説明

基板トレイ、基板の載置構造及び基板処理装置

【課題】基板の位置決め精度を向上させること無く、プロセスへの影響を低減できる基板トレイ、基板の載置構造及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】複数の基板を載置して、複数の基板と共に搬送される基板トレイ20において、載置する基板の数に対応して、基板の外径より大きい貫通孔21を複数設け、貫通孔21に、当該貫通孔21の内側を横断する梁22を少なくとも2本設け、梁22の上であって、貫通孔21の内側に基板を各々載置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の基板を載置して、搬送される基板トレイ、当該基板トレイを用いた基板の載置構造及び当該基板の載置構造を備えた基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小径の基板を基板トレイの複数の収容孔に各々収容し、その状態で、基板トレイをプラズマ処理装置内の基板サセプタ上に搬送し、基板を基板サセプタの基板載置部に静電吸着させて、所望のプロセスを行うことが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4361045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に開示された基板の載置構造においては、基板トレイを基板サセプタ上に搬送する際、基板の機械的位置決めのために、基板トレイ外周部と基板サセプタとのガイド(例えば、特許文献1の図17、18A、18B等参照)や基板トレイの収容孔内径と基板サセプタの基板載置部外径とのガイド(例えば、特許文献1の図5A、図5B等参照)、基板外径と基板トレイの収容孔内径とのガイド等のように、複数のガイド機構を設けており、これらを用いて、基板トレイと基板サセプタとの機械的位置決めを行うと共に、基板と基板載置部との機械的位置決めを行っている。
【0005】
上述したガイド機構は、各ガイド機構に機械的な隙間(例えば、特許文献1の図5B中のδ1、δ3等参照)が必要であるため、基板自体の位置決め精度の向上に限界があった。又、基板載置部外径を基板外径より小さくしており(例えば、特許文献1の図5A、図5B等参照)、そのため、基板裏面の外周部が基板載置部と接触しておらず、成膜等のプロセスにおいて温度等の影響を与えてしまい、最悪の場合、基板の反り変形をもたらすおそれがあった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、基板の位置決め精度を向上させること無く、プロセスへの影響を低減できる基板トレイ、基板の載置構造及び基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する第1の発明に係る基板トレイは、
複数の基板を載置して、前記複数の基板と共に搬送される基板トレイにおいて、
載置する基板の数に対応して、前記基板の外径より大きい貫通孔を複数設け、
前記貫通孔に、当該貫通孔の内側を横断する梁を少なくとも2本設け、
前記梁の上であって、前記貫通孔の内側に前記基板を各々載置することを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決する第2の発明に係る基板トレイは、
複数の基板を載置して、前記複数の基板と共に搬送される基板トレイにおいて、
当該基板トレイの外枠となる部分を除いた大きさの貫通孔を1つ設け、
前記貫通孔の内側を横断する梁を複数設け、
前記複数の梁の上に前記複数の基板を載置することを特徴とする。
なお、複数の梁同士の間隔は、基板の直径より短くしている。又、複数の梁同士を、互いに平行に配置したり、互いに交差して配置したりしてもよい。
【0009】
上記課題を解決する第3の発明に係る基板の載置構造は、
上記第1の発明に記載の基板トレイを用いた基板の載置構造であって、
前記基板トレイを載置する載置部を備え、
前記載置部に、前記貫通孔に対応して、前記貫通孔を貫通する載置台を複数突設し、
前記載置台に、前記梁に対応して、前記梁を収容する溝を少なくとも2本設け、
前記基板トレイを前記載置部に載置した際に、前記基板を前記載置台に各々載置させることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決する第4の発明に係る基板の載置構造は、
上記第2の発明に記載の基板トレイを用いた基板の載置構造であって、
前記基板トレイを載置する載置部を備え、
前記載置部に、前記貫通孔に対応して、前記貫通孔を貫通する載置台を1つ突設し、
前記載置台に、前記梁に対応して、前記梁を収容する溝を複数設け、
前記基板トレイを前記載置部に載置した際に、前記複数の基板を前記載置台に載置させることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決する第5の発明に係る基板処理装置は、
上記第3又は第4の発明に記載の載置構造を備え、
前記載置台を介して、前記複数の基板の温度制御を行うと共に、前記複数の基板に所望の処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基板トレイに複数の梁を有する貫通孔を設け、当該基板トレイを用い、複数の梁の上に基板を載置して、搬送するので、基板の位置決め精度の許容値が大きくなる独自の搬送を実現できる。その結果、基板トレイを搬送する搬送ロボットの動作精度の仕様を緩和でき、低コスト化を図ることができる。又、基板を載置する載置部の載置台が基板より大きいので、基板の裏面のほぼ全面を載置台表面に接触させることができ、基板のほぼ全面の温度制御が可能となるので、基板温度に起因するプロセスへの影響を低減でき、基板処理装置の性能向上を図ることができる。例えば、基板処理装置がプラズマCVD装置であれば、成膜時の膜質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る基板の載置構造の実施形態(実施例1)を示す図であり、(a)は、その上面図、(b)は、(a)のA−A線矢視断面図である。
【図2】図1に示した載置構造の載置板を示す上面図である。
【図3】図1に示した載置構造の基板トレイを示す上面図である。
【図4】図3に示した基板トレイを搬送するロボットアームを示す図であり、(a)は、その上面図、(b)は、(a)のB−B線矢視断面図である。
【図5】図1に示した載置構造の一部を拡大した上面図である。
【図6】基板載置直前における図5のC−C線矢視断面図である。
【図7】基板載置後における図5のC−C線矢視断面図である。
【図8】本発明に係る基板の載置構造の他の実施形態(実施例2)を示す図であり、(a)は、その上面図、(b)は、(a)のD−D線矢視断面図である。
【図9】図8に示した載置構造の載置板を示す上面図である。
【図10】図8に示した載置構造の基板トレイを示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る基板トレイ、基板の載置構造及び基板処理装置の実施形態について、図1〜図10を参照して説明を行う。
【0015】
本発明に係る基板トレイは、基板トレイを載置する載置板(載置部)と共に、本発明に係る基板の載置構造を構成する。図示及び詳細な説明は省略するが、本発明に係る基板の載置構造は、例えば、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む半導体製造装置やLED(Light Emitting Diode)製造用のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)製造装置等の基板処理装置に適用可能である。又、本発明に係る基板の載置構造は、使用する基板の大きさに応じて、載置板及び基板トレイを交換することにより、既存の基板処理装置にも装着可能である。従って、本発明に係る基板トレイ及び基板の載置構造について、その載置構造を構成する載置板と共に図示して説明を行う。
【0016】
(実施例1)
本実施例の基板の載置構造及び当該載置構造を構成する載置板及び基板トレイについて、図1〜図7を参照して説明する。
【0017】
ここで、図1(a)は、本実施例の基板の載置構造を示す上面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線矢視断面図であり、図2は、図1に示した載置構造の載置板を示す上面図であり、図3は、図1に示した載置構造の基板トレイを示す上面図である。又、図4(a)は、図3に示した基板トレイを搬送するロボットアームを示す上面図であり、図4(b)は、図4(a)のB−B線矢視断面図である。又、図5は、図1に示した載置構造の一部を拡大した上面図であり、図6は、基板載置直前における図5のC−C線矢視断面図であり、図7は、基板載置後における図5のC−C線矢視断面図である。
【0018】
本実施例の基板の載置構造は、共に円板状の載置板10と基板トレイ20とを有している。載置板10の上面10aには、全体の形状(後述する複数の分割載置台11aの全体の形状)が略円柱状となる基板載置台11が複数(本実施例では5つ)突設されている。基板載置台11は、後述する基板トレイ20の貫通孔21の数、位置、形状、大きさ等に対応して形成されており、基板載置台11、貫通孔21の数は、載置板10、基板トレイ20の大きさ及び載置する基板Wの大きさに応じて、適宜に設定される。基板載置台11の直径は、基板Wの直径より大きくしている。載置する基板Wは、載置板10より小さい直径(載置板10の半径未満の直径)であり、ここでは、円形状のものを例示するが、他の形状のものでもよい。
【0019】
基板載置台11には、基板載置台11を直線状に横断する溝12が複数(本実施例では2つ)形成されており、溝12の底部は、載置板10の上面10aと同じ高さ位置となるように形成されている。この溝12は、基板トレイ20を載置台10に載置したとき、後述する基板トレイ20の梁22を収容するものである。このように、基板載置台11は、溝12により複数(本実施例では3つ)に分割されているが、分割された3つの分割載置台11a同士の上面は、互いに連続する平面となるように形成されており、これらの上面が基板Wを載置する平坦な載置面11bとなっている。従って、3つの載置面11bからなる平面の直径が、基板Wの直径より大きくなっている。
【0020】
溝12は、梁22の数、位置、形状等に対応して形成すればよく、基板Wを保持するため、梁22が少なくとも2つ必要であることから、少なくとも2つ形成すればよい。又、本実施例では、溝12同士及び梁22同士を互いに平行な直線状の形状としているが、例えば、互いに交差する十字状や格子状の形状としてもよい。
【0021】
又、溝12の幅は、梁22を収容できる幅があれば十分である。例えば、梁22の幅に、搬送ロボットの搬送精度(例えば、±0.3mm)を加算した幅か、それより大きい幅があればよい。つまり、溝12には、前述したガイド機構のような機械的位置決めの機能は不要である。但し、後述するように、基板Wは、その温度制御が行われているので、溝12の幅は、基板Wの温度制御に影響が無い範囲で設定することが望ましい。
【0022】
又、載置板10の外周部分であり、かつ、基板載置台11を避けた部分に、ピン孔14が複数(本実施例では3つ)形成されており、このピン孔14に、基板トレイ20を昇降させるリフトピン15が挿通されている。ピン孔14は、リフトピン15の数、位置、形状等に対応して形成すればよく、リフトピン15が少なくとも3つ必要であることから、少なくとも3つ形成すればよい。
【0023】
又、図示は省略しているが、各基板載置台11の内部には、基板Wを静電吸着するための電極が各々埋め込まれており、これらの電極に電圧を印加することにより、基板Wが載置面11bと密接するように静電吸着を行っている。このように、載置板10は、基板Wの静電吸着を行っているため、セラミクス(例えば、窒化アルミニウム(AlN))等からなる誘電体から形成されている。
【0024】
上述した構成の載置板10は、例えば、プラズマCVD装置等の処理容器の内部に配置された支持台16の上面に取り付けられる。そして、基板Wと共に基板トレイ20を載置板10上に搬送し、基板載置台11の載置面11bに基板Wを載置し、静電吸着した後、所望のプロセス、例えば、成膜処理を行うことになる。基板Wの温度制御のため、支持台16の内部には、温度制御機構、例えば、ヒータや冷媒が流れる流路等が設けられており、支持台16の内部の温度制御機構の温度制御を行うと共に、静電吸着により基板Wを載置面11bに密接させることにより、基板Wを所望の温度に制御することできる。
【0025】
又、載置板10が支持台16の上面に取り付け可能な構造であることから、既存の基板処理装置へも適用可能であり、大きさの異なる基板にも対応可能となる。例えば、既存の基板処理装置が、大径の基板(例えば、12インチの基板)に対応したものであれば、その載置板を、小径の基板に対応した複数の基板載置台11を有する載置板10に交換すれば、容易に対応可能となる。小径の基板としては、Siに限らず、GaAs等の化合物半導体、サファイヤ、石英等があり、例えば、2インチや3インチ等の大きさとなる。
【0026】
基板トレイ20には、基板トレイ20を貫通して、全体の形状が円形状の貫通孔21が複数(本実施例では5つ)形成されている。貫通孔21には、貫通孔21の内側を直線状に横断する梁22が複数(本実施例では2つ)形成されている。この梁22は、基板トレイ20を載置台10に載置したとき、基板載置台11の溝12の内側に収容されることになる。
【0027】
このように、貫通孔21は、梁22により複数(本実施例では3つ)に分割されており、実質的には、分割された3つの分割貫通孔21aから構成されることになる。従って、基板トレイ20を載置板10に載置した際には、各々の貫通孔21の各分割貫通孔21aの内側に、対応する基板載置台11の各分割載置台11aが貫通し、各分割貫通孔21aの内側に各分割載置台11aが配置されることになる。
【0028】
梁22は、基板Wの保持のために少なくとも2つ必要であることから、少なくとも2つ形成すればよい。この場合、基板トレイ20の貫通孔21の内側に基板Wを載置すると、2つの梁22上に基板が載置されることになる。又、梁22の形状については、前述した溝12と同様に、梁22同士を互いに平行な直線状の形状としてもよいし、互いに交差する十字状や格子状の形状としてもよい。但し、梁22の幅については、基板トレイ20が、アルミナ(Al23)、シリコンカーバイド(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミクス材で形成されていることから、基板Wを支持可能な強度を確保できる幅とすることが望ましい。又、梁22は、基板トレイ20と同一平面となるように形成しているが、基板Wを支持可能な強度を確保できれば、その厚みを薄くして、基板Wを貫通孔21の内側に配置し易い形状としてもよい。
【0029】
又、基板トレイ20の外周には、その1箇所を切り欠くように形成したノッチ23が設けられており、後述するように、このノッチ23を用いて、基板トレイ20の方向決めが行われる。
【0030】
上述した構成の基板トレイ20は、既存の基板処理装置に備えられているアライメント機構を用いて、基板トレイ20の外周及びノッチ23を検出することにより、基板トレイ20のセンタリング及び方向決め、即ち、位置決めを行うことが可能である。従って、基板トレイ20は、アライメント機構を用いて位置決めされ、搬送ロボットにより所定の誤差範囲内で載置板10に載置されることになる。そのため、各々の基板Wは、基板トレイ20の貫通孔21の内側に載置すればよい。
【0031】
そして、基板トレイ20が載置板10上に載置されるときには、載置板10の基板載置台11の直径が基板Wより大きいので、基板トレイ20を誤差範囲内で搬送できれば、基板トレイ20に載置した基板Wは、自然と載置面11bの面内に載置されることになる。つまり、基板トレイ20は、少なくとも基板Wの搬送機能を果たせばよい。
【0032】
ここで、基板トレイ20を用いて、基板Wを載置する際の一連の動作について、図4〜図7を参照して説明する。なお、ここでは、基板処理装置をプラズマCVD装置として説明を行う。
【0033】
最初に、基板トレイ20に基板Wを載置する。このとき、基板Wは、貫通孔21の内側に配置できればいいので、例えば、作業者が基板用ピンセットを用いて基板Wを配置してもよい。
【0034】
次に、基板Wを配置した基板トレイ20を、基板用カセットのスロットに挿入する。基板トレイ20の大きさが12インチ径であれば、12インチ用の基板カセットを流用することができる。
【0035】
次に、プラズマCVD装置のロードロック室に基板カセットをセットする。ロードロック室が真空引きされて、真空下において、基板トレイ20の搬送が可能となる。
【0036】
次に、図4に示すように、U字形状のハンド部31とハンド部31を支持するアーム部32を有するロボットアーム30を用いて、基板用カセットのスロットから基板トレイ20を引き出す。このとき、ハンド部31の上面に基板トレイ20が載置されて、搬送が行われる。その後、アライメント機構を用いて、基板トレイ20の位置決め(センタリング及び方向決め)を行う。
【0037】
次に、プラズマCVD装置の処理容器内の支持台16に取り付けた載置板10の上方へ基板トレイ20を搬送する。そして、リフトピン15を上昇させると、搬送された基板トレイ20がリフトピン15に持ち上げられて、リフトピン15上に載置されることになる。その後、リフトピン15に持ち上げられた基板トレイ20の下方から、ロボットアーム30を引き抜く。このとき、載置板10と基板トレイ20の位置関係は、図6に示すように、基板載置台11の上方に貫通孔21が位置し、溝12の上方に梁22が位置し、載置面11bの上方に基板Wが位置することになる。
【0038】
次に、リフトピン15を載置板10の表面より低い位置に下げると、基板トレイ20が載置板10上に載置されることになるが、上述したアライメント機構により、所定の誤差範囲内で載置板10に載置されることになる。つまり、図7に示すように、基板載置台11の各分割載置台11aが貫通孔21の各分割貫通孔21aに挿入され、梁22が溝12に挿入され、基板Wが載置面11bに配置されることになる。
【0039】
基板トレイ20については、その貫通孔21の各分割貫通孔21aの内側に基板載置台11の各分割載置台11aが配置され、かつ、その梁22が基板載置台11の溝12に配置されれば十分であるので、基板トレイ20自体の位置精度は高くなくてもよい。つまり、基板トレイ20を搬送するロボットアーム30の搬送ロボットやアライメント機構の位置決め精度としては、比較的低い精度のもの(例えば、±0.3mm程度)を許容することができる。
【0040】
従来は、高精度の搬送ロボット等を使用しないと、基板トレイが載置板の基板戴置台上に乗り上げてしまう等の装置安定動作上の問題が起こるおそれがあった。これに対して、本実施例の基板の載置構造では、基板トレイ20自体の位置決め精度が高精度でなくても、その精度の許容量が大きいので、基板トレイ20が載置板10の基板戴置台11上に乗り上げてしまう等の装置安定動作上の問題を低減することができる。又、載置板10や基板トレイ20の製造精度に高精度な寸法を要求する必要もない。
【0041】
基板トレイ20が載置板10上に載置されるときに、基板Wが基板載置台11に載置されることになるが、3つの載置面11bからなる平面の直径が、基板Wの直径より大きくなっているので、基板Wの裏面全体が基板載置台11の載置面11bと接触する位置となるように、基板Wが載置されることになる。この状態において、基板Wを基板載置台11の載置面11bに静電吸着するので、基板Wの裏面のほぼ全面(溝12に対応する部分を除く裏面全面)が載置面11bと密接することになる。
【0042】
そして、プラズマCVD装置の処理容器において、プラズマによる成膜処理が行われ、基板表面に所望の膜を成膜することになる。このとき、基板Wの裏面のほぼ全面が、基板載置台11の載置面11bに静電吸着されて、載置面11bと密接しているので、基板Wの面内の温度分布を均一にすると共に、機械的な変形を抑制することができる。
【0043】
成膜処理が終了すると、静電吸着を解除し、その後、リフトピン15が、載置板10の表面より高い位置に上昇させられて、ロボットアーム30により基板トレイ20が処理容器から搬送される。以降は、基板トレイ20毎に上述した手順が繰り返し行われることになる。
【0044】
このように、本実施例の基板の載置構造では、基板載置台11及び載置面11bの外径を基板Wの外径より大きくしている。このような構造を用いることにより、基板トレイ20の位置決めの精度に左右されることなく、基板Wを基板載置台11の載置面11bに載置することができる。
【0045】
そして、上述したように、基板Wの面内の温度分布を均一にすると共に、機械的な変形を抑制することができるので、プロセスへの悪い影響を低減することができ、基板処理装置の性能向上を図ることができる。又、基板トレイ20自体の位置決め精度の許容量が大きいので、搬送ロボットの動作精度の仕様を緩和することができ、基板処理装置の低コスト化を図ることができる。
【0046】
(実施例2)
本実施例の基板の載置構造及び当該載置構造を構成する載置板及び基板トレイについて、図8〜図10を参照して説明する。
【0047】
ここで、図8(a)は、本実施例の基板の載置構造を示す上面図であり、図8(b)は、図8(a)のD−D線矢視断面図であり、図9は、図8に示した載置構造の載置板を示す上面図であり、図10は、図8に示した載置構造の基板トレイを示す上面図である。
【0048】
本実施例の基板の載置構造も、共に円板状の載置板40と基板トレイ50とを有している。載置板40の上面40aには、全体の形状(後述する複数の分割載置台41aの全体の形状)が略円柱状となる基板載置台41が1つ突設されており、載置板40の外周部分43を除いた領域に設けられている。基板載置台41には、基板載置台41を直線状に横断する溝42が複数(本実施例では8つ)形成されており、溝42の底部は、載置板40の上面40aと同じ高さ位置となるように形成されている。この溝42は、基板トレイ50を載置台40に載置したとき、後述する基板トレイ50の梁52を収容するものである。載置する基板Wは、載置板40より小さい直径(載置板40の半径未満の直径)であり、ここでは、円形状のものを例示するが、他の形状のものでもよい。
【0049】
基板載置台41は、溝42により複数(本実施例では9つ)に分割されているが、分割された9つの分割載置台41a同士の上面は、互いに連続する平面となるように形成されており、これらの9つの上面により、基板Wを載置する平坦な1つの大きな載置面41bを形成している。この載置面41bが形成する平面の直径は、当然、基板Wの直径より大きいので、外周部分43の内側においては、どこに基板Wを載置しても、基板Wの裏面のほぼ全面(溝42に対応する部分を除く裏面全面)が載置面41bに接することになる。
【0050】
溝42は、梁52の数、位置、形状等に対応して形成すればよい。又、本実施例では、溝42同士を互いに平行な直線状の形状としているが、例えば、互いに交差する十字状や格子状の形状としてもよい。
【0051】
又、溝42の幅は、梁52を収容できる幅があれば十分である。例えば、梁52の幅に、搬送ロボットの搬送精度(例えば、±0.3mm)を加算した幅か、それより大きい幅があればよい。つまり、溝42には、前述したガイド機構のような機械的位置決めの機能は不要である。但し、基板Wは、その温度制御が行われているので、溝42の幅は、基板Wの温度制御に影響が無い範囲で設定することが望ましい。
【0052】
又、載置板40の外周部分43には、ピン孔44が複数(本実施例では3つ)形成されており、このピン孔44に、基板トレイ50を昇降させるリフトピン45が挿通されている。ピン孔44は、リフトピン45の数、位置、形状等に対応して形成すればよく、リフトピン45が少なくとも3つ必要であることから、少なくとも3つ形成すればよい。
【0053】
又、図示は省略しているが、基板載置台41の内部には、基板Wを静電吸着するための電極が埋め込まれており、これらの電極に電圧を印加することにより、基板Wが載置面41bと密接するように静電吸着を行っている。このように、載置板40は、基板Wの静電吸着を行っているため、セラミクス(例えば、窒化アルミニウム(AlN))等からなる誘電体から形成されている。
【0054】
上述した構成の載置板40は、例えば、実施例1で説明した支持台16の上面に取り付けられる。そして、基板Wと共に基板トレイ50を載置板40上に搬送し、基板載置台41の載置面41bに基板Wを載置し、その後、静電吸着により基板Wを載置面41bに密接させると共に、支持台16の内部の温度制御機構の温度制御を行うことにより、基板Wを所望の温度に制御して、所望のプロセス、例えば、成膜処理を行うことになる。
【0055】
又、載置板40が支持台16の上面に取り付け可能な構造であることから、既存の基板処理装置へも適用可能である。例えば、既存の基板処理装置が、大径の基板(例えば、12インチの基板)に対応したものであれば、その載置板を、本実施例の載置板40に交換すれば、容易に対応可能となる。載置板40に載置する小径の基板としては、Siに限らず、GaAs等の化合物半導体、サファイヤ、石英等があり、例えば、2インチや3インチ等の大きさとなる。
【0056】
基板トレイ50には、全体の形状(後述する複数の分割貫通孔51aの全体の形状)が円形状となっている貫通孔51が、基板トレイ50を貫通して、1つ形成されており、基板トレイ50の外枠部分53を除いた領域に形成されている。貫通孔51には、貫通孔51を直線状に横断する梁52が複数(本実施例では8つ)形成されている。この梁52は、基板トレイ50を載置台40に載置したとき、基板載置台41の溝42の内側に収容されることになる。
【0057】
このように、貫通孔51は、梁52により複数(本実施例では9つ)に分割されており、実質的には、分割された9つの分割貫通孔51aから構成されることになる。従って、基板トレイ50を載置板40に載置した際には、貫通孔51の各分割貫通孔51aの内側に、基板載置台41の各分割載置台41aが貫通し、各分割貫通孔51aの内側に各分割載置台41aが配置されることになる。
【0058】
梁52は、基板Wを支持するために、基板Wの直径の範囲内に少なくとも2つの梁52が存在するように、つまり、梁22同士の間隔が基板Wの直径より短くなるように配置されている。又、梁52の幅については、基板トレイ50が、実施例1と同様のセラミクス材で形成されていることから、基板Wを支持可能な強度を確保できる幅とすることが望ましい。又、梁52は、基板トレイ50と同一平面となるように形成しているが、基板Wを支持可能な強度を確保できれば、その厚みを薄くして、基板Wを外枠部分53の内側に配置し易い形状としてもよい。なお、梁52の形状については、前述した溝42と同様に、梁52同士を互いに平行な直線状の形状としてもよいし、互いに交差する十字状や格子状の形状としてもよい。
【0059】
又、基板トレイ50の外周には、その1箇所を切り欠くように形成したノッチ54が設けられており、後述するように、このノッチ54を用いて、基板トレイ50の方向決めが行われる。
【0060】
上述した構成の基板トレイ50は、前述したアライメント機構を用いて、基板トレイ50の外周及びノッチ54を検出することにより、基板トレイ50のセンタリング及び方向決め、即ち、位置決めを行うことが可能である。従って、基板トレイ50は、アライメント機構を用いて位置決めされ、搬送ロボットにより所定の誤差範囲内で載置板40に載置されることになる。そのため、基板Wは、基板トレイ50の外枠部分53の内側に載置すればよい。
【0061】
特に、本実施例の場合は、基板トレイ50の外枠部分53の内側であれば、作業者が基板用ピンセットを用いて、基板Wをどこに置いてもよいし、異なる大きさ、異なる形状の基板を混在してもよい。つまり、基板の配置位置、大きさ、形状については自由度が大きい。
【0062】
そして、基板トレイ50が載置板40上に載置されるときには、載置板40の基板載置台41の直径が基板Wより大きいので、基板トレイ50を誤差範囲内で搬送できれば、基板トレイ50に載置した基板Wは、自然と載置面41bの面内に載置されることになる。つまり、基板トレイ50は、少なくとも基板Wの搬送機能を果たせばよい。
【0063】
これにより、基板Wの裏面全体が、基板載置台41の載置面41bと接触する位置に載置されることになる。この状態において、基板Wを基板載置台41の載置面41bに静電吸着するので、基板Wの裏面のほぼ全面が載置面41bと密接することになり、基板Wの面内の温度分布を均一にすると共に、機械的な変形を抑制することができる。
【0064】
基板トレイ50については、その貫通孔51の各分割貫通孔51aの内側に基板載置台41の各分割載置台41aが配置され、かつ、その梁52が基板載置台41の溝42に配置されれば十分であるので、基板トレイ50自体の位置精度は高くなくてもよい。つまり、基板トレイ50を搬送するロボットアーム30の搬送ロボットやアライメント機構の位置決め精度としては、比較的低い精度のもの(例えば、±0.3mm程度)を許容することができる。
【0065】
従って、本実施例の基板の載置構造では、基板トレイ50自体の位置決め精度が高精度でなくても、その精度の許容量が大きいので、基板トレイ50が載置板40の基板戴置台41上に乗り上げてしまう等の装置安定動作上の問題を低減することができる。又、載置板40や基板トレイ50の製造精度に高精度な寸法を要求する必要もない。
【0066】
このように、本実施例の基板の載置構造では、基板載置台41及び載置面41bの外径を基板Wの外径より大きくしている。このような構造を用いることにより、基板トレイ50の位置決め精度に左右されることなく、基板Wを基板載置台41の載置面41bに載置することができる。
【0067】
そして、上述したように、基板Wの面内の温度分布を均一にすると共に、機械的な変形を抑制することができるので、プロセスへの悪い影響を低減することができ、基板処理装置の性能向上を図ることができる。又、基板トレイ50自体の位置決め精度の許容量が大きいので、搬送ロボットの動作精度の仕様を緩和することができ、基板処理装置の低コスト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、プラズマCVD装置を含む半導体製造装置及びMEMS製造装置等の基板処理装置に適用可能であり、これらの装置において、基板トレイを用いた基板の搬送システム全般に使用可能である。
【符号の説明】
【0069】
10、40 載置板(載置部)
11、41 基板載置台
12、42 溝
16 支持台
20、50 基板トレイ
21、51 貫通孔
22、52 梁
30 ロボットアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を載置して、前記複数の基板と共に搬送される基板トレイにおいて、
載置する基板の数に対応して、前記基板の外径より大きい貫通孔を複数設け、
前記貫通孔に、当該貫通孔の内側を横断する梁を少なくとも2本設け、
前記梁の上であって、前記貫通孔の内側に前記基板を各々載置することを特徴とする基板トレイ。
【請求項2】
複数の基板を載置して、前記複数の基板と共に搬送される基板トレイにおいて、
当該基板トレイの外枠となる部分を除いた大きさの貫通孔を1つ設け、
前記貫通孔の内側を横断する梁を複数設け、
前記複数の梁の上に前記複数の基板を載置することを特徴とする基板トレイ。
【請求項3】
請求項1に記載の基板トレイを用いた基板の載置構造であって、
前記基板トレイを載置する載置部を備え、
前記載置部に、前記貫通孔に対応して、前記基板の外径より大きく、かつ、前記貫通孔を貫通する載置台を複数突設し、
前記載置台に、前記梁に対応して、前記梁を収容する溝を少なくとも2本設け、
前記基板トレイを前記載置部に載置した際に、前記基板を前記載置台に各々載置させることを特徴とする基板の載置構造。
【請求項4】
請求項2に記載の基板トレイを用いた基板の載置構造であって、
前記基板トレイを載置する載置部を備え、
前記載置部に、前記貫通孔に対応して、前記貫通孔を貫通する載置台を1つ突設し、
前記載置台に、前記梁に対応して、前記梁を収容する溝を複数設け、
前記基板トレイを前記載置部に載置した際に、前記複数の基板を前記載置台に載置させることを特徴とする基板の載置構造。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の基板の載置構造を備え、
前記載置台を介して、前記複数の基板の温度制御を行うと共に、前記複数の基板に所望の処理を行うことを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84773(P2013−84773A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223743(P2011−223743)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】