説明

基板処理装置及び半導体装置の製造方法

【課題】 多段に積層された基板の中心付近への処理ガスの供給を促進させる。
【解決手段】 積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、処理ガス供給系は、基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れるノズル軸と、上流端がノズル軸の長手方向に沿って配列するようにノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側にノズル軸内を流れた処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、上流端と前記ガス供給口との間の距離が、ノズル軸と基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板が収納された処理室内に処理ガスを供給して基板を処理する基板処理装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDRAM等の半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成する基板処理工程が実施される。かかる工程は、水平姿勢で多段に積層された基板を収納して処理する処理室と、基板の外縁と処理室内壁との間に配設され、処理室内に処理ガスを供給するガス供給ノズルと、を有する基板処理装置により実施される。水平姿勢で多段に積層された基板を処理室内に搬入し、ガス供給ノズルから処理室内に処理ガスを供給することで、基板間の空間に処理ガスが供給されて基板上に薄膜が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の基板処理装置を用いた場合には、各基板の中心付近まで処理ガスが流れ難く、基板処理の速度が低下し、生産性が悪化してしまうことがあった。また、基板の外縁付近と中心付近とで処理ガスの供給量に差異が生じてしまい、基板処理の面内均一性が低下してしまう場合があった。例えば、基板の外縁付近に形成される薄膜が、基板の中心付近に形成される薄膜に比べて厚くなってしまうことがあった。
【0004】
本発明は、多段に積層された基板の中心付近への処理ガスの供給を促進させることが可能な基板処理装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、
積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、
前記処理ガス供給系は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を前記処理ガスが流れるノズル軸と、
上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記ノズル軸と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備える基板処理装置が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で複数の前記基板を積層して支持する基板支持部材を備え、
前記基板支持部材は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れる中空の支柱と、
上流端が前記支柱の長手方向に沿って配列するように前記支柱の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記支柱内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記支柱と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成され、前記基板を下方から支持する複数のノズルと、を備える基板処理装置が提供される。
【0007】
本発明の更に他の態様によれば、
積層された複数の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記基板の外縁より内側に開口したガス供給口を有する複数のノズルから、前記基板の表面に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の複数の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有する
半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法によれば、多段に積層された基板の中心付近への処理ガスの供給を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図2】図1に示す処理炉のA−A’線断面図である。
【図3】図1に示す処理炉が備える回転機構部周辺の断面拡大図である。
【図4】図1に示す処理炉が備える処理ガス供給系及び排気系の概略構成図である。
【図5】図1に示す処理炉が備えるノズル軸及び可動ノズルの回転動作を示す図であり、(a)は可動ノズルをウエハ間の空間内に挿入した状態を、(b)は可動ノズルをウエハ間の空間内から退避させた状態をそれぞれ示している。
【図6】図1に示す処理炉が備える処理室内外にボートを搬送する様子を示す概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉の縦断面図である。
【図8】図7に示す処理炉のA−A’線断面図である。
【図9】図7に示す処理炉が備える処理室内外にボートを搬送する様子を示す概略図である。
【図10】従来の処理炉の縦断面図である。
【図11】図10に示す処理炉のA−A’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態に係る基板処理装置及び半導体装置の製造方法を、図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る基板処理装置は、一例として、IC(Integrated Circuit)等の半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成する基板処理工程を実施する装置として構成されている。
【0011】
本実施形態に係る基板処理装置は、積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、前記処理ガス供給系は、前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を前記処理ガスが流れるノズル軸と、上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記ノズル軸と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備えている。
【0012】
図1は、本実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉202の縦断面図である。図2は、図1に示す処理炉202のA−A’線断面図である。図3は、図1に示す処理炉202が備える回転機構部260a,260b周辺の断面拡大図である。図4は、図1に示す処理炉202が備える処理ガス供給系及び排気系の概略構成図である。図5は、図1に示す処理炉202が備えるノズル軸270a,270b及び可動ノズル271a,271
bの回転動作を示す図であり、(a)は可動ノズル271aをウエハ200間の空間内に挿入した状態を、(b)は可動ノズル271a,271bをウエハ200間の空間から退避させた状態をそれぞれ示している。図6は、図1に示す処理炉202が備える処理室201内外にボート217を搬送する様子を示す概略図である。
【0013】
(1)処理炉の構成
まず、本実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉202の構成について説明する。
【0014】
(反応容器)
図1に示すように、本実施形態に係る処理炉202は、加熱部(加熱機構)としてのヒータ207を有している。ヒータ207は円筒形状であり、支持板としての図示しないヒータベースに支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0015】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に、反応管としてのプロセスチューブ203が配設されている。プロセスチューブ203は、例えば石英(SiO)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。プロセスチューブ203の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201内には、基板としてのウエハ200を、基板支持部材としての後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に積層させた状態で収容可能に構成されている。
【0016】
プロセスチューブ203の下方には、プロセスチューブ203と同心円状に、インレットフランジ(マニホールド)209が配設されている。インレットフランジ209は、例えばステンレス等からなり、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。インレットフランジ209の上端開口は、プロセスチューブ203の下端開口に気密に当接しており、プロセスチューブ203を下方から支持するように構成されている。なお、インレットフランジ209とプロセスチューブ203との間には、シール部材としての図示しないOリングが設けられている。インレットフランジ209がヒータベースに支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。主に、プロセスチューブ203とインレットフランジ209とにより反応容器が形成される。なお、プロセスチューブ203内には、温度検出器としての図示しない温度センサが配設されている。温度センサにより検出された温度情報に基づいてヒータ207への通電具合を調整することにより、処理室201内の温度が所定の温度分布となるように構成されている。
【0017】
インレットフランジ209の下端開口には、例えばステンレス等の金属からなるリング状の炉口フランジ210が気密に設けられている。インレットフランジ209と炉口フランジ210との間には、シール部材としてのOリング220bが設けられている(図3参照)。炉口フランジ210の下方には、炉口フランジ210の下端開口(炉口)を気密に閉塞可能な真空気密板(炉口蓋体)としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、炉口フランジ210の下端に垂直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、炉口フランジ210の下端と当接するシール部材としてのOリング220c,220d,220eが設けられている(図3参照)。シールキャップ219の処理室201と反対側(下方)には、後述するボート217を回転させるボート回転機構255が設置されている。ボート回転機構255の回転軸は、シールキャップ219を鉛直方向に貫通して円盤状のボート台256に接続されている。ボート回転機構255を作動させることで、ボート台256上に立設されたボート217を回転させることができるように構成されている。ボート回転機構255の回転軸とシ
ールキャップ219との間は、磁気シール255aにより気密に封止されている。なお、シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に配置された図示しない昇降機構によって垂直方向に昇降されるように構成されている。シールキャップ219を昇降させることで、ボート台256上に立設されたボート217を処理室201内外に搬送可能なように構成されている。
【0018】
(ボート)
基板支持部材としてのボート217は、複数枚のウエハ200を水平姿勢でかつ互いに中心を揃えた状態で整列させて多段に支持するように構成されている。ボート217は、複数本(本実施形態では例えば4本)の支柱217aと、支柱217aを立設させる底板217dと、支柱217aを上部から支持する天板217cと、を備えている。支柱217aには、ウエハ200を下方から支持する支持部材217bが、ウエハ200の積層方向に沿って所定の間隔で配列するように複数設けられている。支柱217a、底板217d、天板217c、支持部材217bは、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料から構成されている。これらは一体成型されていてもよい。なお、ボート217の下部には、例えば石英や炭化珪素等の耐熱材料からなる断熱板218が設けられており、ヒータ207からの熱をシールキャップ219側に伝え難くするように構成されている。
【0019】
(処理ガス供給系)
図1及び図2に示すように、処理室201内にはノズル軸270a,270bが立設されている。ノズル軸270a,270bは、処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に、ウエハ200の積層方向に沿うように延在されている。ノズル軸270a,270bは、その内部を処理ガスが下方から上方に向けて流れるようにそれぞれ中空筒状に形成されている。なお、ノズル軸270a,270bは、例えば石英などの誘電体材料(耐熱絶縁材料)により構成されている。
【0020】
ノズル軸270a,270bには、ノズルとしての可動ノズル271a,271bが、それぞれ水平姿勢で複数設けられている。可動ノズル271a,271bは、それぞれ中空筒状に形成されている。可動ノズル271a,271bの上流端は、ノズル軸270a,270bの長手方向に沿って所定の間隔で配列するように、すなわちウエハ200間の空間にそれぞれ対応するように、ノズル軸270a,270bの胴部にそれぞれ気密に接続されている。ノズル軸270a,270b内の空間と可動ノズル271a,271b内の空間とは連通しており、ノズル軸270a,270b内を流れた処理ガスは、可動ノズル271a,271b内に分散して供給されるように構成されている(図2参照)。可動ノズル271a,271bの下流側(本実施形態では先端)には、可動ノズル271a,271b内に供給された処理ガスを噴射するガス供給口が開設されている。なお、可動ノズル271a,271bの上流端とガス供給口との間の距離は、ノズル軸270a,270bとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている。また、可動ノズル271a,271bは、例えばウエハ200外縁と同じ曲率半径を有するように、ウエハ200外縁に沿ってそれぞれ湾曲して構成されている。
【0021】
図1及び図3に示すように、ノズル軸270a,270bは、シールキャップ219に設けられた回転機構部260a,260bによってそれぞれ立設されている。回転機構部260a,260bは、シールキャップ219を貫通するように設けられている。回転機構部260a,260bは、シールキャップ219の貫通孔の下端外周を囲うように設けられた円筒状の回転機構ベース262a,262bと、回転機構ベース262a,262b内に挿入されてシールキャップ219を貫通するカップ状の回転軸261a,261bと、回転軸261a,261bを下方から支持すると共に、回転軸261a,261bを回転可能に構成されたノズル駆動用モータ263a,263bと、を備えている。なお、シールキャップ219下面と回転機構ベース262a,262b上端開口との間は、シー
ル部材としてのOリング220aにより気密に封止されている。また、回転機構ベース262a,262b内壁と回転軸261a,261b側壁との間は、磁気シール265a,265bにより上下がそれぞれ気密に封止されている。回転軸261a,261bの上端開口にはノズル軸270a,270bの下端開口が気密に設けられており、回転軸261a,261b内の空間とノズル軸270a,270b内の空間とはそれぞれ連通している。ノズル駆動用モータ263a,263bを作動させることで、回転軸261a,261bに支持されたノズル軸270a,270bを回転させることができるように構成されている。
【0022】
図3に示すように、回転軸261a,261b内には、炉口フランジ210を貫通するように設けられたガス導入路210a,210b、シールキャップ219を貫通するように設けられたガス導入路219a,219b、及びガス導入管233a,233bより構成されるガス流路がそれぞれ連通している。炉口フランジ210のガス導入路210a,210bの上端開口には、所定の処理ガスを供給する第1処理ガス供給管232a、第2処理ガス供給管232bの下流端が接続されており、ガス導入路210a,210b、ガス導入路219a,219b、ガス導入管233a,233bにより構成されるガス流路を介して、回転軸261a,261b内にそれぞれ処理ガスが供給されるように構成されている。回転軸261a,261b内に供給された処理ガスは、ノズル軸270a,270b内を下方から上方に向かって流れ、可動ノズル271a,271b内に分散するように流れた後、可動ノズル271a,271bに設けられたガス供給口から処理室201内にそれぞれ供給されるように構成されている(図2、図3の矢印参照)。
【0023】
図4に示すように、第1処理ガス供給管232aには、上流側から順に、気化器235a、バルブ243aが設けられている。気化器235aには、有機金属液体原料として、例えば金属元素としてのジルコニウム(Zr)を含有するTEMAZ(Tetrakis−Ethyl−Methyl−Amino−Zirconium:Zr[N(CH(C)等を供給する液体原料供給管234aの下流端が接続されている。液体原料供給管234aには液体流量コントローラ241aが設けられている。第1処理ガス供給管232aにおけるバルブ243aの上流側には、ベント管232eの上流端が接続されている。ベント管232eの下流端は、後述する排気管231におけるAPCバルブ244の下流側に接続されている。ベント管232eにはバルブ243eが設けられている。第1処理ガス供給管232aにおけるバルブ243aの下流側には、第1不活性ガス供給管232cの下流端が接続されている。第1不活性ガス供給管232cには、上流側から順に、不活性ガスとしての例えば窒素(N)ガスを供給する図示しない不活性ガス供給源、流量コントローラ241c、バルブ243cが設けられている。不活性ガスとしては、窒素ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0024】
液体流量コントローラ241aにより流量調整させつつ、液体原料供給管234aから気化器235a内に液状のTEMAZを供給して気化させることで、第1の処理ガス(原料ガス)としてのTEMAZガスを生成することが可能なように構成されている。この状態で、バルブ243eを閉じてバルブ243aを開くことにより、第1処理ガス供給管232a、回転機構部260aの回転軸261a、ノズル軸270a及び可動ノズル271aを介して、処理室201内にTEMAZガスを供給することが可能なように構成されている。このとき、バルブ243cを更に開くことで、流量コントローラ241cにより流量調整された窒素ガスにより、処理室201内へのTEMAZガスの拡散を促したり、処理室201内に供給されたTEMAZガスを希釈したりすることが可能なように構成されている。また、バルブ243eを開いてバルブ243aを閉じることにより、気化器235aによるTEMAZガスの供給を停止することなく、処理室201内へのTEMAZガスの供給を停止することが可能なように構成されている。また、バルブ243aを閉じた
状態でバルブ243cを開くことで、パージガスとしての窒素ガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。
【0025】
また、第2処理ガス供給管232bには、上流側から順に、第2の処理ガス(反応ガス)としての酸素含有ガス(酸化剤)であるオゾン(O)ガスを供給する図示しない酸素含有ガス供給源、流量コントローラ241b、バルブ243bが設けられている。第2処理ガス供給管232bにおけるバルブ243bの下流側には、第2不活性ガス供給管232dの下流端が接続されている。第2不活性ガス供給管232dには、上流側から順に、不活性ガスとしての例えば窒素(N)ガスを供給する図示しない不活性ガス供給源、流量コントローラ241d、バルブ243dが設けられている。酸素含有ガスとしては、オゾンガスの他、酸素(O)ガスや水蒸気(HO)等を用いてもよい。不活性ガスとしては、窒素ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0026】
流量コントローラ241bにより流量調整させつつ、バルブ243bを開くことにより、第2処理ガス供給管232b、回転機構部260bの回転軸261b、ノズル軸270b及び可動ノズル271bを介して、処理室201内に第2の処理ガスとしてのオゾンガスを供給することが可能なように構成されている。このとき、バルブ243dを更に開くことで、流量コントローラ241dにより流量調整された窒素ガスにより、処理室201内へのオゾンガスの拡散を促したり、処理室201内に供給されたオゾンガスを希釈したりすることが可能なように構成されている。また、バルブ243bを閉じた状態でバルブ243dを開くことで、パージガスとしての窒素ガスを処理室201内に供給することが可能なように構成されている。
【0027】
主に、第1処理ガス供給管232a、バルブ243a、回転機構部260a、ノズル軸270a及び可動ノズル271aにより、TEMAZガス供給系が構成される。また、主に、第2処理ガス供給管232b、流量コントローラ241b、バルブ243b、回転機構部260b、ノズル軸270b及び可動ノズル271bにより、オゾンガス供給系が構成される。そして、主に、TEMAZガス供給系及びオゾンガス供給系により、本実施形態に係る処理ガス供給系が構成される。なお、TEMAZガス供給系及びオゾンガス供給系をそれぞれ独立した処理ガス供給系と考えてもよい。また、液体原料供給管234a、液体流量コントローラ241a、気化器235a、図示しない酸素含有ガス供給源、第1不活性ガス供給管232c、第2不活性ガス供給管232d、流量コントローラ241c,241d、バルブ243c,243d、図示しない不活性ガス供給源を、処理ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0028】
(可動ノズルの回転動作)
続いて、回転機構部260a,260bによるノズル軸270a,270b及び可動ノズル271a,271bの回転動作について説明する。
【0029】
処理室201内外へのウエハ200(すなわちボート217)の搬送時には、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間にそれぞれ退避させる。可動ノズル271a,271bをこのように退避させることで、ウエハ200を搬送する際に、可動ノズル271a,271bとウエハ200(すなわちボート217)との干渉を防ぐことができる。なお、上述したように、可動ノズル271a,271bは、ウエハ200外縁と同じ曲率半径を有するようにウエハ200外縁に沿って湾曲して構成されている。そのため、可動ノズル271a,271bを上述のように退避させることで、可動ノズル271a,271bとウエハ200(すなわちボート217)との干渉をより確実に回避することが可能である。
【0030】
ウエハ200表面に処理ガスを供給する時には、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入する。上述したように、可動ノズル271a,271bは、ノズル軸270a,270bとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている。そのため、可動ノズル271a,271bを例えば60°程度回転移動させることで、可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200の中心付近に容易に移動させることが可能となる。その結果、ウエハ200間の空間内に処理ガスを効率的に供給することが可能となる。なお、積層されたウエハ200間の間隔は、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間隔よりも狭く構成されている。すなわち、積層されたウエハ200間のコンダクタンスは、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間のコンダクタンスよりも小さくなっている。そのため、仮にウエハ200外縁と処理室201内壁との間に設けたノズルから処理ガスを供給するようにすると、処理ガスは、ウエハ200間には少量しか流れず、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間の空間を通って大部分の処理ガスが排気されてしまう。これに対し、上述のように可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入して処理ガスを供給することで、ウエハ200間の空間内に処理ガスを効率的に供給することが可能となる。特に、従来の基板処理装置では供給が困難であったウエハ200の中心付近への処理ガスの供給を容易に行えるようになる。
【0031】
複数種の処理ガスをウエハ200表面へ交互に供給する時には、回転機構部260a,260bを交互に作動させてノズル軸270a,270bを交互に回転させ、所定の処理ガスを供給する可動ノズルをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、他の処理ガスを供給する他の可動ノズル(処理ガスを供給しない他の可動ノズル)を処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させる。例えば、可動ノズル271aによりTEMAZガスをウエハ200表面に供給する際には、可動ノズル271aをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、オゾンガスを供給するための可動ノズル271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させる。また同様に、可動ノズル271bによりオゾンガスをウエハ200表面に供給する際には、可動ノズル271bをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、TEMAZガスを供給するための可動ノズル271aを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させる。このように、一方の処理ガスを供給する際に、他方の処理ガスを供給する可動ノズルをウエハ200間の空間から退避させることで、可動ノズルによる処理ガスの無用な乱れを抑制させることができ、ウエハ200表面に対して処理ガスをより均一に供給できるようになる。更には、可動ノズル表面への処理ガスの無用な吸着や、処理ガスが衝突することによる可動ノズルのダメージ等を抑制できるようになる。
【0032】
(排気系)
図1に示すように、インレットフランジ209の側方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。排気口231aには、図4に示す排気管231の上流端が接続されている。排気管231には、上流側から順に、図示しない圧力センサ、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。圧力センサにより検出された圧力情報に基づきAPCバルブ244の開度を調整することで、処理室201内の圧力が所定の圧力(真空度)となるよう真空排気し得るように構成されている。なお、APCバルブ244は、弁を開閉することで処理室201内の真空排気を開始或いは停止させることができ、更に弁開度を調整することで処理室201内の圧力を調整することができるよう構成された開閉弁である。
【0033】
(コントローラ)
制御部(制御手段)であるコントローラ280は、液体流量コントローラ241a、流量コントローラ241b,241c,241d、バルブ243a,243b,243c,243d,243e、気化器235a、圧力センサ(図示せず)、APCバルブ244、真空ポンプ246、ノズル駆動用モータ263a,263b、ヒータ207、温度センサ(図示せず)、ボート回転機構255、昇降機構(図示せず)にそれぞれ接続されている。コントローラ280は、液体流量コントローラ241a、流量コントローラ241b,241c,241dによる流量調整動作、バルブ243a,243b,243c,243d,243e及びAPCバルブ244の開閉動作、真空ポンプ246の排気動作、ノズル駆動用モータ263a,263bの回転動作、ヒータ207の加熱動作、ボート回転機構255の回転動作、昇降機構の昇降動作をそれぞれ制御するように構成されている。
【0034】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置の処理炉202を用い、半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に薄膜を成膜するシーケンス例について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0035】
従来のCVD(Chemical Vapor Deposition)法やALD(Atomic Layer Deposition)法では、例えば、CVD法の場合、形成する薄膜を構成する元素を含む複数種類の処理ガスを同時に供給し、また、ALD法の場合、形成する薄膜を構成する元素を含む複数種類の処理ガスを交互に供給する。そして、ガス供給時のガス供給流量、ガス供給時間等の供給条件を制御することにより、例えばシリコン窒化膜(SiN膜)やシリコン酸化膜(SiO膜)を形成する。これらの技術では、例えばSiN膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるN/Si≒1.33となるように、また例えばSiO膜を形成する場合、膜の組成比が化学量論組成であるO/Si≒2となるようにすることを目的として、供給条件を制御する。
【0036】
一方、形成する膜の組成比が化学量論組成とは異なる所定の組成比となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。すなわち、形成する薄膜を構成する元素のうち少なくとも一つの元素が他の元素よりも化学量論組成に対し過剰となるようにすることを目的として、供給条件を制御することも可能である。このように、形成する薄膜を構成する元素の比率、すなわち、薄膜の組成比を制御しつつ成膜を行うことも可能である。
【0037】
以下では、種類の異なる処理ガスを交互に供給して化学両論組成を有する絶縁膜を形成するシーケンス例について説明する。ここでは、第1の処理ガス(原料ガス)として、有機液体金属原料であるTEMAZを気化させたTEMAZガスを、第2の処理ガス(反応ガス)として、酸素(O)含有ガス(酸化剤)であるオゾンガスを用い、絶縁膜であるジルコニウム酸化膜(ZrO膜。以下、単にZrO膜という)をウエハ200上に形成する。
【0038】
(ウエハ搬入工程(S10))
まず、複数枚のウエハ200をボート217に装填(ウエハチャージ)する。そして、図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217を、図示しない昇降機構によって上昇させて処理室201内に搬入(ボートロード)する。この状態で、シールキャップ219はOリング220c,220d,220eを介して炉口フランジ210の下端をシールした状態となる。なお、処理室201内にボート217を搬入する時には、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間にそれぞれ退避させておく。
【0039】
(圧力及び温度調整工程(S20))
処理室201内が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気する。この際、処理室201内の圧力は排気管231に設けられた図示しない圧力センサで測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ244の開度がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、図示しない温度センサが検出した温度情報に基づき、ヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。続いて、ボート回転機構255を作動させ、ウエハ200の回転を開始させる。なお、圧力調整、温度調整及びウエハ200の回転は、少なくとも後述する成膜工程(S30)が完了するまで継続する。
【0040】
また、工程S10〜S20と並行して、有機液体金属原料(Zr原料)であるTEMAZを気化させて第1の処理ガスとしてのTEMAZガスを生成(予備気化)させておく。すなわち、液体流量コントローラ241aにより流量調整させつつ、液体原料供給管234aから気化器235a内にTEMAZを供給して気化させることで、TEMAZガスを生成させておく。この予備気化工程では、真空ポンプ246を作動させつつ、バルブ243aを閉じたまま、バルブ243eを開くことにより、TEMAZガスを処理室201内に供給することなく処理室201をバイパスして排気しておく。気化器235aにてTEMAZガスを安定した状態で生成させるには所定の時間を要するが、本実施形態では、TEMAZガスを予め生成させて安定供給可能な状態としておき、バルブ243a,243eの切替によりTEMAZガスの安定した供給を迅速に開始或いは停止できるようにしている。
【0041】
(成膜工程(S30))
続いて、以下の工程S31〜S34を1サイクルとしてこのサイクルを所定回数行うことにより、ALD法により、絶縁膜であるZrO膜をウエハ200上に形成する。以下に、各工程について説明する。
【0042】
<TEMAZガス供給工程(S31)>
まず、回転機構部260aを作動させてノズル軸270aを回転させ、可動ノズル271aの下流端(ガス供給口)を、ウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入する。可動ノズル271aは、ノズル軸270aとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されているため、可動ノズル271aを例えば60°程度回転させることで、可動ノズル271aの下流端(ガス供給口)を、例えばウエハ200の中心付近に移動させることができる。
【0043】
可動ノズル271aの移動が完了したら、バルブ243eを閉じると共にバルブ243aを開き、第1処理ガス供給管232a、回転機構部260aの回転軸261a、ノズル軸270a及び可動ノズル271aを介して処理室201内へTEMAZガスを供給する。このとき、バルブ243cを更に開くことで、流量コントローラ241cにより流量調整された窒素ガスにより、処理室201内へのTEMAZガスの拡散を促したり、処理室201内へ供給するTEMAZガスを希釈したりしてもよい。
【0044】
処理室201内に供給されたTEMAZガス及び窒素ガスは、処理室201内を拡散し、ウエハ200間の空間を流れた後、排気管231から排気される。なお、上述したように、処理室201内に供給されたTEMAZガスは、コンダクタンスの関係から、ウエハ200間には流れ難く、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間の空間を通って排気され易くなっている。これに対し本実施形態では、可動ノズル271aの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入し、例えばウエハ200の中心付近から
TEMAZガスを供給するようにしている。これにより、ウエハ200間へのTEMAZガスの供給を促進させることができ、例えばウエハ200の外縁付近と中心付近とでTEMAZガスの供給量を均一化させることができる。
【0045】
TEMAZガスの供給により、ウエハ200表面の下地膜上に、ジルコニウムを含む層が形成される。すなわち、ウエハ200上(下地膜上)に、1原子層未満から数原子層のジルコニウム含有層としてのジルコニウム層(Zr層)が形成される。ジルコニウム含有層はTEMAZの化学吸着(表面吸着)層であってもよい。なお、ジルコニウムは、それ単独で固体となる元素である。ここでジルコニウム層とはジルコニウムにより構成される連続的な層の他、不連続な層やこれらが重なってできる薄膜をも含む。なお、ジルコニウムにより構成される連続的な層を薄膜という場合もある。また、TEMAZの化学吸着層とはTEMAZ分子の連続的な化学吸着層の他、不連続な化学吸着層をも含む。なお、ウエハ200上に形成されるジルコニウム含有層の厚さが数原子層を超えると、後述するオゾンガス供給工程(S33)での酸化の作用がジルコニウム含有層の全体に届かなくなる。また、ウエハ200上に形成可能なジルコニウム含有層の最小値は1原子層未満である。よって、ジルコニウム含有層の厚さは1原子層未満から数原子層とするのが好ましい。なお、ウエハ温度及び処理室201内の圧力等の条件を調整することにより、TEMAZガスが自己分解する条件下では、ウエハ200上にジルコニウムが堆積することでジルコニウム層が形成され、TEMAZガスが自己分解しない条件下では、ウエハ200上にTEMAZが化学吸着することでTEMAZガスの化学吸着層が形成されるよう、形成される層を調整することができる。なお、ウエハ200上にTEMAZの化学吸着層を形成する場合と比較して、ウエハ200上にジルコニウム層を形成する方が、成膜レートを高くすることができる。また、ウエハ200上にジルコニウム層を形成する方が、ウエハ200上にTEMAZの化学吸着層を形成する場合と比較して、より緻密な層を形成することができる。
【0046】
TEMAZガスを供給する際には、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を例えば50〜400Paの範囲内の圧力とする。液体流量コントローラ241aで制御するTEMAZガスの供給流量は、例えば0.1〜0.5g/分の範囲内の流量とする。TEMAZガスをウエハ200に晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば30〜240秒間の範囲内の時間とする。このときヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば150〜250℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0047】
なお、TEMAZガスを供給する際には、オゾンガスを供給するための可動ノズル271bを、ウエハ200間の空間内に挿入せずに、処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させておく。これにより、可動ノズル271bによるTEMAZガスの無用な乱れの発生を抑制させることができ、ウエハ200表面に対してTEMAZガスをより均一に供給できるようになる。更には、可動ノズル271a表面へのTEMAZガスの無用な吸着、すなわちTEMAZガスの浪費を抑制できるようになる。なお、TEMAZガスを供給する際には、可動ノズル271b内へのTEMAZガスの侵入を抑制するため、バルブ243dを開いて、可動ノズル271b内を窒素ガスでパージするとよい。
【0048】
<パージ工程(S32)>
ウエハ200上にジルコニウム含有層が形成された後、バルブ243aを閉じると共にバルブ243eを開いて、処理室201内へのTEMAZガスの供給を停止し、TEMAZガスをベント管232eへと流す。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくはジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室201内から排除する。なお、このとき、バルブ243c,243cは開いたままとし
て、窒素ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくはジルコニウム含有層形成に寄与した後のTEMAZガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0049】
<オゾンガス供給工程(S33)>
処理室201内のパージが完了したら、回転機構部260bを作動させてノズル軸270bを回転させ、可動ノズル271bの下流端(ガス供給口)を、ウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入する。可動ノズル271bは、ノズル軸270bとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されているため、可動ノズル271bを例えば60°程度回転させることで、可動ノズル271bの下流端(ガス供給口)を例えばウエハ200の中心付近に移動させることができる。なお、可動ノズル271bの回転移動は、上述のパージ工程S32と並行して行うようにしてもよい。
【0050】
可動ノズル271bの移動が完了したら、バルブ243bを開き、流量コントローラ241bにより流量調整されたオゾンガスを、第2処理ガス供給管232b、回転機構部260bの回転軸261b、ノズル軸270b及び可動ノズル271bを介して処理室201内へ供給する。このとき、バルブ243dを更に開く(或いは開いたままとする)ことで、流量コントローラ241dにより流量調整された窒素ガスにより、処理室201内へのオゾンガスの拡散を促したり、処理室201内へ供給するオゾンガスを希釈したりしてもよい。
【0051】
処理室201内に供給されたオゾンガス及び窒素ガスは、処理室201内を拡散し、ウエハ200間の空間を流れた後、排気管231から排気される。なお、上述したように、処理室201内に供給されたオゾンガスは、コンダクタンスの関係から、ウエハ200間には流れ難く、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間の空間を通って排気され易くなっている。これに対し本実施形態では、可動ノズル271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入し、例えばウエハ200の中心付近からオゾンガスを供給するようにしている。これにより、ウエハ200間へのオゾンガスの供給を促進させることができ、例えばウエハ200の外縁付近と中心付近とでオゾンガスの供給量を均一化させることができる。
【0052】
オゾンガスの供給により、TEMAZガス供給工程(S31)でウエハ200上に形成されたジルコニウム含有層は酸化され、ジルコニウム及び酸素を含む層、すなわち、ジルコニウム酸化層(ZrO層)へと改質される。なお、このとき、処理室201内に流しているガスはオゾンガスであり、処理室201内にはTEMAZガスは流していない。従って、オゾンガスは気相反応を起こすことはなく、ウエハ200上に形成されたジルコニウム含有層の一部と反応する。
【0053】
オゾンガスを供給する際には、APCバルブ244を適正に調整して、処理室201内の圧力を例えば50〜400Paの範囲内の圧力とする。流量コントローラ241bで制御するオゾンガスの供給流量は、例えば10〜20slmの範囲内の流量とする。オゾンガスにウエハ200を晒す時間、すなわちガス供給時間(照射時間)は、例えば60〜300秒間の範囲内の時間とする。このときのヒータ207の温度は、TEMAZガス供給工程(S31)と同様、ウエハ200の温度が150〜250℃の範囲内の温度となるような温度に設定する。
【0054】
なお、オゾンガスを供給する際には、TEMAZガスを供給するための可動ノズル271aを、ウエハ200間の空間内に挿入せずに、処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させておく。これにより、可動ノズル271aによるオゾンガスの無用な乱れの発生を抑制させることができ、ウエハ200表面に対してオゾンガスをより均一
に供給できるようになる。更には、オゾンガスが衝突することによる可動ノズル271aのダメージを抑制することができる。可動ノズル271aの退避動作は、上述のパージ工程S32と並行して行うようにしてもよい。なお、オゾンガスを供給する際には、可動ノズル271b内へのオゾンガスの侵入を抑制するため、バルブ243cを開いて、可動ノズル271aを窒素ガスでパージするとよい。
【0055】
<パージ工程(S34)>
ウエハ200上に形成されたジルコニウム含有層の酸化が完了した後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのオゾンガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のオゾンガスを処理室201内から排除する。なお、このとき、バルブ243c,243cは開いたままとして、窒素ガスの処理室201内への供給を維持する。これにより、処理室201内に残留する未反応もしくは酸化に寄与した後のオゾンガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。なお、パージ工程(S34)と並行して、可動ノズル271aをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、可動ノズル271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させてもよい。
【0056】
<所定回数実施工程(S35)>
上述した工程S31〜工程34を1サイクルとして、このサイクルを所定回数行うことにより、ウエハ200上に所定膜厚のジルコニウムおよび酸素を含む絶縁膜、すなわち、ZrO膜を成膜することができる。なお、上述のサイクルは、複数回繰り返すのが好ましい。
【0057】
(降温及び大気圧復帰工程(S40))
成膜工程(S30)が終了したら、ヒータ207への通電を停止したり通電量を低減したりすることで、処理室201内を所定の温度まで降温させる。このとき、バルブ243c及びバルブ243dは開いたままとして、窒素ガスの処理室201内への供給を維持し、処理室201内を窒素ガスでパージする。その後、APCバルブ244の開度を調整することで、処理室201内の圧力を例えば大気圧に復帰させる。
【0058】
(ウエハ搬出工程(S50))
その後、図示しない昇降機構によりシールキャップ219を下降させて、炉口フランジ210の下端を開口させるとともに、処理済のウエハ200を支持したボート217を処理室201内から搬出(ボートアンロード)する。その後、処理済みのウエハ200をボート217より取り出す(ウエハディスチャージ)。なお、処理室201内からボート217を搬出する時には、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間にそれぞれ退避させておく。
【0059】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0060】
(a)本実施形態によれば、ウエハ200表面に処理ガス(TEMAZガスやオゾンガス)を供給する時に、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入する。可動ノズル271a,271bは、ノズル軸270a,270bとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されているため、可動ノズル271a,271bを例えば60°程度回転移動させることで、可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200の中心付近に容易に移動させること
ができる。これにより、ウエハ200間へ処理ガスを効率的に供給させることができ、基板処理の生産性を向上させることができる。また、従来の基板処理装置では供給が困難であったウエハ200の中心付近への処理ガスの供給を容易に行えるようになり、基板処理の面内均一性を向上させることができる。
【0061】
以下、参考までに、従来の基板処理装置が備える処理炉の構成について、図10、図11を用いて説明する。従来の基板処理装置では、処理室201内への処理ガスの供給を、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間に設けたノズル273a’,273b’から行うようにしていた。上述したように、積層されたウエハ200間の間隔は、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間隔よりも狭く構成されている。すなわち、積層されたウエハ200間のコンダクタンスは、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間のコンダクタンスよりも小さくなっている。そのため、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間に設けたノズル273a’,273b’から処理ガスを供給すると、処理ガスは、ウエハ200間には流れ難くなり、ウエハ200外縁と処理室201内壁との間の空間を通って排気され易くなる。そして、基板処理の速度が低下して生産性が悪化したり、ウエハ200の外縁付近と中心付近とで処理ガスの供給量に差異が生じて基板処理の面内均一性が低下したりし易くなる。係る様子を図11に示す。
【0062】
(b)本実施形態によれば、可動ノズル271aによりTEMAZガスをウエハ200表面に供給する際に、可動ノズル271aをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、オゾンガスを供給するための可動ノズル271bを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させる。また同様に、可動ノズル271bによりオゾンガスをウエハ200表面に供給する際に、可動ノズル271bをウエハ200間の空間内に挿入すると共に、TEMAZガスを供給するための可動ノズル271aを処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間に退避させる。このように、一方の処理ガスを供給する際に、他方の処理ガスを供給する可動ノズルをウエハ200間の空間から退避させることで、可動ノズルによる処理ガスの無用な乱れを抑制させることができ、ウエハ200表面に対して処理ガスをより均一に供給できるようになる。また、可動ノズル271b表面への処理ガスの無用な吸着や、オゾンガスが衝突することによる可動ノズル271aのダメージを抑制できるようになる。
【0063】
(c)本実施形態によれば、処理室201内外へのウエハ200の搬送時には、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bを、処理室201内壁とウエハ200外縁との間の空間にそれぞれ退避させる。これにより、ウエハ200を搬送する際に、可動ノズル271a,271bとウエハ200とが干渉してしまうことを防ぐことができる。なお、可動ノズル271a,271bは、ウエハ200外縁と同じ曲率半径を有するようにウエハ200外縁に沿って湾曲して構成されているため、可動ノズル271a,271bとウエハ200との干渉をより確実に回避することが可能である。
【0064】
<本発明の第2の実施形態>
以下に、本発明の第2の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態に係る基板処理装置も、一例として、IC(Integrated Circuit)等の半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に薄膜を形成する基板処理工程を実施する装置として構成されている。
【0065】
本実施形態に係る基板処理装置は、基板を処理する処理室と、前記処理室内で複数の前記基板を積層して支持する基板支持部材を備え、前記基板支持部材は、前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れる中空の支柱と、上流端が前記支柱の長手方向に沿って配列するように前記支柱の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記支柱内を流れ
た前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記支柱と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成され、前記基板を下方から支持する複数のノズルと、を備えている。
【0066】
図7は、本実施形態にかかる基板処理装置が備える処理炉302の縦断面図である。図8は、図7に示す処理炉302のA−A’線断面図である。図9は、図7に示す処理炉302内外にボート317を搬送する様子を示す概略図である。
【0067】
本実施形態に係る処理炉302は、ノズル軸270a,270b、可動ノズル271a,271b、回転機構部260a,260bが設けられていない点が上述の実施形態と異なるが、基板支持部材としてのボート317の構成部材がこれらと同様の機能を実現するよう構成されている。なお、以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を主に説明することとし、重複する構成は同じ符号をつけて説明を省略する。
【0068】
本実施形態に係る処理炉302が備える基板支持部材としてのボート317は、ウエハ200を挟んで対向する1対の支柱を2組以上備えている。すなわち、ボート317は、ウエハ200を挟んで対向する1対の支柱317aと、同様に構成された1対の支柱317bと、の4本の支柱を備えている。これらの4本の(2組の)支柱317a,317bは、それぞれ、上述の実施形態におけるノズル軸270a,270bと同様の機能を実現するよう構成されている。具体的には、支柱317a,317bは、ウエハ200の積層方向に沿ってそれぞれ延在されている。そして、中空の支柱317a,317bは、その内部を処理ガスが下方から上方に向けて流れるようにそれぞれ中空筒状に形成されている。なお、中空の支柱317a,317bは、例えば石英などの誘電体材料(耐熱絶縁材料)により構成されている。なお、中空の支柱317a,317bは、ボート317の底板317dにより立設されており、上端を天板317cにより保持されている。
【0069】
中空の支柱317a,317bには、ノズル371a,371bが、それぞれ水平姿勢で複数設けられている。ノズル371a,371bは、それぞれ上述の実施形態における可動ノズル271a,271bと同様に機能するよう構成されている。すなわち、ノズル371a,371bは、それぞれ中空筒状に形成されている。ノズル371a,371bの上流端は、中空の支柱317a,317bの長手方向に沿って配列するように、すなわちウエハ200間の空間にそれぞれ対応するように、中空の支柱317a,317bの胴部にそれぞれ気密に接続されている。中空の支柱317a,317b内の空間とノズル371a,371b内の空間とは連通しており、支柱317a,317b内を流れた処理ガスは、ノズル371a,371b内に分散して供給されるように構成されている。ノズル371a,371bの下流側(本実施形態では先端)には、ノズル371a,371b内に供給された処理ガスをウエハ200の中心に向けて噴射するガス供給口が開設されている。なお、ノズル371a,371bの上流端とガス供給口との間の距離は、中空の支柱317a,317bとウエハ200外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている。また、ノズル371a,371bは、それぞれウエハ200の中心付近に向けてそれぞれ延在されている。従って、ノズル371a,371bは、ウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入されると共に、ウエハ200をそれぞれ下方から支持するように構成されている。なお、ノズル371a,371bは、例えば石英などの誘電体材料(耐熱絶縁材料)により構成されている。中空の支柱317a,317bとノズル371a,371bとは、一体成型されていてもよい。
【0070】
1対の中空の支柱317aの各下端には、それぞれ、上述の実施形態と同様に構成された第1処理ガス供給管232aの分岐した下流端が、シールキャップ319及びボート317の底板317dを介して接続されている。すなわち、液体流量コントローラ241aにより流量調整させつつ、液体原料供給管234aから気化器235a内に液状のTEM
AZを供給して気化させることで、第1の処理ガス(原料ガス)としてのTEMAZガスを生成させつつ、バルブ243eを閉じてバルブ243aを開くことにより、第1処理ガス供給管232a、中空の支柱317a及びノズル371aを介して、処理室201内(すなわちウエハ200間の空間内)にTEMAZガスを供給することが可能なように構成されている。TEMAZガスは、ウエハ200を挟んで対向する1対のノズル371aの各先端から、同時かつウエハ面内対称に供給されるように構成されている。係る様子を図8に示す。
【0071】
また、1対の中空の支柱317bの各下端には、それぞれ、上述の実施形態と同様に構成された第2処理ガス供給管232bの分岐した下流端が、シールキャップ319及びボート317の底板317dを介して接続されている。すなわち、流量コントローラ241bにより流量調整させつつ、バルブ243bを開くことにより、第2処理ガス供給管232b、中空の支柱317b及びノズル371bを介して、処理室201内(すなわちウエハ200間の空間内)にオゾンガスを供給することが可能なように構成されている。なお、オゾンガスは、ウエハ200を挟んで対向する1対のノズル371bの各先端から、同時かつウエハ面内対称に供給されるように構成されている。
【0072】
主に、第1処理ガス供給管232a、バルブ243a、中空の支柱317a、ノズル371aにより、TEMAZガス供給系が構成される。また、主に、第2処理ガス供給管232b、バルブ243b、中空の支柱317b、ノズル371bにより、オゾンガス供給系が構成される。そして、主に、TEMAZガス供給系及びオゾンガス供給系により、本実施形態に係る処理ガス供給系が構成されると考えることもできる。なお、TEMAZガス供給系及びオゾンガス供給系をそれぞれ独立した処理ガス供給系と考えてもよい。また、上述の実施形態と同様に、液体原料供給管234a、液体流量コントローラ241a、気化器235a、図示しない酸素含有ガス供給源、第1不活性ガス供給管232c、第2不活性ガス供給管232d、流量コントローラ241c,241d、バルブ243c,243d、図示しない不活性ガス供給源を処理ガス供給系に含めて考えてもよい。
【0073】
このように、本実施形態においては、ボート317の構成部材である中空の支柱317a,317b、ノズル371a,371bが、上述の実施形態におけるノズル軸270a,270b、可動ノズル271a,271b、回転機構部260a,260bと同様の機能を実現し、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、ノズル371a,371bの先端がウエハ200間の空間内にそれぞれ挿入されていると共に、ノズル371a,371bの先端からウエハ200の中心に向けてそれぞれ処理ガスを供給するように構成されているため、ウエハ200間へ処理ガスを効率的に供給させることができ、基板処理の生産性を向上させることができる。また、従来の基板処理装置では供給が困難であったウエハ200の中心付近への処理ガスの供給を容易に行えるようになり、基板処理の面内均一性を向上させることができる。
【0074】
なお、本実施形態によれば、回転機構部260a,260bが設けられておらず、一方の処理ガスを供給する際に、処理ガスをしない他のノズルをウエハ200間の空間から退避させるようには構成されていない。しかしながら、ウエハ200を挟んで対向するよう設けられた1対のノズルから同一種の処理ガスを同時に供給するように構成されていることから、上述の実施形態と同様に、ウエハ200表面に処理ガスをより均一に供給することが可能となる。すなわち、TEMAZガスは、ウエハ200を挟んで対向するよう設けられた1対のノズル371aから同時かつ面内対称に供給されるため、仮に、オゾンガスを供給するためのノズル371bによってTEMAZガスの供給が一部遮られたり乱されたりしたとしても、係る影響を受けることなく、ウエハ200表面により均一にTEMAZガスを供給することが可能となる。また、同様に、オゾンガスは、ウエハ200を挟んで対向するよう設けられた1対のノズル371bから同時かつ面内対称に供給されるため
、仮に、TEMAZガスを供給するためのノズル371bによってオゾンガスの供給が一部遮られたり乱されたりしたとしても、係る影響を受けることなく、ウエハ200表面により均一にオゾンガスを供給することが可能となる。
【0075】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0076】
例えば、上述の実施形態では、高誘電率絶縁膜としてZrO膜を形成する場合について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、高誘電率絶縁膜として、酸化ハフニウム膜(HfO膜)、酸化チタン膜(TiO膜)、酸化ニオブ膜(Nb膜)、酸化タンタル膜(Ta膜)、チタン酸ストロンチウム膜(SrTiO膜)、チタン酸バリウムストロンチウム膜(BaSrTiO膜)、チタン酸ジルコン酸鉛膜(PZT膜)、もしくは、それらの膜に他の元素を添加した膜を形成する場合にも、本発明は好適に適用可能である。さらには、絶縁膜以外に、金属膜、窒化膜、炭化膜等の他の薄膜を形成する場合にも好適に適用可能である。
【0077】
また、上述の実施形態では、酸化剤としてオゾン(O)ガスを用いる場合について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、プラズマで活性化した酸素含有物質や、HOガスを酸化剤として用いてもよい。また、不活性ガスとしては、窒素(N)ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いてもよい。
【0078】
また、上述の実施形態では、処理ガスを交互に供給するALD法により薄膜を形成する場合について説明したが、本発明は係る形態に限定されず、複数種の処理ガスを同時に供給するCVD法により薄膜を形成する場合にも好適に適用可能である。この場合、第1の実施形態に係る基板処理装置では、回転機構部260a,260bを作動させてノズル軸270a,270bを回転させ、可動ノズル271a,271bの下流端(ガス供給口)をウエハ200間の空間内にそれぞれ同時に挿入し、可動ノズル271a,271bのそれぞれから同時に処理ガスを供給するとよい。また、第2の実施形態に係る基板処理装置では、ウエハ200を挟んで対向する1対のノズル371aと、ウエハ200を挟んで対向する2対のノズル371bと、のそれぞれから同時に処理ガスを供給するとよい。
【0079】
また、上述の実施形態では、基板上に薄膜を形成する処理を一例として説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。すなわち、積層された基板間に処理ガスを供給する処理であれば、成膜処理以外に、酸化処理、窒化処理、炭化処理、エッチング処理、アニール処理等の他の基板処理についても好適に適用可能である。
【0080】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
【0081】
本発明の一態様によれば、
積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、
前記処理ガス供給系は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を前記処理ガスが流れるノズル軸と、
上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記ノズル軸と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備え
る基板処理装置が提供される。
【0082】
本発明の他の態様によれば、
積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、
前記処理ガス供給系は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を前記処理ガスが流れるノズル軸と、
上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記ガス供給口が前記基板間の空間内にそれぞれ挿入可能に構成されている複数のノズルと、を備える基板処理装置が提供される。
【0083】
好ましくは、
前記ノズル軸には回転機構部が設けられ、
前記回転機構部により前記ノズル軸を回転させることで、前記ノズルの下流側に設けられた前記ガス供給口を前記基板間の空間内にそれぞれ挿入可能に構成されている。
【0084】
また好ましくは、
前記処理室内外への前記基板の搬送時には前記ノズルを前記処理室内壁と前記基板の外縁との間の空間に退避させ、
前記処理ガスの前記基板表面への供給時には前記ノズルを前記基板間の空間内に挿入するよう前記回転機構部を制御する制御部を備える。
【0085】
また好ましくは、
前記処理ガス供給系は、前記ノズル軸、前記ノズル及び前記回転機構部の組を複数有し、複数種の処理ガスを前記処理室内に供給可能に構成されている。
【0086】
また好ましくは、
複数種の処理ガスを前記基板上に交互に供給する時には、
所定の処理ガスを供給するノズルを前記基板間の空間内に挿入すると共に、他の処理ガスを供給するノズルを前記処理室内壁と前記基板の外縁との間の空間に退避させるよう前記回転機構部を制御する制御部を備える。
【0087】
また好ましくは、
前記ノズル軸には、少なくとも前記処理室内に積層可能な基板の枚数と同じ数のノズルが設けられている。
【0088】
また好ましくは、
前記処理ガスは、前記回転機構の内部を通って前記ノズル軸内に供給され、前記ノズルを介して前記処理室内に供給される。
【0089】
また好ましくは、
前記ノズルは、前記基板の外縁と同じ曲率半径を有するよう湾曲して構成されている。
【0090】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で複数の前記基板を積層して支持する基板支持部材を備え、
前記基板支持部材は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れる中空の支柱と、
上流端が前記支柱の長手方向に沿って配列するように前記支柱の胴部にそれぞれ接続さ
れ、下流側に前記支柱内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記支柱と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成され、前記基板を下方から支持する複数のノズルと、を備える基板処理装置が提供される。
【0091】
好ましくは、
前記基板支持部材は、前記基板を挟んで対向する1対の前記支柱を2組以上備える。
【0092】
また好ましくは、
前記基板支持部材は、前記基板を挟んで対向する1対の前記ノズルを前記基板毎に2組以上備え、
前記基板を挟んで対向するよう設けられた1対の前記ノズルの各先端から同一種の前記処理ガスを同時に供給するように構成されている。
【0093】
また好ましくは、
前記支柱及び前記ノズルは、誘電体材料により一体成型されている。
【0094】
また好ましくは、
前記支柱には、少なくとも前記基板支持部材が積層可能な基板の枚数と同じ数の前記ノズルが設けられている。
【0095】
本発明の更に他の態様によれば、
積層された複数の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記基板の外縁より内側に開口したガス供給口を有する複数のノズルから、前記基板の表面に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の複数の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0096】
本発明の更に他の態様によれば、
積層された複数の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れるノズル軸と、上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記ノズル軸と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備える処理ガス供給系から、前記基板の表面に前記処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の複数の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0097】
本発明の更に他の態様によれば、
複数の基板を積層して支持し、前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れる中空の支柱と、上流端が前記支柱の長手方向に沿って配列するように前記支柱の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記支柱内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記支柱と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成され、前記基板を下方から支持する複数のノズルと、を備える基板支持部材を処理室内に搬入する工程と、
前記ノズルから前記基板の表面に前記処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の複数の前記基板を支持した前記基板支持部材を前記処理室内から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法が提供される。
【0098】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を多段に等間隔に積層した状態で処理室内に収容して加熱しながら処理する基板処理装置であって、
積層された前記基板間の空間内に挿入されたノズルから前記基板の表面に処理ガスを供給するよう構成された基板処理装置が提供される。
【0099】
好ましくは、
複数の前記ノズルは中空の支柱に前記基板の積層間隔と同一の間隔で設けられ、
前記中空の柱を回転させることで前記ノズルの先端部が前記基板の中央付近に挿入するように構成されている。
【0100】
本発明の更に他の態様によれば、
基板を多段に等間隔に積層した状態で処理室内に収容して加熱しながら処理する基板処理装置であって、
前記基板を水平姿勢で支持する支持部の先端から前記基板の表面に処理ガスを供給するよう構成された基板処理装置が提供される。
【0101】
好ましくは、
前記基板を水平姿勢で支持する支持部が前記基板毎に4つ以上設けられ、
前記基板を挟んで互いに対向するように設けられた1対の支持部の先端から、同一種の処理ガスが、同時に供給されるように構成されている。
【0102】
また好ましくは、
前記基板を水平姿勢で支持する複数の前記支持部と、前記支持部が設けられる中空の支柱と、前記支柱を立設する底板とが、誘電体材料により一体成型され、前記基板を多段に等間隔に積層した状態で支持する基板支持部材を構成している。
【0103】
また好ましくは、
前記処理ガスが、前記処理室外から、前記処理室下側に設けられた真空気密板、前記底板、前記支柱及び前記支持部を介して前記基板の表面に供給されるよう構成されている。
【符号の説明】
【0104】
200 ウエハ(基板)
201 処理室
202 処理炉
217 ボート(基板支持部材)
232a 第1処理ガス供給管
232b 第2処理ガス供給管
232c 第1不活性ガス供給管
232d 第2不活性ガス供給管
232e ベント管
234a 液体原料供給管
260a 回転機構部
260b 回転機構部
270a ノズル軸
270b ノズル軸
271a 可動ノズル(ノズル)
271b 可動ノズル(ノズル)
280 コントローラ(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の基板を収容して処理する処理室と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、を備え、
前記処理ガス供給系は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を前記処理ガスが流れるノズル軸と、
上流端が前記ノズル軸の長手方向に沿って配列するように前記ノズル軸の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記ノズル軸内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記ノズル軸と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成されている複数のノズルと、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内で複数の前記基板を積層して支持する基板支持部材を備え、
前記基板支持部材は、
前記基板の積層方向に沿って延在し、内部を処理ガスが流れる中空の支柱と、
上流端が前記支柱の長手方向に沿って配列するように前記支柱の胴部にそれぞれ接続され、下流側に前記支柱内を流れた前記処理ガスを分散させて供給するガス供給口がそれぞれ設けられ、前記上流端と前記ガス供給口との間の距離が、前記支柱と前記基板の外縁との間の距離よりもそれぞれ長く構成され、前記基板を下方から支持する複数のノズルと、を備える
ことを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
積層された複数の基板を処理室内に搬入する工程と、
前記基板の外縁より内側に開口したガス供給口を有する複数のノズルから、前記基板の表面に処理ガスを供給して前記基板を処理する工程と、
処理後の複数の前記基板を前記処理室内から搬出する工程と、を有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−89818(P2013−89818A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230055(P2011−230055)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】