基板重ね合わせ装置およびデバイスの製造方法
【課題】 基板を位置合わせして重ね合わせる場合に、面と面を接触させるときに互いの面の傾きが大きいと、その後実行される倣い動作において繰り返される試行動作の回数が増えてしまい、装置としてのスループットの低下を招いていた。
【解決手段】 基板重ね合わせ装置は、第1基板を保持する第1ステージと、第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得部が取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部とを備える。
【解決手段】 基板重ね合わせ装置は、第1基板を保持する第1ステージと、第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得部が取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板重ね合わせ装置およびデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各々に素子、回路等が形成された半導体基板を積層して製造された積層型半導体装置がある。半導体基板を積層する場合には、基板ホルダに保持された一対の半導体基板を、精密に位置決めして積層した後、基板全体を加熱、加圧して接合させる。特に、一対の半導体基板を位置決めする位置決め装置について、例えば特許文献1に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板の位置決めにおいては、互いの半導体基板における水平面内であるxy方向の位置合わせを行った後、z方向へ近接させる。そして、ロードセルの圧力分布出力を監視しながら、互いの半導体基板を接触させる。しかしながら、この方法においては互いに重ね合わされる接合面が接触するまではその傾き状態が把握できず、接触時に大きな衝撃が加わる恐れがある。よって、ステージのz方向の移動は、極力遅い速度に設定せざるを得なかった。特に、最初の接触時における傾きが大きいと、その後実行される倣い動作において繰り返される試行動作の回数が増えてしまい、装置としてのスループット低下に多大な影響を与えていた。
【0005】
また、互いの接合面の傾きは、それぞれの基板ホルダが載置されるステージ同士の傾きのみならず、基板ホルダのステージ載置面と半導体基板保持面間の傾き、さらには、半導体基板そのものの表裏面間の傾きの累積として表れる。したがって、ステージの監視のみでz方向への近接動作を行うことは、やはり不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のひとつの態様における基板重ね合わせ装置は、第1基板を保持する第1ステージと、第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得部が取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部とを備える。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のひとつの態様におけるデバイスの製造方法は、複数の基板を重ね合わせて製造されるデバイスの製造方法であって、複数の基板を重ね合わせる工程は、第1ステージに第1基板を保持させる第1保持ステップと、第2ステージに、第1基板に対向して第2基板を保持させる第2保持ステップと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得ステップと、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得ステップで取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動ステップとを含む。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1基板を保持した第1基板ホルダを上方から見下ろした斜視図である。
【図2】第2基板を保持した第3基板ホルダを上方から見下ろした斜視図である。
【図3】本実施形態に係る基板重ね合わせシステムの概略構成図である。
【図4】基板重ね合わせ装置を概略的に示す側面図である。
【図5】干渉計を用いて接合面の変位計測を行う様子を示す図である。
【図6】x軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。
【図7】y軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。
【図8】計測された結果の例を示す概念図である。
【図9】第1ステージを球面台座に沿って傾ける様子を示す図である。
【図10】ウェハホルダ対を形成する様子を示す図である。
【図11】ウェハホルダ対を載置した第1ステージが移動される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、基板である第1ウェハ10を保持した第1ウェハホルダ101を上方から見下ろした斜視図である。第1ウェハホルダ101は、ホルダ本体110および吸着子111を有して、全体としては第1ウェハ10よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体110は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。
【0012】
ホルダ本体110は、第1ウェハ10を保持する領域をその表面に備える。この保持領域は研磨されて高い平坦性を有する。第1ウェハ10の保持は、静電力を利用した吸着により行われる。具体的には、ホルダ本体110に埋め込まれた電極に、ホルダ本体110の裏面に設けられた電圧印加端子を介して電圧を加えることにより、第1ウェハホルダ101と第1ウェハ10との間に電位差を生じさせて、第1ウェハ10を第1ウェハホルダ101に吸着させる。
【0013】
吸着子111は、鉄のような磁性体により形成され、第1ウェハ10を保持する表面において、保持した第1ウェハ10よりも外側である外周領域に複数配される。また、吸着子111は、第1ウェハ10を保持する平面と略同じ平面内にその上面が位置するように、ホルダ本体110に形成された陥没領域に配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個の吸着子111が配されている。
【0014】
第1ウェハ10の上面には、複数の第1回路領域11が造り込まれている。図示するように、矩形で囲まれる複数の第1回路領域11は、第1ウェハ10の上面に二次元的に広く配列されている。また、それぞれの第1回路領域11の内部には、第1アライメントマーク12が設けられている。第1アライメントマーク12は、第1ウェハ10の位置制御に用いられる指標である。それぞれの第1アライメントマーク12は、例えば第1ウェハ10の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。なお、以下において第1ウェハ10の上面を第1接合面と呼ぶ。
【0015】
第1アライメントマーク12は第1ウェハ10の位置制御に用いられる指標であるので、全ての第1回路領域11に設けられなくても良い。少なくとも第1ウェハ10の位置制御が行える個数があれば良い。また、第1アライメントマーク12は、第1回路領域11の内部に設けられているが、回路と無関係に別途設けられている必要はなく、回路の構成要素であって、指標として利用できるものを第1アライメントマーク12としても良い。例えば、積層型半導体素子におていは、層間の接続にTSV(Through Si Via)がよく利用されるが、TSVの先端を第1アライメントマーク12として用いることができる。さらには、第1回路領域11の外部に、第1アライメントマーク12を設けるようにしても良い。
【0016】
第1ノッチ13は、第1ウェハ10に設けられた切欠きであり、第1ウェハ10の姿勢を外形基準で判断するときに用いられる指標である。第1ノッチ13は、例えば第1ウェハ10の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。
【0017】
図2は、基板である第2ウェハ20を保持した第2ウェハホルダ201を上方から見下ろした斜視図である。第2ウェハホルダ201は、ホルダ本体210およびマグネット211を有して、全体としては第2ウェハ20よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体210は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。
【0018】
ホルダ本体210は、第2ウェハ20を保持する領域をその表面に備える。この保持領域は研磨されて高い平坦性を有する。第2ウェハ20の保持は、静電力を利用した吸着により行われる。具体的には、ホルダ本体210に埋め込まれた電極に、ホルダ本体210の裏面に設けられた電圧印加端子を介して電圧を加えることにより、第2ウェハホルダ201と第2ウェハ20との間に電位差を生じさせて、第2ウェハ20を第2ウェハホルダ201に吸着させる。
【0019】
マグネット211は、第2ウェハ20を保持する表面において、保持した第2ウェハ20よりも外側である外周領域に複数配される。また、マグネット211は、第2ウェハ20を保持する平面と略同じ平面内にその上面が位置するように配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個のマグネット211が配されている。
【0020】
第2ウェハホルダ201のマグネット211は、第1ウェハホルダ101の吸着子111とそれぞれ対応するように配置されている。そして、第1ウェハ10を保持した第1ウェハホルダ101と、第2ウェハ20を保持した第2ウェハホルダ201を、互いに向かい合わせてマグネット211と吸着子111を作用させると、第1ウェハ10と第2ウェハ20を重ね合わせた状態で挟持して固定することができる。
【0021】
第2ウェハ20の上面には、複数の第2回路領域21が造り込まれている。図示するように、矩形で囲まれる複数の第2回路領域21は、第2ウェハ20の上面に二次元的に広く配列されている。また、それぞれの第2回路領域21の内部には、第2アライメントマーク22が設けられている。第2アライメントマーク22は、第2ウェハ20の位置制御に用いられる指標である。それぞれの第2アライメントマーク22は、例えば第2ウェハ20の中心を原点とする座標値として、設計座標値が個別に管理されている。なお、以下において第2ウェハ20の上面を第2接合面と呼ぶ。
【0022】
第2アライメントマーク22は第2ウェハ20の位置制御に用いられる指標であるので、全ての第2回路領域21に設けられなくても良い。少なくとも第2ウェハ20の位置制御が行える個数があれば良い。また、第2アライメントマーク22は、第2回路領域21の内部に設けられているが、回路と無関係に別途設けられている必要はなく、回路の構成要素であって、指標として利用できるものを第2アライメントマーク22としても良い。さらには、第2回路領域21の外部に、第2アライメントマーク22を設けるようにしても良い。
【0023】
第2ノッチ23は、第2ウェハ20に設けられた切欠きであり、第2ウェハ20の姿勢を外形基準で判断するときに用いられる指標である。第2ノッチ23は、例えば第2ウェハ20の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。
【0024】
図3は、本実施形態に係る基板重ね合わせ装置30を含む基板重ね合わせシステムの概略構成図である。基板重ね合わせ装置30は、複数の基板を互いの実装面において位置合わせをして重ね合わせる装置であり、特に半導体基板であるウェハ同士を重ね合わせて3次元実装を行うシステムの一部の装置として好適である。以下においては、各装置の各要素は、基板重ね合わせシステム全体の制御および演算を司る制御演算部、または要素ごとに設けられた制御演算部が、統合制御、協調制御を行うことにより動作する。
【0025】
基板重ね合わせシステムは、基板重ね合わせ装置30の他に、搬送ロボット40とプリアライナー50を備える。搬送ロボット40は、ウェハおよびウェハホルダを把持することができるハンド部401と、伸縮および回転することにより把持したウェハおよびウェハホルダを所定の位置に所定の姿勢で搬入させるアーム部402とを有する。なお、ハンド部401は、把持する第1ウェハホルダ101または第2ウェハホルダ201の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、ハンド部401が、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101、または、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を把持する場合でも、それぞれのウェハの保持を持続することができる。
【0026】
プリアライナー50は、観察顕微鏡501と載置台502を備える。搬送ロボット40は、第1ウェハホルダ101および第1ウェハ10を、または、第2ウェハホルダ201および第2ウェハ20を、それぞれ順次または一体的に載置台502上に搬入する。観察顕微鏡501は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、載置台502に載置されたウェハの全体像を撮像素子に結像させる光学系を有する。そして、制御演算部は、例えば載置台502に載置された第1ウェハ10の全体画像を取得して、画像中の第1ノッチ13の位置から、載置台502上における第1ウェハ10の姿勢を検知する。ここで検知する第1ウェハ10の姿勢は、少なくともxy平面内における第1ウェハ10の中心座標、回転量を含む。なお、載置台502に第2ウェハ20が載置されている場合も、同様に姿勢を検知することができる。
【0027】
基板重ね合わせ装置30は、互いに対向して第1測定顕微鏡301と第2測定顕微鏡302を備える。第1測定顕微鏡301は筐体の天井フレームに固定され、第2測定顕微鏡302は第1ステージ303に設置される。第1ステージ303は、駆動装置307に設置され、制御演算部の制御によりxyz方向およびθxθyθz方向の6軸方向に移動する。特に、第1ステージ303はその中央部に球面台座308を備え、駆動装置307は第1ステージ303を球面台座308に沿って駆動することにより、θxθy方向に移動させる。つまり、第1ステージ303を水平方向に対して傾けることができる。
【0028】
第1ステージ303のxy方向の移動距離およびz軸周りの回転方向であるθz方向の回転量は、レーザー光波干渉式の測長器であるXY干渉計306により、第1ステージ303の端部に設けられた反射ミラー305を用いて検出される。なお、XY干渉計306および反射ミラー305は、xy方向の移動量およびθz方向の回転量が検出できるように、適当な位置に複数設置されている。
【0029】
第1ウェハホルダ101とこれに保持された第1ウェハ10は、プリアライナー50で姿勢の同定を受けた後に、搬送ロボット40により把持され、第1ステージ303に搬送される。第1ステージ303は、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101を真空吸着により固定する。なお、第1ステージ303は、第1ウェハホルダ101の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、第1ウェハ10は第1ウェハホルダ101に固定されたままであり、相対的な位置および姿勢が維持される。
【0030】
同様に、第2ウェハホルダ201とこれに保持された第2ウェハ20は、プリアライナー50で姿勢の同定を受けた後に、搬送ロボット40により把持され、第2ステージ304に搬送される。搬送ロボット40は、この間にハンド部401を180度回転させて、第2ウェハ20を下向きにする。第2ステージ304は、第1ステージ303に対向し筐体の天井フレームに固定されたステージであり、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を下向きに真空吸着により固定する。なお、第2ステージ304は、第2ウェハホルダ201の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、第2ウェハ20は第2ウェハホルダ201に固定されたままであり、相対的な位置および姿勢が維持される。
【0031】
第1測定顕微鏡301は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、第1ステージ303に第1ウェハホルダ101を介して載置された第1ウェハ10の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える第1撮像ユニットを構成する。同様に、第2測定顕微鏡302は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、第2ステージ304に第2ウェハホルダ201を介して載置された第2ウェハ20の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える第2撮像ユニットを構成する。
【0032】
第1測定顕微鏡301により第1ウェハ10の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が第1測定顕微鏡301の視野内に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。第2測定顕微鏡302により第2ウェハ20の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が第2測定顕微鏡302の視野内に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。なお、第1測定顕微鏡301と第2測定顕微鏡302のそれぞれの光軸は、互いに対向したときに一致するよう予め調整されている。
【0033】
第1測定顕微鏡301の近傍の天井フレームには、第1ウェハ10の上面である第1接合面の所定箇所までの変位を計測する第1干渉計309が設置されている。第1干渉計309は、例えば、天井フレームを基準として第1接合面の所定箇所までの距離を計測するレーザー光波干渉式の測長器である。第1測定顕微鏡301が第1ウェハ10の所定の部分を観察するときと同様に、第1干渉計309が所定箇所に対する距離を計測する場合には、その計測箇所が第1干渉計309の直下に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。
【0034】
第1ステージ303上の、第1ウェハホルダの載置面を挟んで第2測定顕微鏡302の反対側には、第2ウェハ20の上面である第2接合面の所定箇所までの変位を計測する第2干渉計310が設置されている。第2干渉計310は、例えば、第1ステージ303を基準として第2接合面の所定箇所までの距離を計測するレーザー光波干渉式の測長器である。第2測定顕微鏡302が第2ウェハ20の所定の部分を観察するときと同様に、第2干渉計310が所定箇所に対する距離を計測する場合には、その計測箇所が第2干渉計310の直上に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。
【0035】
詳細な工程については後述するが、第1測定顕微鏡301および第2測定顕微鏡302により第1ウェハ10と第2ウェハ20の精確な姿勢を把握し、また、第1干渉計309および第2干渉計310により第1接合面と第2接合面の傾きを把握して、互いの接合面を接触させる。そして、第1ウェハホルダ101の吸着子111と第2ウェハホルダ201のマグネット211を作用させることで、第1ウェハ10および第2ウェハ20を挟持した状態で、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201を一体化して固定する。一体化されたウェハホルダ対は、搬送ロボット40のハンド部401に把持されて、基板重ね合わせ装置30から次工程を担う装置へ向けて搬出される。
【0036】
一般的に、2つのウェハホルダを対向させ、それぞれが保持するウェハの回路形成面である接合面同士を接触させて積層するような場合、最初の接触において互いが部分的に接触する片当たりが生じると、過大な荷重を回路領域に与えることになり、回路の損傷を招く。したがって、ウェハホルダのステージと接する載置面と、ウェハを保持する保持面の平行度が悪ければ、片当たりの原因となる。また、ウェハホルダに保持されるウェハそのものも、表裏の面、すなわち、回路形成面である接合面とウェハホルダに保持される保持面の平行度が悪い場合がある。このような場合は、ウェハホルダの載置面と保持面の平行度が良くても、片当たりを生じてしまう。
【0037】
このような事情を考慮して、従来、互いの接合面を接触させる工程においては、回路領域に衝撃を与えるような片当たりを防ぐべく、互いの接近動作を非常に低速で行っていた。すなわち、どのような角度でどの箇所が片当たりするか予測できないままに接近させる場合、接触時の衝撃を抑制するには接近速度を極力抑える必要があった。このような処理工程は、スループットの低下を招く原因となっていた。そこで、本実施形態においては、互いの接合面を接触させる工程に先立って、互いの接合面の傾きを計測し、計測された傾きを是正して平行にする処理動作を実行する。以下、図を用いて説明する。
【0038】
図4は、基板重ね合わせ装置30を概略的に示す側面図である。図4においては、紙面右方向をx軸プラス方向とした場合、第1ウェハ10の接合面と第2ウェハ20の接合面が、x軸プラス方向に向かうに従い、互いに遠ざかるようにデフォルメして描いている。このような場合、そのまま駆動装置307をz方向へ駆動して第1ステージ303を上方へ持ち上げると、第1接合面と第2接合面は、x軸マイナス側である左端部分で片当たりしてしまう。なお図においては、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201のそれぞれのウェハ保持面が載置面に対して傾いている様子を示す。
【0039】
図5は、干渉計を用いて接合面の変位計測を行う様子を示す図である。具体的には、第1干渉計309を用いて、第1ステージ303に載置された第1ウェハホルダ101に保持されている第1ウェハ10の第1接合面の変位計測を開始し、同時に、第2干渉計310を用いて、第2ステージ304に載置された第2ウェハホルダ201に保持されている第2ウェハ20の第2接合面の変位計測を開始する様子を示す。上述のように、第2ステージ304および第1干渉計309は筐体の天井フレームに固定されており、また、第2干渉計310は第1ステージ303に固定されて第1ステージ303と共に移動される。したがって、図示するように、例えば第1ステージ303がx軸マイナス方向に移動されると、第1接合面は左端部分から右端部分にかけて経時的に第1干渉計309の直下で対向することになる。同様に、第2接合面の右端部分から左端部分にかけて第2干渉計310が直下を通過することになる。
【0040】
第1干渉計309による計測は、第1接合面のうち第1干渉計309に相対する箇所に対して行う。これを、第1ステージ303の移動に伴って、所定間隔ごとに離散的に連続して繰り返す。制御演算部は、第1干渉計309の出力と、その計測時の第1ステージ303の移動量または移動量に基づいて計算される第1ステージ303における計測座標値をリンクさせて順次記憶する。第2干渉計310による計測も同様に行う。すなわち、第1ステージ303の移動に伴って、第2接合面のうち第2干渉計310に相対する箇所に対して、所定間隔ごとに離散的に連続して繰り返す。制御演算部は、第2干渉計310の出力と、その計測時の第1ステージ303の移動量または移動量に基づいて計算される第2ステージ304の計測座標値をリンクさせて順次記憶する。
【0041】
上記のように計測するときに、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310による計測を並行して行えば、一軸方向の計測を一度のステージ移動で完了させることができる。図6は、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310によるx軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。図6のいずれの図も、装置上方から見下ろした様子を表す。
【0042】
図6の上図は、第1ステージ303と第2ステージ304が、図4と同様の相対位置関係にある場合を表す。この初期状態から第1ステージ303をx軸マイナス方向へ移動させる。すると、図6中図に示すように、第1ステージ303に固定されている第1ウェハ10は、天井フレームに固定されている第1干渉計309の直下に差し掛かる。同時に、第1ステージ303に固定されている第2干渉計310は、第2ステージ304に固定されている第2ウェハ20の直下に差し掛かる。この状態から第1干渉計309は、第1ウェハ10に対する計測を開始し、第2干渉計310は、第2ウェハ20に対する計測を開始する。そして、第1ステージ303の移動に同期して、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を継続する。図6下図に示すように、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10のx軸方向端部が到達し、また、第2ウェハ20のx軸方向端部の直下に第2干渉計310が到達すると、それぞれの計測を終了する。
【0043】
x軸方向に引き続き、y軸方向についても第1接合面と第2接合面に対してそれぞれ計測をおこなう。図7は、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310によるy軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。図7のいずれの図も、装置上方から見下ろした様子を表す。
【0044】
図7の上図は、y軸方向の計測を行う場合の、第1ステージ303と第2ステージ304の初期状態の相対位置関係を示す。この初期状態から第1ステージ303をy軸マイナス方向へ移動させる。すると、第1ステージ303に固定されている第1ウェハ10は、天井フレームに固定されている第1干渉計309の直下に差し掛かる。同時に、第1ステージ303に固定されている第2干渉計310は、第2ステージ304に固定されている第2ウェハ20の直下に差し掛かる。
【0045】
この状態から第1干渉計309は、第1ウェハ10に対する計測を開始し、第2干渉計310は、第2ウェハ20に対する計測を開始する。そして、第1ステージ303の移動に同期して、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を継続する。図7中図に示すように、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10の中心が、また、第2ウェハ20の中心の直下に第2干渉計310が位置する状態を経由し、図7下図の状態に至る。図7下図は、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10のy軸方向端部が到達し、また、第2ウェハ20のy軸方向端部の直下に第2干渉計310が到達した状態を示す。そして、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を終了する。
【0046】
図8は、上述のように計測された結果の例を示す概念図である。図は、x軸方向に計測された複数個所におけるz軸方向の変位と、y軸方向に計測された複数個所におけるz軸方向の変位を、第1ウェハ10における計測箇所に対応させて示す。ここで示されるz軸方向の変位は、第1干渉計309が固定されている天井フレームと平行に設置されている第2ステージ304を基準面とした、第1接合面の計測箇所までの距離である。
【0047】
したがって、x軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第1ウェハ10は、x軸プラス方向へ向かって第2ステージ304から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第2ステージ304と第1ウェハ10のx軸方向の傾き角θ1xを求める。
【0048】
同様に、y軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第1ウェハ10は、y軸プラス方向へ向かって第2ステージ304から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第2ステージ304と第1ウェハ10のy軸方向の傾き角θ1yを求める。
【0049】
第2ウェハ20に対する測定結果も同様に扱うことができる。第2ウェハ20のz軸方向の変位は、第2干渉計310が固定されている第1ステージ303を基準面とした、第2接合面の計測箇所までの距離である。例えば、x軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第2ウェハ20は、x軸プラス方向へ向かって第1ステージ303から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第1ステージ303と第2ウェハ20のx軸方向の傾き角θ2xを求める。y軸方向の測定データについても同様に、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第1ステージ303と第2ウェハ20のy軸方向の傾き角θ2yを求める。
【0050】
以上の計測および演算により、第2ステージに対する第1ウェハ10のx軸方向およびy軸方向の傾き角、第1ステージに対する第2ウェハ20のx軸方向およびy軸方向の傾き角がそれぞれ算出できる。そこで次に、第1ステージ303を球面台座308に沿って移動させることにより、第1ウェハ10の第1接合面と、第2ウェハ20の第2接合面を互いに平行にする。図9は、駆動装置307を用いて第1ステージ303を球面台座308に沿って傾ける様子を示す図である。
【0051】
第1接合面と第2接合面を互いに平行にするには、第1接合面と第2接合面の相対的な傾きである補正角を計算して、これに基づいて第1ステージ303を傾ける。具体的には、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに平行状態を維持するように管理されているとして、第1ステージ303のx軸周りの補正角は、y軸方向の傾き角を用いて、θ1y−θ2yとして求められる。同様に、第1ステージ303のy軸周りの補正角は、x軸方向の傾き角を用いて、θ1x−θ2xとして求められる。なお、第1ステージ303自体の傾きは、図示されていないZ干渉計により求めることができるので、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに平行でない場合には、上記のそれぞれの式に、第1ステージ303の傾きを補正する補正項を加えればよい。
【0052】
第1ステージ303を傾けて、第1接合面と第2接合面を互いに平行とした後、さらに第1ステージ303をxy平面内で移動させて、第1接合面と第2接合面のxy平面内における精確な位置合わせを行う。具体的には、第1測定顕微鏡301を用いて第1ウェハ10の複数の第1アライメントマーク12を観察し、それぞれの精確な位置を計測する。また、第2測定顕微鏡302を用いて第2ウェハ20の複数の第2アライメントマーク22を観察し、それぞれの精確な位置を計測する。第1ステージ303のxy平面内における目標位置については、例えば、複数の第1アライメントマーク12と、これに対応する複数の第2アライメントマーク22が重ね合わされたときに、相互の位置ずれ量が最も小さくなるように統計的に決定されるグローバルアライメント法等を用いて演算され、決定される。
【0053】
このようにして、xy平面内における精確な位置合わせを終えると、次に第1接合面と第2接合面を接触させる動作を行う。図10は、第1ウェハ10と第2ウェハ20を接触させてウェハホルダ対を形成する様子を示す図である。図示するように、第1接合面と第2接合面が面接触するまで、駆動装置307を駆動させて第1ステージ303をz軸プラス方向へ持ち上げる。
【0054】
第1接合面と第2接合面が互いに平行であることを予め確保しているので、第1ステージ303のz軸プラス方向への移動は、比較的高速に行うことができる。第1接合面と第2接合面が完全に平行でないとしても、残存する傾き角は僅かである。したがって、片当たりが生じたとしても、過大な荷重を回路領域に与えることが無い。もし、傾き角が残存していた場合には、第2ステージ304に設けられている複数のロードセルが圧力分布を検出し、接触点を起点として第1接合面を第2接合面に倣わせるべく、駆動装置307を用いて球面台座308に沿って第1ステージ303を移動させる。
【0055】
そして、若干の圧力を加えて、互いに仮接合させた後、第1ウェハホルダ101の吸着子111と、第2ウェハホルダ201のマグネット211を作用させて、2つのウェハホルダを互いにクランプさせる。つまり、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201が、正確に位置合わせされた第1ウェハ10と第2ウェハ20を挟み込んで、一体的に固定されたウェハホルダ対の状態をつくりあげる。
【0056】
ウェハホルダ対を形成した後、第2ステージ304による第2ウェハホルダ201の吸着を解除する。そして、第1ステージ303を、形成されたウェハホルダ対を載置した状態でz軸マイナス方向へ移動させる。図11は、ウェハホルダ対を載置した第1ステージ303が移動される様子を示す図である。図示するように、第1ステージ303の引き下げ動作においては、補正角に基づいて傾けていた第1ステージ303を水平に戻す。このように搬入および搬出時において第1ステージ303が常に水平であれば、搬送ロボット40のハンド部401は、ウェハホルダまたはウェハホルダ対の把持を行いやすい。そして、一体化されたウェハホルダ対は、搬送ロボット40のハンド部401に把持されて、基板重ね合わせ装置30から次工程を担う装置へ向けて搬出される。
【0057】
上述の実施例においては、第1干渉計309および第2干渉計310をそれぞれ、第1ステージ303および第2ステージ304に対向するように設置して、第1ステージ303をxy平面内で移動させることにより、第1接合面と第2接合面の補正角を検出した。しかしながら、補正角を取得する手順は上述の実施例に限らないので、以下にその変形例を順次説明する。
【0058】
(変形例1)
上述の実施例においては、第1ステージ303のみを移動させて補正角を検出した。しかし、第2ステージ304も駆動機構を設けて移動させるように制御を行っても良い。この場合、第1干渉計309および第1測定顕微鏡301は、第2ステージ304上に設置することが好ましい。このように構成する場合は、アライメントマークの検出および補正角の算出において、少なくともいずれか一方のステージを動かせば良いので、ステージの移動量を抑えることができ、また、移動パスを生成しやすい。
【0059】
(変形例2)
上述の実施例においては、補正角の算出を行い、第1接合面と第2接合面を平行にした後に、互いのアライメントマークの検出を行った。しかし、第1干渉計309と共に第1測定顕微鏡301も動作させ、また、第2干渉計310と共に第2測定顕微鏡302も動作させれば、第1ステージ303の移動に伴い、変位量の計測に並行してアライメントマークの検出を行うことができる。このように構成すれば、第1ステージ303の移動量を抑制することができるので、スループットの向上に寄与する。なお、算出された補正角に基づいて第1ステージ303を傾けると、取得したアライメントマーク座標に誤差を生じるが、この誤差は補正角に基づいて修正することができる。なお、球面台座308の回転中心を、第1ウェハ10の第1接合面の中心と一致するように設計すれば、第1ステージ303の傾きによって生じるアライメントマーク座標の誤差は僅かであるので、補正角の大きさによっては修正を行わなくても良い。
【0060】
(変形例3)
上述の実施例においては、第1接合面の変位を計測する第1干渉計309と、第2接合面の変位を計測する第2干渉計310を、それぞれ独立して設置した。しかし、第2干渉計310を廃止して、第1干渉計309のみで計測することもできる。具体的には、第1ウェハ10の第1ステージ303への載置に先立ち、第2ウェハ20を第1ステージ303へ仮載置する。この状態で第1ステージ303を移動させつつ、第1干渉計309を用いて第2ウェハ20の第2接合面を計測する。第1ステージ303と第2ステージ304は互いに並行、または互いの傾きは既知であるので、計測後の第2ウェハ20を第1ステージ303から離脱させ、位相を調整しつつ第2ステージ304へ載置すれば、第1ステージに対する第2ウェハ20の傾き角を把握することができる。その後、第1ステージ303へ第1ウェハ10を載置し、第2ステージに対する第1ウェハ10の傾き角を算出すれば、上述の実施例と同様に、第1接合面と第2接合面を互いに平行にすることができる。なお、ここで位相を調整するとは、第2ウェハ20について、第1ステージ303へ仮載置したときのxy平面内における向きと、計測後に第2ステージ304へ載置するxy平面内における向きを合わせる、または既知の回転量を加えて向きを変更することである。
【0061】
(変形例4)
上述の実施例においては、第1干渉計309および第2干渉計310による計測を第1ステージ303の移動に同期させて行った。しかし、例えば、第1接合面上の複数個所を同時に計測できるように、複数の第1干渉計309を設置したり、複数個所を並行して計測できる変位計もしくは走査機構を備えた変位計を設置すれば、第1ステージ303を移動させることなく計測を行うことができる。例えば、投光系と受光系を分離させ、投光系から射出した複数のレーザー光を、第1接合面の異なる箇所で反射させて受光系で受光する、干渉計アレイを用いても良い。このように構成すれば、第1ステージ303の移動に伴う誤差の累積を回避することができ、また、移動に必要な時間を省くことができる。
【0062】
(変形例5)
上述の実施例においては、第1干渉計309と第2干渉計310を基板重ね合わせ装置30内に設置して、基板重ね合わせ装置30において補正角を算出し、取得した。しかし、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに並行、または互いの傾きが既知であれば、それぞれのステージに実際にウェハを載置して計測しなくても良い。つまり、基板重ね合わせ装置30を制御する制御演算部は、外部装置で計測された計測結果を取得し、第1ステージ303と第2ステージ304の傾きを考慮して、補正角を算出すれば良い。
【0063】
具体的には、例えばプリアライナー50において、観察顕微鏡501の近傍に干渉計を設置し、載置台502をxy平面内で移動させることにより、載置台502に載置された第1ウェハ10の第1接合面の変位を計測する。第1ウェハ10が第1ウェハホルダ101に保持されていれば、計測した結果から、第1ウェハホルダ101の裏面に対する第1ウェハ10の接合面の傾き角を算出することができる。また、第1ウェハ10が単独で載置台502に載置されていれば、第1ウェハ10の表裏面間の傾き角を算出することができる。第2ウェハ20についても同様に算出できる。そして、基板重ね合わせ装置30を制御する制御演算部は、プリアライナー50からこの算出結果を取得する。さらに、搬送ロボット40を制御して、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101を第1ステージ303へ、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を第2ステージ304へ、それぞれ回転位相を調整して載置固定する。このように構成すれば、基板重ね合わせ装置30内で計測を行わなくても、第1ステージ303を傾けて第1接合面と第2接合面を互いに並行にすることができる。このように構成すれば、システム全体の並行処理を促進することができるので、スループットの向上が期待できる。
【0064】
(変形例6)
上述の実施例においては、第1干渉計309と第2干渉計310による変位計測に引き続き、第1ステージ303を傾けて第1接合面と第2接合面を平行にした。しかし、その都度第1接合面および第2接合面の計測を行わなくても良い。それぞれステージに載置された第1接合面と第2接合面が互いに平行でない主な原因の一つは、ウェハホルダの、ステージと接する載置面とウェハを保持する保持面の平行度が良くない点にある。したがって、基板重ね合わせ装置30に記憶部を設け、利用する複数のウェハホルダについてそれぞれの載置面と保持面の平行度を記憶しておけば、毎回の変位計測を省略することができる。つまり、例えば、現時点で第1ステージ303に載置されている第1ウェハホルダ101についての平行度を記憶部から読み出し、かつ、載置されている第1ウェハホルダ101の位相がわかれば、ウェハホルダに起因する第2ステージに対する第1接合面の傾き角を算出することができる。載置されている第1ウェハホルダ101の位相は、搬送ロボット40によって搬入される時のハンド部401の向きから把握することができる。第1ステージに対する第2接合面の傾き角も同様に算出することができる。したがって、ウェハホルダの載置面と保持面の傾きが、第1接合面と第2接合面が平行とならない主たる原因である場合は、このような構成でも上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
以上説明したそれぞれの実施例では、第1接合面と第2接合面の傾き角を計測する場合には干渉計を用いた。しかし、第1測定顕微鏡301、第2測定顕微鏡302がフォーカス機能を備える場合、その複数点における焦点調整の結果から各々の接合面の傾きを検出することができる。このようにフォーカス機能を備える測定顕微鏡を用いて装置を構成すれば、干渉計を省くことができる。
【0066】
以上変形例を説明したが、もちろんこれらの組み合わせも実施例として採用し得る。また、本発明を上述の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0067】
10 第1ウェハ、11 第1回路領域、12 第1アライメントマーク、13 第1ノッチ、20 第2ウェハ、21 第2回路領域、22 第2アライメントマーク、23 第2ノッチ、30 基板重ね合わせ装置、40 搬送ロボット、50 プリアライナー、101 第1ウェハホルダ、110 ホルダ本体、111 吸着子、201 第2ウェハホルダ、210 ホルダ本体、211 マグネット、301 第1測定顕微鏡、302 第2測定顕微鏡、303 第1ステージ、304 第2ステージ、305 反射ミラー、306 XY干渉計、307 駆動装置、308 球面台座、309 第1干渉計、310 第2干渉計、401 ハンド部、402 アーム部、501 観察顕微鏡、502 載置台
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板重ね合わせ装置およびデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各々に素子、回路等が形成された半導体基板を積層して製造された積層型半導体装置がある。半導体基板を積層する場合には、基板ホルダに保持された一対の半導体基板を、精密に位置決めして積層した後、基板全体を加熱、加圧して接合させる。特に、一対の半導体基板を位置決めする位置決め装置について、例えば特許文献1に紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板の位置決めにおいては、互いの半導体基板における水平面内であるxy方向の位置合わせを行った後、z方向へ近接させる。そして、ロードセルの圧力分布出力を監視しながら、互いの半導体基板を接触させる。しかしながら、この方法においては互いに重ね合わされる接合面が接触するまではその傾き状態が把握できず、接触時に大きな衝撃が加わる恐れがある。よって、ステージのz方向の移動は、極力遅い速度に設定せざるを得なかった。特に、最初の接触時における傾きが大きいと、その後実行される倣い動作において繰り返される試行動作の回数が増えてしまい、装置としてのスループット低下に多大な影響を与えていた。
【0005】
また、互いの接合面の傾きは、それぞれの基板ホルダが載置されるステージ同士の傾きのみならず、基板ホルダのステージ載置面と半導体基板保持面間の傾き、さらには、半導体基板そのものの表裏面間の傾きの累積として表れる。したがって、ステージの監視のみでz方向への近接動作を行うことは、やはり不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のひとつの態様における基板重ね合わせ装置は、第1基板を保持する第1ステージと、第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得部が取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部とを備える。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のひとつの態様におけるデバイスの製造方法は、複数の基板を重ね合わせて製造されるデバイスの製造方法であって、複数の基板を重ね合わせる工程は、第1ステージに第1基板を保持させる第1保持ステップと、第2ステージに、第1基板に対向して第2基板を保持させる第2保持ステップと、第1ステージに保持された第1基板の接合面である第1接合面と、第2ステージに保持された第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得ステップと、第1ステージおよび第2ステージの少なくとも一方を、取得ステップで取得した傾きに基づいて、第1接合面と第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動ステップとを含む。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1基板を保持した第1基板ホルダを上方から見下ろした斜視図である。
【図2】第2基板を保持した第3基板ホルダを上方から見下ろした斜視図である。
【図3】本実施形態に係る基板重ね合わせシステムの概略構成図である。
【図4】基板重ね合わせ装置を概略的に示す側面図である。
【図5】干渉計を用いて接合面の変位計測を行う様子を示す図である。
【図6】x軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。
【図7】y軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。
【図8】計測された結果の例を示す概念図である。
【図9】第1ステージを球面台座に沿って傾ける様子を示す図である。
【図10】ウェハホルダ対を形成する様子を示す図である。
【図11】ウェハホルダ対を載置した第1ステージが移動される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
図1は、基板である第1ウェハ10を保持した第1ウェハホルダ101を上方から見下ろした斜視図である。第1ウェハホルダ101は、ホルダ本体110および吸着子111を有して、全体としては第1ウェハ10よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体110は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。
【0012】
ホルダ本体110は、第1ウェハ10を保持する領域をその表面に備える。この保持領域は研磨されて高い平坦性を有する。第1ウェハ10の保持は、静電力を利用した吸着により行われる。具体的には、ホルダ本体110に埋め込まれた電極に、ホルダ本体110の裏面に設けられた電圧印加端子を介して電圧を加えることにより、第1ウェハホルダ101と第1ウェハ10との間に電位差を生じさせて、第1ウェハ10を第1ウェハホルダ101に吸着させる。
【0013】
吸着子111は、鉄のような磁性体により形成され、第1ウェハ10を保持する表面において、保持した第1ウェハ10よりも外側である外周領域に複数配される。また、吸着子111は、第1ウェハ10を保持する平面と略同じ平面内にその上面が位置するように、ホルダ本体110に形成された陥没領域に配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個の吸着子111が配されている。
【0014】
第1ウェハ10の上面には、複数の第1回路領域11が造り込まれている。図示するように、矩形で囲まれる複数の第1回路領域11は、第1ウェハ10の上面に二次元的に広く配列されている。また、それぞれの第1回路領域11の内部には、第1アライメントマーク12が設けられている。第1アライメントマーク12は、第1ウェハ10の位置制御に用いられる指標である。それぞれの第1アライメントマーク12は、例えば第1ウェハ10の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。なお、以下において第1ウェハ10の上面を第1接合面と呼ぶ。
【0015】
第1アライメントマーク12は第1ウェハ10の位置制御に用いられる指標であるので、全ての第1回路領域11に設けられなくても良い。少なくとも第1ウェハ10の位置制御が行える個数があれば良い。また、第1アライメントマーク12は、第1回路領域11の内部に設けられているが、回路と無関係に別途設けられている必要はなく、回路の構成要素であって、指標として利用できるものを第1アライメントマーク12としても良い。例えば、積層型半導体素子におていは、層間の接続にTSV(Through Si Via)がよく利用されるが、TSVの先端を第1アライメントマーク12として用いることができる。さらには、第1回路領域11の外部に、第1アライメントマーク12を設けるようにしても良い。
【0016】
第1ノッチ13は、第1ウェハ10に設けられた切欠きであり、第1ウェハ10の姿勢を外形基準で判断するときに用いられる指標である。第1ノッチ13は、例えば第1ウェハ10の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。
【0017】
図2は、基板である第2ウェハ20を保持した第2ウェハホルダ201を上方から見下ろした斜視図である。第2ウェハホルダ201は、ホルダ本体210およびマグネット211を有して、全体としては第2ウェハ20よりも径がひとまわり大きな円板状をなす。ホルダ本体210は、セラミックス、金属等の高剛性材料により一体成形される。
【0018】
ホルダ本体210は、第2ウェハ20を保持する領域をその表面に備える。この保持領域は研磨されて高い平坦性を有する。第2ウェハ20の保持は、静電力を利用した吸着により行われる。具体的には、ホルダ本体210に埋め込まれた電極に、ホルダ本体210の裏面に設けられた電圧印加端子を介して電圧を加えることにより、第2ウェハホルダ201と第2ウェハ20との間に電位差を生じさせて、第2ウェハ20を第2ウェハホルダ201に吸着させる。
【0019】
マグネット211は、第2ウェハ20を保持する表面において、保持した第2ウェハ20よりも外側である外周領域に複数配される。また、マグネット211は、第2ウェハ20を保持する平面と略同じ平面内にその上面が位置するように配される。図の場合、2個を一組として120度毎に合計6個のマグネット211が配されている。
【0020】
第2ウェハホルダ201のマグネット211は、第1ウェハホルダ101の吸着子111とそれぞれ対応するように配置されている。そして、第1ウェハ10を保持した第1ウェハホルダ101と、第2ウェハ20を保持した第2ウェハホルダ201を、互いに向かい合わせてマグネット211と吸着子111を作用させると、第1ウェハ10と第2ウェハ20を重ね合わせた状態で挟持して固定することができる。
【0021】
第2ウェハ20の上面には、複数の第2回路領域21が造り込まれている。図示するように、矩形で囲まれる複数の第2回路領域21は、第2ウェハ20の上面に二次元的に広く配列されている。また、それぞれの第2回路領域21の内部には、第2アライメントマーク22が設けられている。第2アライメントマーク22は、第2ウェハ20の位置制御に用いられる指標である。それぞれの第2アライメントマーク22は、例えば第2ウェハ20の中心を原点とする座標値として、設計座標値が個別に管理されている。なお、以下において第2ウェハ20の上面を第2接合面と呼ぶ。
【0022】
第2アライメントマーク22は第2ウェハ20の位置制御に用いられる指標であるので、全ての第2回路領域21に設けられなくても良い。少なくとも第2ウェハ20の位置制御が行える個数があれば良い。また、第2アライメントマーク22は、第2回路領域21の内部に設けられているが、回路と無関係に別途設けられている必要はなく、回路の構成要素であって、指標として利用できるものを第2アライメントマーク22としても良い。さらには、第2回路領域21の外部に、第2アライメントマーク22を設けるようにしても良い。
【0023】
第2ノッチ23は、第2ウェハ20に設けられた切欠きであり、第2ウェハ20の姿勢を外形基準で判断するときに用いられる指標である。第2ノッチ23は、例えば第2ウェハ20の中心を原点とする座標値として、その設計座標値が個別に管理されている。
【0024】
図3は、本実施形態に係る基板重ね合わせ装置30を含む基板重ね合わせシステムの概略構成図である。基板重ね合わせ装置30は、複数の基板を互いの実装面において位置合わせをして重ね合わせる装置であり、特に半導体基板であるウェハ同士を重ね合わせて3次元実装を行うシステムの一部の装置として好適である。以下においては、各装置の各要素は、基板重ね合わせシステム全体の制御および演算を司る制御演算部、または要素ごとに設けられた制御演算部が、統合制御、協調制御を行うことにより動作する。
【0025】
基板重ね合わせシステムは、基板重ね合わせ装置30の他に、搬送ロボット40とプリアライナー50を備える。搬送ロボット40は、ウェハおよびウェハホルダを把持することができるハンド部401と、伸縮および回転することにより把持したウェハおよびウェハホルダを所定の位置に所定の姿勢で搬入させるアーム部402とを有する。なお、ハンド部401は、把持する第1ウェハホルダ101または第2ウェハホルダ201の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、ハンド部401が、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101、または、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を把持する場合でも、それぞれのウェハの保持を持続することができる。
【0026】
プリアライナー50は、観察顕微鏡501と載置台502を備える。搬送ロボット40は、第1ウェハホルダ101および第1ウェハ10を、または、第2ウェハホルダ201および第2ウェハ20を、それぞれ順次または一体的に載置台502上に搬入する。観察顕微鏡501は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、載置台502に載置されたウェハの全体像を撮像素子に結像させる光学系を有する。そして、制御演算部は、例えば載置台502に載置された第1ウェハ10の全体画像を取得して、画像中の第1ノッチ13の位置から、載置台502上における第1ウェハ10の姿勢を検知する。ここで検知する第1ウェハ10の姿勢は、少なくともxy平面内における第1ウェハ10の中心座標、回転量を含む。なお、載置台502に第2ウェハ20が載置されている場合も、同様に姿勢を検知することができる。
【0027】
基板重ね合わせ装置30は、互いに対向して第1測定顕微鏡301と第2測定顕微鏡302を備える。第1測定顕微鏡301は筐体の天井フレームに固定され、第2測定顕微鏡302は第1ステージ303に設置される。第1ステージ303は、駆動装置307に設置され、制御演算部の制御によりxyz方向およびθxθyθz方向の6軸方向に移動する。特に、第1ステージ303はその中央部に球面台座308を備え、駆動装置307は第1ステージ303を球面台座308に沿って駆動することにより、θxθy方向に移動させる。つまり、第1ステージ303を水平方向に対して傾けることができる。
【0028】
第1ステージ303のxy方向の移動距離およびz軸周りの回転方向であるθz方向の回転量は、レーザー光波干渉式の測長器であるXY干渉計306により、第1ステージ303の端部に設けられた反射ミラー305を用いて検出される。なお、XY干渉計306および反射ミラー305は、xy方向の移動量およびθz方向の回転量が検出できるように、適当な位置に複数設置されている。
【0029】
第1ウェハホルダ101とこれに保持された第1ウェハ10は、プリアライナー50で姿勢の同定を受けた後に、搬送ロボット40により把持され、第1ステージ303に搬送される。第1ステージ303は、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101を真空吸着により固定する。なお、第1ステージ303は、第1ウェハホルダ101の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、第1ウェハ10は第1ウェハホルダ101に固定されたままであり、相対的な位置および姿勢が維持される。
【0030】
同様に、第2ウェハホルダ201とこれに保持された第2ウェハ20は、プリアライナー50で姿勢の同定を受けた後に、搬送ロボット40により把持され、第2ステージ304に搬送される。搬送ロボット40は、この間にハンド部401を180度回転させて、第2ウェハ20を下向きにする。第2ステージ304は、第1ステージ303に対向し筐体の天井フレームに固定されたステージであり、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を下向きに真空吸着により固定する。なお、第2ステージ304は、第2ウェハホルダ201の電圧印加端子に電圧を印加する電圧供給端子を備える。これにより、第2ウェハ20は第2ウェハホルダ201に固定されたままであり、相対的な位置および姿勢が維持される。
【0031】
第1測定顕微鏡301は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、第1ステージ303に第1ウェハホルダ101を介して載置された第1ウェハ10の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える第1撮像ユニットを構成する。同様に、第2測定顕微鏡302は、図示されない制御演算部に接続された撮像素子と、第2ステージ304に第2ウェハホルダ201を介して載置された第2ウェハ20の一部分の像を撮像素子に結像させる光学系とを備える第2撮像ユニットを構成する。
【0032】
第1測定顕微鏡301により第1ウェハ10の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が第1測定顕微鏡301の視野内に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。第2測定顕微鏡302により第2ウェハ20の所定の部分を観察するときには、制御演算部は、その観察部分が第2測定顕微鏡302の視野内に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。なお、第1測定顕微鏡301と第2測定顕微鏡302のそれぞれの光軸は、互いに対向したときに一致するよう予め調整されている。
【0033】
第1測定顕微鏡301の近傍の天井フレームには、第1ウェハ10の上面である第1接合面の所定箇所までの変位を計測する第1干渉計309が設置されている。第1干渉計309は、例えば、天井フレームを基準として第1接合面の所定箇所までの距離を計測するレーザー光波干渉式の測長器である。第1測定顕微鏡301が第1ウェハ10の所定の部分を観察するときと同様に、第1干渉計309が所定箇所に対する距離を計測する場合には、その計測箇所が第1干渉計309の直下に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。
【0034】
第1ステージ303上の、第1ウェハホルダの載置面を挟んで第2測定顕微鏡302の反対側には、第2ウェハ20の上面である第2接合面の所定箇所までの変位を計測する第2干渉計310が設置されている。第2干渉計310は、例えば、第1ステージ303を基準として第2接合面の所定箇所までの距離を計測するレーザー光波干渉式の測長器である。第2測定顕微鏡302が第2ウェハ20の所定の部分を観察するときと同様に、第2干渉計310が所定箇所に対する距離を計測する場合には、その計測箇所が第2干渉計310の直上に位置するように、駆動装置307を駆動して第1ステージ303を移動させる。
【0035】
詳細な工程については後述するが、第1測定顕微鏡301および第2測定顕微鏡302により第1ウェハ10と第2ウェハ20の精確な姿勢を把握し、また、第1干渉計309および第2干渉計310により第1接合面と第2接合面の傾きを把握して、互いの接合面を接触させる。そして、第1ウェハホルダ101の吸着子111と第2ウェハホルダ201のマグネット211を作用させることで、第1ウェハ10および第2ウェハ20を挟持した状態で、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201を一体化して固定する。一体化されたウェハホルダ対は、搬送ロボット40のハンド部401に把持されて、基板重ね合わせ装置30から次工程を担う装置へ向けて搬出される。
【0036】
一般的に、2つのウェハホルダを対向させ、それぞれが保持するウェハの回路形成面である接合面同士を接触させて積層するような場合、最初の接触において互いが部分的に接触する片当たりが生じると、過大な荷重を回路領域に与えることになり、回路の損傷を招く。したがって、ウェハホルダのステージと接する載置面と、ウェハを保持する保持面の平行度が悪ければ、片当たりの原因となる。また、ウェハホルダに保持されるウェハそのものも、表裏の面、すなわち、回路形成面である接合面とウェハホルダに保持される保持面の平行度が悪い場合がある。このような場合は、ウェハホルダの載置面と保持面の平行度が良くても、片当たりを生じてしまう。
【0037】
このような事情を考慮して、従来、互いの接合面を接触させる工程においては、回路領域に衝撃を与えるような片当たりを防ぐべく、互いの接近動作を非常に低速で行っていた。すなわち、どのような角度でどの箇所が片当たりするか予測できないままに接近させる場合、接触時の衝撃を抑制するには接近速度を極力抑える必要があった。このような処理工程は、スループットの低下を招く原因となっていた。そこで、本実施形態においては、互いの接合面を接触させる工程に先立って、互いの接合面の傾きを計測し、計測された傾きを是正して平行にする処理動作を実行する。以下、図を用いて説明する。
【0038】
図4は、基板重ね合わせ装置30を概略的に示す側面図である。図4においては、紙面右方向をx軸プラス方向とした場合、第1ウェハ10の接合面と第2ウェハ20の接合面が、x軸プラス方向に向かうに従い、互いに遠ざかるようにデフォルメして描いている。このような場合、そのまま駆動装置307をz方向へ駆動して第1ステージ303を上方へ持ち上げると、第1接合面と第2接合面は、x軸マイナス側である左端部分で片当たりしてしまう。なお図においては、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201のそれぞれのウェハ保持面が載置面に対して傾いている様子を示す。
【0039】
図5は、干渉計を用いて接合面の変位計測を行う様子を示す図である。具体的には、第1干渉計309を用いて、第1ステージ303に載置された第1ウェハホルダ101に保持されている第1ウェハ10の第1接合面の変位計測を開始し、同時に、第2干渉計310を用いて、第2ステージ304に載置された第2ウェハホルダ201に保持されている第2ウェハ20の第2接合面の変位計測を開始する様子を示す。上述のように、第2ステージ304および第1干渉計309は筐体の天井フレームに固定されており、また、第2干渉計310は第1ステージ303に固定されて第1ステージ303と共に移動される。したがって、図示するように、例えば第1ステージ303がx軸マイナス方向に移動されると、第1接合面は左端部分から右端部分にかけて経時的に第1干渉計309の直下で対向することになる。同様に、第2接合面の右端部分から左端部分にかけて第2干渉計310が直下を通過することになる。
【0040】
第1干渉計309による計測は、第1接合面のうち第1干渉計309に相対する箇所に対して行う。これを、第1ステージ303の移動に伴って、所定間隔ごとに離散的に連続して繰り返す。制御演算部は、第1干渉計309の出力と、その計測時の第1ステージ303の移動量または移動量に基づいて計算される第1ステージ303における計測座標値をリンクさせて順次記憶する。第2干渉計310による計測も同様に行う。すなわち、第1ステージ303の移動に伴って、第2接合面のうち第2干渉計310に相対する箇所に対して、所定間隔ごとに離散的に連続して繰り返す。制御演算部は、第2干渉計310の出力と、その計測時の第1ステージ303の移動量または移動量に基づいて計算される第2ステージ304の計測座標値をリンクさせて順次記憶する。
【0041】
上記のように計測するときに、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310による計測を並行して行えば、一軸方向の計測を一度のステージ移動で完了させることができる。図6は、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310によるx軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。図6のいずれの図も、装置上方から見下ろした様子を表す。
【0042】
図6の上図は、第1ステージ303と第2ステージ304が、図4と同様の相対位置関係にある場合を表す。この初期状態から第1ステージ303をx軸マイナス方向へ移動させる。すると、図6中図に示すように、第1ステージ303に固定されている第1ウェハ10は、天井フレームに固定されている第1干渉計309の直下に差し掛かる。同時に、第1ステージ303に固定されている第2干渉計310は、第2ステージ304に固定されている第2ウェハ20の直下に差し掛かる。この状態から第1干渉計309は、第1ウェハ10に対する計測を開始し、第2干渉計310は、第2ウェハ20に対する計測を開始する。そして、第1ステージ303の移動に同期して、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を継続する。図6下図に示すように、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10のx軸方向端部が到達し、また、第2ウェハ20のx軸方向端部の直下に第2干渉計310が到達すると、それぞれの計測を終了する。
【0043】
x軸方向に引き続き、y軸方向についても第1接合面と第2接合面に対してそれぞれ計測をおこなう。図7は、第1ステージ303の駆動に同期させて、第1干渉計309および第2干渉計310によるy軸方向の計測を並行して行う様子を示す模式図である。図7のいずれの図も、装置上方から見下ろした様子を表す。
【0044】
図7の上図は、y軸方向の計測を行う場合の、第1ステージ303と第2ステージ304の初期状態の相対位置関係を示す。この初期状態から第1ステージ303をy軸マイナス方向へ移動させる。すると、第1ステージ303に固定されている第1ウェハ10は、天井フレームに固定されている第1干渉計309の直下に差し掛かる。同時に、第1ステージ303に固定されている第2干渉計310は、第2ステージ304に固定されている第2ウェハ20の直下に差し掛かる。
【0045】
この状態から第1干渉計309は、第1ウェハ10に対する計測を開始し、第2干渉計310は、第2ウェハ20に対する計測を開始する。そして、第1ステージ303の移動に同期して、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を継続する。図7中図に示すように、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10の中心が、また、第2ウェハ20の中心の直下に第2干渉計310が位置する状態を経由し、図7下図の状態に至る。図7下図は、第1干渉計309の直下に第1ウェハ10のy軸方向端部が到達し、また、第2ウェハ20のy軸方向端部の直下に第2干渉計310が到達した状態を示す。そして、第1干渉計309および第2干渉計310の計測を終了する。
【0046】
図8は、上述のように計測された結果の例を示す概念図である。図は、x軸方向に計測された複数個所におけるz軸方向の変位と、y軸方向に計測された複数個所におけるz軸方向の変位を、第1ウェハ10における計測箇所に対応させて示す。ここで示されるz軸方向の変位は、第1干渉計309が固定されている天井フレームと平行に設置されている第2ステージ304を基準面とした、第1接合面の計測箇所までの距離である。
【0047】
したがって、x軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第1ウェハ10は、x軸プラス方向へ向かって第2ステージ304から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第2ステージ304と第1ウェハ10のx軸方向の傾き角θ1xを求める。
【0048】
同様に、y軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第1ウェハ10は、y軸プラス方向へ向かって第2ステージ304から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第2ステージ304と第1ウェハ10のy軸方向の傾き角θ1yを求める。
【0049】
第2ウェハ20に対する測定結果も同様に扱うことができる。第2ウェハ20のz軸方向の変位は、第2干渉計310が固定されている第1ステージ303を基準面とした、第2接合面の計測箇所までの距離である。例えば、x軸プラス方向へ向かって変位量が増大するということは、第2ウェハ20は、x軸プラス方向へ向かって第1ステージ303から遠ざかるように傾いていることを表す。そして、離散的に計測された計測データには、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第1ステージ303と第2ウェハ20のx軸方向の傾き角θ2xを求める。y軸方向の測定データについても同様に、最小二乗法により直線近似式が当てはめられ、この近似式から、第1ステージ303と第2ウェハ20のy軸方向の傾き角θ2yを求める。
【0050】
以上の計測および演算により、第2ステージに対する第1ウェハ10のx軸方向およびy軸方向の傾き角、第1ステージに対する第2ウェハ20のx軸方向およびy軸方向の傾き角がそれぞれ算出できる。そこで次に、第1ステージ303を球面台座308に沿って移動させることにより、第1ウェハ10の第1接合面と、第2ウェハ20の第2接合面を互いに平行にする。図9は、駆動装置307を用いて第1ステージ303を球面台座308に沿って傾ける様子を示す図である。
【0051】
第1接合面と第2接合面を互いに平行にするには、第1接合面と第2接合面の相対的な傾きである補正角を計算して、これに基づいて第1ステージ303を傾ける。具体的には、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに平行状態を維持するように管理されているとして、第1ステージ303のx軸周りの補正角は、y軸方向の傾き角を用いて、θ1y−θ2yとして求められる。同様に、第1ステージ303のy軸周りの補正角は、x軸方向の傾き角を用いて、θ1x−θ2xとして求められる。なお、第1ステージ303自体の傾きは、図示されていないZ干渉計により求めることができるので、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに平行でない場合には、上記のそれぞれの式に、第1ステージ303の傾きを補正する補正項を加えればよい。
【0052】
第1ステージ303を傾けて、第1接合面と第2接合面を互いに平行とした後、さらに第1ステージ303をxy平面内で移動させて、第1接合面と第2接合面のxy平面内における精確な位置合わせを行う。具体的には、第1測定顕微鏡301を用いて第1ウェハ10の複数の第1アライメントマーク12を観察し、それぞれの精確な位置を計測する。また、第2測定顕微鏡302を用いて第2ウェハ20の複数の第2アライメントマーク22を観察し、それぞれの精確な位置を計測する。第1ステージ303のxy平面内における目標位置については、例えば、複数の第1アライメントマーク12と、これに対応する複数の第2アライメントマーク22が重ね合わされたときに、相互の位置ずれ量が最も小さくなるように統計的に決定されるグローバルアライメント法等を用いて演算され、決定される。
【0053】
このようにして、xy平面内における精確な位置合わせを終えると、次に第1接合面と第2接合面を接触させる動作を行う。図10は、第1ウェハ10と第2ウェハ20を接触させてウェハホルダ対を形成する様子を示す図である。図示するように、第1接合面と第2接合面が面接触するまで、駆動装置307を駆動させて第1ステージ303をz軸プラス方向へ持ち上げる。
【0054】
第1接合面と第2接合面が互いに平行であることを予め確保しているので、第1ステージ303のz軸プラス方向への移動は、比較的高速に行うことができる。第1接合面と第2接合面が完全に平行でないとしても、残存する傾き角は僅かである。したがって、片当たりが生じたとしても、過大な荷重を回路領域に与えることが無い。もし、傾き角が残存していた場合には、第2ステージ304に設けられている複数のロードセルが圧力分布を検出し、接触点を起点として第1接合面を第2接合面に倣わせるべく、駆動装置307を用いて球面台座308に沿って第1ステージ303を移動させる。
【0055】
そして、若干の圧力を加えて、互いに仮接合させた後、第1ウェハホルダ101の吸着子111と、第2ウェハホルダ201のマグネット211を作用させて、2つのウェハホルダを互いにクランプさせる。つまり、第1ウェハホルダ101と第2ウェハホルダ201が、正確に位置合わせされた第1ウェハ10と第2ウェハ20を挟み込んで、一体的に固定されたウェハホルダ対の状態をつくりあげる。
【0056】
ウェハホルダ対を形成した後、第2ステージ304による第2ウェハホルダ201の吸着を解除する。そして、第1ステージ303を、形成されたウェハホルダ対を載置した状態でz軸マイナス方向へ移動させる。図11は、ウェハホルダ対を載置した第1ステージ303が移動される様子を示す図である。図示するように、第1ステージ303の引き下げ動作においては、補正角に基づいて傾けていた第1ステージ303を水平に戻す。このように搬入および搬出時において第1ステージ303が常に水平であれば、搬送ロボット40のハンド部401は、ウェハホルダまたはウェハホルダ対の把持を行いやすい。そして、一体化されたウェハホルダ対は、搬送ロボット40のハンド部401に把持されて、基板重ね合わせ装置30から次工程を担う装置へ向けて搬出される。
【0057】
上述の実施例においては、第1干渉計309および第2干渉計310をそれぞれ、第1ステージ303および第2ステージ304に対向するように設置して、第1ステージ303をxy平面内で移動させることにより、第1接合面と第2接合面の補正角を検出した。しかしながら、補正角を取得する手順は上述の実施例に限らないので、以下にその変形例を順次説明する。
【0058】
(変形例1)
上述の実施例においては、第1ステージ303のみを移動させて補正角を検出した。しかし、第2ステージ304も駆動機構を設けて移動させるように制御を行っても良い。この場合、第1干渉計309および第1測定顕微鏡301は、第2ステージ304上に設置することが好ましい。このように構成する場合は、アライメントマークの検出および補正角の算出において、少なくともいずれか一方のステージを動かせば良いので、ステージの移動量を抑えることができ、また、移動パスを生成しやすい。
【0059】
(変形例2)
上述の実施例においては、補正角の算出を行い、第1接合面と第2接合面を平行にした後に、互いのアライメントマークの検出を行った。しかし、第1干渉計309と共に第1測定顕微鏡301も動作させ、また、第2干渉計310と共に第2測定顕微鏡302も動作させれば、第1ステージ303の移動に伴い、変位量の計測に並行してアライメントマークの検出を行うことができる。このように構成すれば、第1ステージ303の移動量を抑制することができるので、スループットの向上に寄与する。なお、算出された補正角に基づいて第1ステージ303を傾けると、取得したアライメントマーク座標に誤差を生じるが、この誤差は補正角に基づいて修正することができる。なお、球面台座308の回転中心を、第1ウェハ10の第1接合面の中心と一致するように設計すれば、第1ステージ303の傾きによって生じるアライメントマーク座標の誤差は僅かであるので、補正角の大きさによっては修正を行わなくても良い。
【0060】
(変形例3)
上述の実施例においては、第1接合面の変位を計測する第1干渉計309と、第2接合面の変位を計測する第2干渉計310を、それぞれ独立して設置した。しかし、第2干渉計310を廃止して、第1干渉計309のみで計測することもできる。具体的には、第1ウェハ10の第1ステージ303への載置に先立ち、第2ウェハ20を第1ステージ303へ仮載置する。この状態で第1ステージ303を移動させつつ、第1干渉計309を用いて第2ウェハ20の第2接合面を計測する。第1ステージ303と第2ステージ304は互いに並行、または互いの傾きは既知であるので、計測後の第2ウェハ20を第1ステージ303から離脱させ、位相を調整しつつ第2ステージ304へ載置すれば、第1ステージに対する第2ウェハ20の傾き角を把握することができる。その後、第1ステージ303へ第1ウェハ10を載置し、第2ステージに対する第1ウェハ10の傾き角を算出すれば、上述の実施例と同様に、第1接合面と第2接合面を互いに平行にすることができる。なお、ここで位相を調整するとは、第2ウェハ20について、第1ステージ303へ仮載置したときのxy平面内における向きと、計測後に第2ステージ304へ載置するxy平面内における向きを合わせる、または既知の回転量を加えて向きを変更することである。
【0061】
(変形例4)
上述の実施例においては、第1干渉計309および第2干渉計310による計測を第1ステージ303の移動に同期させて行った。しかし、例えば、第1接合面上の複数個所を同時に計測できるように、複数の第1干渉計309を設置したり、複数個所を並行して計測できる変位計もしくは走査機構を備えた変位計を設置すれば、第1ステージ303を移動させることなく計測を行うことができる。例えば、投光系と受光系を分離させ、投光系から射出した複数のレーザー光を、第1接合面の異なる箇所で反射させて受光系で受光する、干渉計アレイを用いても良い。このように構成すれば、第1ステージ303の移動に伴う誤差の累積を回避することができ、また、移動に必要な時間を省くことができる。
【0062】
(変形例5)
上述の実施例においては、第1干渉計309と第2干渉計310を基板重ね合わせ装置30内に設置して、基板重ね合わせ装置30において補正角を算出し、取得した。しかし、第1ステージ303と第2ステージ304が互いに並行、または互いの傾きが既知であれば、それぞれのステージに実際にウェハを載置して計測しなくても良い。つまり、基板重ね合わせ装置30を制御する制御演算部は、外部装置で計測された計測結果を取得し、第1ステージ303と第2ステージ304の傾きを考慮して、補正角を算出すれば良い。
【0063】
具体的には、例えばプリアライナー50において、観察顕微鏡501の近傍に干渉計を設置し、載置台502をxy平面内で移動させることにより、載置台502に載置された第1ウェハ10の第1接合面の変位を計測する。第1ウェハ10が第1ウェハホルダ101に保持されていれば、計測した結果から、第1ウェハホルダ101の裏面に対する第1ウェハ10の接合面の傾き角を算出することができる。また、第1ウェハ10が単独で載置台502に載置されていれば、第1ウェハ10の表裏面間の傾き角を算出することができる。第2ウェハ20についても同様に算出できる。そして、基板重ね合わせ装置30を制御する制御演算部は、プリアライナー50からこの算出結果を取得する。さらに、搬送ロボット40を制御して、第1ウェハ10を保持する第1ウェハホルダ101を第1ステージ303へ、第2ウェハ20を保持する第2ウェハホルダ201を第2ステージ304へ、それぞれ回転位相を調整して載置固定する。このように構成すれば、基板重ね合わせ装置30内で計測を行わなくても、第1ステージ303を傾けて第1接合面と第2接合面を互いに並行にすることができる。このように構成すれば、システム全体の並行処理を促進することができるので、スループットの向上が期待できる。
【0064】
(変形例6)
上述の実施例においては、第1干渉計309と第2干渉計310による変位計測に引き続き、第1ステージ303を傾けて第1接合面と第2接合面を平行にした。しかし、その都度第1接合面および第2接合面の計測を行わなくても良い。それぞれステージに載置された第1接合面と第2接合面が互いに平行でない主な原因の一つは、ウェハホルダの、ステージと接する載置面とウェハを保持する保持面の平行度が良くない点にある。したがって、基板重ね合わせ装置30に記憶部を設け、利用する複数のウェハホルダについてそれぞれの載置面と保持面の平行度を記憶しておけば、毎回の変位計測を省略することができる。つまり、例えば、現時点で第1ステージ303に載置されている第1ウェハホルダ101についての平行度を記憶部から読み出し、かつ、載置されている第1ウェハホルダ101の位相がわかれば、ウェハホルダに起因する第2ステージに対する第1接合面の傾き角を算出することができる。載置されている第1ウェハホルダ101の位相は、搬送ロボット40によって搬入される時のハンド部401の向きから把握することができる。第1ステージに対する第2接合面の傾き角も同様に算出することができる。したがって、ウェハホルダの載置面と保持面の傾きが、第1接合面と第2接合面が平行とならない主たる原因である場合は、このような構成でも上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
以上説明したそれぞれの実施例では、第1接合面と第2接合面の傾き角を計測する場合には干渉計を用いた。しかし、第1測定顕微鏡301、第2測定顕微鏡302がフォーカス機能を備える場合、その複数点における焦点調整の結果から各々の接合面の傾きを検出することができる。このようにフォーカス機能を備える測定顕微鏡を用いて装置を構成すれば、干渉計を省くことができる。
【0066】
以上変形例を説明したが、もちろんこれらの組み合わせも実施例として採用し得る。また、本発明を上述の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0067】
10 第1ウェハ、11 第1回路領域、12 第1アライメントマーク、13 第1ノッチ、20 第2ウェハ、21 第2回路領域、22 第2アライメントマーク、23 第2ノッチ、30 基板重ね合わせ装置、40 搬送ロボット、50 プリアライナー、101 第1ウェハホルダ、110 ホルダ本体、111 吸着子、201 第2ウェハホルダ、210 ホルダ本体、211 マグネット、301 第1測定顕微鏡、302 第2測定顕微鏡、303 第1ステージ、304 第2ステージ、305 反射ミラー、306 XY干渉計、307 駆動装置、308 球面台座、309 第1干渉計、310 第2干渉計、401 ハンド部、402 アーム部、501 観察顕微鏡、502 載置台
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板を保持する第1ステージと、
前記第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、
前記第1ステージに保持された前記第1基板の接合面である第1接合面と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、
前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を、前記取得部が取得した前記傾きに基づいて、前記第1接合面と前記第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部と
を備える基板重ね合わせ装置。
【請求項2】
前記第1ステージは、前記第1基板を第1基板ホルダを介して保持し、
前記第2ステージは、前記第2基板を第2基板ホルダを介して保持する請求項1に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項3】
対向して設置される基板の接合面上における複数箇所の対向方向の変位を計測する変位計を備え、
前記取得部は、前記変位計の出力に基づいて前記傾きを取得する請求項1または2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項4】
前記変位計は、前記第1ステージに保持された前記第1基板の前記第1接合面、および前記第2ステージの保持に先立って前記第1ステージに仮保持された前記第2基板の前記第2接合面を計測する請求項3に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項5】
前記駆動部はさらに、前記第1ステージを前記対向方向に直交する平面方向に駆動し、
前記変位計は、前記駆動部による前記第2ステージの前記平面方向への駆動に同期して変位を計測する請求項4に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項6】
前記変位計は、前記第1ステージに保持された前記第1基板の前記第1接合面上における複数個所の変位を計測する第1変位計と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の前記第2接合面上における複数個所の変位を計測する前記第1ステージに設置された第2変位計と、から構成される請求項3に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項7】
前記駆動部はさらに、前記第1ステージを前記対向方向に直交する平面方向に駆動し、
前記第1変位計および前記第2変位計は、前記駆動部による前記第2ステージの前記平面方向への駆動に同期して変位を計測する請求項6に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項8】
前記第1変位計による前記第1接合面の計測と、前記第2変位計による前記第2接合面の計測を、前記第1ステージの駆動に伴い並行して行う請求項7に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項9】
前記第1接合面に設けられた第1アライメントマークと前記第2接合面に設けられた第2アライメントマークの検出を行う検出部を備え、
前記検出部は、前記第1ステージの駆動に伴い、前記第1変位計による計測と前記第2変位計による計測に並行して、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークの少なくとも一方の検出を行う請求項8に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項10】
前記取得部は、外部装置で計測された前記第1接合面の傾きと前記第2接合面の傾きに関する情報を入力して、前記第1ステージに載置された前記第1基板の前記第1接合面と、前記第2ステージに載置された前記第2基板の前記第2接合面の相対的な傾きを演算して取得する請求項1または2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項11】
前記第1基板ホルダの前記第1基板を載置する載置面の傾きである第1傾き情報、および前記第2基板ホルダの前記第2基板を載置する載置面の傾きである第2傾き情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1傾き情報および前記第2傾き情報に基づいて前記第1ステージに載置された前記第1基板の前記第1接合面と、前記第2ステージに載置された前記第2基板の前記第2接合面の相対的な傾きを演算して取得する請求項2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項12】
複数の基板を重ね合わせて製造されるデバイスの製造方法であって、
前記複数の基板を重ね合わせる工程は、
第1ステージに第1基板を保持させる第1保持ステップと、
第2ステージに、前記第1基板に対向して第2基板を保持させる第2保持ステップと、
前記第1ステージに保持された前記第1基板の接合面である第1接合面と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得ステップと、
前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を、前記取得ステップで取得した前記傾きに基づいて、前記第1接合面と前記第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動ステップと
を含むデバイスの製造方法。
【請求項1】
第1基板を保持する第1ステージと、
前記第1基板に対向して配置される第2基板を保持する第2ステージと、
前記第1ステージに保持された前記第1基板の接合面である第1接合面と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得部と、
前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を、前記取得部が取得した前記傾きに基づいて、前記第1接合面と前記第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動部と
を備える基板重ね合わせ装置。
【請求項2】
前記第1ステージは、前記第1基板を第1基板ホルダを介して保持し、
前記第2ステージは、前記第2基板を第2基板ホルダを介して保持する請求項1に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項3】
対向して設置される基板の接合面上における複数箇所の対向方向の変位を計測する変位計を備え、
前記取得部は、前記変位計の出力に基づいて前記傾きを取得する請求項1または2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項4】
前記変位計は、前記第1ステージに保持された前記第1基板の前記第1接合面、および前記第2ステージの保持に先立って前記第1ステージに仮保持された前記第2基板の前記第2接合面を計測する請求項3に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項5】
前記駆動部はさらに、前記第1ステージを前記対向方向に直交する平面方向に駆動し、
前記変位計は、前記駆動部による前記第2ステージの前記平面方向への駆動に同期して変位を計測する請求項4に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項6】
前記変位計は、前記第1ステージに保持された前記第1基板の前記第1接合面上における複数個所の変位を計測する第1変位計と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の前記第2接合面上における複数個所の変位を計測する前記第1ステージに設置された第2変位計と、から構成される請求項3に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項7】
前記駆動部はさらに、前記第1ステージを前記対向方向に直交する平面方向に駆動し、
前記第1変位計および前記第2変位計は、前記駆動部による前記第2ステージの前記平面方向への駆動に同期して変位を計測する請求項6に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項8】
前記第1変位計による前記第1接合面の計測と、前記第2変位計による前記第2接合面の計測を、前記第1ステージの駆動に伴い並行して行う請求項7に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項9】
前記第1接合面に設けられた第1アライメントマークと前記第2接合面に設けられた第2アライメントマークの検出を行う検出部を備え、
前記検出部は、前記第1ステージの駆動に伴い、前記第1変位計による計測と前記第2変位計による計測に並行して、前記第1アライメントマークおよび前記第2アライメントマークの少なくとも一方の検出を行う請求項8に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項10】
前記取得部は、外部装置で計測された前記第1接合面の傾きと前記第2接合面の傾きに関する情報を入力して、前記第1ステージに載置された前記第1基板の前記第1接合面と、前記第2ステージに載置された前記第2基板の前記第2接合面の相対的な傾きを演算して取得する請求項1または2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項11】
前記第1基板ホルダの前記第1基板を載置する載置面の傾きである第1傾き情報、および前記第2基板ホルダの前記第2基板を載置する載置面の傾きである第2傾き情報を予め記憶する記憶部を備え、
前記取得部は、前記記憶部に記憶された前記第1傾き情報および前記第2傾き情報に基づいて前記第1ステージに載置された前記第1基板の前記第1接合面と、前記第2ステージに載置された前記第2基板の前記第2接合面の相対的な傾きを演算して取得する請求項2に記載の基板重ね合わせ装置。
【請求項12】
複数の基板を重ね合わせて製造されるデバイスの製造方法であって、
前記複数の基板を重ね合わせる工程は、
第1ステージに第1基板を保持させる第1保持ステップと、
第2ステージに、前記第1基板に対向して第2基板を保持させる第2保持ステップと、
前記第1ステージに保持された前記第1基板の接合面である第1接合面と、前記第2ステージに保持された前記第2基板の接合面である第2接合面の相対的な傾きを取得する取得ステップと、
前記第1ステージおよび前記第2ステージの少なくとも一方を、前記取得ステップで取得した前記傾きに基づいて、前記第1接合面と前記第2接合面が互いに平行となるように駆動する駆動ステップと
を含むデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−49318(P2011−49318A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195880(P2009−195880)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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