヒックモデルを示す図である。
【図17】Videoのトラヒックモデルを示す図である。
【図18】HTTPのトラヒックモデルを示す図である。
【図19】FTPのトラヒックモデルを示す図である。
【図20】基地局の動作を示すフローチャートである。
【図21】比較対象基地局の動作を示す図である。
【図22】比較対象基地局での通信端末に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図23】基地局での通信端末に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【図24】基地局での通信端末に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本実施の形態に係る無線通信システム100の構成を示す図である。無線通信システム100は、例えば、複信方式としてTDD(Time Division Duplexing)方式が採用されたLTE(Long Term Evolution)であって、複数の基地局1を備えている。LTEは、「E−UTRA」とも呼ばれている。
【0020】
各基地局1は、複数の通信端末2と通信を行う。LTEでは、下り通信ではOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が使用され、上り通信ではSC−FDMA(Single Carrier-Frequency Division Multiple Access)方式が使用される。基地局1と通信端末2との通信には、互いに直交する複数のサブキャリアが合成されたOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号が使用される。
【0021】
図1に示されるように、各基地局1のサービスエリア10は、周辺基地局1のサービスエリア10と部分的に重なっている。図1では、4つの基地局1だけしか示されていないため、1つの基地局1に対して周辺基地局1が2つあるいは3つだけしか存在していないが、実際には、1つの基地局1に対して例えば6つの周辺基地局1が存在することがある。
【0022】
複数の基地局1は、図示しないネットワークに接続されており、当該ネットワークを通じて互いに通信可能となっている。また、ネットワークには図示しないサーバ装置等の上位装置が接続されており、各基地局1は、ネットワークを通じて上位装置と通信可能となっている。
【0023】
図2は各基地局1の構成を示す図である。基地局1は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される無線リソースを複数の通信端末2のそれぞれに個別に割り当てることによって、当該複数の通信端末2と同時に通信することが可能となっている。基地局1は、送受信アンテナとしてアレイアンテナを有し、アダプティブアレイアンテナ方式を用いてアレイアンテナの指向性を制御することが可能である。
【0024】
図2に示されるように、基地局1は、無線処理部11と、当該無線処理部11を制御する制御部12とを備えている。無線処理部11は、複数のアンテナ110aから成るアレイアンテナ110を有している。無線処理部11は、アレイアンテナ110で受信される複数の受信信号のそれぞれに対して増幅処理、ダウンコンバート及びA/D変換処理等を行って、ベースバンドの複数の受信信号を生成して出力する。
【0025】
また、無線処理部11は、制御部12で生成されるベースバンドの複数の送信信号のそれぞれに対して、D/A変換処理、アップコンバート及び増幅処理等を行って、搬送帯域の複数の送信信号を生成する。そして、無線処理部11は、生成した搬送帯域の複数の送信信号を、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aにそれぞれ入力する。これにより、各アンテナ110aから送信信号が無線送信される。
【0026】
制御部12は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)及びメモリなどで構成されている。制御部12では、CPU及びDSPがメモリ内の各種プログラムを実行することによって、送信信号生成部120、受信データ取得部121、無線リソース割り当て部122、送信ウェイト処理部123、受信ウェイト処理部124、送信能力判定部125及びグループ分け処理部126などの機能ブロックが形成される。
【0027】
送信信号生成部120は、通信端末2に送信する送信データを生成する。送信データには制御データ及びユーザデータが含まれる。そして、送信信号生成部120は、生成した送信データを含むベースバンドの送信信号を生成する。この送信信号は、アレイアンテナ110を構成する複数のアンテナ110aの数だけ生成される。
【0028】
送信ウェイト処理部123は、送信信号生成部120で生成された複数の送信信号に対して、アレイアンテナ110での送信指向性を制御するための複数の送信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、送信ウェイト処理部123は、複数の送信ウェイトがそれぞれ設定された複数の送信信号に対して逆離散フーリエ変換(IDFT:Inverse Discrete Fourier Transform)等を行った後に、当該複数の送信信号を無線処理部11に出力する。
【0029】
受信ウェイト処理部124は、無線処理部11から入力される複数の受信信号に対して、離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行った後に、アレイアンテナ110での受信指向性を制御するための複数の受信ウェイトをそれぞれ設定する。そして、受信ウェイト処理部124は、複数の受信ウェイトがそれぞれ設定された複数の受信信号を合成して新たな受信信号(以後、「合成受信信号」と呼ぶ)を生成する。
【0030】
受信データ取得部121は、受信ウェイト処理部124で生成された合成受信信号に対して、逆離散フーリエ変換や復調処理等を行って、当該合成受信信号に含まれる制御データ及びユーザデータを取得する。
【0031】
本実施の形態に係る基地局1では、無線処理部11、送信ウェイト処理部123及び受信ウェイト処理部124によって、アレイアンテナ110の指向性を適応的に制御しながら複数の通信端末2と通信を行う通信部13が構成されている。通信部13は、通信端末2と通信する際に、アレイアンテナ110の受信指向性及び送信指向性のそれぞれを制御する。具体的には、通信部13は、受信ウェイト処理部124において、受信信号に乗算する受信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での受信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。また、通信部13は、送信ウェイト処理部123において、送信信号に乗算する送信ウェイトを調整することより、アレイアンテナ110での送信指向性のビーム及びヌルを様々な方向に設定することができる。送信ウェイトは受信ウェイトから求めることができ、受信ウェイトは通信端末2からの既知信号に基づいて求めることができる。
【0032】
無線リソース割り当て部122は、データの下り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの下り通信で使用する下り無線リソース(以後、「使用下り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースに基づいて、当該通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号を生成するとともに、当該使用下り無線リソースに基づいたタイミングで当該送信信号を送信ウェイト処理部123に入力する。これにより、通信端末2に送信すべきデータを含む送信信号が、当該通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて通信部13から送信される。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた使用下り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、自装置宛てのデータの送信で使用される使用下り無線リソースを知ることができ、基地局1からの自装置宛てのデータを適切に受信することができる。
【0033】
また無線リソース割り当て部122は、データの上り通信を行う通信端末2を決定するとともに、当該通信端末2に対して、当該通信端末2とのデータの上り通信で使用する上り無線リソース(以後、「使用上り無線リソース」と呼ぶ)を割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に割り当てた使用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、通信端末2は、基地局1へのデータの送信に使用する使用上り無線リソースを知ることができ、当該使用上り無線リソースを用いて基地局1にデータを無線送信する。
【0034】
さらに無線リソース割り当て部122は、通信端末2が、既知信号である後述のサウンディング基準信号(SRS)を送信する際に使用する上り無線リソース(以後、「使用SRS用上り無線リソース」と呼ぶ)を当該通信端末2に対して割り当てる。送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データを含む送信信号を生成して出力する。これにより、当該通信端末2は、基地局1へのSRSの送信に使用する使用SRS用上り無線リソースを知ることができ、当該使用SRS用上り無線リソースを用いて基地局1にSRSを無線送信する。
【0035】
送信能力判定部125は、基地局1に接続された各通信端末2、つまり通信部13が通信する各通信端末2について、当該通信端末2の送信能力が高いか否かを判定する。送信能力判定部125は、例えば、通信端末2の送信能力が高いか否かについて、無線処理部11から出力される、当該通信端末2からの受信信号に基づいて判定する。具体的には、送信能力判定部125は、通信端末2からの受信信号の信号レベルがしきい値よりも大きい場合には、当該通信端末2の送信能力が高いと判定する。一方で、送信能力判定部125は、通信端末2からの受信信号の信号レベルがしきい値以下の場合には、当該通信端末2の送信能力が低いと判定する。
【0036】
グループ分け処理部126は、通信部13が通信する複数の通信端末2を、通信端末2が実行しているアプリケーションに応じたQoS(Quality of Service)に基づいて、第1端末グループと、第2端末グループとに区分する。グループ分け処理部126は、受信データ取得部121で取得される、通信端末2からの制御データに基づいて、当該通信端末2が実行しているアプリケーションに応じたQoSを特定する。そして、グループ分け処理部126は、特定したQoSがしきい値よりも高い場合には、当該通信端末2を第1端末グループに振り分け、特定したQoSがしきい値以下の場合には、当該通信端末2を第2端末グループに振り分ける。
【0037】
さらにグループ分け処理部126は、送信能力判定部125での判定結果に基づいて、第2端末グループの複数の通信端末2を、送信能力が高い送信能力高端末グループと、送信能力が低い送信能力低端末グループとに区分する。グループ分け処理部126は、第2端末グループの通信端末2について、送信能力判定部125において送信能力が高いと判定されると、当該通信端末2を送信能力高端末グループに振り分け、送信能力判定部125において送信能力が低いと判定されると、当該通信端末2を送信能力低端末グループに振り分ける。
【0038】
無線リソース割り当て部122では、通信端末2が属する端末グループが考慮されて、当該通信端末2に対して使用SRS用上り無線リソースを割り当てられる。なお、通信端末2に対する使用SRS用上り無線リソースの割り当て方法について後で詳細に説明する。
【0039】
<TDDフレームの構成>
次に基地局1と通信端末2との間で使用されるTDDフレーム300について説明する。TDDフレーム300は、時間軸と周波数軸とからなる2次元で特定される。基地局1は、TDDフレーム300から、各通信端末2に対して割り当てる使用上り無線リソース、使用下り無線リソース及び使用SRS用上り無線リソースを決定する。
【0040】
図3はTDDフレーム300の構成を示す図である。図3に示されるように、TDDフレーム300は、2つのハーフフレーム301で構成されている。各ハーフフレーム301は、5個のサブフレーム302で構成されている。つまり、TDDフレーム300は10個のサブフレーム302で構成されている。サブフレーム302の時間長は1msである。以後、TDDフレーム300を構成する10個のサブフレーム302を、先頭から順に第0〜第9サブフレーム302とそれぞれ呼ぶことがある。
【0041】
各サブフレーム302は、時間方向に2つのスロット303を含んで構成されている。各スロット303は、7個のシンボル期間304で構成されている。したがって、各サブフレーム302は、時間方向に14個のシンボル期間304を含んでいる。このシンボル期間304は、OFDMA方式の下り通信では、OFDMシンボルの1シンボル期間となり、SC−FDMA方式の上り通信では、DFTS(Discrete Fourier Transform Spread)−OFDMシンボルの1シンボル期間となる。
【0042】
以上のように構成されるTDDフレーム300には、上り通信専用のサブフレーム302と下り通信専用のサブフレーム302とが含められる。以後、上り通信専用のサブフレーム302を「上りサブフレーム302」と呼び、下り通信専用のサブフレーム302を「下りサブフレーム302」と呼ぶ。通信端末2は、上りサブフレーム302で基地局1にデータを送信し、基地局1は、下りサブフレーム302で通信端末2にデータを送信する。
【0043】
LTEでは、TDDフレーム300において、周波数方向に180kHzの周波数帯域幅を含み、時間方向に7シンボル期間304(1スロット303)を含む領域(無線リソース)が「リソースブロック(RB)」と呼ばれている。リソースブロックには、12個のサブキャリアが含まれる。無線リソース割り当て部122は、通信端末2に対して使用上り無線リソースを割り当てる場合、あるいは通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる場合には、時間方向においては連続する2つのリソースブロック単位、つまり1つのサブフレーム302単位で、周波数方向においては1つのリソースブロック単位で、当該通信端末2に対して使用上り無線リソースあるいは使用下り無線リソースを割り当てる。以後、説明の便宜上、「RB」と言えば、周波数方向と時間方向で特定される本来の意味のリソースブロックを示すのではなく、リソースブロックの周波数帯域だけを示すものとする。
【0044】
また、LTEでは、TDDフレーム300の構成については、上りサブフレーム302と下りサブフレーム302の組み合わせが異なる7種類の構成が規定されている。LTEでは、0番〜6番までのTDDフレーム300の構成が規定されている。
【0045】
図4は、1番の構成を有するTDDフレーム300の構成を示す図である。図4では、「D」で示されるサブフレーム302は、下りサブフレーム302を意味し、「U」で示されるサブフレーム302は、上りサブフレーム302を意味している。また、「S」で示されるサブフレーム302は、無線通信システム100において、下り通信から上り通信への切り替えが行われるサブフレーム302を意味している。このサブフレーム302を「スペシャルサブフレーム302」と呼ぶ。
【0046】
図4に示されるように、1番の構成を有するTDDフレーム300では、第0,第4,第5及び第9サブフレーム302が下りサブフレーム302となっており、第2,第3,第7,第8サブフレーム302が上りサブフレーム302となっており、第1及び第6サブフレーム302がスペシャルサブフレーム302となっている。本実施の形態に係る無線通信システム100では、例えば、1番の構成を有するTDDフレーム300が使用されるものとする。
【0047】
図4に示されるように、スペシャルサブフレーム302は、時間方向に、下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351と、ガードタイム(GP)350と、上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352とを含んでいる。ガードタイム350は、下り通信から上り通信に切り替えるために必要な無信号期間であって、通信には使用されない。
【0048】
LTEでは、下りパイロットタイムスロット351、ガードタイム350及び上りパイロットタイムスロット352の時間長の組み合わせについて、複数種類の組み合わせが規定されている。図4の例では、下りパイロットタイムスロット351の時間長は11シンボル期間304に設定されており、上りパイロットタイムスロット352の時間長は2シンボル期間304に設定されている。
【0049】
本実施の形態に係る無線通信システム100では、下りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の下りパイロットタイムスロット351においても下り通信を行うことが可能である。また、本無線通信システム100では、上りサブフレーム302だけではなく、スペシャルサブフレーム302の上りパイロットタイムスロット352においても上り通信を行うことが可能である。
【0050】
本実施の形態では、基地局1は、下りパイロットタイムスロット351の各シンボル期間304においてデータを通信端末2に送信する。また、各通信端末2は、上りパイロットタイムスロット352の2つのシンボル期間304のうちのどちらか一方、あるいは両方においてSRSと呼ばれる既知信号を送信する。SRSは、複数のサブキャリアを変調する複数の複素シンボルで構成されている。本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352において送信されるSRSを、送信ウェイトを算出するために使用する。つまり、基地局1の通信部13は、通信端末2が上りパイロットタイムスロット352で送信するSRSに基づいてアレイアンテナ110の送信指向性の制御を行うことが可能となっている。以後、アレイアンテナ110の送信指向性の制御を「アレイ送信制御」と呼ぶ。
【0051】
なお、SRSは、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304においても送信可能である。つまり、通信端末2は、上りサブフレーム302において、最後のシンボル期間304を除く各シンボル期間304ではデータを送信可能であり、最後のシンボル期間304ではSRSを送信可能である。アレイ送信制御には、上りサブフレーム302の最後のシンボル期間304で送信されるSRSを使用することも可能であるが、本実施の形態では、上りパイロットタイムスロット352で送信されるSRSを使用するものとする。
【0052】
以後、特に断らない限り、SRSと言えば、上りパイロットタイムスロット352を使用して送信されるSRSを意味するものとする。また、通信端末2がSRSを送信することが可能な上りパイロットタイムスロット352に含まれる前方のシンボル期間304及び後方のシンボル期間304を「第1SRS用上り通信期間370a」及び「第2SRS用上り通信期間370b」とそれぞれ呼ぶ。また、第1SRS用上り通信期間370aと第2SRS用上り通信期間370bを特に区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り通信期間」と呼ぶ。
【0053】
ここで、スペシャルサブフレーム302の第1SRS用上り通信期間370aの先頭から、その次のスペシャルサブフレーム302の第1SRS用上り通信期間370aの先頭までの期間を「単位期間360」と呼ぶ。通信端末2に対する使用下り無線リソース等の無線リソースの割り当ては、この単位期間360が基準となる。本無線通信システム100では、単位期間360が繰り返し現れることになる。
【0054】
本実施の形態では、基地局1と通信する各通信端末2は、無線リソース割り当て部122による使用SRS用上り無線リソースの割り当てによって、例えば、1つの単位期間360ごとに少なくとも1回SRSを送信する。つまり、基地局1と通信する各通信端末2は、各単位期間360において、当該単位期間360に含まれる第1SRS用上り通信期間370a及び第2SRS用上り通信期間370bのうちのどちらか一方、あるいは両方においてSRSを送信する。
【0055】
<SRS送信可能帯域の周波数ホッピング>
無線通信システム100では、通信端末2がSRSの送信に使用可能な周波数帯域450(以後、「SRS送信可能帯域450」と呼ぶ)が、1つの単位期間360ごとに周波数ホッピングするようになっている。図5はSRS送信可能帯域450が周波数ホッピングする様子を示す図である。
【0056】
図5に示されるように、SRS送信可能帯域450は、1つの単位期間360ごとに、システム帯域400において高周波側及び低周波側に交互に寄せて配置されるようになっている。したがって、各単位期間360においては、システム帯域400における高周波側端部あるいは低周波側端部がSRSの送信に使用することができない帯域となっている。以後、この帯域を「SRS送信不可帯域460」と呼ぶ。各基地局1は、SRS送信不可帯域460に含まれる周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースを使用SRS用上り無線リソースとして通信端末2に割り当てることはできない。
【0057】
なお、SRS送信不可帯域460は各基地局1において同一である。したがって、各単位期間360において、ある基地局1が通信端末2に対してSRSの送信用として割り当てることができないSRS送信不可帯域460と、その基地局1の周辺に位置する周辺基地局1が通信端末2に対してSRSの送信用として割り当てることができないSRS送信不可帯域460とは一致している。
【0058】
本実施の形態のように、システム帯域幅が10MHzの場合には、システム帯域400には、50個のRBが含まれる。この場合、SRS送信可能帯域450の帯域幅は、40個のRB分の周波数帯域幅となり、SRS送信不可帯域の帯域幅は10個のRB分の周波数帯域幅となる。以後、x個のRB分の周波数帯域幅を「xRB」と呼ぶ。
【0059】
<SRSの構成>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、“transmissionComb”と呼ばれるパラメータkTCで識別される2種類のSRSが規定されている。各通信端末2は、この2種類のSRSのうちのどちらか一方のSRSを、第1SRS用上り通信期間370a及び第2SRS用上り通信期間370bの少なくとも一方で送信する。
【0060】
パラメータkTCは“0”あるいは“1”の値をとることが可能である。パラメータkTC=0で特定されるSRS(以後、「SRS0」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、連続的に配置されているのではなく、櫛歯状に配置されている。言い換えれば、SRS0のキャリア周波数は周波数方向において櫛歯状に配置されている。同様にして、パラメータkTC=1で特定されるSRS(以後、「SRS1」と呼ぶ)の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において櫛歯状に配置されている。そして、SRS0とSRS1とが同じ周波数帯域で送信される場合には、当該SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0と、当該SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において交互に配置される。したがって、SRS0のキャリア周波数とSRS1のキャリア周波数とは周波数方向において互いに重なることはない。
【0061】
図6は、ある周波数帯域470において、SRS0とSRS1との両方が送信される様子を示している。図6に示されるように、SRS0の送信に使用される複数のサブキャリアSC0は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。同様に、SRS1の送信に使用される複数のサブキャリアSC1は、周波数方向において、1サブキャリア置きに配置されている。そして、同じ周波数帯域470に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは、周波数方向において交互に配置されている。
【0062】
このように、1つの通信端末2がSRSの送信に使用する複数のサブキャリアは周波数方向において櫛歯状に配置されていることから、当該通信端末2がSRSの送信に使用する周波数帯域での複数のサブキャリアの半分がSRSの送信に使用される。そして、同じ周波数帯域に含まれる、複数のサブキャリアSC0と複数のサブキャリアSC1とは交互に配置されることから、SRS0を送信する通信端末2と、SRS1を送信する通信端末2とは、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域を使用することができる。基地局1側から見れば、基地局1は、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域で送信されるSRS0及びSRS1を区別することができる。
【0063】
さらに、本無線通信システム100においては、SRSを構成する複数の複素シンボルから成る符号パターンが8種類規定されている。この8種類の符号パターンには、互いに直交する8種類の符号系列がそれぞれ採用されている。通信端末2は、8種類の符号パターンのいずれか一つをSRSとして送信する。
【0064】
SRSにおいては、互いに直交する8種類の符号系列が採用された8種類の符号パターンが規定されていることから、最大で8つの通信端末2が、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域を用いてSRS0を送信することが可能である。さらに、最大で8つの通信端末2が、同じSRS用上り通信期間において同じ周波数帯域を用いてSRS1を送信することが可能である。
【0065】
このように、SRS0及びSRS1のそれぞれは、同じ周波数帯域で多重することが可能であるが、本実施の形態では多重しないものとする。
【0066】
以後、第1SRS用上り通信期間370aと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第1SRS用上り無線リソース500a」と呼ぶ。また、第2SRS用上り通信期間370bと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS0の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC0とで特定される上り無線リソースを「第2SRS用上り無線リソース500b」と呼ぶ。また、第2SRS用上り通信期間370bと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS1の送信にすることが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特性される上り無線リソースを「第3SRS用上り無線リソース500c」と呼ぶ。そして、第1SRS用上り通信期間370aと、SRS送信可能帯域450に含まれる、SRS1の送信に使用することが可能な櫛歯状の複数のサブキャリアSC1とで特定される上り無線リソースを「第4SRS用上り無線リソース500d」と呼ぶ。
【0067】
図7は、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b、第3SRS用上り無線リソース500c及び第4SRS用上り無線リソース500dを示す図である。図7に示されるように、同一の単位期間360に含まれる、第1SRS用上り無線リソース500a、第2SRS用上り無線リソース500b、第3SRS用上り無線リソース500c及び第4SRS用上り無線リソース500dは、時間方向及び周波数方向の少なくとも一方で互いに異なっている。以後、これらの上り無線リソースを区別する必要がない場合には、それぞれを「SRS用上り無線リソース」と呼ぶ。
【0068】
<SRSの送信周波数帯域の周波数ホッピング>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域を、SRS送信可能帯域450内において周波数ホッピングさせることができる。また、本無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域幅は変更可能となっている。本無線通信システム100では、SRSの送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、40RB、20RB及び4RBの3種類の帯域幅が定められている。無線リソース割り当て部122は、この3種類の帯域幅のうち、20RBと、最小の帯域幅である4RBとの2種類だけを使用する。
【0069】
図8は、端末番号1の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480aと端末番号2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480bとがSRS送信可能帯域450内で周波数ホッピングする様子の一例を示す図である。図8には連続する複数の単位期間360における各サブフレーム302が示されている。図8では横方向が時間方向を示し、縦方向が周波数方向を示している。また図8の一番左に示されている0〜49の数字は、周波数方向に並ぶ50個のRBの番号を示している。RBの番号が大きいほど、当該RBが大きくなっている。また図8に示される「SP」はスペシャルサブフレーム302を意味し、「Up」は上りパイロットタイムスロット(UpPTS)352を意味し、「Dw」は下りパイロットタイムスロット(DwPTS)351を意味している。また、図8に示される「UL」及び「DL」は、上りサブフレーム302及び下りサブフレーム302をそれぞれ意味している。
【0070】
図8の例では、端末番号1及び2の通信端末2のそれぞれは、各単位期間360において1回SRSを送信している。また、端末番号1及び2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅のそれぞれは20RBに設定されている。図8の例では、端末番号1の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480aと、端末番号2の通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域480bとは、1つの単位期間360ごとに、SRS送信可能帯域450において低周波側及び高周波側に交互に寄せて配置されている。
【0071】
より詳細には、送信周波数帯域480aは、SRS送信可能帯域450が高周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において低周波側に寄せて配置され、SRS送信可能帯域450が低周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において高周波側に寄せて配置されている。これにより、送信周波数帯域480aは、システム帯域の中央部における30RBの周波数帯域(10番〜39番のRB)内において周波数ホッピングする。したがって、システム帯域の低周波側の10RBの端部及び高周波側の10RBの端部のそれぞれでは、端末番号1の通信端末2からSRSが送信されない。
【0072】
これに対して、送信周波数帯域480bは、SRS送信可能帯域450が高周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において高周波側に寄せて配置され、SRS送信可能帯域450が低周波側に寄せて配置されている単位期間360では、SRS送信可能帯域450において低周波側に寄せて配置されている。これにより、送信周波数帯域480bは、システム帯域の低周波側及び高周波側に交互に寄せて配置される。したがって、システム帯域の中央部の10RBの周波数帯域(20番〜29番のRB)では、端末番号2の通信端末2からSRSが送信されない。
【0073】
本実施の形態に係る無線リソース割り当て部122は、基地局1が通信する各通信端末2についてのSRSの送信態様を決定する。具体的には、無線リソース割り当て部122は、各通信端末2について、使用するSRS用上り通信期間、SRSパラメータkTCの値、SRSの送信周波数帯域幅、SRSの送信周波数帯域の周波数ホッピングの態様などを決定する。これにより、基地局1が通信する各通信端末2に対して使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる。
【0074】
送信信号生成部120は、無線リソース割り当て部122が通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースを当該通信端末2に通知するための制御データ、言い換えれば、無線リソース割り当て部122で決定された、当該通信端末2が送信するSRSの送信態様を当該通信端末2に通知するための制御データ(以後、「SRS制御データ」と呼ぶ)を含む送信信号を生成する。この送信信号は、下りサブフレーム302が使用されて通信部13から当該通信端末2に送信される。これにより、各通信端末2にはSRS制御データが送信され、各通信端末2は、SRSを送信する際に使用する上り無線リソースを知ることができる。言い換えれば、各通信端末2は、自身が送信するSRSの送信態様を知ることができる。各通信端末2は、基地局1から通知された使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信する。
【0075】
なお、SRS制御データには、SRSの送信開始を指示するための送信開始データあるいはSRSの送信停止を指示するための送信停止データも含められる。SRSを送信していない通信端末2が、送信開始データを含むSRS制御データを受信すると、当該SRS制御データで通知される使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSの送信を開始する。また、SRSを送信している通信端末2が、送信停止データを含むSRS制御データを受信すると、SRSの送信を停止する。通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースを変更する際には、新たな使用SRS用上り無線リソースを通知するためのSRS制御データが当該通信端末2に通知される。SRS制御データは、LTEでは、“RRCConnectionReconfiguration message”と呼ばれている。
【0076】
<SRSの送信を制御する際の通信システムの基本動作>
次に、通信端末2が新たなSRS制御データを受信してから、当該通信端末2が新たなSRS制御信号に基づいてSRSを送信するまでの無線通信システム100の基本動作について説明する。図9は当該動作を示す図である。以後、説明の対象となる通信端末2を「対象通信端末2」と呼ぶことがある。
【0077】
図9に示されるように、例えば、(N−2)番目のTDDフレーム300の末尾に位置する下りサブフレーム302において、基地局1から対象通信端末2に向けて新たなSRS制御信号が送信されると、その次の(N−1)番目のTDDフレーム300の先頭から8番目の上りサブフレーム302において、対象通信端末2は、新たなSRS制御信号を正常に受信した旨を通知するための応答信号を基地局1に送信する。この応答信号は“RRCConnectionReconfigurationComplete message”と呼ばれている。これにより、対象通信端末2では、使用SRS用上り無線リソースが新たに設定される。
【0078】
応答信号を送信した対象通信端末2は、次のN番目のTDDフレーム300以降において、単位期間360ごとに、(N−2)番目のTDDフレーム300で受信した新たなSRS制御信号によって通知された使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信する。なお、対象通信端末2は、新たなSRS制御信号によって通知される使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信するまでは、その前に受信したSRS制御信号によって通知される使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信することになる。
【0079】
このように、基地局1が、あるTDDフレーム300において、対象通信端末2に対して新たなSRS制御信号を送信すると、そのTDDフレーム300の2つの後のTDDフレーム300以降において、対象通信端末2は、当該新たなSRS制御信号に基づいたSRSの送信を行うようになる。したがって、基地局1が、対象通信端末2にSRSの送信開始を指示する際、あるいは対象通信端末2にSRSの送信態様の変更を指示する際には、対象通信端末2にSRS制御データを送信してから、そのSRS制御データに基づいて対象通信端末2から送信されるSRSを受信するまでに、10ms以上の時間がかかることになる。
【0080】
<アレイ送信制御について>
本実施の形態に係るアレイ送信制御では、通信部13が通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、当該使用下り無線リソースの周波数帯域で当該通信端末2が送信するSRSに基づいて送信ウェイトが求められる。
【0081】
また、本実施の形態に係るアレイ送信制御では、ヌルステアリング及びビームフォーミングが同時に行われる。通信部13では、例えば、RLS(Recursive Least-Squares)アルゴリズム等の逐次更新アルゴリズムを用いて受信ウェイトを複数回更新し、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトを求めることによって、ヌルステアリングとビームフォーミングの両方を同時に行う。
【0082】
また、本実施の形態に係るアレイ送信制御では、送信ウェイトが、例えば、1つのRBごとに求められる。例えば、通信端末2に割り当てられた使用下り無線リソースの周波数帯域が4つのRBで構成されているとすると、当該通信端末2についてのアレイ送信制御では、当該4つのRBのそれぞれについて送信ウェイトが求められる。使用下り無線リソースの周波数帯域に含まれるある1つのRBを用いて通信端末2に送信される信号に対して適用する送信ウェイトは、当該1つのRBで当該通信端末2が送信するSRSを構成する複数の複素シンボルに基づいて受信ウェイトが複数回更新されて、更新終了後の受信ウェイトに基づいて送信ウェイトが求められる。
【0083】
<下り無線リソースとSRS用上り無線リソースとの対応付け>
本実施の形態に係る無線通信システム100では、下り無線リソースとSRS用上り無線リソースとに関して、SRSに基づいたヌルステアリング及びビームフォーミングのための対応付けが定められている。各基地局1が、この対応付けに基づいて、SRSを送信する通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てるとともにアレイ送信制御を行うことによって、各基地局1はヌルステアリング及びビームフォーミングを適切に行うことが可能となる。以後、この対応付けを「アレイ制御用リソース対応付け」と呼ぶ。以下に、アレイ制御用リソース対応付けについて説明する。
【0084】
なお、以後、単位期間360に含まれる2つの下りサブフレーム302について、先の下りサブフレーム302を「第1下りサブフレーム302a」と呼び、後の下りサブフレーム302を「第2下りサブフレーム302b」と呼ぶ。また、単位期間360に含まれる、スペシャルサブフレーム302における下りパイロットタイムスロット351を含む部分については、下りサブフレーム302ではないが、便宜上、「第3下りサブフレーム302c」と呼ぶ。以後、下りサブフレーム302には、この第3下りサブフレーム302cも含まれるものとする。また、説明の対象の単位期間360を「対象単位期間360」と呼ぶ。
【0085】
図10は、対象単位期間360での下り無線リソースとSRS用上り無線リソースとの対応付けを説明するための図である。以下の説明は各単位期間360について言えることである。
【0086】
本実施の形態では、対象単位期間360の第1下りサブフレーム302aのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第1SRS用上り無線リソース500aにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。つまり、対象単位期間360での下り無線リソース600aに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおいて、当該下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域を有する上り無線リソースと対応付けられる。
【0087】
また、対象単位期間360の第2下りサブフレーム302bのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600bに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第2SRS用上り無線リソース500bにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。
【0088】
そして、対象単位期間360の第3下りサブフレーム302cのうち、SRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600cに含まれる下り無線リソースは、対象単位期間360の第3SRS用上り無線リソース500cにおける、当該下り無線リソースの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソースと対応付けられる。
【0089】
各基地局1では、このようなアレイ制御用リソース対応付けに基づいて、通信端末2に対して使用下り無線リソースが割り当てられるとともにアレイ送信制御が行われる。
【0090】
具体的には、無線リソース割り当て部122は、対象単位期間360の下り無線リソースから対象通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる際には、対象通信端末2が当該使用下り無線リソースに対応付けられた上り無線リソースを用いてSRSを送信しているような当該使用下り無線リソース(以後、「SRS対応使用下り無線リソース」と呼ぶ)だけをできる限り割り当てるようにする。言い換えれば、無線リソース割り当て部122は、対象単位期間360の下り無線リソースから対象通信端末2に対して使用下り無線リソースを割り当てる際には、対象単位期間360において対象通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースを使用下り無線リソースとしてできる限り割り当てるようにする。
【0091】
ただし、対象単位期間360において対象通信端末2と下り通信を行う際に、SRS対応使用下り無線リソースだけでは足り無い場合には、無線リソース割り当て部122は、対象通信端末2に対して、それに対応付けられた上り無線リソースを用いて対象通信端末2がSRSを送信していないような使用下り無線リソースあるいはSRS送信不可帯域460の少なくとも一部を周波数方向に含む使用下り無線リソース(以後、両方の当該使用下り無線リソースを総称して「SRS非対応使用下り無線リソース」と呼ぶ)を対象単位期間360の下り無線リソースから割り当てることがある。言い換えれば、無線リソース割り当て部122は、対象単位期間360において対象通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースに対応付けられていない下り無線リソースを使用下り無線リソースとして割り当てることがある。
【0092】
このように、本実施の形態では、無線リソース割り当て部122は、通信端末2に対して、原則、SRS対応使用下り無線リソースだけを割り当てるようになっており、例外的に、SRS非対応使用下り無線リソースも割り当てることがある。
【0093】
また、各基地局1では、通信部13は、無線リソース割り当て部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合には、当該SRS対応使用下り無線リソースに対応付けられた上り無線リソースを用いて対象通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0094】
一方で、各基地局1では、通信部13は、無線リソース割り当て部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合に、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いて対象通信端末2がSRSを送信しているときには、当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。また、各基地局1では、通信部13は、無線リソース割り当て部122において対象通信端末2に割り当てられたSRS非対応使用下り無線リソースを用いて対象通信端末2と下り通信を行う場合に、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いて対象通信端末2がSRSを送信していないときには、アレイ送信制御を行わない。つまり、このときには、通信部13はオムニ送信を行う。
【0095】
上述のように、SRSの送信周波数帯域は、SRS送信可能帯域450内において周波数ホッピングすることから(図8参照)、対象通信端末2に対して、対象単位期間360の下り無線リソースからSRS非対応使用下り無線リソースを割り当てる場合に、対象通信端末2は、対象単位期間360の前において、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域を用いてSRSを送信していることがある。このような場合には、通信部13は当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0096】
なお、基地局1に接続された通信端末2であって、それに転送するデータが発生していない、あるいは転送するデータがあっても空きの下り無線リソースが無い等の理由で、使用下り無線リソースが割り当てられない通信端末2に対しては、第4SRS用上り無線リソース500dから使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる。つまり、基地局1と下り通信を行わない通信端末2は、第4SRS用上り無線リソース500dに含まれる上り無線リソースを用いてSRSを送信する。
【0097】
図11は、対象単位期間360での端末番号1〜18の通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図11の例では、端末番号1〜15の通信端末2のそれぞれに対して使用下り無線リソースだけが割り当てられている。
【0098】
具体的には、第1SRS用上り無線リソース500aに含まれる、20RBの使用上り無線リソースを用いてSRSを送信する端末番号1及び2の通信端末2のそれぞれに対しては、第1下りサブフレーム302aに含まれる使用下り無線リソースが割り当てられている。
【0099】
第2SRS用上り無線リソース500aに含まれる、20RBの使用上り無線リソースを用いてSRSを送信する端末番号3の通信端末2に対しては、第2下りサブフレーム302bに含まれる使用下り無線リソースが割り当てられている。
【0100】
第2SRS用上り無線リソース500aに含まれる、4RBの使用上り無線リソースを用いてSRSを送信する端末番号4〜8の通信端末2のそれぞれに対しては、第2下りサブフレーム302bに含まれる使用下り無線リソースが割り当てられている。
【0101】
第3SRS用上り無線リソース500bに含まれる、4RBの使用上り無線リソースを用いてSRSを送信する端末番号9〜15の通信端末2のそれぞれに対しては、第3下りサブフレーム302bに含まれる使用下り無線リソースが割り当てられている。
【0102】
また、使用下り無線リソースが割り当てられない端末番号16〜18のそれぞれに対しては、第4SRS用上り無線リソース500dに含まれる使用SRS用上り無線リソースが割り当てられている。
【0103】
本無線通信システム100では、各基地局1が通信端末2との下り通信にSRS対応使用下り無線リソースを用いることによって、各基地局1は適切にビームフォーミング及びヌルステアリングを行うことができる。以下にこの点について説明する。
【0104】
図12,13は、基地局1aとその周辺に位置する基地局1bがSRS対応使用下り無線リソースを用いることによって、基地局1a,1bのそれぞれにおいてビームフォーミング及びヌルステアリングが適切に行われる点を説明するための図である。図12には、対象単位期間360における、基地局1a,1bでのSRS対応使用下り無線リソースの割り当て例が示されている。また図13には、対象単位期間360における、基地局1a,1bでの送信指向性に関するビーム及びヌルが示されている。
【0105】
図12,13の例では、対象単位期間360において、基地局1aは、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行っており、基地局1bは、SRS対応使用下り無線リソース650aと同じSRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号50の通信端末2と下り通信を行っている。したがって、基地局1aが端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際に、その周辺に位置する基地局1bと下り通信する端末番号50の通信端末2に対して干渉を与える可能性がある。同様に、基地局1bが端末番号50の通信端末2と下り通信を行う際に、その周辺に位置する基地局1aが下り通信する端末番号1の通信端末2に対して干渉を与える可能性がある。
【0106】
また図12,13の例では、SRS対応使用下り無線リソース650aは、第1下りサブフレーム302aにおける、対象単位期間360でのSRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aから、端末番号1の通信端末2に対して割り当てられている。同様に、SRS対応使用下り無線リソース650bは、第1下りサブフレーム302aにおける、対象単位期間360でのSRS送信可能帯域450を周波数方向に含む下り無線リソース600aから、端末番号50の通信端末2に対して割り当てられている。
【0107】
基地局1aはSRS対応使用下り無線リソース650aを用いて下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650aに対応付けられた上り無線リソース、つまり、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおける、SRS対応使用下り無線リソース650aの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソース660aを用いて端末番号1の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。また、基地局1bはSRS対応使用下り無線リソース650bを用いて下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650bに対応付けられた上り無線リソース、つまり、対象単位期間360での第1SRS用上り無線リソース500aにおける、SRS対応使用下り無線リソース650bの周波数帯域を周波数方向に含む上り無線リソース660bを用いて端末番号50の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行う。
【0108】
このように、基地局1aは、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2と下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650aの周波数帯域と一致する周波数帯域で端末番号1の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行っている。したがって、図13に示されるように、基地局1aでの送信指向性に関するビーム700aは、通信対象の端末番号1の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1aでは適切にビームフォーミングが行われる。
【0109】
同様に、基地局1bは、SRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号50の通信端末2と下り通信を行う際には、SRS対応使用下り無線リソース650bの周波数帯域と一致する周波数帯域で端末番号50の通信端末2が送信するSRSに基づいてアレイ送信制御を行っている。したがって、基地局1bでの送信指向性に関するビーム700bは、通信対象の端末番号50の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1bでは適切にビームフォーミングが行われる。
【0110】
また、本例のように、基地局1aと、その周辺に位置する基地局1bとが、同じSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う際には、基地局1aがアレイ送信制御を行う際に使用するSRSの送信に使用される上り無線リソース660aと、基地局1bがアレイ送信制御を行う際に使用するSRSの送信に使用される上り無線リソース660bとは一致するようになる。したがって、基地局1aが端末番号1の通信端末2から上り無線リソース660aで受信するSRSには、基地局1bが通信する端末番号50の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。よって、基地局1aが、上り無線リソース660aにおいて端末番号1の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、SRS対応使用下り無線リソース650aを用いて端末番号1の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図13に示されるように、基地局1aでの送信指向性に関するヌル701aは、干渉を与えたくない、基地局1bと通信する端末番号50の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1aでは適切にヌルステアリングが行われる。
【0111】
基地局1b側から見れば、基地局1bが端末番号50の通信端末2から上り無線リソース660bで受信するSRSには、基地局1aが通信する端末番号1の通信端末2が送信するSRSが干渉波成分として含まれるようになる。よって、基地局1bが、上り無線リソース660bにおいて端末番号50の通信端末2から受信するSRSに基づいて送信ウェイトを算出し、当該送信ウェイトを、SRS対応使用下り無線リソース650bを用いて端末番号50の通信端末2に送信する送信信号に設定すると、図13に示されるように、基地局1bでの送信指向性に関するヌル701bは、干渉を与えたくない、基地局1aと通信する端末番号1の通信端末2に対して向くようになる。よって、基地局1bでは適切にヌルステアリングが行われる。
【0112】
このように、基地局1とその周辺に位置する周辺基地局1とが、同じSRS対応使用下り無線リソースを用いて下り通信を行う場合に、当該基地局1及び当該周辺基地局1のそれぞれにおいて適切にビームフォーミング及びヌルステアリングが行われるようになる。
【0113】
これに対して、基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、ビームフォーミングは適切に行われることはあっても、ヌルステアリングを適切に行うことができない。
【0114】
基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合であって、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域で当該通信端末2がSRSを送信している場合には、基地局1は当該SRSに基づいてアレイ送信制御を行う。したがって、この場合には、基地局1のアレイアンテナ110の送信指向性に関するビームは当該通信端末2に向くようになって、SRS対応使用下り無線リソースを用いる場合と同様にビームフォーミングを適切に行うことができる。
【0115】
一方で、基地局1とその周辺に位置する周辺基地局1とが同じ使用下り無線リソースを用いて下り通信する場合であって、基地局1ではSRS非対応使用下り無線リソースが使用されるとともに、当該SRS非対応使用下り無線リソースの周波数帯域と同じ周波数帯域において基地局1での通信対象の通信端末2がSRSを送信し、周辺基地局1ではSRS対応使用下り無線リソースが使用される場合には、上述の説明から理解できるように、基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSと、周辺基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSとは、互いに異なった上り無線リソースを用いて送信されることになる。よって、基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSには、周辺基地局1が通信する通信端末2からのSRSは干渉波成分として含まれず、周辺基地局1がアレイ送信制御に使用するSRSには、基地局1が通信する通信端末2からのSRSは干渉波成分として含まれないことになる。したがって、基地局1はアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを、周辺基地局1が通信する通信端末2に向けることはできず、周辺基地局1はアレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルを、基地局1が通信する通信端末2に向けることはできない。その結果、基地局1及び周辺基地局1のそれぞれにおいて適切にヌルステアリングを行うことができなくなる。
【0116】
このように、基地局1が通信端末2との下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを用いる場合には、ヌルステアリングを適切に行うことができないことから、上述のように、各基地局1では、通信端末2に対してできる限りSRS対応使用下り無線リソースを割り当てるようにしている。
【0117】
<通信端末のグループ分けについて>
本実施の形態では、QoSが高いアプリケーションは、発生する転送データ量が小さく(低トラヒック)、かつ転送データの許容遅延時間が小さく、かつ転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションとなっている。一方で、QoSが低いアプリケーションは、発生する転送データ量が大きく(高トラヒック)、かつ転送データの許容遅延時間が大きく、かつ転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションとなっている。
【0118】
図14は、アプリケーションでの転送データの許容遅延時間及び許容誤り率を示す図である。図15〜19は、アプリケーションについてのトラフィックモデルを示している。トラフィックモデルは、アプリケーションで発生する転送データ量の時間変化を示している。図15〜19では、横軸に時間が、縦軸に転送データ量が示されている。
【0119】
本実施の形態では、QoSが高いアプリケーション(QoSが高い通信サービス)として、VoIP(Voice over Internet Protocol)が利用されるアプリケーション(以後、単に「VoIP」と呼ぶことがある)、リアルタイムゲームのアプリケーション(以後、「Game」と呼ぶことがある)、リアルタイムビデオのアプリケーション(以後、「Video」と呼ぶことがある)が存在する。
【0120】
一方で、QoSが低いアプリケーション(QoSが低い通信サービス)として、HTTP(Hyper Text Transfer Protocol)が利用されるアプリケーション(以後、単に「HTTP」と呼ぶことがある)及びFTP(File Transfer Protocol)が利用されるアプリケーション(以後、単に「FTP」と呼ぶことがある)がある。
【0121】
図15〜19には、VoIP、Game、Video、HTTP及びFTPのトラヒックモデルがそれぞれ示されている。
【0122】
図14に示されるように、QoSが高いアプリケーションであるVoIPでは、許容遅延時間が例えば100msとなっており、許容誤り率が例えば10-2となっている。また、Gameでは、許容遅延時間が例えば50msとなっており、許容データ誤り率が例えば10-3となっている。そして、Videoでは、許容遅延時間が例えば150msとなっており、許容データ誤り率が例えば10-3となっている。
【0123】
一方で、QoSが低いアプリケーションであるHTTP及びFTPのそれぞれでは、許容遅延時間が例えば300msとなっており、許容データ誤り率が例えば10-6となっている。
【0124】
また図15に示されるように、QoSが高いアプリケーションであるVoIPでは、例えば、20ms程度に1回、40バイト程度のデータのデータ転送が発生する。また図16に示されるように、Gameでは、例えば、58ms程度に1回、140バイト程度のデータのデータ転送が発生する。そして、図17に示されるように、Videoでは、例えば、12.5ms程度に1回、50バイト程度のデータのデータ転送が発生する。
【0125】
一方で、QoSが低いアプリケーションであるHTTPでは、図18に示されるように、例えば、30秒程度に1回、55キロバイト程度のデータのデータ転送が発生する。また図19に示されるように、FTPでは、例えば、3分程度に1回、2メガバイト程度のデータのデータ転送が発生する。
【0126】
このように、VoIP、Game及びVideoなどのQoSが高いアプリケーションでは、発生する転送データ量が小さく、かつ転送データの許容遅延時間が小さく、かつ転送データの許容誤り率が大きくなっており、HTTP及びFTPなどのQoSが低いアプリケーションでは、発生する転送データ量が大きく、かつ転送データの許容遅延時間が大きく、かつ転送データの許容誤り率が小さくなっている。
【0127】
グループ分け処理部126は、通信端末2が実行するアプリケーションに応じたQoSがしきい値よりも高い場合には、当該通信端末2は、発生する転送データ量が小さく、かつ転送データの許容遅延時間が小さく、かつ転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行していると判定して、当該通信端末2を第1端末グループに振り分ける。そして、通信端末2が実行するアプリケーションに応じたQoSがしきい値以下の場合には、当該通信端末2は、発生する転送データ量が大きく、かつ転送データの許容遅延時間が大きく、かつ転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行していると判定して、当該通信端末2を第2端末グループに振り分ける。つまり、グループ分け処理部126は、通信部13が通信する複数の通信端末2(基地局1に接続されている複数の通信端末2)を、発生する転送データ量が小さく、かつ転送データの許容遅延時間が小さく、かつ転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行する第1端末グループと、発生する転送データ量が大きく、かつ転送データの許容遅延時間が大きく、かつ転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分している。第1端末グループには、VoIPが利用されるアプリケーションを実行する通信端末2、リアルタイムゲームのアプリケーションを実行する通信端末2及びリアルタイムビデオのアプリケーションを実行する通信端末2が含まれ、第2端末グループには、HTTPが利用されるアプリケーションを実行する通信端末2及びFTPが利用されるアプリケーションを実行する通信端末2が含まれる。
【0128】
以後、発生する転送データ量が小さく、かつ転送データの許容遅延時間が小さく、かつ転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを「第1アプリケーション」と呼ぶことがある。また、発生する転送データ量が大きく、かつ転送データの許容遅延時間が大きく、かつ転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを「第2アプリケーション」と呼ぶことがある。
【0129】
<使用SRS用上り無線リソースの割り当て方法の詳細>
本実施の形態では、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2に対して、第3SRS用上り無線リソース500cから、使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。そして、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を4RBに設定する。以後、特に断らない限り、「第1端末グループの通信端末2」と言えば、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2を意味し、使用下り無線リソースを割り当てない第1端末グループの通信端末2は含まないものとする。
【0130】
一方で、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第2端末グループの通信端末2に対して、第1SRS用上り無線リソース500a及び第2SRS用上り無線リソース500bから成る上り無線リソースから、使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。
【0131】
具体的には、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第2端末グループの通信端末2のうち、送信能力低端末グループの通信端末2に対しては、40RBの周波数帯域幅を有する第2SRS用上り無線リソース500bのうちの20RB分の上り無線リソースから使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。以後、当該20RB分の上り無線リソースを「送信能力低端末用上り無線リソース」と呼ぶ。そして、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第2端末グループの通信端末2のうち、送信能力高端末グループの通信端末2に対しては、第1SRS用上り無線リソース500aと、第2SRS用上り無線リソース500bのうち送信能力低端末用上り無線リソース以外の部分とから成る上り無線リソースから、使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。以後、第1SRS用上り無線リソース500aと、第2SRS用上り無線リソース500bのうち送信能力低端末用上り無線リソース以外の部分とから成る上り無線リソースを「送信能力高端末用上り無線リソース」と呼ぶ。
【0132】
また無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる第2端末グループの通信端末2のうち、送信能力高端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を20RBに設定し、送信能力低端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を4RBに設定する。以後、特に断らない限り、「第2端末グループの通信端末2」と言えば、使用下り無線リソースを割り当てる第2端末グループの通信端末2を意味し、使用下り無線リソースを割り当てない第2端末グループの通信端末2は含まないものとする。
【0133】
ここで、SRSの送信周波数帯域幅が大きくなるほど、通信端末2が当該SRSを送信する際に必要な送信電力が大きくなる。したがって、送信能力が低い通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を20RBに設定すると、当該通信端末2は、SRSを適切に送信できない可能性がある。つまり、当該通信端末2が送信するSRSを基地局1が適切に受信できない可能性がある。
【0134】
そこで、本実施の形態では、送信能力が低い通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を、無線通信システム100において設定可能な3種類の帯域幅のうちの最小の帯域幅、つまり4RBに設定することによって、当該通信端末2から送信されるSRSを基地局1が適切に受信できるようにしている。
【0135】
また無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てない通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅を4RBに設定する。
【0136】
以後、第1端末グループの通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソース、つまり第3SRS用上り無線リソースを「第1端末用上り無線リソース」と呼び、第2端末グループの通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソース、つまり第1SRS用上り無線リソース500a及び第2SRS用上り無線リソース500bから成る上り無線リソースを「第2端末用上り無線リソース」と呼ぶことがある。第2端末用上り無線リソースは、送信能力低端末用上り無線リソースと送信能力高端末用上り無線リソースとで構成されている。
【0137】
上述の図11の例では、端末番号1〜8の通信端末2が、第2端末グループの通信端末2である。そして、端末番号1〜8の通信端末2のうち、端末番号1〜3の通信端末2が送信能力高端末グループの通信端末であって、端末番号4〜8の通信端末2が送信能力低端末グループの通信端末である。また、端末番号9〜15の通信端末2が、第1端末グループの通信端末2である。なお、第4SRS用上り無線リソース500dから使用SRS用上り無線リソースが割り当てられている端末番号16〜18の通信端末2に対しては、使用下り無線リソースは割り当てられない。
【0138】
以上のように、第1端末グループの通信端末2についてのSRSの送信周波数帯域幅が4RBに設定され、第1端末グループの通信端末2に対しては、40RBの周波数帯域幅を有する第1端末用上り無線リソース(第3SRS用上り無線リソース500c)から使用SRS用上り無線リソースが割り当てられることから、第1端末用上り無線リソースを用いて、最大で10台分の通信端末2についてのSRSを送信することが可能である。つまり、第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数が10台となる。
【0139】
これに対して、第2端末用上り無線リソースについては、当該第2端末用上り無線リソースを用いて、最大で8台分の通信端末2についてのSRSを送信することが可能である。第2端末用上り無線リソースのうち送信能力高端末用上り無線リソースは、40RBの周波数帯域幅を有する第1SRS用上り無線リソース500aと、第2SRS用上り無線リソース500bのうち20RBの周波数帯域幅を有する上り無線リソースとから構成されており、第2端末グループの通信端末2のうち送信能力高端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅は20RBに設定されることから、送信能力高端末用上り無線リソースを用いて、最大で3台分の通信端末2(図11の例では、端末番号1〜3の通信端末2)についてのSRSを送信することが可能である。そして、第2端末用上り無線リソースのうち送信能力低端末用上り無線リソースは、第2SRS用上り無線リソース500bのうち20RBの周波数帯域幅を有する上り無線リソースで構成されており、第2端末グループの通信端末2のうち送信能力低端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅は4RBに設定されることから、送信能力低端末用上り無線リソースを用いて、最大で5台分の通信端末2(図11の例では、端末番号4〜8の通信端末2)についてのSRSを送信することが可能である。よって、第2端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は8台となる。
【0140】
次に基地局1に接続する通信端末2に対して使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる際の当該基地局1の一連の動作について説明する。図20は当該動作を示すフローチャートである。図20に示される一連の処理は、基地局1と接続する新たな通信端末2が発生するたびに行われるとともに、基地局1と接続されなくなった通信端末2が発生するたびに行われる。
【0141】
図20に示されるように、ステップs1において、グループ分け処理部126は、基地局1と接続する複数の通信端末2を、上述のようにして、それぞれのQoSに基づいて、第1端末グループと第2端末グループとに区分する。
【0142】
次にステップs2において、無線リソース割り当て部122は、第1端末グループの各通信端末2について、転送データの発生の有無、プロポーショナルフェアネス(PF)及びQoS等に基づいて、使用下り無線リソースの割り当て優先度(以後、「下り割り当て優先度」と呼ぶことがある)を決定する。そして、無線リソース割り当て部122は、第1端末グループの各通信端末2についての下り割り当て優先度に基づいて、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2、つまり下り通信を行う第1端末グループの通信端末2を決定する。
【0143】
次にステップs3において、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースが割り当てられる第1端末グループの各通信端末2に対して、第1端末用上り無線リソース(第3SRS用上り無線リソース500c)から、4RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。ここで、第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は10台であることから、使用下り無線リソースが割り当てられる第1端末グループの通信端末2の台数は10台以下となる。
【0144】
次にステップs4において、グループ分け処理部126は、第2端末グループの複数の通信端末2を、上述のようにして、送信能力高端末グループと送信能力低端末グループとに区分する。
【0145】
次にステップs5において、無線リソース割り当て部122は、送信能力高端末グループの各通信端末2について、転送データの発生の有無、プロポーショナルフェアネス(PF)及びQoS等に基づいて下り割り当て優先度を決定する。そして、無線リソース割り当て部122は、送信能力高端末グループの各通信端末2についての下り割り当て優先度に基づいて、使用下り無線リソースを割り当てる送信能力高端末グループの通信端末2を決定する。同様にして、無線リソース割り当て部122は、送信能力低端末グループの各通信端末2について、転送データの発生の有無、プロポーショナルフェアネス(PF)及びQoS等に基づいて下り割り当て優先度を決定する。そして、無線リソース割り当て部122は、送信能力低端末グループの各通信端末2についての下り割り当て優先度に基づいて、使用下り無線リソースを割り当てる送信能力低端末グループの通信端末2を決定する。
【0146】
次にステップs6において、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる送信能力高端末グループの各通信端末2に対して、送信能力高端末用上り無線リソースから、20RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。ここで、送信能力高端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は3台であることから、使用下り無線リソースが割り当てられる送信能力高端末グループの通信端末2の台数は3台以下となる。
【0147】
次にステップs7において、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てる送信能力低端末グループの各通信端末2に対して、送信能力低端末用上り無線リソースから、4RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。送信能力低端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は5台であることから、使用下り無線リソースが割り当てられる送信能力低端末グループの通信端末2の台数は5台以下となる。
【0148】
次にステップs8において、無線リソース割り当て部122は、使用下り無線リソースを割り当てない各通信端末2に対して、第4SRS用上り無線リソース500dから、4RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースを割り当てる。
【0149】
以上のようにして、基地局1では、自身に接続する各通信端末2に対して使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる。
【0150】
なお、基地局1では、第1端末グループの各通信端末2についての下り割り当て優先度が更新されるようになっている。そして、基地局1では、更新された下り割り当て優先度に基づいて、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2が決定し直される。そして、基地局1では、決定し直された、使用下り無線リソースを割り当てる第1端末グループの通信端末2に対して、使用SRS用上り無線リソースが割り当てられる。このような処理が基地局1では定期的に行われる。送信能力高端末グループの通信端末2及び送信能力低端末グループの通信端末2についても同様である。
【0151】
以上のように、本実施の形態では、VoIP、Game及びVideoのように、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が使用する第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数(10台)は、HTTP及びFTPのように、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループの通信端末2が使用する第2端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数(8台)よりも多くなっている。このため、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する通信端末2に関して、より多くの台数の通信端末2にSRSを送信させることができる。よって、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する通信端末2が多い場合であっても、SRSを送信させる通信端末2を入れ替える必要はなく、この入れ替えに基づくデータの転送遅延の発生を抑制することができる。したがって、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する通信端末2へのデータ転送の遅延を小さくすることができる。その結果、基地局1では、通信端末2が実行するアプリケーションにおいて要求される転送データの許容遅延時間を容易に満たすことができ、基地局1の性能が向上する。以下に、この点について詳細に説明する。
【0152】
図21は、本実施の形態とは異なり、基地局1が第1端末グループの通信端末2に対して20RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースを第1端末用上り無線リソースから割り当てる場合の当該基地局1の動作を示す図である。以後、当該基地局1を「比較対象基地局1」と呼ぶ。図21の例では、比較対象基地局1に対して、第1端末グループの端末番号9〜11の通信端末2が接続されている。
【0153】
比較対象基地局1では、第1端末グループの通信端末2に対して20RBの周波数帯域幅を有する使用SRS用上り無線リソースが割り当てられるため、第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は2台となっており、第2端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数(8台)よりも少なくなっている。
【0154】
ここで、比較対象基地局1が、第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信する端末番号9,10の通信端末2と下り通信を行い、端末番号11の通信端末2と下り通信を行っていない場合において、(N−2)番目のTDDフレーム300の第9サブフレーム302(斜線で示されたサブフレーム302)において、端末番号11の通信端末2への転送データが発生し、端末番号11の通信端末2の下り割り当て優先度が、端末番号9の通信端末2の下り割り当て優先度よりも低いものの、端末番号10の通信端末2の下り割り当て優先度よりも高くなった場合を考える。
【0155】
この場合には、端末番号9,11の通信端末2に対して使用下り無線リソースが割り当てられ、端末番号10の通信端末2に対しては使用下り無線リソースが割り当てられなくなる。したがって、端末番号9,11の通信端末2に対して、第1端末用上り無縁リソースから使用SRS用上り無線リソースが割り当てられ、端末番号10の通信端末2に対して、第4SRS用上り無縁リソース500dから使用SRS用上り無線リソースが割り当てられるようになる。
【0156】
比較対象基地局1は、図21に示されるように、(N−2)番目のTDDフレーム300の第9サブフレーム302において、端末番号9,11の通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースと、端末番号10の通信端末2に対して割り当てた使用SRS用上り無線リソースとを通知するためのSRS制御データを送信する。そうすると、端末番号9〜11の通信端末2のそれぞれは、(N−1)番目のTDDフレーム300の第7サブフレーム302において応答信号を送信する。その後、端末番号9〜11の通信端末2のそれぞれは、N番目のTDDフレーム300の第1サブフレーム302において、比較対象基地局1から割り当てられた使用SRS用上り無線リソースを用いてSRSを送信するようになる。そうすると、比較対象基地局1は、N番目のTDDフレーム300の第6サブフレーム302において、(N−2)番目のTDDフレーム300の第9サブフレームにおいて転送データが発生した端末番号11の通信端末2と下り通信を開始する。
【0157】
このように、比較対象基地局1では、第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数は2台となっていることから、図21の例のように、比較対象基地局1に接続されている第1端末グループの通信端末2が3台以上となると、3台目以降の第1端末グループの通信端末2にSRSを送信させる場合には、SRSを送信する通信端末2を入れ替える必要がある。上述のように、SRSを送信する通信端末2の入れ替え(図21の例では、端末番号10の通信端末2と端末番号11の通信端末2との入れ替え)は、SRS制御データの送信から10ms以上も後に完了することから、すぐに行うことができない。したがって、使用下り無線リソースが割り当てられていない第1端末グループの通信端末2への転送データが発生してすぐにSRS制御データが送信されたとしても、当該通信端末2に対してデータ送信されるのは10ms以上も後であり(図21の例ではN番目のTDDフレーム300の第6サブフレーム302)、当該通信端末2へのデータ転送に遅延が生じる。第1端末グループの通信端末2は、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行していることから、当該通信端末2へのデータ転送が遅延すると、当該通信端末2が実行するアプリケーションに要求されている許容遅延時間を満たすことが困難となる。つまり、比較対象基地局1では、第1端末グループの通信端末2の台数が多くなると、SRSを送信させる通信端末2の入れ替えが発生しやすくなり、この入れ替えに基づくデータの転送遅延のために、第1端末グループの通信端末2が実行するアプリケーションにおいて要求されている転送データの許容遅延時間を満たすことが困難となる。その結果、基地局1の性能が低下する可能性がある。
【0158】
これに対して、本実施の形態に係る基地局1では、第1端末グループの通信端末2が使用する第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数が10台と多くなっていることから、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2に関して、より多くの台数の通信端末2にSRSを送信させることができる。よって、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する通信端末2が多い場合であっても、SRSを送信させる通信端末2を入れ替える可能性が低くなり、この入れ替えに基づくデータの転送遅延の発生を抑制することができる。したがって、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する通信端末2へのデータ転送の遅延を小さくすることができる。その結果、基地局1では、通信端末2が実行するアプリケーションにおいて要求される転送データの許容遅延時間を容易に満たすことができ、基地局1の性能が向上する。
【0159】
なお、本実施の形態では、SRSを同じ周波数帯域で多重化しないようにしていたが、第1端末グループの複数の通信端末2が送信するSRSについては同一周波数帯域で多重化しても良い。この場合には、第1端末グループの通信端末2が使用する第1端末用上り無線リソースを用いてSRSを送信することが可能な通信端末2の台数が80台(10×8)とさらに多くなることから、SRSを送信させる通信端末2を入れ替える可能性をさらに低くすることができる。よって、基地局1では、通信端末2が実行するアプリケーションにおいて要求される転送データの許容遅延時間をさらに容易に満たすことができ、基地局1の性能がさらに向上する。
【0160】
また、本実施の形態に係る基地局1では、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅(4RB)が、転送データ量が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループの通信端末2のうち送信能力高端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅(20RB)よりも小さくなっている。したがって、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域のうち、当該通信端末2へのデータ送信に使用されない周波数帯域を小さくすることができる。
【0161】
ここで、上述の図15〜17を用いて説明したように、VoIP、Game及びVideoなどのアプリケーションでは、数十ms程度に1回、数十バイト〜数百バイトの転送データしか発生しない。このような転送データ量の小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅が、上述の図21の例のように仮に20RBである場合には、当該通信端末2と基地局1との間の下り通信では、当該通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域の大部分が使用されなくなる。つまり、図22に示されるように、第3下りサブフレーム302cにおいて、第1端末グループの通信端末2(図22での端末番号9の通信端末2)が送信するSRSの送信周波数帯域800を周波数方向に含む下り無線リソース810のうちのごく僅かな部分しか、当該通信端末2に対して使用下り無線リソース820として割り当てられず、当該下り無線リソース810の大部分については当該通信端末2と基地局1との下り通信では使用されない。以後、第3下りサブフレーム302cにおいて、第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域800を周波数方向に含む下り無線リソース810のうち、当該通信端末2と基地局1との下り通信では使用されない部分を「下り通信未使用領域」と呼ぶことがある。
【0162】
このように、転送データ量の小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅が大きい場合には、当該通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域800において当該通信端末2と基地局との間の下り通信で使用されない部分が大きくなる。つまり、第3下りサブフレーム302cにおいて、当該通信端末2が送信する送信周波数帯域800を周波数方向に含む下り無線リソース810において下り通信未使用領域が大きくなる。この大きな下り通信未使用領域が他の通信端末2と基地局1との間の下り通信で使用されずに空きのままである場合には、基地局1の送信スループットが低下する。一方で、この大きな下り通信未使用領域が、他の通信端末2と基地局1との間の下り通信で使用される場合には、当該他の通信端末2に対して大きなSRS非対応使用下り無線リソースが割り当てられることになる。上述のように、通信端末2に対してSRS非対応使用下り無線リソースが割り当てられる際には、ヌルステアリングを適切に行うことができないことから、通信端末2に対して割り当てるSRS非対応使用下り無線リソースの量が多い場合には、周辺に干渉を与えやすくなるとともに、周辺からの干渉を受けやすくなる。よって、基地局の性能が低下する。
【0163】
これに対して、本実施の形態では、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域幅が小さくなっていることから、当該通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域のうち、当該通信端末2へのデータ送信に使用されない周波数帯域を小さくすることができる。つまり、第3下りサブフレーム302cにおいて、当該通信端末2が送信する送信周波数帯域800を周波数方向に含む下り無線リソース810において下り通信未使用領域が小さくなる。したがって、下り通信未使用領域が他の通信端末2と基地局1との間の下り通信で使用されずに空きのままである場合であっても、基地局1の送信スループットの低下を抑制することができる。また、下り通信未使用領域が、他の通信端末2と基地局1との間の下り通信で使用される場合であっても、当該他の通信端末2に対して割り当てられるSRS非対応使用下り無線リソースの量を少なくすることができる。よって、基地局1では、周辺に干渉を与えにくくなるとともに、周辺からの干渉を受けにくくなる。よって、基地局の性能が向上する。
【0164】
<通信端末に対するSRS非対応使用下り無線リソースの割り当てについて>
図23は、対象単位期間360での端末番号1〜14の通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。
【0165】
本実施の形態では、無線リソース割り当て部122は、転送データの許容誤り率が大きい第1端末グループの通信端末2に対しては、SRS対応使用下り無線リソースと、SRS非対応使用下り無線リソースとを割り当てることがある。これに対して、無線リソース割り当て部122は、転送データの許容誤り率が小さい第2端末グループの通信端末2に対してはSRS対応使用下り無線リソースだけを割り当てる。
【0166】
図23の例では、第2端末グループの端末番号1〜8の通信端末2のそれぞれに対しては、SRS対応使用下り無線リソースだけが割り当てられている。
【0167】
一方で、第1端末グループの端末番号9の通信端末2に対しては、SRS対応使用下り無線リソース900aだけではなく、SRS非対応使用下り無線リソース900bが割り当てられている。また、第1端末グループの端末番号14の通信端末2に対しては、SRS対応使用下り無線リソース910aだけではなく、SRS送信不可帯域460を周波数方向に含むSRS非対応使用下り無線リソース910bが割り当てられている。第1端末グループの端末番号10,11,12,13の通信端末2のそれぞれに対しては、SRS対応使用下り無線リソースだけが割り当てられている。
【0168】
このように、本実施の形態では、転送データの許容誤り率が大きい第1端末グループの通信端末2に対しては、SRS対応使用下り無線リソースと、SRS非対応使用下り無線リソースとが割り当てられることがあり、転送データの許容誤り率が小さい第2端末グループの通信端末2に対してはSRS対応使用下り無線リソースだけが割り当てられる。
【0169】
ここで、通信端末2に対してSRS非対応使用下り無線リソースが割り当てられる際には、上述のように、当該通信端末2と基地局1との間の下り通信において、周辺からの干渉を受けやすくなる。したがって、当該通信端末2は基地局1からの転送データを受信しにくくなり、転送データの誤り率が大きくなる。本実施の形態では、転送データの許容誤り率が小さい第2端末グループの通信端末2に対してはSRS対応使用下り無線リソースだけが割り当てられることから、当該通信端末2での転送データの誤り率を小さくすることができ、当該通信端末2が実行するアプリケーションで要求される許容誤り率を満たしやすくなる。その結果、基地局の性能が向上する。
【0170】
一方で、第1端末グループの通信端末2に対しては、SRS非対応使用下り無線リソースが割り当てられることがあるものの、第1端末グループの通信端末2は、転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行することから、当該通信端末2と基地局1との間の下り通信にSRS非対応使用下り無線リソースを使用することによって当該通信端末2での転送データの誤り率が多少大きくなっても、当該通信端末2が実行するアプリケーションで要求される許容誤り率を満たすことができる。よって、基地局1が、第1端末グループの通信端末2との下り通信のスループットを向上するために、当該通信端末2に対してSRS対応使用下り無線リソースとSRS非対応使用下り無線リソースとを割り当てたとしても、当該通信端末2が実行するアプリケーションで要求される許容誤り率を満たすことができる。その結果、基地局の性能が向上する。
【0171】
なお、第3下りサブフレーム302cにおいて、第1端末グループの通信端末2が送信するSRSの送信周波数帯域800を周波数方向に含む下り無線リソース810での下り通信未使用領域を、当該通信端末2とは異なる、第1端末グループの通信端末2に対してSRS非対応使用下り無線リソースとして割り当ててもよい。
【0172】
また、複数の通信端末2が送信するSRSを同一周波数帯域で多重化した場合には、当該複数の通信端末2は周辺からの干渉を受けやすくなる。その結果、当該複数の通信端末2では転送データの誤り率が大きくなる。したがって、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループの複数の通信端末2からのSRSについては同一周波数で多重化しないことが望ましい。以下に、複数の通信端末2が送信するSRSを同一周波数帯域で多重化した場合に、当該複数の通信端末2が周辺からの干渉を受けやすくなる理由について説明する。
【0173】
図24は通信端末2に対する使用下り無線リソースの割り当て例を示す図である。図24の例では、第2端末グループの端末番号1〜3の通信端末2が送信するSRSが多重されている。
【0174】
図24に示されるように、対象単位期間360において、端末番号1〜3の通信端末2が送信するSRSが多重されていたとしても、対象単位期間360の第1下りサブフレーム302aにおいては、同じ周波数帯域を用いて端末番号1〜3の通信端末2のすべてに信号を送信することはできない。つまり、第1下りサブフレーム302aにおいて、端末番号1〜3の通信端末2のすべてに信号を送信しようとしたとしても、端末番号1〜3の通信端末2への送信信号は、互いに異なった周波数帯域で送信されることになる。
【0175】
一方で、周辺基地局1においては、それと通信する第2端末グループの通信端末2、例えば端末番号50の通信端末2が、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2がSRSの送信に使用する上り無線リソースと同じ上り無線リソースを使用してSRSを送信する際には、周辺基地局1は、端末番号50の通信端末2からのSRSを、端末番号1〜3の通信端末2が送信するSRSの干渉を受けた状態で受信することになる。したがって、この場合には、周辺基地局1では、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2のすべてが、ヌルが向く対象となる。
【0176】
端末番号1〜3が送信するSRSの送信周波数帯域に含まれる、ある特定の周波数帯域に注目した場合には、その注目周波数帯域では、基地局1からは、端末番号1〜3の通信端末2のいずれか一つの通信端末2だけに信号が送信される。したがって、周辺基地局1と通信する端末番号50の通信端末2は、注目周波数帯域では、端末番号1〜3の通信端末2のいずれか一つの通信端末2からの信号しか受信しない。よって、注目周波数帯域においては、周辺基地局1が端末番号1〜3の通信端末2のすべてにヌルを向ける必要性に乏しい。それにもかかわらず、周辺基地局1では、基地局1と通信する端末番号1〜3の通信端末2のすべてが、ヌルが向く対象となる。
【0177】
ここで、アレイアンテナ110の送信指向性に関するヌルステアリングにおいて、設定可能なヌルの数は、アレイアンテナ110を構成するアンテナ110aの数に依存する。具体的には、アンテナの数をMとすると、ヌルが設定できる最大数は(M−1)となる。したがって、基地局1において、ヌルが向く対象が多くなると、その対象のすべてにヌルを向けることができなくなる。
【0178】
上述のように、端末番号1〜3の通信端末2が送信するSRSが多重されると、周辺基地局1においては、端末番号1〜3の通信端末2のうちヌルを向ける必要がある通信端末2は1台であるにもかかわらず、端末番号1〜3の通信端末2のすべてがヌルが向く対象となる。したがって、周辺基地局1において、他にヌルが向く対象が存在すれば、端末番号1〜3の通信端末2のうちヌルを向ける必要がある通信端末2に対してヌルが向かない可能性が高くなる。よって、SRSが多重化された端末番号1〜3の通信端末2では、周辺から干渉を受けやすくなる。
【0179】
このように、複数の通信端末2が送信するSRSを同一周波数帯域で多重化した場合には、当該複数の通信端末2は周辺からの干渉を受けやすくなることから、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループの複数の通信端末2からのSRSについては同一周波数で多重化しないことが望ましい。
【0180】
以上の説明では、第1端末グループの通信端末2がSRSの送信に使用する第1端末用上り無線リソースを第3SRS用上り無線リソース500cとし、第2端末グループの通信端末2がSRSの送信に使用する第2端末用上り無線リソースを第1SRS用上り無線リソース500a及び第2SRS用上り無線リソース500bから成る上り無線リソースとしていたが、第1端末用上り無線リソースと第2端末用上り無線リソースの組み合わせは他の態様であっても良い。
【0181】
例えば、第1端末用上り無線リソースを第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cから成る上り無線リソースとし、第2端末用上り無線リソースを第1SRS用上り無線リソース500aとしても良い。
【0182】
また、第1端末用上り無線リソースと第2端末用上り無線リソースの組み合わせの態様を変化させても良い。例えば、第1端末用上り無線リソースと第2端末用上り無線リソースの組み合わせの態様を、時間帯に応じて変化させても良い。
【0183】
具体的には、ある時間帯では、第1端末グループの通信端末2の数が少なく、第2端末グループの通信端末2の数が多い場合には、 その時間帯においては、第1端末用上り無線リソースを第3SRS用上り無線リソース500cとし、第2端末用上り無線リソースを第1SRS用上り無線リソース500a及び第2SRS用上り無線リソース500bから成る上り無線リソースとする。また、別の時間帯において、第1端末グループの通信端末2の数が多く、第2端末グループの通信端末2の数が少ない場合には、 その時間帯においては、第1端末用上り無線リソースを第2SRS用上り無線リソース500b及び第3SRS用上り無線リソース500cから成る上り無線リソースとし、第2端末用上り無線リソースを第1SRS用上り無線リソース500aとする。
【0184】
このように、第1端末用上り無線リソースと第2端末用上り無線リソースの組み合わせの態様を適宜変化させることによって、基地局1の性能がさらに向上する。
【0185】
また、上記の例では、本願発明をLTEに適用する場合について説明したが、本願発明は他の無線通信システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0186】
1,1a,1b 基地局
2 通信端末
13 通信部
110a アンテナ
122 無線リソース割り当て部
126 グループ分け処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、
前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記既知信号用上り無線リソースは、前記第1端末グループが使用する第1端末用上り無線リソースと、前記第2端末グループが使用する第2端末用上り無線リソースとを含み、
前記単位期間において、前記第1端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第1端末グループの通信端末の台数が、前記第2端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第2端末グループの通信端末の台数よりも大きくなっている、基地局。
【請求項2】
請求項1に記載の基地局であって、
前記第1端末グループの複数の通信端末からの既知信号が同一周波数帯域で多重されている、基地局。
【請求項3】
複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、
前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データ量が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記無線リソース割り当て部は、前記第1端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅を、前記第2端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅よりも小さくする、基地局。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記既知信号の送信周波数帯域幅として設定することが可能な帯域幅として、大きさが互いに異なる複数の帯域幅が定められており、
前記第1端末グループの通信端末が送信する既知信号の送信周波数帯域幅は、前記複数の帯域幅のうちの最小値が設定されている、基地局。
【請求項5】
複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する通信部と、
前記通信部が通信端末に信号を送信する際に使用する下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる無線リソース割り当て部と、
前記通信部が通信する複数の通信端末を、転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分するグループ分け処理部と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記無線リソース割り当て部は、
前記第1端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースと、当該上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースとを割り当てることがあり、
前記第2端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースだけを割り当てる、基地局。
【請求項6】
請求項5に記載の基地局であって、
前記第2端末グループの複数の通信端末からの既知信号は同一周波数帯域で多重化されない、基地局。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一つに記載の基地局であって、
前記第1端末グループには、VoIP(Voice over Internet Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末、リアルタイムゲームのアプリケーションを実行する通信端末及びリアルタイムビデオのアプリケーションを実行する通信端末が含まれ、
前記第2端末グループには、HTTP(HyperText Transfer Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末及びFTP(File Transfer Protocol)が利用されるアプリケーションを実行する通信端末が含まれる、基地局。
【請求項8】
通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、
(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、
(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、
(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データの許容遅延時間が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容遅延時間が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記既知信号用上り無線リソースは、前記第1端末グループが使用する第1端末用上り無線リソースと、前記第2端末グループが使用する第2端末用上り無線リソースとを含み、
前記単位期間において、前記第1端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第1端末グループの通信端末の台数が、前記第2端末用上り無線リソースを用いて前記既知信号を送信することが可能な前記第2端末グループの通信端末の台数よりも大きくなっている、通信制御方法。
【請求項9】
通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、
(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、
(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、
(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データ量が小さいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データ量が大きいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記工程(b)では、前記第1端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅が、前記第2端末グループの通信端末が送信する前記既知信号の送信周波数帯域幅よりも小さくされる、通信制御方法。
【請求項10】
通信端末と通信する基地局での通信制御方法であって、
(a)複数のアンテナを用いて通信を行い、下り通信を行う際には通信端末が送信する既知信号に基づいて当該複数のアンテナでの送信指向性を制御する工程と、
(b)前記工程(a)において通信端末に信号が送信される際に使用される下り無線リソースを当該通信端末に割り当てるとともに、通信端末が前記既知信号を送信する際に使用する上り無線リソースを当該通信端末に対して割り当てる工程と、
(c)前記工程(a)において通信される複数の通信端末を、転送データの許容誤り率が大きいアプリケーションを実行する第1端末グループと、転送データの許容誤り率が小さいアプリケーションを実行する第2端末グループとに区分する工程と
を備え、
通信端末が前記既知信号を送信する際に使用することが可能な既知信号用上り無線リソースと下り無線リソースとが現れる単位期間が定められており、
前記単位期間では、下り無線リソースと前記既知信号用上り無線リソースとに関して、前記既知信号に基づいたヌルステアリングのための対応付けが定められており、
前記工程(b)においては、
前記第1端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた対応下り無線リソースと、当該上り無線リソースに対応付けられていない非対応下り無線リソースとが割り当てられることがあり、
前記第2端末グループの通信端末に対しては、当該通信端末が前記既知信号の送信に使用する上り無線リソースに対応付けられた下り無線リソースだけが割り当てられる、通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−74516(P2013−74516A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212975(P2011−212975)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】