基板処理装置
【課題】真空搬送室に、基板を処理するための複数の処理室を接続した基板処理装置において、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑制する技術を提供すること。
【解決手段】真空雰囲気に維持された真空搬送室13の周囲に、基板に対して真空処理が行なわれる複数の処理室30を設ける。前記処理室30は容器本体31の上部開口を蓋体32で開閉するように構成されている。蓋体開閉機構6を、複数の処理室30の各々の蓋体32の開閉位置を通りながら前記真空搬送室13の外周に沿って移動するように設ける。前記蓋体32には被保持部5が設けられており、蓋体開閉機構6に設けられた蓋体保持機構7を前記開閉位置にて上昇させることにより、処理室30から蓋体32を持ち上げる。
【解決手段】真空雰囲気に維持された真空搬送室13の周囲に、基板に対して真空処理が行なわれる複数の処理室30を設ける。前記処理室30は容器本体31の上部開口を蓋体32で開閉するように構成されている。蓋体開閉機構6を、複数の処理室30の各々の蓋体32の開閉位置を通りながら前記真空搬送室13の外周に沿って移動するように設ける。前記蓋体32には被保持部5が設けられており、蓋体開閉機構6に設けられた蓋体保持機構7を前記開閉位置にて上昇させることにより、処理室30から蓋体32を持ち上げる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空搬送室に、基板を処理するための複数の処理室を接続した基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばFPD(Flat Panel Display)の製造工程において、真空搬送室の周囲に複数の処理室を設け、搬送室内に設けられた搬送アームにより真空搬送室と処理室との間で、ガラス基板等の基板の受け渡しを行う基板処理装置が知られている。被処理体である基板に対し、前記処理室にて行われる処理としては、エッチングやアッシング、成膜等の処理が挙げられる。
【0003】
前記処理室は、例えば基板が載置されると共に上部が開口する容器本体と、当該容器本体の開口部を開閉可能な蓋体とにより構成され、処理室内のメンテナンスや、蓋体のメンテナンス時には、蓋体を容器本体から取り外すことができるようになっている。蓋体には、処理ガスを供給するガスシャワーヘッドが設けられ、蓋体のメンテナンス作業の一つとしてガスシャワーヘッドの部品の交換等がある。
【0004】
この蓋体の開閉動作については特許文献1に提案されている。この構成では、処理室毎に設けられた蓋体の開閉機構により容器本体から蓋体を上昇させた後、蓋体を容器本体から外れた位置までスライドさせる。次いで蓋体を下降させてから反転させることが行われている。この手法では、蓋体を処理室への基板の搬送方向と直交する方向にスライド移動させることにより、蓋体の開閉動作に必要な面積を小さくすることができる。
【0005】
しかしながら、FPD基板は大型であるため、処理室も平面形状における一辺の大きさが、例えば夫々3m、3.5mもの大型の角筒型容器となる。従って処理室毎に蓋体を開閉及び反転させる機構とスペースが必要な構成では、処理室が増加すると蓋体を反転するスペースを確保しにくくなり、スペースを確保しようとすると、装置がさらに大型化する懸念がある。また処理室毎に蓋体の開閉機構が設けられているので、処理室が増加すると装置の製造コストの高騰化を招くおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−67218号公報(図1、図19参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、真空搬送室に、基板を処理するための複数の処理室を接続した基板処理装置において、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の基板処理装置は、基板搬送機構が設けられ、真空雰囲気に維持される真空搬送室と、
この真空搬送室の側面に接続された予備真空室と、
前記真空搬送室の側面に前記予備真空室とは周方向に離れて接続され、かつ互いに周方向に配置されると共に、各々容器本体の上に蓋体を設けて構成され、基板を処理するための複数の処理室と、
前記真空搬送室の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材と、
このガイド部材に沿ってガイドされる移動体と、
この移動体の移動により前記処理室の上方を通るように当該移動体に設けられ、前記容器本体に対して蓋体を着脱するために蓋体を保持して昇降させる蓋体保持機構と、
前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記蓋体には、横方向に伸び、下方に空間が形成された係止部分を含む被保持部が設けられ、前記蓋体保持機構には、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記係止部分の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分を下方側から押し上げることにより蓋体を持ち上げる保持部が設けられるように構成してもよい。
【0010】
さらに、前記ガイド部材は、前記真空搬送室の上に設けられるか、または前記真空搬送室と処理室との間に設けられた内側ガイド部材と、前記処理室に対して真空搬送室とは反対側に設けられた外側ガイド部材と、を備えるように構成してもよい。
【0011】
さらにまた、前記真空搬送室は平面形状が多角形に形成され、前記真空搬送室の側面のうち、その外方側にメンテナンス領域を確保するための側面を除く他の側面に、夫々前記予備真空室と処理室とが接続されるように構成してもよい。この際、前記メンテナンス領域には、前記蓋体保持機構から受け渡された蓋体を保持して反転させる蓋体反転機構を設けてもよい。さらにまた、前記真空搬送室は六つの側面を有し、該側面に一つの前記予備真空室と四つの処理室が接続されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空搬送室の周囲に沿って配置された複数の処理室に対し、蓋体を保持して着脱(開閉)するための蓋体保持機構を共通化している。そしてこの蓋体保持機構を、処理室の並びに沿って処理室の上方領域を移動できるように構成しているため、蓋体の着脱時に真空処理室の横方向のスペースが不要となる。このため装置の大型化が抑えられ、設置面積(フットプリント)の増大を抑えることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る基板処理装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】前記基板処理装置の内部を示す横断平面図である。
【図3】前記基板処理装置に設けられた処理室の一例を示す断面図である。
【図4】前記基板処理装置の一部を示す平面図である。
【図5】前記基板処理装置の一部を示す側面図である。
【図6】前記基板処理装置の一部を示す側面図である。
【図7】前記基板処理装置の作用を説明するための側面図である。
【図8】前記基板処理装置の作用を説明するための側面図である。
【図9】前記基板処理装置の他の実施の形態を示す平面図である。
【図10】前記基板処理装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【図11】前記基板処理装置のさらに他の実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の基板処理装置の一実施の形態について、FPD基板に対して処理を行う場合について説明する。行う処理としては、例えばエッチング処理とする。図1は、この基板処理装置1の概観を示す斜視図、図2はその内部を示す横断平面図である。図中1A,1Bは、外部から、多数のFPD基板(以下「基板」という)Sを収容したキャリアC1,C2を載置するためのキャリア載置部である。これらキャリア載置部1A,1Bは、例えば昇降機構11によりキャリアC1,C2を昇降するように構成され、一方のキャリアC1には未処理基板S1が収容され、他方のキャリアC2には処理済みの基板S2が収容されるようになっている。
【0015】
また、キャリア載置部1A,1Bの奥側には、予備真空室をなすロードロック室12と真空搬送室13とが設けられている。さらに、キャリア載置部1A,1Bの間には、前記2つのキャリアC1,C2と、ロードロック室12との間で基板Sの受け渡しを行うための基板搬送手段21が支持台14上に設けられている。この基板搬送手段21は例えば上下に設けられた2本のアーム22と、これらを進退自在、及び回転自在に支持する基台23と、を備えている。前記ロードロック室12は、雰囲気が真空雰囲気と常圧雰囲気との間で切り替えられるように構成され、その内部には図2に示すように、基板Sを支持するためのバッファラック15が配設されている。図中16はポジショナーである。
【0016】
前記真空搬送室13は平面形状が多角形状、例えば正六角形状に構成され、その側面には、前記ロードロック室12とは周方向に離れて接続されかつ互いに周方向に配置される複数個の処理室30が配設されている。この例では、真空搬送室13の内の4つの辺に対応する側面に夫々4個の処理室30が気密に接続されている。
【0017】
また、真空搬送室13の残りの2つの辺の一方に対応する側面には、前記ロードロック室12が気密に接続され、他方に対応する側面の外方側にはメンテナンス領域Mが確保されており、このメンテナンス領域Mに蓋体反転機構4が設けられている。この例では、ロードロック室12と蓋体反転機構4とは互いに対向するように設けられている。
【0018】
前記真空搬送室13は真空雰囲気に維持されるように構成され、その内部には、図2に示すように、基板搬送機構25が配設されている。そして、この基板搬送機構25により、前記ロードロック室12及び4つの処理室30との間で基板Sが搬送されるようになっている。
【0019】
また、前記ロードロック室12と真空搬送室13との間、真空搬送室13と処理室30との間、及びロードロック室12と外側の大気雰囲気とを連通する開口部には、これらの間を気密にシールし、かつ開閉可能に構成されたゲートバルブGVが夫々介挿されている。
【0020】
次に、図3を参照して前記処理室30について簡単に説明する。この処理室30は、例えば平面形状が四角形状に構成され、天井部が開口する容器本体31と、この容器本体31の天井開口部を開閉するように設けられた蓋体32と、を備えている。前記蓋体32は、後述する蓋体開閉機構6により容器本体31に対して着脱自在に構成されている。前記基板Sは、例えば一辺が2.2m、他辺が2.5m程度の大きさの角型基板であり、前記処理室30は、水平断面の一辺が3m、他辺が3.5m程度の大きさに設定されている。
【0021】
前記容器本体31の内部には、その底面の上に絶縁部材33aを介して、基板Sを載置するための載置台33が配置されている。また容器本体31には排気路34aを介して、例えば真空ポンプ34よりなる真空排気手段が接続されている。一方、処理室30内の上方には、載置台33と対向するように、上部電極をなすシャワーヘッドであるガス供給部35が、蓋体32の内部に突出する支持部36aにより支持されるように設けられている。図中36bは絶縁部材、35aはガス吐出孔、37aはガス供給管、37はガス供給系、38aは給電棒、38bは整合器、38は高周波電源である。
【0022】
このような処理室30では、高周波電源38からガス供給部35に高周波電力を印加することにより、基板Sの上方側の空間に処理ガスのプラズマが形成され、これにより基板Sに対するエッチング処理が進行することになる。なお図3以外の図においては、図示の便宜上、整合器38bや高周波電源38、ガス供給系37等については省略してある。
【0023】
ここで、基板Sの処理動作について簡単に説明する。先ず、基板搬送手段21により、未処理基板S1を収容した一方のキャリアC1から基板S1をロードロック室12に搬入する。ロードロック室12内においては、バッファラック15により基板S1を保持し、基板搬送手段21のアーム22が退避した後、ロードロック室12内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。真空引き終了後、ポジショナー16により基板S1の位置合わせを行なう。
【0024】
この後、ロードロック室12と真空搬送室13との間のゲートバルブGVを開き、基板搬送機構25により基板S1を受け取り、前記ゲートバルGVを閉じる。次いで真空搬送室13と所定の処理室30の間のゲートバルブGVを開いて、前記基板S1を基板搬送機構25により当該処理室30に搬入し、前記ゲートバルブGVを閉じる。
【0025】
そして、処理室30では、既述のように、基板S1の上の空間にプラズマを形成することにより、当該基板S1に対するエッチング処理を進行させる。このエッチング処理終了後、基板搬送機構25により処理済み基板S2を受け取り、ロードロック室12に搬送し、次いで、前記基板S2は、搬送手段21により、処理済み基板用のキャリアC2に搬送される。これにより一枚の基板における処理が終了するが、この処理を未処理基板用のキャリアC1に搭載された全ての基板S1に対して行う。
【0026】
続いて処理室30についてさらに説明を続ける。前記蓋体32の上面中央には、図1〜図5に示すように、被保持部5が設けられている。図5は、図2におけるA−A線側から見た側面図である。前記被保持部5は、互いに背中合わせに配置された一対の鉤型部材51,51からなる。これら鉤型部材51,51の各垂直部分は、当該処理室30が接続される真空搬送室13の一辺に平行であって、前記一辺と直交する方向における蓋体32の中央部に対して対称に互いに離間して配置されている。鉤型部材51,51の各水平部分は互いに反対に伸び出しており、後述の蓋体保持機構7により保持される係止部分50をなしている。この例では、4つの処理室30は互いに同じ形状に構成され、各処理室30の蓋体32の上面には、互いに同じ位置に夫々同じ形状の被保持部5が形成されている。
【0027】
さらにまた、この基板処理装置には、前記被保持部5と係合して、蓋体32を開閉するための蓋体開閉機構6が、前記真空搬送室13の外周に沿って移動するように設けられている。この蓋体開閉機構6は、門型形状の移動体61を備えている。そして、この基板処理装置は、前記真空搬送室13の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材を備えており、前記移動体61はこのガイド部材に沿ってガイドされながら移動するように構成されている。この例では、真空搬送室13の上面に内側ガイド部材をなす内側レール62が設けられ、この内側レール62と各処理室30を介して一定の間隔で対向するように外側ガイド部材をなす外側レール63が設けられている。ここで図5に示すように、処理室30、真空搬送室13は、夫々支持台30a,13aにおり支持され,外側ガイドレール63は、真空搬送室13の周囲に間隔を開けて設けられた支柱63aにより支持されている。
【0028】
この例では、真空搬送室13は平面形状が正六角形状であるため、前記内側レール62及び外側レール63は夫々、真空搬送室13の中心に対して、ロードロック室12に臨む領域を除く同心円状に設けられている。こうして、前記蓋体開閉機構6は、真空搬送室13における4つの側面に設けられた処理室30に対して、互いに同じ位置関係で移動することになる。
【0029】
前記内側レール62は、真空搬送室13の上面における外周近傍領域に設けられており、内側レール62の内側領域における真空搬送室13の上面には、メンテナンス用の開口部17が設けられている。この開口部17は蓋体を有し、通常は真空搬送室13の内部を真空に保つために閉じられている。メンテナンス時は、この開口部17から真空搬送室13内の基板搬送機構25を取り出すことができるように、開口部17は当該基板搬送機構25よりも大きく構成されている。
【0030】
前記移動体61は、その一端側が前記内側レール62に沿ってガイドされ、その他端側が前記外側レール63に沿ってガイドされるように構成されている。この例では、移動体61は、図1及び図5に示すように、真空搬送室13から外方に向けて水平に伸びる水平部材64と、この水平部材64から真空搬送室13に設けられた内側レール62に向って下方側に伸びる内側足部65と、水平部材64から処理室30の外側に設けられた外側レール63に向って下方側に伸びる外側足部66と、を備えている。
【0031】
前記内側足部65の下端側には、複数個の車輪67Aが蓋体開閉機構6の移動方向に沿って設けられており、これら車輪67Aは内側移動モータ68Aにより駆動されるように構成されている。また、前記外側足部66の下端側には、複数個の車輪67Bが前記移動方向に沿って設けられており、これら車輪67Bは外側移動モータ68Bにより駆動されるように構成されている。図6に示すように、この例では車輪67Aと車輪67Bとして2個の車輪が設けられている。これら内側移動モータ68A及び外側移動モータ68Bは、蓋体開閉機構6が、各処理室30における各々の蓋体32の開閉位置を通りながら、真空搬送室13の外周に沿って移動するように駆動が制御されている。この例では、車輪67A,68Bと移動モータ67B,68Bと、により、前記移動体61を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部が構成されている。
【0032】
そしてまた、この基板処理装置1には、前記移動体61の移動により前記処理室30の上方を通るように当該移動体61に設けられ、前記容器本体31に対して蓋体32を着脱するために蓋体32を保持して昇降させる蓋体保持機構7が設けられている。この蓋体保持機構7は、前記ガイドレール6に沿って移動しながら前記係止部分50の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分50を下方側から押し上げることにより蓋体32を持ち上げる保持部70を備えている。この保持部70は、互いに向い合わせに配置された一対の鉤型部材71,71からなる。これら鉤型部材71,71の各垂直部分は、保持部70が係止部分50の下方側の空間に進入する開閉位置では、被保持部5の鉤型部材51,51と平行であって、当該鉤型部材51,51の外側に位置するように配置されている。また鉤型部材71,71の各水平部分70aは、互いに内側に伸び出すように構成されている。
【0033】
これら鉤型部材71,71は、昇降機構をなすジャッキ機構72,72により昇降自在に設けられている。このジャッキ機構72は、ネジ山が刻設された昇降軸73と、この昇降軸73に螺合するネジ山が内面に形成されたネジ部本体74と、を備えており、昇降軸73の下端に鉤型部材71,71の上端が夫々接続されている。図中75は昇降モータ、76は減速機であり、2つのネジ部本体74は、カップリング77により、共通の減速機76を介して昇降モータ75に接続されている。図中78は、ネジ部本体74、昇降モータ75や減速機76の支持台である。このようなジャッキ機構72では、昇降モータ75により減速機76、カップリング77を介してネジ部本体74を回転させると、回転方向によってネジ部本体74の内部において昇降軸73が図示しないガイド機構に沿って昇降するようになっている。図5中78a,64aは、夫々支持台78、水平部材64に形成された開口部である。
【0034】
こうして、蓋体保持機構7は、蓋体開閉機構6が前記開閉位置にあるときに、水平部分70aが被保持部5の係止部分50の下方側に位置する下降位置と、前記係止部分50を下方側から押し上げることにより蓋体32を持ち上げる上昇位置との間で昇降自在に構成されることになる。
【0035】
また、蓋体開閉機構6は、蓋体保持機構7を前記下降位置にした状態で蓋体開閉機構6を真空搬送室13の周囲に沿って移動させると、蓋体開閉機構6は処理室30の被保持部5と干渉せずに移動し、各処理室30における開閉位置では、被保持部5の係止部分50の下方側に蓋体保持機構7の水平部分70aが位置することになる。
【0036】
これにより、各処理室30における開閉位置において、蓋体保持機構7を上昇させれば、係止部分50が蓋体保持機構7により持ち上げられて蓋体32が開く。一方、蓋体開閉機構6は、前記上昇位置にて蓋体32を保持した状態で、蓋体32が他の処理室30の上を通過するように移動する。このため、前記上昇位置は、持ち上げられた蓋体32が他の処理室30の被保持部5等に干渉しないで移動できる高さに設定されている。
【0037】
蓋体保持機構7にて保持された蓋体32は、前記開閉位置にて蓋体保持機構7を下降させることにより、容器本体31の開口部を塞ぐように容器本体31に受け渡される。そして、蓋体開閉機構6は、蓋体保持機構7をこの受け渡し位置から前記下降位置までさらに下降させてから移動を再開する。
【0038】
なお、処理室30が内側レール61と外側レール62との間に介在する構成であれば、処理室30の大きさは互いに異なるように構成してもよい。この場合には、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の周方向に移動させたとき、蓋体保持機構7が前記下降位置にあるときには、当該蓋体保持機構7と各処理室30の被保持部5とが干渉せず、蓋体開閉機構6を各処理室30における開閉位置に位置させて、蓋体保持機構7を上昇させたときに被保持部5が持ち上げられるように、各処理室30の被保持部5及び蓋体開閉機構6を構成する。このような構成であれば、蓋体保持機構7を前記下降位置に配置すれば、蓋体開閉機構6により全ての処理室30の被保持部5と干渉せずに、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の外周に沿って移動でき、全ての処理室30の蓋体32の開閉を行うことができる。
【0039】
前記蓋体反転機構4は、前記蓋体保持機構7から受け渡された蓋体32を保持して反転させるように構成され、例えば図1及び図8に示すように、蓋体32が保持される枠体41と、この枠体41を水平な回転軸に沿って回転させる回転駆動部42と、を備えている。この回転駆動部42は、駆動モータ43と、減速機44と、軸受45と、を備えており、これらは支持台46により支持されている。前記枠体41は、蓋体32を保持する蓋体開閉機構6が蓋体載置位置に移動し、この位置から蓋体32を下降させたときに、当該蓋体32の周囲を保持するように構成されている。
【0040】
さらに、上述の実施の形態では、蓋体反転機構4の上方側位置が蓋体開閉機構6の待機位置となっている。そして、この例では、真空搬送室13を挟んでロードロック室12と対向する位置に蓋体反転機構4が設けられているので、ロードロック室12と蓋体反転機構4との間には、蓋体反転機構4の両側に夫々2個の処理室30が設けられている。従って、説明の便宜上、蓋体反転機構4からロードロック室12に向う方向を蓋体開閉機構6の進行方向として説明する。
【0041】
上述の実施の形態では、図4及び図5に示すように、蓋体開閉機構6を処理室30毎に開閉位置にて停止させるための停止位置を検出する位置センサが設けられている。この例では、前記位置センサは光センサよりなり、例えば発光部が処理室30の外面に設けられると共に、受光部が外側レール62の外方における前記発光部に対応する位置に設けられている。
【0042】
例えば光センサは、各処理室30毎に第1の光センサ81と第2の光センサ82と、が用意されている。第1の光センサ81は、前記開閉位置に蓋体開閉機構6が位置したときに、蓋体開閉機構6の進行方向における移動体61の一端側(前方側)で光センサ81の光軸Lを遮断する位置に設けられている。また、第2の光センサ82は、蓋体開閉機構6の進行方向における第1の光センサ64の手前側に設けられている。図中81A,82Aは発光部、81B,82Bは受光部である。これら光センサ81,82からの検出信号は、後述する制御部100に出力され、制御部100では当該検出信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ67B,68Bに減速指令や、停止指令を出力するように構成されている。
【0043】
この基板処理装置には、例えばコンピュータからなる制御部100が設けられている。この制御部100は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えており、前記プログラムには制御部100から、処理室30や搬送系、蓋体開閉機構6等に制御信号を送り、予め定めたステップを進行させることで、基板Sに対する処理、例えばエッチング処理や、蓋体32の開閉動作や、蓋体32の反転動作が実施されるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0044】
また、制御部100では、作業者からの指令に基づいて、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4の上方側の待機位置から蓋体32を開放しようとする処理室30に向けて移動させたり、蓋体32を保持した蓋体開閉機構6を前記待機位置まで移動させたり、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4に載置させるといった指令を移動モータ67B,68Bや、昇降モータ65に出力する。
【0045】
ここで、制御部100では、前記移動モータ67B,68Bのエンコーダにより、蓋体開閉機構6を処理室30における各々の蓋体32の開閉位置に停止させるときの、移動モータ68A,68Bの概ねの停止位置については把握しているが、この実施の形態においては、既述の光センサ8の検出値に基づいて、蓋体開閉機構6を前記開閉位置において高精度にて停止させるようにしている。
【0046】
例えば前記光センサ81,82は、蓋体開閉機構6が前記待機位置にあるときには、第1の光センサ81の光軸と第2の光センサ82の光軸とがいずれも遮断されないON状態であり、このON信号が制御部100に出力される。そして、蓋体開閉機構6が待機位置から蓋体32を開閉しようとする処理室30に移動するときには、先ず第2の光センサ82の光軸が移動体61の前記一端側により遮断されOFF状態となるため、第2の光センサ82からOFF信号が制御部100に出力される。制御部100ではこのOFF信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ68A,68Bに減速指令を出力し、ここからは蓋体開閉機構6は速度を落としてゆっくり移動する。
【0047】
そして、第1の光センサ81の光軸が移動体61の前記一端側により遮断されOFF状態となると、第1の光センサ81からOFF信号が制御部100に出力される。制御部100ではこのOFF信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ68A,68Bに停止指令を出力し、蓋体開閉機構6を停止させる。これにより蓋体開閉機構6は各処理室30における前記開閉位置にて正確に停止することになる。
【0048】
このような基板処理装置1では、通常時は、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4の上方側の待機位置にて待機させた状態で、基板Sに対して既述のエッチング処理が行われる。そして、蓋体32や処理室30のメンテナンス時に蓋体32を開放するときには、蓋体保持機構7を下降位置に位置させた状態にて、蓋体開閉機構6を待機位置から対象となる処理室30に向けて移動させる。このとき、待機位置と、前記対象となる処理室30との間に他の処理室30がある場合には、蓋体保持機構7の水平部分70aは、当該処理室30の被保持部5の係止部分50の下方側を通過して行く。
【0049】
そして、既述の手法にて、蓋体開閉機構6を前記対象となる処理室30の開閉位置にて停止させる(図7(a)参照)。この開閉位置では、既述のように、蓋体開閉機構6の蓋体保持機構7の水平部分70aは、前記対象となる処理室30の被保持部5の係止部分50の下方側に位置している。次いで、図7(b)に示すように、蓋体保持機構7を上昇させることにより、係止部分50を水平部分70aにて押し上げるようにして、当該処理室30から蓋体32を持ち上げる。
【0050】
こうして、蓋体開閉機構6にて蓋体32を保持した状態で、蓋体開閉機構6は前記蓋体反転機構4に向って移動する。次いで、図8(a)に示すように、当該蓋体反転機構4の上方側の蓋体載置位置にて停止し、そこから下降して蓋体32を枠体41に受け渡す。そして、蓋体保持機構7はさらに下降位置まで下降して、蓋体保持機構7の水平部分70aを、蓋体32の被保持部5の係止部分50の下方側に位置させてから、蓋体開閉機構6を、蓋体32の反転動作に干渉しない位置まで移動させる。
一方、蓋体反転機構4では、図8(b)に示すように、枠体41により蓋体32を保持した状態で、回転駆動部42により、当該枠体41を水平軸周りに回転させ、蓋体32を反転させる。蓋体32の裏面には、ガス供給部35等が取り付けられており、蓋体32を反転させ、当該ガス供給部35を上に向けた状態でメンテナンスが行われる。
【0051】
また、蓋体保持機構7を上昇位置に位置させた状態にて、蓋体開閉機構6を待機位置から対象となる処理室30に向けて移動させることもできる。この場合は、対象となる処理室30の開閉位置手前にて、蓋体保持機構7を下降位置に下げたのち、蓋体開閉機構6を開閉位置に移動させる。
【0052】
上述の実施の形態では、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の外周に沿って移動するように設けると共に、この蓋体開閉機構6に設けられた蓋体保持機構7により、複数の処理室30の蓋体32を各々持ち上げるように構成している。そして、この蓋体保持機構7を、処理室30の並びに沿って処理室30の上方領域を移動できるように構成しているため、蓋体32の着脱時に処理室30の横方向のスペースが不要となる。このため装置の大型化が抑えられ、設置面積(フットプリント)の増大を抑えることができる。
【0053】
また、共通の蓋体開閉機構6により全ての処理室30の蓋体32を着脱することができるので、処理室30毎に蓋体32の開閉機構を設ける構成に比べて、処理室30の小型化を図ることができ、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑えることができる。
【0054】
さらに、蓋体開閉機構6は処理室30の上方側に設けられているので、処理室30の周囲に蓋体開閉機構を設ける構成に比べて小型化を図ることができる。また、複数の処理室30に対して共通の蓋体開閉機構6を設ければよいことから、製造コスト的にも有利である。さらにまた、処理室30毎に蓋体32のメンテナンス領域を確保する必要がなく、複数の処理室30に対して共通のメンテナンス領域を確保すればよいので、この観点からも装置の大型化を抑えることができる。
【0055】
さらにまた、蓋体開閉機構6を門型形状に構成する場合には、その一端側が内側レール62に沿って移動し、他端側が外側レール64に沿って移動する。このため、荷重が分散されるので、蓋体保持機構7により持ち上げた蓋体32を安定した状態で移動することができる。既述のように、処理室30はかなり大型であり、蓋体32も10000kg程度もの重量があることから、荷重を分散した状態で移動することは、メリットが大きい。
【0056】
さらにまた、蓋体開閉機構6は処理室30とは別個に設けられ、内側レール62、外側レール63についても処理室30や真空搬送室13の構成に合わせて後から設置することができる。従って既存の基板処理装置に組み合わせて設けることができ、利用価値が高い。
【0057】
さらにまた、蓋体開閉機構6は真空搬送室13の外周に沿って移動自在に設けられており、通常は処理室30とは別の待機領域に位置している。このため、当該蓋体開閉機構6を設けても、処理室30と真空搬送室13との間のゲートバルブGVの近傍には障害物が存在せず、メンテナンスを妨げることがない。また、内側レール62を、真空搬送室13の外周近傍に設けることにより、真空搬送室13の天井部に既述の開口部17を形成するスペースを確保することができる。このため、必要な際には、真空搬送室13の基板搬送機構25を当該開口部17から取り出して、メンテナンスできるという利点がある。
【0058】
この例においては、内側レール62は、真空搬送室13の天板上に直接設けるようにしたが、支持板上に内側レール62を設け、この支持板を真空搬送室13の天板上に設置するようにしてもよい。このような構成では、別の領域にて内側レール62を作製しておき、後から真空搬送室13に設置できるという利点がある。また、真空搬送室13の天板上に内側レール62を支える支柱を設け、この上に内側レール62を設けるようにしてもよい。
【0059】
続いて、本発明の他の実施の形態について、図9〜図11を用いて説明する。この実施の形態が上述の実施の形態と異なる点は、内側ガイド部材をなす内側レール91を処理室30と真空搬送室13との間に設け、さらに内側レール91及び外側レール92を真空搬送室13の全周に設けたことである。内側レール91及び外側レール92を真空搬送室13の全周に設けたことにより、例えばロードロック室12の上部を処理室30の被保持部5と同様な被保持部を備えた蓋体にすることにより、ロードロック室12の蓋体の開閉も蓋体開閉機構6により行うことができるようになる。
【0060】
前記内側レール91は、処理室30と真空搬送室13との間のゲートバルブGVの上方側に、真空搬送室13の中心に対して同心円状に設けられている。そして、ゲートバルブGVが存在しない領域に設けられた支柱93により、内側レール91が支持されるように構成されている。また、外側レール92は、処理室30における真空搬送室13と反対側に、真空搬送室13の中心に対して同心円状に、支柱94により支持される状態で設けられている。
【0061】
図10に示す例は、内側レール91及び外側レール92を処理室30の上面よりも低い位置に設けた構成であり、図11に示す例は、内側レール91及び外側レール92を処理室30の上面よりも高い位置に設けた構成である。その他の構成については、上述の実施の形態と同様である。
【0062】
これらの例においても、蓋体開閉機構6は内側レール91及び外側レール92上を、真空搬送室13の外周に沿って移動するので、上述の実施の形態と同様に、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑制することができる。また、内側レール91がゲートバルブGVの上方側に設けられることにより、真空搬送室13の周囲全体に設けることができる。このため、蓋体開閉機構6が真空搬送室13の周囲を周回移動できるため、移動制御が容易となる。
【0063】
さらに、上述の実施の形態と同様に、蓋体開閉機構6を門型形状に構成しているので、荷重を分散した状態で蓋体32を安定した状態で移動することができ、内側レール91、外側レール92、蓋体開閉機構6は、既存の基板処理装置に対して後から設置することが可能である。さらにまた、内側レール91は、真空搬送室13の外側に設けているので、真空搬送室13の天井部に既述の開口部17を形成することができ、メンテナンスが便利になる。
【0064】
以上において、内側レールは、真空搬送室13の周囲に設けられた支柱により支持される状態で、真空搬送室13の天井部に設けるように構成してもよい。また、処理室30が小型である等、蓋体32の重さが軽量である場合には、蓋体開閉機構6は門型形状に限らず、真空搬送室13側又は真空搬送室13と反対側のいずれか一方から処理室30に伸びるように構成し、片側のみで支持するように構成してもよい。この場合には、ガイド部材は、真空搬送室13側又は真空搬送室13と反対側のいずれか一方に設けられる。
【0065】
さらに、複数の蓋体開閉機構6を、共通のガイド部材に沿って移動させるように設けるようにしてもよい。さらにまた、真空搬送室13の平面形状は正多角形状に限らず、複数の処理室も互いに同じ形状に構成する場合に限らない。また、搬送室に13に接続される処理室30の個数は、2個以上であればいくつでもよく、必ずしも蓋体32の蓋体反転機構4を設ける必要はない。さらに、蓋体反転機構4を設ける場合についても、真空搬送室13の周囲における処理室30と蓋体反転機構4の配列については適宜選択できる。さらにまた、移動体をガイド部材に沿って移動させるための駆動部は、ガイド部材に沿ってモータにより移動するスライダであってもよい。さらに、蓋体保持機構7を昇降させる昇降機構についても、鉤型部材71a,71aの上端に可動体を設け、この可動体に対して、ネジ山が形成された昇降軸が回転して、前記可動体を昇降軸に沿って昇降させるように構成してもよい。
【0066】
さらに、蓋体32に設けられる被保持部5は蓋体保持機構7が昇降して被保持部5を持ち上げる構成であれば、その形状については限定されず、蓋体32の側面に設けるようにしてもよい。また蓋体32に必ずしも被保持部5は設ける必要はなく、蓋体保持機構7の下端に磁石を設け、この磁石により蓋体を吸着保持して持ち上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
S FPD基板
13 搬送室
30 処理室
31 容器本体
32 蓋体
4 蓋体反転機構
5 被保持部
50 係止部分
6 蓋体開閉機構
62,91 内側レール
63,92 外側レール
67A,67B 車輪
68A,68B 移動モータ
7 蓋体保持部
70 水平部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空搬送室に、基板を処理するための複数の処理室を接続した基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばFPD(Flat Panel Display)の製造工程において、真空搬送室の周囲に複数の処理室を設け、搬送室内に設けられた搬送アームにより真空搬送室と処理室との間で、ガラス基板等の基板の受け渡しを行う基板処理装置が知られている。被処理体である基板に対し、前記処理室にて行われる処理としては、エッチングやアッシング、成膜等の処理が挙げられる。
【0003】
前記処理室は、例えば基板が載置されると共に上部が開口する容器本体と、当該容器本体の開口部を開閉可能な蓋体とにより構成され、処理室内のメンテナンスや、蓋体のメンテナンス時には、蓋体を容器本体から取り外すことができるようになっている。蓋体には、処理ガスを供給するガスシャワーヘッドが設けられ、蓋体のメンテナンス作業の一つとしてガスシャワーヘッドの部品の交換等がある。
【0004】
この蓋体の開閉動作については特許文献1に提案されている。この構成では、処理室毎に設けられた蓋体の開閉機構により容器本体から蓋体を上昇させた後、蓋体を容器本体から外れた位置までスライドさせる。次いで蓋体を下降させてから反転させることが行われている。この手法では、蓋体を処理室への基板の搬送方向と直交する方向にスライド移動させることにより、蓋体の開閉動作に必要な面積を小さくすることができる。
【0005】
しかしながら、FPD基板は大型であるため、処理室も平面形状における一辺の大きさが、例えば夫々3m、3.5mもの大型の角筒型容器となる。従って処理室毎に蓋体を開閉及び反転させる機構とスペースが必要な構成では、処理室が増加すると蓋体を反転するスペースを確保しにくくなり、スペースを確保しようとすると、装置がさらに大型化する懸念がある。また処理室毎に蓋体の開閉機構が設けられているので、処理室が増加すると装置の製造コストの高騰化を招くおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−67218号公報(図1、図19参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情の下になされたものであり、真空搬送室に、基板を処理するための複数の処理室を接続した基板処理装置において、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明の基板処理装置は、基板搬送機構が設けられ、真空雰囲気に維持される真空搬送室と、
この真空搬送室の側面に接続された予備真空室と、
前記真空搬送室の側面に前記予備真空室とは周方向に離れて接続され、かつ互いに周方向に配置されると共に、各々容器本体の上に蓋体を設けて構成され、基板を処理するための複数の処理室と、
前記真空搬送室の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材と、
このガイド部材に沿ってガイドされる移動体と、
この移動体の移動により前記処理室の上方を通るように当該移動体に設けられ、前記容器本体に対して蓋体を着脱するために蓋体を保持して昇降させる蓋体保持機構と、
前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、前記蓋体には、横方向に伸び、下方に空間が形成された係止部分を含む被保持部が設けられ、前記蓋体保持機構には、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記係止部分の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分を下方側から押し上げることにより蓋体を持ち上げる保持部が設けられるように構成してもよい。
【0010】
さらに、前記ガイド部材は、前記真空搬送室の上に設けられるか、または前記真空搬送室と処理室との間に設けられた内側ガイド部材と、前記処理室に対して真空搬送室とは反対側に設けられた外側ガイド部材と、を備えるように構成してもよい。
【0011】
さらにまた、前記真空搬送室は平面形状が多角形に形成され、前記真空搬送室の側面のうち、その外方側にメンテナンス領域を確保するための側面を除く他の側面に、夫々前記予備真空室と処理室とが接続されるように構成してもよい。この際、前記メンテナンス領域には、前記蓋体保持機構から受け渡された蓋体を保持して反転させる蓋体反転機構を設けてもよい。さらにまた、前記真空搬送室は六つの側面を有し、該側面に一つの前記予備真空室と四つの処理室が接続されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、真空搬送室の周囲に沿って配置された複数の処理室に対し、蓋体を保持して着脱(開閉)するための蓋体保持機構を共通化している。そしてこの蓋体保持機構を、処理室の並びに沿って処理室の上方領域を移動できるように構成しているため、蓋体の着脱時に真空処理室の横方向のスペースが不要となる。このため装置の大型化が抑えられ、設置面積(フットプリント)の増大を抑えることができる
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る基板処理装置の実施の形態を示す斜視図である。
【図2】前記基板処理装置の内部を示す横断平面図である。
【図3】前記基板処理装置に設けられた処理室の一例を示す断面図である。
【図4】前記基板処理装置の一部を示す平面図である。
【図5】前記基板処理装置の一部を示す側面図である。
【図6】前記基板処理装置の一部を示す側面図である。
【図7】前記基板処理装置の作用を説明するための側面図である。
【図8】前記基板処理装置の作用を説明するための側面図である。
【図9】前記基板処理装置の他の実施の形態を示す平面図である。
【図10】前記基板処理装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【図11】前記基板処理装置のさらに他の実施の形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の基板処理装置の一実施の形態について、FPD基板に対して処理を行う場合について説明する。行う処理としては、例えばエッチング処理とする。図1は、この基板処理装置1の概観を示す斜視図、図2はその内部を示す横断平面図である。図中1A,1Bは、外部から、多数のFPD基板(以下「基板」という)Sを収容したキャリアC1,C2を載置するためのキャリア載置部である。これらキャリア載置部1A,1Bは、例えば昇降機構11によりキャリアC1,C2を昇降するように構成され、一方のキャリアC1には未処理基板S1が収容され、他方のキャリアC2には処理済みの基板S2が収容されるようになっている。
【0015】
また、キャリア載置部1A,1Bの奥側には、予備真空室をなすロードロック室12と真空搬送室13とが設けられている。さらに、キャリア載置部1A,1Bの間には、前記2つのキャリアC1,C2と、ロードロック室12との間で基板Sの受け渡しを行うための基板搬送手段21が支持台14上に設けられている。この基板搬送手段21は例えば上下に設けられた2本のアーム22と、これらを進退自在、及び回転自在に支持する基台23と、を備えている。前記ロードロック室12は、雰囲気が真空雰囲気と常圧雰囲気との間で切り替えられるように構成され、その内部には図2に示すように、基板Sを支持するためのバッファラック15が配設されている。図中16はポジショナーである。
【0016】
前記真空搬送室13は平面形状が多角形状、例えば正六角形状に構成され、その側面には、前記ロードロック室12とは周方向に離れて接続されかつ互いに周方向に配置される複数個の処理室30が配設されている。この例では、真空搬送室13の内の4つの辺に対応する側面に夫々4個の処理室30が気密に接続されている。
【0017】
また、真空搬送室13の残りの2つの辺の一方に対応する側面には、前記ロードロック室12が気密に接続され、他方に対応する側面の外方側にはメンテナンス領域Mが確保されており、このメンテナンス領域Mに蓋体反転機構4が設けられている。この例では、ロードロック室12と蓋体反転機構4とは互いに対向するように設けられている。
【0018】
前記真空搬送室13は真空雰囲気に維持されるように構成され、その内部には、図2に示すように、基板搬送機構25が配設されている。そして、この基板搬送機構25により、前記ロードロック室12及び4つの処理室30との間で基板Sが搬送されるようになっている。
【0019】
また、前記ロードロック室12と真空搬送室13との間、真空搬送室13と処理室30との間、及びロードロック室12と外側の大気雰囲気とを連通する開口部には、これらの間を気密にシールし、かつ開閉可能に構成されたゲートバルブGVが夫々介挿されている。
【0020】
次に、図3を参照して前記処理室30について簡単に説明する。この処理室30は、例えば平面形状が四角形状に構成され、天井部が開口する容器本体31と、この容器本体31の天井開口部を開閉するように設けられた蓋体32と、を備えている。前記蓋体32は、後述する蓋体開閉機構6により容器本体31に対して着脱自在に構成されている。前記基板Sは、例えば一辺が2.2m、他辺が2.5m程度の大きさの角型基板であり、前記処理室30は、水平断面の一辺が3m、他辺が3.5m程度の大きさに設定されている。
【0021】
前記容器本体31の内部には、その底面の上に絶縁部材33aを介して、基板Sを載置するための載置台33が配置されている。また容器本体31には排気路34aを介して、例えば真空ポンプ34よりなる真空排気手段が接続されている。一方、処理室30内の上方には、載置台33と対向するように、上部電極をなすシャワーヘッドであるガス供給部35が、蓋体32の内部に突出する支持部36aにより支持されるように設けられている。図中36bは絶縁部材、35aはガス吐出孔、37aはガス供給管、37はガス供給系、38aは給電棒、38bは整合器、38は高周波電源である。
【0022】
このような処理室30では、高周波電源38からガス供給部35に高周波電力を印加することにより、基板Sの上方側の空間に処理ガスのプラズマが形成され、これにより基板Sに対するエッチング処理が進行することになる。なお図3以外の図においては、図示の便宜上、整合器38bや高周波電源38、ガス供給系37等については省略してある。
【0023】
ここで、基板Sの処理動作について簡単に説明する。先ず、基板搬送手段21により、未処理基板S1を収容した一方のキャリアC1から基板S1をロードロック室12に搬入する。ロードロック室12内においては、バッファラック15により基板S1を保持し、基板搬送手段21のアーム22が退避した後、ロードロック室12内を排気して、内部を所定の真空度まで減圧する。真空引き終了後、ポジショナー16により基板S1の位置合わせを行なう。
【0024】
この後、ロードロック室12と真空搬送室13との間のゲートバルブGVを開き、基板搬送機構25により基板S1を受け取り、前記ゲートバルGVを閉じる。次いで真空搬送室13と所定の処理室30の間のゲートバルブGVを開いて、前記基板S1を基板搬送機構25により当該処理室30に搬入し、前記ゲートバルブGVを閉じる。
【0025】
そして、処理室30では、既述のように、基板S1の上の空間にプラズマを形成することにより、当該基板S1に対するエッチング処理を進行させる。このエッチング処理終了後、基板搬送機構25により処理済み基板S2を受け取り、ロードロック室12に搬送し、次いで、前記基板S2は、搬送手段21により、処理済み基板用のキャリアC2に搬送される。これにより一枚の基板における処理が終了するが、この処理を未処理基板用のキャリアC1に搭載された全ての基板S1に対して行う。
【0026】
続いて処理室30についてさらに説明を続ける。前記蓋体32の上面中央には、図1〜図5に示すように、被保持部5が設けられている。図5は、図2におけるA−A線側から見た側面図である。前記被保持部5は、互いに背中合わせに配置された一対の鉤型部材51,51からなる。これら鉤型部材51,51の各垂直部分は、当該処理室30が接続される真空搬送室13の一辺に平行であって、前記一辺と直交する方向における蓋体32の中央部に対して対称に互いに離間して配置されている。鉤型部材51,51の各水平部分は互いに反対に伸び出しており、後述の蓋体保持機構7により保持される係止部分50をなしている。この例では、4つの処理室30は互いに同じ形状に構成され、各処理室30の蓋体32の上面には、互いに同じ位置に夫々同じ形状の被保持部5が形成されている。
【0027】
さらにまた、この基板処理装置には、前記被保持部5と係合して、蓋体32を開閉するための蓋体開閉機構6が、前記真空搬送室13の外周に沿って移動するように設けられている。この蓋体開閉機構6は、門型形状の移動体61を備えている。そして、この基板処理装置は、前記真空搬送室13の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材を備えており、前記移動体61はこのガイド部材に沿ってガイドされながら移動するように構成されている。この例では、真空搬送室13の上面に内側ガイド部材をなす内側レール62が設けられ、この内側レール62と各処理室30を介して一定の間隔で対向するように外側ガイド部材をなす外側レール63が設けられている。ここで図5に示すように、処理室30、真空搬送室13は、夫々支持台30a,13aにおり支持され,外側ガイドレール63は、真空搬送室13の周囲に間隔を開けて設けられた支柱63aにより支持されている。
【0028】
この例では、真空搬送室13は平面形状が正六角形状であるため、前記内側レール62及び外側レール63は夫々、真空搬送室13の中心に対して、ロードロック室12に臨む領域を除く同心円状に設けられている。こうして、前記蓋体開閉機構6は、真空搬送室13における4つの側面に設けられた処理室30に対して、互いに同じ位置関係で移動することになる。
【0029】
前記内側レール62は、真空搬送室13の上面における外周近傍領域に設けられており、内側レール62の内側領域における真空搬送室13の上面には、メンテナンス用の開口部17が設けられている。この開口部17は蓋体を有し、通常は真空搬送室13の内部を真空に保つために閉じられている。メンテナンス時は、この開口部17から真空搬送室13内の基板搬送機構25を取り出すことができるように、開口部17は当該基板搬送機構25よりも大きく構成されている。
【0030】
前記移動体61は、その一端側が前記内側レール62に沿ってガイドされ、その他端側が前記外側レール63に沿ってガイドされるように構成されている。この例では、移動体61は、図1及び図5に示すように、真空搬送室13から外方に向けて水平に伸びる水平部材64と、この水平部材64から真空搬送室13に設けられた内側レール62に向って下方側に伸びる内側足部65と、水平部材64から処理室30の外側に設けられた外側レール63に向って下方側に伸びる外側足部66と、を備えている。
【0031】
前記内側足部65の下端側には、複数個の車輪67Aが蓋体開閉機構6の移動方向に沿って設けられており、これら車輪67Aは内側移動モータ68Aにより駆動されるように構成されている。また、前記外側足部66の下端側には、複数個の車輪67Bが前記移動方向に沿って設けられており、これら車輪67Bは外側移動モータ68Bにより駆動されるように構成されている。図6に示すように、この例では車輪67Aと車輪67Bとして2個の車輪が設けられている。これら内側移動モータ68A及び外側移動モータ68Bは、蓋体開閉機構6が、各処理室30における各々の蓋体32の開閉位置を通りながら、真空搬送室13の外周に沿って移動するように駆動が制御されている。この例では、車輪67A,68Bと移動モータ67B,68Bと、により、前記移動体61を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部が構成されている。
【0032】
そしてまた、この基板処理装置1には、前記移動体61の移動により前記処理室30の上方を通るように当該移動体61に設けられ、前記容器本体31に対して蓋体32を着脱するために蓋体32を保持して昇降させる蓋体保持機構7が設けられている。この蓋体保持機構7は、前記ガイドレール6に沿って移動しながら前記係止部分50の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分50を下方側から押し上げることにより蓋体32を持ち上げる保持部70を備えている。この保持部70は、互いに向い合わせに配置された一対の鉤型部材71,71からなる。これら鉤型部材71,71の各垂直部分は、保持部70が係止部分50の下方側の空間に進入する開閉位置では、被保持部5の鉤型部材51,51と平行であって、当該鉤型部材51,51の外側に位置するように配置されている。また鉤型部材71,71の各水平部分70aは、互いに内側に伸び出すように構成されている。
【0033】
これら鉤型部材71,71は、昇降機構をなすジャッキ機構72,72により昇降自在に設けられている。このジャッキ機構72は、ネジ山が刻設された昇降軸73と、この昇降軸73に螺合するネジ山が内面に形成されたネジ部本体74と、を備えており、昇降軸73の下端に鉤型部材71,71の上端が夫々接続されている。図中75は昇降モータ、76は減速機であり、2つのネジ部本体74は、カップリング77により、共通の減速機76を介して昇降モータ75に接続されている。図中78は、ネジ部本体74、昇降モータ75や減速機76の支持台である。このようなジャッキ機構72では、昇降モータ75により減速機76、カップリング77を介してネジ部本体74を回転させると、回転方向によってネジ部本体74の内部において昇降軸73が図示しないガイド機構に沿って昇降するようになっている。図5中78a,64aは、夫々支持台78、水平部材64に形成された開口部である。
【0034】
こうして、蓋体保持機構7は、蓋体開閉機構6が前記開閉位置にあるときに、水平部分70aが被保持部5の係止部分50の下方側に位置する下降位置と、前記係止部分50を下方側から押し上げることにより蓋体32を持ち上げる上昇位置との間で昇降自在に構成されることになる。
【0035】
また、蓋体開閉機構6は、蓋体保持機構7を前記下降位置にした状態で蓋体開閉機構6を真空搬送室13の周囲に沿って移動させると、蓋体開閉機構6は処理室30の被保持部5と干渉せずに移動し、各処理室30における開閉位置では、被保持部5の係止部分50の下方側に蓋体保持機構7の水平部分70aが位置することになる。
【0036】
これにより、各処理室30における開閉位置において、蓋体保持機構7を上昇させれば、係止部分50が蓋体保持機構7により持ち上げられて蓋体32が開く。一方、蓋体開閉機構6は、前記上昇位置にて蓋体32を保持した状態で、蓋体32が他の処理室30の上を通過するように移動する。このため、前記上昇位置は、持ち上げられた蓋体32が他の処理室30の被保持部5等に干渉しないで移動できる高さに設定されている。
【0037】
蓋体保持機構7にて保持された蓋体32は、前記開閉位置にて蓋体保持機構7を下降させることにより、容器本体31の開口部を塞ぐように容器本体31に受け渡される。そして、蓋体開閉機構6は、蓋体保持機構7をこの受け渡し位置から前記下降位置までさらに下降させてから移動を再開する。
【0038】
なお、処理室30が内側レール61と外側レール62との間に介在する構成であれば、処理室30の大きさは互いに異なるように構成してもよい。この場合には、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の周方向に移動させたとき、蓋体保持機構7が前記下降位置にあるときには、当該蓋体保持機構7と各処理室30の被保持部5とが干渉せず、蓋体開閉機構6を各処理室30における開閉位置に位置させて、蓋体保持機構7を上昇させたときに被保持部5が持ち上げられるように、各処理室30の被保持部5及び蓋体開閉機構6を構成する。このような構成であれば、蓋体保持機構7を前記下降位置に配置すれば、蓋体開閉機構6により全ての処理室30の被保持部5と干渉せずに、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の外周に沿って移動でき、全ての処理室30の蓋体32の開閉を行うことができる。
【0039】
前記蓋体反転機構4は、前記蓋体保持機構7から受け渡された蓋体32を保持して反転させるように構成され、例えば図1及び図8に示すように、蓋体32が保持される枠体41と、この枠体41を水平な回転軸に沿って回転させる回転駆動部42と、を備えている。この回転駆動部42は、駆動モータ43と、減速機44と、軸受45と、を備えており、これらは支持台46により支持されている。前記枠体41は、蓋体32を保持する蓋体開閉機構6が蓋体載置位置に移動し、この位置から蓋体32を下降させたときに、当該蓋体32の周囲を保持するように構成されている。
【0040】
さらに、上述の実施の形態では、蓋体反転機構4の上方側位置が蓋体開閉機構6の待機位置となっている。そして、この例では、真空搬送室13を挟んでロードロック室12と対向する位置に蓋体反転機構4が設けられているので、ロードロック室12と蓋体反転機構4との間には、蓋体反転機構4の両側に夫々2個の処理室30が設けられている。従って、説明の便宜上、蓋体反転機構4からロードロック室12に向う方向を蓋体開閉機構6の進行方向として説明する。
【0041】
上述の実施の形態では、図4及び図5に示すように、蓋体開閉機構6を処理室30毎に開閉位置にて停止させるための停止位置を検出する位置センサが設けられている。この例では、前記位置センサは光センサよりなり、例えば発光部が処理室30の外面に設けられると共に、受光部が外側レール62の外方における前記発光部に対応する位置に設けられている。
【0042】
例えば光センサは、各処理室30毎に第1の光センサ81と第2の光センサ82と、が用意されている。第1の光センサ81は、前記開閉位置に蓋体開閉機構6が位置したときに、蓋体開閉機構6の進行方向における移動体61の一端側(前方側)で光センサ81の光軸Lを遮断する位置に設けられている。また、第2の光センサ82は、蓋体開閉機構6の進行方向における第1の光センサ64の手前側に設けられている。図中81A,82Aは発光部、81B,82Bは受光部である。これら光センサ81,82からの検出信号は、後述する制御部100に出力され、制御部100では当該検出信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ67B,68Bに減速指令や、停止指令を出力するように構成されている。
【0043】
この基板処理装置には、例えばコンピュータからなる制御部100が設けられている。この制御部100は、プログラム、メモリ、CPUからなるデータ処理部を備えており、前記プログラムには制御部100から、処理室30や搬送系、蓋体開閉機構6等に制御信号を送り、予め定めたステップを進行させることで、基板Sに対する処理、例えばエッチング処理や、蓋体32の開閉動作や、蓋体32の反転動作が実施されるように命令(各ステップ)が組み込まれている。このプログラムは、コンピュータ記憶媒体例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、ハードディスク、MO(光磁気ディスク)等の記憶部に格納されて制御部100にインストールされる。
【0044】
また、制御部100では、作業者からの指令に基づいて、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4の上方側の待機位置から蓋体32を開放しようとする処理室30に向けて移動させたり、蓋体32を保持した蓋体開閉機構6を前記待機位置まで移動させたり、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4に載置させるといった指令を移動モータ67B,68Bや、昇降モータ65に出力する。
【0045】
ここで、制御部100では、前記移動モータ67B,68Bのエンコーダにより、蓋体開閉機構6を処理室30における各々の蓋体32の開閉位置に停止させるときの、移動モータ68A,68Bの概ねの停止位置については把握しているが、この実施の形態においては、既述の光センサ8の検出値に基づいて、蓋体開閉機構6を前記開閉位置において高精度にて停止させるようにしている。
【0046】
例えば前記光センサ81,82は、蓋体開閉機構6が前記待機位置にあるときには、第1の光センサ81の光軸と第2の光センサ82の光軸とがいずれも遮断されないON状態であり、このON信号が制御部100に出力される。そして、蓋体開閉機構6が待機位置から蓋体32を開閉しようとする処理室30に移動するときには、先ず第2の光センサ82の光軸が移動体61の前記一端側により遮断されOFF状態となるため、第2の光センサ82からOFF信号が制御部100に出力される。制御部100ではこのOFF信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ68A,68Bに減速指令を出力し、ここからは蓋体開閉機構6は速度を落としてゆっくり移動する。
【0047】
そして、第1の光センサ81の光軸が移動体61の前記一端側により遮断されOFF状態となると、第1の光センサ81からOFF信号が制御部100に出力される。制御部100ではこのOFF信号に基づいて、蓋体開閉機構6の移動モータ68A,68Bに停止指令を出力し、蓋体開閉機構6を停止させる。これにより蓋体開閉機構6は各処理室30における前記開閉位置にて正確に停止することになる。
【0048】
このような基板処理装置1では、通常時は、蓋体開閉機構6を蓋体反転機構4の上方側の待機位置にて待機させた状態で、基板Sに対して既述のエッチング処理が行われる。そして、蓋体32や処理室30のメンテナンス時に蓋体32を開放するときには、蓋体保持機構7を下降位置に位置させた状態にて、蓋体開閉機構6を待機位置から対象となる処理室30に向けて移動させる。このとき、待機位置と、前記対象となる処理室30との間に他の処理室30がある場合には、蓋体保持機構7の水平部分70aは、当該処理室30の被保持部5の係止部分50の下方側を通過して行く。
【0049】
そして、既述の手法にて、蓋体開閉機構6を前記対象となる処理室30の開閉位置にて停止させる(図7(a)参照)。この開閉位置では、既述のように、蓋体開閉機構6の蓋体保持機構7の水平部分70aは、前記対象となる処理室30の被保持部5の係止部分50の下方側に位置している。次いで、図7(b)に示すように、蓋体保持機構7を上昇させることにより、係止部分50を水平部分70aにて押し上げるようにして、当該処理室30から蓋体32を持ち上げる。
【0050】
こうして、蓋体開閉機構6にて蓋体32を保持した状態で、蓋体開閉機構6は前記蓋体反転機構4に向って移動する。次いで、図8(a)に示すように、当該蓋体反転機構4の上方側の蓋体載置位置にて停止し、そこから下降して蓋体32を枠体41に受け渡す。そして、蓋体保持機構7はさらに下降位置まで下降して、蓋体保持機構7の水平部分70aを、蓋体32の被保持部5の係止部分50の下方側に位置させてから、蓋体開閉機構6を、蓋体32の反転動作に干渉しない位置まで移動させる。
一方、蓋体反転機構4では、図8(b)に示すように、枠体41により蓋体32を保持した状態で、回転駆動部42により、当該枠体41を水平軸周りに回転させ、蓋体32を反転させる。蓋体32の裏面には、ガス供給部35等が取り付けられており、蓋体32を反転させ、当該ガス供給部35を上に向けた状態でメンテナンスが行われる。
【0051】
また、蓋体保持機構7を上昇位置に位置させた状態にて、蓋体開閉機構6を待機位置から対象となる処理室30に向けて移動させることもできる。この場合は、対象となる処理室30の開閉位置手前にて、蓋体保持機構7を下降位置に下げたのち、蓋体開閉機構6を開閉位置に移動させる。
【0052】
上述の実施の形態では、蓋体開閉機構6を真空搬送室13の外周に沿って移動するように設けると共に、この蓋体開閉機構6に設けられた蓋体保持機構7により、複数の処理室30の蓋体32を各々持ち上げるように構成している。そして、この蓋体保持機構7を、処理室30の並びに沿って処理室30の上方領域を移動できるように構成しているため、蓋体32の着脱時に処理室30の横方向のスペースが不要となる。このため装置の大型化が抑えられ、設置面積(フットプリント)の増大を抑えることができる。
【0053】
また、共通の蓋体開閉機構6により全ての処理室30の蓋体32を着脱することができるので、処理室30毎に蓋体32の開閉機構を設ける構成に比べて、処理室30の小型化を図ることができ、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑えることができる。
【0054】
さらに、蓋体開閉機構6は処理室30の上方側に設けられているので、処理室30の周囲に蓋体開閉機構を設ける構成に比べて小型化を図ることができる。また、複数の処理室30に対して共通の蓋体開閉機構6を設ければよいことから、製造コスト的にも有利である。さらにまた、処理室30毎に蓋体32のメンテナンス領域を確保する必要がなく、複数の処理室30に対して共通のメンテナンス領域を確保すればよいので、この観点からも装置の大型化を抑えることができる。
【0055】
さらにまた、蓋体開閉機構6を門型形状に構成する場合には、その一端側が内側レール62に沿って移動し、他端側が外側レール64に沿って移動する。このため、荷重が分散されるので、蓋体保持機構7により持ち上げた蓋体32を安定した状態で移動することができる。既述のように、処理室30はかなり大型であり、蓋体32も10000kg程度もの重量があることから、荷重を分散した状態で移動することは、メリットが大きい。
【0056】
さらにまた、蓋体開閉機構6は処理室30とは別個に設けられ、内側レール62、外側レール63についても処理室30や真空搬送室13の構成に合わせて後から設置することができる。従って既存の基板処理装置に組み合わせて設けることができ、利用価値が高い。
【0057】
さらにまた、蓋体開閉機構6は真空搬送室13の外周に沿って移動自在に設けられており、通常は処理室30とは別の待機領域に位置している。このため、当該蓋体開閉機構6を設けても、処理室30と真空搬送室13との間のゲートバルブGVの近傍には障害物が存在せず、メンテナンスを妨げることがない。また、内側レール62を、真空搬送室13の外周近傍に設けることにより、真空搬送室13の天井部に既述の開口部17を形成するスペースを確保することができる。このため、必要な際には、真空搬送室13の基板搬送機構25を当該開口部17から取り出して、メンテナンスできるという利点がある。
【0058】
この例においては、内側レール62は、真空搬送室13の天板上に直接設けるようにしたが、支持板上に内側レール62を設け、この支持板を真空搬送室13の天板上に設置するようにしてもよい。このような構成では、別の領域にて内側レール62を作製しておき、後から真空搬送室13に設置できるという利点がある。また、真空搬送室13の天板上に内側レール62を支える支柱を設け、この上に内側レール62を設けるようにしてもよい。
【0059】
続いて、本発明の他の実施の形態について、図9〜図11を用いて説明する。この実施の形態が上述の実施の形態と異なる点は、内側ガイド部材をなす内側レール91を処理室30と真空搬送室13との間に設け、さらに内側レール91及び外側レール92を真空搬送室13の全周に設けたことである。内側レール91及び外側レール92を真空搬送室13の全周に設けたことにより、例えばロードロック室12の上部を処理室30の被保持部5と同様な被保持部を備えた蓋体にすることにより、ロードロック室12の蓋体の開閉も蓋体開閉機構6により行うことができるようになる。
【0060】
前記内側レール91は、処理室30と真空搬送室13との間のゲートバルブGVの上方側に、真空搬送室13の中心に対して同心円状に設けられている。そして、ゲートバルブGVが存在しない領域に設けられた支柱93により、内側レール91が支持されるように構成されている。また、外側レール92は、処理室30における真空搬送室13と反対側に、真空搬送室13の中心に対して同心円状に、支柱94により支持される状態で設けられている。
【0061】
図10に示す例は、内側レール91及び外側レール92を処理室30の上面よりも低い位置に設けた構成であり、図11に示す例は、内側レール91及び外側レール92を処理室30の上面よりも高い位置に設けた構成である。その他の構成については、上述の実施の形態と同様である。
【0062】
これらの例においても、蓋体開閉機構6は内側レール91及び外側レール92上を、真空搬送室13の外周に沿って移動するので、上述の実施の形態と同様に、装置の大型化を抑え、フットプリントの増大を抑制することができる。また、内側レール91がゲートバルブGVの上方側に設けられることにより、真空搬送室13の周囲全体に設けることができる。このため、蓋体開閉機構6が真空搬送室13の周囲を周回移動できるため、移動制御が容易となる。
【0063】
さらに、上述の実施の形態と同様に、蓋体開閉機構6を門型形状に構成しているので、荷重を分散した状態で蓋体32を安定した状態で移動することができ、内側レール91、外側レール92、蓋体開閉機構6は、既存の基板処理装置に対して後から設置することが可能である。さらにまた、内側レール91は、真空搬送室13の外側に設けているので、真空搬送室13の天井部に既述の開口部17を形成することができ、メンテナンスが便利になる。
【0064】
以上において、内側レールは、真空搬送室13の周囲に設けられた支柱により支持される状態で、真空搬送室13の天井部に設けるように構成してもよい。また、処理室30が小型である等、蓋体32の重さが軽量である場合には、蓋体開閉機構6は門型形状に限らず、真空搬送室13側又は真空搬送室13と反対側のいずれか一方から処理室30に伸びるように構成し、片側のみで支持するように構成してもよい。この場合には、ガイド部材は、真空搬送室13側又は真空搬送室13と反対側のいずれか一方に設けられる。
【0065】
さらに、複数の蓋体開閉機構6を、共通のガイド部材に沿って移動させるように設けるようにしてもよい。さらにまた、真空搬送室13の平面形状は正多角形状に限らず、複数の処理室も互いに同じ形状に構成する場合に限らない。また、搬送室に13に接続される処理室30の個数は、2個以上であればいくつでもよく、必ずしも蓋体32の蓋体反転機構4を設ける必要はない。さらに、蓋体反転機構4を設ける場合についても、真空搬送室13の周囲における処理室30と蓋体反転機構4の配列については適宜選択できる。さらにまた、移動体をガイド部材に沿って移動させるための駆動部は、ガイド部材に沿ってモータにより移動するスライダであってもよい。さらに、蓋体保持機構7を昇降させる昇降機構についても、鉤型部材71a,71aの上端に可動体を設け、この可動体に対して、ネジ山が形成された昇降軸が回転して、前記可動体を昇降軸に沿って昇降させるように構成してもよい。
【0066】
さらに、蓋体32に設けられる被保持部5は蓋体保持機構7が昇降して被保持部5を持ち上げる構成であれば、その形状については限定されず、蓋体32の側面に設けるようにしてもよい。また蓋体32に必ずしも被保持部5は設ける必要はなく、蓋体保持機構7の下端に磁石を設け、この磁石により蓋体を吸着保持して持ち上げるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
S FPD基板
13 搬送室
30 処理室
31 容器本体
32 蓋体
4 蓋体反転機構
5 被保持部
50 係止部分
6 蓋体開閉機構
62,91 内側レール
63,92 外側レール
67A,67B 車輪
68A,68B 移動モータ
7 蓋体保持部
70 水平部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板搬送機構が設けられ、真空雰囲気に維持される真空搬送室と、
この真空搬送室の側面に接続された予備真空室と、
前記真空搬送室の側面に前記予備真空室とは周方向に離れて接続され、かつ互いに周方向に配置されると共に、各々容器本体の上に蓋体を設けて構成され、基板を処理するための複数の処理室と、
前記真空搬送室の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材と、
このガイド部材に沿ってガイドされる移動体と、
この移動体の移動により前記処理室の上方を通るように当該移動体に設けられ、前記容器本体に対して蓋体を着脱するために蓋体を保持して昇降させる蓋体保持機構と、
前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記蓋体には、横方向に伸び、下方に空間が形成された係止部分を含む被保持部が設けられ、前記蓋体保持機構には、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記係止部分の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分を下方側から押し上げることにより蓋体を持ち上げる保持部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記真空搬送室の上に設けられるか、または前記真空搬送室と処理室との間に設けられた内側ガイド部材と、前記処理室に対して真空搬送室とは反対側に設けられた外側ガイド部材と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記真空搬送室は平面形状が多角形に形成され、
前記真空搬送室の側面のうち、その外方側にメンテナンス領域を確保するための側面を除く他の側面に、夫々前記予備真空室と処理室とが接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記メンテナンス領域には、前記蓋体保持機構から受け渡された蓋体を保持して反転させる蓋体反転機構が設けられていることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記真空搬送室は六つの側面を有し、該側面に一つの前記予備真空室と四つの処理室が接続されることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項1】
基板搬送機構が設けられ、真空雰囲気に維持される真空搬送室と、
この真空搬送室の側面に接続された予備真空室と、
前記真空搬送室の側面に前記予備真空室とは周方向に離れて接続され、かつ互いに周方向に配置されると共に、各々容器本体の上に蓋体を設けて構成され、基板を処理するための複数の処理室と、
前記真空搬送室の周方向に沿って伸びるように設けられたガイド部材と、
このガイド部材に沿ってガイドされる移動体と、
この移動体の移動により前記処理室の上方を通るように当該移動体に設けられ、前記容器本体に対して蓋体を着脱するために蓋体を保持して昇降させる蓋体保持機構と、
前記移動体を前記ガイド部材に沿って移動させるための駆動部と、を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記蓋体には、横方向に伸び、下方に空間が形成された係止部分を含む被保持部が設けられ、前記蓋体保持機構には、前記ガイド部材に沿って移動しながら前記係止部分の下方側の空間に進入し、その後上昇して前記係止部分を下方側から押し上げることにより蓋体を持ち上げる保持部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記真空搬送室の上に設けられるか、または前記真空搬送室と処理室との間に設けられた内側ガイド部材と、前記処理室に対して真空搬送室とは反対側に設けられた外側ガイド部材と、を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記真空搬送室は平面形状が多角形に形成され、
前記真空搬送室の側面のうち、その外方側にメンテナンス領域を確保するための側面を除く他の側面に、夫々前記予備真空室と処理室とが接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記メンテナンス領域には、前記蓋体保持機構から受け渡された蓋体を保持して反転させる蓋体反転機構が設けられていることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記真空搬送室は六つの側面を有し、該側面に一つの前記予備真空室と四つの処理室が接続されることを特徴とする請求項4記載の基板処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−18940(P2012−18940A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133091(P2010−133091)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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